(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G01S 15/08 20060101AFI20241210BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20241210BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241210BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20241210BHJP
【FI】
G01S15/08
G01S15/931
G08G1/16 C
B60R99/00 322
(21)【出願番号】P 2020102610
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】脇田 幸典
(72)【発明者】
【氏名】井奈波 恒
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-191876(JP,A)
【文献】特開2014-074665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0118213(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0018592(US,A1)
【文献】国際公開第2020/105166(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/083787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波の送信と、対象での反射に応じて戻ってきた前記送信波としての受信波の受信と、の結果に基づいて検出される前記対象までの距離と、当該距離の検出に用いられる前記受信波の受信レベルと、を取得する取得処理部と、
前記取得処理部により取得される前記距離と前記受信レベルとの関係性に基づいて、前記対象の高さに関する情報を検出する検出処理部と、
を備え
、
前記検出処理部は、前記距離が小さくなることに応じて前記受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたときの前記受信レベルに応じて、前記高さに関する情報として、前記高さを示す値を検出する、
運転支援装置。
【請求項2】
前記取得処理部により取得される前記距離は、複数の送信波の実質的に同時な送信と、前記対象での反射に応じて戻ってきた前記複数の送信波としての複数の受信波の受信と、の結果に基づいて検出される前記対象までの複数の距離を含むとともに、前記取得処理部により取得される前記受信レベルは、前記複数の距離の検出にそれぞれ用いられる前記複数の受信波の複数の受信レベルを含み、
前記検出処理部は、前記変動の度合として、前記複数の受信レベルの前記距離ごとの平均値に対するばらつきを用いる、
請求項
1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記検出処理部は、前記取得処理部により取得される前記距離と前記受信レベルとの前記関係性と、当該関係性に関して予め設定された設定情報と、に基づいて、前記高さに関する情報を検出する、
請求項1
または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記設定情報は、前記高さを示す値に応じて予め設定された前記距離と前記受信レベルとの所定の関係性を含み、
前記検出処理部は、前記取得処理部により取得される前記距離と前記受信レベルとの前記関係性と、前記所定の関係性と、の比較結果に応じて、前記高さに関する情報を検出する、
請求項
3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記所定の関係性は、前記高さを示す値が互いに異なる複数の範囲にそれぞれ属している場合に対応して予め設定された複数の関係性を含み、
前記検出処理部は、前記取得処理部により取得される前記距離と前記受信レベルとの前記関係性と、前記複数の関係性と、の比較結果に応じて、前記高さを示す値が前記複数の範囲内のいずれに属しているかを検出する、
請求項
4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記取得処理部により取得される前記距離は、複数の送信波の実質的に同時な送信と、前記対象での反射に応じて戻ってきた前記複数の送信波としての複数の受信波の受信と、の結果に基づいて検出される前記対象までの複数の距離を含むとともに、前記取得処理部により取得される前記受信レベルは、前記複数の距離の検出にそれぞれ用いられる前記複数の受信波の複数の受信レベルを含む、
請求項
3~
5のうちいずれか1項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲に存在する対象の高さに関する情報を検出する技術について検討されている。このような技術として、たとえば、車両の異なる高さ位置に複数の超音波センサを設置し、当該複数の超音波センサにより超音波を送受信することで、対象の高さに関する情報を検出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の技術は、車両の異なる高さ位置に複数の超音波センサを設置することを必要とするため、車両の設計の自由度が制限されることがある。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、車両の設計の自由度を損なうことなく対象の高さに関する情報を検出することが可能な運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例としての運転支援装置は、送信波の送信と、対象での反射に応じて戻ってきた送信波としての受信波の受信と、の結果に基づいて検出される対象までの距離と、当該距離の検出に用いられる受信波の受信レベルと、を取得する取得処理部と、取得処理部により取得される距離と受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さに関する情報を検出する検出処理部と、を備える。この場合において、検出処理部は、距離が小さくなることに応じて受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたときの受信レベルに応じて、高さに関する情報として、高さを示す値を検出する。
【0007】
上記のような構成によれば、送信波および受信波を送受信する位置によらず、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さに関する情報を検出することができる。これにより、車両の設計の自由度を損なうことなく対象の高さに関する情報を検出することができる。
