IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H01L21/26 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020120076
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017022
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祥章
(72)【発明者】
【氏名】北川 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 貴文
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-161934(JP,A)
【文献】特開2009-231661(JP,A)
【文献】特表2012-524400(JP,A)
【文献】特開2005-005448(JP,A)
【文献】特開平10-082589(JP,A)
【文献】特開2013-074255(JP,A)
【文献】特開昭63-227014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱するための光加熱装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記基板を支持する支持部材と、
前記支持部材によって支持された前記基板の第一主面のみと対向するように配置されたフラッシュランプと、
前記支持部材によって支持された前記基板と前記フラッシュランプとによって挟まれた閃光照射空間の外側から、前記基板の前記第一主面、又は前記第一主面とは反対側の第二主面に向かって光を出射する複数のLED素子と、
前記フラッシュランプと前記複数のLED素子との離間方向における間であって、かつ、前記閃光照射空間の外側に、前記フラッシュランプから出射されて、前記複数のLED素子に向かって進行する光を遮光する遮光部材とを備え
前記遮光部材は、前記フラッシュランプから発せられる光のうち、前記LED素子が出射する光の主たる発光波長に対して±50nmの波長範囲外の光を遮光する誘電体多層膜が表面に形成されたガラス材であることを特徴とする光加熱装置。
【請求項2】
前記複数のLED素子は、前記基板の前記第二主面に向かって光を出射するように配置され、
前記遮光部材は、前記支持部材に支持された前記基板と前記LED素子との間に配置されていることを特徴とする請求項に記載の光加熱装置。
【請求項3】
前記複数のLED素子は、前記基板の前記第二主面に向かって光を出射するように配置され、
前記遮光部材は、前記支持部材によって支持された前記基板の側面と前記チャンバの内壁面とを連絡するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項4】
前記複数のLED素子は、前記基板の前記第二主面に向かって光を出射するように配置され、
前記遮光部材は、前記支持部材によって支持された前記基板と前記複数のLED素子との間に配置された、開閉動作が可能な部材であって、開閉することで、光を通過させる状態と遮断する状態とを切り替えるように構成されており、
前記フラッシュランプの点灯前に、前記遮光部材が閉じるように制御する開閉制御部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光加熱装置。
【請求項5】
前記複数のLED素子は、前記フラッシュランプに対して、前記支持部材によって支持された前記基板とは反対側に配置されており、
前記遮光部材は、前記フラッシュランプから出射されて、前記LED素子に向かって進行する光を、前記基板側に向かうように反射させるリフレクタであることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の加熱処理には、ハロゲンランプによる光加熱装置が主に用いられている。近年、半導体の製造プロセスでは、微細化や高集積化と共に、不純物拡散層を薄く形成することが求められており、短時間でムラなく加熱処理ができる加熱装置が求められている。
【0003】
半導体製造プロセスでは、イオン注入法と称されるSi結晶にイオン注入によって不純物を導入する方法が一般的に用いられている。当該方法では、イオン注入時に発生する結晶欠陥を回復させるため、半導体基板を1000℃以上に加熱する処理が行われる。
【0004】
