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特許7600568液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/01 403
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/01 451
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020144432
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039424
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
(72)【発明者】
【氏名】平野 美喜雄
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166791(JP,A)
【文献】特開2017-132982(JP,A)
【文献】特開2009-279816(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208776(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行し、
前記循環流量には、第1循環流量と、前記第1循環流量よりも多い第2循環流量と、を含み、
前記決定処理において、前記第1循環流量の場合、前記第2循環流量の場合よりも、前記非吐出フラッシングの頻度を高く決定する、液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行し、
記決定処理において、前記非吐出フラッシングの頻度を、前記循環ポンプがオフ状態である場合に前記循環ポンプがオン状態である場合と同じ又は前記循環ポンプがオン状態である場合よりも多くなるように決定する、液体吐出装置。
【請求項3】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行し、
前記液体の循環流量は、前記循環ポンプのオフからオンへの切り替えにより増加期間において増加し、前記増加期間に続く定量期間において一定になり、前記循環ポンプのオンからオフへの切り替えにより前記定量期間に続く減少期間において減少し、
前記制御装置は、前記決定処理において、前記非吐出フラッシングの頻度を、前記増加期間及び前記減少期間において前記定量期間よりも多くなるように決定する、液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記増加期間のうち、前記液体の循環流量の増加が開始する時点よりも前記増加が終了する時点に近い期間に、前記決定処理により決定された頻度の前記非吐出フラッシングを行う前記非吐出フラッシング処理、及び、
前記減少期間のうち、前記液体の循環流量の減少が開始する時点よりも前記減少が終了する時点に近い期間に、前記決定処理により決定された頻度の前記非吐出フラッシングを行う前記非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方を実行する、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記増加期間の開始時T1及び終了時T2とし、前記開始時T1の前記液体の循環流量X1、及び、前記終了時T2の前記液体の循環流量X2としたとき、前記液体の循環流量の増加率が(X2-X1)/(T2-T1)と一致した時Ta又は、前記時Taと前記終了時T2との間に、前記決定処理により決定された頻度の前記非吐出フラッシングを行う前記非吐出フラッシング処理、及び、
前記減少期間の開始時T3及び終了時T4とし、前記開始時T3の前記液体の循環流量X3、及び、前記終了時T4の前記液体の循環流量X4としたとき、前記液体の循環流量の減少率が(X3-X4)/(T4-T3)と一致した時Tb又は、前記時Tbと前記終了時T4との間に、前記決定処理により決定された頻度の前記非吐出フラッシングを行う前記非吐出フラッシング処理の少なくとも一方の実行を開始する、請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記増加期間は、前記開始時T1から前記時Taまでの第1期間と、前記時Taから前記終了時T2までの第2期間と、を含み、
前記減少期間は、前記開始時T3から前記時Tbまでの第3期間と、前記時Tbから前記終了時T4までの第4期間と、を含み、
前記制御装置は、
前記第1期間において前記非吐出フラッシングを行わずに前記第2期間において前記非吐出フラッシングを行う前記非吐出フラッシング処理、及び、
前記第3期間において前記非吐出フラッシングを行わずに前記第4期間において前記非吐出フラッシングを行う前記非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方を実行する、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記循環ポンプがオフ状態の期間は、前記開始時T1より前の時T5から前記開始時T1までの第5期間、及び、前記時T5より前の時T6から前記時T5までの第6期間を有し、
前記定量期間は、前記終了時T2から、前記終了時T2と前記開始時T3との間の時T7までの第7期間、及び、前記時T7から前記開始時T3までの第8期間を有し、
前記制御装置は、
前記第5期間において前記第6期間よりも前記非吐出フラッシングの頻度を多くする前記決定処理、及び、
前記第8期間において前記第7期間よりも前記非吐出フラッシングの頻度を多くする前記決定処理の少なくともいずれか一方を実行する、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行し、
前記制御装置は、前記循環ポンプをオフに切り替えてから、前記非吐出フラッシングを停止する、液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体は、UVインク以外の液体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記ヘッドを搭載して移動するキャリッジ
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、
前記キャリッジを移動させる移動処理と、を実行し、