【0008】
また、このような構成によれば、受信レベルの変動の度合に基づいて、高さに関する情報を容易に検出することができる。
【0009】
さらに、このような構成によれば、受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたときの受信レベルを特定するだけで、高さを示す値を容易に検出することができる。
【0010】
また、受信レベルの変動の度合を用いて高さに関する情報を検出する上述した構成において、取得処理部により取得される距離は、複数の送信波の実質的に同時な送信と、対象での反射に応じて戻ってきた複数の送信波としての複数の受信波の受信と、の結果に基づいて検出される対象までの複数の距離を含むとともに、取得処理部により取得される受信レベルは、複数の距離の検出にそれぞれ用いられる複数の受信波の複数の受信レベルを含み、検出処理部は、変動の度合として、複数の受信レベルの距離ごとの平均値に対するばらつきを用いる。このような構成によれば、得られる検出結果の数を増やすことで、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性をより詳細に得ることができる。これにより、高さに関する情報の検出の精度を高めることができる。また、受信レベルのばらつきを容易に算出することができる。
【0011】
上述した運転支援装置において、検出処理部は、取得処理部により取得される距離と受信レベルとの関係性と、当該関係性に関して予め設定された設定情報と、に基づいて、高さに関する情報を検出する。このような構成によれば、取得処理部により取得される距離と受信レベルとの関係性と設定情報とを用いて高さに関する情報を容易に検出することができる。
【0012】
この場合において、設定情報は、高さを示す値に応じて予め設定された距離と受信レベルとの所定の関係性を含み、検出処理部は、取得処理部により取得される距離と受信レベルとの関係性と、所定の関係性と、の比較結果に応じて、高さに関する情報を検出する。このような構成によれば、取得処理部により取得される距離と受信レベルとの関係性と所定の関係性とを比較するだけで、高さに関する情報を容易に検出することができる。
【0013】
また、この場合において、所定の関係性は、高さを示す値が互いに異なる複数の範囲にそれぞれ属している場合に対応して予め設定された複数の関係性を含み、検出処理部は、取得処理部により取得される距離と受信レベルとの関係性と、複数の関係性と、の比較結果に応じて、高さを示す値が複数の範囲内のいずれに属しているかを検出する。このような構成によれば、高さを示す値が複数の範囲内のいずれに属しているかを特定することで、高さに関する情報をより詳細に検出することができる。
【0014】
また、距離および受信レベルの関係性と設定情報とに基づいて高さに関する情報を検出する上述した構成において、取得処理部により取得される距離は、複数の送信波の実質的に同時な送信と、対象での反射に応じて戻ってきた複数の送信波としての複数の受信波の受信と、の結果に基づいて検出される対象までの複数の距離を含むとともに、取得処理部により取得される受信レベルは、複数の距離の検出にそれぞれ用いられる複数の受信波の複数の受信レベルを含む。このような構成によれば、得られる検出結果の数を増やすことで、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性をより詳細に得ることができる。これにより、高さに関する情報の検出の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる運転支援システムを備えた車両を上方から見た外観を示した例示的かつ模式的な図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかる運転支援システムを構成するECU(Electronic Control Unit)および距離検出装置の概略的なハードウェア構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態において対象までの距離を検出するために利用される技術の概要を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態において対象の高さに関する情報の高さを検出するために着目すべき特徴を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかる運転支援装置の機能を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態にかかる対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性を示した例示的かつ模式的な図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態において対象の高さに関する情報の検出のために実行される処理の一例を示した例示的なフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態において対象の高さに関する情報の検出に用いられる方法の概要を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態にかかる設定情報を示すマップ(テーブル)の一例を示した例示的かつ模式的な図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態において対象の高さに関する情報の検出のために実行される処理の一例を示した例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態および変形例を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態にかかる物体検出システムを備えた車両1を上方から見た外観を示した例示的かつ模式的な図である。
【0018】
以下に説明するように、第1実施形態にかかる運転支援システムは、車両1の周囲に存在する対象(たとえば後述する
図2に示される障害物O)に関する情報を検知する車載センサシステム(車載ソナー)を用いて車両1の運転支援を実行するシステムである。
【0019】
より具体的に、
図1に示されるように、実施形態にかかる運転支援システムは、車載制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、車載ソナーとしての距離検出装置201~204と、を備えている。ECU100は、一対の前輪3Fと一対の後輪3Rとを含んだ四輪の車両1の内部に搭載されており、距離検出装置201~204は、車両1の外装に搭載されている。
【0020】
