(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】トラックの車体
(51)【国際特許分類】
B62D 33/02 20060101AFI20241210BHJP
B62D 33/023 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B62D33/02 T
B62D33/023 Q
(21)【出願番号】P 2020172617
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】安達 保則
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 駆
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-035205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
B62D 33/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフロアパネルと、一対のサイドパネルと、前記フロアパネルの後端辺部に沿って車体の幅方向に延在するボルスタと、テールゲートと、を含む荷台を備えたトラックの車体において、
前記サイドパネルの後端部であって前記ボルスタの左端部及び右端部のそれぞれに、車体の上下方向に延在して、前記サイドパネルと前記ボルスタとに接合する支柱部材が設けられ、
前記支柱部材は、前記ボルスタから車体の上側に延在する支柱上部と、前記ボルスタから車体の下側に延在する支柱下部とを含み、
前記支柱上部及び前記支柱下部の一方
は、車体の前後方向に沿う面と車体の幅方向に沿う面とを有する水平断面
からなるとともに、車体の幅方向の外側が開放した非袋状断面構造とされ、
前記支柱上部及び前記支柱下部の他方
は、車体の前後方向に沿う面と車体の幅方向に沿う面とを有する水平断面
からなるとともに、車体の幅方向の内側が開放した非袋状断面構造とされているトラックの車体。
【請求項2】
前記支柱上部の水平断面は、車体の幅方向の外側が開放した断面構造とされ、前記支柱下部の水平断面は、車体の幅方向の内側が開放した断面構造とされ、
前記支柱上部の、開放した断面構造とされた車体の幅方向の外側の空間に、リヤコンビネーションランプが取り付けられる請求項1に記載のトラックの車体。
【請求項3】
前記支柱下部の、開放した断面構造とされた車体の幅方向の内側に、前記支柱下部と前記ボルスタとを結ぶ筋交い部材が設けられている請求項1又は2に記載のトラックの車体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビンの後方に荷台を備えたトラックの車体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックの荷台構造において、テールゲートの側部に、水平断面が袋状に閉じた構造(略ボックス断面)のポストを設け、剛性を確保するようにしたトラックの車体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラックのデザインによっては、荷台のテールゲートの側部にリヤコンビネーションランプが取り付けられることがある。このようなデザインの場合、リヤコンビネーションランプがあるため、テールゲートの側部の構造体を略ボックス断面構造にできず、車体の捩れモードで必要とされる剛性が充分に確保できず、荷物を固定するためのロープの固縛が緩むという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車体の捩れモードなどで必要とされる剛性が確保でき、荷物を固定するためのロープが緩むのを抑制できるトラックの車体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、荷台のサイドパネルの後端部且つボルスタの左右端部のそれぞれに、車体の上下方向に延在してサイドパネルとボルスタとに接合し、ボルスタから車体の上側に延在する支柱上部と、ボルスタから車体の下側に延在する支柱下部とを含む支柱部材を設け、支柱上部及び支柱下部の水平断面を、部分的に開放され、且つ一方が他方を補完する関係にある非袋状断面構造とすることによって、上記課題を解決する。