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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】加飾シート及び加飾樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20241210BHJP
   B29C 45/14 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/30
B29C45/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020162726
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055240
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】安原 正博
(72)【発明者】
【氏名】石黒 将平
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/062340(WO,A1)
【文献】特開平10-119226(JP,A)
【文献】特開2017-065261(JP,A)
【文献】特開2015-205505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B05D
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、前記基材層の一方側の全面に形成された第1樹脂層とを備え、
前記第1樹脂層は、第1粒子と、前記第1粒子とは異なる種類の粒子であって、前記第1粒子よりも相対的に大きな第2粒子とを含んでおり、
前記第1粒子は、前記第1樹脂層の全体に分散して存在しており、
前記第1樹脂層は、前記基材層側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分を含み、
前記第2粒子は、前記第1樹脂層の前記基材層側に位置する層に接触しておらず、
前記第1樹脂層の内部には、界面が存在していない、加飾シート。
【請求項2】
前記第2粒子は、前記第1樹脂層の盛上部分に偏在している、請求項に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記盛上部分の平均高さは5μm以上である、請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記盛上部分によって前記加飾シート表面に凹凸形状が形成されており、
前記加飾シート表面において、前記凹凸形状が形成された部分の面積の割合は、前記加飾シート表面の面積を100%として、1%以上50%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記第1樹脂層が、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記第1樹脂層の前記基材層側とは反対側に、前記第1樹脂層とは異なる艶の第2樹脂層を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項7】
前記第1樹脂層の厚みが、2μm以上80μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項8】
前記第1粒子が、無機粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項9】
前記第2粒子が、有機粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項10】
前記第2粒子の平均粒径が、10μm以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項11】
前記基材層と前記第1樹脂層との間に、さらに絵柄層を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項12】
少なくとも、成形樹脂層と、基材層と、前記基材層の一方側の全面に形成された第1樹脂層とを備え、
前記第1樹脂層は、第1粒子と、前記第1粒子とは異なる種類の粒子であって、前記第1粒子よりも相対的に大きな第2粒子とを含んでおり、
前記第1粒子は、前記第1樹脂層の全体に分散して存在しており、
前記第1樹脂層は、前記基材層側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分を含み、
前記第2粒子は、前記第1樹脂層の前記基材層側に位置する層に接触しておらず、
前記第1樹脂層の内部には、界面が存在していない、加飾樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート及び加飾樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用される。このような加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられる。係る成形法の代表的な例としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、当該加飾シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出することにより樹脂と加飾シートとを一体化するインサート成形法や、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させる射出成形同時加飾法が挙げられる。また、射出成形による成形法以外には、真空圧着法のように予め成形された成形体上に加熱や加圧を伴いながら貼着される加飾方法においても加飾シートが用いられる。
【0003】
加飾樹脂成形品に高い質感を付与する手法として、加飾シートに艶消剤を含む樹脂層を設ける方法や、加飾シートの表面に凹凸形状を設ける方法などが知られている。例えば、特許文献1には、基材層上に、艶消剤を含有する第1樹脂層、前記第1樹脂層上に部分的に設けられた第2樹脂層、並びに前記第2樹脂層上に設けられた樹脂及び有機粒子を含む盛上層をこの順に有する加飾シートが記載されている。特許文献1に記載の加飾シートにおいては、艶消剤を含有する第1樹脂層の上に部分的に第2樹脂層が積層されており、第2樹脂層が積層された領域と積層されていない領域との間で艶の差が生じ、高い意匠性(グロスマット表現)を示す。さらに、第2樹脂層の上に樹脂及び有機粒子を含む盛上層が積層されることにより、グロスマット表現を損なうことなく優れた触感を示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-65261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された加飾シートは、高い意匠性を有するとともに優れた触感を示す。
【0006】
一方、加飾シートの表面に凹凸を設けて触感を付与するために、艶差を付与する層の上に、部分的に盛上層を設けると、盛上層による艶の影響も考慮する必要があり、艶差を付与する層と盛上層との艶を近似させるために材料の選択に制限が加わる(材料選択の自由度が低下する虞がある)ことから、加飾シートの優れた触感と意匠感を両立させる新たな技術が求められる。
【0007】
また、加飾シート表面の触感を高めるために、盛上層を形成するインキに粒子を多く配合して盛上層を形成すると、盛上層とその下層との層間密着強度が低下するという問題もある。
【0008】
このような状況下、本開示は、優れた触感と意匠性とが両立され、さらに層間密着性にも優れた加飾シートを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、加飾樹脂成形品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、前記基材層の一方側の全面に形成された第1樹脂層とを備え、
前記第1樹脂層は、第1粒子と、前記第1粒子とは異なる種類の粒子であって、前記第1粒子よりも相対的に大きな第2粒子とを含んでおり、
前記第1樹脂層は、前記基材層側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分を含み、
前記第2粒子は、前記第1樹脂層の前記基材層側に位置する層に接触していない、加飾シート。
項2. 前記第1粒子は、前記第1樹脂層の全体に分散して存在している、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記第2粒子は、前記第1樹脂層の盛上部分に偏在している、項1又は2に記載の加飾シート。
項4. 前記盛上部分の平均高さは5μm以上である、項1~3のいずれか1項に記載の加飾シート。
項5. 前記盛上部分によって前記加飾シート表面に凹凸形状が形成されており、
前記加飾シート表面において、前記凹凸形状が形成された部分の面積の割合は、前記加飾シート表面の面積を100%として、1%以上50%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の加飾シート。
項6. 前記第1樹脂層が、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む、項1~5のいずれか1項に記載の加飾シート。
項7. 前記第1樹脂層の前記基材層側とは反対側に、前記第1樹脂層とは異なる艶の第2樹脂層を備える、項1~6のいずれか1項に記載の加飾シート。
項8. 前記第1樹脂層の厚みが、2μm以上80μm以下である、項1~7のいずれか1項に記載の加飾シート。
項9. 前記第1粒子が、無機粒子である、項1~8のいずれか1項に記載の加飾シート。
項10. 前記第2粒子が、有機粒子である、項1~9のいずれか1項に記載の加飾シート。
項11. 前記第2粒子の平均粒径が、10μm以上である、項1~10のいずれか1項に記載の加飾シート。
項12. 前記基材層と前記第1樹脂層との間に、さらに絵柄層を備える、項1~11のいずれか1項に記載の加飾シート。
項13. 少なくとも、成形樹脂層と、基材層と、前記基材層の一方側の全面に形成された第1樹脂層とを備え、
前記第1樹脂層は、第1粒子と、前記第1粒子とは異なる種類の粒子であって、前記第1粒子よりも相対的に大きな第2粒子とを含んでおり、
前記第1樹脂層は、前記基材層側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分を含み、
前記第2粒子は、前記第1樹脂層の前記基材層側に位置する層に接触していない、加飾樹脂成形品。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、優れた触感と意匠性とが両立され、さらに層間密着性にも優れた加飾シートを提供できる。さらに、本開示によれば、加飾樹脂成形品を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の加飾シートの一例の略図的断面図である。
