(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよびアクチュエーター
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241210BHJP
H10N 30/079 20230101ALI20241210BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241210BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/14 613
H10N30/079
H10N30/20
H10N30/853
(21)【出願番号】P 2020182868
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】北田 和也
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037932(JP,A)
【文献】特開2014-208470(JP,A)
【文献】特開2015-154037(JP,A)
【文献】特開2007-281238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
H10N 30/079
H10N 30/20
H10N 30/853
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数の圧力室を有する圧力室基板と、
前記圧力室基板よりも前記第1方向と交差する第2方向に配置された振動板と、
前記振動板よりも前記第2方向に配置された第1電極と、
前記第1電極よりも前記第2方向に配置された圧電体層と、
前記第1電極よりも前記第2方向に配置された第2電極と、
前記圧電体層と前記振動板との間に位置し、前記圧電体層の配向を制御するためのシー
ド層と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記圧電体層は、前記第1方向で前記第1電極と重ならない第1領域と、前記第1方向
で前記第1電極と重なる第2領域と、を有し、
前記圧電体層をX線回折法により解析したとき、前記第1領域は、第1面方位に優先配
向し、前記第2領域は、前記第1面方位に優先配向し、
前記シード層は、前記第1領域と前記第2領域との両方に対応して配置され、
前記シード層の前記第1領域と対応する部分は、前記シード層の前記第2領域と対応す
る部分よりも厚いことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1面方位は、(100)面であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘ
ッド。
【請求項3】
前記圧電体層をX線回折法により解析したときの前記第1面方位への配向の度合いを示
すロットゲーリングファクターは、前記第1領域および前記第2領域のそれぞれで0.6
以上1.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ロットゲーリングファクターは、前記第1領域および前記第2領域のそれぞれで0
.8以上1.0以下であることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記圧電体層は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であることを特徴とする請求
項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記圧電体層は、少なくともPb、ZrおおびTiを含むことを特徴とする請求項1か
ら5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1電極は、PtまたはIrのいずれかを含むことを特徴とする請求項1から6の
いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記振動板のうちの前記第1方向の端部は、Zr、TiまたはSiのいずれかを含むこ
とを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記圧電体層は、前記第1領域で平均結晶粒が2.0μm以下であり、前記第2領域で
平均結晶粒が2.0以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の
液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1電極は、前記複数の圧力室に対して個別に配置され、
前記第2電極は、前記複数の圧力室に対して共通に配置されることを特徴とする請求項
1から9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第2電極は、前記圧電体層の前記第2方向の面の周囲を覆うようにして配置される
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記シード層は、前記第1電極の前記第2方向の面の周囲を覆うようにして配置されて
いることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記シード層は、Bi、Pb、FeおよびTiのすべてを含むことを特徴とする請求項
1から12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
第1方向に並ぶ複数の圧力室を有する圧力室基板と、
前記圧力室基板よりも前記第1方向と交差する第2方向に配置された振動板と、
前記振動板よりも前記第2方向に配置された第1電極と、
前記第1電極よりも前記第2方向に配置された圧電体層と、
前記第1電極よりも前記第2方向に配置された第2電極と、
前記圧電体層と前記振動板との間に位置し、前記圧電体層の配向を制御するためのシー
ド層と、を有するアクチュエーターであって、
前記圧電体層は、前記第1方向で前記第1電極と重ならない第1領域と、前記第1方向
で前記第1電極と重なる第2領域と、を有し、
前記圧電体層をX線回折法により解析したとき、前記第1領域は、第1面方位に優先配
向し、前記第2領域は、前記第1面方位に優先配向し、
前記シード層は、前記第1領域と前記第2領域との両方に対応して配置され、
前記シード層の前記第1領域と対応する部分は、前記シード層の前記第2領域と対応す
る部分よりも厚いことを特徴とするアクチュエーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよびアクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力室を有する振動板を圧電素子により振動させることで、当該圧力室に充填された液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドが従来から提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の圧電素子は、下部電極、圧電薄膜および上部電極を有する。下部電極上には、圧電薄膜の面方位を所望の配向にするためのシード層が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1のように下電極上にシード層を配置した場合、圧電体層の下電極と重なる領域は、シード層が存在することにより所望の面方位を有するが、圧電体層の下電極と重ならない領域はシード層が存在しないために無配向になってしまう。したがって、圧電体層の下電極と重なる領域と、圧電体層の下電極と重ならない領域とで、結晶の面方位が異なってしまう。圧電体層の下電極と重なる領域と下電極と重ならない領域とで面方位が異なると、これらの領域で熱膨張係数等の物性が互いに異なってしまう。この結果、これらの領域の間でクラック等が生じ、吐出性能や耐久性能が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に並ぶ複数の圧力室を有する圧力室基板と、前記圧力室基板よりも前記第1方向と交差する第2方向に配置された振動板と、前記振動板よりも前記第2方向に配置された第1電極と、前記第1電極よりも前記第2方向に配置された圧電体層と、前記第1電極よりも前記第2方向に配置された第2電極と、を有する液体吐出ヘッドであって、前記圧電体層は、前記第1方向で前記第1電極と重ならない第1領域と、前記第1方向で前記第1電極と重なる第2領域と、を有し、前記圧電体層をX線回折法により解析したとき、前記第1領域は、第1面方位に優先配向し、前記第2領域は、前記第1面方位に優先配向する。
【0007】
本発明の好適な態様に係るアクチュエーターは、第1方向に並ぶ複数の圧力室を有する圧力室基板と、前記圧力室基板よりも前記第1方向と交差する第2方向に配置された振動板と、前記振動板よりも前記第2方向に配置された第1電極と、前記第1電極よりも前記第2方向に配置された圧電体層と、前記第1電極よりも前記第2方向に配置された第2電極と、を有するアクチュエーターであって、前記圧電体層は、前記第1方向で前記第1電極と重ならない第1領域と、前記第1方向で前記第1電極と重なる第2領域と、を有し、前記圧電体層をX線回折法により解析したとき、前記第1領域は、第1面方位に優先配向し、前記第2領域は、前記第1面方位に優先配向する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示する概略図である。
【
図4】アクチュエーターの一部を示す平面図である。
【
図6】第2領域におけるXRDの結果を示す図である。
【
図7】第1領域におけるXRDの結果を示す図である。
【
図8】第2実施形態におけるアクチュエーターの一部を示す断面図である。
【
図9】変形例におけるアクチュエーターの一部を示す断面図である。
【
図10】変形例におけるアクチュエーターの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置100の全体構成
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100を例示する構成図である。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜用いて説明する。
【0010】
