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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241210BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20241210BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241210BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241210BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 Z
B32B27/20 Z
B32B27/18 F
E04F13/08 G
E04F15/02 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020155819
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2021142744
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019176004
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020043299
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住田 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 臣
(72)【発明者】
【氏名】中島 智美
(72)【発明者】
【氏名】根津 義昭
(72)【発明者】
【氏名】茅原 利成
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-260300(JP,A)
【文献】特開2015-116705(JP,A)
【文献】特開2013-063635(JP,A)
【文献】特開2007-216692(JP,A)
【文献】特開平10-286932(JP,A)
【文献】特開2001-232727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
E04F 13/00-13/30
E04F 15/00-15/22
D06N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、粘着剤層、基材シート、及び表面保護層をこの順に有する化粧シートであって、
(1)前記表面保護層は、硬化型樹脂及び無機フィラーを含有し、前記硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体、及び、アクリルポリオールを含み、
(2)前記無機フィラーは、球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーであり、
(3)前記化粧シートを、該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断した断面を観察して測定される、任意の100個の前記無機フィラーの粒子径のうち90%以上の前記無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満である、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記無機フィラーは、粒度分布における体積基準累積50%粒子径(D50)が、3~7μmである、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記無機フィラーは、粒度分布における体積基準累積10%粒子径(D10)が、1~2μmである、請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記無機フィラーは、粒度分布における体積基準累積90%粒子径(D90)が、8~9μmである、請求項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記表面保護層は、消臭剤を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記消臭剤は、不定形のフィラーであり、前記不定形のフィラーは、シリカ、金属塩の単体、金属塩の複合物、及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記消臭剤の平均粒子径は1μm未満である、請求項5又は6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂単位を30質量%以上含有する、請求項1~7のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項9】
前記表面保護層の厚みは、3~10μmである、請求項1~のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項10】
前記基材シートは、ポリ塩化ビニル樹脂を70質量%以上含有する、請求項1~のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項11】
前記表面保護層は、抗ウイルス剤を含有する、請求項1~10のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項12】
前記粘着剤層は、アクリル系樹脂を含有する、請求項1~11のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項13】
壁材用化粧シートである、請求項1~12のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項14】
基材上に、請求項1~13のいずれかに記載の化粧シートを有する化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面や建材、家具、電化製品等の様々な物品の表面には、意匠性を付与するために、化粧シートが貼り付けられている。
【0003】
建築物の壁面や建材、家具、電化製品等の様々な物品は、日常生活において人や物が接触して擦れることがあり、これらの表面に貼り付けられている化粧シートには、耐擦傷性が要求される。
【0004】
また、化粧シートには、耐傷性等を付与するために、アルミナ等のフィラーを含有する表面保護層が形成される。このような表面保護層が形成された化粧シートを用いた化粧材として、基材の表面に、絵柄層及び保護層を形成した化粧材において、該保護層が球状アルミナと無機或いは有機の球状フィラーを含有する電離放射線硬化性樹脂層からなる耐摩耗性化粧材が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述の化粧材は、耐白化性については検討されていない。化粧シートは、表面保護層に耐傷性を付与するために表面保護層の硬度を高くすると、壁面の角部等の平面でない下地への施工の際に、折り曲げた箇所に割れや、樹脂と球状フィラーとの剥離により白化を生じるという問題がある。特に、平面でない壁面に化粧シートを施工する場合、化粧シートの裏面に設けられた粘着剤層を用いて壁面に施工(タック貼り)し、ドライヤー等により加熱しながら被施工面の形状に追従させていき、壁面の形状に追従させる施工方法により施工される場合がある。上述の表面保護層の割れ等による白化は、平面でない壁面への施工の際に常温環境下又は低温環境下で発生し、加熱により壁面に追従させて施工した後の化粧シートにおいても、白化として存在するという問題がある。