前記移動処理において、前記循環ポンプのオフからオンへの切り替えにより前記液体の循環流量が増加してから一定になった後に、前記キャリッジの移動を開始させる、液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記移動処理において、前記循環ポンプのオンからオフへの切り替えにより前記液体の循環流量が減少開始する前の一定である間に、前記キャリッジの移動を停止させる、請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行
前記液体の循環流量は、前記循環ポンプのオフからオンへの切り替えにより増加期間において増加し、前記増加期間に続く定量期間において一定になり、前記循環ポンプのオンからオフへの切り替えにより前記定量期間に続く減少期間において減少し、
前記制御装置は、前記決定処理において、前記非吐出フラッシングの頻度を、前記増加期間及び前記減少期間において前記定量期間よりも多くなるように決定する、液体吐出装置の制御方法。
【請求項13】
液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、
前記液体を貯留するタンクと、
前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、
前記循環流路に設けられた循環ポンプと、
制御装置と、を備えた液体吐出装置に、
前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、
前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、
前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行させ、
前記液体の循環流量は、前記循環ポンプのオフからオンへの切り替えにより増加期間において増加し、前記増加期間に続く定量期間において一定になり、前記循環ポンプのオンからオフへの切り替えにより前記定量期間に続く減少期間において減少し、
前記制御装置は、前記決定処理において、前記非吐出フラッシングの頻度を、前記増加期間及び前記減少期間において前記定量期間よりも多くなるように決定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出装置として、例えば、特許文献1の液体噴射装置が知られている。この液体噴射装置では、液体を噴射する液体噴射部、液体噴射部に供給する液体を収容する液体収容部、これらの間で液体が循環する液体供給路、及び、液体供給路に設けられた循環ポンプを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-117898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の液体噴射装置では、液体供給路の液体の温度に応じて液体供給路の液体を循環ポンプにより循環させている。これにより、循環ポンプの駆動電力の低減が図られる。しかしながら、循環ポンプの停止によって、液体の乾燥による吐出不良が生じてしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、消費電力の低減を図りつつ、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、前記液体を貯留するタンクと、前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、前記循環流路に設けられた循環ポンプと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行する。
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出装置の制御方法は、液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、前記液体を貯留するタンクと、前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、前記循環流路に設けられた循環ポンプと、制御装置と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、前記制御装置は、前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行する。
【0008】
本発明のある態様に係るプログラムは、液体を吐出するノズル、及び、前記ノズルの前記液体に圧力を付与する駆動素子を有するヘッドと、前記液体を貯留するタンクと、前記ヘッドと前記タンクとの間で前記液体が循環するように接続された循環流路と、前記循環流路に設けられた循環ポンプと、制御装置と、を備えた液体吐出装置に、前記ノズルから前記液体を吐出させないように前記駆動素子を駆動させて非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理と、前記循環ポンプのオンとオフとを切り替える切り替え処理と、前記切り替え処理による前記循環ポンプのオンとオフとの切り替えによって変化する前記液体の循環流量に応じて前記非吐出フラッシングの頻度を決定する決定処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上に説明した構成を有し、消費電力の低減を図りつつ、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る液体吐出装置を上方から視た概略図である。
図2図1のヘッドを概略的に示す断面図である。
図3図1の液体容器、タンク及びヘッドを概略的に示す図である。
図4図1の液体吐出装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5図5(a)は、図1の循環ポンプの切り替えタイミングを示すグラフである。図5(b)は、図5(a)の循環流路における液体の循環流量の経時変化を示すグラフである。図5(c)は、図5(a)の駆動素子による非吐出フラッシングの頻度を示すグラフである。
図6図1の液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7(a)は、変形例2に係る液体吐出装置の循環ポンプの切り替えタイミングを示すグラフである。図7(b)は、図7(a)の循環流路における液体の循環流量の経時変化を示すグラフである。図7(c)は、図7(a)の駆動素子による非吐出フラッシングの頻度を示すグラフである。