より具体的には、前記支柱上部及び前記支柱下部の一方は、車体の前後方向に沿う面と車体の幅方向に沿う面とを有する水平断面からなるとともに、車体の幅方向の外側が開放した非袋状断面構造とし、前記支柱上部及び前記支柱下部の他方は、車体の前後方向に沿う面と車体の幅方向に沿う面とを有する水平断面からなるとともに、車体の幅方向の内側が開放した非袋状断面構造とすることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体に捩れモードが入力すると、左側の支柱部材の支柱上部が内倒れするとともに支柱下部が外倒れし、右側の支柱部材の支柱上部が外倒れするとともに支柱下部が内倒れし、この捩れ変形が左右交互に繰り返される。このとき、支柱部材の支柱上部は、水平断面が部分的に開放された非袋状断面構造とされているので、左側の支柱部材の支柱上部が外倒れする際の剛性と、右側の支柱部材の支柱上部が内倒れする際の剛性とは異なることになる。しかしながら、支柱部材の支柱下部は、その支柱上部を補完する関係にある非袋状断面構造とされているので、支柱上部が外倒れした際の剛性が小さければ、支柱下部が内倒れした際の剛性が大きくなる。したがって、車体に捩れモードが入力することで内倒れと外倒れを繰り返した場合、左右の支柱部材の剛性差はゼロ又は略ゼロになる。その結果、荷台に掛けたロープの固縛が緩むのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明のトラックの車体の一実施の形態を示す側面図である。
【
図1B】
図1Aのトラックの車体の足回り構造体と荷台を示す斜視図である。
【
図3】
図2の荷台の一部を分解して示す分解斜視図である。
【
図6】
図2のVI部を下から上に見た分解斜視図である。
【
図7】本発明に係る支柱部材とボルスタの一実施の形態を示す斜視図である。
【
図8A】本発明に係る支柱部材の一実施の形態を示す斜視図である。
【
図8B】本発明に係る支柱部材の一実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図9A】本発明に係る筋交い部材とボルスタの一実施の形態を示す斜視図である。
【
図9B】本発明に係る筋交い部材とボルスタの一実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図10】本発明に係る支柱部材、ボルスタ及び筋交い部材を含む構造体の一実施の形態を示す模式図である。
【
図11】
図10に示す構造体に捩れモードが入力した場合の変位を示す模式図である。
【
図12】
図10の比較例に係る構造体に捩れモードが入力した場合の変位を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1Aは、本発明のトラックの車体1を含むトラックの完成車の一実施の形態を示す側面図、
図1Bは、
図1Aのトラックの車体1から足回り構造体14と荷台13を抽出して示す斜視図である。なお、各図に示すxyz空間は、xが車体1の幅方向を示し、yが車体1の前後方向を示し、zが車体1の上下方向を示すものとする。本発明のトラックの車体1は、走行動力源となるエンジンが搭載されるエンジンルーム11と、運転手及び同乗者が乗車するキャビン12と、荷物などが搭載される荷台13とを備え、これらが、足回り構造体14の上に支持されている。
【0010】
なお、本発明は、上面が開放された荷台13であって、荷台13のテールゲート135が、フロアパネル131の後端部にヒンジ136を介して開閉可能に支持され、且つサイドパネル133,134の後端部にリヤコンビネーションランプ15その他の艤装品が取り付けられるトラックの車体1であれば適用することができ、エンジンルーム11やキャビン12などの構造は、本実施形態で説明する構成に何ら限定されない。
【0011】
図2は、本実施形態のトラックの荷台13を示す斜視図、
図3は、荷台13の一部を分解して示す分解斜視図、
図4は、