図1に示される例では、一例として、距離検出装置201~204が、車両1の外装としての車体2の後端部(リヤバンパ)において、車両1の幅方向に沿って互いに異なる位置に設置されている。しかしながら、距離検出装置201~204の設置位置は、
図1に示される例に制限されるものではない。たとえば、距離検出装置201~204は、車体2の前端部(フロントバンパ)に設置されてもよいし、車体2の側面部に設置されてもよいし、後端部、前端部、および側面部のうち2つ以上に設置されてもよい。
【0021】
なお、実施形態において、距離検出装置201~204が有するハードウェア構成および機能は、それぞれ同一である。したがって、以下では、簡単化のため、距離検出装置201~204を総称して物体検出装置200と記載することがある。また、実施形態において、物体検出装置200の個数は、
図1に示されるような4つに制限されるものではない。
【0022】
図2は、第1実施形態にかかる運転支援システムを構成するECU100および物体検出装置200のハードウェア構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【0023】
図2に示されるように、ECU100は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。より具体的に、ECU100は、入出力装置110と、記憶装置120と、プロセッサ130と、を備えている。
【0024】
入出力装置110は、ECU100と外部(
図1に示される例では物体検出装置200)との間における情報の送受信を実現するためのインターフェースである。
【0025】
記憶装置120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などといった主記憶装置、および/または、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などといった補助記憶装置を含んでいる。
【0026】
プロセッサ130は、ECU100において実行される各種の処理を司る。プロセッサ130は、たとえばCPU(Central Processing Unit)などといった演算装置を含んでいる。プロセッサ130は、記憶装置120に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、たとえば自動駐車などといった各種の機能を実現する。
【0027】
また、
図2に示されるように、物体検出装置200は、送受波器210と、制御部220と、を備えている。
【0028】
送受波器210は、圧電素子などにより構成された振動子211を有しており、当該振動子211により、超音波の送受信を実行する。
【0029】
より具体的に、送受波器210は、振動子211の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波として送信された超音波が車両1の周囲に存在する対象で反射されて戻ってくることでもたらされる振動子211の振動を受信波として受信する。
図2に示される例では、送受波器210からの超音波を反射する対象として、路面RS上に設置された障害物Oが例示されている。
【0030】
なお、
図2に示される例では、送信波の送信と受信波の受信との両方が単一の振動子211を有した単一の送受波器210により実現される構成が例示されている。しかしながら、実施形態の技術は、たとえば、送信波の送信用の第1の振動子と受信波の受信用の第2の振動子とが別々に設けられた構成のような、送信側の構成と受信側の構成とが分離された構成にも適用可能である。
【0031】
制御部220は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。より具体的に、制御部220は、入出力装置221と、記憶装置222と、プロセッサ223と、を備えている。
【0032】
入出力装置221は、制御部220と外部(
図1に示される例ではECU100および送受波器210)との間における情報の送受信を実現するためのインターフェースである。
【0033】
記憶装置222は、ROMおよびRAMなどといった主記憶装置、およびHDDまたはSSDなどといった補助記憶装置を含んでいる。
【0034】
プロセッサ223は、制御部220において実行される各種の処理を司る。プロセッサ223は、たとえばCPUなどといった演算装置を含んでいる。プロセッサ223は、記憶装置333に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、各種の機能を実現する。
【0035】
ここで、実施形態にかかる物体検出装置200は、いわゆるTOF(Time Of Flight)法と呼ばれる技術により、対象までの距離を検出する。以下に詳述するように、TOF法とは、送信波が送信された(より具体的には送信され始めた)タイミングと、受信波が受信された(より具体的には受信され始めた)タイミングとの差に基づいて、対象までの距離を算出する技術である。
【0036】
図3は、第1実施形態において対象までの距離を検出するために利用される技術の概要を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【0037】
より具体的に、
図3は、第1実施形態にかかる物体検出装置200が送受信する超音波の信号レベル(たとえば振幅)の時間変化をグラフ形式で例示的かつ模式的に示した図である。
図3に示されるグラフにおいて、横軸は、時間に対応し、縦軸は、物体検出装置200が送受波器210(振動子211)を介して送受信する信号の信号レベルに対応する。
【0038】
図3に示されるグラフにおいて、実線L11は、物体検出装置200が送受信する信号の信号レベル、つまり振動子211の振動の度合の時間変化を表す包絡線の一例を表している。この実線L11からは、振動子211がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間は、慣性による振動子211の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。したがって、
図3に示されるグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0039】
実線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子211の振動の度合が、一点鎖線L21で表される所定の閾値Th1を超える(または以上になる)ピークを迎える。この閾値Th1は、振動子211の振動が、検知対象の物体(たとえば
図2に示される障害物O)により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものか、または、検体対象外の物体(たとえば
図2に示される路面RS)により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものか、を識別するために予め設定された値である。
