(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】家具用接地装置及び家具
(51)【国際特許分類】
A47B 91/02 20060101AFI20241210BHJP
A47B 91/04 20060101ALI20241210BHJP
A47B 41/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
A47B91/02
A47B91/04
A47B41/00
(21)【出願番号】P 2020177763
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英一
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-476(JP,A)
【文献】特開2008-267396(JP,A)
【文献】特開2015-14319(JP,A)
【文献】特開2005-152659(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0012052(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/02
A47B 91/04
A47B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングに上下回動可能に支持され下面側に床面に接地する接地体を有する回動部材と、前記ハウジング内に配設され前記回動部材の回動により圧縮される粘弾性を有した弾性部材とを備えた家具用接地装置。
【請求項2】
前記ハウジングが、内部に前記回動部材の回動軌跡に対応させて天井面を湾曲させた空間を備えたものであり、
前記弾性部材が、前記天井面に沿って湾曲した姿勢で前記ハウジングの空間内に収容されたものであり、
その弾性部材の一端を前記回動部材の上面に当接させるとともに、他端を前記天井面の終端に交叉する前記ハウジングの起立面に当接させている請求項1記載の家具用接地装置。
【請求項3】
前記接地体が、前記回動部材の回動に伴って床面との接地位置が変化する接地カム面を備えたものである請求項1又は2記載の家具用接地装置。
【請求項4】
前記回動部材が、基端両側に支軸を突設してなり、その支軸を前記ハウジングの両側壁に枢支させて前記空間の下端開口部に配されたものである請求項1、2又は3記載の家具用接地装置。
【請求項5】
前記回動部材は、ハウジングの下面に装着された蓋体により前記ハウジング内に保持されたものであり、この蓋体に前記回動部材の接地体を外部に突出させるための窓が設けられている請求項4記載の家具用接地装置。
【請求項6】
前記ハウジングと前記蓋体は、共通のボルトにより前記家具に共締め固定されるものであり、前記ハウジングと前記蓋体との間には、前記ボルトによる固定前に前記蓋体が脱落するのを防止するための仮止め要素が設けられている請求項4又は5記載の家具用接地装置。
【請求項7】
前記弾性部材が、ウレタンゲル、低反発ウレタン又はエラストマーを材料として作られたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の家具用接地装置。
【請求項8】
底面の複数箇所に相互に独立して伸縮する1、2、3、4、5、6又は7記載の家具用接地装置が装着された家具。
【請求項9】
前記家具用接地装置が底面の4箇所に装着された請求項8記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校用デスク等の家具に好適に使用される家具用接地装置、及び底面にこのような接地装置が装着された家具である。
【背景技術】
【0002】
従来の学校用デスクでは、使用中にいわゆるガタツキが生じるのを防止するためのアジャスタを備えたものも少なくないが、通常のアジャスタを用いたものでは、デスクを移動させる毎にアジャスタを適切に調節しないとガタツキを防ぐことができないという煩わしさがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような不具合を解消するために、アジャスタの先にオイルダンパにより昇降可能な接地体を設けたもの等も開発されているが、オイルダンパは耐久性が低く、オイル漏れ等の不具合を招き易い。
【0004】
かかる不具合に対処する方策として、昇降可能な接地体で弾性部材を圧縮するような接地装置も考えられるが、通常の考え方では昇降する接地体で弾性部材を鉛直方向に圧縮することになるので、装置の大型化を招く虞がある(課題1)。