図8図8(a)は、変形例3及び4に係る液体吐出装置の循環ポンプの切り替えタイミングを示すグラフである。図8(b)は、図8(a)の循環流路における液体の循環流量の経時変化を示すグラフである。図8(c)は、図8(a)の駆動素子による非吐出フラッシングの頻度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0013】
[実施の形態]
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態に係る液体吐出装置10は、図1に示すように、インク等の液体を被吐出媒体Aに吐出して印刷する装置であって、例えば、インクジェットプリンタである。液体吐出装置10は、シリアルヘッド方式が採用され、筐体11、ヘッド20、プラテン12、液体容器13、タンク14(図3)、搬送装置15、走査装置16及び制御装置30を備えている。なお、制御装置30の詳細については後述する。また、液体吐出装置10は、ラインヘッド方式が採用されてもよい。
【0014】
さらに、プラテン12よりもヘッド20側を上と称し、その反対側を下と称する。また、搬送装置15により被吐出媒体Aを搬送する方向(搬送方向)を前と称し、その反対側を後と称する。走査装置16によりヘッド20を往復移動する方向を左右方向と称する。この走査方向は、上下方向及び搬送方向に交差(例えば、直交)する。但し、液体吐出装置10の配置方向はこれに限定されない。
【0015】
筐体11は、ヘッド20、プラテン12、液体容器13、タンク14、走査装置16、搬送装置15及び制御装置30をその内部空間に収容している。プラテン12は、被吐出媒体Aが載置される上面を有している。ヘッド20は、プラテン12の上面に対向する下面(吐出面20a)、及び、吐出面20aに開口する複数のノズル21を有している。複数のノズル21は、例えば、前後方向において互いに間隔を空けながら並んで、ノズル列を形成している。複数のノズル列は、左右方向に間隔を空けながら配置されている。ヘッド20の詳細については後述する。
【0016】
液体容器13及びタンク14(図3)は、ヘッド20のノズル列に対応して設けられている。液体容器13は、例えば、筐体11に脱着可能なインクカートリッジであって、液体容器13は、チューブ13aによりタンク14に接続されてヘッド20上に配置されている。複数の液体容器13は、互いに異なる種類の液体(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの液体)を貯留しており、対応するタンク14に液体を供給する。なお、タンク14の詳細については後述する。
【0017】
搬送装置15は、一対の搬送ローラ15a及び搬送モータ15b(図4)を有している。一対の搬送ローラ15aは、前後方向において互いの間にヘッド20を挟むように配置されており、その中心軸が左右方向に延びている。搬送モータ15bは、搬送ローラ15aに連結されており、搬送ローラ15aを回転させる。これにより、搬送装置15は、プラテン12上において被吐出媒体Aを前方へ搬送する。
【0018】
走査装置16は、例えば、キャリッジ16a、2本のガイドレール16b、走査モータ16c(図3)、無端ベルト16dを有している。キャリッジ16aは、ヘッド20が搭載されており、ヘッド20を往復移動可能にガイドレール16bに支持されている。無端ベルト16dは、ガイドレール16bに沿って左右方向に延び、キャリッジ16aに固定されており、走査モータ16cにプーリを介して連結されている。走査モータ16cの駆動に応じて無端ベルト16dが走行することにより、キャリッジ16a及びこれに支持されているヘッド20はガイドレール16bに沿って左右方向に往復移動する。
【0019】
<ヘッドの構成>
ヘッド20は、図2に示すように、ノズル21、流路形成体22、駆動素子23及び振動板24を有している。流路形成体22は複数のプレートの積層体であり、各プレートには大小様々な孔及び溝が形成されている。各プレートが積層された積層体において、孔及び溝が組み合わされて、複数の液体流路が形成される。
【0020】
この液体流路は、複数のノズル21、複数の個別流路25、供給マニホールド26及び帰還マニホールド27を有している。供給マニホールド26は、前後方向に延びて、その端に供給口26a(図3)を有している。帰還マニホールド27は、前後方向に延びて、その端に帰還口27a(図3)を有している。
【0021】
ノズル21は、その先端(ノズル孔21a)が流路形成体22の下面(吐出面20a)に開口している。個別流路25は、供給マニホールド26からノズル21を介して帰還マニホールド27に至り、この間に供給絞り流路25a、圧力室25b、連通路25c及び帰還絞り流路25dを有し、これらはこの順に接続されている。ここで、ノズル21は、連通路25cに接続し、連通路25cを介して圧力室25bに連通している。
【0022】
振動板24は、流路形成体22上に配置され、圧力室25bの上側開口を覆っている。駆動素子23は、例えば、圧電素子であって、圧力室25b上の振動板24に配置されている。駆動素子23は、制御装置30(図1)に接続されており、制御装置30からの駆動信号が印加されると伸縮する。これに応じて、振動板24は変形して圧力室25bの容積を変更する。これにより、圧力室25bの液体に圧力が付与され、ノズル21から液体が吐出したり、ノズル孔21aにおけるメニスカスが振動したりする。
【0023】
このような構成において、液体は、供給マニホールド26から個別流路25に流入し、ここで供給絞り流路25a、圧力室25b及び連通路25cの順で流れて、ノズル21に供給される。そして、駆動素子23の駆動により、圧力室25bの液体に圧力が付与されると、ノズル21から液体が吐出される。このノズル21から吐出されずに残った液体は、帰還絞り流路25dから帰還マニホールド27に流入する。
【0024】
<タンク及び循環流路>
図3に示すように、タンク14は、チューブ13aにより液体容器13に接続されており、液体容器13からチューブ13aを介して供給された液体を貯留する。また、タンク14は、ヘッド20の供給マニホールド26(図2)の供給口26aに供給管26bにより接続され、帰還マニホールド27(図2)の帰還口27aに帰還管27bによりタンク14に接続されている。
【0025】
この供給管26bには循環ポンプ26cが設けられている。循環ポンプ26cを駆動すると、循環ポンプ26cは、タンク14に貯留された液体を供給マニホールド26に流れるように、供給管26bの液体に圧力を付与する。これにより、液体は、タンク14から供給管26bにより供給マニホールド26(図2)に供給され、個別流路25(図2)を介してノズル21(図2)に供給される。
【0026】
