(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電流遮断装置の故障診断方法、及び、蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241210BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241210BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20241210BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20241210BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20241210BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20241210BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241210BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241210BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241210BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H01M10/48
H01M10/42
H02H7/00 L
H02H7/18
H02H7/00 K
H02J7/00 P
B60L1/00 L
B60L3/00 N
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2020069688
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135834(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208410(WO,A1)
【文献】特開2016-193634(JP,A)
【文献】特開2018-129913(JP,A)
【文献】特開2012-253993(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103721(WO,A1)
【文献】特開2014-036556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 50/528
H01M 10/42
H02H 7/00
H02H 7/18
B60L 1/00
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の電源システムが備える電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記電源システムは、前記移動体の第1の電気負荷に接続されている第1の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と並列に接続されている電力供給装置とを備えており、
前記第1の蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている前記電流遮断装置と、前記蓄電素子の充電電流を計測する電流センサとを備えており、
当該故障診断方法は、
前記電力供給装置が前記第1の電気負荷及び前記第1の蓄電装置に電力供給する供給ステップと、
前記電力供給装置から前記第1の電気負荷及び前記第1の蓄電装置に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令ステップと、
前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の充電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断ステップと、
を含む、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記電力供給が開始された後、前記蓄電素子が充電されているか否かを判断する充電判断ステップを含み、
前記充電判断ステップで前記蓄電素子が充電されていると判断した場合に前記指令ステップを実行する、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項3】
移動体の電源システムが備える電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記電源システムは、前記移動体の第1の電気負荷に接続されている第1の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と並列に接続されている電力供給装置とを備えており、
前記第1の蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている前記電流遮断装置と、前記蓄電素子の放電電流を計測する電流センサとを備えており、
当該故障診断方法は、
前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は前記電力供給装置から前記第1の電気負荷に電力供給される状態を保ちつつ、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給する供給ステップと、
前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令ステップと、
前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の放電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断ステップと、
を含
み、
前記移動体は電気モータによって駆動される電気自動車であり、
前記電力供給装置は、前記電気モータに電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備える、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項4】
移動体の電源システムが備える電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記電源システムは、前記移動体の第1の電気負荷に接続されている第1の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と並列に接続されている電力供給装置とを備えており、
前記第1の蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている前記電流遮断装置と、前記蓄電素子の放電電流を計測する電流センサとを備えており、
当該故障診断方法は、
前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は前記電力供給装置から前記第1の電気負荷に電力供給される状態を保ちつつ、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給する供給ステップと、
前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令ステップと、
前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の放電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断ステップと、
を含み、
前記電力供給装置は、前記第1の電気負荷とは異なる第2の電気負荷に電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備える、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項5】
請求項3
又は請求項4に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記電力供給が開始された後、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合に前記電力供給装置から前記第1の電気負荷に電力供給されるか否かを判断する供給判断ステップを含み、
前記供給判断ステップで電力供給されると判断した場合に前記指令ステップを実行する、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項6】
請求項1
又は請求項2に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記移動体は電気モータによって駆動される電気自動車であり、