第1実施形態の液体吐出装置100は、液体の例示であるインクを媒体12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体12は、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象が媒体12として利用される。
図1に示すように、液体吐出装置100には、インクを貯留する液体容器14が設置される。例えば液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンクが、液体容器14として利用される。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置100は、制御ユニット20と搬送機構22と移動機構24と液体吐出ヘッド26とを備える。制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数の処理回路と半導体メモリー等の1または複数の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY軸に沿って搬送する。
【0012】
移動機構24は、制御ユニット20による制御のもとで液体吐出ヘッド26をX軸に沿って往復させる。移動機構24は、液体吐出ヘッド26を収容する略箱型の搬送体242と、搬送体242が固定された搬送ベルト244とを具備する。なお、複数の液体吐出ヘッド26を搬送体242に搭載した構成、または、液体容器14を液体吐出ヘッド26とともに搬送体242に搭載した構成も採用され得る。
【0013】
液体吐出ヘッド26は、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで複数のノズルから媒体12に吐出する。搬送機構22による媒体12の搬送と搬送体242の反復的な往復とに並行して各液体吐出ヘッド26が媒体12にインクを吐出することで、媒体12の表面に画像が形成される。
【0014】
1-2.液体吐出ヘッド26の全体構成
図2は、液体吐出ヘッド26の分解斜視図である。
図3は、
図2おけるa-a線の断面図である。
図3に図示された断面は、X-Z平面に平行な断面である。Z軸は、液体吐出ヘッド26によるインクの吐出方向に沿う軸線である。また、X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向とは反対の方向をX2方向と表記する。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向とは反対の方向をY2方向と表記する。Z軸に沿う一方向をZ1方向と表記し、Z1方向とは反対の方向をZ2方向と表記する。また、以下では、Z1方向またはZ2方向に見ることを「平面視」とする。また、例えばY1方向は「第1方向」に相当する。Z2方向は、第1方向と交差する「第2方向」に相当する。なお、Y2方向を「第1方向」として捉えてもよい。
【0015】
図2に示すように、液体吐出ヘッド26は、Y軸に沿って配列された複数のノズルNを具備する。第1実施形態の複数のノズルNは、X軸に沿って相互に間隔をあけて並設された第1列Laと第2列Lbとに区分される。第1列Laおよび第2列Lbの各々は、Y1方向に配列された複数のノズルNの集合である。
図3に示す液体吐出ヘッド26は、第1列Laの各ノズルNに関連する要素と第2列Lbの各ノズルNに関連する要素とが略面対称に配置された構造である。そこで、以下の説明では、第1列Laに対応する要素を重点的に説明し、第2列Lbに対応する要素の説明は適宜に割愛する。
【0016】
図2および
図3に示すように、液体吐出ヘッド26は、ノズルプレート41と吸振体42と流路基板31と圧力室基板32と振動板33と複数の圧電素子34と封止体35と筐体部36と配線基板51とを備える。ノズルプレート41、吸振体42、流路基板31、圧力室基板32、振動板33、封止体35および筐体部36のそれぞれは、Y1方向に延在する長尺な部材である。ノズルプレート41、流路基板31、圧力室基板32、振動板33、圧電素子34は、Z2方向にこの順に並ぶ。また、液体吐出ヘッド26は、アクチュエーター30を有する。アクチュエーター30は、圧力室基板32と振動板33と複数の圧電素子34とを有する。
【0017】
ノズルプレート41は、インクを吐出する複数のノズルNを有する板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを吐出する一般的には円形状の貫通孔であるが円形では無い貫通孔であってもインクの吐出は可能である。例えばフォトリソグラフィーおよびエッチング等の半導体製造技術を利用してシリコン(Si)の単結晶基板を加工することで、ノズルプレート41が製造される。ただし、ノズルプレート41の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
【0018】
流路基板31には、空間Raと複数の供給流路312と複数の連通流路314と中継液室316とが形成される。空間Raは、Y1方向に延在する長尺状に形成された開口である。供給流路312および連通流路314のそれぞれは、ノズルN毎に形成された貫通孔である。中継液室316は、複数のノズルNにわたりY1方向に延在する長尺状に形成された空間であり、空間Raと複数の供給流路312とを相互に連通させる。複数の連通流路314のそれぞれは、当該連通流路314に対応する1個のノズルNに平面視で重なる。流路基板31は、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。
