(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】成形機の診断システムおよび成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20241210BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B22D17/32 J
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2020175149
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】青山 稔
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-211968(JP,A)
【文献】特開平03-118131(JP,A)
【文献】特開平04-133713(JP,A)
【文献】特開平06-328224(JP,A)
【文献】特開平07-028522(JP,A)
【文献】特開2008-133848(JP,A)
【文献】特開2014-226890(JP,A)
【文献】特開2015-033793(JP,A)
【文献】特開2018-167424(JP,A)
【文献】国際公開第2011/101995(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/011963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248654(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0132864(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00 - 17/32
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキュムレータ
によって材料を射出し成形を行う成形機にお
いて、前記アキュムレータに関する動作を診断する診断システムであって、
前記診断システムは、
前記診断が実行されるべき定期的な時間情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記定期的な時間情報に基づいて、前記アキュムレータについての前記診断を促す情報を表示する表示部と、
前記アキュムレータおよび前記アキュムレータの動作に関わる機器について、前記成形機による成形動作が停止している最中に、前記診断を実行する診断制御部と、を備える、ことを特徴とする成形機の診断システム。
【請求項2】
前記アキュムレータおよび前記アキュムレータに関わる機器について、前記診断を実行する診断制御部を備え、
前記診断を促す情報は、
前記診断を開始するか否かを選択する情報を含み、
前記診断制御部は、
前記診断を開始することが選択されると、診断対象である前記アキュムレータおよび前記アキュムレータに関わる機器について、前記診断を実行する、
請求項1に記載の成形機の診断システム。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記診断対象に関する単数または複数の基準値を記憶し、
前記診断制御部は、
前記診断対象について、前記基準値に対応する単数または複数の項目を測定して取得する実測値と前記基準値を比較し、前記実測値が前記基準値に合致するかまたは合致しないかを診断する、
請求項2に記載の成形機の診断システム。
【請求項4】
前記診断制御部において、前記実測値が前記基準値に合致しないものと診断されると、
前記診断制御部は、前記実測値が前記基準値に合致しないこと、および、合致しないレベルを前記表示部に表示させる、
請求項3に記載の成形機の診断システム。
【請求項5】
前記アキュムレータの動作に関わる機器は、
前記アキュムレータに作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、を含み、
前記診断制御部は、
前記アキュムレータに関する前記実測値と、
前記油圧ポンプからの作動油の吐出圧力に関する前記実測値と、
前記電動モータに供給される電流に関する前記実測値と、の単数または複数を測定する、
請求項3または請求項4に記載の成形機の診断システム。
【請求項6】
前記診断制御部は、
前記アキュムレータに関する実測値として、
前記アキュムレータのチャージに関する実測値と、
前記アキュムレータのガス圧力に関する実測値と、の一方または双方を測定する、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の成形機の診断システム。
【請求項7】
前記成形機は、
ダイカストマシンまたは射出成形機であり、
前記成形機が前記ダイカストマシンの場合、前記アキュムレータは溶湯の射出に関わり、
前記成形機が前記射出成形機の場合、前記アキュムレータは溶融樹脂の射出に関わる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の診断システム。
【請求項8】
アキュムレータを備える成形機本体と、
前記アキュムレータに関する動作を診断する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の診断システムと、を備える、
ことを特徴とする成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンや射出成形装置などの成形機に適用される診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンや射出成形装置などの成形機においては、成形の動作が制御装置に従って自動運転が行われる。この運転の最中における成形機の動作安定性を継続的に診断し、表示装置に診断結果を表示して、成形機のオペレータに知らせる成形診断装置が、特許文献1において提案されている。
