(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20241210BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241210BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 100A
B60C11/13 C
B60C11/12 D
B60C11/12 B
(21)【出願番号】P 2020172634
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三島 麻里
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167065(JP,A)
【文献】特開2017-154709(JP,A)
【文献】特開2018-090097(JP,A)
【文献】特開2018-103674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された少なくとも1つの陸部とを含み、
前記陸部は、第1周方向エッジと、第2周方向エッジと、それらの間の踏面とを備え、
前記踏面には、
前記第1周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第1途切れ溝と、
前記第2周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第2途切れ溝と、
前記第1途切れ溝の前記途切れ端から前記第2周方向エッジまで延びる第1連通サイプと、
前記第2途切れ溝の前記途切れ端から前記第1周方向エッジまで延びる第2連通サイプと、
前記第1周方向エッジから前記第2周方向エッジまで延びる横断サイプとが設けられ、
前記横断サイプは、前記第1周方向エッジから傾斜して延びる第1部分と、前記第2周方向エッジから前記第1部分と同じ向きに傾斜して延びる第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分とは異なる角度で傾斜して前記第1部分及び前記第2部分に連なる第3部分とを含み、
トレッド平面視において、
前記第1部分は、前記第1連通サイプ又は前記第2連通サイプをタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複
し、かつ、前記第3部分は、前記第1連通サイプ又は前記第2連通サイプをタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する、
タイヤ。
【請求項2】
前記第3部分は、前記第1部分及び前記第2部分とは逆向きに傾斜している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2部分は、前記第1連通サイプ又は前記第2連通サイプをタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記踏面には、前記第1周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第1途切れサイプが設けられている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
トレッド平面視において、前記第1途切れサイプは、前記第1部分をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記踏面には、前記第2周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第2途切れサイプが設けられている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
トレッド平面視において、前記第2途切れサイプは、前記第2部分をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1部分のタイヤ軸方向に対する角度は、40~50°である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1部分と前記第3部分との間の角度は、90~110°である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1部分の最大の深さは、前記第1連通サイプの最大の深さよりも大きい、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、陸部に設けられた縦サイプ及び横サイプを略L字形に連通させた空気入りラジアルタイヤが提案されている。