IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コピー牽制印刷物 図1
  • 特許-コピー牽制印刷物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】コピー牽制印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20241210BHJP
   G03G 21/04 20060101ALI20241210BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20241210BHJP
【FI】
B41M3/14
G03G21/04
B42D25/30 100
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020078401
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172032
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小川 稔
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-020063(JP,A)
【文献】特開平08-244389(JP,A)
【文献】特開平06-247089(JP,A)
【文献】特開2004-098557(JP,A)
【文献】特開2019-022952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
G03G 21/04
B42D 15/02
25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像とその背景とを毛抜き合わせで印刷形成した印刷物であって、コピーすることにより前記潜像が可視化するコピー牽制印刷物において、
前記潜像が多数の線によって構成されており、
この潜像を構成する線が微細なドットを配置して構成されており、その線の中央領域で濃度が高く、その線の周縁に近づくにつれて低くなることを特徴とするコピー牽制印刷物。
【請求項2】
前記ドットの径が一定であり、このドットが占める面積で濃度を表現していることを特徴とする請求項1に記載のコピー牽制印刷物。
【請求項3】
前記中央領域においてドットが占める面積が、前記中央領域の両側に位置する周縁領域においてドットが占める面積より5%以上大きいことを特徴とする請求項2に記載のコピー牽制印刷物。
【請求項4】
微細な前記ドットの径が0.05mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコピー牽制印刷物。
【請求項5】
前記背景が多数の線によって構成されており、この背景を構成する線が濃度変化のない線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコピー牽制印刷物。
【請求項6】
潜像を構成する前記線の幅が背景を構成する前記線の2~10倍であることを特徴とする請求項5に記載のコピー牽制印刷物。
【請求項7】
背景を構成する前記線のピッチが0.25~1.00mmであることを特徴とする請求項5又は6に記載のコピー牽制印刷物。
【請求項8】
前記中央領域でドットの占める面積が12~20%、前記周縁領域でドットの占める面積が1~10%であることを特徴とする請求項3に記載のコピー牽制印刷物。
【請求項9】
背景を構成する前記線と潜像を構成する前記線とが連続して一本の線を構成していることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載のコピー牽制印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコピー牽制印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー牽制印刷物は、一般に、潜像とその背景とを毛抜き合わせで印刷形成して構成される。この印刷物においては、潜像をその背景から区別して認識することは困難である。しかしながら、この印刷物をコピーすると、潜像が可視化し、この潜像を背景から区別して認識することが容易となる。このため、印刷物をコピーして贋造する行為を牽制することができ、例えば、経済的価値のある債券や各種証明書に利用されている。
【0003】
このようなコピー牽制印刷物としては多種類が知られており、例えば、特許文献1~5はいずれもコピー牽制印刷物に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5957861号公報
【文献】特開平6-262893号公報
