(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化粧シート及びこれを用いた化粧材、並びに表面保護層用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241210BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241210BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241210BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241210BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241210BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20241210BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/18 A
B32B27/30 A
E04F13/07 B
E04F13/08 A
E04F13/08 E
E04F15/02 A
E04F15/02 C
E04F15/16 A
(21)【出願番号】P 2020159874
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小紫 真友子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016277(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 27/30
E04F 13/07
E04F 13/08
E04F 15/02
E04F 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、
前記表面保護層は樹脂成分及び紫外線吸収剤を含み、前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が
0.01質量部以上10質量部以下であり、前記樹脂成分はシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
前記表面保護層が次の[1]又は[2]を満たす、化粧シート。
[1]前記紫外線吸収剤として下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有し、
全ての紫外線吸収剤に対する、前記一般式(I)及び前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有割合の合計が70質量%以上であり、
下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が50質量%以下である。
[2]前記紫外線吸収剤として下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と下記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有する。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記表面保護層が[2]を満たす、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記基材層と前記表面保護層との間に、装飾層、透明性樹脂層及びプライマー層から選ばれる一以上の層を有する、請求項1
又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記基材層がオレフィン系樹脂を含む、請求項1
~3の何れかに記載の化粧シート。
【請求項5】
被着材と請求項1~
4の何れかに記載の化粧シートとを有する化粧材。
【請求項6】
樹脂成分及び紫外線吸収剤を含む表面保護層用樹脂組成物であって、
前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が
0.01質量部以上10質量部以下であり、前記樹脂成分はシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
次の[1]又は[2]を満たす、表面保護層用樹脂組成物。
[1]前記紫外線吸収剤として下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有し、
全ての紫外線吸収剤に対する、前記一般式(I)及び前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有割合の合計が70質量%以上であり、
下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が50質量%以下である。
[2]前記紫外線吸収剤として下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と下記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有する。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項7】
前記表面保護層用樹脂組成物が[2]を満たす、請求項6に記載の表面保護層用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧材、並びに表面保護層用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の内装部材や外装部材、自動車等車両の内装部材や外装部材、あるいは、家具、造作部材、家電製品等の表面を装飾したり保護したりするために、化粧シートが用いられている。化粧シートは、例えば、基材層上に表面保護層を有する構成を備えている。
【0003】
これら化粧シートは、屋外で使用される場合や、室内でも窓際等の日光に晒される場所で使用される場合には、紫外線の影響により色調の変化や樹脂の劣化を招く。このため、耐候性を向上させることを目的として、化粧シート中に紫外線吸収剤を添加した化粧シートが提案されている。
【0004】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が使用されてきたが、これらは性能的に必ずしも満足し得るものではなかった。具体的には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤により十分な耐候性を得ようとすると、紫外線吸収剤の添加量が多くなり、紫外線吸収剤がブリードしやすくなるという問題があった。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は経時劣化が大きく、長期にわたって耐候性を維持することが困難であった。
【0005】
近年、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の問題を解消するものとして、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物等のトリアジン系紫外線吸収剤を用いた化粧シートが提案されている(例えは、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5196042号公報
【文献】特許第5540589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2の化粧シートは、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた化粧シートに比べて、ブリードアウトを抑制することができ、長期耐候性が良好なものである。
しかし、特許文献1及び2の化粧シートは、従来の化粧シートに比べるとブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持が良好であるものの、過酷な環境での使用においてはこれら性能を満足できない場合があり、さらなる改善が要望されている。
【0008】