図2】本開示の加飾シートの一例の略図的断面図である。
図3】本開示の加飾シートの一例の略図的断面図である。
図4】本開示の加飾シートの一例の略図的断面図である。
図5】本開示の加飾シートを利用した加飾樹脂成形品の一例の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.加飾シート
本開示の加飾シートは、少なくとも、基材層と、前記基材層の一方側の全面に形成された第1樹脂層とを備え、第1樹脂層は、第1粒子と、前記第1粒子とは異なる種類の粒子であって、第1粒子よりも相対的に大きな第2粒子とを含んでおり、第1樹脂層は、基材層側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分を含み、第2粒子は、第1樹脂層の基材層側に位置する層に接触していないことを特徴とする。本開示の加飾シートは、このような構成を備えることにより、優れた触感と意匠性とが両立され、さらに優れた層間密着性を発揮することができる。より具体的には、基材層の上には、相対的に小さな第1粒子と相対的に大きな第2粒子を含む第1樹脂層が設けられており、第1樹脂層の盛上部分によって形成された加飾シート表面の凹凸形状により、優れた触感と意匠性が付与されており、さらに、相対的に大きな第2粒子が第1樹脂層の基材層側に位置する層に接触していないことにより、第1樹脂層とその下に位置する層との層間密着性が高められている。
【0013】
以下、本開示の加飾シートについて詳述する。なお、本明細書において、数値範囲については、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
【0014】
加飾シートの積層構造
本開示の加飾シート10は、図1から図4に示されるように、少なくとも、基材層3、第1樹脂層1が積層された積層構造を有する。第1樹脂層1は、基材層3側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分11を含んでいる。本開示の加飾シート10においては、複数の盛上部分11が、基材層3側とは反対側の面に突出するようにして形成されていることにより、表面が凹凸形状を有する。
【0015】
図1から図4に示すように、第1樹脂層1は、基材層3の一方面側の全面に設けられている。
【0016】
図2から図4に示されるように、本開示の加飾シート10においては、必要に応じて、第1樹脂層1の基材層3とは反対側に、第1樹脂層1とは異なる艶の第2樹脂層2を設けてもよい。第2樹脂層2は、第1樹脂層1の基材層3とは反対側の全面に設けられていてもよいし(図2を参照)、部分的に設けてもよい(図3図4を参照)。また、第2樹脂層2は、第1樹脂層1の盛上部分11の上の全面に設けられていてもよいし、盛上部分11の上に部分的に設けられていてもよいし、盛上部分11の上に設けられていなくてもよい。図3,4には、第2樹脂層2は、第1樹脂層1の盛上部分11の上に部分的に設けられている態様を示しており、意匠性の観点からこの態様が好ましい。後述するように、第2樹脂層2が第1樹脂層1の盛上部分11の上に部分的に設けられており、かつ、第2樹脂層2が設けられている位置と絵柄層の模様とを同調させる(例えば図4)ことにより、意匠性を高めることができる。
【0017】
図4に示すように、本開示の加飾シート10においては、必要に応じて、基材層3と第1樹脂層1との間に、絵柄層4が設けられていてもよい。また、図示は省略するが、加飾シート10には、第1樹脂層1と絵柄層4との間にプライマー層などが設けられてもよいし、基材層3と絵柄層4との間に隠蔽層などが設けられてもよいし、基材層3の裏面(第1樹脂層1側とは反対側)に裏面接着層などが設けられてもよいし、任意の位置にその他の層を設けてもよい。
【0018】
本開示の加飾シートの積層構造として、基材層3/第1樹脂層1がこの順に積層された積層構造;基材層3/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された積層構造;基材層3/絵柄層4/第1樹脂層1がこの順に積層された積層構造;基材層3/絵柄層4/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された積層構造;基材層3/隠蔽層/絵柄層4/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された積層構造;基材層3/隠蔽層/絵柄層4/プライマー層/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された積層構造;接着層/基材層3/隠蔽層/絵柄層4/プライマー層/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本開示の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層3/第1樹脂層1が積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図2及び図3に、本開示の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層3/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図4に、本開示の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層3/絵柄層4/第1樹脂層1/第2樹脂層2がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。なお、「/」は、層間の区切りを意味している。
【0019】
加飾シートを形成する各層の組成
[基材層3]
基材層3は、本開示の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)である。基材層3に使用される樹脂成分については、特に制限されず、成形性や成形樹脂との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。当該熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂(以下「ASA樹脂」と表記することもある)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂及びアクリル樹脂が成形性の観点から好ましい。また、基材層3は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
【0020】
基材層3の曲げ弾性率については、特に制限されない。例えば、本開示の加飾シートをインサート成形法によって成形樹脂と一体化させる場合には、本開示の加飾シートにおける基材層3の25℃における曲げ弾性率が500~4,000MPa、好ましくは750~3,000MPaが挙げられる。ここで、25℃における曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定された値である。25℃における曲げ弾性率が500MPa以上であると、加飾シートは十分な剛性を備え、インサート成形法に供しても、表面特性と成形性がより一層良好になる。また、25℃における曲げ弾性率が4,000MPa以下であると、ロール トゥ ロールで製造する場合に十分な張力をかけることができ、たるみが発生し難くなるため、絵柄がずれることなく重ねて印刷でき、所謂絵柄見当が良好となる。
【0021】
基材層3は、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、片面又は両面に表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、酸化法などの化学的表面処理及び凹凸化法などの物理的表面処理が挙げられる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層3を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
【0022】
また、基材層3は公知の接着層を形成する等の処理を施してもよい。
【0023】
更に、基材層3は、着色剤を用いて着色されていてもよく、着色されていなくてもよい。また、基材層3は、不透明、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれの態様であってもよい。基材層3に用いられる着色剤としては、特に制限されないが、好ましくは150℃以上の温度条件でも変色しない着色剤が挙げられ、具体的には、既存のドライカラー、ペーストカラー、マスターバッチ樹脂組成物等が挙げられる。
【0024】
基材層3の厚みは、加飾シートの用途、成形樹脂と一体化させる成形法等に応じて適宜設定されるが、通常25~1000μm程度、50~700μm程度が挙げられる。より具体的には、本開示の加飾シートをインサート成形法に供する場合であれば、基材層3の厚みとして、通常50~1000μm程度、好ましくは100~700μm程度、更に好ましくは100~500μm程度が挙げられる。また、本開示の加飾シートを射出成形同時加飾法に供する場合であれば、基材層3の厚みとして、通常25~200μm程度、好ましくは50~200μm程度、更に好ましくは70~200μm程度が挙げられる。
【0025】
[第1樹脂層1]
本開示の加飾シート10では、基材層3の一方側の全面に、第1樹脂層1が形成されている。第1樹脂層1は、第1粒子1aと、第1粒子1aとは異なる種類の粒子であって、第1粒子よりも相対的に大きな第2粒子1bとを含んでいる。さらに、第1樹脂層1は、加飾シート10の基材層3側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分11を含んでいる。すなわち、加飾シート10は、第1樹脂層1が、相対的に大きな第2粒子1bを含むことによって、盛上部分11が形成されており、少なくとも盛上部分11には第2粒子1bが含まれている。なお、第1樹脂層1の盛上部分11とは異なる位置に第2粒子1bが含まれていてもよいが、第2粒子1bは、第1樹脂層1の盛上部分11に偏在していることが好ましい。
【0026】
第1樹脂層1において、第2粒子1bが、第1粒子1aとは異なる種類の粒子であって、第1粒子よりも相対的に大きいとは、第1樹脂層1に含まれる2種類以上の粒子のうち、相対的に平均粒径の大きい粒子が第2粒子1bであり、相対的に平均粒径の小さい粒子が第1粒子1aであることを意味している。後述の通り、第2粒子1bの平均粒径は、好ましくは10μm以上であるのに対して、第1粒子1aの平均粒径は、好ましくは10μm未満である。
