(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20241210BHJP
E03D 5/01 20060101ALI20241210BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D5/01
E03D11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020113055
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 健治
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029018(JP,A)
【文献】特開2020-133318(JP,A)
【文献】米国特許第05937455(US,A)
【文献】中国実用新案第202482939(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によって汚物を排出する洗浄動作を行う水洗大便器であって、
便器本体と、
前記便器本体の洗浄動作に使用される洗浄水を貯水する貯水タンクと、
前記便器本体の洗浄動作を制御する制御部と、
前記貯水タンク内の洗浄水を前記便器本体に供給するポンプと、
前記貯水タンク内に貯水された洗浄水の水位を検出するフロートスイッチと、を備え、
前記ポンプは、モーターの異常回転を検出すると駆動を停止する直流ポンプであり、
前記フロートスイッチ
は、前記貯水タンクが満水になったことを検出し、
前記制御部は、前記貯水タンクに給水する給水時間及び前記貯水タンクから洗浄水を排水する排水時間を制御し、前記便器本体の洗浄動作に異常が起こった際に、前記フロートスイッチの検出と、排水時間内の前記直流ポンプのモーターの異常回転の有無と、前記給水時間及び排水時間をもとに、前記フロートスイッチの故障と前記貯水タンクの給水不足を判別することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記便器本体は、汚物を受けるボウル部と前記ボウル部の上方に設けられ、
前記直流ポンプから供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水するリム吐水口と、を備え、
前記便器本体の洗浄動作に使用される洗浄水は全て前記リム吐水口から吐水されることを特徴とする請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記制御部は、前記フロートスイッチが故障状態であっても、前記便器本体の洗浄動作を行うことができるように構成されていることを特徴とする請求項1または、2記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記制御部は、前記貯水タンクへの給水時間が経過し、給水を停止する制御を行った際に、前記フロートスイッチが満水を検知しなかった場合に、前記フロートスイッチの故障判断を保留することを特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水によって便器本体の洗浄を行う水洗大便器に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から、タンクからポンプを使って洗浄水を便器本体に供給し、便器洗浄を行う水洗大便器がある。このような水洗大便器では、特許文献1に示すように、貯水タンク内が満水になったことを水位で検出する上方フロートスイッチと、タンク内から便器本体に洗浄水が供給された後の下限水位を検出する下方フロートスイッチの、2つのフロートスイッチが設けられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにフロートスイッチがタンク内に2つ設けられていると、製造コストが高くなってしまう上、貯水タンク内の貯水スペースが狭くなってしまうため、タンクが大型化してしまうといった問題が生じる。また、2つ分のフロートスイッチを制御する必要があることから、コントローラの大型化や配線取り回しスペース確保などのため、タンクの形状にも制約が出てしまう。
【0005】
一方で、フロートスイッチを1つしか設けなかった場合、フロートスイッチの固着によって出力が変化しない故障状態にあるのか、または、フロートスイッチは正常だが、断水等でタンクへの給水水量が少ないことによって出力が変化しない状態にあるのかを区別することができない。そのため、タンクの給水不足の場合とフロートスイッチの故障の場合が、同じ一つの異常として判断されてしまう可能性がある。断水等によるタンクの給水不足の場合をフロートスイッチの故障と同様に異常と判断してしまうと、実際に異常は発生していないにも関わらず、家庭用の水洗大便器のように、少数の水洗大便器が設置されていないような環境において、使用者に製品異常が発生したとの誤解や不安を与える恐れもある。また、異常の判断により水洗大便器が使えなくなってしまうと、使用者の生活に大きな支障が出てしまい非常に不便である。
【0006】