微細プロセスの場合、半導体基板のアニール処理は、不純物拡散層を薄く形成するためにできる限り半導体基板上の熱拡散を抑えることが好ましく、短時間で加熱処理を完了させることが要求される。そこで、微細プロセスの半導体基板のアニール処理には、例えば、下記特許文献1に記載されているような、フラッシュランプを用いた光加熱装置が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-324389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体基板は、瞬間的に室温と1000℃以上の間で昇降温させると、熱による急激な膨張や収縮が発生し、反りや割れが生じてしまうおそれがある。そこで、上記特許文献1に記載されている光加熱装置は、フラッシュランプでの加熱の昇降温の温度差をできる限り小さくし、半導体基板の反りや割れを抑制するために、ハロゲンランプを用いて半導体基板全体が不純物の熱拡散が問題にならない温度まで半導体基板を予め加熱している。ここで、本明細書において、フラッシュランプによるアニール処理の前に、別の光源を用いて予め所定の温度にまで半導体基板を加熱することを「予備加熱」と称する。
【0007】
そこで、本発明者らは、従来の光加熱装置の更なる改良、改善につき、下記のように鋭意検討を行った。以下、図面を参照しながら詳細を説明する。
【0008】
図11は、従来のフラッシュランプ102とハロゲンランプ103を備える光加熱装置100の構成を模式的に示す図面である。図11に示すように、従来の光加熱装置100は、チャンバ101と、フラッシュランプ102と、ハロゲンランプ103を備える。
【0009】
また、チャンバ101は、フラッシュランプ102とハロゲンランプ103から出射される光を内側に取り込むための透光窓104と、チャンバ101内で加熱対象となる半導体基板W1を支持するための支持部材105を備える。なお、チャンバ101内を真空にする場合、透光窓104をOリング等によって気密封止するが、図11においては、このような構造は図示を省略している。
【0010】
ハロゲンランプ103は、フラッシュランプ102による加熱を実行する前に点灯され、チャンバ101内に収容された半導体基板W1を所定の温度で安定するまで予備加熱を行う。
【0011】
ここで、本発明者らは、予備加熱の高速化、光加熱装置100の長寿命化や低消費電力化等を目的として、予備加熱用の光源をハロゲンランプ103からLED素子に置き換えることを検討したところ、以下のような課題が存在することを見出した。
【0012】
フラッシュランプ102は、半導体基板W1に向かって、半導体基板W1の主面を瞬間的に1000℃以上にまで昇温させる程の高いエネルギーの光を出射する。しかしながら、フラッシュランプ102から出射される光は、全てが半導体基板W1に向かうわけではなく、一部の光が、半導体基板W1以外にも照射される。
【0013】
LED素子は、フラッシュランプ102から出射された光が照射されると、半導体基板W1と同様に加熱され、場合によっては、破壊されてしまうおそれがある。このため、従来の光加熱装置100は、予備加熱用の光源をハロゲンランプ103からLED素子に置き換えることが単純にはできなかった。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑み、フラッシュランプとLED素子とを備える光加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光加熱装置は、
基板を加熱するための光加熱装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において、前記基板を支持する支持部材と、
前記支持部材によって支持された前記基板の第一主面と対向するように配置されたフラッシュランプと、
前記支持部材によって支持された前記基板と前記フラッシュランプとによって挟まれた閃光照射空間の外側から、前記基板の前記第一主面、又は前記第一主面とは反対側の第二主面に向かって光を出射する複数のLED素子と、
前記フラッシュランプと前記複数のLED素子との離間方向における間であって、かつ、前記閃光照射空間の外側に、前記フラッシュランプから出射されて、前記複数のLED素子に向かって進行する光を遮光する遮光部材とを備えることを特徴とする。
【0016】
LED素子は、支持部材によって支持された基板とフラッシュランプに挟まれた閃光照射空間の外側から、基板の第一主面、又は第二主面に向かって光を照射するように配置される。そして、フラッシュランプとLED素子との離間方向における間には、フラッシュランプから出射されてLED素子側に向かう光を遮光する遮光部材が配置される。