【0027】
本開示の加飾シート10は、第1樹脂層1の基材層3側とは反対側の面に突出する、複数の盛上部分11を有することによって、加飾シート10表面に凹凸形状が形成されている。
【0028】
後述の実施例でも採用されているとおり、本開示において、第1樹脂層1は、例えば、第1粒子1aを含む樹脂組成物A(第2粒子1bを含まない)を塗布し半乾燥の状態で、上から、第1粒子1a及び第2粒子1bを含む樹脂組成物Bを盛上げ印刷により部分的に塗布し半乾燥の状態で、さらに上から、第1粒子1aを含む樹脂組成物A(第2粒子1bを含まない)を塗布し、その後、これらの樹脂組成物を硬化させる手法により好適に形成することができる。この手法を採用することにより、第2粒子1bが、第1樹脂層1の基材層3側に位置する層(下層)に接触しないようにして、第1樹脂層1に盛上部分11を好適に形成することが可能となる。また、この手法において、半乾燥させながら印刷を重ねて第1樹脂層1を形成することにより、第1樹脂層1の内部に界面が形成されることが抑制されており、層間密着性を高めることができる。すなわち、第1樹脂層1の内部には、複数回の印刷を行ったことに起因する界面が存在していないことが好ましい。特に、盛上部分11の間12においては、界面が存在していないことが好ましい。
【0029】
また、本開示の加飾シート10においては、相対的に大きな第2粒子1bが、第1樹脂層1の基材層3側に位置する層(例えば、基材層3、絵柄層4、プライマー層などが想定される)に接触していないことにより、優れた層間密着性を発揮することができる。より具体的には、相対的に大きな第2粒子1bが含まれることによって形成される盛上部分11において、第2粒子1bが第1樹脂層1の基材層3側に位置する層(下層)に接触していないことから、第2粒子1bと当該下層との界面が生じることによる層間の密着性の低下が抑制されている。
【0030】
1つの盛上部分11には、第2粒子1bが1つ以上含まれていることが好ましく、2つ以上含まれていることがより好ましい。すなわち、第1樹脂層1においては、複数の第2粒子1bが集まることで、1つの盛上部分11を好適に形成することができる。1つの盛上部分11に含まれている第2粒子1bの数は、例えば1~10個程度が挙げられる。
【0031】
第1樹脂層1において、第2粒子1bと、第1樹脂層1の基材層3側に位置する層(下層)との最短距離は、好ましくは約1μm以上、より好ましくは約2μm以上である。また、当該最短距離は、好ましくは約10μm以下、より好ましくは約5μm以下、さらに好ましくは約2μm以下である。当該最短距離の好ましい範囲としては、1~10μm程度、1~5μm程度、1~2μm程度、2~10μm程度、2~5μm程度が挙げられる。
【0032】
一方、第2粒子1bよりも相対的に小さい第1粒子1aは、第1樹脂層1の全体に分散して存在していることが好ましい。すなわち、盛上部分11には、第1粒子1aと第2粒子1bの両方が含まれていることが好ましい。本開示の加飾シート10は、第1粒子1a及び第2粒子1bの存在により、艶消し調かつ表面が凹凸形状の意匠を好適に発揮することができる。
【0033】
第1粒子1aは、第2粒子1bとは異なる種類の粒子であって、第2粒子1bよりも相対的に小さい粒子であれば、特に制限されず、有機粒子、無機粒子のいずれでもよいが、加飾シート10に艶消し調の意匠を好適に付与する観点から、無機粒子が好ましい。
【0034】
無機粒子としては、無機化合物により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、アルミナ粒子、ガラスバルーン粒子が挙げられ、これらの中でも好ましくはシリカ粒子が挙げられる。無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
第1粒子1aの平均粒径は、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm以下である。また、第1粒子1aの平均粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。第1粒子1aの好ましい平均粒径の範囲は、0.5μm以上10μm未満程度、0.5~5μm程度、1μm以上10μm未満程度、1~5μm程度が挙げられる。
【0036】
本開示において、粒子の平均粒径は、層の厚み方向の断面を、加速電圧3.0kV、拡大倍率50,000倍の条件にて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に選択した100個の粒子の非凝集体について測定した粒子径の平均値(算術平均径)を意味する。
【0037】
第1樹脂層1における第1粒子1aの含有量としては、特に制限されないが、第1樹脂層1に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは1~60質量部程度、より好ましくは1~40質量部程度が挙げられる。第1粒子1aは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
また、第2粒子1bの種類としては、特に制限されず、有機粒子、無機粒子のいずれでもよいが、相対的に第1粒子1aよりも大きく、優れた触感と意匠性とを両立する観点から、特に有機粒子が好ましい。
【0039】
有機粒子としては特に限定されず、通常樹脂ビーズが用いられる。樹脂ビーズとしては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、スチレンビーズ等が挙げられる。これらの中でも、盛上部分11の白化の抑制、優れた触感の付与のほか、加飾シートの耐傷性を高める観点からは、アクリルビーズ又はウレタンビーズを用いることが好ましい。特に、盛上部分11の白化の抑制の観点からは、アクリルビーズ又はウレタンビーズを用いることが好ましく、耐傷性を高める観点からは、ウレタンビーズを用いることが好ましい。また、優れた触感の付与、盛上部分11の耐傷性を高める観点からは、架橋型の樹脂ビーズを用いることが好ましい。架橋型の樹脂ビーズとして、具体的には、架橋型アクリルビーズ、架橋型ウレタンビーズ等が挙げられる。
【0040】
第2粒子1bの平均粒径は、本開示の加飾シートにおいて、優れた触感を発現させる観点から、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上である。また、当該平均粒径の好ましい上限については、好ましくは約60μm以下であり、より好ましくは約50μm以下であり、さらに好ましくは約50μm未満であり、さらに好ましくは約40μm以下であり、特に好ましくは約35μm以下である。また、第2粒子1bの好ましい平均粒径としては、10~60μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~35μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度、15~40μm程度、15~35μm程度、20~60μm程度、20~50μm程度、20~40μm程度、20~35μm程度が挙げられる。盛上部分11に含まれる第2粒子1bの平均粒径を上記の範囲に設定することにより、加飾シートの触感と意匠性とをより好適に高めることができる。盛上部分11の平均高さと、第2粒子1bの平均粒径とは同程度にできる。
【0041】
盛上部分11が含有する第2粒子1bのうち、個数基準で、少なくとも90%以上がこれらの粒子径を充足すると、本開示の効果を好適に奏する観点から好ましい。第2粒子1bの平均粒径が10μm未満であると、優れた触感が得られないおそれがある。また、第2粒子1bの平均粒径が60μmを超えると、生産安定性が低下し、再現性よく所望の形状の盛上部分11を形成することが難しくなるおそれがある。第1樹脂層1の形成において、盛上げ印刷によって盛上部分11を形成する場合、インキの転移安定性の観点から、第2粒子1bの平均粒径は版深の1/2以下とすることが好ましい。
【0042】
本開示の加飾シート10においては、第2粒子1bを、盛上部分11を形成する樹脂組成物の固形分中50質量%以下の割合で含有することが好ましく、40質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。第2粒子1bの含有量が50質量%以下である場合には、塗膜(盛上部分11)に第2粒子1bが均一に分布するため、触感が安定する。第2粒子1bの含有量が50質量%を超えると、有機粒子が凝集し、盛上部分の平均厚みが安定しないおそれがあり、盛上部分11の透明感が損なわれるため、意匠性が低下するおそれがある。第2粒子1bの含有量は、2質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上記第2粒子1bの含有量が2質量%未満であると触感が不十分となるほかに、盛上部分を形成する樹脂組成物のチキソトロピック性が不十分となり、盛上げ印刷による盛上部分11の形成が難しくなるおそれがある。
【0043】
優れた触感及び意匠性を発揮させる観点から、盛上部分11の平均高さ(平均厚み)は、好ましくは約5μm以上、より好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約15μm以上である。また、盛上部分11の平均高さ(平均厚み)は、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下である。盛上部分11の高さの好ましい範囲としては、5~60μm程度、5~50μm程度、5~40μm程度、10~60μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度、15~40μm程度などが挙げられる。盛上部分11の平均厚みを上記の範囲に設定することにより、加飾シートの触感と意匠性とをより好適に高めることができる。なお、本明細書において、盛上部分11の平均高さ(平均厚み)は、盛上部分11の間12の位置を基準として、盛上部分11の頂点までの厚み方向の垂直距離を意味している。盛上部分11の平均高さ(平均厚み)は、加飾シートの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、10点の測定値の平均値として算出した値である。走査型電子顕微鏡(SEM)の観察は、加速電圧3.0kV、拡大倍率50,000倍の条件にて行う。
【0044】
第1樹脂層1の盛上部分11は、加飾シートの表面に凹凸形状に基づく所望の触感を付与するように、第1樹脂層1の形成時に、盛上げ印刷によって形成されることが好ましい。なお、本開示において、盛上部分11とは、図1から図5に示すような断面模式図において凸形状で示される形態であり、例えば、加飾シート表面において円錐状又は円柱状の突起が形成されている形態だけでなく、導管模様のような、突起が線状に伸びて形成されている形態も含む。