そして、ノズル21により吐出されずに残った液体は、個別流路25を介して帰還マニホールド27を流れ、帰還口27aから帰還管27bを介してタンク14に戻る。このようにして、液体は、タンク14、供給管26b、供給マニホールド26、個別流路25、帰還マニホールド27、帰還管27b及びタンク14と、この順で循環する。このため、供給管26b、供給マニホールド26、個別流路25、帰還マニホールド27及び帰還管27bが、ヘッド20とタンク14との間を液体が循環する循環流路17を形成する。
【0027】
<制御装置>
制御装置30は、図4に示すように、演算部31、記憶部32、波形生成部33及びインターフェース34を有している。インターフェース34はコンピュータ及びネットワーク等の外部装置Bに接続され、制御装置30は外部装置Bから印刷データ等の各種データをインターフェース34を介して受信する。印刷データは、被吐出媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。
【0028】
記憶部32は、演算部31にアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データ、及び、演算部31により変換されたデータが例示される。ROMは、プログラム及び各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Bから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0029】
演算部31は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算部31がROMに記憶されたプログラムを実行することにより、制御装置30は駆動素子23、循環ポンプ26c、搬送モータ15b及び走査モータ16cを制御して、各種処理を行う。例えば、制御装置30は、印刷処理、非吐出フラッシング処理、切り替え処理及び決定処理を実行する。
【0030】
制御装置30は、非吐出フラッシング処理において、ノズル21から液体を吐出させないように駆動素子23を駆動させている。また、制御装置30は、切り替え処理において、循環ポンプ26cのオンとオフとを切り替える。さらに、制御装置30は、決定処理において、切り替え処理による循環ポンプ26cのオンとオフとの切り替えによって変化する液体の循環流量に応じて非吐出フラッシングの頻度を決定する。この決定処理の詳細については後述する。
【0031】
波形生成部33は、駆動素子23に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部33は、専用の回路であってもよく、演算部31及び記憶部32により構成されていてもよい。波形信号は、吐出波形信号、非吐出波形信号及び非吐出フラッシング波形信号を含んでいる。
【0032】
吐出波形信号及び非吐出フラッシング波形信号は、パルス信号であって、駆動素子23を駆動させるための信号である。吐出波形信号は、液体のヘッド20から吐出させるための波形信号であって、液体の吐出量が異なる複数種類の波形信号を含んでいる。非吐出フラッシング波形信号は、液体をヘッド20から吐出しないように、ノズル孔21aにおけるメニスカスを振動させる非吐出フラッシングのための波形信号である。非吐出波形信号は、駆動素子23を駆動させない波形信号である。このため、非吐出フラッシング波形信号及び非吐出波形信号は、液体の吐出量が0である信号である。
【0033】
演算部31は、例えば、複数種類の波形信号から1種類の波形信号を、印刷データに基づいた1滴ごとの液体の吐出量に応じてノズル21毎及び駆動周期毎に選択し、波形選択データを生成する。ここで、演算部31は、印刷する画像において濃度が高いほど、液体の吐出量が多い吐出波形信号を印刷データに基づいて選択するように、波形選択データを生成する。また、演算部31は、画像を印刷しない範囲では、印刷データに基づいて非吐出波形信号を選択する、又は、決定処理により決定された頻度に応じて非吐出フラッシング波形信号を選択するよう、選択データを生成する。
【0034】
制御装置30は、ヘッド駆動回路28を介して駆動素子23に接続されている。制御装置30は、波形信号及び、波形選択データを制御データとしてヘッド駆動回路28に出力する。ヘッド駆動回路28は、これらに基づき駆動信号を生成して駆動素子23に出力する。駆動素子23は、この出力順に駆動信号に応じて駆動する。これにより、圧力室25bの容積が変更されて、圧力室25bの液体に圧力が付与されることによって、液体がノズル21から吐出されたり、ノズル孔21aにおいてメニスカスが振動したりする。
【0035】
また、制御装置30は搬送駆動回路15cを介して搬送モータ15bに接続されており、印刷データに基づいて搬送モータ15bの制御データを搬送駆動回路15cに出力する。また、制御装置30は走査駆動回路16eを介して走査モータ16cに接続されており、印刷データに基づいて走査モータ16cの制御データを走査駆動回路16eに出力する。これにより、制御装置30は、搬送モータ15b及び走査モータ16cの駆動タイミング、回転速度、回転量等を制御する。
【0036】
このように、制御装置30は、各部を制御することによって、記録動作及び搬送動作を実行する。この記録動作では、制御装置30は、走査モータ16cによりヘッド20を移動させながら、駆動素子23によりヘッド20から液体を吐出させることにより、画像を被吐出媒体Aに記録する。また、搬送動作では、制御装置30は、搬送モータ15bによる被吐出媒体Aを搬送させる。この記録動作と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、ノズル21から吐出された液体によって画像が被吐出媒体Aにおいて搬送方向に形成されていき、印刷処理が進んでいく。
【0037】
さらに、制御装置30は、循環ポンプ駆動回路26dを介して循環ポンプ26cに接続されており、循環ポンプ26cの制御データを循環ポンプ駆動回路26dに出力する。これにより、制御装置30は、循環ポンプ26cのオン及びオフの駆動タイミングを制御して、所定流量の液体を循環流路17において循環させる。
【0038】
<決定処理>
例えば、制御装置30は、印刷データに基づいて循環ポンプ26cのオンとオフとの切り替えタイミングを取得する。図5(a)の例では、循環ポンプ26cは、第1時刻T1にてオフからオンに切り替えられ、第3時刻T3にてオンからオフに切り替えられる。これにより、循環ポンプ26cは、第1時刻T1にて駆動しないオフ状態から駆動するオフ状態になり、第1時刻T1から第3時刻T3までオン状態が維持され、第3時刻T3にてオン状態からオフ状態になり、第3時刻T3以降、オフ状態が維持される。
