(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】モータおよび送風装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20241210BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20241210BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K7/14 A
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2020141806
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019176168
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 有貴延
(72)【発明者】
【氏名】内野 喬誌
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042362(JP,A)
【文献】特開2017-184525(JP,A)
【文献】特開2014-211097(JP,A)
【文献】特開2000-287403(JP,A)
【文献】特開平06-141498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K3/30-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータであって、
上下に延びる中心軸を中心として回転する回転部と、
前記回転部を回転可能に支持する静止部と、
を有し、
前記静止部は、
前記回転部の少なくとも一部と径方向に対向し、コイルを有するステータと、
前記ステータの軸方向下方に配置されるベースと、
前記ステータと前記ベースとの軸方向間に配置される基板と、
前記コイルと前記基板とに電気的に接続され、前記基板より軸方向下方に延びる延伸部を有する導通部材と、
前記基板および前記導通部材を覆い、前記ベースと前記ステータとを接続する樹脂部と、
を有し、
前記ベースの軸方向上面には、軸方向から見たときに、前記導通部材と重なる開口が設けられて
おり、
前記開口の内周面の軸方向上端から軸方向下端までの少なくとも一部の範囲において、
前記開口の軸方向に垂直な断面積は、連続的又は段階的に変化し、
前記開口内に位置する前記樹脂部を構成する樹脂は、前記開口の内周面の軸方向上端より軸方向下方において、軸方向上端における軸方向に垂直な断面積よりも断面積が大きい断面積拡大部を有する、モータ。
【請求項2】
軸方向からの平面視において、前記開口の面積は、前記延伸部の面積よりも大きい、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記導通部材の軸方向下端は、前記開口の内周面の軸方向上端より軸方向下方に配置されている、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記導通部材の軸方向下方には、前記開口内に位置する前記樹脂部を構成する樹脂が配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記開口は、前記ベースを軸方向に貫通する貫通孔である、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記開口の面積は、前記開口の内周面の軸方向上端位置に比べて軸方向下端位置が小さい、請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記開口の内周面は、軸方向上端から軸方向下方に向かうにつれて前記開口の軸方向に垂直な断面積を小さくする傾斜部を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のモータと、
前記回転部とともに回転するインペラと、