【0006】
従って、耐擦傷性に優れ、且つ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少する化粧シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-286932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐擦傷性に優れ、且つ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少する化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、少なくとも、粘着剤層、基材シート、及び表面保護層をこの順に有する化粧シートにおいて、表面保護層が、硬化型樹脂及び特定の無機フィラーを含有し、上記無機フィラーのうち90%以上の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満である構成とすることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の化粧シート及び化粧板に関する。
1.少なくとも、粘着剤層、基材シート、及び表面保護層をこの順に有する化粧シートであって、
(1)前記表面保護層は、硬化型樹脂及び無機フィラーを含有し、
(2)前記無機フィラーは、球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーであり、
(3)前記化粧シートを、該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断した断面を観察して測定される、任意の100個の前記無機フィラーの粒子径のうち90%以上の前記無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満である、
ことを特徴とする化粧シート。
2.前記無機フィラーは、粒度分布における体積基準累積50%粒子径(D50)が、3~7μmである、項1に記載の化粧シート。
3.前記無機フィラーは、粒度分布における体積基準累積10%粒子径(D10)が、1~2μmである、項1又は2に記載の化粧シート。
4.前記無機フィラーは、粒度分布における体積基準累積90%粒子径(D90)が、8~9μmである、項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
5.前記表面保護層は、消臭剤を含有する、項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
6.前記消臭剤は、不定形のフィラーであり、前記不定形のフィラーは、シリカ、金属塩の単体、金属塩の複合物、及びゼオライトからなる群より選択される少なくとも一種である、項5に記載の化粧シート。
7.前記消臭剤の平均粒子径は1μm未満である、項5又は6に記載の化粧シート。
8.前記硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体、及び、アクリルポリオールを含む、項1~7のいずれかに記載の化粧シート。
9.前記硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂単位を30質量%以上含有する、項8に記載の化粧シート。
10.前記表面保護層の厚みは、3~10μmである、項1~9のいずれかに記載の化粧シート。
11.前記基材シートは、ポリ塩化ビニル樹脂を70質量%以上含有する、項1~10のいずれかに記載の化粧シート。
12.前記表面保護層は、抗ウイルス剤を含有する、項1~11のいずれかに記載の化粧シート。
13.前記粘着剤層は、アクリル系樹脂を含有する、項1~12のいずれかに記載の化粧シート。
14.壁材用化粧シートである、項1~13のいずれかに記載の化粧シート。
15.基材上に、項1~14のいずれかに記載の化粧シートを有する化粧板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧シートは、耐擦傷性に優れ、且つ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の化粧シートの層構成の一例を示す模式図である。
図3】本発明の化粧板の層構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化粧シート、及び化粧板について詳細に説明する。なお、本発明の化粧シートは、化粧シートの基材と積層される側とは反対側の面がいわゆる「おもて面」であり、壁面、物品の表面等に施工された際に視認される面である。よって、本明細書では、化粧シートの基材と積層される側とは反対側の面の方向を「上」と称し、その反対側、すなわち基材と積層される側の面の方向を「裏」又は「下」と称する。同様に、本明細書では、化粧板の化粧シート側の面の方向を「上」と称し、その反対側、すなわち基材側の面の方向を「裏」又は「下」と称する。
【0014】
また、本明細書において、常温とは23℃を意味し、低温とは5℃以下を意味する。
【0015】
1.化粧シート
本発明の化粧シートは、少なくとも、粘着剤層、基材シート、及び表面保護層をこの順に有する化粧シートであって、(1)前記表面保護層は、硬化型樹脂及び無機フィラーを含有し、(2)前記無機フィラーは、球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーであり、(3)前記化粧シートを、該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断した断面を観察して測定される、任意の100個の前記無機フィラーの粒子径のうち90%以上の前記無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満であることを特徴とする。
【0016】
上記特徴を有する本発明の化粧シートは、(1)表面保護層が硬化型樹脂及び無機フィラーを含有し、(2)上記無機フィラーが、球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーであるので、耐擦傷性に優れている。また、本発明の化粧シートは、(2)上記無機フィラーが、球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーであり、且つ、(3)上記化粧シートを、当該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断した断面を観察して測定される、任意の100個の上記無機フィラーの粒子径のうち90%以上の前記無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満であることにより、上記特定の2種類の無機フィラーを含有し、これらの無機フィラーの粒子径が特定の範囲内であり、均一となっている。このため、平面でない壁面へ、常温環境下又は低温環境下で施工する際に、表面保護層中の硬化型樹脂と無機フィラーとの剥離や、硬化型樹脂の割れによって、白化が生じても、加熱によって硬化型樹脂が膨張し易くなっており、上記剥離や割れによって生じた隙間が塞がり易く、施工により生じた白化が加熱により減少する。