【0039】
この場合、図5(b)に示すように、循環ポンプ26cの駆動開始前の静止期間では、循環流路17における液体が流れず、循環流量が0である。そして、第1時刻T1にて循環ポンプ26cの駆動開始によって循環流路17において液体が流れ始め、循環流路17における液体の循環流量が増加し始める。そして、第1時刻T1から第2時刻T2までの増加期間において循環流量が増加し、第2時刻T2から第3時刻T3までの定量期間において循環流量が一定になる。
【0040】
第3時刻T3にて循環ポンプ26cの駆動終了によって循環流路17における液体の循環流量が減少し始める。この第3時刻T3から第4時刻T4までの減少期間において循環流量が減少し続ける。そして、第4時刻T4以降の静止期間において循環流量の減少が停止し、液体の循環流量が0になる。このような循環ポンプ26cの切り替えと液体の循環流量の関係は予め実験及びシミュレーション等により求められ、記憶部32に記憶されている。
【0041】
このように、循環ポンプ26cのオン状態では循環流路17において液体が循環することにより、循環流路17に連通するノズル21における乾燥による液体の増粘を低減することができる。一方、循環ポンプ26cのオフ状態では、液体が循環されないため、増粘し易い。そこで、制御装置30は、決定処理におい非吐出フラッシングの頻度を、循環ポンプ26cがオフ状態である場合に循環ポンプ26cがオン状態である場合と同じ又は循環ポンプ26cがオン状態である場合よりも多くなるように決定する。
【0042】
例えば、図5(c)に示すように、第1時刻T1より前のオフ状態の期間では、制御装置30は、非吐出フラッシングの頻度を第1所定頻度F1と決定し記憶部32に記憶する。また、制御装置30は、第3時刻T3より後のオフ状態の期間のうち、減少期間には頻度を第2所定頻度F2と決定し、減少期間後の静止期間には頻度を第1所定頻度F1と決定し、これらを記憶する。さらに、制御装置30は、オン状態の期間のうち、増加期間には頻度を第2所定頻度F2と決定し、定量期間には頻度を第3所定頻度F3と決定し、これらを記憶する。この第1所定頻度F1は第2所定頻度F2よりも多く第2所定頻度F2は第3所定頻度F3よりも多い。
【0043】
このように、循環ポンプ26cをオフすることにより、循環ポンプ26cの駆動電力の低減を図ることができる。また、このオフ状態において、オン状態よりも非吐出フラッシングの頻度を同じ又は多くすることにより、ノズル21における液体の乾燥による吐出不良を低減することができる。さらに、循環ポンプ26cのオン状態では、非吐出フラッシングの頻度をオフ状態よりも減らすことにより、駆動素子23の駆動に起因する劣化を抑制することができる。
【0044】
<液体吐出装置の制御方法>
液体吐出装置10の制御方法は、例えば、図6のフローチャートに沿って制御装置30により実行される。まず、制御装置30は、印刷データを取得する(ステップS1)。制御装置30は、印刷データに基づいて循環ポンプ26cのオンとオフとの切り替えタイミングを決定し、循環ポンプ26cの制御データを生成する(ステップS2)。この印刷データと循環ポンプ26cの切り替えタイミングとの関係は予め対応付けられており、記憶部32に記憶されている。
【0045】
制御装置30は、循環ポンプ26cの切り替えタイミングに基づいて決定処理を実行する(ステップS3)。この決定処理では、制御装置30は、切り替え処理による循環ポンプ26cのオンとオフとの切り替えによって変化する液体の循環流量に応じて非吐出フラッシングの頻度を決定する。
【0046】
そして、制御装置30は、印刷データ、及び、決定処理により決定された非吐出フラッシングの頻度に応じて、駆動素子23の制御データを生成する(ステップS4)。ここで、制御装置30は、印刷データに基づいた印刷画像に応じて吐出波形信号及び非吐出波形信号の波形選択データを生成し、これを駆動素子23毎に出力順に並べた印刷処理用データを生成する。また、制御装置30は、決定した頻度になるように、非吐出フラッシング波形信号の波形選択データを、印刷処理用データにおける非吐出波形信号の波形選択データに置換して、駆動素子23の制御データを生成する。
【0047】
そして、制御装置30は、これらの制御データに基づいて、印刷データに基づいた印刷終了まで(ステップS8:NO)、印刷処理(ステップS5)、切り替え処理(ステップS6)及び非吐出フラッシング処理(ステップS7)を並行して実行する。なお、印刷終了まで、循環ポンプ26cをオンしてからオフする切り替え処理は、1回又は複数回、行われてもよい。
【0048】
ここで、制御装置30は、駆動素子23の制御データをヘッド駆動回路28に出力することにより、波形選択データにより選択された波形信号に応じた駆動信号が生成されて駆動素子23に出力される。これにより、印刷処理では、駆動素子23は吐出波形信号の駆動信号に応じて駆動して、ノズル21から液体を吐出し、印刷データに基づいた画像が被吐出媒体Aに印刷される。また、非吐出フラッシング処理では、駆動素子23が非吐出フラッシング波形信号の駆動信号に応じて駆動して、ノズル孔21aのメニスカスを振動し、非吐出フラッシングが決定処理により決定された頻度で実行される。この非吐出フラッシングにより、ノズル21における液体を拡散し、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる。
【0049】
さらに、制御装置30は、循環ポンプ26cの制御データを循環ポンプ駆動回路26dに出力する。これにより、切り替え処理において、図5(a)の例のように、第1時刻T1にて循環ポンプ26cがオフからオンに切り替えられる。これにより、循環流路17の液体が循環して、乾燥に起因する液体の吐出不良を低減することができる。
【0050】
また、第3時刻T3にて循環ポンプ26cがオンからオフに切り替えられる。ここで、駆動ポンプのオフ状態においてオン状態以上の頻度で非吐出フラッシングを実行することにより、駆動ポンプの消費電力の低減しつつ、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる。さらに、循環ポンプ26cのオン状態においてオフ状態以下の頻度で非吐出フラッシングを実行することにより、駆動素子23の劣化の低減が図られつつ、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる。
【0051】
<変形例1>