を有する、送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースと、ベースに取り付けられるステータとを有するモータにおいて、ベースとステータとの間に回路基板を配置し、ベース上に配置される樹脂でステータと基板とを封入する構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなモータでは、ステータが有するコイルと、ステータの下方に配置される回路基板とを電気的に接続するために、例えば、ステータに固定される端子ピンにコイルから引き出された導線が絡げられ、端子ピンが回路基板に半田にて固定される。端子ピンは、回路基板を貫通し、端子ピンの先端が回路基板の下方に突出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のモータの構成において、例えば、モータの厚みを薄くしようとすると、ベースとステータとの間に配置される回路基板を貫通する端子ピンと、ベースとの間隔が小さくなる場合がある。このような場合、樹脂が端子ピンの下方に入り難くなる可能性がある。また、モータの厚みを薄くしようとすると、例えば組み立て或いは部品の寸法のばらつき等が原因となって、製造時に端子ピンがベースに接触する可能性がある。
【0006】
本発明は、モータを薄型化しつつ、樹脂による封止を適切に行うことができる技術を提供することを目的とする。また、本発明は、モータを薄型化しつつ、製造時にばらつきの影響を受け難くすることができる技術を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的なモータは、上下に延びる中心軸を中心として回転する回転部と、前記回転部を回転可能に支持する静止部と、を有する。前記静止部は、前記回転部の少なくとも一部と径方向に対向し、コイルを有するステータと、前記ステータの軸方向下方に配置されるベースと、前記ステータと前記ベースとの軸方向間に配置される基板と、前記コイルと前記基板とに電気的に接続され、前記基板より軸方向下方に延びる延伸部を有する導通部材と、前記基板および前記導通部材を覆い、前記ベースと前記ステータとを接続する樹脂部と、を有する。前記ベースの軸方向上面には、軸方向から見たときに、前記導通部材と重なる開口が設けられている。
【0008】
本発明の例示的な送風装置は、上記構成のモータと、前記回転部とともに回転するインペラと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
例示的な本発明によれば、モータを薄型化しつつ、樹脂による封止を適切に行うことができる。また、例示的な本発明によれば、モータを薄型化しつつ、製造時にばらつきの影響を受け難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る送風装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るモータの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るモータの概略縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るモータが有する静止部の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す静止部から樹脂部を除いた図である。
【
図7】
図7は、導通部材の周辺を拡大して示した概略縦断面図である。
【
図8】
図8は、ベース下面凹部と開口との関係を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るモータの第1変形例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係るモータの第2変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、送風装置100およびモータ1の説明にあたって、
図3に示すモータ1の中心軸Cに平行な方向を「軸方向」、中心軸Cと直交する方向を「径方向」、中心軸Cを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ称する。また、本明細書では、軸方向を上下方向とし、ステータ21に対してベース22が設けられる側を下として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係る送風装置100およびモータ1の使用時の向きを限定する意図はない。また、本明細書において、開口の面積は、開口が設けられた領域の面積のことを指す。すなわち、開口の面積は、開口領域の面積のことを指す。
【0012】
<1.送風装置>
図1は、本発明の実施形態に係る送風装置100の斜視図である。本実施形態の送風装置100は、遠心ファンである。ただし、本発明が適用される送風装置は、遠心ファンに限らず、例えば、軸流ファン又はターボファン等であってもよい。
図1に示すように、送風装置100は、モータ1と、インペラ2とを有する。送風装置100は、ファンカバー3を更に有する。モータ1の詳細は後述する。
【0013】