前記電力供給装置は、前記電気モータに電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備える、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項7】
請求項1
又は請求項2に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記電力供給装置は、前記第1の電気負荷とは異なる第2の電気負荷に電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備える、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項8】
請求項1
又は請求項2に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記移動体はエンジン自動車であり、
前記電力供給装置は前記エンジン自動車のエンジンを動力源とする発電機である、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記移動体が停車中のときに前記供給ステップを実行する、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項10】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記供給ステップにおいて、前記第1の蓄電装置に流れる電流の電流値が所定値以下となるように前記電圧変換器によって電圧を変換する、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の電流遮断装置の故障診断方法であって、
前記移動体は電気モータによって駆動される電気自動車であり、
前記電源システムは、前記電気モータに電力供給する第2の蓄電装置を備え、
前記電力供給装置は、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置とを充電する外部電源が接続される充電部である、電流遮断装置の故障診断方法。
【請求項12】
電気負荷と電力供給装置とを備える移動体に搭載される蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、
前記蓄電素子の充電電流を計測する電流センサと、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
前記電力供給装置から前記電気負荷及び当該蓄電装置に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令処理と、
前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の充電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断処理と、
を実行する、蓄電装置。
【請求項13】
第1の電気負荷と、
電気モータと、電力供給装置と、を備える移動体に搭載される蓄電装置であって、
前記移動体は前記電気モータによって駆動される電気自動車であり、
当該蓄電装置を第1の蓄電装置と定義した場合に、
前記電力供給装置は、前記電気モータに電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器と、を備え、
当該第1の蓄電装置は、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、
前記蓄電素子の放電電流を計測する電流センサと、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
当該
第1の蓄電装置から前記
第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は前記電力供給装置から前記
第1の電気負荷に電力供給される状態を保ちつつ当該
第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されているときに、前記電流遮断装置に遮断を指令する指令処理と、
前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の放電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断処理と、
を実行する、蓄電装置。
【請求項14】
第1の電気負荷と、前記第1の電気負荷とは異なる第2の電気負荷と、電力供給装置と、を備える移動体に搭載される蓄電装置であって、
当該蓄電装置を第1の蓄電装置と定義した場合に、
前記電力供給装置は、前記第2の電気負荷に電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備え、
当該第1の蓄電装置は、
蓄電素子と、
前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、
前記蓄電素子の放電電流を計測する電流センサと、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、
当該第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は前記電力供給装置から前記第1の電気負荷に電力供給される状態を保ちつつ当該第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されているときに、前記電流遮断装置に遮断を指令する指令処理と、
前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の放電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断処理と、
を実行する、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電流遮断装置の故障診断方法、及び、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にリチウムイオン二次電池などの蓄電素子を有する蓄電装置は、蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えている。管理装置は蓄電装置の状態を監視し、過充電や過放電などの異常を検出すると電流遮断装置を遮断状態にして蓄電装置を保護する。
【0003】
電流遮断装置は故障する可能性がある。電流遮断装置が故障すると蓄電装置を保護できなくなる。このため、電流遮断装置の故障診断を行うことが望ましい。電流遮断装置の故障を診断する方法としては、例えば蓄電装置が放電している状態で電流遮断装置に遮断を指令し、放電電流が流れなくなったか否かによって故障の有無を判断する方法が考えられる。
【0004】
通常、自動車などの移動体にはブレーキ、ドアロック、カーナビゲーション、イモビライザーなどの電気負荷に電力供給する蓄電装置(一般に12Vの蓄電装置)が搭載されている。移動体の電気負荷に電力供給する蓄電装置に特有の課題として、移動体の走行中、駐車中を問わず、電力供給が途絶える所謂パワーフェイルを起こしてはならないという課題がある。故障診断のために電流遮断装置に遮断を指令した場合、電流遮断装置が故障していなければ遮断状態となる。このため、故障診断によって電流遮断装置が遮断状態になっても電気負荷への電力供給が継続される手段が求められる。
【0005】
特許文献1には、故障診断するときに電流をバイパスさせるスイッチ回路を用いて第1スイッチ(電流遮断装置に相当)の故障を診断する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の電源保護装置は、第1スイッチと並列接続されたスイッチ回路であって、第2スイッチと、第2スイッチに直列接続され、電流が流れることで基準電圧の電圧降下を生じさせる電圧降下素子とを含むスイッチ回路を備えている。当該電源保護装置は、電源が放電しているときに、第2スイッチをクローズ状態にし、第1スイッチをオープン状態にした場合の開電圧と、電源が放電しているときに、第2スイッチをクローズ状態にし、第1スイッチをクローズ状態にした場合の閉電圧とに基づいて、第1スイッチが故障しているか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の電源保護装置は故障診断するときに電流をバイパスさせるスイッチ回路が必要であるので構成が複雑になる。このため蓄電装置のコストは上昇し、蓄電装置の信頼性は低下する。
本明細書では、電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