この対策のために、タンク内の給水不足を検出できるように流量センサーを設けたものも知られているが、給水不足とフロートスイッチの故障を判別できる一方で、タンク内に流量センサーを配置する必要性から、タンクの大型化に伴うデザイン性の悪化や、無用なコスト負担を使用者に与えてしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、顧客ニーズの高い、低く小さなタンクで高いデザイン性の実現及び、無用なコスト負担も与えずに、フロートスイッチの故障とタンクの給水不足を判別することができる実用上優れた水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本件発明によれば、洗浄水によって便器本体の洗浄動作を行う水洗大便器であって、 前記便器本体の洗浄動作に使用される洗浄水を貯水する貯水タンクと、前記便器本体の洗浄動作を制御する制御部と、前記貯水タンク内の洗浄水を前記便器本体に供給するポンプと、前記貯水タンク内に貯水された洗浄水の水位を検出する単一のフロートスイッチと、を備え、前記ポンプは、モーターの異常回転を検出すると駆動を停止する直流ポンプであり、前記フロートスイッチは、前記貯水タンクが満水になったことを検出し、前記制御部は、前記貯水タンクに給水する給水時間及び前記貯水タンクから洗浄水を排水する排水時間を制御し、前記便器本体の洗浄動作に異常が起こった際に、前記フロートスイッチの検出と、排水時間内の前記直流ポンプのモーターの異常回転の有無と、前記給水時間及び排水時間をもとに、前記フロートスイッチの故障と前記貯水タンクの給水不足を判別することを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、フロートスイッチの検出と、排水時間内の直流ポンプのモーターの異常回転の有無から、フロートスイッチの故障とタンクの給水不足を判別することができるため、使用者に製品が故障したとの誤解・不安を与えたり、不要な修理対応などの手間が発生したりすることを防ぐことができる。加えて、単一のフロートスイッチでも簡単に異常の判別が可能な構成となっているため、無用なコスト負担を与えず、タンクの大型化に伴うデザイン性の悪化を防ぐことができる。
【0010】
好ましくは、前記便器本体は、汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部の上方に設けられ、前記直流ポンプから供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水するリム吐水口と、を備え、前記便器本体の洗浄動作に使用される洗浄水は全てリム吐水口から吐水されることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、リム吐水は、ゼット吐水と違って強い水流を必要としないため、トルクの弱い直流ポンプを労せず用いることができる。さらに、リム吐水であれば、水や汚物による出口圧損が存在しないため、ポンプから安定した水流を供給することができる。従って、より正確な給水・排水の時間制御が可能となり、故障判断の精度を高めることができるため、使用者に製品が故障したとの誤解・不安を与えたり、不要な修理対応などの手間が発生したりすることを防ぐことができる。
【0012】
好ましくは、前記制御部は、前記フロートスイッチが故障状態であっても、前記便器本体の洗浄動作を行うことができるように構成されていることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、各部品の詳細な故障判断ができることで、使用者に誤解を与えることがなく、不要な修理の手間の発生を防げるが、便器に関しては言えば、部品の一部が故障したとしても、安全に使えるのであればそのまま使い続けられるほうが使用者にとっては便利である。例えフロートスイッチが故障したとても、貯水タンクへの給水を時間制御しているため、タンクから水が溢れることは無い。また、ポンプが異常回転して故障することもない。このように、フロートスイッチが故障しても、他の構成でカバーできるため、使用者は安全に便器洗浄動作を行うことができる。
【0014】
好ましくは、前記制御部は、前記貯水タンクへの給水時間が経過し、給水を停止する制御を行った際に、前記フロートスイッチが満水を検知しなかった場合に、前記フロートスイッチの故障判断を保留することを特徴としている。
【0015】
前記貯水タンクへの給水時間が経過し、給水を停止する制御を行った際に、前記フロートスイッチが満水を検知しなかった場合、フロートスイッチが故障して満水検知できなかったのか、断水等によって給水量が足らず、満水検知しなかったのかを判別できない場合がある。この場合、故障判断を保留したとしても、使用者に誤解や不安を与えることを防ぐことができる。一方で、ずっと故障したまま放置しておくと、別の部材の同時故障が起こった際に、安全に便器を使えなくなってしまう危険性があるが、フロートスイッチ故障が起こってから便器洗浄を行うことで故障判断ができるため、故障を放置し続けることは防ぐことができ、使用者は安全に便器洗浄動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、デザイン性が高く、使用者に製品が故障したとの誤解・不安を与えたり、不要な修理対応などの手間が発生したりすることの無い、使用者が安心して使い続けることができる衛生洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器において、通常時の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態による水洗大便器において、フロートスイッチがOFF状態で固着した故障状態にある場合の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態による水洗大便器において、貯水タンク内が給水不足状態にある場合の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による水洗大便器の異常判断条件を示した表である。