【0017】
すなわち、本発明の化粧シートは、少なくとも、粘着剤層、基材シート、及び表面保護層をこの順に有しており、上記(1)、(2)及び(3)の構成を備えることがあいまって、耐擦傷性に優れ、且つ、表面に生じた白化が、加熱により減少する。
【0018】
本発明の化粧シートは、少なくとも、粘着剤層、基材シート、及び表面保護層をこの順に有する化粧シートであって、上記(1)~(3)の構成を備える限り、層構成については限定されない。本発明の化粧シートの層構成の一例としては、例えば、図1に示すように、粘着剤層11、基材シート12、絵柄模様層13(ベタインキ層及び/又は柄インキ層)、接着剤層(図示せず)、透明性樹脂層14、及び表面保護層15を順に有する層構成が挙げられる(ダブリング仕様の化粧シート)。また、本発明の化粧シートは、図2に示すように、離型層17、粘着剤層11、基材シート12、絵柄模様層13(ベタインキ層及び/又は柄インキ層)、接着剤層(図示せず)、透明性樹脂層14、及び表面保護層15を順に有する層構成が挙げられる。以下、かかる層構成の化粧シートを代表例として具体的に説明する。
【0019】
(表面保護層)
表面保護層(透明性表面保護層)は、化粧シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。表面保護層は、硬化型樹脂及び無機フィラーを含有する。
【0020】
<硬化型樹脂>
表面保護層は、硬化型樹脂を含有する。当該硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂等が挙げられる。
【0021】
熱硬化型樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、エステル-アクリル共重合体、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、より一層硬化型樹脂と基材シートとの密着性に優れる点で、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が好ましく、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0022】
熱硬化型樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。より一層耐候性に優れる点で、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体)、及び、アクリルポリオールを混合して用いることが好ましい。なお、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体、及び、アクリルポリオールを混合して用いる場合、硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体、及び、アクリルポリオール等のポリオール成分を含む混合樹脂を一旦調製することができ、すなわち、硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体、及び、アクリルポリオールを含む構成とすることが好ましい。当該混合樹脂にイソシアネート成分を後添加して、硬化型樹脂を再度調製することにより、混合樹脂の液安定性が優れているため、より一層表面保護層が形成し易くなる。
【0023】
硬化型樹脂が、塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体)、及び、アクリルポリオールを含有する場合、硬化型樹脂は、塩化ビニル樹脂単位を20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましい。塩化ビニル樹脂単位を上記範囲で含有することにより、表面保護層の耐摩耗性がより一層向上する。
【0024】
硬化型樹脂である上記熱硬化型樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
【0025】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等のケイ素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
電離放射線としては、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線、電子線が好ましく、電子線がより好ましい。
【0027】
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190~380nm程度である。
【0028】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100~1000keV程度が好ましく、100~300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2~15Mrad程度が好ましい。
【0029】
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
【0030】
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,N-ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
【0031】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1~10質量部程度である。
【0032】
<無機フィラー>
表面保護層は、無機フィラーを含有する。本発明において、表面保護層が含有する無機フィラーは、球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーである。
【0033】
なお、表面保護層は、不定形の無機フィラーも含んでいてもよいが、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少するとの本発明の効果をより一層発揮し易い観点から、不定形の無機フィラーは実質的に含まないことが好ましい。なお、実質的に含まないとは、表面保護層中の不定形の無機フィラーの含有量が、硬化型樹脂を100質量部として、10質量部以下であることを意味しており、5質量部以下が好ましく、0質量部がより好ましい。
【0034】
本明細書において、上記不定形の無機フィラーは、平均粒子径が1μm以上の不定形の無機フィラーであり、後述する消臭剤とは、消臭剤の平均粒子径が1μm未満であることにより区別される。
【0035】
