(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20241210BHJP
B29C 64/336 20170101ALI20241210BHJP
B29C 64/282 20170101ALI20241210BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20241210BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241210BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20241210BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/336
B29C64/282
B29C64/106
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2020182081
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】宮下 武
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-524476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0230745(US,A1)
【文献】国際公開第2016/121013(WO,A1)
【文献】特表平09-504055(JP,A)
【文献】特開2017-075364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B29C 64/336
B29C 64/282
B29C 64/106
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層上に造形層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形装置であって、
ステージと、
第1材料を供給する第1材料供給手段と、
焼結温度が前記第1材料の融点よりも高い第2材料を供給する第2材料供給手段と、
レーザー照射手段と、
第1レーザー照射モードと、前記第1レーザー照射モードよりも前記下層への熱の拡散が少ない第2レーザー照射モードと、を選択して、前記レーザー照射手段を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1材料を前記ステージ上に供給して形成される前記造形層としての第1材料造形層上に、前記第2材料を供給して形成される前記造形層としての第2材料造形層に前記レーザー照射手段からレーザーを照射する場合、前記第2レーザー照射モードを選択して前記レーザー照射手段を制御
し、
前記第2レーザー照射モードは、前記第1レーザー照射モードよりもパルス幅の短いレーザーを使用することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記下層が前記第1材料で形成された層か否かを判断し、前記下層が前記第1材料で形成された層ではないと判断した場合は前記造形層に対して前記第1レーザー照射モードでレーザー照射を行い、前記下層が前記第1材料で形成された層であると判断した場合は前記造形層に対して前記第2レーザー照射モードでレーザー照射を行うよう制御することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の三次元造形装置において、
前記第1材料は樹脂であることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
前記第2材料は金属またはセラミックであることを特徴とする三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、造形層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形装置が使用されている。このうち、複数の材料を用いて造形層を積層する三次元造形装置がある。例えば、特許文献1には、樹脂または金属の基板上に樹脂粉末を供給し、レーザーを該樹脂粉末に照射することで複数の材料で構成される三次元造形物を製造するレーザー粉末積層造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレーザー粉末積層造形装置は、樹脂又は金属の基板上に樹脂粉末を供給してレーザーを該樹脂粉末に照射するので、焼結温度が下層の融点と同等以下の上層にレーザーを照射することとなる。しかしながら、焼結温度が下層の融点よりも高い上層にレーザーを照射する場合、下層にレーザーによる熱が伝わり、レーザーによる熱で下層が溶融して変形し、三次元造形物の製造精度が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形装置は、下層上に造形層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形装置であって、ステージと、第1材料を供給する第1材料供給手段と、焼結温度が前記第1材料の融点よりも高い第2材料を供給する第2材料供給手段と、レーザー照射手段と、第1レーザー照射モードと、前記第1レーザー照射モードよりも下層への熱の拡散が少ない第2レーザー照射モードと、を選択して、前記レーザー照射手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1材料を前記ステージ上に供給して形成される前記造形層としての第1材料造形層上に、前記第2材料を供給して形成される前記造形層としての第2材料造形層に前記レーザー照射手段からレーザーを照射する場合、前記第2レーザー照射モードを選択して前記レーザー照射手段を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施例の三次元造形装置の構成を表す概略正面図。