インペラ2は、モータ1の駆動により、中心軸Cを中心として回転する。インペラ2は、インペラ環状部2aと、複数の羽根部2bとを有する。インペラ2は、例えば樹脂により構成される。本実施形態では、インペラ環状部2aと、複数の羽根部2bとは単一部材である。ただし、インペラ環状部2aと、複数の羽根部2bとは別部材であってもよい。
【0014】
インペラ環状部2aは、中心軸Cを中心とする円環状である。インペラ環状部2aは、モータ1の後述する回転部10に取り付けられる。すなわち、インペラ2は、回転部10とともに回転する。各羽根部2bは、少なくとも一部がインペラ環状部2aの軸方向上面に配置される。各羽根部2bは、中心軸Cから離れる方向に、インペラ環状部2aから延びる。なお、中心軸Cから離れる方向は、径方向と平行であってもよいし、径方向に対して傾いた方向であってもよい。複数の羽根部2bは、周方向に間隔をあけて配置される。本実施形態では、複数の羽根部2bは、周方向に等間隔に配置される。
【0015】
ファンカバー3は、後述するモータ1のベース22と組になって、送風装置100のハウジング4を構成する。ファンカバー3には、軸方向に貫通し、軸方向からの平面視において中心軸Cを中心とする円形状のカバー貫通孔3aが設けられる。
【0016】
送風装置100においては、モータ1の駆動により、インペラ2が回転し、カバー貫通孔3aを介して外部からハウジング4内に空気が流れ込む。ハウジング4内に流れ込んだ空気は、複数の羽根部2bに沿って中心軸Cから離れる方向に流れ、ハウジング4に設けられるハウジング開口4aから外部に吹き出す。本実施形態の送風装置100は、後述のようにモータ1の軸方向の厚みを薄くすることができるために、軸方向の厚みを薄くすることができる。
【0017】
<2.モータ>
(2-1.モータの概略構成)
図2は、本発明の実施形態に係るモータ1の斜視図である。
図3は、本発明の実施形態に係るモータ1の概略縦断面図である。
図2および
図3に示すように、モータ1は、回転部10と、静止部20とを有する。
【0018】
回転部10は、上下に延びる中心軸Cを中心として回転する。回転部10は、シャフト11と、ブッシュ12と、ロータホルダ13と、マグネット14と、を有する。
【0019】
シャフト11は、中心軸Cに沿って配置された柱状の部材である。シャフト11の材料には、例えば、ステンレス等の金属が用いられる。本実施形態では、シャフト11は、中心軸Cを中心として回転する。ただし、シャフト11は、例えばベース22等に固定され、回転しない構成であってもよい。すなわち、シャフト11は、回転部10に含まれなくてもよい。
【0020】
ブッシュ12は、軸方向に延びる筒状である。シャフト11の上端部がブッシュ12内に入れられ、ブッシュ12はシャフト11の上端部に固定される。
【0021】
ロータホルダ13は、軸方向下方に開口する有蓋円筒状である。ロータホルダ13の上壁の中央部には、軸方向に貫通するロータホルダ貫通孔13aが設けられる。ロータホルダ貫通孔13aは、軸方向からの平面視において、中心軸Cを中心とする円形状である。ロータホルダ貫通孔13a内には、ブッシュ12が入れられ、ブッシュ12は、ロータホルダ13に固定される。すなわち、ロータホルダ13は、シャフト11とともに中心軸Cを中心として回転可能に設けられる。
【0022】
なお、ロータホルダ13は、インペラ環状部2a内に嵌め込まれ、インペラ2は、ロータホルダ13に固定される。すなわち、インペラ2は、ロータホルダ13の回転とともに回転する。
【0023】
マグネット14は、ロータホルダ13の径方向外面を構成する側壁の径方向内方の面に固定される。本実施形態においては、マグネット14は単一の環状マグネットである。マグネット14の径方向内方の面には、N極とS極とが周方向に交互に着磁される。ただし、単一の環状マグネットに替えて、複数のマグネットがロータホルダ13の径方向外面を構成する側壁の径方向内方の面に配置されてもよい。この場合、複数のマグネットは周方向に配列される。
【0024】
静止部20は、回転部10を回転可能に支持する。
図4は、本発明の実施形態に係るモータ1が有する静止部20の斜視図である。なお、
図4は、
図2に示すモータ1から回転部10を除いた図である。
図5は、
図4に示す静止部20から樹脂部25を除いた図である。
図2から
図5に示すように、静止部20は、ステータ21と、ベース22と、基板23と、導通部材24と、樹脂部25と、を有する。静止部20は、軸受ホルダ26と、軸受27とを更に有する。
【0025】
ステータ21は、駆動電流に応じて磁束を発生させる電機子である。ステータ21は、回転部10の少なくとも一部と径方向に対向する。本実施形態では、ステータ21は、回転部10の一部と径方向に対向する。ステータ21は、回転部10の一部の径方向内方に配置される。詳細には、ステータ21は、コイル213を有する。ステータ21は、ステータコア211と、インシュレータ212とを更に有する。