本発明の化粧シートにおいて、化粧シートを、当該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断した断面を観察して測定される、任意の100個の前記無機フィラーの粒子径のうち粒子径が1μm以上10μm未満である無機フィラーは、90%以上である。粒子径が1μm以上10μm未満である無機フィラーが90%未満であると、化粧シートを折り曲げた際に生じる硬化型樹脂と無機フィラーとの間の隙間に起因する白化が、加熱により減少しない。粒子径が1μm以上10μm未満である無機フィラーは、92%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、粒子径が1μm以上10μm未満である無機フィラーの割合の上限は特に限定されず、100%であってもよく、100%以下であってもよい。
【0036】
なお、上記無機フィラーの粒子径の測定方法、及び、粒子径が1μm以上10μm未満である無機フィラーの割合の算出方法は、詳細には、以下の通りである。すなわち、化粧シートを、当該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断する。次いで、光学顕微鏡((株)KEYENCE製 製品名:VHX-5000)を用いて無機フィラーが目視で確認できる倍率である1000倍に調整する。化粧シートの断面を光学顕微鏡で観察し、無機フィラーの観察個数を数えながら粒子径を測定する。この作業を無機フィラーの観察個数が100個になるまで繰り返し行う。測定された100個の無機フィラーの粒子径のうち、1μm以上10μm未満の粒子径の無機フィラーの個数を数え、100個中の1μm以上10μm未満の粒子径の無機フィラーの個数の割合を算出する。なお、上記算出方法においては、後述する消臭剤は測定対象とせず、考慮しない。上記無機フィラーと消臭剤とは、消臭剤の平均粒子径が1μm未満の不定形のフィラーであることにより区別できる。
【0037】
無機フィラーの平均粒子径は、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましく、3~5μmが更に好ましい。無機フィラーの平均粒子径が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートがより一層耐擦傷性に優れ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより、より一層減少する。
【0038】
本明細書において、無機フィラーの平均粒子径は、以下の測定方法により測定される値である。すなわち、化粧シートを、当該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断する。次いで、光学顕微鏡((株)KEYENCE製 製品名:VHX-5000)を用いて無機フィラーが目視で確認できる倍率である1000倍に調整する。化粧シートの断面を光学顕微鏡で観察し、無機フィラーの観察個数を数えながら粒子径を測定する。この作業を無機フィラーの観察個数が100個になるまで繰り返し行う。測定された100個の無機フィラーの粒子径の平均を、平均粒子径とする。なお、上記無機フィラーの平均粒子径の測定方法では、後述する消臭剤は測定対象とせず、考慮しない。上記無機フィラーと消臭剤とは、消臭剤が平均粒子径が1μm未満の不定形のフィラーであることにより区別できる。
【0039】
アルミナは、球状であれば特に限定されず、化粧シートに耐摩耗性を付与することができる従来公知のアルミナを用いることができる。このようなアルミナとしては、例えば、α-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ等が挙げられる。
【0040】
アルミナの平均粒子径は、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましく、3~5μmが更に好ましい。アルミナの平均粒子径が上記範囲であることにより、上記測定方法による無機フィラーの粒子径をより一層1μm以上10μm未満に調整し易くなる。また、アルミナの平均粒子径が上記範囲であることにより、後述するように、表面保護層が消臭剤を含有する場合に、平均粒子径が1μm未満の不定形のフィラーである消臭剤との区別がより一層明確となる。
【0041】
アルミナとしては、市販品を用いることができる。
【0042】
表面保護層中のアルミナの含有量は、硬化型樹脂を100質量部として、5~20質量部が好ましく、7~15質量部がより好ましく、10~13質量部が更に好ましい。アルミナの含有量が上記範囲であることにより、化粧シートの耐摩耗性がより一層向上する。
【0043】
アルミナ以外の球状の他の無機フィラーは、球状であれば特に限定されず、化粧シートに耐摩耗性を付与することができる従来公知の無機フィラーを用いることができる。このような無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、より一層耐摩耗性に優れる点で、シリカが好ましい。
【0044】
アルミナ以外の球状の他の無機フィラーの平均粒子径は、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましく、3~5μmが更に好ましい。アルミナ以外の球状の他の無機フィラーの平均粒子径が上記範囲であることにより、上記測定方法による無機フィラーの粒子径をより一層1μm以上10μm未満に調整し易くなる。また、アルミナ以外の球状の他の無機フィラーの平均粒子径が上記範囲であることにより、後述するように、表面保護層が消臭剤を含有する場合に、平均粒子径が1μm未満の不定形のフィラーである消臭剤との区別がより一層明確となる。
【0045】
表面保護層中のアルミナ以外の球状の無機フィラーの含有量は、硬化型樹脂を100質量部として、1~20質量部が好ましく、5~15質量部がより好ましく、7~13質量部が更に好ましい。アルミナ以外の球状の無機フィラーの含有量が上記範囲であることにより、化粧シートの耐摩耗性がより一層向上する。
【0046】
無機フィラー(球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラー)は、粒度分布における体積基準累積50%粒子径(D50)が、3~7μmが好ましく、4~6μmがより好ましい。無機フィラーの体積基準累積50%粒子径(D50)が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの表面に生じた白化が、加熱により、より一層減少する。
【0047】
無機フィラー(球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラー)は、粒度分布における体積基準累積10%粒子径(D10)が、1~2.5μmが好ましく、1~2μmがより好ましい。無機フィラーの体積基準累積10%粒子径(D10)が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの表面に生じた白化が、加熱により、より一層減少する。
【0048】
無機フィラー(球状のアルミナ、及び、アルミナ以外の球状の他の無機フィラー)は、粒度分布における体積基準累積90%粒子径(D90)が、7.5~9μmが好ましく、8~9μmがより好ましい。無機フィラーの体積基準累積90%粒子径(D90)が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの表面に生じた白化が、加熱により、より一層減少する。
【0049】