前記タイヤは、前記縦サイプ及び前記横サイプによって、雪上旋回性能及び雪上制動性能の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤの陸部に設けられた横溝やサイプは、氷雪上性能を高めるのに役立つ一方、陸部の剛性低下を招き、ドライ路面での操縦安定性を低下させる傾向がある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ドライ路面での操縦安定性の低下を抑制しつつ、氷雪上性能を向上させたタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記周方向溝に区分された少なくとも1つの陸部とを含み、前記陸部は、第1周方向エッジと、第2周方向エッジと、それらの間の踏面とを備え、前記踏面には、前記第1周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第1途切れ溝と、前記第2周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第2途切れ溝と、前記第1途切れ溝の前記途切れ端から前記第2周方向エッジまで延びる第1連通サイプと、前記第2途切れ溝の前記途切れ端から前記第1周方向エッジまで延びる第2連通サイプと、前記第1周方向エッジから前記第2周方向エッジまで延びる横断サイプとが設けられ、前記横断サイプは、前記第1周方向エッジから傾斜して延びる第1部分と、前記第2周方向エッジから前記第1部分と同じ向きに傾斜して延びる第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分とは異なる角度で傾斜して前記第1部分及び前記第2部分に連なる第3部分とを含み、トレッド平面視において、前記第1部分は、前記第1連通サイプ又は前記第2連通サイプをタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第3部分は、前記第1部分及び前記第2部分とは逆向きに傾斜しているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第2部分は、前記第1連通サイプ又は前記第2連通サイプをタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複するのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記踏面には、前記第1周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第1途切れサイプが設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、トレッド平面視において、前記第1途切れサイプは、前記第1部分をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複するのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記踏面には、前記第2周方向エッジから延びかつ前記踏面内に途切れ端を有する第2途切れサイプが設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、トレッド平面視において、前記第2途切れサイプは、前記第2部分をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複するのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記第1部分のタイヤ軸方向に対する角度は、40~50°であるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記第1部分と前記第3部分との間の角度は、90~110°であるのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記第1部分の最大の深さは、前記第1連通サイプの最大の深さよりも大きいのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤは、上述の構成を採用したことにより、ドライ路面での操縦安定性の低下を抑制しつつ、氷雪上性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図8】
図5の第1傾斜サイプ及び第2傾斜サイプの拡大平面図である。
【
図11】比較例のタイヤの第2陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、オールシーズン用の乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、冬用のタイヤに適用されても良い。
【0019】
図1に示されるように、トレッド部2には、2つのトレッド端Teの間でタイヤ周方向に連続してのびる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された複数の陸部とを含む。
【0020】
2つのトレッド端Teは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0021】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0025】
周方向溝3は、例えば、2本のクラウン周方向溝4と2本のショルダー周方向溝5とを含んでいる。
【0026】