変形例に1に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態において、液体の循環流量は、循環ポンプ26cのオフからオンへの切り替えにより増加期間において増加し、増加期間に続く定量期間において一定になり、循環ポンプ26cのオンからオフへの切り替えにより定量期間に続く減少期間において減少する。制御装置30は、決定処理において、非吐出フラッシングの頻度を、第1時刻T1から第2時刻T2までの増加期間及び第3時刻T3から第4時刻T4までの減少期間において第2時刻T2から第3時刻T3までの定量期間よりも多くなるように決定する。
【0052】
この増加期間及び減少期間は、実験及びシミュレーション等により予め取得され、記憶部32に記憶されている。例えば、図6のステップS3の決定処理において、制御装置30は、印刷データに基づいて印刷処理における循環ポンプ26cのオンタイミング及びオフタイミング、並びに、記憶部32から増加期間及び減少期間を取得する。
【0053】
図5(a)及び図5(b)に示すように、制御装置30は、オンタイミング(第1時刻T1)を流量の増加開始時とし、この増加開始時に増加期間を加えて流量の増加終了時(第2時刻T2)を算出する。また、制御装置30は、オフタイミング(第3時刻T3)を流量の減少開始時とし、増加終了時から減少開始時までの間を流量が一定の定量期間として算出する。さらに、制御装置30は、減少開始時に減少期間を加えて流量の減少終了時(第4時刻T4)として算出する。
【0054】
また、図5(c)に示すように、制御装置30は、定量期間における非吐出フラッシングの頻度を第3所定頻度F3と決定し記憶部32に記憶する。また、制御装置30は、増加期間及び減少期間における頻度を第3所定頻度F3よりも多い第2所定頻度F2と決定し記憶する。さらに、制御装置30は、増加期間前の静止期間及び減少期間後の静止期間における頻度を第1所定頻度F1と決定し記憶する。
【0055】
これにより、増加期間及び減少期間では、定量期間よりも液体の循環流量が少ないが、定量期間よりも非吐出フラッシングの頻度が多いため、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる。また、定量期間における非吐出フラッシングの頻度を増加期間及び減少期間よりも減らすことにより、駆動素子23の駆動に起因する劣化を抑制することができる。
【0056】
<変形例2>
変形例に2に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1において、制御装置30は、第1非吐出フラッシング処理及び第2非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方を実行する。この第1非吐出フラッシング処理では、制御装置30は、増加期間のうち、液体の循環流量の増加が開始する時点よりも増加が終了する時点に近い期間に、決定処理により決定された頻度の非吐出フラッシングを行う。第2非吐出フラッシング処理では、制御装置30は、減少期間のうち、液体の循環流量の減少が開始する時点よりも減少が終了する時点に近い期間に、決定処理により決定された頻度の非吐出フラッシングを行う。
【0057】
例えば、図7(a)に示す循環ポンプ26cのオンにより、図7(b)に示すように、第1時刻T1から第2時刻T2までの増加期間に液体の循環流量が増加する。この循環流量の増加率は増加開始時点(第1時刻T1)から増加終了時点(第2時刻T2)へ小さくなっていく。これに伴い、ノズル孔21aにおけるメニスカスが第1時刻T1から第2時刻T2へ安定していく。
【0058】
また、循環ポンプ26cのオフにより、第3時刻T3から第4時刻T4までの減少期間に液体の循環流量が減少する。この循環流量の減少率は減少開始時点(第3時刻T3)から減少終了時点(第4時刻T4)へ小さくなっていく。これに伴い、ノズル孔21aにおけるメニスカスが第3時刻T3から第4時刻T4へ安定していく。
【0059】
このため、図6のステップS4において、制御装置30はメニスカスが安定する期間に非吐出フラッシングを実行するように、駆動素子23の制御データを生成する。この際、図7(c)に示すように、例えば、制御装置30は、増加期間において第1時刻T1からの期間よりも、第2時刻T2からの期間が短い時Tcを取得する。制御装置30は、時Tcから第2時刻T2までの間において、決定された非吐出フラッシングの頻度になるように、非吐出波形信号の波形選択データを非吐出フラッシング波形信号の波形選択データに置換する。制御装置30は、第1時刻T1から時Tcまでの間においてはこのような置換を行わない。
【0060】
また、制御装置30は、減少期間において第3時刻T3からの期間よりも、第4時刻T4からの期間が短い時Tdを取得する。制御装置30は、時Tdから第4時刻T4までの間において、決定された非吐出フラッシングの頻度になるように、非吐出波形信号の波形選択データを非吐出フラッシング波形信号の波形選択データに置換する。制御装置30は、第3時刻T3から時Tdまでの間においてはこのような置換を行わない。
【0061】
この制御データに基づいて駆動素子23が駆動すると、ステップS7の非吐出フラッシング処理において第1非吐出フラッシング処理及び第2非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方が実行される。第1非吐出フラッシング処理が実行されると、非吐出フラッシングは、増加期間において、第1時刻T1から時Tcまでの間において実行されずに、時Tcから第2時刻T2の間において決定処理により決定された頻度にて実行される。
【0062】
また、第2非吐出フラッシング処理が実行されると、非吐出フラッシングは、減少期間において、第3時刻T3から時Tdまでの間において実行されずに、時Tdから第4時刻T4の間において決定処理により決定された頻度にて実行される。このようなメニスカスが安定な期間において非吐出フラッシングを実行することにより、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減しつつ、メニスカスブレイク及び意図しない吐出を防止することができる。
【0063】
なお、変形例3に係る液体吐出装置10では、制御装置30は、増加期間において、第1時刻T1から時Tcまでの期間において非吐出フラッシングを行わずに、時Tcから第2時刻T2までの期間において非吐出フラッシングを行うよう、非吐出フラッシング処理を実行してもよい。また、制御装置30は、増加期間において、第3時刻T3から時Tdまでの期間において非吐出フラッシングを行わずに、時Tdから第4時刻T4期間までの期間において非吐出フラッシングを行うよう、非吐出フラッシング処理を実行してもよい。
【0064】
<変形例3>