上記無機フィラーの粒度分布における体積基準累積粒子径は、レーザー回折散乱法により計測される粒度分布における体積基準累積粒子径である。
【0050】
表面保護層を形成する方法としては、例えば、硬化型樹脂及び無機フィラーを含有する表面保護層形成用組成物をグラビアリバース法、ロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。
【0051】
表面保護層の厚みは1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、3.5μm以上が更に好ましい。また、表面保護層の厚みは50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、5μm以下が特に好ましい。表面保護層の厚みの下限が上記範囲であることにより、化粧シートの耐傷性及び耐摩耗性がより一層向上する。また、表面保護層の厚みの上限が上記範囲であることにより、耐摩耗性がより一層向上する。表面保護層の厚みは、3~10μmが好ましい。
【0052】
表面保護層は必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0053】
表面保護層は、抗ウイルス剤を含有することが好ましい。抗ウイルス剤としては一般的に有機系と無機系とに大別することができる。有機系の抗ウイルス剤としては、第4級アンモニウム塩系、第4級ホスホニウム塩系、ピリジン系、ピリチオン系、ベンゾイミダゾール系、有機ヨード系、イソチアゾリン系、アニオン系等の抗ウイルス剤が挙げられる。無機系の抗ウイルス剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア、ガラス等に担持させた抗ウイルス剤が挙げられる。
【0054】
上記有機系の抗ウイルス剤のなかでも、特に粒子形状を保つ抗ウイルス剤であるベンゾイミダゾール系抗ウイルス剤またはアニオン系抗ウイルス剤が好適に用いられる。抗ウイルス剤が粒子形状を保つとは、抗ウイルス剤が表面保護層を形成するための組成物(硬化前のインキ)内で溶解することなく、硬化後の表面保護層中に粒子の状態で存在することを意味する。このため、表面保護層を形成する過程において、抗ウイルス剤の粒子が浮かび上がりやすくなり、表面保護層の最表面側に抗ウイルス剤の粒子を偏在させやすくすることができる。そして、表面保護層の最表面側に抗ウイルス剤の粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス剤の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
【0055】
上記アニオン系抗ウイルス剤としては例えばスチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含むものが好ましい。また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物はスチレン、スルホン酸ナトリウム、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸の構造の内少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、全ての構造を含むことがより好ましい。これは、ウイルスにはエンベロープ有無の2種類が存在し、それぞれに対し効果的に活性阻害しうる抗ウイルス剤の構造が異なると考えられるためである。
【0056】
上記無機系の抗ウイルス剤としては、生体毒性が無く安全性に優れる観点から銀系の抗ウイルス剤が好ましく、中でもリン酸系ガラス銀担持化合物または銀ゼオライト化合物は少量でも抗ウイルス性能を発現することから添加量を抑制することができるため、より好ましい。
【0057】
上記抗ウイルス剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
本明細書において、消臭剤は、平均粒子径が1μm未満の不定形のフィラーである。不定形のフィラーとしては、平均粒子径が1μm未満であり、不定形であり、消臭効果を発揮できれば特に限定されず、シリカ、金属塩の単体、金属塩の複合物、ゼオライト等が挙げられる。上記物質により形成される不定形のフィラーは、平均粒子径が1μm未満であり不定形であることにより表面積が大きく、凹部や微細孔の部分に臭気の原因となる物質を吸着させることができ、消臭剤としての機能を十分に発揮することができる。
【0059】
金属塩の単体としては、酸化亜鉛等が挙げられる。また、金属塩の複合物としては、亜鉛等の無機物にアミン類等の有機物を担持させた化合物が挙げられる。
【0060】
ゼオライトとしては、金属塩の複合物を焼成して得られるゼオライトを用いることが好ましく、すなわち、ゼオライトは、金属塩の複合物を焼成してなるゼオライトが好ましい。金属塩の複合物としては、上述の金属塩の複合物を用いることができる。
【0061】
消臭効果を発揮できる不定形のフィラーとしては、例えば、下記消臭性試験による低減率が90%以上のものが挙げられる。
消臭性試験
常温環境下(23℃)で試料をポリフッ化ビニルフィルムを用いて作製したバック(以下、テドラーバックと称する。)に0.1g入れ、アンモニアガス(初期濃度100ppm)を3L注入する。24時間静置後のテドラーバック中の残存ガス濃度をガス検知管で測定する。アンモニアガスの初期濃度に対する24時間後の残存ガス濃度の割合を算出し、低減率とする。
【0062】
消臭剤の平均粒子径は、1μm未満であり、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましい。消臭剤の平均粒子径の上限が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートが耐擦傷性に優れ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少するとの効果を発揮しつつ、消臭機能をより一層発現することができる。また、消臭剤の平均粒子径の下限は特に限定されず、例えば、0.05μm、0.01μm等である。
【0063】
なお、消臭剤の平均粒子径が1μm未満であることにより、本発明の化粧シートの表面保護層に含まれる無機フィラーとは測定時に区別し易く、混同され難い。
【0064】
本明細書において、消臭剤の平均粒子径は、以下の測定方法により測定される値である。すなわち、化粧シートを、当該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断する。次いで、走査型電子顕微鏡((株) 日立ハイテクノロジーズ 製品名:S-4800形電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて消臭剤が確認できる倍率である20000倍に調整する。化粧シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、消臭剤の観察個数を数えながら粒子径を測定する。この作業を消臭剤の観察個数が100個になるまで繰り返し行う。測定された100個の消臭剤の粒子径の平均を、平均粒子径とする。なお、上記消臭剤の平均粒子径の測定方法では、上述の無機フィラーは測定対象とせず、考慮しない。上記無機フィラーと消臭剤とは、無機フィラーが球状であり、消臭剤が不定形のフィラーであることにより区別できる。