【0045】
優れた触感及び意匠性の観点から、本開示の加飾シート10においては、盛上部分11によって加飾シート10表面に凹凸形状が形成されており、加飾シート10表面において、当該凹凸形状が形成された部分の面積の割合は、加飾シート10表面の面積を100%として、好ましくは1~50%程度、より好ましくは3~50%程度、さらに好ましくは5~50%、さらに好ましくは5~40%程度、さらに好ましくは6~30%程度である。上記範囲で凹凸形状を設けることで、より触感が優れた加飾シートを得ることができる。ここで、盛上部分11の断面が台形や円錐状等のように、盛上部分11の上側の面と下側の面とで面積が異なる場合、盛上部分11によって凹凸形状が設けられた面積は、基材層3側の面の凹凸形状が設けられた領域の面積である。
【0046】
第1樹脂層1を形成する樹脂は、盛上部分11の変形を抑制し、所望の形状とする観点から、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂(例えば、電子線硬化性樹脂)等の硬化性樹脂が好ましい。特に電離放射線硬化性樹脂は、高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。
【0047】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化性ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0048】
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加できる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等を不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等をエポキシ樹脂に添加できる。メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、及びアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤は、不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
【0049】
熱硬化性樹脂で第1樹脂層1を形成する方法として、例えば、熱硬化性樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の塗布法で塗布し、乾燥及び硬化させる方法が挙げられる。
【0050】
電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、第1樹脂層1の形成において好適に使用される。
【0051】
<電離放射線硬化性樹脂>
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
加飾樹脂成形品の製造に用いられる場合など、加飾シートに三次元成形性が要求される場合は、上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた三次元成形性を得る観点からは、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、三次元成形性と耐傷付き性を両立する観点からは、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートと、該多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを組み合わせて使用することがより好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂として多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合、優れた三次元成形性を得る観点からは、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂と組み合わせて使用することが好ましく、三次元成形性と耐傷付き性を両立する観点からは、電離放射線硬化性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートモノマーと熱可塑性樹脂との質量比を25:75~75:25とすることがより好ましい。以下、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び併用する多官能(メタ)アクリレートについて、詳述する。
【0054】
<多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート>
多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを2個以上有するものであれば、特に制限されない。また、当該(メタ)アクリレートは、架橋、硬化を良好にするという観点から、1分子当たりの官能基の数として、好ましくは2~6個が挙げられる。多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、或いは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法等が挙げられる。
【0056】
ポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端又は側鎖に2個以上、好ましくは2~50個、更に好ましくは3~50個の水酸基を有する重合体である。当該ポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法が挙げられる。
【0057】
ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式HO-R1-OHで表される。ここで、R1は、炭素数2~20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。R1は、例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
【0058】
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのジオールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
また、ポリカーボネートポリオールの原料として用いられる3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール等のアルコール類が挙げられる。また、当該3価以上の多価アルコールは、前記多価アルコールの水酸基に対して、1~5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるカルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。当該化合物として、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸ジエステル類;ホスゲン;クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニル等のハロゲン化ギ酸エステル類等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
ポリカーボネートポリオールは、前記ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、例えば、50:50~99:1の範囲に設定すればよい。また、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)とに対する、カルボニル成分となる化合物(C)の仕込みモル比は、例えば、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して0.2~2当量の範囲に設定すればよい。
【0062】
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)としては、例えば、1分子中に平均して3以上、好ましくは3~50、更に好ましくは3~20が挙げられる。このような等量数を充足すると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、また多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
【0063】
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64-1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3-181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造できる。
【0064】
多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量については、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量が5,000以上、好ましくは10,000以上が挙げられる。多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は、特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御するという観点から、例えば、100,000以下、好ましくは50,000以下が挙げられる。多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量として、好ましくは10,000~50,000、更に好ましくは10,000~20,000が挙げられる。
【0065】
なお、本明細書における多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0066】
第1樹脂層1の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物における多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量としては、本開示の効果を奏することを限度として、特に制限されないが、射出成形時などにおける熱と圧力によっても、盛上部分11によって形成された凹凸形状を保持し、加飾シートに表出されていた高い質感の劣化をより効果的に抑制する観点からは、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上が挙げられる。
【0067】
<多官能(メタ)アクリレート>