特許文献1の診断システムは、ショット数分の測定値の偏差が記憶部に記憶された基準値から外れると判定部が判定したとき、制御手段が測定値の種別に応じた特有の判定情報をモニタに表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、自動運転中に診断する場合、判定結果によっては運転を停止しなければならない可能性があるのに加えて、要求される品質を伴わない成形品が製造されてしまうおそれがある。そこで、本発明は、このような不具合が生じるのを防止できる成形機における診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アキュムレータを備える成形機におけるアキュムレータに関する動作を診断する診断システムに関する。
本発明の診断システムは、診断が実行されるべき定期的な時間情報を記憶する記憶部と、記憶部に記憶されている時間的な情報に基づいて、アキュムレータについての診断を促す情報を表示する表示部と、アキュムレータおよびアキュムレータの動作に関わる機器について、成形機による成形動作が停止している最中に、診断を実行する診断制御部と、を備える。
【0006】
本発明において、好ましくは、診断を促す情報は、診断を開始するか否かを選択する情報を含む。
診断制御部は、診断を開始することが選択されると、診断対象であるアキュムレータおよびアキュムレータに関わる機器について、診断を実行する。
【0007】
本発明において、好ましくは、記憶部は、診断対象に関する単数または複数の基準値を記憶する。診断制御部は、診断対象について、基準値に対応する単数または複数の項目を測定して取得する実測値と基準値を比較し、実測値が基準値に合致するかまたは合致しないかを診断する。
【0008】
本発明における診断制御部において、好ましくは、実測値が基準値に合致しないものと診断されると、診断制御部は、実測値が基準値に合致しないこと、および、合致しないレベルを表示部に表示させる。
【0009】
本発明におけるアキュムレータの動作に関わる機器は、好ましくは、アキュムレータに作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプを駆動する電動モータと、を含む。
また、診断制御部は、アキュムレータに関する実測値と、油圧ポンプからの作動油の吐出圧力に関する実測値と、電動モータに供給される電流に関する実測値と、の単数または複数を測定する。
【0010】
本発明における診断制御部は、好ましくは、アキュムレータに関する実測値として、アキュムレータのチャージに関する実測値と、アキュムレータのガス圧力に関する実測値と、の一方または双方を測定する。
【0011】
本発明における成形機は、好ましくは、ダイカストマシンまたは射出成形機である。
成形機がダイカストマシンの場合、アキュムレータは溶湯の射出に関わり、成形機が射出成形機の場合、アキュムレータは溶融樹脂の射出に関わる。
【0012】
本発明により、アキュムレータを備える成形機本体と、アキュムレータに関する動作を診断する診断システムと、を備える成形機が提供される。この診断システムは、以上で説明したいずれかの診断システムが適用される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の診断システムによれば、成形機による成形動作が停止している最中に、しかも定期的に診断を実行できるので、運転を停止しなければならない、あるいは、要求される品質を伴わない成形品が製造されてしまうといった不具合が生じるのを防止できる。
また、本発明の診断システムによれば、アキュムレータについての診断を促す情報を表示するので、この情報に成形機のオペレータが接することにより、アキュムレータの診断を損ねるのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形機の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の成形機における診断システムの手順を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態に係る診断システムにおける表示画面の例を示し、診断用のスクリーンへの切り替えを示す画面である。
【
図4】本実施形態に係る診断システムにおける表示画面の例を示し、診断をスタートするか否かの選択を促す画面である。
【
図5】本実施形態に係る診断システムにおける表示画面の例を示し、診断結果の表示例を示す画面である。
【
図6】本実施形態に係る診断システムにおける表示画面の例を示し、診断結果の他の表示例を示す画面である。
【
図7】本実施形態に係る診断システムにおける表示画面の例を示し、診断結果の他の表示例を示す画面である。
【
図8】本実施形態に係る診断システムにおける表示画面の例を示し、診断により基準から外れた項目の表示例を示す画面である。
【
図9】本実施形態に係る診断システムにおける定型レポートの一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る診断システムにおける定型レポートの他の例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る診断システムにおける定型レポートの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る診断システムについて説明する。本実施形態は、成形機1の一例としてダイカストマシンの診断システムを対象にして説明する。本実施形態に係る診断システムは、成形機1のオペレータに対して定期的に診断を促すとともに、診断対象として溶湯の射出に用いられるアキュムレータ23を含む。 以下、成形機1の構成を説明した後に、診断システムの動作に言及する。本実施形態に係る診断システムは、成形機1の運転が停止している間に行われる。