【0065】
消臭剤の粒度分布における体積基準累積50%粒子径(D50)は、0.03~0.5μmが好ましく、0.05~0.3μmがより好ましく、0.08~0.2μmが更に好ましい。上記範囲であることにより、本発明の化粧シートが耐擦傷性に優れ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少するとの効果を発揮しつつ、消臭機能を発現することができる。
【0066】
消臭剤の粒度分布における体積基準累積10%粒子径(D10)は、0.01~0.04μmが好ましく、0.01~0.03μmがより好ましい。上記範囲であることにより、本発明の化粧シートが耐擦傷性に優れ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少するとの効果を発揮しつつ、消臭機能をより一層発現することができる。
【0067】
消臭剤の粒度分布における体積基準累積90%粒子径(D90)が0.6~1.0μmが好ましく、0.7~0.9μmがより好ましい。上記範囲であることにより、本発明の化粧シートが耐擦傷性に優れ、表面に生じた白化が、施工後に化粧シートを加熱することにより減少するとの効果を発揮しつつ、消臭機能を発現することができる。
【0068】
上記消臭剤の粒度分布における体積基準累積粒子径は、レーザー回折散乱法により計測される粒度分布における体積基準累積粒子径である。
【0069】
なお、本明細書において、表面保護層の厚みは、図1及び図2においてtsとして示されるように、微粒子16が表面保護層の表面から頭出ししている場合には、当該頭出しした微粒子16以外の箇所を表面保護層の表面として測定する。また、図1及び図2のように、化粧シートにエンボス加工により凹凸模様が形成されている場合は、凹凸模様以外の箇所において表面保護層の厚みを測定する。
【0070】
(基材シート)
基材シートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂等の合成樹脂製シートを用いることができる。基材シートは、上記樹脂1種単独からなる合成樹脂製シートを用いてもよいし、上記樹脂を2種以上混合して形成した合成樹脂製シートを用いてもよい。これらの中でも、ポリ塩化ビニル樹脂を含有する合成樹脂製シートが好ましい。
【0071】
基材シートがポリ塩化ビニル樹脂を含有する場合、ポリ塩化ビニル樹脂の含有量は、基材シートを100質量%として、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂の含有量の下限が上記範囲であることにより、本発明の化粧シートの耐擦傷性がより一層向上する。
【0072】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることができ、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。
【0073】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET-G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレートが好ましい。
【0074】
基材シートの厚みは、20~300μmが好ましく、40~200μmがより好ましい。基材シートは、必要に応じて着色されていてもよい。また、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよいし、隣接する層との密着性を高めるための下地塗料であるプライマーが塗布されていてもよい。
【0075】
(粘着剤層)
粘着剤層は、基材シートの裏面に、化粧シートに接着性を付与するために設けられる。
【0076】
粘着剤層を形成するための樹脂としては、粘着性を示すことができれば特に限定されず、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、化粧シートにより一層高い接着性を付与することができる点で、アクリル系樹脂を含有することが好ましい。
【0077】
粘着剤層の厚みは、10~100μmが好ましく、30~70μmがより好ましく、40~50μmが更に好ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であることにより、化粧シートと、基材又は被着体との接着性がより一層向上する。
【0078】
(絵柄模様層)
絵柄模様層は、柄インキ層及び/又はベタインキ層から構成される。絵柄模様層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷法により形成できる。柄インキ層の模様は、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様等が挙げられる。ベタインキ層は、着色インキのベタ印刷により得られる。絵柄模様層は、柄インキ層及びベタインキ層の片方又は両方から構成される。
【0079】
絵柄模様層に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものが使用できる。この中でも、環境問題、被印刷面との密着性等の観点より、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂、アクリルウレタン系樹脂含有硬化型樹脂等の1種又は2種以上の混合物が好ましく、アクリルウレタン系樹脂含有硬化型樹脂がより好ましい。
【0080】
(透明性接着剤層)
透明性接着剤層は、必要に応じて絵柄模様層と透明性樹脂層との間に設けられる。透明性接着剤層は、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤を塗布・乾燥させることにより得られる。
【0081】
透明性接着剤層は、乾燥後の厚みが0.1~30μm程度が好ましく、1~5μm程度がより好ましい。
【0082】
(透明性樹脂層)
透明性樹脂層は、透明性の樹脂層であれば特に限定されず、例えば、透明性の熱可塑性樹脂により好適に形成できる。
【0083】
具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等の合成樹脂が挙げられる。上記の中でも、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂がより好ましい。
【0084】
透明性樹脂層は、着色されていてもよい。この場合は、熱可塑性樹脂に着色剤を添加すればよい。着色剤としては、絵柄層で用いる顔料又は染料が使用できる。
【0085】
透明性樹脂層には、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えば、ゴム)等の各種の添加剤を含めてもよい。
【0086】
透明性樹脂層の厚みは、50μm以上が好ましく、60μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましい。また、透明性樹脂層の厚みは、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0087】
透明性樹脂層の表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0088】