移動体の電源システムが備える電流遮断装置の故障診断方法であって、前記電源システムは、前記移動体の第1の電気負荷に接続されている第1の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と並列に接続されている電力供給装置とを備えており、前記第1の蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている前記電流遮断装置と、前記蓄電素子の充電電流を計測する電流センサとを備えており、当該故障診断方法は、前記電力供給装置が前記第1の電気負荷及び前記第1の蓄電装置に電力供給する供給ステップと、前記電力供給装置から前記第1の電気負荷及び前記第1の蓄電装置に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令ステップと、前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の充電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断ステップと、を含む、電流遮断装置の故障診断方法。
【発明の効果】
【0009】
電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】実施形態2に係る故障診断処理のフローチャート
【
図10】実施形態5に係る電源システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本実施形態の概要)
(1)移動体の電源システムが備える電流遮断装置の故障診断方法であって、前記電源システムは、前記移動体の第1の電気負荷に接続されている第1の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と並列に接続されている電力供給装置とを備えており、前記第1の蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている前記電流遮断装置と、前記蓄電素子の充電電流を計測する電流センサとを備えており、当該故障診断方法は、前記電力供給装置が前記第1の電気負荷及び前記第1の蓄電装置に電力供給する供給ステップと、前記電力供給装置から前記第1の電気負荷及び前記第1の蓄電装置に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令ステップと、前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の充電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断ステップと、を含む。
【0012】
前述したように、移動体の電気負荷に電力供給する蓄電装置に特有の課題として、移動体の走行中、駐車中を問わず、電力供給が途絶える所謂パワーフェイルを起こしてはならないという課題がある。
通常、移動体の電源システムは、第1の蓄電装置とは別に電力供給装置を備えている。例えばエンジン自動車の場合は電力供給装置としてエンジンを動力源とする発電機(オルタネータ)を備えている。電気自動車の場合は電力供給装置として移動体の駆動源である電気モータに電力供給する高電圧の蓄電装置を備えている。
【0013】
上記の故障診断方法では、電力供給装置から第1の電気負荷及び第1の蓄電装置に電力供給されている状態で故障診断を行う。電力供給装置から第1の蓄電装置に電力供給するので、第1の蓄電装置には充電電流が流れる。この状態で電流遮断装置に遮断を指令すると、電流遮断装置が故障している場合は電流遮断装置が通電状態のままとなり、電流センサによって所定値以上の電流値(充電電流の電流値)が計測される。これにより電流遮断装置が故障していると判断できる。
【0014】
電流遮断装置が故障していない場合は電流遮断装置が遮断状態となり、電流センサによって計測される電流値は所定値未満となる。これにより電流遮断装置が故障していないと判断できる。電力供給装置から第1の電気負荷に電力供給するので、電流遮断装置が遮断状態になっても第1の電気負荷への電力供給が継続される。このためパワーフェイルを抑制できる。
【0015】
上記の故障診断方法によると、特許文献1に記載のスイッチ回路のような部品(故障診断するときに電流遮断装置が遮断状態になっても第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給できるようにするための部品)を備えなくてよいので、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。言い換えると、パワーフェイルを抑制しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0016】
前述した特許文献1に記載の電源保護装置は、第1スイッチが故障しているか否かを電源(第1の蓄電装置に相当)が放電しているときに判断するものであり、電源が充電されているときに判断することはできなかった。上記の故障診断方法によると、第1の蓄電装置が充電されているときに故障診断できる。
【0017】
上記の「電流遮断装置に遮断が指令されている状態」とは、遮断状態を維持するために電力供給し続ける必要がある電流遮断装置の場合は電力供給されている状態のことをいう。通電状態を維持するために電力供給し続ける必要がある電流遮断装置の場合は電力供給されていない状態のことをいう。通電状態から遮断状態に切り替えるとき及び遮断状態から通電状態に切り替えるときだけ電力供給が必要な電流遮断装置の場合は、通電状態から遮断状態に切り替えるための電力が供給されてから、遮断状態から通電状態に切り替えるための電力が供給されるまでの状態のことをいう。
【0018】
(2)前記電力供給が開始された後、前記蓄電素子が充電されているか否かを判断する充電判断ステップを含み、前記充電判断ステップで前記蓄電素子が充電されていると判断した場合に前記指令ステップを実行してもよい。
【0019】
供給ステップを開始しても、電力供給装置が故障しているなどの理由で電力供給装置から第1の電気負荷や第1の蓄電装置に電力供給されない可能性がある。電力供給装置から電力供給されていない場合、指令ステップで電流遮断装置に遮断を指令すると、電流遮断装置が故障していないことによって遮断状態になったとき、電力供給装置から電力供給されないことによってパワーフェイルとなる。
上記の故障診断方法によると、電力供給装置から第1の電気負荷に電力供給されていることを確認した上で電流遮断装置に遮断を指令できるので、パワーフェイルをより抑制できる。
【0020】
(3)移動体の電源システムが備える電流遮断装置の故障診断方法であって、前記電源システムは、前記移動体の第1の電気負荷に接続されている第1の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と並列に接続されている電力供給装置とを備えており、前記第1の蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている前記電流遮断装置と、前記蓄電素子の放電電流を計測する電流センサとを備えており、当該故障診断方法は、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は前記電力供給装置から前記第1の電気負荷に電力供給される状態を保ちつつ、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給する供給ステップと、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令ステップと、前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の放電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断ステップと、を含む。
【0021】
前述したように、移動体の電気負荷に電力供給する蓄電装置に特有の課題として、移動体の走行中、駐車中を問わず、電力供給が途絶える所謂パワーフェイルを起こしてはならないという課題がある。
【0022】
上記の故障診断方法では、第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は電力供給装置から第1の電気負荷に電力供給される状態で、第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給する。第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給するので、第1の蓄電装置から放電電流が流れる。この状態で電流遮断装置に遮断を指令すると、電流遮断装置が故障している場合は電流遮断装置が通電状態のままとなり、電流センサによって所定値以上の電流値(放電電流の電流値)が計測される。これにより電流遮断装置が故障していると判断できる。
【0023】