【0016】
〔成形機1の概略構成:
図1〕
以下、
図1を参照して成形機1の構成を説明する。前述したように、本実施形態においてはダイカストマシンを例にするが、本発明はダイカストマシンに限らず他の成形機、例えば樹脂成形体を得る射出成形機、金属成形体を得る押出プレス機などに適用される。
成形機1は、溶湯を金型Mに注湯する射出部10と、金型に型締力を与える型締部50と、を備える。金型Mは固定金型M1と可動金型M2とを含み、型締部50により可動金型M2を固定金型M1に向けて押し付けることにより、金型Mに型締力が与えられる。
また、成形機1は、その動作を司る診断システム70を備える。診断システム70は、本実施形態に係る診断シーケンスプログラムを格納するとともに実行する診断制御部71と、オペレータからの指示を得けるとともにこの指示を診断制御部71に対して送る操作部77と、を備える。この診断システム70が、本発明の診断システムの構成例をなす。
また、成形機1において、
図1に示すように前後方向Lと高さ方向Hが特定される。前後方向Lについては、アキュムレータ23が設けられる側を後(B)とし、その反対側を前(F)とする。前後方向Lと高さ方向Hはそれぞれ相対的な関係を有する。
【0017】
[射出部10:
図1]
射出部10は、
図1に示すように、油圧機構20と、油圧機構20から供給される作動油により動作する射出機構30と、を備える。
油圧機構20は、射出機構30を油圧により駆動する射出シリンダ21と、射出シリンダ21に圧力が加えられた作動油を供給するアキュムレータ23と、アキュムレータ23に作動油を供給する油圧ポンプ25と、油圧ポンプ25を駆動する電動モータ27と、作動油Hoを貯留する貯油槽29と、を備える。油圧ポンプ25、電動モータ27および貯油槽29は、油圧機構20の専用とすることができるとともに、型締部50と共用とすることもできる。本実施形態における油圧ポンプ25、電動モータ27および貯油槽29は、型締部50との共用とされる。また、油圧機構20は、射出シリンダ21、アキュムレータ23、油圧ポンプ25および貯油槽29のそれぞれを繋ぐ作動油が流れる配管には開閉弁、チェック弁などの弁、その他の機器を備えるが、これら機器の図示は省略される。
【0018】
[射出シリンダ21]
射出シリンダ21は、筒状で内部が空洞のシリンダ本体21Aとピストン21Bを備え、アキュムレータ23から圧油を得ることで、ピストン21Bが前進移動する。図示を省略するが、ピストン21Bは、油圧ポンプ25から圧油を受けることで、後退移動する。
ピストン21Bは、シリンダ本体21Aの内部に配置されるピストンヘッド21B1と、ピストンヘッド21B1に固定され一部がシリンダ本体21Aの外部に突出するピストンロッド21B2と、ピストンロッド21B2の先端に固定されるカップリング21B3と、を備える。
【0019】
シリンダ本体21Aの内部は、ピストンヘッド21B1により、油流入室C1と油排出室C2に区分される。油流入室C1はアキュムレータ23に接続される。したがって、射出シリンダ21の油流入室C1はアキュムレータ23から圧油を得る。油排出室C2は、貯油槽29に接続されている。油流入室C1への作動油の流入流量または油排出室C2からの作動油の排出流量を調整し、アキュムレータ23から射出シリンダ21の油流入室C1に流入する圧油の体積の増加速度を調整することで、後述するプランジャ33による射出速度を制御できる。
【0020】
[アキュムレータ23]
アキュムレータ23は、封入されたガスを圧縮させながら作動油の圧力を蓄積し、蓄積された作動油の圧力(チャージ圧)を適時に放出できる。アキュムレータ23および油圧ポンプ25は、射出部10の油圧源に相当する。
アキュムレータ23は、筒状で内部が空洞のシリンダ23Aと、シリンダ23Aの内部を昇降移動可能に設けられるピストン23Bと、を備える。つまり、本実施形態に係るアキュムレータ23は、ピストン型アキュムレータを例にするが、これに限らず、他の形式のアキュムレータ、例えばブラダ型アキュムレータを用いることもできる。
【0021】
シリンダ23Aは、ピストン23Bを境にして、図中の下方に設けられる油室C3と、図中の上方に設けられるガス室C4と、に区分される。油室C3は、油圧用マニホールド、油圧用ブロック等を介して射出シリンダ21の油流入室C1に接続されている。また、ガス室C4は、ピストン型、ブラダ型にかかわらず、作動油に圧力を蓄えるための窒素ガス等の不活性ガスが充填されている。しかし、ガス室C4を完全に密閉することは困難であるため、ガス室C4に不活性ガスを補充するための図示を省略する不活性ガス供給源、例えば不活性ガスが充填されたガスボンベが必要な時に接続される。
アキュムレータ23に圧力を蓄える際は、貯油槽29の作動油を油圧ポンプ25によりアキュムレータ23に圧送する。
図1には、単数のアキュムレータ23だけが示されているが、本実施形態においては、複数のアキュムレータ23を設けることもできる。
【0022】
[油圧ポンプ25および電動モータ27]
油圧ポンプ25は、電動モータ27により駆動され、貯油槽29から作動油を吸い込み、射出シリンダ21のアキュムレータ23に向けて作動油を吐出する。また、油圧ポンプ25は同様にして、後述する型締部50の油圧シリンダ69に向けて作動油を吐出する。
油圧ポンプ25および電動モータ27は、作動油を吸い込んで目的とする機器に吐出することができるのであれば、その形態は問われない。また、
