(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20241210BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02M1/00 R
H03K17/08 Z
(21)【出願番号】P 2020141295
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【氏名又は名称】星野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】皆川 啓
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201523(JP,A)
【文献】特開平03-247114(JP,A)
【文献】特開2004-117260(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039342(WO,A1)
【文献】特開平04-351010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0013025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
H03K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出用ダイオードを備えたパワー半導体スイッチング素子と、
前記パワー半導体スイッチング素子をオンオフ動作させる出力回路を備え、前記温度検出用ダイオードの順方向電圧の値が第1の基準電圧値以下になると注意を促すためのワーニング信号を出力し、前記順方向電圧の値が前記第1の基準電圧値よりも小さい第2の基準電圧値以下になると、前記パワー半導体スイッチング素子のオンオフ動作を停止させるための保護動作信号を出力する駆動回路と、
を有するパワーモジュールを複数備え
、
各パワーモジュールの前記ワーニング信号の論理和として外部ワーニング信号を出力する
半導体装置であって、
夫々の前記パワーモジュールは、前記ワーニング信号の出力を許可又は禁止する切替手段を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の基準電圧値は、前記パワーモジュールごとに調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の基準電圧値は、前記パワーモジュールごとに調整可能であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、
前記順方向電圧と前記第1の基準電圧とを比較して、前記ワーニング信号を出力する第1のコンパレータと、
前記順方向電圧と前記第2の基準電圧とを比較して、前記保護動作信号を出力する第2のコンパレータを備え、
前記第1のコンパレータと前記第2のコンパレータは、ヒステリシスコンパレータであることを特徴とする請求
項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体装置はインバータであって、
前記パワーモジュールは、当該インバータの上アーム用パワーモジュールと、下アーム用パワーモジュールであり、前記上アーム用パワーモジュールのワーニング信号と前記下アーム用パワーモジュールのワーニング信号の論理和を出力することを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体装置は三相インバータであって、
前記パワーモジュールは、当該三相インバータを構成する各相のパワーモジュールのワーニング信号の論理和を出力することを特徴とする請求項
5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGBTなどのパワー半導体スイッチング素子およびこれを駆動する駆動回路からなるパワーモジュールを複数備えて構成される半導体装置に係り、特にパワー半導体スイッチング素子の温度検出機能および加熱保護機能を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、IGBTなどのパワー半導体スイッチング素子を用いて動作する装置には過熱保護機能が備えられている。この機能はパワー半導体スイッチング素子の温度を検出して一定の温度を超えた場合は警報出力をしたり、装置の動作を停止させるなどの保護動作を実行するものである。
【0003】