電流遮断装置が故障していない場合は電流遮断装置が遮断状態となり、電流センサによって計測される電流値が所定値未満となる。これにより電流遮断装置が故障していないと判断できる。電流遮断装置が遮断状態になると第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給されなくなるが、第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は電力供給装置から第1の電気負荷に電力供給されるので、電流遮断装置が遮断状態になっても第1の電気負荷への電力供給が継続される。このためパワーフェイルを抑制できる。
【0024】
上記の故障診断方法によると、特許文献1に記載のスイッチ回路のような部品を備えなくてよいので、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。言い換えると、パワーフェイルを抑制しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0025】
(4)前記電力供給が開始された後、前記第1の蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合に前記電力供給装置から前記第1の電気負荷に電力供給されるか否かを判断する供給判断ステップを含み、前記供給判断ステップで電力供給されると判断した場合に前記指令ステップを実行してもよい。
【0026】
何らかの理由で電力供給装置が電力供給不能になっている可能性もある。電力供給装置が電力供給不能な場合、指令ステップで電流遮断装置に遮断を指令すると、電流遮断装置が故障していないことによって遮断状態になったとき、電力供給装置から電力供給されないことによってパワーフェイルとなる。
上記の故障診断方法によると、電流遮断装置が遮断状態になって第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は電力供給装置から第1の電気負荷に電力供給されることを確認した上で指令ステップを実行できるので、パワーフェイルをより確実に抑制できる。
【0027】
(5)前記移動体は電気モータによって駆動される電気自動車であり、前記電力供給装置は、前記電気モータに電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備えてもよい。
【0028】
第2の蓄電装置から電圧変換器に印加された電圧を電圧変換器によって第1の蓄電装置の電圧より高くすると、第2の蓄電装置から第1の電気負荷及び第1の蓄電装置に電力供給される。その状態で故障診断を行うと、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断できる。
あるいは、第2の蓄電装置から電圧変換器に印加された電圧を電圧変換器によって第1の蓄電装置の電圧より低くすると、第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給される。その状態で故障診断を行うと、電流遮断装置が遮断状態になったとき、第1の蓄電装置に替わって第2の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給される。言い換えると、第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給されなくなった場合は電力供給装置から第1の電気負荷に電力供給される状態で故障診断が行われる。このため、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断できる。
【0029】
(6)前記電力供給装置は、前記第1の電気負荷とは異なる第2の電気負荷に電力供給する第2の蓄電装置と、前記第1の電気負荷と前記第2の蓄電装置との間に接続されており、前記第2の蓄電装置から印加される電圧を変換する電圧変換器とを備えてもよい。
【0030】
移動体の中には、第1の電気負荷に電力供給する第1の蓄電装置とは別に、第2の電気負荷に電力供給する第2の蓄電装置と、第1の電気負荷と第2の蓄電装置との間に接続されている電圧変換器とを備えているものがある。
第2の蓄電装置から電圧変換器に印加された電圧を電圧変換器によって第1の蓄電装置の電圧より高くすると、第2の蓄電装置から第1の電気負荷及び第1の蓄電装置に電力供給される。その状態で故障診断を行うと、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断できる。
【0031】
あるいは、第2の蓄電装置から電圧変換器に印加された電圧を電圧変換器によって第1の蓄電装置の電圧より低くすると、第1の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給される。その状態で故障診断を行うと、電流遮断装置が遮断状態になったとき、第1の蓄電装置に替わって第2の蓄電装置から第1の電気負荷に電力供給されるので、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断できる。
【0032】
(7)前記移動体はエンジン自動車であり、前記電力供給装置は前記エンジン自動車のエンジンを動力源とする発電機であってもよい。
【0033】
エンジン自動車は、第1の電気負荷に電力供給する第1の蓄電装置とは別に、エンジンを動力源とする発電機(オルタネータ)を備えている。エンジンが動作しているときは発電機から第1の電気負荷及び第1の蓄電装置に電力供給される。このため、発電機から第1の電気負荷に電力供給されているときに故障診断を行うことにより、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断できる。
【0034】
(8)前記移動体が停車中のときに前記供給ステップを実行してもよい。
【0035】
停車中とは、移動体が停止しているが、エンジンは動作中である状態のことをいう。
電流遮断装置を遮断状態にすると、第1の蓄電装置に接続されている電気ケーブルのインダクタンス成分により、遮断状態にした瞬間に、第1の蓄電装置が接続されている電源系統にサージ電圧が発生することがある。大きなサージ電圧は電源システムに障害をもたらす可能性がある。
【0036】
サージ電圧は充電電流の大きさに従うことから、サージ電圧を小さくするためには充電電流が小さいときに故障診断することが望ましい。充電電流が不安定であるときは充電電流が一時的に小さくなっても故障診断のタイミングで充電電流が大きくなる可能性があるので、充電電流が小さく安定しているときに故障診断することがより望ましい。
上記の故障診断方法によると、移動体が停車中のときに供給ステップを実行する。停車中は走行中に比べてエンジン回転数が低い状態で安定するので、第1の蓄電装置に流れる充電電流が小さく安定する。このためサージ電圧を小さくできる。
【0037】
(9)前記供給ステップにおいて、前記第1の蓄電装置に流れる電流の電流値が所定値以下となるように前記電圧変換器によって電圧を変換してもよい。
【0038】
電流遮断装置を遮断状態にすると、第1の蓄電装置に接続されている電気ケーブルのインダクタンス成分により、遮断状態にした瞬間にサージ電圧(瞬間的に定常状態を超えて発生する大破電圧)が発生することがある。大きなサージ電圧は電源システムに障害をもたらす可能性がある。サージ電圧は電流の大きさに従うことから、サージ電圧を小さくするためには第1の蓄電装置に流れる電流(充電電流あるいは放電電流)が小さいときに故障診断することが望ましい。
上記の故障診断方法によると、第1の蓄電装置に流れる電流の電流値が所定値以下となるように電圧変換器によって電圧を変換するので、第1の蓄電装置に流れる電流を小さくできる。これによりサージ電圧を小さくできる。
【0039】
(10)前記移動体は電気モータによって駆動される電気自動車であり、前記電源システムは、前記電気モータに電力供給する第2の蓄電装置を備え、前記電力供給装置は、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置とを充電する外部電源が接続される充電部であってもよい。
【0040】
電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などは、第1の電気負荷に電力供給する第1の蓄電装置とは別に、移動体の駆動源である電気モータに電力供給する第2の蓄電装置と第1の蓄電装置とを充電するための外部電源が接続される充電部を備えている。
【0041】
充電部に外部電源が接続されているときは外部電源から第1の電気負荷及び第1の蓄電装置に電力供給できる。このため、充電部に外部電源が接続されているときに故障診断を行うことにより、第1の電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断できる。
【0042】
(11)電気負荷と電力供給装置とを備える移動体に搭載される蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、前記蓄電素子の充電電流を計測する電流センサと、管理部と、を備え、前記管理部は、前記電力供給装置から前記電気負荷及び当該蓄電装置に電力供給されている状態で前記電流遮断装置に遮断を指令する指令処理と、前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の充電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断処理と、を実行する。