【0040】
なお、
図3には、閾値Th1が時間経過によらず変化しない一定値として設定された例が示されているが、実施形態において、閾値Th1は、時間経過とともに変化する値として設定されてもよい。
【0041】
ここで、閾値Th1を超えた(または以上の)ピークを有する振動は、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。一方、閾値Th1以下の(または未満の)ピークを有する振動は、検知対象外の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。
【0042】
したがって、実線L11からは、タイミングt4における振動子211の振動が、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものである、ということが読み取れる。
【0043】
なお、実線L11においては、タイミングt4以降で、振動子211の振動が減衰している。したがって、タイミングt4は、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が受信波として戻ってくるタイミング、に対応する。
【0044】
また、実線L11においては、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が受信波として戻ってくるタイミング、に対応する。したがって、実線L11においては、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTが、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0045】
上記を踏まえて、TOF法により検知対象の物体までの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と、受信波が受信され始めたタイミングt3と、の間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と、受信波の信号レベルが閾値Th1を超えたピークを迎えるタイミングt4と、の差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0046】
送信波が送信され始めたタイミングt0は、物体検出装置200が動作を開始したタイミングとして容易に特定することができ、送信波の送信時間としての時間Taは、設定などによって予め決められている。したがって、TOF法により検知対象の物体までの距離を求めるためには、結局のところ、受信波の信号レベルが閾値Th1を超えたピークを迎えるタイミングt4を特定することが重要となる。
【0047】
ところで、従来、車両1の周囲に存在する対象までの距離のみならず、当該対象の高さに関する情報を検出する技術について検討されている。このような技術として、たとえば、車両1の異なる高さ位置に複数の超音波センサを設置し、当該複数の超音波センサにより超音波を送受信することで、対象の高さに関する情報を検出する技術が知られている。
【0048】
しかしながら、上記のような従来の技術は、車両1の異なる高さ位置に複数の超音波センサを設置することを必要とするため、車両1の設計の自由度が制限される。
【0049】
そこで、実施形態は、以下に説明するような特徴に着目することで、車両の設計の自由度を損なうことなく対象の高さに関する情報を検出することを実現する。
【0050】
図4は、第1実施形態において対象の高さに関する情報を検出するために着目すべき特徴を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【0051】
図4には、高さHに設置された物体検出装置200と高さh(<H)を有する対象400(障害物O)との間に構成されうる超音波の送受信の経路の例が2つ例示されている。なお、
図4に示される例において、ハッチングが付された範囲Rは、物体検出装置200により送受信される超音波の指向性の範囲に対応する。
【0052】
図4に示されるように、物体検出装置200と対象400との間で送受信される超音波の飛行距離は、対象400での反射が発生する位置に応じて変化する。たとえば、
図4に示される例では、物体検出装置200から矢印A411に沿って対象400に飛行した後、当該対象400での反射を経て矢印A412に沿って物体検出装置200に戻る経路の長さと、物体検出装置200から矢印A421に沿って対象400に飛行した後、当該対象400での反射を経て矢印A422に沿って物体検出装置200に戻る経路の長さとは、互いに異なっている。
【0053】
ここで、物体検出装置200と対象400との間に構成される複数の経路の長さは、物体検出装置200と対象400との間の距離に依存するため、物体検出装置200と対象400とが十分に離れている場合は、物体検出装置200と対象400との間に構成される複数の経路間の長さの差を無視することができる。したがって、この場合、物体検出装置200と対象400との間の距離と、対象400での反射を経て物体検出装置200に戻ってくる受信波の信号レベルとしての受信レベルと、の関係性は、複数の経路間で実質的に等しくなる。なお、図示は省略するが、対象400の高さhが物体検出装置200の高さHよりも大きい状況においても、同様の関係性が得られる。
【0054】
しかしながら、物体検出装置200と対象400とがある程度接近した場合は、物体検出装置200と対象400との間に構成される複数の経路間の長さの差を無視することができない。したがって、この場合、物体検出装置200と対象400との間の距離と、対象400での反射を経て物体検出装置200に戻ってくる受信波の信号レベルとしての受信レベルと、の関係性は、複数の経路間でばらつくことになる。なお、図示は省略するが、対象400の高さhが物体検出装置200の高さHよりも大きい状況においても、同様の関係性が得られる。
【0055】
ここで、
図4に示されるように、対象400の高さhが物体検出装置200の高さHよりも小さい状況では、物体検出装置200と対象400とが一定以上接近すると、それに応じて対象400が超音波の指向性の範囲Rから外れていく。したがって、この場合、対象400での反射を経て物体検出装置200に戻ってくる受信波の信号レベルとしての受信レベルは徐々に小さくなっていく。
【0056】
一方、図示は省略するが、対象400の高さhが物体検出装置200の高さHよりも大きい状況では、物体検出装置200と対象400とが一定以上接近しても、それに応じて対象400が超音波の指向性の範囲Rから外れることがない。したがって、この場合、対象400での反射を経て物体検出装置200に戻ってくる受信波の信号レベルとしての受信レベルは徐々に大きくなっていく。
【0057】