【
図6】本発明の一実施形態による水洗大便器において、フロートスイッチがON状態で固着した故障状態にある場合の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
初めに、
図1を用いて、本発明の一実施形態による水洗大便器の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器を示す概略図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器等からなる便器本体2を有する。また、水洗大便器1は、便器本体2の洗浄動作に使用される洗浄水を貯水する貯水タンク4を有しており、貯水タンク4は、上下水道等の給水源(図示せず)に接続されている。貯水タンク4の内部にはフロートスイッチ6が設けられており、貯水タンク4が満水になったかどうかを検出することができる。
【0020】
貯水タンク4に給水源からの水を給水する時間と、貯水タンク4から便器本体2に洗浄水を排水する時間は、制御部8によって制御される。具体的には、貯水タンク4に水を給水する際には、給水源側弁10を開く制御を行う。その後、フロートスイッチ610 が満水を検出するか、予め決められた給水時間経過後に、給水源側弁10を閉める制御を行い、給水を停止する。
【0021】
また、便器本体2の洗浄を行う際は、貯水タンク4から排水された洗浄水をポンプ12で加圧し、便器本体2に供給する。制御部8は、洗浄動作開始時には、ポンプ側弁14を開く動作を行う。その後、予め決められた洗浄時間経過後にポンプ側弁14を閉める制御を行い、給水を停止する。
【0022】
ポンプ12は直流式モーターを搭載した直流ポンプであり、逆起電力測定によってモーターの異常回転を検出し、駆動を停止することができる。交流ポンプの場合、トルクが強く強い水流を生むことができるが、逆起電力測定のために別のセンサーや特殊な測定装置を必要となる。一方で、直流ポンプであれば低コストで簡単に逆起電力測定を行うことができるが、トルクは弱く、強い水流を生むことができない。
【0023】
ここで、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、ポンプ12から排出された洗浄水は、便器本体2において、汚物を受けるボウル部16の上方に設けられたリム吐水口18から全て吐水される。吐水された洗浄水はボウル部16を洗浄した後、トラップ20に流下し、トラップ20の上昇端22を超えて排水される(洗い落とし式洗浄)。
【0024】
このような洗浄方式では、トラップ20を密封しサイホン現象を起こすための強い水流であるゼット吐水を必要とせず、比較的弱い水流であるリム吐水だけで洗浄できる。従って、トルクの弱く、ゼット吐水のような強い水流を作りにくい直流ポンプ12を、労せず用いることができる。さらに、リム吐水はゼット吐水とは異なり、水や汚物による出口圧損が存在しないため、ポンプから安定した水流を供給することができる。従って、より正確な給水・排水の時間制御が可能となる。
【0025】
次に、
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態による水洗大便器1の正常時の洗浄動作について説明する。
図2に示すように、正常時の洗浄動作開始前は貯水タンク4が満水の状態であり、フロートスイッチ6は満水を検出した状態(ここではON状態と呼ぶ)となっている。この時、貯水タンク4への給水はされておらず、ポンプ12は駆動していない。
【0026】
洗浄動作が開始されると、制御部8はポンプ側弁14を開き、ポンプ12が駆動し、貯水タンク4から洗浄水が排水される。この時、貯水タンク4は満水の状態ではなくなるため、フロートスイッチ6はON状態から満水を検出していない状態(ここではOFF状態と呼ぶ)に切り替わる。また、制御部8は、洗浄動作開始からの経過時間を計測する。
【0027】
洗浄動作開始から予め決められた洗浄時間が経過すると、制御部8はポンプ12の駆動を停止し、ポンプ側弁14を閉めて、洗浄動作を終了する。正常時であれば、洗浄動作中に貯水タンク4が空になり、ポンプ12がモーターの異常回転を検出して駆動停止することは起こらない。洗浄動作終了時は、貯水タンク4はほぼ空の状態であるため、フロートスイッチ6はOFF状態である。さらに、制御部8は給水源側弁10を開き、貯水タンク4への給水を開始する。制御部8は、貯水タンク4への給水開始からの経過時間を計測する。なお、本実施例では洗浄動作終了時に貯水タンク4への給水を開始しているが、洗浄動作中及び洗浄動作終了後の任意の時間に貯水タンク4への給水を開始する構成であってもよい。
【0028】