図1には最小限の単位として、一組の油圧ポンプ25および電動モータ27だけが示されているが、本実施形態において、複数組の油圧ポンプ25および電動モータ27を設けることができる。この場合、一組の油圧ポンプ25および電動モータ27をアキュムレータ23の動作専用とし、他の一組を油圧シリンダ69の動作専用とし、さらに他の油圧ポンプ25および電動モータ27の組を他の機器の動作専用とすることができる。
なお、油圧ポンプ25および電動モータ27は、アキュムレータ23の動作に関わる機器である。
【0023】
[射出機構30]
次に、射出機構30について説明する。
射出機構30は、固定盤53に設けられたスリーブ31と、スリーブ31に対して進退可能に設けられるプランジャ33とを備えている。プランジャ33のロッド33Aは、油圧機構20の射出シリンダ21のピストンロッド21B2に対して、カップリング21B3を介して結合している。
スリーブ31には、アルミニウム合金等の溶湯を注入する注湯口31Aが設けられている。注湯口31Aからスリーブ31の内側に溶湯を注入した後、射出シリンダ21によりプランジャ33を金型Mに向けて前進させると、プランジャ33のチップ33Bによりスリーブ31の内部から溶湯が押し出され、固定金型M1に形成されたランナやゲートを通り固定金型M1と可動金型M2の間に形成されるキャビティに向けて射出される。
【0024】
〔型締部50:
図1〕
次に、型締部50について説明する。
型締部50は、
図1に示すように、油圧駆動式のトグルリンク機構を用いる型締装置である。
型締部50は、基台51と、基台51の後端に固定して設けられる固定盤53と、固定盤53と対向して設けられ、基台51の前後方向Lに往復移動可能に設けられる可動盤55と、を備える。固定盤53と可動盤55の間には、固定盤53に取り付けられる固定金型M1と可動盤55に取り付けられる可動金型M2とからなる金型Mが配置される。可動盤55を前後方向Lに移動させることにより、固定金型M1に対して可動金型M2を型開閉させることができる。また、可動盤55よりも前方には、可動盤55と対向してリンクハウジング57が設けられている。
【0025】
可動盤55は、トグルリンク機構の一要素を構成しており、その前方には他のトグルリンク機構の要素が設けられている。トグルリンク機構は、可動盤55の上方および下方に後端側が回転可能に図示を省略されるピンで連結されるトグルリンク61,61と、後端側が一対のトグルリンク61,61のそれぞれに回転可能に連結されるとともに前端側がリンクハウジング57に回転可能に連結されるトグルリンク63,63と、を備える。トグルリンク63とトグルリンク63の間には、それぞれの一端がトグルリンク63,63に回転可能に連結されるクロスヘッドリンク65,65と、クロスヘッドリンク65,65のそれぞれの他端に回転可能に連結されるクロスヘッド67と、を備える。
【0026】
次に、トグルリンク機構は、トグルリンク機構の駆動源であって型締用の油圧シリンダ69を備える。油圧シリンダ69は、シリンダ本体69Aと、シリンダ本体69Aに対して進退移動されるシリンダロッド69Bと、を備える。油圧シリンダ69は、シリンダ本体69Aがリンクハウジング57に固定されるが、シリンダロッド69Bはリンクハウジング57を貫通して後端側が、クロスヘッド67と結合されている。
【0027】
油圧シリンダ69は、前述した電動モータ27で駆動される油圧ポンプ25から作動油の供給を受け作動し、シリンダロッド69Bを前進させたり後退させたりすることができる。この動作によって、クロスヘッド67を型開閉方向に移動させるとともに、トグルリンクを屈曲・伸張させて、可動盤55を型開閉方向に移動させることができる。
【0028】
〔診断システム70:
図1〕
次に、成形機1の動作を司る診断システム70について説明する。
診断システム70は、診断シーケンスプログラムを格納するとともに実行する診断制御部71と、オペレータからの指示を受けるとともにこの指示を診断制御部71に伝える操作部77と、定型レポートの作成に関わる端末80と、を備える。
【0029】
[診断制御部71:
図1]
診断制御部71は、コンピュータ装置から構成され、例えばマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)により実行される演算処理機能を備える。また、診断制御部71は、例えばハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)などの補助記憶装置(ストレージ)、および、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:Random Access Memory)などの主記憶装置(メインメモリ)を備える。これは操作部77も同様である。
診断制御部71は、主記憶装置に記憶されている診断シーケンスプログラムに従って演算処理機能により診断が実行される。診断シーケンスプログラムに基づいて実行される診断の動作については、
図2のフローチャートを参照しながら追って説明する。
【0030】
なお、本実施形態においては説明を省略するが、成形機1はダイカスト製品を連続的に自動で製造するための自動製造シーケンスプログラムが診断制御部71に記憶されるとともに、この自動製造シーケンスプログラムに従ってダイカスト製品が連続的に自動で製造される。本実施形態に係る診断シーケンスプログラムは、ダイカスト製品の製造のための成形動作が停止している間に行われる。
また、診断制御部71は、現在の年月日、時刻および曜日などの時間情報、その他の一般的な情報を備えている。操作部77も同様である。
【0031】
[操作部77:
図1]
操作部77は、表示画面78を備える。この表示画面78は、タッチパネルの機能を備えており、成形機1のオペレータは、表示画面78のタッチパネルを操作することで、成形機1の動作を指示する。この指示は、ダイカスト製品の製造に関わる指示と診断に関わる指示とを含んでいる。表示画面78は、診断の実行に伴う種々の画面を表示する。これら表示画面の具体例は、追って説明する。表示画面78は本発明における表示部に対応する。