2本のクラウン周方向溝4は、タイヤ赤道Cを挟むように設けられている。2本のショルダー周方向溝5は、2本のクラウン周方向溝4を挟むように設けられている。クラウン周方向溝4の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%である。ショルダー周方向溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%である。なお、トレッド幅TWは、一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0027】
各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状にのびている。各周方向溝3は、タイヤ周方向にジグザグ状又は波状にのびるものでも良い。
【0028】
周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3.0%~6.0%であるのが望ましい。周方向溝3の深さ(図示省略)は、例えば、5.0~15.0mmであるのが望ましい。但し、周方向溝3は、このような態様に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態の陸部、第1陸部6、第2陸部7及び第3陸部8を含む。第1陸部6は、2本のクラウン周方向溝4の間に区分されており、タイヤ赤道C上に設けられている。第2陸部7は、クラウン周方向溝4とショルダー周方向溝5との間に区分されている。本実施形態では、2つの第2陸部7が第1陸部6を挟んでいる。第3陸部8は、トレッド端Teを含んでおり、ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されている。本実施形態では、2つの第3陸部8が、1つの第1陸部6及び2つの第2陸部7を挟んでいる。
【0030】
図2には、第2陸部7の拡大図が示されている。
図2に示されるように、第2陸部7は、第1周方向エッジ7aと、第2周方向エッジ7bと、それらの間の踏面7sとを備えている。
【0031】
第2陸部7の踏面7sには、第1途切れ溝33と、第2途切れ溝34と、第1連通サイプ37と、第2連通サイプ38と、横断サイプ40とが設けられている。第1途切れ溝33は、第1周方向エッジ7aから延びかつ踏面7s内に途切れ端33aを有している。第2途切れ溝34は、第2周方向エッジ7bから延びかつ踏面7s内に途切れ端34aを有している。第1連通サイプ37は、第1途切れ溝33の途切れ端33aから第2周方向エッジ7bまで延びている。第2連通サイプ38は、第2途切れ溝34の途切れ端34aから第1周方向エッジ7aまで延びている。横断サイプ40は、第1周方向エッジ7aから第2周方向エッジ7bまで延びている。
【0032】
本明細書において、「サイプ」とは、微小な幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つのサイプ壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.3~1.2mmであり、より望ましくは0.5~1.0mmである。本実施形態のサイプは、その全深さに亘って、前記幅が上述の範囲とされている。サイプには、幅が上述の範囲よりも大きい面取り開口部や、フラスコ底部が連なっても良い。
【0033】
図3には、横断サイプ40の拡大図が示されている。
図3に示されるように、横断サイプ40は、第1周方向エッジ7aから傾斜して延びる第1部分41と、第2周方向エッジ7bから第1部分41と同じ向きに傾斜して延びる第2部分42と、前記第1部分41及び前記第2部分42とは異なる角度で傾斜して第1部分41及び第2部分42に連なる第3部分43とを含む。望ましい態様として、本実施形態の第3部分43は、第1部分431及び第2部分とは逆向きに傾斜している。以下、本明細書において、第3部分43の傾斜の向き(右上がり)を「タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している」といい、第1部分41及び第2部分42の傾斜の向き(右下がり)を「タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している」という。本実施形態では、第1途切れ溝33、第2途切れ溝34、第1連通サイプ37及び第2連通サイプ38が、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している。
【0034】
トレッド平面視において、第1部分41は、第1連通サイプ37又は第2連通サイプ38をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域55(
図3では着色されている。)と重複している。本発明では、上述の構成を採用したことにより、ドライ路面での操縦安定性の低下を抑制しつつ、氷雪上性能を向上させることができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0035】
本発明では、第1途切れ溝33及び第1連通サイプ37、並びに、第2途切れ溝34及び第2連通サイプ38が、第2陸部7の剛性低下を抑制しつつ、エッジ成分を提供する。これにより、ドライ路面での操縦安定性の低下が抑制されつつ、氷雪上性能が向上する。