フロートスイッチ6がOFF状態からON状態に切り替わる、または、貯水タンク4への給水開始から予め決められた給水時間が経過すると、制御部8は給水源側弁10を閉めて、貯水タンク4への給水を終了する。
【0029】
次に、
図1乃至
図3を用いて、フロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障状態にある場合の洗浄動作を説明する。
図3に示すように、フロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障状態にある場合、洗浄動作開始前のフロートスイッチ6はOFF状態となっている。
【0030】
この状態で洗浄動作が開始されると、制御部8は正常時の洗浄動作と同様に、ポンプ側弁14を開き、ポンプ12が駆動し、貯水タンク4から洗浄水が排水される。また、制御部8は、洗浄動作開始からの経過時間を計測する。一方で、フロートスイッチ6は洗浄動作開始前からOFF状態であるため、制御部8は貯水タンク4内に異常が生じていると判断することができる。
【0031】
また、洗浄開始時点でフロートスイッチ6はOFF状態であるが、実際には貯水タンク4は満水の状態であるため、洗浄動作中にポンプ12が異常回転を検出して停止することは起こらない。従って、正常時の洗浄動作と同様に、洗浄動作開始から予め決められた洗浄時間が経過すると、制御部8はポンプ12の駆動を停止し、ポンプ側弁14を閉めて、洗浄動作を終了する。さらに、制御部8は給水源側弁10を開き、貯水タンク4への給水を開始する。制御部8は、貯水タンク4への給水開始からの経過時間を計測する。
【0032】
フロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障状態にあるため、貯水タンクに給水を行っても、フロートスイッチ6がOFF状態からON状態に切り替わることは無い。従って、貯水タンク4への給水開始から予め決められた給水時間が経過すると、制御部8は給水源側弁10を閉めて、貯水タンク4への給水を終了する。
【0033】
次に、
図1乃至
図4を用いて、貯水タンク4内が給水不足の状態にある場合の洗浄動作を説明する。
図4に示すように、洗浄動作開始前の時点で貯水タンク4内が満水となっていないため、フロートスイッチ6はOFF状態となっている。
【0034】
この状態で洗浄動作が開始されると、制御部8は正常時の洗浄動作と同様に、ポンプ側弁14を開き、ポンプ12が駆動し、貯水タンク4から洗浄水が排水される。また、制御部8は、洗浄動作開始からの経過時間を計測する。一方で、フロートスイッチ6は洗浄動作開始前からOFF状態であるため、制御部8は貯水タンク4内に異常が生じていると判断することができる。
【0035】
貯水タンク4内が給水不足の状態で洗浄動作が開始されると、
図4に示すように、予め決められた洗浄時間が経過する前に貯水タンク4が空になる場合がある。この場合、貯水タンク4が空になった時点でポンプ12が異常回転を検出し、駆動を停止する。その後、制御部8はポンプ側弁14を閉め、給水源側弁10を開き、貯水タンク4への給水を開始する。制御部8は、貯水タンク4への給水開始からの経過時間を計測する。
【0036】
フロートスイッチ6がOFF状態からON状態に切り替わる、または、貯水タンク4への給水開始から予め決められた給水時間が経過すると、制御部8は給水源側弁10を閉めて、貯水タンク4への給水を終了する。
【0037】
次に、
図1乃至
図5を用いて、フロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障状態にある場合と貯水タンク4内が給水不足である状態の判別方法について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器1の異常判断条件を示した表である。
【0038】
図3乃至
図5に示すように、フロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障状態にある場合と、貯水タンク4内が給水不足である状態では、洗浄動作開始時点でのフロートスイッチ6はともにOFF状態である。従って、洗浄動作開始時点では、貯水タンク4内に異常が生じていると判断することはできても、異常の原因を判別することができない。
【0039】
その後、洗浄動作開始から予め決められた洗浄時間が経過して制御部8がポンプ12の駆動を停止する前に、ポンプ12が空引きによる異常回転を検出して駆動を停止した場合、洗浄動作開始時点で貯水タンク4が満水でなかったと判断できる。従って、異常の原因が断水等による貯水タンク4内の給水不足であると判別できる。
【0040】
一方で、ポンプ12が空引きによる異常回転を検出して駆動を停止せず、洗浄動作開始から予め決められた洗浄時間が経過して制御部8がポンプ12の駆動を停止し、洗浄動作を終了した場合、洗浄動作開始時点で貯水タンク4は満水であったと判断できる。この場合、洗浄動作開始時点のフロートスイッチ6の検出と矛盾が生じる。従って、異常の原因が、フロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障によるものであると判断することができる。
【0041】