【0026】
ステータコア211は、磁性体である。ステータコア211は、例えば電磁鋼板を積層して構成される。ステータコア211の径方向外方に、マグネット14が径方向に間隔をあけて配置される。ステータコア211は、中心軸Cを中心とする円環状のコアバック211aと、コアバック211aから径方向外方に延びる複数のティース211bとを有する。複数のティース211bは、周方向に間隔をあけて配列される。
【0027】
インシュレータ212は、絶縁体である。インシュレータ212の材料には、例えば樹脂が用いられる。本実施形態では、インシュレータ212は、ステータコア211の少なくとも一部を覆う。各ティース211bの径方向外面がインシュレータ212に覆われることなく露出される。各ティース211bの径方向外面は、マグネット14と隙間をあけて径方向に対向する。コイル213は、インシュレータ212を介してティース211bに導線を巻くことによって構成される。すなわち、ステータ21は、複数のコイル213を有する。
【0028】
ベース22は、ステータ21の軸方向下方に配置される。本実施形態では、ベース22は樹脂により構成される。ただし、ベース22は、金属等の樹脂以外の素材で構成されてもよい。ベース22は、中心軸Cを中心とし軸方向に延びるベース筒状部221を中央部に有する。ベース22は、軸方向上方の面に軸方向下方に向けて凹み、基板23が収容されるベース凹部222を有する。
【0029】
基板23は、ステータ21とベース22との軸方向間に配置される。基板23には、コイル213に駆動電流を供給するための電気回路が構成される。基板23の軸方向上面には、各種の電気部品が搭載される。基板23には、軸方向に貫通し、ベース筒状部221を通す第1基板貫通孔23aが設けられる。基板23には、軸方向に貫通し、導通部材24を通す第2基板貫通孔23bが設けられる。
【0030】
導通部材24は、コイル213と基板23とに電気的に接続される。導通部材24は、コイル213および基板23のそれぞれに電気的に接続される。本実施形態では、導通部材24は、軸方向に延びるピン形状である。詳細には、導通部材24は角柱状の端子ピンである。ただし、導通部材24は、例えば円柱状等の他の柱状であってもよい。導通部材24は、インシュレータ212に固定される。導通部材24には、コイル213から引き出された導線が絡げられる。導通部材24は、軸方向下方の一部が第2基板貫通孔23bを介して基板23より軸方向下方に延びる。すなわち、導通部材24は、基板23より軸方向下方に延びる延伸部24aを有する。導通部材24は、基板23の軸方向下方側にて、半田231(
図7参照)により基板23に固定される。なお、半田231は、その一部が第2基板貫通孔23b内に入っても入らなくてもよい。本実施形態では、静止部20は複数の導通部材24を有する。詳細には、導通部材24の数は4つである。ただし、導通部材24の数は適宜変更されてよい。
【0031】
なお、導通部材24は、軸方向に延びる部分を有する構成であれば、ピン形状でなくてもよく、例えば軸方向に延びる平端子であってよい。導通部材24は、コイル213と電気的に接続されればよく、コイル213から引き出された導線が絡げられなくてもよい。
【0032】
樹脂部25は、基板23および導通部材24を覆う。樹脂部25は、ベース22とステータ21とを接続する。ベース22とステータ21とは、樹脂部25により機械的に接続される。樹脂部25は、例えばホットメルト樹脂により構成することができる。本実施形態では、樹脂部25を構成する樹脂は、基板23が収容されるベース凹部222内に入れられ、基板23を覆う。また、樹脂部25を構成する樹脂は、製造時においてベース22の軸方向上面に一時的に配置される金型の形状に合わせて、導通部材24およびステータ21を覆う。ステータ21、基板23、および、導通部材24を覆う樹脂部25は、全体として一つながりである。
【0033】
なお、樹脂部25は、ステータ21の全体を覆ってもよいが、ステータ21の一部を覆わなくてもよい。すなわち、樹脂部25は、ステータ21の少なくとも一部を覆えばよい。本実施形態では、ティース211bの径方向外面は、樹脂部25に覆われることなく露出している。
【0034】
軸受ホルダ26は、中心軸Cを中心とする円筒状である。軸受ホルダ26は、当該ホルダの径方向内方に配置される軸受27を保持する。軸受ホルダ26は、ベース筒状部221内に嵌められ、ベース22に固定される。軸受ホルダ26は、ステータコア211の径方向内方に配置される。ステータコア211は、軸受ホルダ26に固定される。すなわち、ステータ21はベース22に支持される。