【0019】
圧力室基板32は、インクが配置される空間である複数の圧力室C1を有する。複数の圧力室C1は、複数のノズルNに対して1対1で配置される。圧力室基板32は、各ノズルNに対応する圧力室C1を形成する壁面320を有する。図示しないが、圧力室基板32の壁面320には、圧力室基板32および振動板33とインクとが接触しないよう圧力室基板32および振動板33を保護する保護膜が配置される。
【0020】
振動板33は、圧力室基板32よりもZ2方向に配置される。振動板33は、弾性的に変形可能である。なお、
図2および
図3に示す例では、圧力室基板32と振動板33を別部材で形成されるが、圧力室基板32および振動板33の一部は同一基板から形成されてもよい。
【0021】
複数の圧電素子34は、振動板33よりもZ2方向に配置される。複数の圧電素子34は、圧力室C1ごとに設けられる。圧電素子34は、平面視でX1方向に延在する長尺状の受動素子である。圧電素子34は、駆動信号が印加されることで駆動する駆動素子でもある。なお、圧力室基板32、振動板33および圧電素子34を有するアクチュエーター30についてはあとで詳述する。
【0022】
筐体部36は、複数の圧力室C1に供給されるインクを貯留するためのケースであり、例えば樹脂材料の射出成形で形成される。筐体部36には、空間Rbと供給口361とが形成される。供給口361は、液体容器14からインクが供給される管路であり、空間Rbに連通する。筐体部36の空間Rbと流路基板31の空間Raとは相互に連通する。空間Raと空間Rbとで構成される空間は、複数の圧力室C1に供給されるインクを貯留する液体貯留室Rとして機能する。液体容器14から供給されて供給口361を通過したインクが液体貯留室Rに貯留される。液体貯留室Rに貯留されたインクは、中継液室316から各供給流路312に分岐して複数の圧力室C1に並列に供給および充填される。吸振体42は、液体貯留室Rの壁面を構成する可撓性のフィルムであり、液体貯留室R内のインクの圧力変動を吸収する。
【0023】
封止体35は、複数の圧電素子34を保護するとともに圧力室基板32および振動板33の機械的な強度を補強する構造体である。封止体35は、振動板33の表面に例えば接着剤で固定される。封止体35のうち振動板33との対向面に形成された凹部の内側に複数の圧電素子34が収容される。また、振動板33の表面には配線基板51が接合される。配線基板51は、制御ユニット20と液体吐出ヘッド26とを電気的に接続するための複数の配線が形成された実装部品である。例えばFPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板51が好適に採用される。圧電素子34を駆動するための駆動信号および基準電圧が配線基板51から各圧電素子34に供給される。
【0024】
1-3.アクチュエーター30
図4は、アクチュエーター30の一部を示す平面図である。
図5は、
図4におけるb-b線の断面図である。
図4および
図5に示すアクチュエーター30は、圧力室基板32と振動板33と複数の圧電素子34と第1配線37と第2配線38とシード層39とを有する。なお、
図4では、第2電極342に便宜的にドットが付されている。
【0025】
図4に示すように、圧力室基板32が有する圧力室C1は、平面視でX1方向に延在する長尺状の空間である。複数の圧力室C1は、Y1方向に並ぶ。圧力室基板32は、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。なお、圧力室C1の平面視形状は、
図4に示す四角形に限定されず、例えば平行四辺形であってもよい。
【0026】
振動板33は、圧力室基板32とともに圧力室C1を形成する。また、振動板33の圧力室C1に対応する部分は、圧電素子34の駆動により振動する。
図5に示す例では、振動板33は、第1層331と第2層332とを有する。第1層331は、圧力室基板32に接触する。第2層332は、第1層331よりもZ2方向に配置される。第2層332は、第1層331と第1電極341との間に配置され、これらに接触する。
【0027】
第1層331の材料は、例えば、酸化シリコン(SiO2)である。第1層331は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。なお、第1層331の材料は、酸化シリコンに限定されず、例えば、シリコン(Si)等の他の弾性材料でもよい。
【0028】
第2層332は、非導電性であることが好ましく、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)またはSi(シリコン)のいずれかを含むことが特に好ましい。すなわち、振動板33のうちのZ2方向の端部は、好ましくはZr、Ti、Siのいずれかを含む。本実施形態では、振動板33が有する第2層332は、Zrを含む。具体的には、第2層332の材料は、酸化ジルコニウム(ZrO2)である。なお、第2層332の材料は、窒化シリコン(SiN)等の他の絶縁材料でもよい。第2層332は、例えば、スパッタ法および熱酸化により形成される。なお、第2層332は無配向な層である。ただし、特に無配向に限定されない。
【0029】