そこで本発明は、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持を極めて良好にし得る化粧シート及び化粧材、並びに表面保護層用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下の〈1〉~〈3〉を提供する。
〈1〉少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、
前記表面保護層は樹脂成分及び紫外線吸収剤を含み、前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が10質量部以下であり、前記樹脂成分はシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
前記表面保護層が次の[1]又は[2]を満たす、化粧シート。
[1]前記紫外線吸収剤として下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有し、
下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、下記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が50質量%以下である。
[2]前記紫外線吸収剤として下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と下記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有する。
【0010】
【0011】
〈2〉被着材と前記[1]に記載の化粧シートとを有する化粧材。
〈3〉樹脂成分及び紫外線吸収剤を含む表面保護層用樹脂組成物であって、
前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が10質量部以下であり、前記樹脂成分はシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
前記[1]又は[2]を満たす、表面保護層用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持を極めて良好にし得る化粧シート及び化粧材、並びに表面保護層用樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の化粧シートの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、
前記表面保護層は樹脂成分及び紫外線吸収剤を含み、前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が10質量部以下であり、前記樹脂成分はシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含み、
前記表面保護層が次の[1]又は[2]を満たす、ものである。
[1]前記紫外線吸収剤として前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有し、
前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が50質量%以下である。
[2]前記紫外線吸収剤として前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有する。
【0015】
図1は、本発明の化粧シート100の代表的な一実施の形態を示す断面図である。
図1において、Z軸方向は厚み方向を示し、X軸及びY軸から形成される面は化粧材をZ軸方向から観察した平面を示す。
図1の化粧シート100は、基材層50上に表面保護層10を有している。また、
図1の化粧シート100は、基材層50と表面保護層10との間に、装飾層40、透明性樹脂層30及びプライマー層20を有している。
【0016】
本発明の化粧シートは、基材層上に表面保護層を備える基本構成を有する限りは、用途、要求性能等に応じて、様々な積層構成の形態を選択し得る。例えば、
図1に示す実施形態では、化粧シート100は下記(1)の積層構成であるが、その他の積層構成の具体的として下記(2)~(7)が挙げられる。なお、下記(1)~(7)において、「/」は各層の界面を意味している。各層の実施形態は後述する。
(1)基材層50/装飾層40/透明性樹脂層30/プライマー層20/表面保護層10
(2)基材層50/表面保護層10
(3)基材層50/プライマー層20/表面保護層10
(4)基材層50/透明性樹脂層30/表面保護層10
(5)基材層50/装飾層40/表面保護層10
(6)基材層50/透明性樹脂層30/装飾層40/表面保護層10
(7)基材層50/透明性樹脂層30/装飾層40/プライマー層20/表面保護層10
【0017】
なお、前記(1)~(7)において、基材層と表面保護との間に接着剤層(後述する接着剤層A)を介在させることもできる。また、基材層及び透明性樹脂層等の表面に、後述するエンボス加工等により、木目導管溝、砂目、梨地、ヘアライン、皮絞(カワシボ)等の凹凸形状を賦形することもできる。
【0018】
<紫外線吸収剤>
本発明において、前記一般式(I)、前記一般式(II)、及び前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物は紫外線吸収剤として用いられる。
前記化粧シートは、少なくとも表面保護層に、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含む。
化粧シートの表面保護層が、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含まない場合、長期耐候性の維持を極めて良好なものとすることができない。より優れたブリードアウトの抑制及び長期耐候性を発現しやすい観点から、表面保護層は、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物との組合せを含むことがより好ましい。
なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記一般式(I)、前記一般式(II)及び前記一般式(III)に示す3種類のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を併用することもできるが、上述の2種類の化合物の組み合わせを超えるブリードアウト抑制及び長期耐候性の効果は得られにくい。
【0019】
化粧シートは、基材層と表面保護層との間に、装飾層、透明性樹脂層及びプライマー層から選ばれる一以上の層を有していてもよい。
また、基材層、透明性樹脂層及びプライマー層の少なくともいずれかの層には、前記一般式(I)~(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の少なくとも何れかが含まれていてもよい。
表面保護層に加えて、さらに、基材層、透明性樹脂層及びプライマー層の少なくとも何れかに、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含む構成とすることにより、化粧シート全体の長期耐候性をより良好にしやすくできる。また、化粧シートが前記構成を有する実施形態の場合、表面保護層への前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物との添加量を少なくしても、化粧シート全体の長期耐候性を良好にしやすくできる。
【0020】
表面保護層において、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量は50質量%以下である。一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の前記含有量が50質量%を超えると、ブリードアウトの抑制に劣り、長期耐候性を実現することが困難となる。