【0043】
上記の蓄電装置によると、電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0044】
(12)電気負荷と電力供給装置とを備える移動体に搭載される蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、前記蓄電素子の放電電流を計測する電流センサと、管理部と、を備え、前記管理部は、当該蓄電装置から前記電気負荷に電力供給されなくなった場合は前記電力供給装置から前記電気負荷に電力供給される状態を保ちつつ当該蓄電装置から前記第1の電気負荷に電力供給されているときに、前記電流遮断装置に遮断を指令する指令処理と、前記電流遮断装置に遮断が指令されている状態で前記電流センサによって前記蓄電素子の放電電流を計測し、計測した電流値に基づいて前記電流遮断装置の故障の有無を判断する判断処理と、を実行する。
【0045】
上記の蓄電装置によると、電気負荷への電力供給を継続しつつ電流遮断装置の故障を診断することを、電源システムの構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0046】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0047】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図6によって説明する。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0048】
(1)車両の電源システム
図1に示す車両1(移動体の一例)は電気自動車である。車両1には車両駆動源である電気モータ10、第1の電気負荷11、電源システム12、及び、図示しない車両ECU(Engine Control Unit)などが搭載されている。第1の電気負荷11は定格12Vであり、ブレーキ、ドアロック、カーナビゲーション、イモビライザーなどを例示できる。
【0049】
図2に示すように、電源システム12は第1の蓄電装置13(蓄電装置の一例)及び電力供給装置14を備えている。第1の蓄電装置13と電力供給装置14とは並列に接続されている。第1の蓄電装置13は第1の電気負荷11に電力供給する。電力供給装置14は第1の蓄電装置13、第1の電気負荷11及び電気モータ10に電力供給する。
【0050】
第1の蓄電装置13は電力線15を介して第1の電気負荷11に接続されている。第1の蓄電装置13は定格12Vである。
電力供給装置14は高電圧(例えば100V)の第2の蓄電装置14A及びDC-DCコンバータ14B(電圧変換器の一例)を備えている。第2の蓄電装置14Aは第1の蓄電装置13、電気モータ10及び第1の電気負荷11に電力供給する。DC-DCコンバータ14Bは第1の電気負荷11と第2の蓄電装置14Aとの間に接続されている。DC-DCコンバータ14Bは変換後の電圧が可変であり、第2の蓄電装置14Aから印加された電圧を第1の蓄電装置13から指示された出力電圧に変換する。
【0051】
(2)蓄電装置の構成
第1の蓄電装置13の構成と第2の蓄電装置14Aの構成とは実質的に同一であるのでここでは第1の蓄電装置13を例に説明する。
図3に示すように、第1の蓄電装置13は組電池20、BMU21(電池管理装置:Battery Management Unit)、及び、通信コネクタ25を備える。組電池20は12個の二次電池20A(蓄電素子の一例)が3並列で4直列に接続されている。
図3では並列に接続された3つの二次電池20Aを1つの電池記号で表している。二次電池20Aは一例としてリチウムイオン二次電池である。
【0052】
BMU21は電流遮断装置21A、電流センサ21B、電圧検出回路21C、温度センサ21D、管理部21Eなどを備えている。電圧検出回路21C及び管理部21Eは回路基板ユニット65(
図4参照)に実装されている。
電流遮断装置21A、組電池20及び電流センサ21Bはパワーライン23P,23Nを介して直列に接続されている。パワーライン23Pは正極の外部端子24Pと組電池20の正極とを接続するパワーラインである。パワーライン23Nは負極の外部端子24Nと組電池20の負極とを接続するパワーラインである。電流遮断装置21Aは組電池20の正極側に位置し、正極側のパワーライン23Pに設けられている。電流センサ21Bは組電池20の負極側に位置し、負極のパワーライン23Nに設けられている。
【0053】
電流遮断装置21Aはリレーなどの有接点スイッチ(機械式)や、FETやトランジスタなどの半導体スイッチによって構成されている。電流遮断装置21Aは管理部21Eによって遮断状態/通電状態(開/閉、オープン/クローズ、オフ/オン)が切り替えられる。電流遮断装置21Aを遮断状態にすると第1の蓄電装置13が車両1の電力線15から切り離され、電流が遮断される。電流遮断装置21Aを通電状態にすると第1の蓄電装置13が電力線15に接続され、第1の電気負荷11への電力供給が可能となる。
【0054】
電流センサ21Bは組電池20の充放電電流[A]を計測して管理部21Eに出力する。
電圧検出回路21Cは信号線によって各二次電池20Aの両端にそれぞれ接続されている。電圧検出回路21Cは各二次電池20Aの電池電圧[V]を計測して管理部21Eに出力する。組電池20の総電圧[V]は直列に接続された4つの二次電池20Aの合計電圧である。
温度センサ21Dは接触式あるいは非接触式であり、二次電池20Aの温度[℃]を計測して管理部21Eに出力する。
図3では省略しているが、温度センサ21Dは2つ以上設けられている。各温度センサ21Dは互いに異なる二次電池20Aの温度を検出する。
【0055】
管理部21EはCPUやRAMなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ26、ROM27及び通信部28を備える。ROM27には各種のプログラムやデータが記憶されている。マイクロコンピュータ26はROM27に記憶されているプログラムを実行することによって第1の蓄電装置13を管理する。
通信部28は管理部21Eが車両ECUやDC-DCコンバータ14Bと通信するための通信回路である。管理部21EとDC-DCコンバータ14Bとは車両ECUを介して通信してもよいし、車両ECUを介さずに直に通信してもよい。
【0056】
通信コネクタ25は管理部21Eが車両ECUと通信するための図示しない通信ケーブルが接続されるコネクタである。管理部21EとDC-DCコンバータ14Bとが直に通信する場合はDC-DCコンバータ14Bと通信するための通信ケーブルが接続される。
【0057】
図4に示すように、第1の蓄電装置13は収容体71を備える。収容体71は合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は底面部75と4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0058】
収容体71は組電池20と回路基板ユニット65を収容する。回路基板ユニット65は組電池20の上部に配置されている。
蓋体74は本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち一方の隅部に正極の外部端子24Pが固定され、他方の隅部に負極の外部端子24Nが固定されている。
【0059】
図5A及び
図5Bに示すように、二次電池20Aは直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。ケース82はケース本体84とその上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状であり、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0060】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が接続されており、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89が接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は平板状の台座部90とこの台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0061】
図5Aに示すように、蓋85は圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95はケース82の内圧が制限値を超えた時に開放してケース82の内圧を下げる。
【0062】
(3)BMUによって実行される処理
第1の蓄電装置13のBMU21によって実行される第1の蓄電装置の保護処理、及び、電流遮断装置21Aの故障診断処理について説明する。