振動板33のうちのZ2方向の端部がZr、Ti、Siのいずれかを含むことで、これらのいずれかを含まない場合に比べ、圧電素子34の振動に応じた必要な変形量を確保しつつ、振動板33の機械的な強度を高くすることができる。そのため、振動板33のクラックの発生をより抑制することができる。
【0030】
なお、第1層331と第2層332との間には、金属酸化物等の他の層が介在してもよい。第1層331または第2層332が互いに同一または異なる複数の層であってもよい。また、振動板33は、複数層でなく、1層であってもよい。また、
図5に示す例では、第2層332の厚みは、第1層331の厚みよりも薄いが、第1層331と第2層332の各厚みは、互いに異なっていても等しくてもよい。
【0031】
図5に示すように、圧電素子34は、概略的には、振動板33から順に、第1電極341と圧電体層343と第2電極342とを有する。第1電極341と圧電体層343と第2電極342との積層方向は、Z2方向である。
【0032】
第1電極341は、振動板33よりもZ2方向に配置され、振動板33に接触する。第1電極341は、X1方向に延在する長尺状である。複数の第1電極341は、相互に間隔をあけてY1方向に配列される。第1電極341は、圧電素子3ごとに相互に離間して形成された個別電極である。
【0033】
第1電極341は、金属等の導電材料を含む。第1電極341は、好ましくは、アルミニウム(Al)、白金(Pt)またはイリジウム(Ir)等のいずれかを含む。これらのいずれかを含むことでこれらを含まない場合に比べ、圧電体層343の変形を許容しつつ、圧電体層343のクラックの発生を抑制することができる弾性を、第1電極341に付与することができる。また、例えば、第1電極341はPtの層とIrの層の積層体を有することができる。Ptの層を有することで、圧電体層343の変形を許容できる第1電極341を提供することができる。また、Irの層を有することで、圧電体層343に含まれる成分が拡散することを抑制することができる。よって、圧電体層343の組成が変化することが抑制される。
【0034】
図4に示すように、第1電極341には第1配線37が電気的に接続される。第1配線37は、
図3に示す配線基板51に搭載された図示しない駆動回路から駆動信号が供給されるリード配線であり、第1電極341に駆動信号を供給する。第1配線37は、第1電極341よりも低抵抗な導電材料で形成される。第1配線37は、例えば、ニクロム(NiCr)で形成された導電膜の表面に金(Au)の導電膜を積層した構造の導電パターンである。
【0035】
図5に示すように、圧電体層343は、第1電極341よりもZ2方向に配置される。
図4に示すように、圧電体層343は、複数の圧電素子34にわたり連続するようにY1方向に延在する帯状の誘電膜である。圧電体層343のうち相互に隣り合う各圧力室C1の間隙に対応する領域には、X軸に沿う切欠Gが形成される。切欠Gは、圧電体層343を貫通する開口である。切欠Gが形成されることで、各圧電素子34は圧力室C1ごとに個別に変形し、圧電素子34の相互間における振動の伝播が抑制される。なお、圧電体層343の厚さ方向の一部を除去した有底孔を切欠Gとして形成してもよい。
【0036】
図5に示すように、圧電体層343は、X1方向にみた断面視で、第1領域A1と第2領域A2とを有する。第1領域A1は、平面視で第1電極341と重ならない領域である。第2領域A2は、平面視で第1電極341と重なる領域である。別の言い方をすると、第1領域A1のY1方向での位置は、第1電極341の位置と異なる。第2領域A2のY1方向での位置は、第1電極341の位置と同じである。
【0037】
図5に示すように、第2電極342は、圧電体層343よりもZ2方向に配置され、圧電体層343に接触する。
図4および
図5に示すように、第2電極342は、複数の圧電素子34にわたり連続するようにY1方向に延在する帯状の共通電極である。第2電極342には、所定の基準電圧が印加される。基準電圧は一定の電圧であり、例えば接地電圧よりも高い電圧に設定される。第2電極342に印加される基準電圧と第1電極341に供給される駆動信号との差分に相当する電圧が圧電体層343に印加される。なお、第2電極342には、接地電圧が印加されてもよい。また、第2電極342は、例えばアルミニウム(Al)、白金(Pt)またはイリジウム(Ir)等の導電材料で形成される。
【0038】
前述のように第1電極341は、複数の圧力室C1に対して個別に配置されるのに対し、第2電極342は、複数の圧力室C1に対して共通に配置される。このため、第2電極342によって圧電体層343を保護することができる。よって、第2電極342が個別に配置される場合、圧電体層343を保護する保護層を別途設ける必要があるが、その必要がない。
【0039】
さらに、第2電極342は、圧電体層343のZ2方向の面の周囲を覆うようにして配置される。つまり、第2電極342は圧電体層343を覆う。このため、圧電体層343が第2電極342に覆われていない場合に比べ、圧電体層343等を保護することができる。よって、例えば、圧電体層343の水素還元による劣化を防止することができる。
【0040】
なお、第1電極341上または第2電極342上には、ニッケル酸ランタン(LNO)等の導電性酸化物が配置されてもよい。また、第1電極341上または第2電極342上には、電極の導電性を損ねない範囲で、チタン等の層が配置されてもよい。