多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される、該多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にウレタン結合を有し、かつ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを2個以上有するものであれば、特に制限されない。このような多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、架橋、硬化を良好にするという観点から、1分子当たりの官能基の数として、好ましくは2~12個が挙げられる。また、多官能(メタ)アクリレートは、シリコーン変性されたものであってもよい。多官能(メタ)アクリレートは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートと併用される多官能(メタ)アクリレートの分子量については、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量が2,000以上、好ましくは5,000以上が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は、特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御するという観点から、例えば、30,000以下、好ましくは10,000以下が挙げられる。
【0069】
なお、本明細書における多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0070】
第1樹脂層1の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物における、多官能(メタ)アクリレートの含有量としては、本開示の効果を奏することを限度として、特に制限されないが、射出成形時などにおける熱と圧力によっても、盛上部分11によって形成された凹凸形状を保持し、加飾シートに表出されていた高い質感の劣化をより効果的に抑制する観点からは、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下が挙げられる。
【0071】
第1樹脂層1の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂組成物において、多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートとを併用する場合、これらの質量比(多官能ポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート)としては、好ましくは50:50~99:1程度、より好ましくは80:20~99:1程度、さらに好ましくは85:15~99:1程度が挙げられる。
【0072】
第1樹脂層1の形成は、例えば、上記の電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、第1樹脂層1に隣接する層上に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。本開示においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、第1樹脂層1に隣接する層上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて第1樹脂層1を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
【0073】
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、第1樹脂層1の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと第1樹脂層1の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより第1樹脂層1の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制でき、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。また、照射線量は、第1樹脂層1の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
【0074】
第1樹脂層1中には、第1樹脂層1に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合できる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0075】
前記の通り、本開示の加飾シートを射出成形又は真空成形用途に使用する場合、盛上部分11の変形を抑制し、所望の形状としつつ、三次元成形性を良好とする観点から、第1樹脂層1を構成する電離放射線硬化性樹脂としては、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0076】
また、本開示の加飾シートを射出成形又は真空成形用途に使用する場合、加飾シートの耐傷性を高めつつ三次元成形性を良好とする観点から、第1樹脂層1を電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物により構成することも好ましい。熱可塑性樹脂の種類、及び電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との好ましい混合比としては、後述する第2樹脂層2について説明したものと同様とできる。
【0077】
第1樹脂層1の厚みは、盛上部分11の平均厚みなどを考慮し、凹凸形状に基づく触感を調整することが好ましい。このような観点から、第1樹脂層1の厚みは、好ましくは2~80μm程度、より好ましくは2~60μm程度、さらに好ましくは2~50μm程度、さらに好ましくは2~40μm程度が挙げられる。第1樹脂層1の厚みの範囲は、盛上部分11が存在している位置と存在していない位置とを含めた厚みの範囲である。
【0078】
[第2樹脂層2]
第2樹脂層2は、加飾シート10の艶調整等を目的として、必要に応じて、第1樹脂層1の基材層3側とは反対側に設けられる層である。第2樹脂層2は、第1樹脂層1とは異なる艶を有している。
【0079】
第2樹脂層2は、第1樹脂層1の基材層3とは反対側の全面に設けられていてもよいし(図2を参照)、部分的に設けてもよい(図3図4を参照)。また、第2樹脂層2は、第1樹脂層1の盛上部分11の上の全面に設けられていてもよいし、盛上部分11の上に部分的に設けられていてもよいし、盛上部分11の上に設けられていなくてもよい。図3,4には、第2樹脂層2は、第1樹脂層1の盛上部分11の上に部分的に設けられている態様を示しており、意匠性の観点からこの態様が好ましい。
【0080】
加飾シート10が第2樹脂層2を有する場合には、第1樹脂層1は、第2樹脂層2と接触していることが好ましい。
【0081】
第2樹脂層2を構成する樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合体、珪素樹脂、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタクリルサンエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等を挙げることができる。
【0082】
また、電離放射線硬化性樹脂を用いて第2樹脂層2を形成してもよい。電離放射線硬化性樹脂の詳細については、[第1樹脂層1]の欄で詳述したものと同じものが例示される。
【0083】
第2樹脂層2は、艶消剤を含んでいることが好ましい。艶消剤としては特に限定はなく、公知のものを広く用いることができる。艶消剤として、[第1樹脂層1]の欄で例示した無機粒子、有機粒子が挙げられ、好ましくは、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミノシリケート、硫酸バリウム等の無機物粒子;アクリルビーズ、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等の樹脂(有機物)粒子等が挙げられる。粒子の平均粒径は、好ましくは0.5~20μmであり、より好ましくは0.5~10μmである。艶消剤の添加量は、第2樹脂層2を形成する樹脂組成物基準(溶剤を除く)で好ましくは2~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。なお、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状等である。上記の無機粒子及び有機粒子のうち、シリカが好ましい。
【0084】
第2樹脂層2の厚みは、盛上部分11の平均高さなどを考慮し、凹凸形状に基づく触感を調整することが好ましい。このような観点から、第2樹脂層2の厚みは、好ましくは0.1~20μm程度、さらに好ましくは0.3~10μm程度、さらに好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。
【0085】
本開示の加飾シートを射出成形又は真空成形用途に使用する場合、加飾シートの耐傷性を高めつつ三次元成形性を良好とする観点から、第2樹脂層2を構成する電離放射線硬化性樹脂としては、前述のポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0086】
また、本開示の加飾シートを射出成形又は真空成形用途に使用する場合、加飾シートの耐傷性を高めつつ三次元成形性を良好とする観点から、第2樹脂層2を電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物により構成することも好ましい。熱可塑性樹脂としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が特に好ましい。電離放射線硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合比としては、質量比で10:90~75:25程度が好ましく、25:75~50:50程度がより好ましい。
【0087】
本開示の加飾シート10に、後述する絵柄層4が存在する場合には、絵柄層4の模様に対して第2樹脂層2が同調して設けられることが好ましい。絵柄層4の模様と、第2樹脂層2の模様とが同調する構成とすることにより、より意匠性に優れた加飾シートとできる。なお、本開示において、絵柄層4の模様と、第2樹脂層2との同調とは、例えば、加飾シートを平面観察した際に、絵柄層4の模様の位置と、第2樹脂層2が形成される位置とが対応する態様(いわゆる、ポジ)や、絵柄層4の模様の位置と、第2樹脂層2が形成されていない位置とが対応する態様(いわゆる、ネガ)が挙げられる。図4には、絵柄層4の模様と第2樹脂層2との同調の例として、ネガの態様を例示している。