【0063】
(3-1)第1の蓄電装置の保護処理
図3を参照して、第1の蓄電装置の保護処理について説明する。第1の蓄電装置の保護処理は、第1の蓄電装置13の状態を監視し、異常を検出すると電流遮断装置21Aに遮断を指令して第1の蓄電装置13を異常から保護する処理である。第1の蓄電装置13の異常は、具体的には過充電、過放電、過電流、温度異常などである。以下、異常の検出について説明する。
【0064】
BMU21は電流センサ21Bによって一定周期で電流値を計測し、電流積算法によって充電状態(SOC:State Of Charge)を推定する。電流積算法は、電流センサ21Bによって組電池20の充放電電流を常時計測することで組電池20に出入りする電力量を計測し、これを初期容量から加減することでSOCを推定する方法である。BMU21は推定したSOCが所定の上限値より大きい場合は過充電と判断し、所定の下限値より小さい場合は過放電と判断する。
【0065】
ここでは電流積算法によって推定されたSOCから過充電や過放電を判断する場合を例に説明したが、電圧検出回路21Cによって計測された電圧値から判断してもよい。具体的には、第1の蓄電装置13の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)とSOCとには比較的精度の良い相関関係があるので、電圧検出回路21Cによって計測された電圧が所定の上限電圧以上である場合は過充電と判断し、所定の下限電圧以下である場合は過放電と判断してもよい。一般にOCVは回路が開放されているときの電圧であるが、ここでは回路が開放されておらず、第1の蓄電装置13の充放電電流が微小な基準値(例えば10mA)以下であるときの電圧のことをOCVと定義する。
【0066】
BMU21は、電流センサ21Bによって電流値を計測する毎に、計測した電流値が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上である場合は過電流と判断する。過電流が発生する原因としては外部短絡を例示することが出来る。
BMU21は温度センサ21Dによって一定周期で二次電池20Aの温度を計測し、計測した温度が所定値以上である場合は温度異常と判断する。
【0067】
ここでは二次電池20Aの異常として過充電、過放電、過電流及び温度異常を例に説明したが、二次電池20Aの異常はこれらに限られるものではない。例えば電流センサ21B、電圧検出回路21C、温度センサ21Dなどの故障であってもよい。
【0068】
(3-2)電流遮断装置の故障診断処理
電流遮断装置の故障診断処理は、電流遮断装置21Aの故障の有無を判断する処理である。故障診断処理は第1の蓄電装置13が充電されているとき及び放電しているときのどちらでも可能であるが、実施形態1では充電されているときを例に説明する。
【0069】
図2を参照して、故障診断処理の概略について説明する。本処理を開始するタイミングは適宜に決定可能であるが、実施形態1では車両1が停車中あるいは駐車中のときに開始する場合を例に説明する。
BMU21は、車両1が停車中あるいは駐車中のとき、電力供給装置14から第1の電気負荷11及び第1の蓄電装置13に電力供給されるようDC-DCコンバータ14Bに出力電圧を指示する。具体的には、BMU21は、第2の蓄電装置14Aから印加される電圧を第1の蓄電装置13の現在の電圧(OCV)より高い電圧に変換するようDC-DCコンバータ14Bに指示する。DC-DCコンバータ14Bは第2の蓄電装置14Aから印加される電圧をBMU21から指示された出力電圧に変換する。これによりA点の電圧が第1の蓄電装置13の電圧より高くなる。A点の電圧が第1の蓄電装置13の電圧より高くなると電力供給装置14から第1の電気負荷11及び第1の蓄電装置13に電力供給される(供給ステップの一例)。
【0070】
電力供給装置14から第1の蓄電装置13に電力供給されるので、第1の蓄電装置13には充電電流が流れる。BMU21は、第1の蓄電装置13に充電電流が流れている状態で電流遮断装置21Aに遮断を指令する(指令ステップ及び指令処理の一例)。電流遮断装置21Aに遮断を指令すると、電流遮断装置21Aが故障していない場合は電流遮断装置21Aが遮断状態になるので充電電流が流れなくなる。BMU21は、充電電流が流れなくなった場合は電流遮断装置21Aが故障していないと判断する(判断ステップ及び判断処理の一例)。第1の電気負荷11には電力供給装置14から電力供給されているので、電流遮断装置21Aが遮断状態になっても第1の電気負荷11への電力供給が継続される。
【0071】
これに対し、電流遮断装置21Aが故障している場合は通電状態が維持されるので、第1の蓄電装置13には充電電流が流れ続ける。BMU21は、充電電流が流れ続けている場合は電流遮断装置21Aが故障していると判断する(判断ステップ及び判断処理の一例)。
【0072】
第1の蓄電装置13の電圧とDC-DCコンバータ14Bによって変換された電圧との差が大きいと、第1の蓄電装置13に流れる充電電流が大きくなる。充電電流が大きいと、電流遮断装置21Aを遮断状態にしたときに大きなサージ電圧が発生する。このため、BMU21がDC-DCコンバータ14Bに指示する電圧は、第1の蓄電装置13に流れる充電電流の電流値が所定値以下となる電圧であることが望ましい。例えば第1の蓄電装置13の電圧(OCV)が14.0Vである場合、DC-DCコンバータ14Bに指示する出力電圧は0.1V高い14.1V程度であることが望ましい。
【0073】
ここまでの説明ではDC-DCコンバータ14Bに出力電圧を指示するとDC-DCコンバータ14Bによって電圧が変換されて第1の電気負荷11や第1の蓄電装置13に電力供給されると説明したが、DC-DCコンバータ14Bの故障、第2の蓄電装置14Aの故障、電力線15の断線などによって第1の電気負荷11や第1の蓄電装置13に電力供給されない場合もある。
【0074】
図6を参照して、故障診断処理のフローについて説明する。
S101では、BMU21は、第2の蓄電装置14Aから印加される電圧を、第1の蓄電装置13の現在の電圧より高い電圧に変換するようDC-DCコンバータ14Bに指示する。
S102では、BMU21は電流センサ21Bによって充電電流を計測する。
S103では、BMU21は、S102で計測した電流値から、電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給されているか否かを判断する(充電判断ステップの一例)。具体的には、BMU21は第1の蓄電装置13に充電電流が流れているか否かを判断する。第1の蓄電装置13に充電電流が流れていればDC-DCコンバータ14Bなどは故障しておらず、電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給されていると判断できる。このため、BMU21は充電電流が流れているか否かを判断することにより、電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給されているか否かを判断する。
【0075】
BMU21は、S102で計測した電流値(充電電流の電流値)が所定値以上である場合(充電電流が流れている場合)は、第2の蓄電装置14Aから第1の電気負荷11に電力供給されていると判断してS104に進む。BMU21は、電流値が所定値未満である場合(充電電流が流れていない場合)は、第2の蓄電装置14Aから第1の電気負荷11に電力供給されていないと判断し、パワーフェイルを避けるために本処理を終了する。
【0076】
S104では、BMU21は電流遮断装置21Aに遮断を指令する。
S105では、BMU21は電流センサ21Bによって充電電流を計測する。
S106では、BMU21はS105で計測した電流値から電流遮断装置21Aの故障の有無を判断する。具体的には、BMU21は計測した電流値が所定値以上である場合(電流が遮断されていない場合)は電流遮断装置21Aが故障していると判断し、所定値未満である場合(電流が遮断されている場合)は故障していないと判断する。
【0077】
(4)実施形態の効果
実施形態1に係る故障診断方法によると、特許文献1に記載のスイッチ回路のような部品を備えなくてよいので、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断することを、電源システム12の構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。言い換えると、パワーフェイルを抑制しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断することを、電源システム12の構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。実施形態1に係る故障診断方法によると、第1の蓄電装置13が充電されているときに故障診断できる。
【0078】