【0017】
ここで、本明細書における「閃光照射空間」とは、支持部材によって支持された基板と、フラッシュランプとによって挟まれる空間をいう。閃光照射空間についての詳細な説明は、「発明を実施するための形態」の項目において、図1及び図2を参照して後述する。
【0018】
また、本明細書における「遮光」とは、全スペクトル範囲の光を遮るだけでなく、フラッシュランプから出射される光のうちの、一部の波長帯域の光を遮る場合も含む概念である。
【0019】
上記構成とすることで、フラッシュランプから出射された光が、直接LED素子に照射されることがなくなる。したがって、フラッシュランプから出射される光によってLED素子が破壊されてしまうことが抑制される。なお、遮光部材は、閃光照射領域の外側に配置されるため、フラッシュランプから出射されて、直接基板に向かって進行する光は遮光しない。
【0020】
なお、上記構成の光加熱装置が備えるLED素子は、予備加熱以外にも、例えば、フラッシュランプによる加熱処理後に、基板に光を照射して急激な温度降下を防止することや、温度が低下しやすい基板の周辺部を集中的に加熱することに使用することができる。
【0021】
上記光加熱装置において、
前記遮光部材が、表面に誘電体多層膜が形成されたガラス材であっても構わない。
【0022】
さらに、上記光加熱装置において、
前記複数のLED素子は、前記基板の前記第二主面に向かって光を出射するように配置され、
前記遮光部材は、前記支持部材に支持された前記基板と前記LED素子との間に配置されていても構わない。
【0023】
LED素子から出射される光のスペクトルの光強度のピーク値に対する相対強度が50%以上となる波長帯域の幅は、「発明を実施するための形態」において参照される図9に示すように、フラッシュランプから出射される光のスペクトルと比較すると、非常に狭小である。したがって、LED素子から出射される光のスペクトルに対応した一部の波長範囲の光のみを透過させる遮光部材が構成されることで、LED素子から出射される光のうち、光強度が十分高い波長範囲だけを透過させ、その他の範囲の光を遮光させるように構成することができる。
【0024】
ガラス材の表面にそれぞれ所定の膜厚で誘電体多層膜を形成されることで、所定の波長範囲のみを透過させる光学部材が構成される。つまり、遮光部材は、上記のように構成されることで、LED素子から出射される光のスペクトルに応じて、所定の波長範囲の光のみが透過するように構成することができる。
【0025】
したがって、上記構成とすることで、LED素子から出射される光は、基板に十分に照射され、かつ、フラッシュランプから出射されてLED素子に向かって進行する光のうちの所定の波長範囲の光は遮光される。よって、フラッシュランプから出射される光が全てLED素子に直接照射されることがなくなり、LED素子の破壊が抑制される。
【0026】
上記光加熱装置において、
前記複数のLED素子は、前記基板の前記第二主面に向かって光を出射するように配置され、
前記遮光部材は、前記支持部材によって支持された前記基板の側面と前記チャンバの内壁面とを連絡するように配置されていても構わない。
【0027】
上記構成における遮光部材は、チャンバ内をフラッシュランプが配置された空間とLED素子が配置された空間とに分ける壁のように構成されており、基板が収まる穴が設けられている。そして、当該穴に基板が収まることで、フラッシュランプが配置された空間とLED素子が配置された空間とが分断される。
【0028】
なお、LED素子が破壊されない程度の光であれば、フラッシュランプが配置された空間からLED素子が配置された空間に向かって進行しても問題がないため、基板と遮光部材、及び遮光部材とチャンバの内壁面には、僅かに隙間があってもよい。具体的には、基板の側面と遮光部材、及び遮光部材とチャンバの内壁面は、それぞれ最大5.0mm程度の隙間を有していても構わない。
【0029】
しかしながら、基板の側面と遮光部材は、フラッシュランプが配置された空間からLED素子が配置された空間に向かって光を通過させないように、それぞれ全周にわたって接触し、隙間なく構成されていることが好ましい。また、例えば、遮光部材とチャンバは、一体として構成されることで、遮光部材とチャンバの内壁面との間に隙間ができないように構成されていることが好ましい。
【0030】