また、操作部77は、診断制御部71が備えるのと同様のストレージ(補助記憶装置)79を備える。ストレージ79は、後述する測定された実測値および診断結果を含む診断情報が記憶される。この診断情報は、特定の形式のファイル、例えばCSV形式のファイルとして外部に出力が可能とされる。ストレージ79は、本発明における記憶部に対応する。
【0032】
[端末80:
図1]
端末80は、後述される電流計73、圧力計74および温度計75で測定されたた実測値に基づいて、診断の結果をまとめて示す定型レポートBRを作成する。端末80は操作部77とデータの送受信が可能とされており、操作部77のストレージ79から出力される診断情報を端末80が受信し、かつ、端末80が備えるレポート作成用のプログラムによって定型レポートBRが作成される。この定型レポートBRの具体例についても後述する。
【0033】
[その他の機器:
図1]
診断システム70は、診断を行うための測定機器を備える。具体的には、診断システム70は、電動モータ27に供給される電流値を測定する電流計73と、油圧ポンプ25から吐出される作動油の圧力を測定する圧力計74と、油圧ポンプ25から吐出される作動油の温度を測定する温度計75と、を備える。
電流計73、圧力計74および温度計75は、診断の実行中にそれぞれの測定対象を測定するとともに、測定情報は診断制御部71および操作部77に提供される。提供された測定情報は、表示画面78に表示される他、操作部77を介して端末80に提供され、定型レポートBRの作成に利用される。
【0034】
〔診断:
図2~
図11〕
次に、
図2~
図11を参照しながら、本実施形態に関わる成形機1の診断について説明する。
本実施形態に関わる診断は、ダイカスト製品の製造が行われておらず成形機1の自動運転が停止している間に行われる。ただし、本実施形態に関わる診断は、予め診断を実行すべき定期的な時間情報、つまりスケジュールが診断制御部71に記憶されている。このスケジュールは、診断が行われる時刻および曜日を含んでおり、オペレータが表示画面78のタッチパネルを介して予め設定しておく。設定されたスケジュールは、診断制御部71の主記憶装置に記憶されている。
【0035】
[スケジュール検知:
図2 S101]
診断制御部71は、予め設定されている診断スケジュール(時刻および曜日)と現在の時刻および曜日とを対比して、両者が一致するか否かを判定する(
図2 S101 YES,NO)。この対比は、成形機1がダイカスト製品の製造のために運転している最中にも行われるが、後述するように、診断スケジュールと現在の時刻等とが一致したとしても、診断はオペレータの指示がなければ始まらない。なお、現在の時刻および曜日を、現在の時刻等と略記することがある。
診断スケジュールとしては、例えば時刻が「15:00」、曜日が「金曜日」と設定される。この設定例は、1週間に1度の診断を行うことを前提とするが、年月日を含めると、本発明においては1月に1度の診断など、任意の時間的な間隔の定期診断を行うこともできる。「曜日」の選択肢の中に「毎日」が含まれており、設定としてこの「毎日」を選択すれば、診断を毎日行うこともできる。
【0036】
[診断の予告:
図2 S101,S103
図3]
診断スケジュールと現在の時刻等が一致すると(
図2 S101 YES)と、診断制御部71は、表示画面78に診断の開始を確認する画面へ移動する旨を表示する。この表示の一例が
図3に示されているが、「自己チェック開始条件が成立しましたので、まもなくスクリーン切換を行います。」というものである。つまり、診断制御部71はこの表示を行うことにより、オペレータに診断を行う時間が近づいていることの予告を行う。ただし、オペレータがこの予告表示自体を認識しないことはあり得る。ここで、「自己チェック開始条件が成立」とは、「診断スケジュールと現在の時刻等とが一致した」ことを意味する。
【0037】
[診断の開始選択:
図2 S105
図4]
診断の予告画面が表示された後に、診断の開始を促す表示が表示画面78に映し出される。
図4にその一例が示されている。この表示例は、診断の具体的な例として、「ポンプの吐出圧力・流量等のチェックを実施します。」ことが示されている。この表示について、「自己チェック スタート」のボタンB1は、オペレータがこれを押し込むと診断が開始される。一方、「EXIT」が表記されたボタンB3は、オペレータがこれを押し込むと今回の診断は行われずに終了する(S105 No (4)→(4)→「終了」)。
【0038】
[第1診断動作:
図2 S107~S207]
「自己チェック スタート」のボタンB1が押し込まれると、以下の手順で成形機1の診断(チェック)が行われる。なお、ここで診断される項目は一例であり、本発明においてその一部を省いてもかまわないし、他の診断項目を加えることを許容する。また、以下の手順、つまり
図2のS107,S109、S201、S203、S205およびS207の順番は一例であり、順番を入れ替えてもそれぞれの診断結果に影響を与えることはない。
【0039】
診断は、以下を含む。本発明におけるアキュムレータ23およびアキュムレータ23の動作に関わる機器についての測定である。
モータ電流の測定(
図2 S107)
油圧ポンプの吐出圧力の測定(S109)
アキュムレータのチャージ時間の測定(S201)
アキュムレータのガス圧の測定(S203)
アキュムレータ23(ACC)のチャージ電流の測定(S205)
アキュムレータ23(ACC)のチャージ完了保持時間の測定(S207)
【0040】