【0088】
本開示の加飾シート10では、絵柄層4が木目柄であり、木目の冬目模様及び導管模様の少なくとも一方以外の部分の上に、第1樹脂層1より高い艶を有する第2樹脂層2が設けられることが好ましい。これにより、木目の冬目模様及び/又は導管模様部分の艶が低くなるため、天然木に近似した優れた意匠性を得ることができる。上記のような第2樹脂層2を形成するには、絵柄層4と同じ木目の冬目模様及び/又は導管模様を反転させた状態(つまりネガ状態)の版を使用し、公知の印刷方法を用いて印刷することが好ましい。印刷方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等が好ましい。
【0089】
なお、第2樹脂層2は、着色されていてもよいが、特に着色剤を配合しないほうが望ましい。
【0090】
[絵柄層4]
絵柄層4は、加飾シートに装飾性を付与する目的で、第1樹脂層1の下に、必要に応じて設けられる層である。第1樹脂層1と絵柄層4とは接触していてもよいし、後述のプライマー層などを介して積層されていてもよい。
【0091】
絵柄層4は、例えば、インキ組成物を用いて所望の絵柄を形成した層とすることができる。絵柄層4の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
【0092】
インキ組成物に使用されるバインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
インキ組成物に使用される着色剤としては、特に制限されないが、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
【0094】
絵柄層4によって形成される絵柄についても、特に制限されないが、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよく、あるいは単色無地(いわゆる全面ベタ)であってもよい。これらの絵柄は、通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成されるが、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成できる。
【0095】
絵柄層4の厚みは、特に制限されないが、例えば1~30μm、好ましくは1~20μmが挙げられる。
【0096】
また、絵柄層4は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。金属薄膜層は全面に設けられても、部分的に設けられてもよい。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
【0097】
[プライマー層]
プライマー層は、第1樹脂層1の密着性を向上させること等を目的として、必要に応じて、第1樹脂層1の下に設けられる。
【0098】
第1樹脂層1とその下に位置する層との密着性を高める観点から、第1樹脂層1の直下にプライマー層が設けられることが好ましい。プライマー層は、例えば第1樹脂層1と絵柄層4との間に設けられる。
【0099】
プライマー層を構成するプライマー組成物としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等をバインダー樹脂とするものが好ましく用いられ、これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル-ウレタン共重合体が好ましい。
【0100】
ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。前記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、ウレタン樹脂とブチラール樹脂を混ぜて構成することも可能である。
【0101】
第1樹脂層1との密着性、第1樹脂層1を積層後の相互作用の生じ難さ、物性、成形性の面から、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせることが好ましく、特にアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0102】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。
【0103】
(メタ)アクリル-ウレタン共重合体としては、例えばアクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合体が好ましい。硬化剤としては、上記の各種イソシアネートが用いられる。アクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合体は所望により、アクリル/ウレタン比(質量比)を好ましくは9/1~1/9、より好ましくは8/2~2/8の範囲で調整することが好ましい。
【0104】
プライマー層の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.5~20μm程度であり、好ましくは、1~5μmが挙げられる。
【0105】
プライマー層は、プライマー組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法は、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
【0106】
[隠蔽層]
隠蔽層は、基材層3の色の変化やバラツキを抑制する目的で、基材層3と第1樹脂層1の間、絵柄層4を設ける場合であれば基材層3と絵柄層4の間に、必要に応じて設けられる層である。
【0107】
隠蔽層は、基材層3が加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するために設けられるため、一般的には、不透明色の層として形成される。
【0108】
隠蔽層は、バインダーに、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。隠蔽層を形成するインキ組成物は、前述した絵柄層4に使用されるものから適宜選択して使用される。
【0109】
隠蔽層は、通常、厚みが1~20μm程度に設定され、所謂ベタ印刷層として形成されることが望ましい。
【0110】
隠蔽層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方法;グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート等の通常の塗布方法等によって形成される。
【0111】
[裏面接着層]
裏面接着層は、加飾樹脂成形品の成形の際に成形樹脂との密着性を高めることを目的として、加飾シートの外側表面とは反対側に、必要に応じて設けられる層である。
【0112】
裏面接着層には、加飾樹脂成形品に使用される成形樹脂に応じて、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が用いられる。
【0113】
裏面接着層の形成に使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
また、裏面接着層の形成に使用される熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0115】
2.加飾シートの製造方法
前述した本開示の加飾シート10は、基材層3の一方面の上に、少なくとも、基材層3、第1樹脂層1がこの順に積層された積層体が得られるように各層を積層する工程を備える方法により製造できる。各層の形成に使用される成分、厚み、各層の形成方法の具体的条件等については、前記各層の組成の欄で述べたとおりである。また、前述の通り、加飾シート10には、必要に応じて、第2樹脂層2、絵柄層4、プライマー層、隠蔽層、裏面接着層などを積層することもできる。
【0116】
3.加飾樹脂成形品
本開示の加飾樹脂成形品20は、本開示の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本開示の加飾樹脂成形品20は、図5の模式図に示されるように、少なくとも、成形樹脂層5と、基材層3と、基材層3の一方側の全面に形成された第1樹脂層1とを備え、第1樹脂層1は、第1粒子1aと、第1粒子1aとは異なる種類の粒子であって、第1粒子1aよりも相対的に大きな第2粒子1bとを含んでおり、第1樹脂層1は、基材層3側とは反対側の面に突出する複数の盛上部分11を含み、第2粒子1bは、第1樹脂層1の基材層3側に位置する層に接触していないことを特徴とする。本開示の加飾樹脂成形品20の一方側の表面は、凹凸形状を有する。本開示の加飾樹脂成形品20では、必要に応じて、前述の第2樹脂層2、絵柄層4、プライマー層、隠蔽層、裏面接着層などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
【0117】
本開示の加飾樹脂成形品は、例えば、本開示の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。本開示においては、本開示の加飾シートを各種射出成形法に供して加飾樹脂成形品を作製することによって、加飾シートと成形樹脂層とが優れた密着性を発揮できる。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。
【0118】
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本開示の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0119】
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本開示の加飾樹脂成形品が製造される。
本開示の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
【0120】
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層3としてABS樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常120~200℃程度とできる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度とできる。
【0121】
また、射出成形同時加飾法では、本開示の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本開示の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0122】