上記のような特徴を踏まえて、第1実施形態は、次の
図5に示されるような運転支援装置500をECU100により実現することで、車両1の周囲に存在する対象の高さを検出する。
【0058】
図5は、第1実施形態にかかる運転支援装置500の機能を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【0059】
図5に示されるように、第1実施形態にかかる運転支援装置500は、取得処理部501と、検出処理部502と、を備えている。
【0060】
なお、第1実施形態において、
図5に示される構成は、ハードウェアとソフトウェアとの協働の結果、より具体的には、ECU100のプロセッサ130が記憶装置120から所定のコンピュータプログラム(運転支援プログラムまたは高さ検出プログラム)を読み出して実行した結果として実現される。ただし、第1実施形態では、
図5に示される構成のうち少なくとも一部が、専用のハードウェア(回路:circuitry)のみによって実現されてもよい。
【0061】
取得処理部501は、物体検出装置200の検出結果を取得する。より具体的に、取得処理部501は、送信波の送信と、対象での反射に応じて戻ってきた送信波としての受信波の受信と、の結果に基づいて前述したTOF法により検出される対象までの距離と、当該距離の検出に用いられる受信波の受信レベルと、を物体検出装置200から取得する。
【0062】
そして、検出処理部502は、
図4を参照して説明した前述した特徴に基づいて、対象の高さに関する情報を検出する。すなわち、検出処理部502は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さに関する情報を検出する。
【0063】
取得処理部501により取得される対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性は、たとえば次の
図6に示されるようなグラフとして表すことができる。
【0064】
図6は、第1実施形態にかかる対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性を示した例示的かつ模式的な図である。
【0065】
より具体的に、
図6は、
図4に示されるような状況下、すなわち対象の高さhが物体検出装置200の高さHよりも小さい状況下における対象までの距離の変化に応じた受信レベルの変化を実線L601のグラフとして示している。
図6に示されるグラフにおいて、横軸は、対象までの距離に対応し、縦軸は、受信レベルに対応する。
【0066】
図4を参照して既に説明したように、対象の高さhが物体検出装置200の高さよりも小さい状況下においては、物体検出装置200と対象とが十分に離れている場合と、物体検出装置200と対象とがある程度接近している場合と、物体検出装置200と対象とがさらに接近している場合とで、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性が異なる特徴を示す。
【0067】
たとえば、
図6に示される例において、物体検出装置200と対象とが十分に離れている場合は、横軸の距離がD2より大きい区間X3として例示されており、物体検出装置200と対象とがある程度接近している場合は、横軸の距離がD1以上D2以下の区間X2として例示されており、物体検出装置200と対象とがさらに接近している場合は、横軸の距離が0以上D1未満の区間X1として例示されている。
【0068】
ここで、
図6に示される例は、対象の高さhが物体検出装置200の高さHよりも小さい状況に対応する。したがって、
図6に示される例では、対象と物体検出装置200とが接近するほど対象が超音波の指向性の範囲から外れる区間X1において、横軸の距離が小さくなるにつれて縦軸の受信レベルも小さくなる。
【0069】
一方、前述した通り、対象400の高さhが物体検出装置200の高さHよりも大きい場合は、対象と物体検出装置200とが接近しても対象が超音波の指向性の範囲から外れることはない。したがって、この場合、
図6に示される区間X1に相当する区間においても、区間X2およびX3に相当する区間と同様、横軸の距離が小さくなるにつれて縦軸の受信レベルが大きくなる(図示は省略する)。
【0070】
したがって、車両1と対象との接近に応じて両者の間の距離が
図6に示される区間X3、X2、およびX1の順に移動する場合、区間X1まで移動した段階になれば、対象の高さhと物体検出装置200の高さHとの大小関係を容易に検出することが可能である。
【0071】
しかしながら、第1実施形態では、区間X1の段階よりも早い段階で対象の高さhに関する情報を検出することができれば望ましい。
【0072】
そこで、第1実施形態は、
図6に示される例において横軸の距離がD1以上D2以下の区間X2に着目する。この区間X2は、縦軸の受信レベルの変動の度合が大きくなるという特徴を示す。そして、縦軸の受信レベルの大きさは、対象の高さhに依存する。
【0073】
以上を踏まえて、第1実施形態は、対象までの距離と受信波の受信レベルとの
図6に示されるような関係性をモニタリングし、距離に対する受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたポイントを検出する。これにより、第1実施形態は、区間X1の段階よりも早い段階、すなわち区間X2の段階で、物体検出装置200の高さHよりも小さい高さhを有する対象の有無を検出する。
【0074】
また、第1実施形態は、変動の度合が閾値を超え始めたときの受信レベルと対象の高さhとの対応関係を示すマップ(テーブル)などを予め設定しておき、当該マップを用いて、ばらつきが閾値を超え始めたときの受信レベルの大きさから、対象の高さhを検出する。
【0075】
このように、第1実施形態において、検出処理部502は、距離の変動に応じた受信レベルの変動の度合を用いて、対象の高さhに関する情報を検出する。より具体的に、検出処理部502は、距離が小さくなることに応じて受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたときの受信レベルに応じて、対象の高さを示す値を検出する。
【0076】
ところで、1つの物体検出装置200による超音波の送受信および距離の検出を短い時間間隔で実行することができれば、1つの物体検出装置200の検出結果のみを用いても、距離と受信レベルとの
図6に示されるような詳細な関係性を得ることが可能である。しかしながら、物体検出装置200の性能によっては、1つの物体検出装置200による超音波の送受信および距離の検出を短い時間間隔で実行できない場合もありうる。この場合、得られる検出結果の数が少なくなることに起因して、距離と受信レベルとの関係性が
図6に示される例よりもまばらな点群としてしか得られず、受信レベルのばらつきを精度よく検出できないことが想定される。