従来、複数のパワー半導体スイッチング素子の温度を集約して検出する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の三相ブリッジ回路を内蔵する半導体モジュールでは、各半導体素子(IGBT)上に設けられた温度検出用ダイオードから出力される電圧をアナログ絶縁アンプで増幅して温度情報として使用する。そして、各半導体素子の温度情報の中から温度が最も高い箇所の温度情報を選択して、当該温度情報が閾値以上になった場合に保護動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、温度検出用ダイオードの出力電圧と温度にはばらつきがあるので、特許文献1に記載されているような温度検出用ダイオードの出力電圧を増幅した値を比較するという手法では、最も高い温度のIGBTを正確に選択できるとは限らない。また選択したIGBTの実際の温度と温度検出用ダイオードの出力電圧値をもとに推定した温度との間でずれが生じている可能性もある。
【0006】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたものであり、複数のパワー半導体スイッチング素子を用いて構成される半導体装置において、各パワー半導体スイッチング素子の温度を精度よく検知し、かつ効率的に収集することのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の半導体装置は、
温度検出用ダイオードを備えたパワー半導体スイッチング素子と、
前記パワー半導体スイッチング素子をオンオフ動作させる出力回路を備え、前記温度検出用ダイオードの順方向電圧の値が第1の基準電圧値以下になると注意を促すためのワーニング信号を出力し、前記順方向電圧の値が前記第1の基準電圧値よりも小さい第2の基準電圧値以下になると、前記パワー半導体スイッチング素子のオンオフ動作を停止させるための保護動作信号を出力する駆動回路と、
を有するパワーモジュールを複数備え、
各パワーモジュールの前記ワーニング信号の論理和として外部ワーニング信号を出力する半導体装置であって、
夫々の前記パワーモジュールは、前記ワーニング信号の出力を許可又は禁止する切替手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、パワー半導体スイッチング素子ごとに、当該素子に搭載された温度検出用ダイオードの順方向電圧が一定の閾値電圧を超えたか否かを判定し、その判定結果の論理和として外部に出力する。また、夫々の前記パワーモジュールは、前記ワーニング信号の出力を許可又は禁止する切替手段を備える。これによりワーニング信号や保護動作信号を出力するか否かを判定する基準電圧の調整を効率よく行うことができる。
【0009】
好ましくは、前記第1の基準電圧値および/又は前記第2の基準電圧値は調整可能にするのがよい。これにより、まずパワーモジュールごとに精度良く温度検出を行い、その検出結果を論理和を出力することにより、精度のよい温度検出によるワーニング信号を効率よく外部に出力することができる。
【0011】
また、本発明に係る半導体装置の前記駆動回路は、
前記順方向電圧と前記第1の基準電圧とを比較して、前記ワーニング信号を出力する第1のコンパレータと、
前記順方向電圧と前記第2の基準電圧とを比較して、前記保護動作信号を出力する第2のコンパレータを備え、
前記第1のコンパレータと前記第2のコンパレータは、ヒステリシスコンパレータであることを特徴とする。
【0012】
コンパレータとしてヒステリシスコンパレータを用いることにより、ワーニングや保護動作信号による過熱保護の発生/復帰を繰り返すことがなく安定した動作が実現できる。
【0013】
なお、半導体装置が単相インバータの場合は、上アーム用パワーモジュールと、下アーム用パワーモジュールのワーニング信号を集約して外部へ出力するのが好ましい。また、半導体装置が三相インバータの場合は、さらに、各相のワーニング信号を集約して外部へ出力するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明によれば、各半導体スイッチング素子の温度を精度よく検知することができ、また半導体装置として効率的に温度情報を収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による半導体装置の構成図である。
【
図2】
図1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第2の実施の形態による半導体装置の構成図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態による半導体装置の構成図である。
【