前記一般式(I)及び前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量の合計100質量%に対する、前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量は、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性をより容易に高めることができる観点から、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の前記含有量の下限値は、長期耐候性を発現することができれば特に制限はないが、極めて良好な長期耐候性を発現しやすい観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
【0021】
また表面保護層における、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量については、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性を発現することができれば特に制限はないが、長期耐候性をより容易に高めることができる観点から、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。また、前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の前記含有量の下限値は、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性を発現することができれば特に制限はないが、長期耐候性を発現しやすい観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
【0022】
基材層、透明性樹脂層及びプライマー層の少なくともいずれかの層に前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有する場合、これらのヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量の合計(以下、「合計含有量」ということがある)は、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物を添加する層の厚み、及び、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物を添加する層の数によって異なるため一概には言えないが、例えば下記(1)~(3)の含有量が例示できる。
【0023】
(1)プライマー層が前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物及び樹脂成分を含む場合、前記合計含有量は、プライマー層の樹脂成分100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、1~25質量部がより好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。
(2)透明性樹脂層が前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物及び樹脂成分を含む場合、前記合計含有量は、透明性樹脂層の樹脂成分100質量部に対して0.5~40質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましく、5~25質量部がさらに好ましい。
(3)基材層が前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物及び樹脂成分を含む場合、前記合計含有量は、基材層の樹脂成分100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.2~3質量部がより好ましく、0.3~2質量部がさらに好ましい。
【0024】
本発明の化粧シートは、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記一般式(I)、前記一般式(II)及び前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物以外の紫外線吸収剤を含有していてもよい。
本発明の化粧シート全体に含まれる全紫外線吸収剤に対する、前記一般式(I)及び前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有割合の合計、並びに、前記一般式(I)及び前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有割合の合計はそれぞれ、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0025】
また、表面保護層において、樹脂成分100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は10質量部以下である。前記含有量が10質量部を超えるとブリードアウトが起こりやすく、長期耐候性を実現することが困難となる。また、ブリード物が表面にとどまり、外観変化を起こすこともある。ここで、紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の全量(複数種類の紫外線吸収剤を含む場合、全紫外線吸収剤の合計量)を意味する。
表面保護層において、樹脂成分100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性をより高める観点から、9質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。また、表面保護層において、樹脂成分100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量の下限値は、長期耐候性を発現することができれば特に制限はないが、極めて良好な長期耐候性を発現しやすい観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。
【0026】
<基材層>
基材層としては、各種の紙類、プラスチック、金属、織布、不織布、木材及び窯業系素材等からなるフィルム、シート及び板が挙げられる。
通常、所定厚みを持つ平面状の基材層は、厚みの薄い順にフィルム、シート、板と区別して呼称されるが、本発明においては厚みの相違を区別する必要性は特にないため、本明細書中に於いては、これら呼称は適宜相互に置き換えても特に本質的相違は無いものとして取り扱う。また、これら呼称の相違(厚みの相違)によって、本発明の特許請求の範囲の解釈に相違を生じるものでもない。なお、本明細書において、プラスチックフィルムとは、プラスチック製のフィルム、シート及び板を包括したものとする。
基材層の中では、化粧シート全体としての取り扱い性を良好にすることができるプラスチックフィルムが好ましい。なお、プラスチックは一般的に耐候性が十分ではないが、化粧シート中に前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含むことにより、基材層としてのプラスチックフィルムの耐候性を良好にすることができる。
【0027】
プラスチックを構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、三酢酸セルロース、ポリカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、耐候性、耐水性、印刷適性、成形加工適性及び価格等の観点からオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
また、これらの中でもオレフィン系樹脂は、本発明の効果をより発揮しやすい点で好適である。前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物はブリードアウトしにくい性質を有する。そのため、この性質を活かしつつ分光吸収スペクトルがそれぞれ異なる前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを併用することにより、オレフィン系樹脂の劣化に寄与する波長領域の紫外線を表面保護層で吸収し基材層を守ることにより、長期耐候性を維持することができる。また、オレフィン系樹脂の中でも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、すなわちポリプロピレンであってもよいし、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。これらのポリプロピレンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