【文献】特開平6-199085号公報
【文献】実開平6-71156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにコピー牽制印刷物に関する研究や開発は日夜続けられているが、その一方、コピー技術も進歩しており、また、多様化している。このため、特定のコピー機によるコピーを防ぐことはできても、別種のコピー機によるコピーが防止できないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、種々のコピー機によるコピーを牽制できるコピー牽制印刷物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、潜像とその背景とを毛抜き合わせで印刷形成した印刷物であって、コピーすることにより前記潜像が可視化するコピー牽制印刷物において、
前記潜像が多数の線によって構成されており、
この潜像を構成する線が微細なドットを配置して構成されており、その線の中央領域で濃度が高く、その線の周縁に近づくにつれて低くなることを特徴とするコピー牽制印刷物である。
【0008】
次に、請求項2に記載の発明は、前記ドットの径が一定であり、このドットが占める面積で濃度を表現していることを特徴とする請求項1に記載のコピー牽制印刷物である。
【0009】
次に、請求項3に記載の発明は、前記中央領域においてドットが占める面積が、前記中央領域の両側に位置する周縁領域においてドットが占める面積より5%以上大きいことを特徴とする請求項2に記載のコピー牽制印刷物である。
【0010】
次に、請求項4に記載の発明は、微細な前記ドットの径が0.05mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコピー牽制印刷物である。
【0011】
次に、請求項5に記載の発明は、前記背景が多数の線によって構成されており、この背景を構成する線が濃度変化のない線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコピー牽制印刷物である。
【0012】
次に、請求項6に記載の発明は、潜像を構成する前記線の幅が背景を構成する前記線の2~10倍であることを特徴とする請求項5に記載のコピー牽制印刷物である。
【0013】
次に、請求項7に記載の発明は、背景を構成する前記線のピッチが0.25~1.00mmであることを特徴とする請求項5又は6に記載のコピー牽制印刷物である。
【0014】
次に、請求項8に記載の発明は、中央領域でドットの占める面積が12~20%、周縁領域でドットの占める面積が1~10%であることを特徴とする請求項3に記載のコピー牽制印刷物である。
【0015】
次に、請求項9に記載の発明は、背景を構成する前記線と潜像を構成する前記線とが連続して一本の線を構成していることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載のコピー牽制印刷物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコピー牽制印刷物は、微細なドットを配置して構成されており、その線の中央領域で濃度が高く、その線の周縁に近づくにつれて低くなるように構成されている。前述のように多様なコピー機が存在するが、いずれのコピー機においても、濃度の高い中央領域と濃度の低い周縁領域との間に、コピーできない領域が存在し、この領域より周縁に近い部位ではコピーすることができない。このため、このコピー牽制印刷物をコピーしたとき、潜像の濃度が低下する。一方、背景はその濃度が低下することなくコピーされるため、コピーされた潜像と背景との間のコントラストが高くなり、容易に潜像を認識することができる。そして、このため、コピーによる贋造を強く牽制できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の具体例に係り、図1(a)はその説明図、図1(b)はコピーの説明図である。
図2図2は本発明の具体例の潜像及び背景の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。図1(a)は、本発明の具体例に係るコピー牽制印刷物の説明図である。
【0019】
図1(a)から分かるように、このコピー牽制印刷物100は、潜像10と背景20とを印刷形成したものである。この例では、潜像10は「コピー」の文字である。そして、この潜像10と背景20とは、その間に隙間を開けることなく、毛抜き合わせで配置されている。また、潜像10の濃度と背景20の濃度とは略等しく構成されている。このように濃度が略等しい潜像10と背景20とが両者の間に隙間を開けることなく、すなわち、抜き合わせで配置されているため、肉眼観察によって両者を区別して潜像10を認識することは困難である。