【0041】
図4に示すように、第2電極342よりもZ2方向には、第2電極342に電気的に接続される第2配線38が配置される。第2配線38には、
図3に示す配線基板51を介して図示しない基準電圧が供給される。
図4に示すように、第2配線38は、Y1方向に延在する帯状の第1導電層381と、Y1方向に延在する帯状の第2導電層382とを有する。第1導電層381および第2導電層382は、X1方向に所定の間隔をあけて並ぶ。なお、第2配線38は、振動板33の振動を抑制するための錘としても機能する。第2配線38は、例えば、ニクロムで形成された導電膜の表面に金の導電膜を積層した構造の導電パターンである。
【0042】
かかる圧電素子34では、第1電極341と第2電極342との間に電圧が印加されることで圧電体層343が変形する。この変形により、圧電素子34は、振動板33を撓み変形させる。そして、振動板33が振動することにより圧力室C1の圧力が変化し、圧力室C1内のインクが
図3に示すノズルNから吐出される。
【0043】
図5に示すように、シード層39は、第1電極341と圧電体層343との間に配置される。また、シード層39は、第1電極341、振動板33および圧電体層343に接触する。シード層39は、圧電体層343の種結晶となる結晶構造を含む。シード層39は、圧電体層343の結晶の配向性を制御するための配向制御層である。シード層39が存在することで、圧電体層343の配向性を向上させることができる。このため、圧電素子34の変位力を高めることができる。よって、液体吐出ヘッド26の吐出性能を高めることができる。
【0044】
前述したように、液体吐出ヘッド26が有するアクチュエーター30は、圧力室基板32と、振動板33と、第1電極341と、圧電体層343と、第2電極342と、を有する。圧力室基板32は、Y1方向に並ぶ複数の圧力室C1を有する。また、圧電体層343は、Y1方向で第1電極341と重ならない第1領域A1と、Y1方向で第1電極341と重なる第2領域A2と、を有する。
【0045】
かかる圧電体層343をZ1方向にX線回折法(XRD)により解析したとき、第1領域A1および第2領域A2のそれぞれは、第1面方位に優先配向する。すなわち、第1領域A1および第2領域A2は、互いに同一の結晶の面方位に優先配向する。よって、第1領域A1と第2領域A2とは、互いに、面方位の配向が過度に大きく異ならない。このため、圧電体層343の第1領域A1と第2領域A2とでの結晶の面方位の差の違いによるヤング率および熱膨張係数等の物性の違いが抑制される。よって、第1領域A1と第2領域A2との間で当該物性の差によりクラックが生じるおそれが抑制される。それゆえ、吐出性能や耐久性能の低下を抑制することができる。
【0046】
本実施形態では、当該第1面方位は、(100)面である。すなわち、第1領域A1および第2領域A2は、(100)面に優先配向する。このため、他の結晶の面方位に優先配向する場合に比べ、本実施形態の圧電素子34における吐出特性を向上させることができる。なお、第1面方位は、(100)面以外の(111)面等であってもよい。
【0047】
また、圧電体層343をZ1方向にX線回折法により解析したときの第1面方位への配向の度合いを示すロットゲーリングファクターは、好ましくは、第1領域A1および第2領域A2のそれぞれで0.6以上1.0以下である。ロットゲーリングファクターがかかる範囲内であると、範囲外である場合に比べ、第1領域A1と第2領域A2とでの結晶の面方位の差による物性の違いを抑制することができる。よって、第1領域A1と第2領域A2との間でクラックが生じるおそれがより抑制される。
【0048】
当該ロットゲーリングファクターは、より好ましくは、第1領域A1および第2領域A2のそれぞれで0.8以上1.0以下である。なお、ロットゲーリングファクターの最大値は、1.0である。ロットゲーリングファクターがかかる範囲内であると、範囲外である場合に比べ、圧電体層343の圧電特性を高めることができ、かつ、第1領域A1と第2領域A2とでの結晶の面方位の差による物性の違いを抑制することができる。
【0049】
圧電体層343の材料は、好ましくは一般組成式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する複合酸化物である。このため、圧電体層343が当該複合酸化物以外の他の材料で形成される場合に比べ、第1電極341と第2電極342との間に電圧が印加されることにより優れた圧電特性を発揮することができる。よって、吐出特性を高めることができる。
【0050】
圧電体層343は、当該複合酸化物の中でも、好ましくは、少なくとも鉛(Pb)、ジルコニア(Zr)およびチタン(Ti)を含む。これらを含むことでこれら含まない場合に比べ、第1電極341と第2電極342との間に電圧が印加されることにより優れた圧電特性を発揮することができる。圧電体層343の好ましい材料としては、具体的には例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)やマグネシウムニオブ酸鉛・チタン酸鉛固溶体(Pb(Mg,Nb)O3-PbTiO3)等の圧電材料が挙げられる。なお、圧電体層343は、ニオブ酸カリウムナトリウム((KNa)NbO3)やチタン酸ビスマスナトリウム((Bi、Na)TiO3)等の鉛を含まない材料であってもよい。