基材層は無色透明であってもよいし、意匠性の観点から着色されていてもよい。
基材層を着色する場合、基材層中には、染料及び顔料等の着色剤を添加することができる。これら着色剤の中では、退色を抑制しやすい顔料が好ましい。
顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン(チタン白)、沈降性硫酸バリウムおよびバライト等の白色顔料;カーボンブラック、アオメチンアゾ系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の黒色顔料;鉛丹、酸化鉄赤、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド等の赤色顔料;黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、イソインドリノンイエロー、ニッケル-アゾ錯体等の黄色顔料;ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料;等が挙げられる。
【0031】
基材層の厚みは特に制限はないが、基材層がプラスチックフィルムの場合、20~3200μmが好ましく、40~160μmがより好ましく、40~100μmがさらに好ましい。基材層が紙類の場合、坪量は、通常20~150g/m2が好ましく、30~100g/m2がより好ましい。
【0032】
基材層の形状は平板状のものに限られず、立体形状等の特殊形状であってもよい。
基材層は、化粧シートの他の層や被着材との密着性を高めるために、基材層の片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、プライマー層を形成したりしてもよい。
【0033】
<表面保護層、表面保護層用樹脂組成物>
表面保護層は、樹脂成分及び紫外線吸収剤を含む。また、表面保護層は、前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が10質量部以下である。また、表面保護層は、前記樹脂成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む。また、表面保護層は、前記[1]又は[2]を満たす。表面保護層の紫外線吸収剤の実施形態は上述した通りである。
【0034】
表面保護層を形成する表面保護層用樹脂組成物は、樹脂成分及び紫外線吸収剤を含む。また、表面保護層用樹脂組成物は、前記樹脂成分100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が10質量部以下である。また、表面保護層用樹脂組成物は、前記樹脂成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む。また、表面保護層用樹脂組成物は、次の[1]又は[2]を満たす。
[1]前記紫外線吸収剤として前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有し、
前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との合計100質量%に対する、前記一般式(II)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が50質量%以下である。
[2]前記紫外線吸収剤として前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含有する。
【0035】
表面保護層用樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量の好ましい態様は、前述の表面保護層の樹脂成分100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量の好ましい態様と同様である。また、表面保護層用樹脂組成物における前記[1]及び[2]の一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と一般式(II)又は一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との割合の好ましい態様についても、前述の表面保護層における一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量と一般式(II)又は一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量との割合の好ましい態様と同様である。さらに、表面保護層用樹脂組成物に含まれ得るその他の添加剤は、後述する表面保護層に含み得るその他の添加剤と同様である。
前記表面保護層用樹脂組成物を用いることにより、化粧材を苛酷な環境で使用したとしても、紫外線吸収剤のブリードアウト抑制及び長期耐候性の維持を極めて良好に発現し得る。
【0036】
本発明では、表面保護層及び表面保護層用樹脂組成物の樹脂成分として、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことを要する。本明細書において、シクロヘキシル(メタ)アクリレートとは、シクロヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートを意味する。シクロヘキシル(メタ)アクリレートはモノマー成分であることが好ましい。
樹脂成分として、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことにより、表面保護層の水に対する親和性が低下し、加水分解などによる化粧シートの劣化を抑制しやすくできる。
【0037】
樹脂成分中のシクロヘキシル(メタ)アクリレート含有量が増えるにつれて、一般に、表面保護層が硬く脆弱化する傾向がある。表面保護層が硬く脆弱化すると、化粧シートの加工適性が低下しやすい。加工とは、例えば、被着材へのラッピング加工、真空成型、Vカット加工等の曲げ、延び、歪等の変形が加わる加工が挙げられる。加工適性が低下すると、前記の加工の際に、微小な亀裂及び層間剥離等が生じる場合がある。
微小な亀裂又は層間剥離が化粧シート中に内在すると、経時で、微小な亀裂、層間剥離が徐々に成長することにより、表面保護層が部分的に剥離しやすくなる。表面保護層が剥離した箇所では、表面保護層が基材層等を保護する機能が喪失し、化粧シートの劣化が加速するという問題がある。前記問題は、屋外曝露の際に顕著に生じる。
このため、樹脂成分中のシクロヘキシル(メタ)アクリレート含有量は、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレート含有の利点を享受した上で、前記問題が実用上支障とならない範囲とすることが好ましい。
【0038】
樹脂成分中のシクロヘキシル(メタ)アクリレートの量は、樹脂成分の全量の5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。5重量%以上とすることにより、加水分解などにより劣化抑制効果を得やすくでき、また、50重量%以下とすることにより、表面保護層の硬度低下を抑制しつつ、化粧シートに劣化抑制効果を付与することができる。
【0039】
「表面保護層用樹脂組成物の樹脂成分として、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む」と言う場合、以下の(1)~(3)の何れかの形態であることを意味する。何れの形態においても、表面保護層を形成した後は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートは、何らかの形で表面保護層を構成する固体状の樹脂成分に組み込まれた形として存在している。但し、本発明の解決課題を阻害しない範囲で、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのモノマー又はこれを含むプレポリマーが表面保護層に殘留していることは許容される。