【0036】
また、上述の横断サイプ40は、そのエッジ成分によって多方向に摩擦力を提供し、氷雪上性能を維持する。また、横断サイプ40は、第3部分43が第1部分41及び第2部分42と異なる角度で傾斜しているため、サイプ壁が接触したときに、横断サイプ40の長さ方向に沿ったせん断変形を防ぎ、ドライ路面でのブレーキ性能を向上させる。
【0037】
しかも、本発明では、横断サイプ40の第1部分41が前記投影領域55と重複しているため、各サイプが協働してタイヤ軸方向に大きな摩擦力を提供し、氷雪上での旋回性能を向上させる。本発明では、このような作用により、ドライ路面での操縦安定性の低下を抑制しつつ、氷雪上性能を向上できると推察される。
【0038】
より望ましい態様として、本実施形態では、第3部分43が第1部分41及び第2部分42と逆向きに傾斜している。また、第2部分42は、第1連通サイプ37又は第2連通サイプ38をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域55(
図3では着色されている。)と重複している。これにより、上述の作用効果がさらに高められる。
【0039】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0040】
図2に示されるように、第1途切れ溝33及び第1連通サイプ37のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~55°であり、望ましくは30~50°である。このような第1途切れ溝33及び第1連通サイプ37は、氷雪上での制動性能と旋回性能とをバランス良く向上させる。
【0041】
第1途切れ溝33は、例えば、第2陸部7のタイヤ軸方向の中心位置を交差することなく途切れている。第1途切れ溝33のタイヤ軸方向の長さは、横断サイプ40の第1部分41のタイヤ軸方向の長さよりも小さい。第1途切れ溝33のタイヤ軸方向の長さL9は、例えば、第2陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の25%~45%であり、望ましくは30%~40%である。このような第1途切れ溝33は、ドライ路面でのブレーキ性能及び氷雪上性能をバランス良く高めるのに役立つ。
【0042】
第1途切れ溝33の深さは、例えば、クラウン周方向溝4の深さの60%~80%である。これにより、ドライ路面での操縦安定性(以下、単に「操縦安定性」という場合がある。)と氷雪上性能とがバランス良く向上する。
【0043】
同様の観点から、第1連通サイプ37の深さは、第1途切れ溝33の深さよりも小さいのが望ましい。第1連通サイプ37の深さは、例えば、クラウン周方向溝4の深さの40%~55%である。
【0044】
第2途切れ溝34は、実質的に第1途切れ溝33と同じ構成を備えており、第2途切れ溝34には、第1途切れ溝33の上述の構成を適用することができる。第2連通サイプ38は、実質的に第1連通サイプ37と同じ構成を備えており、第2連通サイプ38には、第1連通サイプ37の上述の構成を適用することができる。
【0045】
横断サイプ40は、第1途切れ溝33と第2途切れ溝34との間に位置する。より具体的には、横断サイプ40は、第1途切れ溝33及び第1連通サイプ37からなる第1切れ込み要素28と、第2途切れ溝34及び第2連通サイプ38からなる第2切れ込み要素29との間に設けられている。
【0046】
横断サイプ40は、例えば、その両端を結ぶ仮想直線がタイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している。第1部分41及び第2部分42のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~55°であり、望ましくは40~50°である。本実施形態では、第1部分41と第1途切れ溝33との角度差が5°以下とされており、第2部分42と第2途切れ溝34との角度差が5°以下とされている。これにより、第2陸部7の偏摩耗が抑制される。
【0047】
第3部分43は、例えば、第2陸部7のタイヤ軸方向の中心位置と交差している。第3部分43のタイヤ軸方向の長さL10は、第2陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の10%~25%である。第3部分43のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、40~60°であり、望ましくは45~55°である。
【0048】
第1部分41と第3部分43との間の角度、及び、第2部分42と第3部分43との間の角度は、それぞれ、望ましくは80°以上、より望ましくは、90°以上であり、望ましくは120°以下、より望ましくは110°以下である。このような横断サイプ40は、第2陸部7の偏摩耗を抑制しつつ、サイプ壁同士が接触したときに第2陸部7の変形を効果的に抑制することができる。
【0049】
図4には、
図2のD-D線断面図が示されている。