透明性樹脂層の表面には、プライマー層(表面保護層の形成を容易とするためのプライマー層)が形成されていてもよい。
【0089】
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
【0090】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.1~10μm、好ましくは1~5μm程度である。
【0091】
(離型層)
本発明の化粧シートは、粘着剤層の裏面に離型層が積層されていてもよい。
【0092】
離型層としては、粘着剤層を被覆することができ、離型性を示すことができれば特に限定されず、離型紙;シリコン系樹脂等を含有する離型シート等が挙げられる。
【0093】
離型層の厚みは特に限定されないが、通常50~200μm、好ましくは100~150μm程度である。
【0094】
以上説明した各層の積層は、例えば、基材シートの一方の面に絵柄模様層(ベタインキ層、柄インキ層)を印刷により形成後、絵柄模様層上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤を介して透明性樹脂層をドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、さらに表面保護層を形成した後に、基材シートの裏面に粘着剤層を形成するための樹脂を塗布して乾燥させて粘着剤層を形成し、当該粘着剤層に離型層を積層する方法により行うことができる。
【0095】
化粧シートの総厚み(離型層を除く)は160μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。また、化粧シートの総厚みは250μm以下が好ましく、230μm以下がより好ましく、210μm以下が更に好ましい。化粧シートの総厚みの下限が上記範囲であることにより、化粧シートの耐傷性及び耐摩耗性がより一層向上する。また、化粧シートの総厚みの上限が上記範囲であることにより、化粧シートの耐白化性がより一層向上する。
【0096】
なお、本明細書において、化粧シートの総厚みは、図1及び図2においてtdとして示されるように、微粒子16が表面保護層の表面から頭出ししている場合には、当該頭出しした微粒子16以外の箇所を化粧シートの表面として測定する。また、図1及び図2のように、化粧シートにエンボス加工により凹凸模様が形成されている場合は、凹凸模様以外の箇所において化粧シートの総厚みを測定する。
【0097】
化粧シートには、表面保護層側(化粧シートの上側)からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成してもよい。凹凸模様は、加熱プレス、ヘアライン加工等により形成できる。凹凸模様としては、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0098】
なお、本明細書において、上記化粧シートの各層の厚みは、上記凹凸模様が形成されていない箇所で測定した値である。
【0099】
本発明の化粧シートの上述の各層に添加される各種添加剤(表面保護層が含有する球状のアルミナ、アルミナ以外の球状の他の無機フィラー、消臭剤等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
【0100】
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
【0101】
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0102】
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
【0103】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0104】
上記コレステロール類としては、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0105】
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
【0106】
本発明の化粧シートは、上述の構成であるので、耐擦傷性に優れ、且つ、表面に生じた白化が、加熱により減少する。これにより、壁面等の平面でない被着体に対して好適に施工することができる。このため、本発明の化粧シートは、内装材用化粧シート、特に、壁材用化粧シートとして好適に用いることができる。
【0107】
2.化粧板
本発明の化粧板は、基材上に、上記化粧シートを有する化粧板である。
【0108】
(化粧シート)
本発明の化粧板を構成する化粧シートとしては、上記に説明した本発明の化粧シートを用いることができる。
【0109】
(基材)
基材の材質としては特に限定されず、例えば、化粧板に通常用いられる木質板、溶融亜鉛メッキ鋼板等が挙げられる。
【0110】
基材の厚みは特に限定されず、0.1~1.0mmが好ましく、0.3~0.7mmがより好ましい。
【0111】
基材のおもて面に化粧シートを積層する方法としては特に限定されず、基材のおもて面と、化粧シートの接着剤層とを積層し、養生する等の従来公知の方法により積層することができる。
【0112】
本発明の化粧板は、上述の構成であるので、耐擦傷性に優れ、且つ、表面に生じた白化が、加熱により減少する。また、基材上に化粧シートを積層した後に、基材を折り曲げることにより白化が生じた場合であっても、基材上の化粧シートを加熱することで、白化が減少する。このため、本発明の化粧板は、内装材用化粧板、特に、壁材用化粧板として好適に用いることができる。
【実施例
【0113】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0114】
実施例1
(化粧シートの製造)
基材シートとして、80μm厚の着色ポリ塩化ビニルフィルムを用意した。次いで、基材シートのおもて面に厚みが2μmとなるように、ポリ塩化ビニルフィルム用の印刷インキである、アクリルウレタン系樹脂含有印刷インキをグラビア印刷法により塗布し、絵柄模様層を形成した。当該絵柄模様層上に、透明性樹脂層として、厚さ80μmの透明ポリ塩化ビニル樹脂シートを熱ラミネート方式で積層すると同時に、透明性樹脂層のおもて面からエンボス形状を賦形した。次いで、透明性樹脂層のおもて面に、グラビアリバース方式で、以下のようにして調製した表面保護層形成用組成物を塗工し、ドライヤーによる風乾により熱風で加熱して硬化させて、厚みが3.8μmの表面保護層を形成した。
【0115】
(表面保護層形成用組成物)
以下の成分を混練して、混合樹脂を調製した。
・塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合体;100質量部
・アクリルポリオール:300質量部
上記混合樹脂100質量部に対して、下記アクリルポリオールを添加して、樹脂成分を調製した。
・イソシアネート:10質量部
上述のようにして調製した樹脂成分と、下記無機フィラーとを混合して、下記の配合の表面保護層形成用組成物を調製した。
・樹脂成分:100質量部
・無機フィラー
球状のアルミナ:12質量部(平均粒子径5μm)
球状のシリカ:5質量部(平均粒子径5μm)