(1)表面保護層用樹脂組成物中において、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがモノマー(単量体)の形、又は、プレポリマーの一部を構成する形で含まれている形態。この形態の場合は、モノマー、プレポリマー、又はこれら両者の混合物が、硬化性樹脂組成物の全部または一部を構成し、架橋反応、各種重合反応によりこれらを硬化せしめ、高分子固体としての表面保護層を形成する。
(2)表面保護層用樹脂組成物中において、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが重合乃至架橋反応により高分子となった形態。
(3)表面保護層用樹脂組成物中において、上記(1)及び(2)のシクロヘキシル(メタ)アクリレートの両方を含む形態。
【0040】
化粧シートの耐擦傷性を良好にする観点から、表面保護層用樹脂組成物は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物を含むことが好ましい。同様に、化粧シートの耐擦傷性を良好にする観点から、表面保護層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
【0041】
硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物、及びこれらの混合物が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物は、表面保護層の架橋密度を高めつつ、曲げ加工等の加工性を良好にしやすい点で好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、表面保護層の架橋密度を高め、耐擦傷性等の表面特性を向上させる観点で好ましい。また無溶媒で塗布することができ、取り扱いが容易との観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の中でも電子線硬化性樹脂組成物がより好ましい。
【0042】
表面保護層用樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対して、硬化性樹脂組成物の割合は、下限は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、上限は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
また、表面保護層に含まれる全樹脂成分に対して、硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、下限は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、上限は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は、分子内に官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基)を2以上有するものが好ましい。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物は、分子内にイソシアネート基を2以上有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0044】
ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびこれらの水添化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
【0045】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0046】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ前記官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ前記官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0048】
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点からは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる1種以上が好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる1種以上がより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがさらに好ましい。
【0049】
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がよりさらに好ましい。
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、加工特性と耐擦傷性及び耐候性を向上させる観点から、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下がさらに好ましい。本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0050】
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0052】
上述したように、表面保護層は前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含む。また、表面保護層は、酸化防止剤及び光安定剤等のその他の添加剤を含むことも好ましい。
【0053】
表面保護層の厚みは、加工特性、耐擦傷性及び耐候性のバランスの観点から、1.5μm以上20μm以下が好ましく、2μm以上15μm以下がより好ましく、3μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0054】
<プライマー層>
化粧シートは、表面保護層の基材層側の面に接してプライマー層を有することが好ましい。プライマー層によって、基材層と表面保護層との密着性(透明性樹脂層を有する場合は、透明性樹脂層と表面保護層との密着性)が向上し、屋外暴露した際の長期的な層間密着性の確保(いわゆる耐候密着性)及び耐擦傷性を良好にしやすくできる。
【0055】
プライマー層は、主として樹脂成分から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。プライマー層の紫外線吸収剤は、前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とであることが好ましい。
【0056】
プライマー層の樹脂成分としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、樹脂成分は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものが好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものがより好ましい。
【0057】
プライマー層の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましい。
【0058】
なお、化粧シートは、基材層の表面保護層とは反対側に、被着材との接着性を向上することなどを目的として、裏面プライマー層を有していてもよい。
【0059】
<透明性樹脂層>
化粧シートは、強度を高めるなどの観点から、基材層と表面保護層との間に透明性樹脂層を有していてもよい。化粧シートがプライマー層を有する場合、透明性樹脂層は、基材層とプライマー層との間に位置することが好ましい。また、化粧シートが装飾層を有する場合、装飾層の保護の観点から、透明性樹脂層は、装飾層と表面保護層との間に位置することが好ましい。
【0060】
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの中でも加工適性の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、透明性樹脂層は、これら例示の樹脂を混合してもよく、さらには、これら例示の樹脂1種又は2種以上からなる層を積層したものでもよい。