図6】本発明の第4の実施の形態による半導体装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る半導体装置の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態による半導体装置1の構成図である。この図に示すように、半導体装置1は、複数のパワーモジュール2(2a~2n)で構成される。各パワーモジュール2(2a~2n)は、IGBTなどのパワー半導体スイッチング素子10と駆動回路20で構成される。パワー半導体スイッチング素子10は、IGBTに限らず、MOSFETなどでも良いが、以下IGBTを例に説明する。本実施の形態におけるIGBT10はチップ内に温度検出用ダイオード12を備える。
【0018】
駆動回路20は、入力される駆動信号41に基づいてIGBT10のゲート端子に電圧を印加してIGBT10をオンオフ動作させる出力回路21を備える。駆動回路20は、また定電流源24を備える。そしてこの定電流源24からIGBT10の温度検出用ダイオード12に定電流を流し、順方向電圧(以下、「検出電圧」という。)を検知する。この検出電圧は、コンパレータ22およびコンパレータ23の反転入力端子に入力される。コンパレータ22の非反転入力端子は基準電圧値Vref1の電圧を出力する基準電圧源25、コンパレータ23の非反転入力端子は基準電圧値Vref2の電圧を出力する基準電圧源26に夫々接続される。なお基準電圧値Vref2は基準電圧値Vref1よりも小さい値が設定される。これらコンパレータ22,23はヒステリシスコンパレータを用いるのが好ましい。
【0019】
複数のパワーモジュール2(2a~2n)の各駆動回路20のコンパレータ22の出力は、OR回路からなる集約回路3の入力端に接続される。集約回路3の出力端からは、各IGBT10の温度に関して注意を促すためのワーニング信号43のOR条件の演算結果として外部ワーニング信号44が出力される。
【0020】
各駆動回路20のコンパレータ23の出力端からは保護動作信号42が出力される。この保護動作信号42は、例えば、PWM回路(図示せず)などの外部回路に入力される。外部回路は、保護動作信号42を入力すると、スイッチング周波数を低下させたり、動作を停止させたりするなど所定の保護動作を実行する。なお、簡便な保護方法の一例としては、保護動作信号42を当該保護動作信号42を出力した駆動回路20の出力回路21に入力し、保護動作信号42がオン(イネーブル状態)のときは、駆動信号41によらず出力回路の21の出力を強制的にオフ状態にするという方法がある。このようにすれば簡単な構成で、過熱保護機能を実現することができる。
【0021】
温度検出用ダイオード12の順方向電圧は温度依存性があり、温度が高くなるに従って、順方向電圧の値が小さくなる。したがって、コンパレータ22の出力は検出電圧の値が基準電圧値Vref1以下になるとオン(Highレベル)になり、ワーニング信号43がオン(イネーブル)になる。これにより、IGBT10のチップ温度が異常レベルに近づいていることを外部に通知する。
【0022】
上記の構成を有するパワーモジュールの温度異常時の作用について
図2を用いて説明する。
図2(a)~(d)に示すグラフにおいて水平方向は時間軸である。垂直方向については、
図2(a)は温度変化とコンパレータ22,23の動作タイミング、
図2(b)は保護動作信号(アラーム)42の出力タイミングの波形、
図2(c)はワーニング信号43の波形、
図2(d)はパワーモジュールの駆動回路21のOUT端子からの出力パルス波形を示している。
【0023】
上記の構成を有する半導体装置1において、全てのIGBT10の温度が所定値以下で、全てのパワーモジュール2(2a~2n)が正常に動作しているときは、温度検出用ダイオード12の順方向電圧(検出電圧)の値は基準電圧値Vref1よりも大きいので、どのパワーモジュール2(2a~2n)からもワーニング信号43は出力されない。この結果、集約回路3の出力である外部ワーニング信号44はオフ(ディスエイブル)となる。
【0024】
いま、あるパワーモジュール2のIGBT10の温度が徐々に上昇して、時刻t1の時点で温度ワーニングレベルを超える、即ち温度検出用ダイオード12の検出電圧が基準電圧値Vref1以下になるとコンパレータ22の出力がオンになり集約回路3の出力(ワーニング出力端子)がHighレベルになる。その後IGBT10の温度上昇が続き時刻t2の時点で過熱保護レベルを超える、すなわち温度検出用ダイオード12の検出電圧が基準電圧値Vref2以下になるとコンパレータ23の出力がオンになり保護動作信号42がイネーブルになる。外部回路(図示せず)は、保護動作信号42がイネーブル状態になったことを検知して、保護動作を実施する。