図2のIV-IV線に沿う断面図である。荷台13は、略矩形のフロアパネル131と、フロントエンドパネル132と、一対のサイドパネル133,134と、テールゲート135とを備える。そして、略矩形のフロアパネル131の前端部に、フロントエンドパネル132が立設して固定され、フロアパネル131の左右側端部にサイドパネル133,134がそれぞれ立設して固定され、フロアパネル131の後端部に、ヒンジ136,136を介してテールゲート135が開閉可能に支持され、これにより枡形の荷台13とされている。なお、フロアパネル131、フロントエンドパネル132、一対のサイドパネル133,134、及びテールゲート135は、複数のパネル部品が溶接などで接合されたアッセンブリ部品である。
【0012】
たとえば、フロアパネル131は、
図3に示すように車両の前後方向に沿った複数のビードが形成された板材と、これに直交する複数の補強メンバとが溶接などにより接合されたアッセンブリである。また、サイドパネル133,134は、
図4に示すようにサイドパネルアウタ133aとサイドパネルインナ133bとが、溶接などにより接合されたアッセンブリであり、サイドパネルインナ133bの下端はフロアパネル131に接合されている。
【0013】
図5は、
図2のV-V線に沿う断面図であり、荷台13の左右前端のコーナ部の、フロントエンドパネル132とサイドパネル133との接合部分を水平に切断し、これを上から見た断面図である。
図5において、下側が車体1の外側(+x方向)を示し、左側が車体1の前方(+y方向)を示す。この水平断面において、フロントエンドパネル132は、エクステンションパネル132aを介して、サイドパネルアウタのフランジとスポット溶接などにより接合されている。また、フロントエンドパネル132は、サイドパネルインナ133bの前端のフランジ133cとスポット溶接などにより接合されている。
【0014】
ここで、本実施形態のサイドパネルインナ133bの前端のフランジ133cは、車体1の中心側に折り曲げられ、そのエッジ133dが荷台13の中心に向かって露出する。本実施形態の車体1では、電着塗装を施したのち、このエッジ133dに防錆用塩化ビニル製シーリング材を塗布し、シーリング材乾燥炉、中塗り乾燥炉又は上塗り乾燥炉で硬化させる。これにより、フロントエンドパネル132とサイドパネルインナ133bのフランジ133cとの合わせ面の防錆及びエッジ133dの防錆が図られる。
【0015】
しかしながら仮に、サイドパネルインナ133bの前端のフランジ133cを、
図5に示すように車体1の中心側に折り曲げるのではなく、これとは反対側、すなわちフランジ133cを車体1の外側に折り曲げた場合、フロントエンドパネル132と、サイドパネルインナ133bのフランジ133cとの合わせ面に塗布する防錆用シーリング材は、外側に折り曲げられたエッジ133dではなく、フランジ133cの折り曲げ部分とフロントエンドパネル132とが突き合わされた隙間に塗布しなければならない。荷台13側から雨水が浸入するからである。
【0016】
しかしながら、上面が開放した枡上の荷台13は、走行時の捩れモードにより捩れ、フランジ133cの折り曲げ部分とフロントエンドパネル132とが突き合わされた部分が大きく捩れ、これによりシーリング材が割れるおそれがあることが知見されている。しかしながら、本実施形態のようにサイドパネルインナ133bの前端のフランジ133cを、車体1の中心側に折り曲げ、そのエッジ133dにシーリング材を塗布すれば、捩れ入力があってもシーリング材の割れは生じない。
【0017】
図6は、
図2のVI部を下から上に向かって見た分解斜視図、
図7は、本発明に係る支柱部材137とボルスタ138の一実施の形態を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態の荷台13は、一対のサイドパネル133,134の前端部はフロントエンドパネル132にそれぞれ固定されているので、荷台13の前側の左右のコーナは比較的剛性が高い。しかしながら、荷台13の後側の左右のコーナは、一対のサイドパネル133,134の後端部を支持する構造部材がないので、前端部に比べて剛性が低い。そのため、本実施形態では、サイドパネル133,134の後端部であって、ボルスタ138の左端部及び右端部のそれぞれに、車体1の上下方向に延在する一対の支柱部材137が設けられている。なお、支柱部材137は、ストラット又はポストとも称される構造体である。