【
図2】
図1の三次元造形装置の材料供給手段の構成を表す概略正面図。
【
図3】
図1の三次元造形装置のスクリューを表す概略斜視図。
【
図4】
図1の三次元造形装置のスクリューに造形材料が充填されている状態を表す概略平面図。
【
図5】
図1の三次元造形装置のバレルを表す概略平面図。
【
図6】
図1の三次元造形装置を用いて三次元造形物を製造している状態を表す概略正面図。
【
図7】
図1の三次元造形装置を用いた三次元造形方法の一例のフローチャート。
【
図8】
図1の三次元造形装置を用いてレーザー照射する際に使用されるレーザーのエネルギー強度分布を表すグラフ。
【
図9】
図1の三次元造形装置を用いてレーザー照射する際に使用されるレーザーの材料の深さ方向の熱分布を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形装置は、下層上に造形層を積層することで三次元造形物を製造する三次元造形装置であって、ステージと、第1材料を供給する第1材料供給手段と、焼結温度が前記第1材料の融点よりも高い第2材料を供給する第2材料供給手段と、レーザー照射手段と、第1レーザー照射モードと、前記第1レーザー照射モードよりも下層への熱の拡散が少ない第2レーザー照射モードと、を選択して、前記レーザー照射手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1材料を前記ステージ上に供給して形成される前記造形層としての第1材料造形層上に、前記第2材料を供給して形成される前記造形層としての第2材料造形層に前記レーザー照射手段からレーザーを照射する場合、前記第2レーザー照射モードを選択して前記レーザー照射手段を制御することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、第1レーザー照射モードに加え、第1レーザー照射モードよりも下層への熱の拡散が少ない第2レーザー照射モードを有する。そして、第1材料をステージ上に供給して形成される下層である第1材料造形層上に、焼結温度が第1材料の融点よりも高い第2材料を供給して形成される上層である第2材料造形層にレーザー照射手段からレーザーを照射する場合、第2レーザー照射モードを選択する。このため、焼結温度が下層の融点よりも高い上層にレーザーを照射する場合に下層にレーザーによる熱が伝わらないようにすることができる。したがって、第1材料造形層上に第2材料造形層を積層し該第2材料造形層にレーザーを照射する際、レーザーによる熱で第1材料造形層が変形することを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の三次元造形装置は、前記第1の態様において、前記第2レーザー照射モードは、前記第1レーザー照射モードよりもパルス幅の短いレーザーを使用することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、第2レーザー照射モードで、第1レーザー照射モードよりもパルス幅の短いレーザーを使用する。パルス幅の短いレーザーを使用することで熱の拡散を低下することができるので、第1材料造形層上に第2材料造形層を積層し該第2材料造形層にレーザーを照射する際、レーザーによる熱で第1材料造形層が変形することを抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の三次元造形装置は、前記第1の態様において、少なくとも前記第2レーザー照射モードはトップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを使用することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、第2レーザー照射モードで、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを使用する。トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを使用することで、ガウシアン分布のエネルギー強度分布を有するレーザーを使用する場合に比べて、一定幅の溶融可能な領域に与える熱エネルギーが均等に与えることができ、ガウシアン分布のように過剰な熱エネルギーの供給を抑えられ、広範囲にわたる熱の拡散を抑制することができるので、第1材料造形層上に第2材料造形層を積層し該第2材料造形層にレーザーを照射する際、レーザーによる熱で第1材料造形層が変形することを抑制することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の三次元造形装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記第1材料は樹脂であることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、第1材料は樹脂である。