【0077】
したがって、第1実施形態は、複数の物体検出装置200から略同時に送信波を送信し、得られる検出結果の数を増やすことで、距離と受信レベルとの
図6に示されるような詳細な関係性を得ることを実現する。この場合、複数の物体検出装置200により送受信される複数の超音波を互いに識別可能にするため、当該複数の超音波が互いに異なる識別情報を含むように符号化される。符号化の手法としては、位相変調、周波数変調、およびそれらの組み合わせなどのような様々な手法が用いられうる。
【0078】
なお、第1実施形態において、検出処理部502は、複数の物体検出装置200から略同時に送信波を送信することで距離と受信レベルとの関係性を得る場合、対象の高さhを検出するための指標として用いられるばらつきとして、複数の物体検出装置200により得られる複数の受信レベルの平均に対するばらつきを使用しうる。このとき、検出処理部502は、複数の受信レベルを、車両1の幅方向における物体検出装置200の設置位置の差に応じて補正してもよい。
【0079】
一方、第1実施形態において、検出処理部502は、1つの物体検出装置200の検出結果のみを用いて距離と受信レベルとの関係性を得る場合、対象の高さhを検出するための指標として用いられるばらつきとして、1つの物体検出装置200により得られる受信レベルの移動平均に対するばらつきを使用しうる。
【0080】
上記のような手法で、第1実施形態にかかる検出処理部502は、対象の高さhに関する情報を検出する。そして、第1実施形態では、検出処理部502により検出された高さhに関する情報が、車両1の運転支援に利用されうる。
【0081】
たとえば、検出処理部502により検出された対象の高さhが物体検出装置200の高さHよりも小さい場合、当該対象が、輪留めのような車体2に接触する可能性が低い物体に該当すると判定することができる。一方、検出処理部502により検出された対象の高さhが物体検出装置200の高さHよりも大きい場合、当該対象が、壁および柱のような車体2に接触する可能性が高い物体に該当すると判定することができる。
【0082】
したがって、検出処理部502により検出された対象の高さhは、運転支援の一例としての自動駐車の実行時における車体2と対象との接触の可能性の評価に利用することができる。そこで、第1実施形態において、検出処理部502は、対象の高さhに関する情報の検出結果を、車両1に搭載される自動駐車を司る機能に出力する。自動駐車を司る機能は、運転支援装置500を実現するECU100によって実現されてもよいし、他のECUによって実現されてもよい。
【0083】
なお、第1実施形態において、対象の高さhに関する情報の検出結果を自動駐車とは異なる他の運転支援(自動出庫など)に利用することもできることは、言うまでもない。
【0084】
以上の構成に基づき、第1実施形態にかかる運転支援装置500は、次の
図7に示されるような処理を実行する。
図7に示される一連の処理は、たとえば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0085】
図7は、第1実施形態において対象の高さhに関する情報の検出のために実行される処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。
【0086】
図7に示されるように、第1実施形態では、まず、S701において、運転支援装置500の取得処理部501は、物体検出装置200による検出結果、より具体的には、対象までの距離および当該距離の検出に用いられる受信波の受信レベルの検出結果を取得する。
【0087】
そして、S702において、運転支援装置500の検出処理部502は、S701で得られた距離および受信レベルの関係性に基づいて、受信レベルのばらつきを算出する。
【0088】
そして、S703において、検出処理部502は、S702で算出されたばらつきが閾値を超えたか否かを判定する。
【0089】
S703において、ばらつきが閾値を超えていないと判定された場合、対象の高さhを検出する根拠が得られない。したがって、この場合、そのまま処理が終了する。
【0090】
一方、S703において、ばらつきが閾値を超えたと判定された場合、対象の高さhを検出する根拠が得られる。したがって、この場合、次のS704に処理が進む。
【0091】
S704において、検出処理部502は、ばらつきが閾値を超え始めたときの受信レベル(たとえば
図6に示される例における距離D2に対応した受信レベル)に基づいて、対象の高さhを検出する。この場合、たとえば、ばらつきが閾値を超え始めたときの受信レベルと対象の高さhとの対応関係を示すデータとして予め設定されたマップなどが利用されうる。
【0092】
そして、S705において、検出処理部502は、S704における高さhの検出結果を、たとえば車両1に搭載される自動駐車を司る機能に出力する。これにより、対象の高さhに応じた適切な態様で車両1の自動駐車が実行される。そして、処理が終了する。
【0093】
以上説明したように、第1実施形態にかかる運転支援装置500は、取得処理部501と、検出処理部502と、を備えている。取得処理部501は、送信波の送信と、対象での反射に応じて戻ってきた送信波としての受信波の受信と、の結果に基づいて検出される対象までの距離と、当該距離の検出に用いられる受信波の受信レベルと、を物体検出装置200から取得する。そして、検出処理部502は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さhに関する情報を検出する。
【0094】
上記のような構成によれば、送信波および受信波を送受信する位置によらず、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さhに関する情報を検出することができる。これにより、車両1の設計の自由度を損なうことなく対象の高さhに関する情報を検出することができる。
【0095】
より具体的に、第1実施形態において、検出処理部502は、距離の変動に応じた受信レベルの変動の度合を上記の関係性として用いて、対象の高さhに関する情報を検出する。このような構成によれば、受信レベルの変動の度合に基づいて、対象の高さhに関する情報を容易に検出することができる。
【0096】
より詳細に、第1実施形態において、検出処理部502は、距離が小さくなることに応じて受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたときの受信レベルに応じて、対象の高さhに関する情報として、対象の高さhを示す値を検出する。このような構成によれば、受信レベルの変動の度合が閾値を超え始めたときの受信レベルを特定するだけで、対象の高さhを示す値を容易に検出することができる。
【0097】