【0018】
本実施形態の支柱部材137は、ボルスタ138から車体の上側に延在する支柱上部137aと、ボルスタ138から車体の下側に延在する支柱下部137cとを含むアッセンブリ部品である。たとえば、本実施形態の支柱部材137は、支柱上部137a及び支柱下部137c以外に、支柱上部アウタ137bとリーンフォース137dがアッセンブリされている。また、ボルスタ138は、フロアパネル131の後端辺部に溶接などにより接合され、当該フロアパネル131の後端辺部に沿って車体1の幅方向に延在する構造体である。
【0019】
図8Aは、本発明に係る支柱部材137の一実施の形態を示す斜視図、
図8Bは、当該支柱部材137の分解斜視図であり、
図7と同様にボルスタ138の右端部に設けられた支柱部材を示す。これらの図に示すように、ボルスタ138から車体の上側に延在する支柱上部137aと、ボルスタ138から車体の下側に延在する支柱下部137cとが、溶接などにより接合され、これに支柱上部アウタ137bとリーンフォース137d(
図8A,
図8Bでは図示を省略する)が溶接などにより接合されている。
【0020】
図9Aは、本発明に係る筋交い部材139とボルスタ138の一実施の形態を示す斜視図、
図9Bはその分解斜視図である。本実施形態の筋交い部材139は、
図7に示すように、支柱部材137の支柱下部137cとボルスタ138とを、溶接などにより接合し、建築物の筋交いのように、支柱部材137とボルスタ138との捩れ剛性を高めるための構造体である。
【0021】
図10は、本実施形態に係る一対の支柱部材137、ボルスタ138及び筋交い部材139を含む荷台13の後端部の構造を模式的に示す図であり、図中、左右方向が車体1の幅方向xに相当し、上下方向が車体1の上下方向zに相当し、紙面に垂直方向が車体1の前後方向yに相当する。ここで、同図のUP-UP線に沿う断面図は、支柱部材137の、ボルスタ138から車体の上側に延在する支柱上部137aを水平方向に切断して上から下方向に見たときの断面図、同図のLW-LW線に沿う断面図は、支柱部材137の、ボルスタ138から車体の下側に延在する支柱下部137cを水平方向に切断して上から下方向に見たときの断面図である。
【0022】
支柱部材137の、ボルスタ138から車体の上側に延在する支柱上部137aは、サイドパネル133,134の後端部にリヤコンビネーションランプ15などの艤装品が取り付けられるため、これとの干渉を回避するために、水平断面が袋状の構造体にすることができない。そのため、
図10のUP-UP線に沿う断面図に示すように、支柱部材137の、ボルスタ138から車体の上側に延在する支柱上部137aは、リヤコンビネーションランプ15などの艤装品との干渉を回避するために、部分的に開放した非袋状断面構造とされている。すなわち、支柱上部137aは、その水平断面が、車体1の幅方向の外側が開放した非袋状断面構造とされ、この開放した断面部分の空間にリヤコンビネーションランプ15が取り付けられる。
【0023】
これに対して、支柱部材137の、ボルスタ138から車体の下側に延在する支柱下部137cは、艤装品が取り付けられないので当該艤装品との干渉を回避する必要がなく、剛性が高い水平断面が袋状の構造体とすることができる。しかしながら、本実施形態の支柱下部137cは、
図10のLW-LW線に沿う断面図に示すように、支柱上部137aの部分的に開放した非袋状断面構造を、補完する関係にある水平断面構造とされている。すなわち、支柱下部137cは、その水平断面が、車体1の幅方向の内側が開放した非袋状断面構造とされ、支柱上部137aの非袋状断面構造と併せると袋状断面構造が構成される関係とされている。
【0024】
このように、本実施形態の支柱部材137は、支柱上部137aが、車体1の幅方向の外側が開放した非袋状断面構造とされていれば、支柱下部137cは、車体1の幅方向の内側が開放した非袋状断面構造とされる。本発明の「一方が他方を補完する関係」というのは、このような関係にある水平断面構造を言い、2つの水平断面構造が合わされることで袋状断面構造となることが好ましいが、完全な袋状断面構造でなくとも、車体1の捩れ剛性について、支柱上部137aの剛性と支柱下部137cの剛性とが少なくとも逆の関係にあればよい。この関係を、