透明性樹脂層中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、加工適性の観点から、透明性樹脂層の全樹脂成分に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0061】
透明性樹脂層のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0062】
透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。透明性樹脂層が紫外線吸収剤を含む場合、前記紫外線吸収剤は前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とであることが好ましい。
【0063】
透明性樹脂層の厚みは、耐擦傷性、加工適正及び耐候性のバランスの観点から、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、50μm以上100μm以下がさらに好ましい。
【0064】
<装飾層>
化粧シートは、意匠性を向上させる観点から、化粧シートの任意の箇所に装飾層を有することが好ましい。装飾層を形成する箇所は、装飾層の耐候性を高める観点から、基材層に近い側であることが好ましい。例えば、化粧シートがプライマー層を有する場合、装飾層は、基材層とプライマー層との間に位置することが好ましい。また、化粧シートが透明性樹脂層を有する場合、装飾層は、基材層と透明性樹脂層との間に位置することが好ましい。
【0065】
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよい。絵柄層の絵柄(模様)としては、木材板表面の年輪や導管溝等の木目柄、大理石、花崗岩等の石板表面の石目柄、布帛表面の布目柄、皮革表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、図形、またこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0066】
装飾層に用いられるインキとしては、樹脂成分に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
装飾層の樹脂成分としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール、アクリル樹脂、ポリエステル、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
【0067】
着色剤としては、隠蔽性及び耐候性に優れる顔料が好ましい。顔料は基材層で例示したものと同様のものを用いることができる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
【0068】
装飾層は、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。装飾層が紫外線吸収剤を含む場合、前記紫外線吸収剤は前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物と前記一般式(II)又は前記一般式(III)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とであることが好ましい。
装飾層の厚みは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下がさらに好ましい。
【0069】
<接着剤層A>
化粧シートが透明性樹脂層を有する場合、基材層と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着剤層Aを形成することが好ましい。
なお、基材層と透明性樹脂層との間に、さらに装飾層を有する場合、接着剤層Aと装飾層との位置関係は特に限定されない。具体的には、基材層に近い側から装飾層、接着剤層A及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよいし、基材層に近い側から接着剤層A、装飾層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよい。
【0070】
接着剤層Aは、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の汎用の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
【0071】
接着剤層Aの厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0072】
<化粧シートの製造方法>
上述した装飾層、接着剤層A、プライマー層及び表面保護層は、各層を形成する組成物を含む塗布液を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。
また、透明性樹脂層は、例えば、加熱溶融押出しにより形成することができる。
【0073】
化粧シートは、エンボス加工等で所望の凹凸形状(凹凸模様ともいう)を付与(賦形ともいう)してもよい。
エンボス加工を行う場合、例えば、化粧シートを好ましくは80℃以上260℃以下、より好ましくは85℃以上160℃以下、さらに好ましくは100℃以上140℃以下に加熱し、化粧シートにエンボス版を押圧して、エンボス加工を行うことができる。エンボス版を押圧する箇所は、化粧シートの表面保護層側とすることが好ましい。
【0074】
[化粧材]
本発明の化粧材は、被着材と上述した本発明の化粧シートとを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材層側の面とを対向させて積層したものである。
【0075】
<被着材>
被着材としては、後述する各種素材からなる平板、曲面板等の板材;後述する各種素材からなる円柱、多角柱等の立体形状物品;後述する各種素材からなるシート、フィルム等が挙げられる。
各種素材としては、杉、檜、松、ラワン等の各種木材から成る木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の木質部材;鉄、アルミニウム、銅、或いはこれら金属の1種以上を含む合金等の金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、珪酸カルシウム系等の非セラミックス窯業系材料等の窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の樹脂部材等が挙げられる。また、これらの素材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0076】
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、壁、天井、床等の建築物の内装又は外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具乃至造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものを被着材とすることが好ましい。また、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものを被着材とすることが好ましい。
【0077】
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上100mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0078】
<接着剤層B>
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着剤層Bを介して貼り合わせられることが好ましい。
【0079】
接着剤層Bを構成する接着剤としては、汎用の感熱接着剤、感圧接着剤等を使用することができる。