上記構成とすることで、フラッシュランプから出射されて、直接、又はチャンバの内壁面等によって反射されて、LED素子に向かって進行する光は、基板と遮光部材によって遮光される。したがって、LED素子は、フラッシュランプから出射された光が全く照射されない、又はごく一部しか照射されなくなり、フラッシュランプから出射される光による破壊が抑制される。
【0031】
上記光加熱装置において、
前記複数のLED素子は、前記基板の前記第二主面に向かって光を出射するように配置され、
前記遮光部材は、前記支持部材によって支持された前記基板と前記複数のLED素子との間に配置された、開閉動作が可能な部材であって、開閉することで、光を通過させる状態と遮断する状態とを切り替えるように構成されており、
前記フラッシュランプの点灯前に、前記遮光部材が閉じるように制御する開閉制御部を備えていても構わない。
【0032】
上記構成とすることで、遮光部材は、LED素子から出射される基板の第二主面に照射される光を、フラッシュランプの点灯時にのみ遮光するように構成することができる。これにより、予備加熱の際には、LED素子から出射される光が基板の第二主面に照射され、フラッシュランプの点灯時には、フラッシュランプから出射される光がLED素子に到達しないように遮光される。
【0033】
上記光加熱装置において、
前記複数のLED素子は、前記フラッシュランプに対して、前記支持部材によって支持された前記基板とは反対側に配置されており、
前記遮光部材は、前記フラッシュランプから出射されて、前記LED素子に向かって進行する光を、前記基板側に向かうように反射させるリフレクタであっても構わない。
【0034】
上記構成とすることで、フラッシュランプから基板とは反対側に配置されたLED素子に向かって出射された光は、リフレクタによって基板側に向かうように反射される。すなわち、フラッシュランプから出射されてLED素子に向かって進行する光がリフレクタによって遮光される。このため、フラッシュランプから出射された光は、LED素子に直接照射されなくなる。
【0035】
また、フラッシュランプとLED素子、それぞれの配置空間を別個で構成する必要がなくなり、それぞれを近接させて配置することができるため、装置全体を小型化させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、フラッシュランプとLED素子を備える光加熱装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図1B】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図2図1Aの光加熱装置を、リフレクタを取り除いた状態で-Z方向に見たときの図面である。
図3A図2からフラッシュランプと遮光部材と半導体基板を取り除いた状態の図面である。
図3B図1Bの光加熱装置を、リフレクタとフラッシュランプと遮光部材と半導体基板を取り除いた状態で-Z方向に見たときの図面である。
図4】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図5A】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図5B図5Aの光加熱装置が備える遮光部材が、開閉処理途中である状態を+Z側から見たときの図面である。
図5C図5Aの光加熱装置が備える遮光部材が、閉じている状態を+Z側から見たときの図面である。
図6A】光加熱装置の一実施形態の構成において、遮光部材が開いている状態を示す側面断面図である。
図6B図6Aの光加熱装置において、遮光部材が閉じている状態を示す側面断面図である。
図7】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図8A】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図8B図8Aの光加熱装置の遮光部材を+Z側から見たときの図面である。
図9】フラッシュランプとLED素子が出射する光のスペクトルを示すグラフである。
図10A】光加熱装置の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。
図10B図10Aの光加熱装置の遮光部材を+Z側から見たときの図面である。
図11】従来のフラッシュランプとハロゲンランプを備える光加熱装置の構成を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の光加熱装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0039】
[第一実施形態]