【0005】
また、かかる接地装置には、床面の不陸に適度に追従してほしいという要望があり、具体的には、接地体のストロークを十分にとって床面の不陸に素早く対応できるようにしてほしい、硬過ぎてガタツキが残ったり柔らか過ぎて使用中にデスクがふわふわ揺動したりするのを防いでほしい等、種々の要望が存在する。しかしながら、固形式の弾性部材を常識的な態様で用いただけでは、弾性部材の大きさや特性を選定してその要望に応えるしかなく、装置の寸法等が制限された場合には、自ずとその対応に限界が生じてしまうという難しさがある(課題2)。
【0006】
このような課題は、学生等が使用する学校用デスクに限らず、他の家具においても存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
請求項1に係る発明は、前述した課題1を解消することを目的としている。また、請求項3に係る発明は、課題1に加え、前述の課題2をも解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明に係る家具用接地装置は、ハウジングと、このハウジングに上下回動可能に支持され下面側に床面に接地する接地体を有する回動部材と、前記ハウジング内に配設され前記回動部材の回動により圧縮される粘弾性を有した弾性部材とを備えたものである。
【0010】
請求項2記載の発明に係る家具用接地装置は、請求項1記載のものであって、前記ハウジングが、内部に前記回動部材の回動軌跡に対応させて天井面を湾曲させた空間を備えたものであり、前記弾性部材が、前記天井面に沿って湾曲した姿勢で前記ハウジングの空間内に収容されたものであり、その弾性部材の一端を前記回動部材の上面に当接させるとともに、他端を前記天井面の終端に交叉する前記ハウジングの起立面に当接させているものである。
【0011】
なお、本発明において、「回動軌跡に対応させる」とは、回動軌跡と同じにするものに限らず、回動軌跡に近似させるもの等を含む概念である。
【0012】
請求項3記載の発明に係る家具用接地装置は、請求項1又は2記載のものであって、前記接地体が、前記回動部材の回動に伴って床面との接地位置が変化する接地カム面を備えたものである。
【0013】
請求項4記載の発明に係る家具用接地装置は、請求項1、2又は3記載のものであって、前記回動部材が、基端両側に支軸を突設してなり、その支軸を前記ハウジングの両側壁に枢支させて前記空間の下端開口部に配されたものである。
【0014】
請求項5記載の発明に係る家具用接地装置は、請求項4記載のものであって、前記回動部材がハウジングの下面に装着された蓋体により前記ハウジング内に保持されたものであり、この蓋体に前記回動部材の接地体を外部に突出させるための窓が設けられているものである。
【0015】
請求項6記載の発明に係る家具用接地装置は、請求項4又は5記載のものであって、前記ハウジングと前記蓋体は、共通のボルトにより前記家具に共締め固定されるものであり、前記ハウジングと前記蓋体との間には、前記ボルトによる固定前に前記蓋体が脱落するのを防止するための仮止め要素が設けられているものである。
【0016】
請求項7記載の発明に係る家具用接地装置は、請求項1、2、3、4、5又は6記載のものであって、前記弾性部材が、ウレタンゲル、低反発ウレタン又はエラストマーを材料として作られたものである。
【0017】
請求項8記載の発明に係る家具は、底面の複数箇所に相互に独立して伸縮する1、2、3、4、5、6又は7記載の家具用接地装置が装着されたものである。
【0018】
請求項9記載の発明に係る家具は、請求項8記載のものであって、前記家具用接地装置が底面の4箇所に装着されたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大型化を招くことなく家具のガタツキを適正に防止又は抑制することができる耐久性の高い家具用接地装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る接地装置を装着したデスクを示す側面図。
【
図2】同実施形態に係る接地装置を装着したデスクを示す斜視図。
【
図7】同実施形態に係る接地装置を示す分解斜視図。
【
図9】本実施形態に係る弾性部材の圧縮方向を示す説明図。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る接地装置を示す側面図。
【