図2(d)の例では、保護動作期間中はIGBT10のゲート電流を遮断して動作を停止させる。これにより、当該IGBT10の温度が低下し始める。そして時刻t3の時点で基準電圧値Vref2に対して検出電圧値がヒステリシス分大きくなるとコンパレータ23の出力がオフし、保護動作信号42がリセットされる。この結果、外部回路(図示せず)は、再び動作を開始し、IGBT10のゲート端子に再び電圧パルスが供給され、オンオフ・スイッチングを再開する。その後、温度がさらに低下して時刻t4の時点で基準電圧値Vref1に対して検出電圧値がヒステリシス分大きくなると、コンパレータ22の出力がオフし、この結果ワーニング信号43がリセットされる。
【0025】
以上のごとく、本実施の形態によれば、パワーモジュール2(2a~2n)ごとに過熱保護のための保護動作信号を出力する一方で、外部に注意を促すワーニング信号については集約回路によって一つに集約して出力する。これにより、過熱異常になったパワーモジュールについては確実に保護動作を実行する一方、ワーニング信号については集約することにより、処理が簡略化できるので半導体装置として効率的な温度情報の収集が可能となる。
【0026】
(他の実施例)
図1では、各パワーモジュール2(2a~2n)から出力されるワーニング信号43の先に集約回路3を設けた。この集約回路3は、パワーモジュール2(2a~2n)とは別の基板とし半導体装置1に装着することができる。これに対して、
図3に示すように集約回路3をパワーモジュール2(2a~2n)のいずれか一つのパワーモジュール内に設けるようにしてもよい。
【0027】
(応用例)
次に本発明の応用例を説明する。ワーニング信号をどのような単位で集約するかが重要になるが、単相インバータ回路を内蔵する半導体装置1の場合は、上アームを構成するパワーモジュールと下アームを構成するパワーモジュールをペアとして、夫々のパワーモジュールのワーニング信号43を集約回路3によって論理和を演算し、その結果を外部ワーニング信号44として出力することができる。
【0028】
半導体装置1が三相インバータ回路を内蔵する場合は、さらに各相を構成するパワーモジュールのワーニング信号を集約回路によって論理和を演算し、その結果をワーニング信号43として出力することができる。
【0029】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、基準電圧値Vref1を外部から可変設定可能にしたものである。
図4は本実施の形態による半導体装置1の構成図である。
図1との主な構成の違いは、定電流源31の出力端を可変抵抗器32の一端とコンパレータ22の非反転入力端子に接続し、可変抵抗器32の他端を基準電位(GND)に接続した。また、定電流源31の出力を基準電圧源33の正極側に接続し、基準電圧源33の負極側をコンパレータ23の非反転出力端子に接続した。基準電圧源33の両端電圧は基準電圧値Vref3である。その他は
図1と同様であるので同一要素には同一符号を付して説明を割愛する。
【0030】
上記の構成を有する半導体装置1において、コンパレータ22,23の反転入力端子には、IGBT10に内蔵されている温度検出用ダイオード12の順方向電圧(検出電圧)が印加される。一方、定電流源31から可変抵抗器32には定電流が流れ、可変抵抗器の両端に発生する電圧が、コンパレータ22の非反転入力端子に印加される。この電圧値Vref1は、コンパレータ22が温度検出用ダイオード12の検出電圧をもとにワーニング信号を出力するか否かを判定する基準電圧値となる。一方、コンパレータ23の非反転入力端子には、基準電圧値(Vref1-Vref3)が印加される。この基準電圧値(Vref1-Vref3)は、パワーモジュール2が保護動作信号42を出力するか否かを判定する基準電圧値となる。
【0031】
本実施の形態による半導体装置1ではコンパレータ22がワーニング信号43をオンする際の基準電圧値Vref1を調整することができる。一般に温度検出用ダイオード12に定電流を流したときの順方向電圧値とIGBTの温度にはばらつきがある。また、相ごとに検出電圧が異なる場合もある。したがって、半導体装置1の試験時にIGBT10をオン状態にしてコレクタ電流を流し、IGBT10が一定の温度に達したときの検出電圧値に基づいて、ワーニング信号出力時の温度における検出電圧値が基準電圧値Vref1になるように可変抵抗器32を調整する。
【0032】
このように基準電圧値が調整された半導体装置1において、あるパワーモジュール2のIGBT10の検出電圧値が基準電圧値Vref1になるとそのパワーモジュールのワーニング信号43が出力される。そして、ワーニング信号出力時点からさらに検出電圧値がVref3だけ低下すると保護動作信号42が出力される。
【0033】