図1Aは、光加熱装置1の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図であり、図2は、図1Aの光加熱装置1を、後述されるリフレクタ15を取り除いた状態で-Z方向に見たときの図面である。図1Aに示すように、第一実施形態の光加熱装置1は、半導体基板W1が収容されるチャンバ10と、複数のフラッシュランプ11と、複数のLED素子12と、支持部材13と、遮光部材14と、リフレクタ15とを備える。
【0040】
以下の説明においては、図1A及び図2に示すように、複数のフラッシュランプ11が配列されている方向をX方向、フラッシュランプ11が延伸する方向をY方向、X方向及びY方向と直交する方向をZ方向とする。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0041】
図1Aに示すように、チャンバ10は、内側に半導体基板W1を支持する支持部材13を備える。支持部材13は、半導体基板W1の主面(W1a,W1b)がXY平面上に配置されるように、半導体基板W1を支持する。また、図1Aに示すように、第一実施形態のチャンバ20は、チャンバ10の外側に配置された各光源から出射される加熱用の光が、内側に取り込まれるように、透光窓10cが形成されている。透光窓10cの材料は、例えば、ガラスである。なお、以下の説明において参照される、図2のようにZ方向から見たときの図面においては、各部材の配置関係を把握するために、透光窓10cは図示していない。
【0042】
図1Bは、光加熱装置1の一実施形態の別の構成を模式的に示す側面断面図である。図1Bに示すように、支持部材13による半導体基板W1の支持は、その主面(W1a,W1b)がXY平面上に配置されるようなものであればよく、例えば、支持部材13がピン状の突起13aを複数備え、その突起13aにより半導体基板W1を点で支持するものであっても構わない。
【0043】
ここで、第一主面W1aは、回路素子や配線等が形成され、フラッシュランプ11から出射される光が照射される面であり、第二主面W1bは、LED素子12から出射される光が照射される面である。
【0044】
第一実施形態のチャンバ10は、図1A及び図2に示すように、Z方向から見たときに四角形となる直方体形状を呈しているが、その他の形状であってもよい。例えば、Z方向から見たときに六角形や八角形の四角形以外の多角形を呈する多角柱形状や、Z方向から見たとき円形や楕円形を呈する円柱形状や楕円中形状であっても構わない。また、チャンバ10は、内側にフラッシュランプ11やLED素子12を配置できるような場合等、透光窓10cを構成する必要がない場合は、透光窓10cが形成されていなくても構わない。
【0045】
図1Aに示すように、フラッシュランプ11から出射された光は、半導体基板W1の第一主面W1aに照射され、LED素子12から出射された光は、半導体基板W1の第二主面W1bに照射される。
【0046】
フラッシュランプ11は、図示されない電極間に点灯に必要な電力が供給されて、放電を開始させるトリガが発生すると、発光管内において放電が発生し、半導体基板W1の第一主面W1aに向けて閃光を出射する。半導体基板W1は、フラッシュランプ11から出射された閃光が第一主面W1aに照射されることで、1000℃以上にまで瞬間的に(例えば、0.1ms~100ms程度)加熱される。
【0047】
図3Aは、図2からフラッシュランプ11と遮光部材14と半導体基板W1を取り除いた状態の図面であり、図3Bは、図1Bの光加熱装置1を、リフレクタ15とフラッシュランプ11と遮光部材14と半導体基板W1を取り除いた状態で-Z方向に見たときの図面である。図3A及び図3Bに示すように、複数のLED素子12は、一つのLED基板12a上において、XY平面上に配列され、図1Aに示すように、LED素子12から出射される光が、半導体基板W1の第二主面W1bに向かうように配置されている。
【0048】
第一実施形態の光加熱装置1は、図1A及び図3Aに示すように、一つのLED基板12aに複数のLED素子12が同一平面上に配置されているが、LED基板12aが曲面を構成し、LED素子12は、当該曲面上に配置されていてもよい。また、LED基板12aが複数に分割されていても構わない。
【0049】
遮光部材14は、図1Aに示すように、半導体基板W1の側面とチャンバ10の内壁面10aとを連絡するように配置されている。遮光部材14は、Z方向から見ると、図2に示すように、半導体基板W1が収まる穴が設けられた環状を呈しており、当該穴に半導体基板W1が嵌め込まれるように配置される。