このような構成とすることで、フロートスイッチ6の検出と、排水時間内の直流ポンプ7のモーターの異常回転の有無から、フロートスイッチ6の故障と貯水タンク4の給水不足を判別することができるため、使用者に製品が故障したとの誤解・不安を与えたり、不要な修理対応などの手間が発生したりすることを防ぐことができる。加えて、単一のフロートスイッチ6でも簡単に異常の判別が可能な構成となっているため、無用なコスト負担を与えず、タンクの大型化に伴うデザイン性の悪化を防ぐことができる。
【0042】
次に、
図1乃至
図6を用いて、フロートスイッチ6がON状態で固着した故障状態にある場合の洗浄動作と、フロートスイッチ6がON状態で固着した故障状態にあることの判断方法を説明する。
図6に示すように、フロートスイッチ6がON状態で固着した故障状態にある場合、洗浄動作開始前のフロートスイッチ6はON状態となっている。正常時の洗浄動作開始前も、フロートスイッチ6はON状態であるため、この時点で異常を判断することはできない。
【0043】
この状態で洗浄動作が開始されると、制御部8は正常時の洗浄動作と同様に、ポンプ側弁14を開き、ポンプ12が駆動し、貯水タンク4から洗浄水が排水される。また、制御部8は、洗浄動作開始からの経過時間を計測する。一方で、フロートスイッチ6はON状態で固着しているため、洗浄動作が開始されて貯水タンク4から水が排水されても、フロートスイッチ6がOFF状態に切り替わることは無い。
【0044】
図6に示すように、洗浄動作開始から予め決められた洗浄時間が経過すると、制御部8はポンプ12の駆動を停止し、ポンプ側弁14を閉めて、洗浄動作を終了する。ここで、
図5に示すように、正常時であれば、洗浄動作終了時は貯水タンク4がほぼ空の状態であるため、フロートスイッチ6はOFF状態であるはずだが、フロートスイッチ6がON状態で固着している場合、洗浄動作終了時点でもフロートスイッチ6がON状態となっている。従って、フロートスイッチ6がON状態で固着した故障状態であると判断することができる。
【0045】
また、正常時の洗浄動作では、フロートスイッチ6がOFF状態からON状態に切り替わる、または、貯水タンク4への給水開始から予め決められた給水時間が経過すると、制御部8は給水源側弁10を閉めて貯水タンク4への給水を終了していたが、フロートスイッチ6がON状態で固着している場合、フロートスイッチ6がOFF状態からON状態に切り替わることが無いため、フロートスイッチ6で貯水タンク4が満水になったかどうかを判断することができない。従って、洗浄動作終了時点にフロートスイッチ6がON状態で固着した故障状態であると判断した場合は、フロートスイッチ6の検出は無視し、貯水タンク4への給水開始から予め決められた給水時間が経過すると、制御部8は給水源側弁10を閉めて、貯水タンク4への給水を終了する。このような構成とすることで、フロートスイッチ6が故障状態であっても貯水タンク4への給水が可能であるため、使用者は安全に便器本体の洗浄動作を行うことができる。
【0046】
また、貯水タンク4への給水を開始してから予め決められた給水時間が経過し、制御部8が給水源側弁10を閉めて貯水タンク4への給水を終了した際に、フロートスイッチ6がOFF状態であった場合、矛盾が生じているため、制御部8は貯水タンク4内に異常が生じていると判断することができる。しかしながら、この情報だけでは、異常の原因はフロートスイッチ6がOFF状態で固着した故障であるのか、あるいは断水や給水圧変化によって貯水タンク4内が給水不足である状態にあるのかを判別することはできない。
【0047】
この場合、制御部8は、フロートスイッチ6が故障状態であるかどうかの判断を保留する。判断を保留した場合であっても、貯水タンク4への給水を時間制御しているため、貯水タンク4に洗浄動作に必要な量の水を貯めることができるから水が溢れることは無い。また、ポンプ7が異常回転して故障することもない。したがって、使用者に余計な誤解や不安を与えることを防ぐことができ、使用者は安全に便器洗浄動作を行うことができる。
【0048】
また、判断を保留し、ずっと故障したまま放置しておくと、別の部材と同時故障が起こった際に安全に便器を使えなくなってしまう危険性があるが、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、
図1乃至
図6に示すように、フロートスイッチ6の故障が起こってから便器洗浄を行うことで故障判断ができるため、故障を放置し続けることは防ぐことができ、使用者は安全に便器洗浄動作を行うことができる。
【0049】
なお、必ずしも判断を保留した次回の洗浄動作の際に故障判断を行う必要はなく、あらかじめ決められた回数またはあらかじめ決められた期間内で、連続して異常を検知した場合に、フロートスイッチ6の故障判断を行ってもよい。このような構成とすることで、使用者に余計な誤解や不安を与えることを防ぐことができる上、故障を放置し続けることは防げるため、使用者は安全に便器洗浄動作を行うことができる。
【0050】
なお、制御部8は便器本体の制御だけに限らず、他の機能を併せて制御しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 貯水タンク
6 フロートスイッチ
8 制御部
10 給水源側弁
12 ポンプ(直流ポンプ)
14 ポンプ側弁
16 ボウル部
18 リム吐水口
20 トラップ
22 上昇端