図13】同実施形態に係る接地装置を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を、
図1~
図9を参照して説明する。
【0022】
この実施形態は、家具である学校用のデスクDに本発明に係る家具用接地装置4を装着したものである。
【0023】
デスクDは、
図1及び
図2に示すように、教室の床面F上に載置して使用される学童用のものであり、左右の脚体1により天板2を支持するとともに、左右の脚体1の上端近傍部間に幕板3を架設してなる。
【0024】
左右の脚体1は、
図1及び
図2に示すように、それぞれ脚ベース11の後端部内側から脚支柱12を立設したものであり、脚ベース11の前端部及び後端部にそれぞれ家具用接地装置4が設けられている。
【0025】
家具用接地装置4は、
図3~
図7に示すように、家具の底部である脚ベース11に設けられるハウジング5と、このハウジング5に上下回動可能に支持され下面側に床面Fに接地する接地体62を有する回動部材6と、ハウジング5内に配設され回動部材6の上方への回動により圧縮される粘弾性を有した弾性部材7とを備えたものである。
【0026】
ハウジング5は、
図5及び
図7に示すように、内部に回動部材6の回動軌跡6kに対応させて天井面5aを湾曲させた空間5sを備えたものであり、弾性部材7が、天井面5aに沿って湾曲した姿勢で前記ハウジング5の空間5s内に収容されている。弾性部材7の一端7aは回動部材6の上面6aに当接させてあり、他端7bは前記天井面5aの終端に交叉するハウジング5の起立面5bに当接させてある。ハウジング5は、例えば合成樹脂により一体に作られた箱形のもので、両端部に上下に貫通するボルト挿通孔5cを有するとともに、中間領域に前述した空間5sを有している。空間5sは、下方に開放されたもので、その天井面5aは、回動部材6の回動軌跡6kの外側に、当該回動軌跡6kに近似させて形成されたもので、具体的には、この天井面5aは、起立した一端側平面部5a1と、この一端側平面部5a1に連続する円柱面部5a2と、この円柱面部5a2に連続する水平な他端側平面部5a3とからなる。他端側平面部5a3の終端は、鉛直な起立面5bに直交させてある。ハウジング5の下面すなわち底面5dには、
図4~
図7に示すように、その周縁に周縁突条5d1が形成されており、周縁突条5d1に囲まれた領域に、後述する蓋体8が嵌着されている。かかる構成のハウジング5の底部に回動部材6を上下回動可能に収容している。
【0027】
回動部材6は、
図7に示すように、基端両側に支軸61aを突設してなり、その支軸61aを前記ハウジング5の両側壁51に形成された枢支溝5fに枢支させて前記空間5sの下端開口部に配されたものである。詳述すれば、回動部材6は、
図5及び
図7に示すように、基端に支軸61aを有した部材本体61と、この部材本体61の下面に突設された接地体62とを一体に備えたもので、例えば、合成樹脂により一体に作られている。前述したハウジング5の空間5sを形成する両内側面5eには、回動部材6の両支軸61aを回動可能に支持する枢支溝5fが形成されている。両枢支溝5fは、下端をハウジング5の底面5dに開放させたもので、両支軸61aを両枢支溝5fに下から係合させることによって、回動部材6をハウジング5に取り付けることができるようになっている。接地体62は、部材本体61から下方に垂下させて設けられたもので、その下面に回動部材6の回動に伴って床面Fとの接地位置が変化する接地カム面62aが形成されている。この実施形態の接地体62は、下端に向かって漸次巾狭となる形態をなしている。この回動部材6は、ハウジング5の底面5dに装着された蓋体8によりハウジング5内に保持されたものであり、この蓋体8に回動部材6の接地体62を外部に突出させるための窓8aが設けられている。ハウジング5と前記蓋体8は、
図6及び
図7に示すように、共通のボルト9によりデスクDの脚ベース11に共締め固定される板状のものであり、ハウジング5と蓋体8との間には、ボルト9による固定前に蓋体8がハウジング5から脱落するのを防止するための仮止め要素Kが設けられている。この実施形態の場合、仮止め要素Kは、ハウジング5の周縁突条5d1の内周面5d2と、蓋体8の外周面8bとをアリ溝状に傾斜させたもので、部材の一時的な弾性変形を利用して蓋体8を周縁突条5d1の内側に係合させている。蓋体8は、
図4~
図7に示すように、長方形状をなす平板状のもので、両端部にハウジング5のボルト挿通孔5cに合致するねじ挿通孔8cを有するとともに、中間領域に前述した窓8aを備えている。6cは、この回動部材6の回動中心である。
【0028】