【0050】
これにより、フラッシュランプ11から出射される光が照射される空間A1と、LED素子12から出射される光が照射される空間A2が分断される。そして、フラッシュランプ11から出射されて、半導体基板W1に照射されずに、半導体基板W1の外側に向かって進行しようとする光は、遮光部材14によって遮光されるため、LED素子12に向かって進行することがない。つまり、遮光部材14は、フラッシュランプ11から出射し、半導体基板W1には向かわずにLED素子12に向かう光を遮光する機能を奏する。
【0051】
図2に示すように、半導体基板W1と遮光部材14との間には、僅かな隙間d1が形成されている。隙間d1は、全く形成されないことが好ましい。しかしながら、半導体基板W1の大きさのバラつき等により、全ての半導体基板W1に対して隙間d1が生じないように光加熱装置1を構成することは難しい。
【0052】
そこで、光加熱装置1は、フラッシュランプ11から出射されてLED素子12に到達する光の量が、LED素子12を破壊しない程度にまで減少されることを考慮して、隙間d1が5.0mm以下となるように形成されることが好ましい。
【0053】
さらに、図1Aにおいて破線で囲まれた空間A3は、支持部材13によって支持された半導体基板W1と、フラッシュランプ11とによって挟まれる空間であり、フラッシュランプ11から出射された光が、直接半導体基板W1に向かって進行する空間である。この空間A3を、以下では「閃光照射空間A3」と称する。
【0054】
閃光照射空間A3のXY平面における範囲は、図2に示すように、Z方向から見たときに、フラッシュランプ11と半導体基板W1とが重複している領域である。
【0055】
なお、図1A及び図2に示すように、閃光照射空間A3は、フラッシュランプ11同士によって挟まれた隙間d2がある場合は、隙間d2と、半導体基板W1とによって挟まれる空間も含む。
【0056】
フラッシュランプ11と半導体基板W1の第一主面W1aとの間に、フラッシュランプ11から出射される光を遮ってしまう部材が配置されると、フラッシュランプ11から出射された光が、半導体基板W1の第一主面W1aには到達しなくなる。これにより、半導体基板W1の第一主面W1aには、フラッシュランプ11から出射された光が、到達する部分と到達しない部分が生じてしまう。
【0057】
このため、LED素子12や遮光部材14は、フラッシュランプ11から出射される光が半導体基板W1の第一主面W1aにムラなく照射されるように、閃光照射空間A3の外側に配置されている。そして、遮光部材14は、フラッシュランプ11とLEDとが離間する方向(第一実施形態においては、Z方向)における、それぞれの間に配置されている。
【0058】
リフレクタ15は、フラッシュランプ11から出射されて半導体基板W1とは反対側(+Z側)に向かって進行する光を、半導体基板W1側(-Z側)に向かうように反射する。
【0059】
上記構成とすることで、フラッシュランプ11から出射された光は、半導体基板W1、又は遮光部材14によって遮光され、隙間d1を通過する光も僅かであることから、LED素子12にはほとんど照射されない。したがって、LED素子12が、フラッシュランプ11から出射される光によって破壊されてしまうことが抑制される。
【0060】
なお、第一実施形態においては、フラッシュランプ11は複数配置されているが、出射する光の強度が十分高ければ、一本だけであってもよく、また、リフレクタ15が配置されていなくても構わない。
【0061】
図4は、光加熱装置1の一実施形態の別の構成を模式的に示す側面断面図である。第一実施形態の遮光部材14は、図1Aに示すように、XY平面と平行となるように構成されているが、図4に示すように、遮光部材14は、XY平面に対して傾斜するように構成されていても構わない。
【0062】
[第二実施形態]
本発明の光加熱装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0063】
図5Aは、光加熱装置1の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。第二実施形態の光加熱装置1は、半導体基板W1とLED素子12のZ方向における間に、遮光部材14が配置されている。なお、第二実施形態の遮光部材14は、開閉可能に構成されている。
【0064】
図5Bは、図5Aの光加熱装置1が備える遮光部材14が、開閉処理途中である状態を+Z側から見たときの図面であり、図5Cは、図5Aの光加熱装置1が備える遮光部材14が閉じている状態を+Z側から見たときの図面である。第二実施形態の遮光部材14は、図5B及び図5Cに示すように、カメラのシャッターのように開閉可能な構成である。