このため、下層である樹脂層の上に上層を積層し該上層にレーザーを照射する際、レーザーによる熱で下層の樹脂層が変形することを抑制することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の三次元造形装置は、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記第2材料は金属またはセラミックであることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第2材料は金属またはセラミックである。このため、下層の上に金属層またはセラミック層を積層し該金属層またはセラミック層にレーザーを照射する際、レーザーによる熱で下層が変形することを抑制することができる。特に、下層を樹脂層とした場合に、下層である樹脂層の上に金属層またはセラミック層を積層し該金属層またはセラミック層にレーザーを照射する際、レーザーによる熱で下層である樹脂層が変形することを特に効果的に抑制することができる。
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。なお、以下の図はいずれも概略図であり、一部構成部材を省略または簡略化して表している。また、各図中のX軸方向は水平方向であり、Y軸方向は水平方向であるとともにX軸方向と直交する方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0018】
最初に、本発明の一実施例の三次元造形装置1の全体構成について
図1から
図5を参照して説明する。
【0019】
本実施例の三次元造形装置1は、第1材料Oaと第2材料Obとを用いて造形層500を積層し、少なくとも第2材料ObをレーザーLで焼結することで三次元造形物Oを製造する三次元造形装置である。第1材料Oaに関しては、焼結しない構成としてもよいし、焼結する構成としてもよい。
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、造形層500を形成するための材料を供給する2つの材料供給手段30と、三次元造形物Oを造形するためのステージとしてのステージユニット22と、造形層にレーザーLを照射可能なレーザー照射手段28と、を備えている。さらに、材料供給手段30、ステージユニット22及びレーザー照射手段28など、三次元造形装置1の各構成部分の駆動を制御する制御部23を備えている。
【0020】
本実施例の三次元造形装置1は、材料供給手段30として、第1材料Oaを供給する第1材料供給手段30Aと、第2材料Obを供給する第2材料供給手段30Bと、を備えている。第2材料Obは、焼結温度が第1材料Oaの融点よりも高い材料が使用される。本実施例の三次元造形装置1においては、三次元造形物Oを造形する造形材料としてペレット19を使用可能である。すなわち、第1材料Oaを有するペレット19Aが第1材料供給手段30Aでは使用され、第2材料Obを有するペレット19Bが第2材料供給手段30Bでは使用される。ペレット19Aには第1材料Oaの他にバインダーなどその他の材料を含んでいてもよく、ペレット19Bには第2材料Obの他にバインダーなどその他の材料を含んでいてもよい。ここで、本実施例の三次元造形装置1においては、第1材料供給手段30Aと第2材料供給手段30Bとは全く同様の構成をしている。
【0021】
図2は、材料供給手段30を表すが、第1材料供給手段30Aと第2材料供給手段30Bとは全く同様の構成をしているので、第1材料供給手段30A及び第2材料供給手段30Bのどちらにも対応している。
図2で表されるように、材料供給手段30は、三次元造形物Oを造形する造形材料としてのペレット19を収容するホッパー2を備えている。ホッパー2に収容されたペレット19は、供給管3を介して、略円柱状のフラットスクリューであるスクリュー4の円周面4aに供給される。
【0022】
本実施例の三次元造形装置1は、三次元造形物Oを造形する造形材料としてペレット19を使用し、フラットスクリューにより造形材料を可塑化しながら造形材料を吐出する構成であるが、本発明はこのような構成の三次元造形装置1に限定されない。例えば、樹脂製の線状の造形材料であるフィラメントや、金属粉末に樹脂材料を混ぜた金属フィラメントを溶融しながら連続的に吐出部から吐出して三次元造形物Oを造形する構成などであってもよい。さらには、第1材料Oaや第2材料Obを溶媒に溶解または分散媒に分散させた流体を吐出部から吐出して三次元造形物Oを造形する構成などであってもよい。
【0023】
図3で表されるように、スクリュー4の底面である溝形成面18には、円周面4aから中央部Cpまで至る螺旋状の溝4bが形成されている。別の表現をすると、溝4bが形成されることに伴って形成されるリブ4dが溝形成面18を形成している。本実施例の三次元造形装置1は、
図2で表される駆動モーター6がスクリュー4をZ軸方向に沿う方向を回転軸として回転させることにより、
図4で表されるように、ペレット19を円周面4aから中央部Cpまで可塑化させながら供給する。なお、
図1では省略されているが、駆動モーター6の昇温を抑制するため、駆動モーター6の近傍において冷却水が循環している。