【0035】
軸受27は、シャフト11の径方向外方、且つ、軸受ホルダ26の径方向内方に配置され、シャフト11を回転可能に支持する。本実施形態では、軸受27の数は2つであり、2つの軸受27は軸方向に間隔をあけて並ぶ。2つの軸受27はボールベアリングで構成される。ただし、軸受27の数および種類は、適宜変更されてよい。軸受は、例えばスリーブ軸受等であってもよい。
【0036】
モータ1においては、コイル213に駆動電流を供給することによって、マグネット14とステータ21との間で回転トルクが発生する。これにより、ステータ21に対してロータホルダ13が回転する。ロータホルダ13が回転すると、ロータホルダ13に固定されたインペラ2も中心軸Cを中心に回転する。なお、本実施形態のモータ1は、ステータ21の径方向外方に回転部10を構成するマグネット14が配置されるアウターロータ型のモータである。ただし、本発明が適用されるモータは、ステータの径方向内方に回転部を構成するマグネットが配置されるインナーロータ型のモータであってもよい。
【0037】
(2-2.静止部の詳細構成)
図6は、
図5から基板23を除いた図である。
図7は、導通部材24の周辺を拡大して示した概略縦断面図である。
図6および
図7に示すように、ベース22の軸方向上面には、軸方向から見たときに、導通部材24と重なる開口223が設けられている。詳細には、導通部材24は、軸方向から見たときに、ベース22の開口223が設けられた領域と重なる。より詳細には、導通部材24の延伸部24aは、軸方向から見たときに、ベース22の開口223が設けられた領域と重なる。本実施形態では、軸方向からの平面視における開口223の形状は、円形状である。ただし、開口223の形状は、例えば多角形状又は楕円状等の他の形状であってよい。
【0038】
開口223が設けられることにより、モータ1の軸方向の厚みを薄くする場合において、導通部材24の軸方向下方にスペースを確保し易くすることができる。このために、導通部材24の軸方向下方に樹脂部25を構成する樹脂を入れやすく、樹脂による封止を適切に行うことができる。また、開口223が設けられることにより、モータ1の軸方向の厚みを薄くする場合において、導通部材24がステータ21から軸方向下方に突出する量がばらついたとしても、導通部材24とベース22とを接触し難くすることができる。すなわち、製造時にばらつきが生じた場合でも、当該ばらつきの影響を抑制して、モータ1の製造を行うことができる。
【0039】
なお、開口223は、軸方向からみたときに、各導通部材24と重なる位置に設けられる。本実施形態では、導通部材24の数は複数である。このために、ベース22に設けられる開口223の数も複数である。
【0040】
図7に示すように、本実施形態では、開口223は、ベース22を軸方向に貫通する貫通孔である。ただし、開口223は貫通孔でなくてもよい。例えば、後述の
図9に示すように、開口は凹部であってもよい。ただし、本実施形態のように開口223を貫通孔とした方が、開口を凹部とする場合に比べて、導通部材24の軸方向の寸法誤差又は組立誤差に対応し易くすることができる。また、本実施形態のように開口223が貫通孔である構成とした場合、ベース22に、肉厚が薄い部分が生じることを避けて、ベース22が衝撃による影響を受ける可能性を低減することができる。
【0041】
軸方向からの平面視において、開口223の面積は、延伸部24aの面積より大きい。本実施形態では、延伸部24aの直径よりも開口223の直径の方が大きい。これによれば、例えば導通部材24が複数設けられる構成において導通部材24のステータ21への取付位置にばらつきが生じた場合でも、全ての導通部材24について、軸方向から見たときに延伸部24aと開口223とが重なった状態にし易くすることができる。
【0042】
導通部材24の軸方向下端は、開口223の内周面の軸方向上端よりも軸方向下方に配置されている。換言すると、導通部材24の軸方向下端は、開口223が設けられるベース22の軸方向上面よりも軸方向下方に配置されている。開口223の内周面と導通部材24とは、樹脂部25を介して周方向に対向する。導通部材24は、開口223内に入れられている。これによれば、ステータ21とベース22との軸方向間距離を小さくすることができ、モータ1の軸方向の厚みを薄くすることができる。
【0043】