【0065】
第二実施形態の光加熱装置1は、図5Aに示すように、制御部40を備えており、制御部40は、フラッシュランプ11の点灯を制御する点灯制御部40aと、遮光部材14の開閉を制御する開閉制御部40bとを備える。
【0066】
チャンバ10内に半導体基板W1が収容されると、LED素子12による予備加熱が開始される。そして、予備加熱に必要な所定の時間が経過したところで、点灯制御部40aがフラッシュランプ11の点灯制御を実行する前に、開閉制御部40bが遮光部材14を閉じるように制御する。
【0067】
遮光部材14が閉じた後、点灯制御部40aがフラッシュランプ11の点灯制御を実行し、フラッシュランプ11から半導体基板W1に向かって光が出射される。なお、このとき、LED素子12は点灯していてもよく、消灯していても構わない。
【0068】
上記構成とすることで、フラッシュランプ11が点灯する際には、フラッシュランプ11から出射される光が照射される空間A1とLED素子12から出射される光が照射される空間A2が、遮光部材14によって分断される。つまり、フラッシュランプ11から出射された光のうち、半導体基板W1に照射されず、半導体基板W1の周囲を通過した光は、遮光部材14によって遮光され、空間A2には到達しない。したがって、フラッシュランプ11から出射された光がLED素子12に照射されることがなく、LED素子12の破壊が抑制される。
【0069】
上記説明では、図5B及び図5Cに示すように、遮光部材14がカメラのシャッターのような構成で、開閉制御部40bによって開閉される構成を説明したが、遮光部材14は、その他の構成であっても構わない。例えば、一枚の板状の部材を移動させることで開閉動作を行うものであっても構わない。また、第二実施形態では、LED素子12が半導体基板W1の第二主面W1bに光を照射している間、遮光部材14が収容される収容部14aがチャンバ10内に構成されているが、収容部14aがチャンバ10内に形成されず、チャンバ10の壁面に遮光部材14を出し入れする隙間が設けられていても構わない。
【0070】
図6A及び図6Bは、光加熱装置1の一実施形態の別の構成において、遮光部材14が開いている状態と閉じている状態を示す側面断面図である。当該構成の遮光部材14は、図6A及び図6Bが示すように、ルーバーのように開閉する構成であっても構わない。
【0071】
なお、当該構成においても制御部40の点灯制御部40aがフラッシュランプ11を点灯させる前に、開閉制御部40bが遮光部材14を閉じるように制御するように構成されているが、図6A及び図6Bにおいては、制御部40の図示は省略されている。
【0072】
[第三実施形態]
本発明の光加熱装置1の第三実施形態の構成につき、第一実施形態及び第二実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0073】
図7は、光加熱装置1の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図である。図7に示すように、第三実施形態の光加熱装置1は、LED素子12が、フラッシュランプ11の+Z側に配置されている。
【0074】
各フラッシュランプ11は、それぞれ個別にリフレクタ15が設けられている。リフレクタ15は、フラッシュランプ11から出射されて、半導体基板W1側に向かって進行するように反射すると共に、フラッシュランプ11から出射された光が、直接LED素子12に向かって進行しないように遮光する。すなわち、第三実施形態におけるリフレクタ15は、遮光部材14を構成する。
【0075】
LED素子12は、X方向に配列されたリフレクタ15に挟まれた隙間d3を介して、半導体基板W1の第一主面W1aに光を照射する。
【0076】
上記構成とすることで、フラッシュランプ11から出射された光が、LED素子12に直接照射されなくなるため、LED素子12が、フラッシュランプ11から出射される光によって破壊されることを抑制することができる。
【0077】
また、フラッシュランプ11とLED素子12は、同一の空間内において、それぞれを近接させて配置することができるため、光加熱装置1全体を小型化させることができる。
【0078】
[第四実施形態]
本発明の光加熱装置1の第四実施形態の構成につき、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0079】