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本開示の加飾樹脂成形品が製造される。
本開示の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの基材層3側が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
【0123】
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層3としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70~130℃程度とできる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度とできる。
【0124】
また、本開示の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層5)上に、本開示の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製できる。真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本開示の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層3側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本開示の加飾樹脂成形品を得ることができる。
【0125】
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層3としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60~200℃程度とできる。
【0126】
本開示の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層5は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層5を形成する成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
【0127】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられ、基材層3との密着性に特に優れることから、これらの中でもABS樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0129】
本開示の加飾樹脂成形品は、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用できる。
【実施例
【0130】
以下に、実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例で第1樹脂層の形成に使用したインキにおいて、樹脂組成物A-1,A-2,B-1,B-3には、それぞれ、第1粒子としてシリカ粒子が含まれており、樹脂組成物A-2,B-1には、さらに第2粒子としてポリウレタン粒子が含まれている。第2粒子を含む樹脂組成物A-2,B-1は、それぞれ、第1樹脂層の盛上部分を形成するために用いられている。
【0131】
(加飾シートの作製)
[実施例1]
基材層として黒色ABS原反を用意し、アクリル樹脂と塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体との混合比率5:5質量比混合物に着色剤が配合されたインキを用いてグラビア印刷により、厚み1μmの全面着色層(隠蔽層)、厚み4μmの木目柄の絵柄層を順次塗工した。なお、木目柄は冬木目部分が濃色となるようパターンを形成した。
【0132】
次いで、以下の3回の印刷により、第1樹脂層を形成した。
【0133】
まず、樹脂組成物A-1「ポリカーボネート骨格を有する2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量30,000)を22.5質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を7.5質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、グラビア印刷により絵柄層の上から全面に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させた。
【0134】
次いで、前記樹脂組成物A-1からなるインキが半乾燥の状態で、樹脂組成物B-1「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単独重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を15質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を5質量%、第2粒子としてウレタン粒子(平均粒径20μm、粒子径5~60μm(全ての有機粒子の粒子径のうち、90%が粒子径5~60μmの範囲内である。))を15質量%、及び希釈溶剤を65質量%」からなるインキを、版深90μmのパターン版を用いた盛上げ印刷により部分的に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させて盛上部分を形成した。盛上部分のパターンは木目柄とし、基材層の一方面に対する面積比として25%となるように形成した。次いで、前記樹脂組成物B-1からなるインキが半乾燥の状態で、前記の樹脂組成物A-1からなるインキを、グラビア印刷により上から全面に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させた。
【0135】
以上の3回の印刷工程により、複数の盛上部分が形成された第1樹脂層を絵柄層の上に形成した。
【0136】
なお、第1樹脂層の厚みは、盛上部分が形成されていない箇所(盛上部分の間)で5μm、盛上部分が形成されている箇所では10~50μmである。また、盛上部分においては、第2粒子であるウレタン粒子が密集して存在しており、第2粒子の存在によって盛上部分が形成されている。また、盛上部分の間の位置(樹脂組成物A-1からなるインキによって形成された部分)には、第2粒子が存在していない。また、第1粒子であるシリカ粒子は、第1樹脂を形成する全てのインキに含まれているため、第1樹脂層の全体に第1粒子が分散している。さらに、第2粒子を含まない前記樹脂組成物A-1からなるインキの印刷を行ってから、第2粒子を含む前記樹脂組成物B-1からなるインキを印刷したことから、第1樹脂層の盛上部分において、第2粒子は絵柄層に接触していない。さらに、盛上部分の間においては、1回目と3回目の印刷において、同じく樹脂組成物A-1からなるインキが使用され、さらにインキが半乾燥の状態で印刷が行われたため、相溶により明確な界面は形成されていない。第1樹脂層は艶が1.0(60°グロス)となるよう設定した。
【0137】
次いで、樹脂組成物B-2「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を28質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を2質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、絵柄層の木目柄の冬目部分を除いたパターンにて木目柄と同調するようにグラビア印刷して厚み2μmの第2樹脂層を形成した。なお、第2樹脂層は、艶が10.0(60°グロス)となるよう設定した。
【0138】
最後に、表面に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射し、電離放射線硬化性樹脂を硬化させて、加飾シートを得た。
【0139】
[実施例2]
以下の3回の印刷により、第1樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
【0140】
まず、樹脂組成物B-3「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を22.5質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を7.5質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、グラビア印刷により絵柄層の上から全面に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させた。
【0141】
次いで、前記樹脂組成物B-3からなるインキが半乾燥の状態で、樹脂組成物B-1「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を15質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を5質量%、第2粒子としてウレタン粒子(平均粒径20μm、粒子径5~60μm(全ての有機粒子の粒子径のうち、90%が粒子径5~60μmの範囲内である。))を15質量%、及び希釈溶剤を65質量%」からなるインキを、版深90μmのパターン版を用いた盛上げ印刷により部分的に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させて盛上部分を形成した。盛上部分のパターンは木目柄とし、基材層の一方面に対する面積比として25%となるように形成した。
【0142】
次いで、前記樹脂組成物B-1からなるインキが半乾燥の状態で、前記の樹脂組成物B-3からなるインキを、グラビア印刷により上から全面に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させた。
【0143】
[実施例3]
以下の3回の印刷により、第1樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
【0144】
まず、樹脂組成物A-1「ポリカーボネート骨格を有する2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量30,000)を22.5質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を7.5質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、グラビア印刷により絵柄層の上から全面に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させた。
【0145】