【0020】
潜像10は多数の線を配列して構成されており、線と線との間には印刷のない空白部が存在する。また、背景20も多数の線を配列して構成されており、線と線との間には印刷のない空白部が存在する。このように潜像10と背景20とは、いずれも、空白部を挟んで配列した多数の線によって構成されているが、潜像10を構成する線と背景を構成する線とは異なるタイプの線であり、コピーすることによって背景を構成する線はそのまま再現されるが、潜像を構成する線は変化する。図1(b)はコピーして得られた複写物を示しており、このように、潜像10の濃度が低下し、潜像10と背景20との間にはっきりしたコントラストがあらわれる。
【0021】
図2に示すように、潜像10を構成する線11は、同一径の微細なドットをランダムに配置して構成されたもので、このドットの占める面積で濃度を表現している。このような濃度表現方法は、印刷業界でFM(Frequency Modulation)スクリーン法と呼ばれるもので、周知の濃度表現方法である。
【0022】
そして、この潜像10を構成する線11は、その線11の中央領域でドットの占める面積が高く、その線の周縁に近づくにつれて低くなるように構成されている。このため、その濃度も中央領域で高く、その線の周縁に近づくにつれて低くなる。このように濃度の高い領域と低い領域の双方で潜像10を構成する線11を構成しているから、潜像10の濃度を背景20の濃度と略等しく構成して肉眼観察による潜像10の認識を困難とすることができる。他方、ドットの占める面積(すなわち、濃度)は中央領域で高く、周縁に近づくにつれて低くなるように構成されており、いずれのコピー機を使用した場合にも中央領域と周縁との間にコピーできない領域が存在するから、コピーによる潜像10の可視化を可能として、贋造を牽制できる。
【0023】
この例では、中央領域11とこの中央領域11の両側に配置されたと周縁領域11とで潜像10を構成する線11を構成している。このように中央領域11とこの中央領域11の両側に配置されたと周縁領域11とで構成した場合には、周縁領域11におけるドットの占める面積を1~10%(好ましくは3~6%)、中央領域11におけるドットの占める面積を12~20%(好ましくは12~16%)とすることが望ましい。周縁領域11におけるドットの占める面積がこの範囲より大きいとドットの濃度が全体的に上がってしまう為、ドットが消えにくくなる。周縁領域11におけるドットの占める面積がこの範囲より小さい場合、後述の線幅b0が狭い場合ドットの濃度が全体的に薄くなってしまう。中央領域11におけるドットの占める面積がこの範囲より大きいとドットの濃度が全体的に上がってしまう為、ドットが消えにくくなる。中央領域11におけるドットの占める面積がこの範囲より小さいと濃度が薄くなりすぎてしまい、線21とのバランスが取れなくなる
【0024】
なお、これら中央領域11と周縁領域11との間に中間領域を配置することも可能である。中央領域11と周縁領域11との間に中間領域を配置する場合には、中間領域におけるドットの占める面積は、中央領域11におけるドットの占める面積と周縁領域11におけるドットの占める面積との間である必要がある。もちろん、その濃度も中央領域でもっとも高く、次に中間領域で高く、周縁領域11で低い。中間領域は複数設けてもよい。
【0025】
この潜像10を構成する線を構成するドットは、その径が大き過ぎると、コピーによってそのまま再現されることがある。また、小さすぎると十分な濃度を出すことが難しくなる。これを避けるため、径が0.005~0.1mm、好ましくは0.05mm以下のドットを使用することが望ましい。なお、150線/inchのスクリーンでは、その網点の径が0.032~0.042mmである。また、211線/inchのスクリーンでは、その網点の径が0.02~0.03mmである。このように150線/inchのスクリーンや211線/inchのスクリーンを使用して製版することにより、潜像10を構成する線11を印刷することが可能である。なお、ドットの形状は丸形状、楕円形上、多角形状などを用いることができる。この場合、網点の径は最大径を用いる。
【0026】
ところで、このように中央領域11と周縁領域11とで濃度が異なる線11と異なり、背景を構成する線21は、濃度変化のない一様な濃度に印刷形成された線である。このため、コピーによってその濃度が低下することなく再現することができる。
【0027】