変形例3に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1において、制御装置30は、第3非吐出フラッシング処理及び第4非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方を実行する。
【0065】
この第3非吐出フラッシング処理では、図8(c)に示すように、増加期間の開始時T1及び終了時T2とし、開始時T1の液体の循環流量X1、及び、終了時T2の液体の循環流量X2とする。このとき、制御装置30は、液体の循環流量の増加率が(X2-X1)/(T2-T1)と一致した時Ta又は、時Taと終了時T2との間に、決定処理により決定された頻度の非吐出フラッシングを行う。
【0066】
第4非吐出フラッシング処理では、減少期間の開始時T3及び終了時T4とし、開始時T3の液体の循環流量X3、及び、終了時T4の液体の循環流量X4とする。このとき、制御装置30は、液体の循環流量の減少率が(X3-X4)/(T4-T3)と一致した時Tb又は、時Tbと終了時T4との間に、決定処理により決定された頻度の非吐出フラッシングを行う。
【0067】
例えば、図8(a)に示す循環ポンプ26cのオンにより、図8(b)に示すように、循環流量は、増加期間において対数的に増加する。時Taにおける循環流量の増加率Raを、(X2-X1)/(T2-T1)とする。このとき、第1時刻T1から時Taまでの第1期間P1における増加率は増加率Raよりも大きく、この差よりも第1期間P1における増加率の変化は小さい。時Taから第2時刻T2までの第2期間P2における増加率は、増加率Raよりも小さく、この差よりも第2期間P2における増加率の変化は小さい。メニスカスは、第1期間P1よりも第2期間P2において安定している。
【0068】
また、循環ポンプ26cのオフにより、循環流量は、減少期間において対数的に減少する。時Tbにおける循環流量の減少率Rbを(X3-X4)/(T4-T3)とする。このとき、第3時刻T3から時Tbまでの第3期間P3における減少率は減少率Rbよりも大きく、この差よりも第3期間P3における減少率の変化は小さい。時Taから第4時刻T4までの第4期間P4における減少率は減少率Rbよりも小さく、この差よりも第4期間P4における減少率の変化は小さい。メニスカスは、第3期間P3よりも第4期間P4において安定している。
【0069】
図6のステップS4において、制御装置30はメニスカスが安定する期間に非吐出フラッシングを実行するように、駆動素子23の制御データを生成する。この際、例えば、制御装置30は、増加期間において、制御装置30は、第1時刻T1の循環流量X1、第2時刻T2の循環流量X2、及び、増加期間(T2-T1)を記憶部32から取得する。なお、循環ポンプ26cの切り替えと、循環流量との関係は予め対応付けられて、記憶部32に記憶されている。また、増加期間及び減少期間は予め記憶部32に記憶されている。
【0070】
制御装置30は、これらから循環流量の増加率Ra、及び、循環流路17の増加率が増加率Raになるときの時Taを算出する。制御装置30は、第2期間P2において、決定された非吐出フラッシングの頻度になるように、非吐出波形信号の波形選択データを非吐出フラッシング波形信号の波形選択データに置換する。
【0071】
また、制御装置30は、減少期間において、制御装置30は、第3時刻T3の循環流量X3、第4時刻T4の循環流量X4、及び、減少期間(T4-T3)を記憶部32から取得する。制御装置30は、これらから循環流量の減少率Rb、及び、循環流路17の減少率が減少率Rbになるときの時Tbを算出する。制御装置30は、第4期間P4において、決定された非吐出フラッシングの頻度になるように、非吐出波形信号の波形選択データを非吐出フラッシング波形信号の波形選択データに置換する。
【0072】
この制御データに基づいて駆動素子23が駆動すると、ステップS7の非吐出フラッシング処理において、第3非吐出フラッシング処理及び第4非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方が実行される。第3非吐出フラッシング処理が実行されると、非吐出フラッシングは、決定処理により決定された頻度にて第2期間P2において実行される。また、第4非吐出フラッシング処理が実行されると、非吐出フラッシングは、決定処理により決定された頻度にて第4期間P4において実行される。このようなメニスカスが安定な期間において非吐出フラッシングを実行することにより、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減しつつ、メニスカスブレイク及び意図しない吐出を防止することができる。
【0073】
<変形例4>
変形例4に係る液体吐出装置10では、上記変形例3において、増加期間は、開始時T1から前記時Taまでの第1期間P1と、時Taから終了時T2までの第2期間P2と、を含む。減少期間は、開始時T3から時Tbまでの第3期間P3と、時Tbから終了時T4までの第4期間P4と、を含む。制御装置30は、第1期間P1において非吐出フラッシングを行わずに第2期間P2において非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理、及び、第3期間P3において非吐出フラッシングを行わずに第4期間P4において非吐出フラッシングを行う非吐出フラッシング処理の少なくともいずれか一方を実行する。
【0074】
この場合、図6のステップS4において、制御装置30は、第2期間P2において、決定された非吐出フラッシングの頻度になるように、非吐出波形信号の波形選択データを非吐出フラッシング波形信号の波形選択データに置換する。制御装置30は、第1期間P1においてはこのような置換を行わない。また、制御装置30は、第4期間P4において、決定された非吐出フラッシングの頻度になるように、非吐出波形信号の波形選択データを非吐出フラッシング波形信号の波形選択データに置換する。制御装置30は、第3期間P3においてはこのような置換を行わない。
【0075】
この制御データに基づいて駆動素子23が駆動すると、図6のステップS7の非吐出フラッシング処理において、図8(c)に示す第3非吐出フラッシング処理が実行されると、非吐出フラッシングは、第1期間P1において実行されずに、決定処理により決定された頻度にて第2期間P2において実行される。また、第4非吐出フラッシング処理が実行されると、非吐出フラッシングは、第3期間P3において実行されずに、決定処理により決定された頻度にて第4期間P4において実行される。このようなメニスカスが安定しない期間において非吐出フラッシングを実行しないことにより、メニスカスブレイク及び意図しない吐出を防止することができる。