モータ電流の測定(S107)とは、油圧ポンプ25を駆動する電動モータ27に対して供給される電流値を測定することをいう。この電流の測定は、電流計73で行われ、電動モータ27および油圧ポンプ25の動作が正常であるか否かの診断のために行われる。
油圧ポンプ25の吐出圧力の測定(S109)とは、油圧ポンプ25から吐出される作動油の圧力を測定することをいう。この圧力の測定は、圧力計74で行われ、油圧ポンプ25の動作が正常であるか否かの診断のために行われる。
【0041】
アキュムレータ23のチャージ時間の測定(S201)とは、アキュムレータ23の油室C3に作動油の供給を開始してから所定量の作動油の供給が完了するまでに要する時間を測定することをいう。この時間の測定は、診断制御部71が備える時計機能で行われる。
ここで、油圧ポンプ25および電動モータ27の動作が正常であれば、このチャージ時間も基準値の範囲内に収まる。したがって、アキュムレータ23のチャージ時間の測定は、油圧ポンプ25および電動モータ27の動作が正常であるか否かの診断のために行われる。
【0042】
アキュムレータ23のガス圧の測定(S203)は、ピストン23Bにより圧縮される前のガス室C4の不活性ガス、例えば窒素ガスの圧力を測定することをいう。このガス圧の測定は、ガス室C4の内部の圧力を測定してもよいし、油圧ポンプ25からの作動油の吐出圧力に基づいて測定してもよい。窒素ガスが油室C3へ漏れでて規定圧力より低い、または窒素ガスの圧力が規定より高い場合、射出シリンダの力不足または失速により要求される品質を伴わない成形品が製造されてしまうおそれがある。
【0043】
アキュムレータ(ACC)のチャージ電流の測定(S205)とは、アキュムレータ23の油室C3に作動油の供給を開始してから所定量の作動油の供給が完了するまでに電動モータ27に供給される電流値を測定することをいう。この電流の測定も、電流計73で行われ、電動モータ27の動作、特にチャージ中に供給される電流が正常であるか否かの診断のために行われる。
アキュムレータ(ACC)のチャージ完了保持時間の測定(S207)とは、油室C3への作動油の供給が完了した後に、油室C3内の作動油の圧力がアキュムレータ内に供給した作動油がリークすることにより規定圧に対して一定レベル低下し、アキュムレータ内へ自動で作動油の再供給が開始されるまでに要した時間を測定することをいう。この保持時間の測定は、ピストン23Bまたはアキュムレータ23に関わる機器が正常か否かの診断のために行われる。
【0044】
[実測値と基準値との比較:
図2 S209~S301
図5~
図8]
予め定められた種類の実測値が得られたならば、その実測値は診断制御部71の主記憶装置に記憶、蓄積される(S209)。
診断制御部71において、蓄積されたそれぞれの実測値は、予め定められているそれぞれの基準値と比較され、基準値から外れているか否かの判定がなされる(S211)。
実測値が基準値から外れていれば(S211 YES)、基準値から外れている項目および外れの程度が認識できる情報、つまり診断結果を、タッチパネル機能を有する表示画面78に表示させる(S301)。基準値から外れている項目および外れの程度が認識できる情報は、以下、基準外情報と総称されることがある。
実測値が基準値の範囲内であれば(S211 NO)、次の診断に移行する(S303)。
【0045】
図5は、実測値と基準値との比較を行っている最中の、表示画面78における例示画像を示している。この例示画像は、「自己チェック中。お待ち下さい。」というメッセージを表示することで、実測値と基準値との比較を行っていることを表明している。
図5の画像には、他に実測値が即時に表示される。
図5における実測値としては、以下が掲げられる。
ポンプローディング:これは油圧ポンプ25吐出圧力の実測値が表示される。本例示においては、P1,P2と2台の油圧ポンプ25を備える。
ポンプモータ:これは電動モータ27に供給される電流の実測値が表示される。
ACC1,ACC2:2台のアキュムレータ23について、油室C3内にチャージされた作動油の圧力の実測値が表示される。
その他:前述した第1診断の測定結果が表示される。
【0046】
次に、
図6および
図7は、実測値と基準値とを表示画面78に対比させた画像の一例を示す。
図6および
図7において、上限値および下限値は、それぞれの測定項目における基準値の上限および下限を示している。例えば、
図6において、電動モータ27に供給される電流(モータ無負荷電流)の上限値XXXと下限値XXXが画像の上段に表示されるのに対して、電流の実測値が下段に表示される。ここでは、5回の測定が行われているので、5回分の実測値が表示されている。
【0047】
図6および
図7の表示画面例には、表示されている実測値に関するデータをUSB(Universal Serial Bus)メモリに転送することを指示するボタンB5と、データが転送されたUSBを成形機1から取り出すことを指示するボタンB7と、を備えている。データが転送されたUSBは後述する端末80に装着されることで、定型レポートBRの作成に供される。
【0048】
実測値と基準値とを比較した結果、基準外情報が判明すると、そのことが表示画面78に表示される。
図8はその一例を示している。
図8の例は、基準外情報が生じた内容を「エラーメッセージ」の欄に示している。この例では、以下の3つの項目が基準外情報として例示されている。
例1:「M4400 0 P1ローディング 6.9Mpa圧力チェック下限異常」
例2:「M4401 0 P1ローディング 6.9Mpa圧力チェック上限異常」
例3:「M4404 0 射出後退時間基準オーパー異常」
【0049】
この中で、上から二つ目の例2にカーソルを合わせると、その説明が「エラーメッセージ」の下の段に以下のように示されている。
「ローディング圧力の設定値6.9Mpaに対して、実測値が「***」Mpa超過を検出しました。関連する機器の調査が必要です。」