また、第1実施形態において、取得処理部501により取得される距離は、複数の送信波の実質的に同時な送信と、対象での反射に応じて戻ってきた複数の送信波としての複数の受信波の受信と、の結果に基づいて検出される対象までの複数の距離を含みうるとともに、取得処理部501により取得される受信レベルは、複数の距離の検出にそれぞれ用いられる複数の受信波の複数の受信レベルを含みうる。そして、検出処理部502は、上記の変動の度合として、複数の受信レベルの距離ごとの平均値に対するばらつきを用いる。このような構成によれば、得られる検出結果の数を増やすことで、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性をより詳細に得ることができる。これにより、対象の高さhに関する情報の検出の精度を高めることができる。また、受信レベルのばらつきを容易に算出することができる。
【0098】
<第2実施形態>
なお、上述した第1実施形態では、受信レベルのばらつき始めを検出することで対象の高さhに関する情報を検出する構成が例示されている。しかしながら、第2実施形態として、受信レベルがばらつき始める前に対象の高さhに関する情報を検出する構成も考えられる。
【0099】
なお、第2実施形態は、対象の高さhに関する情報を検出するために用いられる方法が第1実施形態と異なるだけで、基本的なハードウェア構成および機能において第1実施形態と共通する。つまり、第2実施形態にかかる運転支援装置510は、対象の高さhに関する情報を検出するための機能として第1実施形態にかかる検出処理部502に代えて検出処理部512(
図5参照)を備えている点以外は、第1実施形態と同様に実現される。
【0100】
対象の高さhを検出するために第2実施形態で実行される方法は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性を利用するという大まかな技術的思想において、第1実施形態で実行される方法と共通する。しかしながら、第2実施形態では、以下に説明するように、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性の利用方法が第1実施形態と異なっている。
【0101】
図8は、第2実施形態において対象の高さhに関する情報の検出に用いられる方法の概要を説明するための例示的かつ模式的な図である。
【0102】
図8に示されるように、第2実施形態においても、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性として、第1実施形態と同様の関係性(
図6参照)が得られる。第1実施形態では、受信レベルがばらつき始めるポイントとしての区間X2およびX3の境界に着目して対象の高さhを検出する方法が用いられているため、対象までの距離が距離D2以下にならないと、対象の高さhを検出することが基本的にできない。
【0103】
しかしながら、受信レベルがばらつき始める前の区間X3の段階においても、受信レベルの大きさは、対象の高さhに依存する。そこで、第2実施形態は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と、対象の高さhを示す値に応じて予め設定された距離と受信レベルとの所定の関係性と、の比較結果に応じて、対象の高さhに関する情報を検出する。
【0104】
すなわち、
図8に示される例では、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と比較される所定の関係性として、一点鎖線L811、L812、L813、およびL814の4つの関係性が予め設定されている。
【0105】
たとえば、
図8に示される例において、一点鎖線L811は、対象の高さhがh1(>0)以下の第1の範囲に属している場合に対応して実験などにより予め設定された所定の関係性に相当し、一点鎖線L812は、対象の高さhがh1より大きくh2以下の第2の範囲に属している場合に対応して実験などにより予め設定された所定の関係性に相当する。また、一点鎖線L813は、対象の高さhがh2より大きくh3以下の第3の範囲に属している場合に対応して実験などにより予め設定された所定の関係性に相当し、一点鎖線L814は、対象の高さhがh3より大きくh4以下の第4の範囲に属している場合に対応して実験などにより予め設定された所定の関係性に相当する。なお、第2実施形態では、一点鎖線L811~L814で示される関係性に加えて、対象の高さhがh4より大きい1以上の範囲に属している他の関係性が予め設定されていてもよい。
【0106】
図8に示される例において、一点鎖線L811は、対象の高さhが上記の第1の範囲に属しているか否かを判定する閾値Th811として使用することができる。すなわち、
図8に示される例において、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性(実線L601参照)が一点鎖線L811よりも受信レベルが小さい側に位置している場合、対象の高さhが上記の第1の範囲に属していると判定することができる。
【0107】
同様に、一点鎖線L812は、対象の高さhが上記の第2の範囲に属しているか否かを判定する閾値Th812として使用することができる。すなわち、
図8に示される例において、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性(実線L601参照)が一点鎖線L811よりも受信レベルが大きい側でかつ一点鎖線L812よりも受信レベルが小さい側に位置している場合、対象の高さhが上記の第2の範囲に属していると判定することができる。
【0108】
また、一点鎖線L813は、対象の高さhが上記の第3の範囲に属しているか否かを判定する閾値Th813として使用することができる。すなわち、
図8に示される例において、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性(実線L601参照)が一点鎖線L812よりも受信レベルが大きい側でかつ一点鎖線L813よりも受信レベルが小さい側に位置している場合、対象の高さhが上記の第3の範囲に属していると判定することができる。
【0109】
また、一点鎖線L814は、対象の高さhが上記の第4の範囲に属しているか否かを判定する閾値Th814として使用することができる。すなわち、
図8に示される例において、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性(実線L601参照)が一点鎖線L813よりも受信レベルが大きい側でかつ一点鎖線L814よりも受信レベルが小さい側に位置している場合、対象の高さhが上記の第4の範囲に属していると判定することができる。
【0110】
実線L601と一点鎖線L811~L814との比較は、受信レベルがばらつき始める前の区間X3においても実行することができる。したがって、第2実施形態によれば、受信レベルがばらつき始める前に対象の高さhに関する情報を検出することができる。