接着剤層Bを構成する接着剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含むものが挙げられる。さらに、接着剤層Bの接着剤としては、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤が挙げられる。
【0080】
接着剤層Bの厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
【0081】
<化粧材の製造方法>
化粧材は、化粧シートと被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、本発明の化粧シートとを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材層側の面とを対向させて積層する。被着材と化粧シートとの積層する方法としては、例えば、接着剤層Bを介して化粧シートを板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法等が挙げられる。
【0082】
接着剤としてホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
【0083】
以上のようにして得られる化粧材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具乃至造作部材の他、キッチン、家具又は家電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装用部材等に用いることができる。
【実施例】
【0084】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0085】
[評価及び測定方法]
<長期耐候性の評価>
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、1,200時間放置する耐候試験を行った(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、前記サイクルを50回繰り返し行う試験)。耐候試験後の化粧材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、試験装置及び試験条件は下記のとおりである。
1:外観変化は確認されなかった。
2:極軽微な色調変化又は艶変化が確認された。
3:軽微な色調変化又は艶変化が確認された。
4:色調変化又は艶変化が確認された。
5:顕著な色調変化、顕著な艶変化、割れの少なくともいずれかが確認された。
〔試験装置〕
ダイプラ・ウィンテス社製の商品名「ダイプラ・メタルウェザー」
〔照射条件〕
照度:65mW/m2、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
〔結露条件〕
照度:0mW/m2、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
【0086】
<ブリードアウトの評価>
各実施例及び比較例で得られた化粧シートを60℃温水の恒温槽に1週間浸漬した後、取り出して十分に乾燥させてから外観を観察し、以下の基準で評価した。
〇:外観の変化が確認されなかった。
△:わずかな膨れや気泡、艶変化、シート成分の析出等の外観変化が確認された。
×:著しい膨れや気泡、艶変化、シート成分の析出等の外観変化が確認された。
【0087】
[実施例1~17、比較例1~3]
両面コロナ放電処理を施したポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)を基材層として準備した。前記基材層の一方の面に、樹脂成分である2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂100質量部に対して、着色剤を30質量部含有する印刷インキを、グラビア印刷法で塗布して木目模様の装飾層(厚さ:3μm)を設けた。次いで、基材層の他方の面に2液硬化型ウレタン-硝化綿混合樹脂組成物を塗布して裏面プライマー層(厚さ:3μm)を形成した。
装飾層の上に、透明のポリウレタン樹脂系接着剤を塗布して接着剤層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成し、透明なポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明性樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記の主剤溶液と、下記の硬化剤溶液との質量比が10:1(この時の主剤溶液中の水酸基数と、硬化剤溶液中のイソシアネート基数との比率は約1:2)となるように混合し、更に溶剤成分として酢酸エチルを添加して固形分量を20質量%に調整した表面保護層用樹脂組成物を、乾燥後の厚みが9μmとなるように塗布、乾燥し、表面保護層を形成した。
次いで表面保護層の上からエンボス加工を実施し、実施例1~17、比較例1~3の化粧シートを得た。
得られた化粧シートについて、上記の評価を行った。その評価結果を表1~3に示す。
【0088】
<主剤溶液>
水酸基を含むメチルメタクリレートモノマー80質量部と、シクロヘキシルメタクリレート20重量部と、紫外線吸収剤(表1~3に示す紫外線吸収剤を、表1~3に示す量で含む紫外線吸収剤)とを含み、さらに、酢酸エチル溶剤を添加して固形分33質量%に調製してなる溶液。
<硬化剤溶液>
酢酸エチル溶剤を添加して固形分75重量%に調製したヘキサメチレンジイソシアネートを含む溶液。
【0089】
表1~3の紫外線吸収剤1~3は、次のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を用いた。
・紫外線吸収剤1(前記一般式(I)):
[アデカスタブLA-46、株式会社ADEKA製]
・紫外線吸収剤2(前記一般式(II)):
[チヌビン479、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製]
・紫外線吸収剤3(前記一般式(III)):
[チヌビン1600、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製]
【0090】
なお、表1~3中、「チヌビン479の含有割合」は、紫外線吸収剤1の含有量と紫外線吸収剤2の含有量との合計100質量%に対する、紫外線吸収剤2の含有量(質量%)を意味する。同様に、「チヌビン1600の含有割合」は、紫外線吸収剤1の含有量と紫外線吸収剤3の含有量との合計100質量%に対する、紫外線吸収剤3の含有量(質量%)を意味する。同様に、「チヌビン479又は1600の含有割合」は、紫外線吸収剤1の含有量と紫外線吸収剤2又は紫外線吸収剤3の含有量との合計100質量%に対する、紫外線吸収剤2又は紫外線吸収剤3の含有量(質量%)を意味する。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
表1及び2から、実施例1~17の化粧シートは、ブリードアウトの抑制に優れるとともに、長期耐候性の評価に優れることから、過酷な環境での使用においても長期耐候性の維持を極めて良好に発揮し得ることが確認できる。一方、表3から、比較例1の化粧シートは表面保護層における紫外線吸収剤の含有量が多いため、また、比較例2及び3の化粧シートは前記一般式(II)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有割合が多いため、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持のいずれにも劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の化粧シートは、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持が極めて良好であるため、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具といった直射日光に晒される環境で用いられる部材用の化粧シートとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0096】
100:化粧シート
10:表面保護層
20:プライマー層
30:透明性樹脂層
40:装飾層
50:基材層