実施形態1に係る故障診断方法によると、電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給されていることを確認した上で電流遮断装置21Aに遮断を指令するので、パワーフェイルをより抑制できる。
【0079】
実施形態1に係る故障診断方法によると、DC-DCコンバータ14BによってA点の電圧を第1の蓄電装置13の電圧より高くすることにより、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断できる。
【0080】
実施形態1に係る故障診断方法によると、第1の蓄電装置13に流れる充電電流の電流値が所定値以下となるようにDC-DCコンバータ14Bによって電圧を変換するので、第1の蓄電装置13に流れる充電電流を小さくできる。これによりサージ電圧を小さくできる。
【0081】
実施形態1に係る蓄電装置によると、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断することを、電源システム12の構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0082】
<実施形態2>
実施形態2に係る電源システム12の構成は実施形態1に係る電源システム12の構成と実質的に同一である。実施形態2に係るBMU21は第1の蓄電装置13が放電しているときに故障診断処理を実行する。
【0083】
(1)電流遮断装置の故障診断処理
図2を参照して、実施形態2に係る故障診断処理の概略について説明する。BMU21は、車両1が停車中あるいは駐車中のときに、第1の蓄電装置13から第1の電気負荷11に電力供給されなくなった場合は電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給される状態で、第1の蓄電装置13から第1の電気負荷11に電力供給する。
【0084】
具体的には、BMU21はA点の電圧を第1の蓄電装置13の電圧より低く、且つ、第1の電気負荷11の動作電圧以上の電圧に変換するようDC-DCコンバータ14Bに指示する。これによりA点の電圧が第1の蓄電装置13の電圧より低くなる。A点の電圧が第1の蓄電装置13の電圧より低くなると第1の蓄電装置13から第1の電気負荷11に電力供給される(供給ステップの一例)。このため第1の蓄電装置13から放電電流が流れる。
【0085】
ここではDC-DCコンバータ14Bに印加される電圧を第1の蓄電装置13の電圧より低い電圧に変換するよう指示する場合を例に説明したが、第1の蓄電装置13の電圧と同じ電圧に変換するよう指示してもよい。第1の蓄電装置13の電圧とA点の電圧とが同じである場合は第1の蓄電装置13及び電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給される。
【0086】
BMU21は、第1の蓄電装置13から放電電流が流れている状態で電流遮断装置21Aに遮断を指令する(指令ステップ及び指令処理の一例)。電流遮断装置21Aに遮断を指令すると、電流遮断装置21Aが故障していない場合は電流遮断装置21Aが遮断状態になるので放電電流が流れなくなる。BMU21は、放電電流が流れなくなった場合は電流遮断装置21Aが故障していないと判断する(判断ステップ及び判断処理の一例)。電流遮断装置21Aが遮断状態になると第1の蓄電装置13から第1の電気負荷11に電力供給されなくなるが、A点の電圧が第1の電気負荷11の動作電圧以上であることから、第1の蓄電装置13に替わって電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給される。これにより第1の電気負荷11への電力供給が継続される。
【0087】
これに対し、電流遮断装置21Aが故障している場合は通電状態が維持されるので、第1の蓄電装置13から放電電流が流れ続ける。BMU21は、放電電流が流れ続けている場合は電流遮断装置21Aが故障していると判断する(判断ステップ及び判断処理の一例)。
【0088】
第1の蓄電装置13の電圧とDC-DCコンバータ14Bによって変換された電圧との差が大きいと、第1の蓄電装置13に流れる放電電流が大きくなる。放電電流が大きいと、電流遮断装置21Aを遮断状態にしたときに大きなサージ電圧が発生する。このため、DC-DCコンバータ14Bに指示する出力電圧は、第1の蓄電装置13の放電電流の電流値が所定値以下となる電圧であることが望ましい。例えば第1の蓄電装置13の電圧が14.0Vであり、第1の電気負荷11の動作電圧が12.0Vであるとすると、DC-DCコンバータ14Bに指示する出力電圧は14.0Vより0.1V低い13.9V程度であることが望ましい。
【0089】
ここまでの説明ではDC-DCコンバータ14Bに出力電圧を指示するとDC-DCコンバータ14Bによって電圧が変換されると説明したが、DC-DCコンバータ14Bの故障などによってDC-DCコンバータ14Bが電圧を変換できる状態になっていない場合もある。
【0090】
図7を参照して、実施形態2に係る故障診断処理のフローについて説明する。
S201では、BMU21は、第2の蓄電装置14Aから印加される電圧を、第1の蓄電装置13の現在の電圧より低く、且つ、第1の電気負荷11の動作電圧より高い電圧に変換するようDC-DCコンバータ14Bに指示する。
S202では、BMU21はDC-DCコンバータ14Bと通信し、電力供給装置14が電力供給可能な状態であるか否かを判断する(供給判断ステップの一例)。具体的には、BMU21は、第2の蓄電装置14Aから印加された電圧をBMU21から指示された出力電圧に変換できる状態になっているか否かをDC-DCコンバータ14Bに問い合わせる。BMU21は、変換できる状態になっている場合はS203に進み、変換できる状態になっていない場合はパワーフェイルを避けるために本処理を終了する。
【0091】
S203では、BMU21は電流遮断装置21Aに遮断を指令する。
S204では、BMU21は電流センサ21Bによって放電電流を計測する。
S205では、BMU21はS204で計測した電流値から電流遮断装置21Aの故障の有無を判断する。具体的には、BMU21は計測した電流値が所定値以上である場合(電流が遮断されていない場合)は電流遮断装置21Aが故障していると判断し、所定値未満である場合(電流が遮断されている場合)は故障していないと判断する。
【0092】
(2)実施形態の効果
実施形態2に係る故障診断方法によると、特許文献1に記載のスイッチ回路のような部品を備えなくてよいので、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断することを、電源システム12の構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0093】
実施形態2に係る故障診断方法によると、電流遮断装置21Aが遮断状態になって第1の蓄電装置13から第1の電気負荷11に電力供給されなくなった場合は電力供給装置14から第1の電気負荷11に電力供給されることを確認した上で指令ステップを実行するので、パワーフェイルをより確実に抑制できる。
【0094】
実施形態2に係る故障診断方法によると、DC-DCコンバータ14BによってA点の電圧を第1の蓄電装置13の電圧より低くすることにより、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断できる。
【0095】
実施形態2に係る故障診断方法によると、第1の蓄電装置13から流れる放電電流の電流値が所定値以下となるようにDC-DCコンバータ14Bによって電圧を変換するので、第1の蓄電装置13から流れる放電電流を小さくできる。これによりサージ電圧を小さくできる。
【0096】
実施形態2に係る蓄電装置によると、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断することを、電源システム12の構成が複雑になることを抑制しつつ実現できる。
【0097】
<実施形態3>
実施形態3は実施形態1の変形例である。
【0098】
(1)電源システムの構成
図8を参照して、実施形態3に係る電源システム12の構成について説明する。実施形態3に係る車両1はエンジン自動車であり、エンジンを動力源とする発電機302(オルタネータ)を備えている。実施形態3に係る第1の電気負荷11にはセルモータ等のエンジン始動装置も含まれる。
【0099】
実施形態3に係る車両1は、12V系統の第1の電気負荷11とは別に48V系統の第2の電気負荷311を備えている。実施形態3に係る電力供給装置314はDC-DCコンバータ14Bと第2の蓄電装置314Aとを備えている。第2の蓄電装置314Aは定格48Vであり、第1の電気負荷11、第1の蓄電装置13及び第2の電気負荷311に電力供給する。第2の蓄電装置314A及びDC-DCコンバータ14Bは電力供給装置の一例である。
【0100】
(2)電流遮断装置の故障診断処理