図4に示されるように、横断サイプ40の第3部分43は、第1部分41及び第2部分42よりも小さい深さを有している。第3部分43の深さd6は、例えば、横断サイプ40の最大の深さd5の55%~75%であり、望ましくは60%~70%である。このような第3部分43は、横断サイプ40が過度に開くのを抑制し、第2陸部7の偏摩耗を抑制しつつ、操縦安定性及び氷雪上性能を高めることができる。
【0050】
より望ましい態様では、第1部分41の最大の深さd7は、第1連通サイプ37の最大の深さよりも大きい。第1部分41の最大の深さd7は、第1連通サイプ37の最大の深さの140%~160%である。同様に、第2部分42の最大の深さd8は、第2連通サイプ38の最大の深さよりも大きい。第2部分42の最大の深さd8は、第2連通サイプ38の最大の深さの140%~160%である。これにより、第1部分41及び第2部分42のエッジが大きな摩擦力を提供でき、氷雪上性能が向上する。
【0051】
図2及び
図3に示されるように、横断サイプ40は、第1横断サイプ40Aと、第2横断サイプ40Bとをタイヤ周方向に交互に含んでいる。第1横断サイプ40Aは、第1部分41の長さの50%以上が投影領域55と重複しており、かつ、第2部分42の長さの50%以上が投影領域55と重複している。第2横断サイプ40Bは、第1部分41の長さの50%未満が投影領域55と重複しており、かつ、第2部分42の長さの50%未満が投影領域55と重複している。これにより、操縦安定性と氷雪上性能とがバランス良く向上する。
【0052】
上述の効果を確実に発揮させるために、本実施形態において、第1横断サイプ40Aは、第1部分41の長さの望ましくは60%以上、より望ましくは80%以上が投影領域55と重複している。第1横断サイプ40Aの第2部分42についても同様である。また、第2横断サイプ40Bは、第1部分41の長さの望ましくは40%以下、より望ましくは30%以下が投影領域55と重複している。第2横断サイプ40Bの第2部分42についても同様である。
【0053】
図2に示されるように、本実施形態の第1切れ込み要素28と第2切れ込み要素29との間には、第1途切れサイプ46及び第2途切れサイプ47が設けられている。第1途切れサイプ46は、第1周方向エッジ7aから延びかつ踏面7s内に途切れ端46aを有している。第2途切れサイプ47は、第2周方向エッジ7bから延びかつ踏面7s内に途切れ端47aを有している。このような第1途切れサイプ46及び第2途切れサイプ47は、操縦安定性を維持しつつ、氷雪上性能を高めるのに役立つ。
【0054】
第1途切れサイプ46は、横断サイプ40の第1部分41のタイヤ周方向の一方側に配されており、第2途切れサイプ47は、横断サイプ40の第2部分のタイヤ周方向の他方側に配されている。第1途切れサイプ46及び第2途切れサイプ47は、例えば、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している。第1途切れサイプ46及び第2途切れサイプ47のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~55°である。第1途切れサイプ46と横断サイプ40の第1部分41との角度差は、5°以下であり、本実施形態では、これらが平行に延びている。第2途切れサイプ47と横断サイプ40の第2部分42との角度差は、5°以下であり、本実施形態では、これらが平行に延びている。このような第1途切れサイプ46及び第2途切れサイプ47は、第2陸部7の偏摩耗を抑制しつつ、氷雪上でのトラクション性能及び旋回性能をバランス良く高めることができる。
【0055】
トレッド平面視において、第1途切れサイプ46は、第1部分41をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する。また、第2途切れサイプ47は、第2部分42をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する。一方、第2途切れサイプ47は、第1途切れサイプ46をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複しない。これにより、第2陸部7の剛性を維持しつつ、各サイプが協働して氷雪上において大きな摩擦力を提供する。
【0056】
第1途切れサイプ46のタイヤ軸方向の長さは、例えば、横断サイプ40の第1部分41のタイヤ軸方向の長さよりも小さく、望ましくは第1途切れ溝33のタイヤ軸方向の長さよりも小さい。同様に、第2途切れサイプ47のタイヤ軸方向の長さは、例えば、横断サイプ40の第2部分42のタイヤ軸方向の長さよりも小さく、望ましくは第2途切れ溝34のタイヤ軸方向の長さよりも小さい。具体的には、第1途切れサイプ46又は第2途切れサイプ47のタイヤ軸方向の長さL13は、第2陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の20%~35%である。このような第1途切れサイプ46及び第2途切れサイプ47は、第2陸部7の剛性を効果的に維持、とりわけドライ路面でのブレーキ性能を効果的に維持することができる。
【0057】