弾性部材7は、例えば、低反発ウレタン製のもので、
図5及び
図7に示すように、角柱状のブロックをハウジング5の天井面5aに沿って湾曲変形させることによってハウジング5の空間5s内に収容されている。なお、この弾性部材7は、厚板素材を打ち抜いて製造してもよい。その場合には、初期形状が図示例のような湾曲形状となる。詳述すれば、収容状態の弾性部材7は、一端7aを回動部材6の回動端側上面6aに当接させるとともに、他端7bをハウジング5の起立面5bに当接させた状態でハウジング5の空間5s内に収容されている。
【0029】
以上説明した接地装置4は、デスクDの左右の脚体1における後端部及び前端部にそれぞれ装着されている。具体的には、
図6に示すように、各脚体1の脚ベース11には、前記ハウジング5を下から嵌合させることができる凹陥部11aが形成されており、これらの凹陥部11aに嵌合させたハウジング5を蓋体8とともに共通のボルト9により脚ベース11に共締め固定するようにしている。この実施形態の場合、脚ベース11の後端部に装着された接地装置4は、回動部材6の回動端が後ろを向き、脚ベース11の前端部に装着された接地装置4は、回動部材6の回動端が前を向くように設定されている。
【0030】
ここで、回動部材6が接地して回動するとき、弾性部材7は一端7aが回動部材6の回動端側上面6aに押圧され、他端7bが当接する起立面5bとの間で圧縮される。このとき、弾性部材7は弾性変形により一部膨張するが、
図5における回動中心6c上方の部位に膨張しろを設けているとともに、ハウジング5の両側壁51間の距離を弾性部材7の無負荷状態での厚み寸法よりも大きくとっていることにより弾性部材7の厚み方向両側にも膨張しろを設けているので、回動部材6は弾性部材7から適度な抵抗を受けつつ、大きく回動することができる。
【0031】
なお、
図1は、かかる接地装置4を必要箇所に複数個装着したデスクDの側面図であり、
図2は同デスクDを下から観察した斜視図である。
図3は接地装置4の一つを示す側面図、
図4は
図3におけるX矢視図、
図5は
図4におけるY-Y線断面図、
図6は同接地装置4を下から観察した斜視図である。
図7は同接地装置4の分解斜視図である。
図3~
図6は、説明の都合上、接地体62が床面Fに接地していない無負荷状態で図示したものであり、この状態を模式的に示したものが
図8(a)である。
図8(b)は、床面Fからの反作用力を受けて接地体62が没入し弾性部材7が圧縮されている状態を模式的に示したものである。
図9は、本実施形態に係る弾性部材7の圧縮方向(各部の圧縮方向を連続させた圧縮方向線をaで示す)を、仮想の弾性部材7の圧縮方向(各部の圧縮方向を連続させた圧縮方向線をbで示す)と比較するための説明図である。
【0032】
このような構成のものであれば、粘弾性を有する弾性部材7の弾性反発力によって接地体62を床面Fに対して突没させるようにしているので、オイル漏れの心配がなく、油圧ダンパー式の接地装置に比べて高い耐久性を確保することができる。
【0033】
しかも、鉛直方向に移動する接地体62に代えて、回動動作を行う接地体62により弾性部材7を圧縮するようにしているので、弾性部材7の圧縮方向を回動部材6の回動軌跡6kに対応させて非直線的なものにすることが可能となる。そのため、弾性部材7の実質的な圧縮方向の長さ寸法を大きく確保しても、接地装置全体の高さ寸法の増大を抑制することができ、例えばこの実施形態のように、脚ベース11内に収容するような場合に好都合となる。具体的には、この実施形態の弾性部材7の実質的な圧縮方向の長さ寸法は、
図9の湾曲線aの長さ寸法に相当するが、同等の圧縮方向長さ寸法(
図9の線分bの長さ寸法)を有する直線的な柱状の弾性部材7を使用した場合には、接地装置全体の高さ寸法が大きくならざるを得ない。そのため、本発明に係る接地装置4によれば、装置全体のコンパクト化を無理なく促進することができる。すなわち、本接地装置4の構成によれば、直線的に昇降する接地体で直線的な弾性部材を鉛直方向に圧縮する場合に比べて装置全体の上下方向寸法を無理なく縮小することができる。
【0034】
また、接地体62に、前記回動部材6の回動に伴って床面Fとの接地位置が変化する接地カム面62aを形成しているため、ハウジング5の床面Fに対する離間寸法と、回動部材6による弾性部材7の圧縮寸法との関係を、正比例以外の関係に設定することができる。そのため、カム面62aの形状を種々変更することによって弾性部材7の弾性反発特性を変化させることが可能となり、最適な特性を有する接地装置4を設計し易いという利点がある。すなわち、本接地装置4の構成によれば、接地体62の接地位置が弾性部材7の圧縮寸法の変化に伴って変わるので、この接地体62のカム面62aの形状を変えることによって、弾性部材7の圧縮寸法とハウジング5の昇降寸法との関係を調節することができる。そのため、弾性部材7の弾性反発特性を最適なものに設定し易くなる。