実施形態3に係る故障診断処理は第2の蓄電装置314Aによって第1の蓄電装置13が充電されているときに実行される。実施形態3に係る故障診断処理は第2の蓄電装置314Aが48Vである点を除いて実施形態1に係る故障診断処理と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0101】
(3)実施形態の効果
実施形態3に係る故障診断方法によると、DC-DCコンバータ14BによってA点の電圧を第1の蓄電装置13の電圧より高くすることにより、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断できる。
【0102】
<実施形態4>
実施形態4は実施形態1の変形例である。
【0103】
(1)電源システムの構成
図9を参照して、実施形態4に係る電源システム412の構成について説明する。実施形態4に係る車両1もエンジン自動車であり、発電機302(オルタネータ)を備えている。発電機302は電力供給装置の一例である。実施形態4に係る第1の電気負荷11にはセルモータ等のエンジン始動装置も含まれる。
【0104】
(2)電流遮断装置の故障診断処理
実施形態4に係る故障診断処理は車両1が停車中のときに実行される。停車中はエンジンが回転しているので発電機302が発電中である。発電機302が発電しているときは発電機302によって第1の電気負荷11に電力供給されるとともに、発電機302によって第1の蓄電装置13が充電される。第1の蓄電装置13が充電されるので、第1の蓄電装置13には充電電流が流れる。
【0105】
実施形態4に係る故障診断処理を実行するタイミングは発電機302が発電しているときであれば適宜に決定できるが、サージ電圧を小さくするためには発電機302から第1の蓄電装置13に供給される充電電流が小さく安定していることが望ましい。このため、実施形態4に係るBMU21はエンジン自動車が停車中のときに故障診断処理を実行する。
実施形態4に係る故障診断処理はその他の点において実施形態1に係る故障診断処理と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0106】
(3)実施形態の効果
実施形態4に係る故障診断方法によると、発電機302から第1の電気負荷11及び第1の蓄電装置13に電力供給されているときに故障診断を行うことにより、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断できる。
【0107】
実施形態4に係る故障診断方法によると、車両1が停車中のときに供給ステップを実行する。停車中は走行中に比べてエンジン回転数が低い状態で安定するので、第1の蓄電装置13に流れる充電電流が小さく安定する。このためサージ電圧を小さくできる。
【0108】
<実施形態5>
実施形態5は実施形態1の変形例である。
【0109】
(1)電源システムの構成
図10を参照して、実施形態5に係る電源システム512の構成について説明する。実施形態5に係る車両1は電気自動車あるいはプラグインハイブリッド自動車(以下、単に電気自動車という)である。電気自動車は車両駆動源である電気モータ10、電気モータ10に電力供給する高電圧(例えば100V)の第2の蓄電装置14A、図示しない外部電源が接続される充電部501を備えている。充電部501は電力供給装置の一例である。充電部501に外部電源が接続されると外部電源によって第1の蓄電装置13及び第2の蓄電装置14Aが充電される。充電部501に外部電源が接続されているとき、第1の電気負荷11は外部電源から電力供給される。
【0110】
(2)電流遮断装置の故障診断処理
実施形態5に係る故障診断処理は、車両が駐車され、外部電源によって充電されているときに実行される。駐車とは、車両1が停止し、且つ、エンジンが停止している状態のことをいう。
【0111】
外部電源から第1の蓄電装置13に電力供給されるので、第1の蓄電装置13には充電電流が流れる。実施形態5に係る故障診断処理を実行するタイミングは、車両1が駐車され、且つ、外部電源によって電力供給されているときであれば適宜に決定できる。
実施形態5に係る故障診断処理はその他の点において実施形態1に係る故障診断処理と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0112】
(3)実施形態の効果
実施形態5に係る故障診断方法によると、充電部501に外部電源が接続されているときに故障診断を行うことにより、第1の電気負荷11への電力供給を継続しつつ電流遮断装置21Aの故障を診断できる。
【0113】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0114】
(1)上記実施形態1では車両1として電気自動車を例に説明したが、車両1はプラグインハイブリッド自動車であってもよい。プラグインハイブリッド自動車が備える第1の蓄電装置13は、走行中は比較的大きく不安定な放電電流が流れる上、回生電流によって大きな充電電流が流れる。駐車中は実施形態5のように外部電源によって充電される。このため小さく安定した放電がなされる場面が比較的少ない。上記実施形態1では第1の蓄電装置13が充電されているときに故障診断を行うので、放電する場面が比較的少ないプラグインハイブリッド自動車の場合に特に有用である。
【0115】
(2)上記実施形態1では、第2の蓄電装置14Aから第1の電気負荷11に電力供給されているか否かを判断しているが(S103)、第2の蓄電装置14Aから第1の電気負荷11に電力供給されることが確実である場合は、S103の判断は必ずしも行わなくてよい。
【0116】
(3)上記実施形態2では、電力供給装置14が電力供給可能な状態であるか否かを判断しているが(S202)、電力供給装置14が電力供給可能な状態であることが確実である場合は、S202の判断は必ずしも行わなくてもよい。
【0117】
(4)上記実施形態3は実施形態1の変形例として説明したが、実施形態2の変形例であってもよい。具体的には、実施形態3において、第1の蓄電装置13が放電しているときに故障診断処理を実行してもよい。
【0118】
(5)上記実施形態4では第1の電気負荷11と発電機302との間にDC-DCコンバータ14Bが接続されていない場合を例に説明したが、DC-DCコンバータ14Bが接続されていてもよい。その場合、実施形態2と同様に、第1の蓄電装置13が放電しているときに故障診断処理を実行してもよい。
【0119】
(6)上記実施形態5では第1の電気負荷11と充電部501との間にDC-DCコンバータ14Bが接続されていない場合を例に説明したが、DC-DCコンバータ14Bが接続されていてもよい。その場合、実施形態2と同様に、第1の蓄電装置13が放電しているときに故障診断処理を実行してもよい。
【0120】
(7)上記実施形態では蓄電装置が複数の二次電池20A(蓄電素子)を備えている場合を例に説明したが、二次電池20Aは1つだけでもよい。
【0121】
(8)上記実施形態では二次電池20A、電流遮断装置21A及びBMU21が第1の蓄電装置13の収容体71に収容されている場合を例に説明したが、収容体71には少なくとも二次電池20Aが収容されていればよく、電流遮断装置21AやBMU21は収容体71の外部に設けられていてもよい。
【0122】
(9)上記実施形態では蓄電素子として二次電池20Aを例に説明したが、蓄電素子は電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
【0123】
(10)上記実施形態では車両1としてエンジン自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車などを例に説明したが、車両1はこれらに限定されない。例えば、車両1は電気モータで走行するフォークリフトや無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などであってもよい。
上記実施形態では移動体として車両1を例に説明したが、移動体は車両に限られない。例えば飛行体や電車、自動二輪車など、パワーフェイルにより課題が生じるものであれば他の移動体であってもよい。
【0124】
(11)上記実施形態では電源システムとして移動体の電源システムを例に説明したが、電源システムは移動体に電力を供給するものに限られない。電源システムは、パワーフェイルにより課題が生じる装置であれば移動体以外の装置(医療機器など)に電力を供給するものであってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 車両(移動体、電気自動車、エンジン自動車の一例)
10 電気モータ
11 第1の電気負荷
12 電源システム
13 第1の蓄電装置
14 電力供給装置
14A 第2の蓄電装置
14B DC-DCコンバータ(電圧変換器の一例)
20A 二次電池
21A 電流遮断装置
21B 電流センサ
21E 管理部
302 発電機(電力供給装置の一例)
311 第2の電気負荷
314 電力供給装置
314A 第2の蓄電装置
412 電源システム
501 充電部(電力供給装置の一例)
512 電源システム