操縦安定性を維持しつつ氷雪上性能を向上させるために、第1途切れサイプ46の最大の深さは、横断サイプ40の第3部分43の深さよりも大きく、横断サイプ40の最大の深さの90%~110%である。また、第1途切れサイプ46の最大の深さは、第1連通サイプ37の最大の深さ及び第2連通サイプ38の最大の深さよりも小さい。
【0058】
同様に、第2途切れサイプ47の最大の深さは、横断サイプ40の第3部分43の深さよりも大きく、横断サイプ40の最大の深さの90%~110%である。また、第2途切れサイプ47の最大の深さは、第1連通サイプ37の最大の深さ及び第2連通サイプ38の最大の深さよりも小さい。
【0059】
図5には、第1陸部6の拡大図が示されている。
図5に示されるように、第1陸部6は、第1周方向エッジ6aと、第2周方向エッジ6bと、それらの間の踏面6sとを備えている。
【0060】
第1陸部6の踏面6sには、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した傾斜サイプ10がタイヤ周方向に複数設けられている。また、傾斜サイプ10は、タイヤ周方向で隣接する第1傾斜サイプ11及び第2傾斜サイプ12を含む。
【0061】
図6には、第1傾斜サイプ11の断面を示す図として、
図5のA-A線断面図が示されている。
図7には、第2傾斜サイプ12の断面を示す図として、
図5のB-B線断面図が示されている。
図6に示されるように、第1傾斜サイプ11は、第1周方向エッジ6a側に配された第1深底部16と、第2周方向エッジ6b側に配され、かつ、第1深底部16よりも深さが小さい第1浅底部17とを含む。また、
図7に示されるように、第2傾斜サイプ12は、第2周方向エッジ6b側に配された第2深底部21と、第1周方向エッジ6a側に配され、かつ、第2深底部21よりも深さが小さい第2浅底部22とを含む。
【0062】
図8には、第1傾斜サイプ11及び第2傾斜サイプ12の拡大平面図が示されている。なお、
図8では、本実施形態の特徴を理解し易いように、第1深底部16及び第2深底部21が着色されている。
図8に示されるように、第2深底部21は、第1深底部16をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する位置に配されている。
【0063】
上述の第1傾斜サイプ11及び第2傾斜サイプ12は、氷雪路面でタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に摩擦力を発揮し、氷雪上での制動性能及び旋回性能を向上させる。一方、第1傾斜サイプ11の第1深底部16及び第1浅底部17の配置、並びに、第2傾斜サイプ12の第2深底部21及び第2浅底部22の配置は、タイヤ周方向においては剛性バランスを均一にして直進安定性を高めることに役立ち、かつ、剛性の高い部分と低い部分とがあることでスリップ角が付き易くなり、ひいてはスムーズな旋回を期待できる。このような作用は、ドライ路面での操縦安定性を向上させるのに役立つ。
【0064】
しかも、本実施形態では、第2深底部21が第1深底部16をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する位置に配されているため、第1傾斜サイプ11及び第2傾斜サイプ12が接地したとき、第1深底部16及び第2深底部21が共に開いてこれらのエッジが大きな摩擦力を提供する。これにより、氷雪上性能がより一層向上する。
【0065】
図5に示されるように、本実施形態の傾斜サイプ10は、第1周方向エッジ6aから第2周方向エッジ6bまで延びており、第1陸部6を横断している。但し、このような態様に限定されるものではなく、傾斜サイプ10は、第1陸部6内で途切れるものでも良い。
【0066】
傾斜サイプ10は、例えば、直線状に延びている。これにより、傾斜サイプ10の互いに向き合うサイプ壁同士が接触したとき、第1陸部6は、傾斜サイプ10の長さ方向にせん断変形し易くなる。このような変形は、クラウン周方向溝4や傾斜サイプ10の内部に雪が詰まるのを抑制できる。
【0067】
傾斜サイプ10のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~55°であり、望ましくは30~50°である。傾斜サイプ10の角度が小さい場合、タイヤ周方向に並んだ傾斜サイプ10の間隔が小さくなることにより、上述の第2深底部21が第1深底部16の投影領域と重複する位置に配されるのが望ましい。また、第1傾斜サイプ11と第2傾斜サイプ12とは、互いに近い角度で傾斜しているのが望ましい。第1傾斜サイプ11と第2傾斜サイプ12との角度差は、好ましくは10°以下、より望ましくは5°以下である。さらに望ましい態様として、本実施形態では、第1傾斜サイプ11と第2傾斜サイプ12とが互いに平行に配されている。これにより、氷雪上での制動性能及び旋回性能がバランス良く向上する。
【0068】
タイヤ周方向で隣接する第1傾斜サイプ11と第2傾斜サイプ12との間のタイヤ周方向の最大の距離L3は、例えば、第1陸部6のタイヤ軸方向の幅W2の50%以下であり、望ましくは20%~45%、より望ましくは30%~40%である。このような第1傾斜サイプ11及び第2傾斜サイプ12の配置は、操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く向上させる。