【0024】
図2で表されるように、スクリュー4の溝形成面18と対向する位置には、バレル5が所定の間隔を有して設けられている。そして、バレル5の上面である溝形成面18に対する対向面8の近傍には、加熱部7が設けられている。スクリュー4とバレル5とがこのような構成をしていることにより、スクリュー4を回転させることで、溝4bの位置に対応するとともにスクリュー4の溝形成面18とバレル5の対向面8との間に形成される空間部分20にペレット19は供給され、ペレット19は円周面4aから中央部Cpに移動する。なお、ペレット19が溝4bによる空間部分20を移動する際、ペレット19は、加熱部7の熱により溶融され、また、狭い空間部分20を移動することに伴う圧力で加圧される。こうして、ペレット19は、可塑化されることで連通孔5aを介してノズル10aに供給されてノズル10aから吐出される。
【0025】
図5などで表されるように、平面視でバレル5の中央部Cpには、溶融したペレット19の移動経路である連通孔5aが形成されている。
図2で表されるように、連通孔5aは、造形材料を吐出する吐出部10のノズル10aと繋がっている。連通孔5aには、不図示のフィルターが設けられている。なお、本実施例のバレル5には形成されていないが、バレル5の対向面8に連通孔5aに繋がる溝が形成されていてもよい。対向面8に連通孔5aに繋がる溝が形成されることで、造形材料が連通孔5aに向かって集まり易くなる場合がある。
【0026】
ここで、吐出部10は、可塑化され流体状態の造形材料をノズル10aから連続的に吐出することが可能な構成になっている。なお、
図2で表されるように、吐出部10には、造形材料を所望の粘度にするためのヒーター9が設けられている。吐出部10から吐出される造形材料は、線形の形状で吐出される。そして、吐出部10から線状に造形材料を吐出することで造形層500を形成する。
【0027】
本実施例の三次元造形装置1は、ホッパー2、供給管3、スクリュー4、バレル5、駆動モーター6及び吐出部10などを有する材料供給手段30を備えている。なお、本実施例の三次元造形装置1は、第1材料Oaを吐出する第1材料供給手段30A及び第2材料Obを吐出する第2材料供給手段30Bを各々1つずつ備える構成であるが、第1材料供給手段30A及び第2材料供給手段30Bの少なくとも一方を複数備える構成としてもよい。
【0028】
また、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、材料供給手段30から吐出されることで形成される造形層500を載置するためのステージユニット22を備えている。ステージユニット22は、基体部221と、第1テーブル222と、第2テーブル223と、第3テーブル224と、を備えている。第1テーブル222は、Y軸方向において、材料供給手段30による造形層形成領域24から詳細は後述するレーザー照射手段28によるレーザー照射領域25まで至る大きさであり、制御部23の制御によって、第2テーブル223はモーター225により第1テーブル222に対してY軸方向に沿って移動可能である。また、制御部23の制御によって、第3テーブル224はモーター226により第2テーブル223に対してX軸方向に沿って移動可能である。なお、ステージユニット22の構成に特に限定は無く、例えば、第2テーブル223及び第3テーブル224を造形層形成領域24からレーザー照射領域25まで移動するためのテーブル及びモーターをさらに別に設けていてもよい。
【0029】
本実施例の三次元造形装置1は、第2テーブル223が第1テーブル222に対してY軸方向に沿って移動することで、第2テーブル223及び第3テーブル224を造形層形成領域24からレーザー照射領域25まで移動することが可能となっている。第2テーブル223及び第3テーブル224を造形層形成領域24に位置させて材料供給手段30により造形層500を形成し、第2テーブル223及び第3テーブル224をレーザー照射領域25に位置させてレーザー照射手段28によりレーザー照射を行う。
【0030】
なお、材料供給手段30は造形層形成領域24において不図示のモーターにより造形層500の積層に伴ってZ軸方向に沿って移動可能に構成されており、レーザー照射手段28もレーザー照射領域25において不図示のモーターにより造形層500の積層に伴ってZ軸方向に沿って移動可能に構成されている。本実施例の三次元造形装置1は、このような構成になっていることにより、造形層形成領域24においてステージユニット22と材料供給手段30とを相対移動させつつ第3テーブル224上に造形層500を形成可能であるとともに、レーザー照射領域25においてステージユニット22とレーザー照射手段28とを相対移動させつつ第3テーブル224上に形成された造形層500に対してレーザーLを所望の位置に照射可能である。ステージユニット22と材料供給手段30との配置の制御、並びに、ステージユニット22とレーザー照射手段28との配置の制御は、いずれも制御部23により行われる。
【0031】
レーザー照射手段28は、