本実施形態では、導通部材24の軸方向下方には、開口223内に位置する樹脂部25を構成する樹脂が配置されている。詳細には、開口223内に導通部材24が入れられる構成において、導通部材24の軸方向下端が、開口223の内周面の軸方向下端よりも軸方向上方に配置される。そして、開口223内においては、導通部材24の軸方向下方に樹脂部25を構成する樹脂が配置される。本構成によれば、導通部材24が外部に露出する可能性を低減することができる。導通部材24が外部に露出することを防ぐことにより、導通部材24に水や埃等の異物が付着することを防止できる。
【0044】
なお、開口223内は、樹脂部25を構成する樹脂で満たされていることが好ましい。これにより、導通部材24を樹脂により覆って、導通部材24が外部に露出する可能性を更に低減することができる。
【0045】
また、開口223内に導通部材24が入れられる構成において、導通部材24の軸方向下端が、開口223の内周面の軸方向下端よりも軸方向下方に突出する構成としてもよい。また、導通部材24の軸方向下端は、開口223の内周面の軸方向上端より軸方向上方に配置されてもよい。すなわち、導通部材24は、開口223内に入れられない構成とされてもよい。
【0046】
開口223の内周面の軸方向上端から軸方向下端までの少なくとも一部の範囲において、開口223の軸方向に垂直な断面積は、連続的又は段階的に変化することが好ましい。これによれば、モータ1の組み立てのし易さを向上したり、モータ1の強度を向上したりすることができる。本実施形態のように、開口223が軸方向からの平面視において円形状である場合、開口223の内周面の軸方向上端から軸方向下端までの少なくとも一部の範囲において、開口223の直径が連続的又は段階的に変化する構成としてよい。
【0047】
なお、開口223の内周面の軸方向上端から軸方向下端までの範囲において、開口223の軸方向に垂直な断面積は一定であってよい。開口223の直径は、軸方向上端から軸方向下端までの範囲において一定であってよい。
【0048】
本実施形態では、開口223の内周面は、軸方向上端から軸方向下方に向かうにつれて開口223の軸方向に垂直な断面積を小さくする傾斜部223aを有する。これによれば、開口223が設けられることによりベース22を構成する部材の量が減らされてベース22の強度が低下することを抑制しつつ、樹脂部25の形成時に、樹脂が流れ込む側の開口223の断面積を広くして開口223内に樹脂が入り易くすることができる。また、これによれば、開口223が設けられることによりベース22の強度が低下することを抑制しつつ、開口223の基板23に近い側の断面積を広くして、導通部材24を基板23に接続する半田231等がベース22に当たる可能性を低減することができる。
【0049】
詳細には、開口223の内周面は、軸方向上端から軸方向下方に向かうにつれて直径を小さくする傾斜部223aを有する。傾斜部223aは、開口223の内周面の軸方向上端から軸方向下方に向かう第1途中位置P1まで設けられる。ただし、傾斜部223aは、開口223の内周面の軸方向上端から軸方向下端まで設けられてもよい。また、傾斜部223aは設けられなくてもよい。また、開口223の軸方向に垂直な断面積が傾斜部223aにより軸方向下方に向けて連続的に小さくなる構成の代わりに、開口223の軸方向に垂直な断面積が軸方向下方に向けて段階的に小さくなる構成としてもよい。このような構成の一例として、開口223の内周面の直径が軸方向の下方に向けて段階的に小さくなる構成としてよい。
【0050】
本実施形態では、開口223の内周面の軸方向の第1途中位置P1から軸方向下方に向かう第2途中位置P2までの範囲において、軸方向下方に向かうにつれて開口223の軸方向に垂直な断面積が広くなる。開口223の軸方向に垂直な断面積は、第2途中位置P2において、軸方向上端位置よりも広くなっている。開口223の内周面の第2途中位置P2から軸方向下端位置までの範囲において、開口223の軸方向に垂直な断面積は同じである。詳細には、開口223の内周面の軸方向の第1途中位置P1から軸方向下方に向かう第2途中位置P2までの範囲において、軸方向下方に向かうにつれて開口223の直径が広くなる。開口223の直径は、第2途中位置P2において、軸方向上端位置よりも広くなっている。開口223の内周面の第2途中位置P2から軸方向下端位置までの範囲において、開口223の直径は同じである。
【0051】
なお、開口223の内周面の軸方向の第1途中位置P1から軸方向下端位置までの範囲において、軸方向下方に向かうにつれて開口223の軸方向に垂直な断面積が広くなる構成としてもよい。詳細には、開口223の内周面の軸方向の第1途中位置P1から軸方向下端位置までの範囲において、軸方向下方に向かうにつれて開口223の直径が大きくなる構成としてもよい。また、第1途中位置P1から第2途中位置P2までの軸方向範囲においてテーパ形状が設けられずに、第1途中位置P1から軸方向下端位置までの範囲において、開口223の軸方向に垂直な断面積が同じとされてよい。詳細には、第1途中位置P1から軸方向下端位置までの範囲において、開口223の直径が同じとされてよい。