【0069】
図6に示されるように、第1傾斜サイプ11は、第1深底部16と第1浅底部17との間において、深さがサイプの長さ方向に変化している第1変深部18を含んでいる。これにより、第1深底部16及び第1浅底部17は、それぞれ、一定の深さで延びている。
【0070】
第1深底部16の深さd1は、例えば、クラウン周方向溝4の深さの60%~80%である。第1深底部16のタイヤ軸方向の長さL4は、第1陸部6のタイヤ軸方向の幅W2(
図5に示され、以下、同様である。)の35%~55%である。
【0071】
第1浅底部17の深さd2は、例えば、第1深底部16の深さd1の50%以上であり、望ましくは55%~75%、より望ましくは60%~70%である。このような第1浅底部17は、第1陸部6の剛性を維持しつつ、氷雪上性能を高めることができる。
【0072】
第1浅底部17のタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、第1深底部16のタイヤ軸方向の長さL4の望ましくは80%以上、より望ましくは90%以上であり、望ましくは120%以下、より望ましくは110%以下である。このような第1深底部16及び第1浅底部17は、第1陸部6の偏摩耗を抑制しつつ、操縦安定性及び氷雪上性能を高めることができる。
【0073】
図7に示されるように、第2傾斜サイプ12は、第2深底部21と第2浅底部22との間において、深さがサイプの長さ方向に変化している第2変深部23を含んでいる。これにより、第2深底部21及び第2浅底部22は、それぞれ、一定の深さで延びている。第2深底部21、第2浅底部22及び第2変深部23には、それぞれ、上述の第1深底部16、第1浅底部17及び第1変深部18の構成を適用することができ、ここでの説明は省略される。
【0074】
図8に示されるように、第1深底部16と第2深底部21との重複領域のタイヤ周方向の長さL12は、第1深底部16のタイヤ周方向の長さL11の好ましくは30%以上、より望ましくは50%以上であり、本実施形態では60%~80%とされる。これにより、上述の効果が確実に発揮される。
【0075】
図5に示されるように、本実施形態では、第1傾斜サイプ11と第2傾斜サイプ12とのサイプ対14がタイヤ周方向に複数並んでおり、これらのサイプ対14の間に、第3傾斜サイプ13が設けられている。トレッド平面視における第3傾斜サイプ13の構成には、上述の第1傾斜サイプ11又は第2傾斜サイプ12の構成を適用することができる。
【0076】
図9には、
図5のC-C線断面図が示されている。
図9に示されるように、本実施形態の第3傾斜サイプ13は、その長さ方向の中央部に設けられた中央浅底部26と、中央浅底部26とクラウン周方向溝4との間に設けられた外側深底部27とを含んでいる。
【0077】
中央浅底部26は、例えば、第3傾斜サイプ13をその長さ方向に3等分したときの中央の領域に配置されており、第3傾斜サイプ13のタイヤ軸方向の中心位置を含んでいる。中央浅底部26のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、第1陸部6のタイヤ軸方向の幅W2の30%~45%である。このような中央浅底部26は、第3傾斜サイプ13が過度に開くのを抑制できるため、第1陸部6の偏摩耗が抑制され、かつ、操縦安定性が向上する。なお、中央浅底部26の前記長さL7は、例えば、その高さ方向の中心位置で測定されるものとする。
【0078】
中央浅底部26の深さd3は、例えば、クラウン周方向溝4の深さの40%~55%である。本実施形態では、中央浅底部26、第1浅底部17及び第2浅底部22が互いに同じ深さで構成されている。これにより、上述の効果を発揮しつつ、第1陸部6の偏摩耗がより一層抑制される。
【0079】
トレッド平面視において、中央浅底部26は、第1浅底部17又は第2浅底部22をタイヤ軸方向に平行に延長した投影領域と重複する位置に配されているのが望ましい。
【0080】
外側深底部27の深さd4は、例えば、クラウン周方向溝4の深さの60%~80%である。本実施形態では、外側深底部27、第1深底部16及び第2深底部21が互いに同じ深さで構成されている。
【0081】
図5に示されるように、本実施形態の第1陸部6には、5本の傾斜サイプ10からなる傾斜サイプグループ15がタイヤ周方向に複数設けられている。傾斜サイプグループ15は、第1傾斜サイプ11と第2傾斜サイプ12とからなるサイプ対14を2つ含み、かつ、これらの間に配された1本の第3傾斜サイプ13を含んでいる。また、タイヤ周方向に隣り合う2つの傾斜サイプグループ15の間には、第1周方向エッジ6aから延び第1陸部6内で途切れる第1短溝31と、第2周方向エッジから延び第1陸部6内で途切れる第2短溝32とが設けられている。また、第1陸部6には、第1短溝31から第2短溝32まで延びる接続サイプ30が設けられている。
【0082】
第1短溝31及び第2短溝32は、タイヤ軸方向に対して第2方向に傾斜している。第1短溝31及び第2短溝32のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~55°であり、望ましくは30~50°である。これにより、氷雪上において傾斜サイプ10とは異なる方向に大きな摩擦力を発揮でき、氷雪上の旋回性能及び制動性能が向上する。