図8Aは、光加熱装置1の一実施形態の構成を模式的に示す側面断面図であって、図8Bは、図8Aの光加熱装置1の遮光部材14を+Z側から見たときの図面である。図8Aに示すように、第四実施形態の遮光部材14は、空間A1と空間A2とを仕切るように構成されており、LED素子12から出射される光の主たる発光波長付近の光を透過するように構成されている。
【0080】
より具体的には、遮光部材14は、所定の波長範囲の光を透過させ、それ以外の波長範囲の光を反射させるように、板状のガラス材の表面に誘電体多層膜が形成された部材である。誘電体多層膜は、例えば、ZrO2とSiO2の層を多重に積層させた膜であって、LED素子12の主たる発光波長に対して±50nmの波長範囲外の光を遮光するように構成されている。
【0081】
ここでの「主たる発光波長」とは、発光スペクトル内において出射される光の強度が最も高い波長を指す。
【0082】
ここで、フラッシュランプ11とLED素子12のスペクトルについて説明する。図9は、フラッシュランプ11とLED素子12が出射する光のスペクトルを示すグラフであり、ピーク波長の光強度を1とした相対強度で示すグラフである。
【0083】
図9に示すように、LED素子12から出射される光は、主たる発光波長が398nmであって、光強度のピーク値に対する相対強度が50%以上となる波長帯域の幅が50nm程度の狭小な発光スペクトルを示す(実線)。フラッシュランプ11から出射される光は、発光波長帯域が1000nm以上のブロードな発光スペクトルを示す(破線)。
【0084】
そこで、上記構成とすることで、フラッシュランプ11から出射された光のうち、LED素子12に到達する光は、全スペクトルのうちのごく一部の波長範囲のみとなる。したがって、フラッシュランプ11から出射された光は、LED素子12を破壊してしまうような高いエネルギーを維持したまま、LED素子12には到達しない。つまり、フラッシュランプ11から出射された光によって、LED素子12が過度に加熱されて、破壊されてしまうことを抑制することができる。
【0085】
第四実施形態の遮光部材14は、Z方向からみると、図8A及び図8Bが示すように、空間A1と空間A2とを完全に分断するように隙間なく構成されているが、必ずしも、隙間なく構成されていなくても構わない。例えば、半導体基板W1によってフラッシュランプ11から出射された光が十分に遮光される中央部付近においては、LED素子12から出射される光が僅かにも減衰されないように、穴が設けられていても構わない。
【0086】
また、図1図7を参照して説明した第一~第三実施形態の遮光部材14が、誘電体多層膜が形成されたガラス材で構成されていても構わない。
【0087】
図10Aは、光加熱装置1の一実施形態の別の構成を模式的に示す側面断面図であって、図10Bは、図10Aの光加熱装置1の遮光部材14を+Z側から見たときの図面である。図10A及び図10Bに示すように、第四実施形態の遮光部材14は、半導体基板W1を支持する突起13aが形成され、支持部材13の機能を備えるように構成されていても構わない。
【0088】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0089】
〈1〉 光加熱装置1は、レンズ、プリズム、拡散板やインテグレータ光学系等の光学系が備えられていても構わない。光加熱装置1は、これらの光学系を備えることで、LED素子12から出射された光が、半導体基板W1の主面(W1a,W1b)全体にムラなく照射されるように構成することができる。また、フラッシュランプ11や遮光部材14を回避して半導体基板W1の主面(W1a,W1b)に照射されるように構成することもできる。
【0090】
〈2〉 上述した光加熱装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0091】
1 : 光加熱装置
10 : チャンバ
10a : 内壁面
10c : 透光窓
11 : フラッシュランプ
12 : LED素子
12a : LED基板
13 : 支持部材
13a : 突起
14 : 遮光部材
14a : 収容部
15 : リフレクタ
40 : 制御部
40a : 点灯制御部
40b : 開閉制御部
100 : 光加熱装置
101 : チャンバ
102 : フラッシュランプ
103 : ハロゲンランプ
104 : 透光窓
105 : 支持部材
W1 : 半導体基板
W1a : 第一主面
W1b : 第二主面
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11