以上のように、潜像10と背景20とは、いずれも、多数の線(潜像10を構成する線11及び背景20を構成する線21)によって構成されているが、肉眼観察による潜像10の認識を困難とするため、これら潜像10を構成する線11と背景20を構成する線21とが連続して一本の線を構成していることが望ましい。すなわち、一本の線が背景20の中では濃度変化のない線21であり、この線を延長して潜像10の中に入ったときには、ドットを配置して構成した線11となるのである。なお、この例では、潜像10を構成する線11及び背景20を構成する線21はいずれも直線状であるが、これに限らず、曲線状であってもよい。
【0028】
そして、このよう潜像10を構成する線11と背景20を構成する線21とが連続して一本の線を構成しているため、背景20を構成する線21とその間の空白部22とで構成されるピッチaは、潜像10を構成する線11とその間の空白部22とで構成されるピッチに等しい。このピッチaとしては、0.25~1mmが望ましい。ピッチaがこの範囲より大きいと線どうしの間隔が広くなり、文字が構成しにくくなる(文字にならなくなる)。ピッチaがこの範囲より小さいと線同士の間隔が狭くなるので、コピー時に潰れてしまう可能性が大きくなる。
【0029】
ところで、潜像10の濃度と背景20の濃度とは略等しくして潜像10の認識を困難とするため、潜像10を構成する線11の幅b0を背景20を構成する線21の幅cの2~10倍とすることが望ましい。背景20を構成する線21の幅cは、例えば、0.025~0.2mmである。線幅cがこの範囲より大きいとコピー後に残りやすいが、ドットもその太さに従って濃度を上げなければならないので、ドットが消えにくくなる。線幅cがこの範囲より小さいとコピー後に消えてしまう。また、潜像10を構成する線11の幅b0は例えば0.15~0.95mmである。線幅b0がこの範囲より大きいとドット同士の間にある白抜き部分が狭くなり消えにくくなってしまう。線幅b0がこの範囲より小さいとドットのぼかしが十分に出来ないので、消えにくくなってしまう。
【0030】
また、潜像10の認識を困難とすると共にコピーしたとき潜像10を可視化するため、中央領域11の幅b1を0.0025~0.5mm(好ましくは0.01~0.1mm)、潜像10を構成する線11同士の間の空白部の幅b3を0.0125~0.6mmとすることが望ましい。線幅b1がこの範囲より大きいとドットの濃度が全体的に上がってしまう為、ドットが消えにくくなる。線幅b1がこの範囲より小さいとコピーする前の状態において、線21との濃度差が視認され、潜像がみえてしまう可能性が高まる。空白部の幅b3がこの範囲より大きいとb0の幅が大きくなりすぎ、この範囲より小さいとb0の幅が小さくなりすぎてしまう。
【実施例
【0031】
コピー牽制印刷物100として、図1の図柄の印刷物を表1に記載した30種類の条件(例1~例30)で作成した。なお、潜像10を構成する線11を構成するドットの径を0.032~0.042mmとした。
【0032】
得られた例1~例30のコピー牽制印刷物100について、コピー前の潜像の視認性とコピー後の潜像の視認性を評価した。用いたコピー機はCanon社製C5255R、RICOH社製MPC6502、京セラ社製3050ci、SHARP社製 MX3610DS、FUJI XEROX社製マルチコピー機の5つを用いた。またコピー条件はカラーコピー(通常モード、写真モード、地図モード)の3つをおこなった。コピー後の視認性は各々の例について、前述の5つのコピー機、3つのモードでコピーをした計15枚について目視で評価をした。コピー前の潜像の視認性の評価とコピー後の潜像の視認性の評価(各々の例の15枚のコピーの総合的な評価)を表1に記載する。
【0033】
【表1】
【0034】
いずれの例もコピー前には潜像が見えなく、コピー後には潜像を視認できるものとなった。中でも例1~14はコピー前の潜像の隠ぺい性とコピー後の潜像の視認性のバランスが良いものとなり、特に例4、7が優れるものとなった。
【0035】
以上、下地が無地であることを前提として本発明を説明したが、下地が着色されていてもよいことはもちろんである。この場合には、コピーしたとき、潜像10の一部がコピーされず、潜像の濃度が低下すため、この潜像10が背景20とは異なる色彩に見える。このため、コピーを牽制することが可能である。
【0036】
また、下地として細紋模様等が印刷されていてもよい。この場合にも、コピーによって、潜像10が背景20とは異なるように見える。このため、下地が無地である場合や着色されている場合と同様に、コピーを強く牽制することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
100: コピー牽制印刷物
10:潜像
11:潜像を構成する線 11:中央領域 11:周縁領域
12:空白部
20:背景
21:背景を構成する線
22:空白部
a:背景を構成する線のピッチ
b0:潜像10を構成する線の幅 b1:中央領域の幅 b3:空白部の幅
c:背景を構成する線の幅
図1
図2