図1で表されるように、レーザー照射部281と、ガルバノミラー282と、を備えている。レーザー照射手段28は、制御部23からの制御信号に基づき、レーザー照射部281から所定出力のレーザーLが発振されることで、レーザーLが照射される。レーザーLは、造形層500に照射され、造形層500に含まれる例えば金属粉末などを焼結し固体化する。その時、同時に造形層500に含まれるバインダーなどはレーザーLの熱により蒸散される。レーザーLとしては特に限定はないが、ファイバーレーザーは、金属の吸収効率などが高い利点があることから、好適に用いられる。また、Qスイッチを搭載しパルス制御されたYAGレーザーを用いても構わない。
【0032】
ここで、第1材料Oa及び第2材料Obに特に限定はないが、第1材料Oaとしては樹脂を好ましく使用することができる。本実施例の三次元造形装置1は、第1材料Oaとして樹脂を使用して下層である樹脂層の上に上層を積層し該上層にレーザーLを照射する際、レーザーLによる熱で下層の樹脂層が変形することを抑制することができる。
【0033】
また、第2材料Obとしては金属またはセラミックを好ましく使用することができる。本実施例の三次元造形装置1は、下層の上に金属層またはセラミック層を積層し該金属層またはセラミック層にレーザーLを照射する際、レーザーLによる熱で下層が変形することを抑制することができる。特に、本実施例の三次元造形装置1は、下層を樹脂層とした場合に、下層である樹脂層の上に金属層またはセラミック層を積層し該金属層またはセラミック層にレーザーLを照射する際、レーザーLによる熱で下層である樹脂層が変形することを特に効果的に抑制することができる。
【0034】
しかしながら、上記のように、第1材料Oa及び第2材料Obに特に限定は無く、金属、セラミック、樹脂等のいずれを使用してもよく、またそれらを2種以上混合して使用してもよい。ただし、第2材料Obの焼結温度が第1材料Oaの融点よりも高いことが条件となる。
【0035】
具体的には、第1材料Oa及び第2材料Obに使用可能な金属またはセラミックとして、アルミニウム、チタン、鉄、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、マルエージング鋼等の各種金属、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の各種金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の各種金属水酸化物、窒素珪素、窒素チタン、窒化アルミニウム等の各種金属窒化物、炭化珪素、炭化チタン、窒化アルミニウム等の各種金属窒化物、炭化珪素、炭化チタン等の各種金属炭化物、硫化亜鉛等の各種金属硫化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の各種金属の硫酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の各種金属のケイ酸塩、リン酸カルシウム等の各種金属のリン酸塩、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の各種金属のホウ酸塩や、これらの複合化合物等、石膏(硫酸カルシウムの各水和物、硫酸カルシウムの無水物)等が挙げられる。
【0036】
また、第1材料Oa及び第2材料Obに使用可能な樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂、合成樹脂等が挙げられる。また、例えば、PLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。レーザー照射により焼結される第2材料Obとして樹脂を使用する場合は、PEEK(ポリエチルエーテルケトン)などスーパーエンプラと呼ばれる耐熱性の樹脂を好ましく用いることができる。また、金属またはセラミックとともに上記樹脂を含有させたペレット状態などとしてもよい。また、ペレット状態でなく、上述した金属、セラミックまたは樹脂を微小な粒子の状態で、溶媒または分散媒中に溶解または分散させるようにしてもよい。なお、溶媒または分散媒などの溶剤やバインダーは、通常、レーザーLの照射前に乾燥して除かれるか、レーザーLの照射に伴い分解されて消失する。
【0037】
溶媒または分散媒としては、例えば、蒸留水、純水、RO水等の各種水の他、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)等のエーテル類(セロソルブ類)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基及びベンゼン環を有する芳香族炭火水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドンのいずれか一つを含む芳香族複素環類、アセトニトクル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル類、N,N-ジメチルアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、カルボン酸塩又はその他の各種油類等が挙げられる。溶剤または分散媒は、レーザーLの照射前に、通常、乾燥して除かれる。
【0038】
次に、上記の三次元造形装置1を用いて実行する三次元造形方法の一例について、
図6を参照しつつ、
図7のフローチャートを用いて説明する。本実施例の三次元造形方法では、最初に、ステップS110で、三次元造形装置1は、不図示の外部コンピューターなどから造形データを入力する。
【0039】
次に、ステップS120で、ステップS110で入力した造形データに基づいて1層分の造形層500を形成する。ここで、