【0051】
圧電体層343は、第1領域A1で平均結晶粒が2.0μm以下であり、第2領域A2で平均結晶粒が2.0μm以下である。なお、第1領域A1および第2領域A2の各平均結晶粒は、好ましくは5.0nm以上である。第1領域A1および第2領域A2の各平均結晶粒径が2.0μm以下であることで、2.0μmを超える場合に比べ、圧電体層343のクラックの発生を抑制することができる。
【0052】
また、前述のように、液体吐出ヘッド26は、圧電体層343の配向を制御するためのシード層39を有する。シード層39は、圧電体層343と振動板33の間に位置し、かつ、第1領域A1と第2領域A2との両方に対応する。かかるシード層39を有することで、第1領域A1および第2領域A2のそれぞれを第1面方位に優先配向させることができる。すなわち、第1領域A1および第2領域A2を互いに同一の結晶の面方位に優先配向させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、シード層39は、第1電極341のZ1方向の面の周囲を覆うようにして配置されている。別の言い方をすると、シード層39は、平面視で第1電極341と重なり、シード層39の平面視での面積は、第1電極341の平面視での面積よりも大きい。第1電極341のZ1方向の面の周囲を覆うようにして配置されていることで、シード層39が第1電極341を覆うように配置されていない場合に比べ、第1電極341の上面の凹凸を緩和することができる。よって、当該凹凸の影響により圧電体層343にクラックが生じるおそれを抑制することができる。
【0054】
また、シード層39の第1領域A1と対応する部分の厚さは、シード層39の第2領域A2と対応する部分の厚さよりも厚い。このため、シード層39のZ2方向の面390を平坦面またはそれに近づけることができる。それゆえ、第1電極341の段差により圧電体層343にクラックは発生するおそれが抑制される。
【0055】
シード層39は、配向制御層としての機能を有すればいかなる材料を含んでもよいが、好ましくは、チタン(Ti)、またはペロブスカイト構造を有する複合酸化物を含む。特に、シード層39は、好ましくはペロブスカイト構造を有する複合酸化物を含み、より好ましくはビスマス(Bi)、鉛(Pb)、鉄(Fe)またはチタン(Ti)のいずれかを含む。これらのいずれかを含むことで含まない場合に比べ、圧電体層343の配向特性を向上させることができる。特に、圧電体層343が少なくともPb、ZrおよびTiを含む場合、シード層39がBi、Pb、FeまたはTiのいずれかを含むことで、第1領域A1および第2領域A2を同一の結晶の面方位に優先配向し易くなる。また、圧電体層343が少なくともPb、ZrおよびTiを含む場合、圧電体層343とシード層39の構成元素が近いのであるため、圧電体層343とシード層39の間での製造プロセスにおける不純物の拡散を低減することも可能となる。
【0056】
図6は、本実施形態における圧電体層343の第2領域A2におけるXRDの結果を示す図である。
図7は、本実施形態における圧電体層343の第1領域A1におけるXRDの結果を示す図である。ここでは、シード層39の材料が、Bi、Pb、FeおよびTiを含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物である場合の結果を示している。
【0057】
具体的には、以下のようにして、Bi、Pb、FeおよびTiを含むシード層39を有するアクチュエーター30を形成し、圧電体層343をXRDにより解析した。
【0058】
まず、圧力室基板32としてのシリコン基板上に、第1層331としての二酸化シリコン膜を形成する。次に、スパッタ法にてジルコニウム膜を形成し、当該ジルコニウム膜を熱酸化させることで第2層332としての酸化ジルコニウム膜を形成する。その後、第2層332上に、スパッタ法により、チタンの層、白金の層およびイリジウムの層で構成される積層体を形成する。次に、当該積層体をフォトリソグラフィー法およびドライエッチングにより複数の第1電極341を形成する。
【0059】
次に、Bi:Ti:Fe:Ti=110:10:50:50である溶液を、第1電極341を覆うようにスピンコート法により塗布する。その後、350°で乾燥させ、740°で5分加熱処理を行うことにより、シード層39を形成する。次に、Pb:Zr:Ti=1.18:53:48である溶液をシード層39上にスピンコート法により塗布する。その後、200°および410°で乾燥させ、740°で5分加熱処理を行うことにより、圧電体層343を形成する。次に、圧電体層343上に、スパッタ法により、イリジウムの層およびチタンの層で構成される第2電極342を形成する。以上によりアクチュエーター30が形成される。
【0060】
以上のようにして形成されたアクチュエーター30の圧電体層343について、XRDで解析した。なお、XRDは、Bruker社製D8 DISCOVER with GADDSを用いた。
【0061】
図6および
図7に示すように、本実施形態では、第1領域A1および第2領域A2の両方において、(100)面に優先配向することが分かる。これにより、第1領域A1、第2領域A2の間のクラックを低減し、吐出性能や耐久性能の低下を抑制できる。