【0111】
上述した設定情報としての一点鎖線L811~L814は、次の
図9に示されるようなマップ(テーブル)900として記憶装置120(
図1参照)に予め記憶される。
【0112】
図9は、第2実施形態にかかる設定情報を示すマップ(テーブル)900の一例を示した例示的かつ模式的な図である。
【0113】
図9に示されるように、第2実施形態では、設定情報として、対象の高さhが属しうる複数の範囲(上述した第1~第4の範囲)と、対象の高さhが複数の範囲のいずれに属しているかの判定に使用する閾値(上述した閾値Th811~Th814)と、の対応関係が予め設定されている。
【0114】
以上の構成に基づき、第2実施形態では、対象の高さhに関する情報の検出のために、次の
図10に示されるような処理が実行される。
図10に示される一連の処理は、たとえば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0115】
図10は、第2実施形態において対象の高さhに関する情報の検出のために実行される処理の一例を示した例示的なフローチャートである。
【0116】
図10に示されるように、第2実施形態では、まず、S1001において、取得処理部501は、物体検出装置200による検出結果、より具体的には、対象までの距離および当該距離の検出に用いられる受信波の受信レベルの検出結果を取得する。
【0117】
そして、S1002において、検出処理部512は、S701で得られた距離および受信レベルの関係性と、予め設定された設定情報と、を比較する。たとえば、上述した
図8に示される例のもとでは、検出処理部512は、S701で得られた距離および受信レベルの関係性を示す実線L611と、設定情報として予め設定された閾値Th811~Th814を示す一点鎖線L811~L814と、の縦軸方向の大小関係を比較する。
【0118】
そして、S1003において、検出処理部512は、S1002における比較の結果に基づいて、対象の高さhを検出する。たとえば、上述した
図8に示される例では、実線L611が縦軸方向において一点鎖線L812およびL813の間に位置しているため、検出処理部513は、対象の高さhが、一点鎖線L813に対応した上述した第3の範囲に属していると判定する。
【0119】
そして、S1004において、検出処理部512は、S1003における高さhの検出結果を、たとえば車両1に搭載される自動駐車を司る機能に出力する。これにより、対象の高さhに応じた適切な態様で車両1の自動駐車が実行される。そして、処理が終了する。
【0120】
以上説明したように、第2実施形態において、検出処理部512は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さhに関する情報を検出する。このような構成によれば、送信波および受信波を送受信する位置によらず、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性に基づいて、対象の高さhに関する情報を検出することができる。これにより、車両1の設計の自由度を損なうことなく対象の高さhに関する情報を検出することができる。
【0121】
より具体的に、第2実施形態において、検出処理部512は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と、当該関係性に関して予め設定された設定情報と、に基づいて、対象の高さhに関する情報を検出する。このような構成によれば、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と設定情報とを用いて対象の高さhに関する情報を容易に検出することができる。
【0122】
すなわち、設定情報は、対象の高さhを示す値に応じて予め設定された距離と受信レベルとの所定の関係性を含む。そして、検出処理部512は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と、所定の関係性と、の比較結果に応じて、対象の高さhに関する情報を検出する。このような構成によれば、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と所定の関係性とを比較するだけで、対象の高さhに関する情報を容易に検出することができる。
【0123】
より詳細に、上記の所定の関係性は、対象の高さhを示す値が互いに異なる複数の範囲にそれぞれ属している場合に対応して予め設定された複数の関係性を含む(
図9参照)。そして、検出処理部512は、取得処理部501により取得される距離と受信レベルとの関係性と、複数の関係性と、の比較結果に応じて、対象の高さhを示す値が複数の範囲内のいずれに属しているかを検出する。このような構成によれば、対象の高さhを示す値が複数の範囲内のいずれに属しているかを特定することで、対象の高さhに関する情報をより詳細に検出することができる。
【0124】
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様、取得処理部501により取得される距離は、複数の送信波の実質的に同時な送信と、対象での反射に応じて戻ってきた複数の送信波としての複数の受信波の受信と、の結果に基づいて検出される対象までの複数の距離を含みうるとともに、取得処理部501により取得される受信レベルは、複数の距離の検出にそれぞれ用いられる複数の受信波の複数の受信レベルを含みうる。このような構成によれば、得られる検出結果の数を増やすことで、対象までの距離と受信波の受信レベルとの関係性をより詳細に得ることができる。これにより、対象の高さhに関する情報の検出の精度を高めることができる。
【0125】
<変形例>
なお、上述した第1および第2実施形態は、組み合わせて実施することもできる。したがって、本開示の技術は、たとえば、受信レベルがばらつき始める前は第2実施形態の技術により対象の高さに関する情報を検出し、受信レベルがばらつき始めた以後は第1実施形態の技術により対象の高さに関する情報を検出する技術も含んでいる。
【0126】
また、上述した第1および第2実施形態では、本開示の技術が、超音波の送受信によって物体までの距離を検出する構成に適用されている。しかしながら、本開示の技術は、音波、ミリ波、レーダ、および電磁波などのような、超音波以外の他の波動の送受信によって物体までの距離を検出する構成にも適用することが可能である。
【0127】
以上、本開示の実施形態および変形例を説明したが、上述した実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態および変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
500、510 運転支援装置
501 取得処理部
502、512 検出処理部