成形機1のオペレータはこの表示に接すると、診断の一連の動作が終了した後に、当該機器である油圧ポンプ25、油圧ポンプ25の駆動源である電動モータ27を点検し、必要に応じて調整する。
なお、
図8において、例1、例3にカーソルを合わせると、それぞれについて例2と同様の説明が表示される。
【0050】
図8の例においては、画像の右下欄に複数段階、具体的に四段階の「異常レベル」が表示されている。四段階は、「0」、「1」、「2」および「3」の記号(数値)で区分されており、それぞれ「0:警報」、「1:サイクル停止」、「2:即停止」および「3:油圧ポンプ停止」が割り当てられている。
図8に示される「エラーメッセージ」における左から二つ目の項目である「0」は、例1~例3の基準外情報は、いずれも四段階の中の「0:警報」に該当することを示している。
なお、
図8の例では数値が大きくなると異常の程度が大きくなるが、この逆に数値が大きくなると異常の程度が小さくすることができるし、数値ではなく、「A」、「B」、「C」および「D」といった他の記号を用いてもよい。
【0051】
また、
図8の例においては、「警報停止」をするためのボタンB9と「異常リセット」をするためのボタンB11が表示されている。「警報停止」ボタンB9を押し込むと、警報ブザーを止めることができる。「異常リセット」ボタンB11を押し込むと、対応するエラーメッセージが消去される。
【0052】
[第2診断動作(射出完了後):
図2 S303~S309]
第1診断動作で基準外情報が存在しないか(S211 NO)、または、第1診断動作で特定された基準外情報が表示画面78に表示される(S211 YES,S301)と、次いで、射出完了後に対応する第2診断動作が行われる。この第2診断動作は、必要な溶湯を射出した後に、射出シリンダ21が所定位置まで後退するまでの時間を測定することから始まる(S303)。測定された射出後退時間は、診断制御部71の主記憶装置に記憶、蓄積される(S305)。
診断制御部71において、蓄積された射出後退時間の実測値は、予め定められている基準値と比較され、基準値から外れているか否かの判定がなされる(S307)。
実測値が基準値から外れていれば(S307 YES)、当該基準外情報が表示画面78に表示される(S309)。表示後、一連の診断の動作が完了する。
実測値が基準値の範囲内であれば(S307 NO)、一連の診断の動作が完了する。
【0053】
〔定型レポートBR:
図1,
図9~
図11〕
成形機1は、診断を行った結果を即時に表示画面78に表示させる他に、蓄積された実測値を定型レポートBRとして出力することができる。以下、
図1に加え、
図9~
図11を参照して定型レポートBRを例示する。
【0054】
定型レポートBRは、
図1に示すように、診断システム70の構成要素である端末80を操作することにより出力される。
端末80は、前述したデータが転送されたUSBが装着されると、当該データを読み込み、さらに端末80に必要な操作をすることにより、図示を省略する印刷機から定型レポートBRを出力することができる。
後述する診断制御部71とデータ交信可能に例えばLAN(Local Area Network)により接続されており、端末80に必要な操作をすることにより、図示を省略する印刷機から定型レポートBRを出力することができる。
【0055】
図9は定型レポートBRの一例であって、成形機1に使用される消耗部品に関する報告が示されている。
つまり、この消耗部品に関するレポートは、成形機1の所有者に関する情報(Customer Information)、成形機の稼働状況情報(Operation Data)、消耗部品の使用経緯(Consumables goods)および消耗部品に関する警告(Alert for Consumables goods)の4種類の情報が表示されている。
消耗部品の使用経緯(Consumables goods)は、各種消耗部品についての交換の基準回数(Criterion of exchange)、全使用回数(Total count)、前回の交換(Last change)、前回の交換日(Date of last change)および診断結果(Judgement)が示されている。全使用回数(Total count)は、各消耗部品に対応するアクチュエータの動作回数(Operation Data)に基づいて算出される。
図9の消耗部品の使用経緯(Consumables goods)の例では、コーベルライナーとACC1(パッキン)とに交換が必要であるとの診断結果が得られており、警告(Alert for Consumables goods)の欄には、これらの診断結果に基づくコメントが表示されている。
【0056】
また、
図10は定型レポートBRの一例であって、油圧ポンプ25の吐出圧力の経緯が表形式で示されている。
この表形式のレポートは、年月日(日付)、時刻の他に、許容値(基準値)、実測値および判定結果を含んでおり、このレポートを参照すれば、油圧ポンプ25の吐出圧力の変動の状況に加え、実測値が基準値から外れて発せられた警告の状況を認識できる。
【0057】
また、
図11は定型レポートBRの一例であって、油圧ポンプ25の吐出圧力の経緯がグラフ形式で示されている。
このグラフ形式レポートを参照すると、油圧ポンプ25の吐出圧力の変動の状況に加え、実測値が基準値から外れて発せられた警告の状況を視覚的に認識できる。
【0058】
〔効 果〕
本実施形態に係る成形機1が奏する効果を説明する。
[本質的な効果]