なお、無機フィラーは、レーザー回折散乱法により計測される粒度分布における、体積基準累積50%粒子径(D50)が5μm、体積基準累積10%粒子径(D10)が1μm、体積基準累積90%粒子径(D90)が、9μmであった。
【0116】
次いで、基材シートの裏面に、アクリル系樹脂をコンマコーター方式で厚みが45μmとなるよう塗布し、乾燥させて、粘着剤層を形成した。次いで、厚みが125μmの離型紙を粘着剤層に積層して、離型層を形成し、化粧シートを製造した。後述する測定方法により無機フィラーの粒子径を測定したところ、無機フィラーの粒子径のうち90%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満であった。
【0117】
実施例1の化粧シートの総厚み(離型紙を除く)は200μmであった。
【0118】
(化粧板の製造)
基材として、厚みが0.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼板を用意した。化粧シートの粘着剤層と、基材とを貼り合わせて、化粧板を製造した。
【0119】
実施例2
下記の無機フィラーを用い、無機フィラーの粒子径のうち95%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満となるよう調整した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧板を製造した。
・無機フィラー
球状のアルミナ:12質量部(平均粒子径3μm)
球状のシリカ:5質量部(平均粒子径3μm)
【0120】
実施例3
下記の無機フィラー及び消臭剤を用い、無機フィラーの粒子径のうち90%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満となるよう調整した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧板を製造した。
・無機フィラー
球状のアルミナ:12質量部(平均粒子径5μm)
球状のシリカ:5質量部(平均粒子径5μm)
・消臭剤
不定形シリカ:10質量部(平均粒子径0.1μm)
【0121】
比較例1
下記の無機フィラーを用い、無機フィラーの粒子径のうち85%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満となるよう調整した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧板を製造した。
・無機フィラー
球状のアルミナ:12質量部(平均粒子径8μm)
球状のシリカ:5質量部(平均粒子径8μm)
【0122】
比較例2
下記の無機フィラーを用い、無機フィラーの粒子径のうち90%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満となるよう調整した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧板を製造した。
・無機フィラー
球状のアルミナ:12質量部(平均粒子径5μm)
【0123】
比較例3
下記の無機フィラーを用い、無機フィラーの粒子径のうち90%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満となるよう調整した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧板を製造した。
・無機フィラー
球状のシリカ:5質量部(平均粒子径5μm)
【0124】
比較例4
下記の無機フィラーを用い、無機フィラーの粒子径のうち90%の無機フィラーの粒子径が、1μm以上10μm未満となるよう調整した以外は実施例1と同様にして、化粧シート及び化粧板を製造した。
・無機フィラー
不定形シリカ:7質量部(平均粒子径5μm)
【0125】
(評価)
上述のようにして製造された実施例及び比較例の化粧シート及び化粧板について、以下の方法により評価を行った。
【0126】
(1)粒子径の測定及び割合算出
化粧シートを、当該化粧シートの表面の法線と平行方向に切断した。次いで、光学顕微鏡((株)KEYENCE製 製品名:VHX-5000)を用いて球状の無機フィラーが目視で確認できる倍率である1000倍に調整した。化粧シートの断面を光学顕微鏡で観察し、無機フィラーの観察個数を数えながら粒子径を測定した。この作業を無機フィラーの観察個数が100個になるまで繰り返し行った。測定された100個の無機フィラーの粒子径のうち、1μm以上10μm未満の粒子径の無機フィラーの個数を数え、100個中の1μm以上10μm未満の粒子径の無機フィラーの個数の割合を算出した。
【0127】
(2)耐擦傷性試験
化粧シートの表面にスチールウール(ボンスター社製 #0000)を500g/mの荷重が掛かるように接触させ、50往復のラビング試験を行った。次いで、化粧シート表面をエタノールで拭取り、艶上がり度合いを目視にて観察し、下記評価基準に従って評価した。
+:艶上がりが認められなかった
-:軽微な艶上がりが認められた
- -:著しい艶上がりが認められた
【0128】
(3)耐折曲げ白化性試験(常温)
常温環境下(23℃)で化粧板を90°の角度になるように急激に折り曲げ、折り曲げた箇所の白化の状況を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価した。
+:白化が認められなかった
-:軽微な白化が認められた
- -:著しい白化が認められた
【0129】
(4)耐折曲げ白化性試験(加熱後)
上述の、常温による耐折曲げ白化性試験を行った化粧板を、ライスター((株)石崎電機製作所製 製品名:PJ-208A1)を用いて、5cm離れた位置から、設定温度100℃の条件で化粧板の折り曲げた箇所の表面を30秒間加熱した。折り曲げた箇所の、加熱後の状況を目視にて観察し、加熱による白化の減少を、下記評価基準に従って評価した。
+:白化が良化(減少)した
-:白化が良化(減少)したが、良化の程度が軽微であった
- -:白化が良化(減少)しなかった
【0130】
(5)消臭性試験
常温環境下(23℃)で化粧シートを10cm×20cmの大きさに切断し、試料を調製した。ポリフッ化ビニルフィルムを用いて作製したバック(以下、テドラーバックと称する。)に試料を入れ、アンモニアガス(初期濃度100ppm)を3L注入した。24時間静置後のテドラーバック中の残存ガス濃度をガス検知管で測定した。アンモニアガスの初期濃度に対する24時間後の残存ガス濃度の割合を算出し、低減率とした。目標低減率である70%以上を満たすか否かを考慮し、下記評価基準に従って評価した。なお、検知管には株式会社ガステック製、No.3M系(アンモニアガス用)を用いた。検出下限はおよそ2ppmである。
++:目標低減率より低減し、低減率が90%以上だった
+:目標低減率より低減し、低減率が70%以上90%未満だった
-:目標低減率より低減しなかった
【0131】
結果を表1及び表2に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【符号の説明】
【0134】
1.化粧シート
11.粘着剤層
12.基材シート
13.絵柄模様層
14.透明性樹脂層
15.表面保護層
16.微粒子
17.離型層
2.基材
図1
図2
図3