図6の一番上の状態図は、第1材料供給手段30Aにより第1材料Oaからなる1層目の造形層501が第3テーブル224上に形成された状態を表している。なお、
図6の一番上の状態図は、第1材料Oaのみからなる1層目の造形層501が第3テーブル224上に形成されているが、第1材料Oaと第2材料Obとからなる1層目の造形層501が第3テーブル224上に形成される場合や、第2材料Obのみからなる1層目の造形層501が第3テーブル224上に形成される場合もある。
【0040】
次に、ステップS130で、ステップS120で形成された造形層500にレーザーLを照射するか否かを制御部23で判断する。本実施例においては、第1材料Oaが樹脂で第2材料Obが金属であり、造形層500のうちの第2材料Obで形成された部分にのみレーザーLを照射することとする。このため、例えば、ステップS120で1層目の造形層501を第1材料Oaのみで形成した場合は、制御部23は該造形層501に対してレーザーLを照射しないと判断する。本ステップでレーザーLを照射すると判断した場合はステップS140に進み、本ステップでレーザーLを照射しないと判断した場合はステップS170に進む。
【0041】
ステップS140では、ステップS120で形成された直後の造形層500に対してすぐ下の層である下層が第1材料Oaで形成された層か否かを制御部23で判断する。この「第1材料Oaで形成された層」には、一部のみが第1材料Oaで形成された層である場合も含む。本ステップで下層が第1材料Oaで形成された層ではないと判断した場合はステップS150に進み、ステップS120で形成された直後の造形層500に対して第1レーザー照射モードでレーザー照射を行う。一方、本ステップで下層が第1材料Oaで形成された層であると判断した場合はステップS160に進み、ステップS120で形成された直後の造形層500に対して第2レーザー照射モードでレーザー照射を行う。
【0042】
ステップS150及びステップS160は、いずれも、ステップS120で形成された直後の造形層500を焼結させるステップである。さらに詳細には、下層を溶融等させてしまうことなく、ステップS120で形成された直後の造形層500を焼結させるステップである。第2材料Obが金属またはセラミックである場合はステップS150またはステップS160において該金属またはセラミックを焼結させるが、第2材料Obが樹脂の場合でも例えば該樹脂としてスーパーエンプラなどを使用した場合などにおいてはステップS150またはステップS160において該樹脂を焼結させる。なお、本実施例においては、第1材料Oaに関しては焼結させないが、第1材料OaにもレーザーLを照射することとして該第1材料Oaも焼結させてもよい。
【0043】
ここで、第1レーザー照射モードは通常状態のレーザー照射モードであり、第2レーザー照射モードは第1レーザー照射モードよりも下層への熱の拡散が少ないレーザー照射モードである。具体的には、第2レーザー照射モードは、第1レーザー照射モードよりもパルス幅の短いレーザーを使用するレーザー照射モードである。ステップS150の終了及びステップS160の終了に伴い、ステップS170に進む。
【0044】
ステップS170では、ステップS110で入力した造形データに基づく三次元造形がすべて終了したか否かを制御部23で判断する。ステップS110で入力した造形データに基づく三次元造形がすべて終了したと判断した場合は、本実施例の三次元造形方法を終了する。一方、ステップS110で入力した造形データに基づく三次元造形が終了していないと判断した場合は、ステップS120に戻り、ステップS110で入力した造形データに基づく三次元造形がすべて終了したと判断するまで、ステップS120からステップS170を繰り返す。
【0045】
ここで、
図6の上から2番目の状態図は、第1材料造形層としての1層目の造形層501を造形した後に、2層目の造形層502を第1材料供給手段30Aにより造形層501上に形成した状態を表している。そして、
図6の上から3番目の状態図は、第1材料Oaに隣接して第2材料Obで2層目の造形層502を第2材料供給手段30Bにより造形層501上に形成した状態を表している。このように、造形層502は、第2材料Obにより形成された部分を含んでいる。造形層500のうち、第2材料Obにより形成された部分を含んでいる造形層502は、第2材料造形層として判断される。このため、第2材料造形層としての造形層502に対しては、ステップS130で第2材料Obで形成された部分にレーザーLを照射すると判断する。また、造形層502の下層である造形層501は第1材料Oaで形成された造形層500なので、ステップS140では造形層502に対して第2レーザー照射モードでレーザー照射を行う。
図6の一番下の状態図は、造形層502に対して第2レーザー照射モードでレーザー照射を行っている状態を表している。
【0046】
このように、制御部23は、第1レーザー照射モードと第2レーザー照射モードとを選択してレーザー照射手段28を制御する。そして、制御部23は、
図6の造形層501のように第1材料Oaをステージ上に供給して形成される第1材料造形層上に、
図6の造形層502のように第2材料Obを供給して形成される第2材料造形層にレーザー照射手段28からレーザーLを照射する場合、第2レーザー照射モードを選択してレーザー照射手段28を制御する。
【0047】