次いで、前記樹脂組成物A-1からなるインキが半乾燥の状態で、樹脂組成物A-2「ポリカーボネート骨格を有する2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量30,000)を15質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を5質量%、第2粒子としてウレタン粒子(平均粒径20μm、粒子径5~60μm(全ての有機粒子の粒子径のうち、90%が粒子径5~60μmの範囲内である。))を15質量%、及び希釈溶剤を65質量%」からなるインキを、版深90μmのパターン版を用いた盛上げ印刷により部分的に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させて盛上部分を形成した。盛上部分のパターンは木目柄とし、基材層の一方面に対する面積比として25%となるように形成した。
【0146】
次いで、前記樹脂組成物A-2からなるインキが半乾燥の状態で、前記の樹脂組成物A-1からなるインキを、グラビア印刷により上から全面に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させた。
【0147】
[実施例4]
以下の3回の印刷により、第1樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
【0148】
まず、樹脂組成物B-3「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を22.5質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を7.5質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、グラビア印刷により絵柄層の上から全面に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させた。
【0149】
次いで、前記樹脂組成物B-3からなるインキが半乾燥の状態で、樹脂組成物A-2「ポリカーボネート骨格を有する2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量30,000)を15質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を5質量%、第2粒子としてウレタン粒子(平均粒径20μm、粒子径5~60μm(全ての有機粒子の粒子径のうち、90%が粒子径5~60μmの範囲内である。))を15質量%、及び希釈溶剤を65質量%」からなるインキを、版深90μmのパターン版を用いた盛上げ印刷により部分的に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させて盛上部分を形成した。盛上部分のパターンは木目柄とし、基材層の一方面に対する面積比として25%となるように形成した。
【0150】
次いで、前記樹脂組成物A-2からなるインキが半乾燥の状態で、前記の樹脂組成物B-3からなるインキを、グラビア印刷により上から全面に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させた。
【0151】
[比較例1]
基材層として黒色ABS原反を用意し、アクリル樹脂と塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体との混合比率5:5質量比混合物に着色剤が配合されたインキを用いてグラビア印刷により、厚み1μmの全面着色層(隠蔽層)、厚み4μmの木目柄の絵柄層を順次塗工した。なお、木目柄は冬木目部分が濃色となるようパターンを形成した。
【0152】
次いで、樹脂組成物A-1「ポリカーボネート骨格を有する2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量30,000)を22.5質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を7.5質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、グラビア印刷により絵柄層の上から全面に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させて、厚み5μmの第1樹脂層を形成した。なお、第1樹脂層は、艶が1.0(60°グロス)となるよう設定した。
【0153】
次いで、樹脂組成物B-2「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を28質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を2質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、絵柄層の木目柄の冬目部分を除いたパターンにて木目柄と同調するようにグラビア印刷し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させて厚み2μmの第2樹脂層を形成した。なお、第2樹脂層は、艶が10.0(60°グロス)となるよう設定した。
【0154】
次いで、樹脂組成物B-1「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を15質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を5質量%、第2粒子としてウレタン粒子(平均粒径20μm、粒子径5~60μm(全ての有機粒子の粒子径のうち、90%が粒子径5~60μmの範囲内である。))を15質量%、及び希釈溶剤を65質量%」からなるインキを、版深90μmのパターン版を用いた盛上げ印刷により部分的に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させて盛上部分を形成した。盛上部分のパターンは木目柄とし、基材層の一方面に対する面積比として25%となるように形成した。
【0155】
最後に、表面に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射し、電離放射線硬化性樹脂を硬化させて、加飾シートを得た。
【0156】
[比較例2]
以下の2回の印刷により、第1樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
【0157】
まず、樹脂組成物B-1「「ペンタエリスリトールトリアクリレート:熱可塑性樹脂(メタクリル酸メチルの単重合体)=30:70(質量比)からなる電離放射線硬化性樹脂」を15質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を5質量%、第2粒子としてウレタン粒子(平均粒径20μm、粒子径5~60μm(全ての有機粒子の粒子径のうち、90%が粒子径5~60μmの範囲内である。))を15質量%、及び希釈溶剤を65質量%」からなるインキを、版深90μmのパターン版を用いた盛上げ印刷により部分的に塗工し、50℃の乾燥炉で30秒間乾燥させて盛上部分を形成した。盛上部分のパターンは木目柄とし、基材層の一方面に対する面積比として25%となるように形成した。
【0158】
次いで、樹脂組成物A-1「ポリカーボネート骨格を有する2官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量30,000)を22.5質量%、第1粒子としてシリカ粒子(平均粒径2μm 艶消剤)を7.5質量%、及び希釈溶剤を70質量%」からなるインキを、グラビア印刷により上から全面に塗工し、90℃の乾燥炉で3分間乾燥させた。以降は、実施例1と同様にして、加飾シートを得た。
【0159】
<加飾シートの意匠性の評価>
加飾シートの意図した意匠のずれの観点と木目の意匠感の観点から、それぞれ、以下のようにして意匠性を評価した。前記で得られた各加飾シートについて、第2樹脂層側(基材層と反対側)の表面から目視で観察し、以下の基準に従って意匠性を評価した。結果を表1に示す。
A:意図した意匠が実現できており、木目としての意匠感に優れている
B:盛上部分の影響により、意図した意匠とはややずれているが、木目としての意匠感は良好である
C:盛上げ層の影響により、意図した意匠とずれている部分があるが、木目としての意匠感は一般的であり、実用上問題ない程度である
D:盛上げ層の影響により、意図した意匠とは大きくずれており、木目の意匠感に劣る
【0160】
<加飾シートの触感の評価>
前記で得られた各加飾シートの触感の評価を以下のようにして評価した。前記で得られた各加飾シートについて、第2樹脂層側(基材層と反対側)の表面を手の指で触り、以下の基準に従って触感を評価した。結果を表1に示す。
A:明確に凹凸が感じられる
B:凹凸が感じられる
C:感じられる凹凸は弱いが、触感を付与した加飾シートといえる程度である
D:凹凸がほとんど感じられず、触感を付与した加飾シートとはいえない
【0161】
[層間密着性の評価]
以下の初期層間密着性及び耐久試験後の層間密着性の2つの観点から、加飾シートの層間密着性を評価した。
【0162】
<初期層間密着性>
各加飾シートの表面に対して、カッターで長さ5mm、間隔2mmで縦11本、横11本の切れ込みを入れ、縦10マス×横10マスの合計100マスの碁盤目状の切れ込みを形成した。この切れ込みの上から、ニチバン社製のセロテープ(登録商標)(No.405-1P)を圧着した後、90度方向に急激に剥離することにより、層間密着性を評価した。結果を表1に示す。
A:全く剥離が見られない
B:部分的に剥離が見られるが、実用上問題ない程度である
C:実用上問題となる程度の剥離が見られる
【0163】
<耐久試験後の層間密着性>
各加飾シートに対して、100℃下に500時間放置する条件(耐熱試験)、温度50℃、湿度95%で500時間放置する条件(耐湿熱性試験)、及びアトラス社製キセノンウェザーメーター(プログラム:SAE J1885)にて、積算照度が100MJになるまで試験する条件(耐候性試験1)、JIS B 7751に準ずる紫外線カーボンアーク灯式フェードメータ(ブラックパネル温度63℃)にて、500時間試験する条件(耐候性試験2)の各条件で耐久試験を実施後、前記初期密着と同じ方法で層間密着性を評価した。
A:いずれの耐久性試験後にも全く剥離が見られない
B:いずれかの耐久試験後に部分的な剥離が見られるが、実用上問題ない程度である
C:いずれかの耐久試験後に実用上問題となる程度の剥離が見られる
【0164】
【表1】
【符号の説明】
【0165】
1…第1樹脂層
1a…第1粒子
1b…第2粒子
11…盛上部分
12…盛上部分の間
2…第2樹脂層
3…基材層
4…絵柄層
5…成形樹脂層
10…加飾シート
20…加飾樹脂成形品
図1
図2
図3
図4
図5