【0035】
さらに、この実施形態では、弾性部材7として低反発ウレタンを使用しているので、この弾性部材7に、スプリングとダンパーとを併せた機能を発揮させることができる。そのため、デスクD全体がいつまでも揺動するような事象を有効に抑制することができる上に、比較的大きなストロークで接地体62を突没させて床面Fの不陸にすばやく対応させることが可能となる。
【0036】
なお、本発明は、以上説明した実施形態のものに限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0037】
例えば、
図10~
図13を参照しつつ以下に述べるような構成の家具用接地装置A4が考えられる。
【0038】
このものは、以下に述べる点で上述した実施形態の家具用接地装置4と異なり、その他の点では上述した実施形態の家具用接地装置4と同様の構成を有する。上述した実施形態の家具用接地装置4におけるものと同一又は対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
この家具用接地装置A4は、家具の底部に設けられるハウジングA5と、このハウジングA5に上下回動可能に支持され下面側に床面に接地する接地体62を有する回動部材6と、ハウジングA5内に配設され回動部材6の上方への回動により圧縮される粘弾性を有した弾性部材7とを備えたものである。
【0040】
ハウジングA5は、
図12及び
図13に示すように、内部に回動部材6の回動軌跡6kに対応させて天井面A5aを湾曲させた空間A5sを備えたものであり、弾性部材7が、天井面A5aに沿って湾曲した姿勢でこの空間A5s内に収容されている。また、このハウジングA5は、例えば合成樹脂により一体に作られた箱形のもので、両端部に上下に貫通するボルト挿通孔A5cを有するとともに、中間領域に前述した空間A5sを有している。空間A5sは、下方に開放されたもので、その天井面A5aは、回動部材6の回動軌跡6kの外側に、当該回動軌跡6kに近似させて形成されたもので、具体的には、この天井面A5aは、起立した一端側平面部A5a1と、この一端側平面部A5a1に連続する円柱面部A5a2と、この円柱面部A5a2に連続する水平な他端側平面部A5a3とからなる。他端側平面部A5a3の終端は、鉛直な起立面A5bに直交させてある。ハウジングA5の下面すなわち底面A5dには、
図12及び
図13に示すように、空間A5sの開口縁を囲うように突条A5d1が形成されており、この突条A5d1の外周面に、後述する蓋体A8の係合凹部A8dに弾性係合可能な係合突起A52が突設されている。かかる構成のハウジングA5の底部に回動部材6を上下回動可能に収容している。具体的には、ハウジングA5の空間A5sを形成する両内側面A5e(両側壁A51の内面)に枢支溝A5fを形成しており、この枢支溝A5fに回動部材6の両支軸61aを回動可能に支持させている。その上で、回動部材6は、ハウジングA5の底面A5dに装着された蓋体A8によりハウジングA5内に保持されている。
【0041】
蓋体A8は、回動部材6の接地体62を外部に突出させるための窓A8aが設けられている板状のものである。ハウジングA5と蓋体A8は、
図13に示すように、共通のボルト9により例えばデスクの脚ベースに共締め固定される。ハウジングA5と蓋体A8との間には、ボルト9による固定前に蓋体A8がハウジングA5から脱落するのを防止するための仮止め要素K2が設けられている。この実施形態の場合、仮止め要素K2は、ハウジング5の突条A5d1の外周面に設けた係合突起A52と、蓋体A8の内周面に設けた係合凹部A8dとを弾性係合させてなるものである。蓋体A8は、
図10、
図11及び
図13に示すように、長方形状をなす平板状のもので、両端部にハウジングA5のボルト挿通孔A5cに合致するねじ挿通孔A8cを有するとともに、中間領域に前述した窓A8aを備えている。
【0042】
ここで、
図10は接地装置A4の一つを示す側面図である。
図11は
図10におけるα矢視図であり、
図12は
図11におけるβ-β線断面図である。そして、
図13は同接地装置A4の分解斜視図である。
図10~