本実施の形態では、パワーモジュール2ごとに基準電圧値Vref1が調整可能に構成されているので、第1の実施の形態の効果に加えて、温度検出用ダイオード12に定電流を流したときの順方向電圧値とIGBTの温度とのばらつき誤差を低減して、IGBTの温度を精度よく検知することができるという効果を奏する。
【0034】
なお、本実施の形態においても、
図3に示すように集約回路3をある一つのパワーモジュールに実装できることは言うまでもない。
【0035】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態の特徴は、ワーニング信号を出力する判定基準となる基準電圧値Vref1のみでなく、保護動作信号42を出力する判定基準となる基準電圧値Vref2についても調整可能に構成したことである。
図5は本実施の形態による半導体装置1の構成図である。
図4との主な違いは、定電流源34と可変抵抗器35を新たに設け、定電流源34の出力を可変抵抗器35の一端およびコンパレータ23の非反転入力端子に接続し、可変抵抗器35の他端を基準電位(GND)に接続した。その他は
図4と同様であるので同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施の形態によれば、ワーニング信号43を出力するか否かを判定するときの基準となる基準電圧値Vref1のみならず、パワーモジュール2が保護動作信号42を出力するか否かを判定するときの基準となる基準電圧値Vref2についても夫々独立して調整することができる。
【0037】
本実施の形態によれば、第1、第2の実施の形態の効果に加えて、さらに保護動作信号を出力する際にも、精度よく温度を検出することができる。
【0038】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
本実施の形態の特徴は、
図6に示すように各パワーモジュールと集約回路3との間にパワーモジュールから出力されるワーニング信号43を通過させるか否かを切り替える切替回路4を設けたことである。
【0039】
この切替回路4は、夫々のワーニング信号43の通過を手動で許可/禁止させるスイッチ4aと、集約回路(OR回路)3の入力側にプルダウン抵抗4bを備える。その他は
図4と同様であるので同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施の形態による半導体装置1では、可変抵抗器32によって基準電圧値Vref1を調整する際に、切替回路4において、調整対象のパワーモジュールのスイッチについてのみオンし、その他のスイッチはオフする。これにより集約回路3から出力される外部ワーニング信号44は調整対象のパワーモジュールのワーニング信号のみになるので、調整が容易になる。また全てのIGBTを一括して所定の温度にした状態で、夫々の可変抵抗器32の調整をすることができるので、調整の効率化を図ることができる。なお、可変抵抗器32の調整後は、切替回路4の全てのスイッチ4aをオンにして、運用状態では各パワーモジュールのワーニング信号43が集約回路3に入力されるようにする。
【0041】
なお、
図3のように集約回路をあるパワーモジュールの駆動回路内に設けた構成や
図5の2つの基準電圧値Vref1,Vref2を調整可能にした構成に対して切替回路4を設けるようにしてもよい。
【0042】
以上、本実施の形態によれば第1~第3の実施の形態の効果に加えて、基準電圧値を調整するときの効率を向上させることができる。なお、インバータを構成する基板を筐体内に収納して半導体装置を実現する構成においては、切替回路のスイッチや、基準電圧値調整用の可変抵抗器(トリマ)のつまみの操作は基板を実装した状態でできるように、基板端部に設けるか、あるいは基板外に引き出して、複数のパワーモジュールの基準電圧値を一括して調整できるようにしてもよい。
【0043】
本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実現することができる。例えば、切替回路4のスイッチの切替は、調整モード、運用モードなどのモードによってコンピュータからの指令によって自動的に切り替わるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 半導体装置
2(2a-2n) パワーモジュール
3 集約回路
4 切替回路
4a スイッチ
4b プルダウン抵抗
10 パワー半導体スイッチング素子
12 温度検出用ダイオード
20 駆動回路
21 出力回路
22,23 コンパレータ(ヒステリシスコンパレータ)
24,31,34 定電流源
25,26,33 基準電圧源
32,35 可変抵抗器
41 駆動信号
42 保護動作信号
43 ワーニング信号
44 外部ワーニング信号