【0062】
2.第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下の各例示において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用してそれぞれの詳細な説明を適宜に省略する。
【0063】
図8は、第2実施形態におけるアクチュエーター30Aを示す断面図であり、第1実施形態の
図5に対応する。本実施形態では、第1実施形態のアクチュエーター30の代わりに、アクチュエーター30Aが用いられる。以下では、アクチュエーター30Aについて、第1実施形態のアクチュエーター30と異なる事項を説明し、同様の事項の説明は適宜省略する。
【0064】
図8に示すアクチュエーター30Aは、第1実施形態のシード層39を有さない。アクチュエーター30Aが有する振動板33Aは、第1層331と第2層332Aとを有する。第2層332Aは、圧電体層343の結晶の配向性を制御する配向制御層しての機能を有する。例えば、第2層332Aは、圧電体層343と同一の第1面方位に優先配向する。
【0065】
かかるアクチュエーター30Aにおいても、第1実施形態と同様に、圧電体層343をZ1方向にXRDにより解析したとき、第1領域A1および第2領域A2のそれぞれは、第1面方位に優先配向する。このため、圧電体層343の第1領域A1と第2領域A2とでの結晶の面方位の差の違いによるヤング率および熱膨張係数等の物性の違いが抑制される。よって、第1領域A1と第2領域A2との間で当該物性の差によりクラックが生じるおそれが抑制される。それゆえ、吐出性能や耐久性能の低下を抑制することができる。
【0066】
2.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。なお、第1実施形態に関する以下の変形例は、矛盾しない範囲で第2実施形態にも適用され得る。
【0067】
第1実施形態では、圧電素子34の第1電極341を個別電極として第2電極342を共通電極としたが、第1電極341を共通電極として第2電極342を個別電極としてもよい。但し、この場合であっても、圧電体層343と共通電極である第1電極341上が重ならない領域を含む。その場合には、本実施形態を好適に適用することができる。また、第1電極341および第2電極342の双方を個別電極としてもよい。
【0068】
図9は、変形例におけるアクチュエーター30の一部を示す断面図である。第1実施形態では、シード層39のZ2方向の面390が平坦面である。しかし、
図9に示すように、シード層39のZ2方向の面390は、第1電極341の段差に応じた凹凸を有してもよい。
【0069】
図10は、変形例におけるアクチュエーター30の一部を示す断面図である。第1実施形態では、第1領域A1と第2領域A2とで、シード層39は共通である。しかし、
図10に示すように、シード層39は、第1領域A1に対応する第1部分391と、第2領域A2に対応する第2部分392とを有してもよい。第1部分391と第2部分392とでは、互いに材料が異なる。なお、第1領域A1と第2領域A2とは、同一の第1面方位に優先配向する。
【0070】
第1実施形態では、液体吐出ヘッド26を搭載した搬送体242を往復させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、複数のノズルNが媒体12の全幅にわたり分布するライン方式の液体吐出装置にも本発明を適用することが可能である。
【0071】
第1実施形態で例示した液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示パネル等の表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、生体に関する有機物の溶液を吐出する液体吐出装置は、例えばバイオチップを製造する製造装置として利用される。
【0072】
本発明のアクチュエーターは、液体吐出ヘッドに搭載されるアクチュエーターに限定されず、他のデバイスに搭載されるアクチュエーターにも適用することができる。他のデバイスとしては、例えば、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、焦電センサー等が挙げられる。
【符号の説明】
【0073】
12…媒体、14…液体容器、20…制御ユニット、22…搬送機構、24…移動機構、26…液体吐出ヘッド、30…アクチュエーター、30A…アクチュエーター、31…流路基板、32…圧力室基板、33…振動板、33A…振動板、34…圧電素子、35…封止体、36…筐体部、37…第1配線、38…第2配線、39…シード層、41…ノズルプレート、42…吸振体、46…水素バリア膜、51…配線基板、100…液体吐出装置、242…搬送体、244…搬送ベルト、312…供給流路、314…連通流路、316…中継液室、320…壁面、331…第1層、332…第2層、332A…第2層、341…第1電極、342…第2電極、343…圧電体層、361…供給口、381…第1導電層、382…第2導電層、A1…第1領域、A2…第2領域、C1…圧力室、D1…厚さ、D2…厚さ、G…切欠、La…第1列、Lb…第2列、N…ノズル、R…液体貯留室、Ra…空間、Rb…空間。