図12は、説明の都合上、接地体62が床面Fに接地していない無負荷状態で図示している。
【0043】
このような構成であっても、上述した実施形態の家具用接地装置4におけるものと同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、この実施形態のハウジングA5は、ボルト挿通孔A5cが設けられた両端部の部位の高さ寸法(ボルト挿通孔A5cの深さ寸法、ねじ飲み込み部の寸法)を一端側と他端側とで異ならせているので、これに対応してハウジングA5を下から嵌合させることができる家具側の凹陥部の深さを一端側と他端側とで異ならせることにより、この家具用接地装置A4を予め指定した向きにのみ装着させるよう導くことができる。
【0045】
その他、以下のような変形例も考えられる。
【0046】
例えば、前述した図示実施形態では、ハウジングを、内部に前記回動部材の回動軌跡に対応させて天井面を湾曲させた空間を備えたものとし、弾性部材を、天井面に沿って湾曲した姿勢で前記ハウジングの空間内に収容しているが、弾性部材の保持構造は必ずしもこのようなものに限定されるものではない。しかしながら、かかる構成にすれば、弾性部材を圧縮に適した姿勢でハウジング内に挿入して保持することができるため、構造の簡略化や組立工数の最小化を図ることができる。
【0047】
また、図示実施形態では、回動部材を基端両側に支軸を突設したものにし、その支軸をハウジングの両側壁に枢支させて空間の下端開口部に配するようにしているが、回動部材の枢支構造もこのようなものに限定されないのは勿論である。しかしながら、図示実施形態のような構成を採用すれば、回動部材をハウジングに簡単に装着することができ、また、別体の支軸を用いる場合に比べて部品点数を削減することもできる。
【0048】
さらに、回動部材の保持構造も図示実施形態に限られないが、図示例のようにすれば、ハウジングの下面を塞ぐと同時に回動部材の装着も完了するため、構成の簡略化を図ることができる。特に、この図示実施形態のように、ハウジングと蓋体とを、共通のボルトにより家具であるデスクに共締め固定するようにしておけば、構造の複雑化を防止することができるとともに、部品点数も少なくすることができる。しかも、図示実施形態のように、ハウジングと前記蓋体との間に、ボルトによる固定前に蓋体が脱落するのを防止するための仮止め要素を設けておけば、組立前の部品の管理が容易になり、また、当該接地装置をデスクに組み付ける作業も簡略なものとなる。
【0049】
また、弾性部材は、図示実施形態のものに限定されず、例えば、ウレタンゲルやエラストマーを材料として作られたものであってもよい。
【0050】
本発明の接地装置を装着する家具は、学校用のデスクに限らず、オフィスで使用するデスク、テーブル、シェルフ、カウンター、衝立、電話台等、種々のものが考えられる。なお、学生用のデスクは、移動させる頻度も多い上、受験や試験など集中を要する場面が多く、移動毎に素早く自動的にガタツキ感やフワフワ感を無くす性能が要求されるため、特に本発明の接地装置にとっては最適な適用対象物である。
【0051】
請求項8記載の発明に係るデスク等の家具は、底面の複数箇所に、相互に独立して伸縮する以上に述べたような家具用接地装置を装着しているので、以下のような効果を得ることができる。すなわち、床面に対して、接地点のいずれかが高い場合であっても、接地点のいずれかが低い場合であっても、家具用接地装置は相互に独立して伸縮するので、家具全体としてはバランスをとり床面に追随することができる。
【0052】
特に、前述した実施形態のように、家具がデスクである場合、底面の4箇所に以上に述べたような家具用接地装置を装着すると、以下に述べるような効果を得ることができる。すなわち、水平な床面に対し、接地点の1箇所が高い(又は3箇所が低い)場合、接地点の2箇所が高い又は低い場合、及び接地点の1箇所が低い(又は3箇所が高い)場合のいずれの場合でも家具用接地装置はそれぞれ独立して伸縮するので、家具全体としてはバランスをとり床面に追随することができる。
【0053】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0054】
D…家具(デスク)
11…家具の底部(脚ベース)
4、A4…家具用接地装置
5、A5…ハウジング
51…側壁
5a…天井面
5b…起立面
5d…下面
5s…空間
6…回動部材
61a…支軸
62…接地体
62a…接地カム面
6a…回動部材の上面
7…弾性部材
7a…弾性部材の一端
8…蓋体
8a…窓
9…ボルト
K、K2…仮止め要素
F…床面