図11を参照して説明する。
【0025】
図11は、
図10に示す構造体に捩れモードが入力した場合の変位を示す模式図であり、たとえば、
図10の一対の支柱部材137,137が、車体1の捩れによって左方向へ倒れる場合を示している。
図11に示すように、左側の支柱部材137は、車体1の外側に向かって倒れ(以下、外倒れとも言う)、右側の支柱部材137は、車体1の内側に向かって倒れる(以下、内倒れとも言う)。このような捩れモードの場合、左側の支柱部材137の支柱上部137aは、外側が開放した非袋状断面構造とされているので、外倒れの外力に対して相対的に剛性が低い。しかしながら、支柱下部137cは、内側が開放した非袋状断面構造とされ、外側は開放していないので、当該外力に対して相対的に剛性が高い。したがって、支柱上部137aの剛性の低さは支柱下部137cの剛性の高さで補完することになる。
【0026】
図11の右側の支柱部材137についても同様に作用する。すなわち、内倒れする右側の支柱部材137の支柱上部137aは、外側が開放した非袋状断面構造とされ、内側は開放していないので、内倒れの外力に対して相対的に剛性が高い。しかしながら、支柱下部137cは、内側が開放した非袋状断面構造とされているので、当該外力に対して相対的に剛性が低い。したがって、支柱下部137cの剛性の低さは支柱上部137aの剛性の高さで補完することになる。このように、本発明の「一方が他方を補完する関係」というのは、特定方向の外力について、支柱上部137aの剛性が高ければ支柱下部137cの剛性が低く、支柱上部137aの剛性が低ければ支柱下部137cの剛性が高いことをいう。
【0027】
特に本実施形態の支柱部材137は、支柱下部137cの水平断面を、剛性が高い袋状断面構造とせず、敢えて非袋状断面構造としているのは、支柱部材137が内倒れしたときの剛性と、外倒れしたときの剛性をできるだけ等しくするためである。すなわち、
図11に示すように、車体1が捩れると左右の支柱部材137,137は、一方が外倒れし、他方が内倒れし、これが交互に繰り返される。本実施形態の支柱部材137は、支柱上部137aの剛性の強弱を支柱下部137cの剛性の強弱で補完することで、支柱部材137の全体として、内倒れ内倒れしたときの剛性と、外倒れしたときの剛性とが、できるだけ等しくなっている。したがって、同図に示すように、左側の支柱部材137が外倒れした場合の捩れ変位ΔLと、右側の支柱部材137が内倒れした場合の捩れ変位ΔRとができる限り等しくなる。
【0028】
これに対し、支柱下部137cの水平断面を、剛性が高い袋状断面構造とした比較例を説明する。
図12は、
図10の比較例に係る構造体に捩れモードが入力した場合の変位を示す模式図である。比較例に係る支柱部材137の支柱上部137aは、外側が開放した非袋状断面構造とされ、この点は
図10に示す本実施形態の支柱部材137と同じである。ただし、比較例に係る支柱部材137の支柱下部137cは、
図12のLW-LW断面図に示すように、袋状断面構造とされている。
【0029】
このような比較例に係る支柱部材137に捩れ入力があると、左側の支柱部材137の支柱上部137aは、外側が開放した非袋状断面構造とされているので、外倒れの外力に対して相対的に剛性が低い。ここで、支柱下部137cは、袋状断面構造とされ当該外力に対して相対的に剛性が高いので、支柱下部137cに対して、支柱上部137aが外側に撓んでΔLだけ変形することになる。
【0030】
これに対し、右側の支柱部材137の支柱上部137aは、外側が開放した非袋状断面構造とされ、内側は開放していないので、内倒れの外力に対して相対的に剛性が高い。ここで、支柱下部137cは、左側の支柱部材137の支柱下部137cと同じく袋状断面構造とされ剛性が高いので、支柱上部137aも支柱下部137cも共に剛性が高いので、内倒れによる変形量ΔRは、左側の変形量ΔLよりも小さくなる。仮に、走行中に生じる捩れ入力により、
図12に示すように左右の変形量ΔL,ΔRが異なることになると、