【0052】
開口223が以上のように設けられるために、本実施形態では、開口223内に位置する樹脂部25を構成する樹脂は、開口223の内周面の軸方向上端より軸方向下方において、軸方向上端における軸方向に垂直な断面積より大きい断面積拡大部25aを有する。これによれば、断面積拡大部25aがベース22に引っ掛かるために、樹脂部25をベース22から軸方向に抜け難くすることができる。
【0053】
本実施形態では、ベース22の軸方向下面には、軸方向上方に凹み、樹脂部25の形成時に使用する金型を一時的に配置するベース下面凹部225を有する。
図8は、ベース下面凹部225と開口223との関係を模式的に示す平面図である。
図8は、軸方向下方から見た場合の平面図である。なお、ベース下面凹部225は、開口223が設けられた領域ごとに配置されている。
【0054】
ベース下面凹部225は、軸方向からの平面視において、開口223が設けられた領域と軸方向に重なる第1領域R1と、第1領域R1を囲む第2領域R2とを有する。第1領域R1は、開口223と空間的に繋がっている。このために、樹脂部25の形成時に使用する金型は、第2領域R2と接触する。ベース下面凹部225が設けられることにより、金型とベース22とを接触させる面積を絞ることができ、金型をベース22に対して平行に配置し易くすることができる。また、ベース下面凹部225が設けられることにより、樹脂部25を形成する際に開口223から樹脂が漏れ出た場合でも、当該樹脂がベース22の軸方向下面より下方に突出することを抑制することができる。すなわち、モータ1の製造時の管理を容易にすることができる。
【0055】
<3.変形例>
(3-1.第1変形例)
図9は、本発明の実施形態に係るモータ1の第1変形例を説明するための図である。
図9に示すように、ベース22Aの軸方向上面に設けられる開口223Aは、軸方向下方に凹む凹部である。この場合においても、導通部材24の軸方向下方にスペースを確保し易くすることができる。また、導通部材24がステータ21から軸方向下方に突出する量がばらついたとしても、導通部材24とベース22とを接触し難くすることができる。また、開口223Aに樹脂を入れて導通部材24を覆うことができる。また、開口223Aが凹部である場合には、開口を介して外部から水や埃等の異物が内部に侵入することを防ぐことができる。また、開口223Aが凹部とされることにより、樹脂部25の形成の際に、樹脂が外部に漏れることを防止することができる。また、開口223Aが凹部とされることにより、樹脂部25の形成の際に、開口を塞ぐ金型などの機構を不要とすることができる。なお、本変形例においては、ベース22Aに軸方向の厚みが薄い薄肉部224ができる。
【0056】
(3-2.第2変形例)
図10は、本発明の実施形態に係るモータ1の第2変形例を説明するための図である。
図10に示すように、ベース22Bは、軸方向に貫通する貫通孔として構成される開口223Bを有する。開口223Bの面積は、開口223Bの内周面の軸方向上端位置に比べて軸方向下端位置が小さい。詳細には、開口223Bの直径は、開口223Bの内周面の軸方向上端位置に比べて軸方向下端位置が小さい。このような構成によれば、樹脂部25を形成する際に軸方向上方から開口223Bに樹脂を入り易くすることができる。また、ベース22Bの軸方向下面において開口223Bの面積を小さくすることができるので、ベース22Bの軸方向下面側から開口223Bを介して水分や塵埃等の異物がモータ1の内部に入る可能性を低減することができる。
【0057】
なお、
図10に示す変形例では、開口223Bの軸方向に垂直な断面積が軸方向下方に向けて段階的に変化する構成としているが、開口223Bの軸方向に垂直な断面積が軸方向下方に向けて連続的に変化する構成としてもよい。
【0058】
<4.留意事項>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば、車載用、家電用、事務機器用等の冷却ファン等に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・モータ
2・・・インペラ
10・・・回転部
20・・・静止部
21・・・ステータ
22、22A、22B・・・ベース
23・・・基板
24・・・導通部材
25・・・樹脂部
25a・・・断面積拡大部
100・・・送風装置
213・・・コイル
223、223A、223B・・・開口
223a・・・傾斜部
C・・・中心軸