このように、本実施例の三次元造形装置1は、第1レーザー照射モードに加え、第1レーザー照射モードよりも下層への熱の拡散が少ない第2レーザー照射モードを有する。そして、第1材料Oaをステージ上に供給して形成される下層である第1材料造形層上に、焼結温度が第1材料Oaの融点よりも高い第2材料Obを供給して形成される上層である第2材料造形層にレーザー照射手段28からレーザーを照射する場合、第2レーザー照射モードを選択する。このため、本実施例の三次元造形装置1は、焼結温度が下層の融点よりも高い上層にレーザーLを照射する場合に下層にレーザーLによる熱が伝わらないようにすることができる。したがって、本実施例の三次元造形装置1は、第1材料造形層上に第2材料造形層を積層し該第2材料造形層にレーザーLを照射する際、レーザーLによる熱で第1材料造形層が変形することを抑制することができる。
【0048】
また、上記のように、本実施例の三次元造形装置1においては、第2レーザー照射モードは、第1レーザー照射モードよりもパルス幅の短いレーザーLを使用する。パルス幅の短いレーザーLを使用することで熱の拡散を低下することができる。パルス幅を短くするほどピンポイントにエネルギーを集約できるようになるためである。このため、本実施例の三次元造形装置1は、第1材料造形層上に第2材料造形層を積層し該第2材料造形層にレーザーLを照射する際、レーザーLによる熱で第1材料造形層が変形することを抑制することができる。
【0049】
また、本実施例の三次元造形装置1は、第2レーザー照射モードにおいてトップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーLを使用し、第1レーザー照射モードにおいてガウシアン分布のエネルギー強度分布を有するレーザーLを使用することもできる。
図8は、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーL及びガウシアン分布のエネルギー強度分布を有するレーザーLのエネルギー強度分布を表す一例のグラフである。
【0050】
ここで、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーLは、一般的にSLS(選択式レーザー焼結)方式、又はSMS(選択式マスク焼結)方式に採用されているガウシアン分布のレーザー光源の光学系にトップハット分布にレーザープロファイルを変換可能な回折光学素子(DOE)などを用いたレンズシステム(ガウシアン分布からトップハット形状の分布へと変換する手段)を組み込むことにより形成している。ただし、レンズシステムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、装置名:StarLite、OPHIR社製などを使用することができる。
【0051】
トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーLを使用することで、ガウシアン分布のエネルギー強度分布を有するレーザーLを使用する場合に比べて、一定幅の溶融可能な領域に与える熱エネルギーが均等に与えることができ、ガウシアン分布のように過剰な熱エネルギーの供給を抑えられ、広範囲にわたる熱の拡散を抑制することができる。
図8に示されるエネルギー分布、及び
図9に示される材料の深さ方向の熱分布のグラフでも表されるように、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーLを使用することで、一定幅の溶融可能な領域に与える熱エネルギーが均等に、溶融に必要な量を与えることができ、ガウシアン分布のように過剰な熱エネルギーの供給を抑えられ、広範囲にわたる熱の拡散を抑制することができるためである。このため、本実施例の三次元造形装置1は、第1材料造形層上に第2材料造形層を積層し該第2材料造形層にレーザーLを照射する際、レーザーLによる熱で第1材料造形層が変形することを抑制することができる。
【0052】
上記のように、本実施例の三次元造形装置1は、第1レーザー照射モードと、第1レーザー照射モードよりも周囲への熱の拡散が少ない第2レーザー照射モードとで、パルス幅を変更する方法と、パルスの形状を変更する方法と、を採用可能な構成としている。しかしながら、これらの一方の方法のみを採用する構成としてもよいし、さらに別の方法を採用する構成としてもよい。
【0053】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…三次元造形装置、2…ホッパー、3…供給管、4…スクリュー、4a…円周面、4b…溝、4d…リブ、5…バレル、5a…連通孔、6…駆動モーター、7…加熱部、8…対向面、9…ヒーター、10…吐出部、10a…ノズル、18…溝形成面、19…ペレット、19A…ペレット、19B…ペレット、22…ステージユニット(ステージ)、23…制御部、24…造形層形成領域、25…レーザー照射領域、28…レーザー照射手段、30…材料供給手段、30A…第1材料供給手段、30B…第2材料供給手段、221…基体部、222…第1テーブル、223…第2テーブル、224…第3テーブル、225…モーター、226…モーター、281…レーザー照射部、282…ガルバノミラー、500…造形層、501…1層目の造形層(第1材料造形層)、502…2層目の造形層(第2材料造形層)、Cp…中央部、O…三次元造形物、Oa…第1材料、Ob…第2材料