はじめに、本実施形態に係る診断システム70は、アキュムレータ23およびアキュムレータ23に関わる機器を診断対象とする。アキュムレータ23およびアキュムレータ23に関わる機器は、測定結果が成形条件、製品の材料および金型Mの状態に影響を受けるために成形機1の動作中だと判定、診断が困難である。しかしながら、診断システム70は、成形機1による成形動作が停止している最中であって、しかも、定期的に診断を実行できる。したがって、診断システム70によれば、判定、診断が容易であるのに加えて、運転を停止しなければならない、あるいは、要求される品質を伴わない成形品が製造されてしまうといった不具合が生じるのを防止できる。
【0059】
また、本実施形態に係る診断システム70によれば、アキュムレータ23についての診断を促す情報を表示するので、成形機1のオペレータがこの情報に接することにより、アキュムレータ23の診断を損ねるのが防止される。ここで、前述したように、ガス室C4を完全に密閉することは困難であるため、時間の経過とともに不活性ガスはガス室C4の外部に漏れ出てしまう。そこで、本実施形態に係る診断システム70においては、アキュムレータ23およびアキュムレータ23に関わる機器を診断の対象とすることにより、アキュムレータ23への作動油の蓄積を適切に保つことができる、また、アキュムレータ23の動作に関わる機器について故障の予兆を検出し故障を予防する措置が取れる。
【0060】
[診断開始の選択による効果]
本実施形態に係る診断システム70によれば、診断を促す情報が、診断を開始するか否かを選択する情報を含む。したがって、成形機1のオペレータにより診断が必要と判断される場合には診断が行われる一方、その時点では診断が不必要と判断される場合には診断は行われない。例えば、段取り作業などで機械を操作する必要があるといった場合である。
【0061】
[実測値と基準値との比較による効果]
本実施形態に係る診断システム70によれば、予め設定されている基準値と実測値を比較し、実測値が基準値に合致するかまたは合致しないかを診断するので、オペレータの主観が排除された客観的な診断の結果が得られる。特に、本実施形態に係る診断システム70によれば、成形のための運転が行われていない状態で得られる実測値と基準値を比較するので、成形機1以外の設備の影響を考慮する必要がないため、基準値から外れた要因を特定するのが容易である。
【0062】
[診断結果の表示]
本実施形態に係る診断システム70によれば、実測値が前記基準値に合致しないものと診断されると、実測値が基準値に合致しないことに加えて、合致しないレベルが表示画面78に表示される。したがって、この表示に接するオペレータは、表示されるレベルに応じて、適切な対応を選択できる。
【0063】
[診断の対象]
本実施形態に係る診断システム70によれば、アキュムレータ23の他に、アキュムレータ23に関わる機器として、油圧ポンプ25と、油圧ポンプ25を駆動する電動モータ27と、を含む。そして、アキュムレータ23に関する実測値と、油圧ポンプ25からの作動油の吐出圧力に関する実測値と、電動モータ27に供給される電流に関する実測値と、を測定する。したがって、アキュムレータ23に関わるいずれの機器が基準値から外れているのかを推定できる。
【0064】
本実施形態に係る診断システム70によれば、アキュムレータ23のチャージに関する実測値と、アキュムレータ23のガス圧力に関する実測値と、を測定の対象とする。したがって、アキュムレータ23のどの部位が基準値から外れているのかを推定するのが容易である。
【0065】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態においては、アキュムレータ23およびアキュムレータ23の動作に関わる機器において、他の測定対象を含むことができる。例えば、本発明は、チャージの際のアキュムレータ23のガス圧力の上昇曲線(波形)を測定することができる。また、本実施形態においては、アキュムレータ23に作動油を供給する、アキュムレータ23の動作に関わる機器である油圧ポンプ25は油圧シリンダ69にも作動油を供給する。したがって、金型Mの型締めの際に油圧シリンダ69に圧油を供給する油圧ポンプ25における圧油の圧力の変動を測定対象とすることは、本発明に含まれる。
【0066】
また、本実施形態においては、USBを用いて診断に関するデータを端末80に提供することにしているが、本発明はこれに限らず、端末80と診断制御部71とをデータ交信可能に例えばLAN(Local Area Network)により接続して、端末80に診断に関するデータを送信してもよい。
【0067】
また、本実施形態における診断システム70は、診断制御部71、操作部77および端末80と3つの別体をなす構造体から構成される例を示した。しかし、本発明の診断システムは、診断制御部71、操作部77および端末80のそれぞれの機能を単一の構造体で実現してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 成形機
10 射出部
20 油圧機構
21 射出シリンダ
21A シリンダ本体
21B ピストン
21B1 ピストンヘッド
21B2 ピストンロッド
21B3 カップリング
23 アキュムレータ
23A シリンダ
23B ピストン
25 油圧ポンプ
27 電動モータ
29 貯油槽
30 射出機構
31 スリーブ
31A 注湯口
33 プランジャ
33A ロッド
33B チップ
50 型締部
51 基台
53 固定盤
55 可動盤
57 リンクハウジング
61,63 トグルリンク
65 クロスヘッドリンク
67 クロスヘッド
69 油圧シリンダ
69A シリンダ本体
69B シリンダロッド
70 診断システム
71 診断制御部
73 電流計
74 圧力計
75 温度計
77 操作部
78 表示画面
79 ストレージ(補助記憶装置)
80 端末
C1 油流入室
C2 油排出室
C3 油室
C4 ガス室
M 金型
M1 固定金型
M2 可動金型
L 前後方向
H 高さ方向
Ho 作動油
BR 定型レポート
B1,B3,B5,B7,B9,B11 ボタン