【0076】
<変形例5>
変形例5に係る液体吐出装置10では、上記変形例2~4において、循環ポンプ26cがオフ状態の期間は、開始時T1より前の時T5から開始時T1までの第5期間P5、及び、時T5より前の時T6から時T5までの第6期間P6を有している。定量期間は、終了時T2から、前記終了時T2と前記開始時T3との間の時T7までの第7期間P7、及び、前記時T7から前記開始時T3までの第8期間P8を有している。制御装置30は、第5期間P5において第6期間P6よりも非吐出フラッシングの頻度を多くする決定処理、及び、第8期間P8において第7期間P7よりも非吐出フラッシングの頻度を多くする決定処理の少なくともいずれか一方を実行する。
【0077】
例えば、図6のステップS3の決定処理において、制御装置30は、静止期間のうち増加期間の第1期間P1前の第5期間P5における非吐出フラッシングの頻度を第4所定頻度F4と決定し記憶部32に記憶する。この第4所定頻度F4は、静止期間において第5期間P5の前の第6期間P6における第1所定頻度F1よりも多い。第5期間P5の長さは、第1期間P1の長さと等しくてもよい。また、第5期間P5の長さは、第1期間P1が長くなるほど長くてもよい。
【0078】
また、制御装置30は、定量期間のうち減少期間の第3期間P3前の第8期間P8における非吐出フラッシングの頻度を第2所定頻度F2と決定し記憶部32に記憶する。なお、この第8期間P8の非吐出フラッシングの頻度は、定量期間における第8期間P8の前の第7期間P7の第3所定頻度F3よりも大きければ、第2所定頻度F2に限定されない。但し、第8期間P8の頻度は、第1所定頻度F1よりも小さいことが好ましい。また、第8期間P8の期間は、第3期間P3の期間と等しくてもよい。また、第3期間P3の期間は、第3期間P3の期間が長くなるほど長くてもよい。
【0079】
このように、決定された頻度に基づいて制御装置30は、駆動素子23の制御データを生成し、非吐出フラッシング処理を実行する。これにより、非吐出フラッシングが実行されない第1期間P1の前の第5期間P5において、第1所定頻度F1よりも多い第4所定頻度F4にて非吐出フラッシングが実行される。また、非吐出フラッシングが実行されない第3期間P3の前の第8期間P8において、第3所定頻度F3よりも多い第2所定頻度F2にて非吐出フラッシングが実行される。これにより、非吐出フラッシングが実行されない期間における液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる。
【0080】
<変形例6>
変形例6に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~5において、制御装置30は、循環ポンプ26cをオフに切り替えてから、非吐出フラッシングを停止する。
【0081】
例えば、図6の例のステップS6の切り替え処理では、制御装置30は、図5(c)、図7(c)及び図8(c)に示す第3時刻T3にて、循環ポンプ26cをオンからオフに切り替えている。その後、制御装置30は、第8時刻T8にて非吐出フラッシングための駆動素子23の駆動を停止してから、印刷データに基づいた印刷処理が終了する(ステップS8:YES)。
【0082】
<変形例7>
変形例7に係る液体吐出装置10では、上記実施の形態及び変形例1~6において、液体は、UVインク以外の液体である。UVインクは、紫外線(UV)により硬化するため、他のインクよりも乾燥し難い。これに対して、UVインク以外の液体は、UVインクよりも乾燥し易い。よって、液体の循環流量に応じて非吐出フラッシングの頻度を決定することにより、乾燥し易い液体であっても、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる。
【0083】
<変形例8>
変形例8に係る液体吐出装置10は、上記実施の形態及び変形例1~7において、ヘッド20を搭載して移動するキャリッジ16aを備えている。制御装置30は、キャリッジ16aを移動させる移動処理を実行する。制御装置30は、移動処理において、循環ポンプ26cのオフからオンへの切り替えにより液体の循環流量が増加してから一定になった後に、キャリッジ16aの移動を開始させる。
【0084】
具体的には、印刷処理では、制御装置30は記録動作及び搬送動作を交互に実行する。この記録動作は、ヘッド20を搭載したキャリッジ16aを移動させる移動処理、及び、ヘッド20から液体を吐出させる吐出処理を含んでいる。制御装置30は、この移動処理を、循環流量の増加期間の終了時(第2時刻T2)よりも後の定量期間において開始する。
【0085】
このような定量期間は、増加期間よりもメニスカスが安定している。このため、この定量期間においてキャリッジ16aの移動を開始することにより、移動による動圧がメニスカスに影響することを低減し、メニスカスブレイク及び意図しない吐出を防止することができる。
【0086】
<変形例9>
変形例9に係る液体吐出装置10は、上記変形例8において、制御装置30は、移動処理において、循環ポンプ26cのオンからオフへの切り替えにより液体の循環流量が減少開始する前の一定である間に、キャリッジ16aの移動を停止させる。
【0087】
例えば、図5図7及び図8における減少期間の開始時(第3時刻T3)よりも前の定量期間に、制御装置30は移動処理のキャリッジ16aの移動を停止させる。このような定量期間は、減少期間よりもメニスカスが安定している。このため、この定量期間においてキャリッジ16aの移動を停止することにより、移動による動圧がメニスカスに影響することを低減し、メニスカスブレイク及び意図しない吐出を防止することができる。
【0088】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、消費電力の低減を図りつつ、液体の乾燥に起因する吐出不良を低減することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラム等として有用である。
【符号の説明】
【0090】
10 :液体吐出装置
14 :タンク
16a :キャリッジ
17 :循環流路
20 :ヘッド
21 :ノズル
23 :駆動素子
26c :循環ポンプ
30 :制御装置
図1
図2
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図5
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図7
図8