図10に示すように、荷物2を固定するために荷台13に掛けたロープの間隔(距離)が変動し、ロープの固縛が緩むおそれがある。
【0031】
しかしながら、本実施形態の支柱部材137によれば、
図11に示すように、走行中に捩れ入力があっても、左右の支柱部材137の変形量ΔL,ΔRが等しく、平行四辺形を維持するように捩れる。したがって、
図10に示すように、荷物2を固定するために荷台13に掛けたロープの間隔(距離)は変動せず、ロープの固縛が緩むおそれもない。
【0032】
以上、本実施形態のトラックの車体1によれば、少なくともフロアパネル131と、一対のサイドパネル133,134と、フロアパネル131の後端辺部に沿って車体1の幅方向xに延在するボルスタ138と、テールゲート135とを含む荷台13を備えたトラックの車体1において、サイドパネル133,134の後端部であってボルスタ138の左端部及び右端部のそれぞれに、車体の上下方向に延在して、サイドパネル133,134とボルスタ138とに接合する支柱部材137,137が設けられている。そして、支柱部材137は、ボルスタ138から車体1の上側に延在する支柱上部137aと、ボルスタ138から車体1の下側に延在する支柱下部137cとを含み、支柱上部137a及び支柱下部137cの水平断面は、部分的に開放した非袋状断面構造とされ、一方が他方を補完する関係にある水平断面構造とされている。
【0033】
より具体的には、本実施形態のトラックの車体1によれば、支柱上部137a及び支柱下部137cの一方の水平断面は、車体1の幅方向xの外側が開放した非袋状断面構造とされ、支柱上部137a及び支柱下部137cの他方の水平断面は、車体1の幅方向xの内側が開放した非袋状断面構造とされている。
【0034】
さらにより具体的には、本実施形態のトラックの車体1によれば、支柱上部137aの水平断面は、車体1の幅方向xの外側が開放した断面構造とされ、支柱下部137cの水平断面は、車体1の幅方向xの内側が開放した断面構造とされ、支柱上部137aの、開放した断面構造とされた車体1の幅方向xの外側の空間に、リヤコンビネーションランプ15が取り付けられる。
【0035】
本実施形態のトラックの車体1では、支柱部材137の支柱上部137aは、水平断面が部分的に開放された非袋状断面構造とされているので、左側の支柱部材137の支柱上部137aが外倒れする際の剛性と、右側の支柱部材137の支柱上部137aが内倒れする際の剛性とは異なることになる。しかしながら、支柱部材137の支柱下部137cは、その支柱上部137aを補完する関係にある非袋状断面構造とされているので、支柱上部137aが外倒れした際の剛性が小さければ、支柱下部137cが内倒れした際の剛性が大きくなる。したがって、車体1に捩れモードが入力することで内倒れと外倒れを繰り返した場合、左右の支柱部材137の剛性差はゼロ又は略ゼロになる。その結果、
図10に示すように、荷物2を固定するために、荷台13に掛けたロープ3の固縛が緩むのを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態のトラックの車体1によれば、支柱下部137cの、開放した断面構造とされた車体1の幅方向xの内側に、支柱下部137cとボルスタ138とを結ぶ筋交い部材139が設けられている。これにより、一対の支柱部材137、ボルスタ138及び筋交い部材139で構成される荷台13の後端部の構造体の剛性が、より一層高くなる。そのため、サイドパネル133,134の後端部にリヤコンビネーションランプ15その他の艤装品を装備することなど、トラックのデザインの自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…トラックの車体
11…エンジンルーム
12…キャビン
13…荷台
131…フロアパネル
132…フロントエンドパネル
133…サイドパネル
134…サイドパネル
135…テールゲート
136…ヒンジ
137…支柱部材
137a…支柱上部
137b…支柱上部アウタ
137c…支柱下部
137d…リーンフォース
138…ボルスタ
139…筋交い部材
14…足回り構造体
15…リヤコンビネーションランプ
2…荷物
3…ロープ