【0083】
第1短溝31及び第2短溝32は、例えば、第1陸部6のタイヤ軸方向の中心位置を交差することなく途切れている。第1短溝31及び第2短溝32のタイヤ軸方向の長さL8は、例えば、第1陸部6のタイヤ軸方向の幅W2の15%~35%であり、望ましくは20%~30%である。このような第1短溝31及び第2短溝32は、操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く向上させる。
【0084】
第1短溝31及び第2短溝32の深さは、例えば、クラウン周方向溝4の深さの60%~80%である。本実施形態の第1短溝31及び第2短溝32は、第1深底部16の深さと同じである。
【0085】
接続サイプ30は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している。接続サイプ30のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~55°であり、望ましくは30~50°である。本実施形態の接続サイプ30は、傾斜サイプ10との角度差が5°以下であり、より望ましい態様では傾斜サイプ10と平行に延びている。このような接続サイプ30は、傾斜サイプ10とともに、氷雪上での制動性能及び旋回性能を向上させる。
【0086】
接続サイプ30の最大の深さは、第1深底部16の最大の深さ及び第2深底部21の最大の深さよりも小さい。接続サイプ30の前記深さは、例えば、クラウン周方向溝4の深さの40%~55%であり、本実施形態では、第1浅底部17及び第2浅底部22の深さと同じである。これにより、第1陸部6の偏摩耗が抑制される
【0087】
図10には、第3陸部8の拡大図が示されている。
図10に示されるように、第3陸部8には、第3陸部8を横断する複数の横溝49と、ジグザグ状に延びる複数のジグザグサイプ50が設けられている。
【0088】
ジグザグサイプ50は、ショルダー周方向溝5から延び第3陸部8内で途切れる第1ジグザグサイプ51と、トレッド端Teから延び第3陸部内で途切れる第2ジグザグサイプ52とを含む。このような第1ジグザグサイプ51及び第2ジグザグサイプ52は、互いに向き合うサイプ壁同士が接触したときに第3陸部8の見かけの剛性を高め、操縦安定性と氷雪上性能とをバランス良く向上させるのに役立つ。
【0089】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0090】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16の空気入りタイヤが試作された。比較例として、トレッド部に
図11に示される第2陸部aを有するタイヤが試作された。比較例の第2陸部aは、第1途切れ溝b1及び第1連通サイプc1と、第2途切れ溝b2及び第2連通サイプc2との間に、全体がタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜した横断サイプdが設けられている。比較例のタイヤのトレッド部は、上述の事項を除き、
図1に示されるものと同様である。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性、ドライ路面でのブレーキ性能、及び、氷雪状性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6J
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:排気量2400cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0091】
<ドライ路面での操縦安定性及びブレーキ性能>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性及びブレーキ性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記操縦安定性又はブレーキ性能を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性又はブレーキ性能が優れていることを示す。
【0092】
<氷雪上性能>
上記テスト車両で氷雪上を走行したときの氷雪上性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、氷雪上性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0093】
【0094】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性の低下を抑制しつつ、氷雪上性能を向上させていることが確認できた。
【符号の説明】
【0095】
2 トレッド部
3 周方向溝
7 陸部
7a 第1周方向エッジ
7b 第2周方向エッジ
7s 踏面
33 第1途切れ溝
34 第2途切れ溝
37 第1連通サイプ
38 第2連通サイプ
40 横断サイプ
41 第1部分
42 第2部分
43 第3部分