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特許7600627超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20241210BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B8/06
A61B8/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020184389
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074392
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】占部 真樹子
(72)【発明者】
【氏名】川端 章裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 義浩
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217815(WO,A1)
【文献】特開2014-207979(JP,A)
【文献】特開2017-108769(JP,A)
【文献】特開2014-213030(JP,A)
【文献】特開2008-253379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0000408(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104981208(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/06
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置であって、
前記断層画像に映る血管を検出する血管検出部と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する血管画像判定部と、
前記血管画像判定部の判定結果に基づいて、ドプラモード実行時の前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定するステア角設定部と、
を備え、
前記ステア角設定部は、検出された前記血管の画像が短軸像である場合、前記超音波ビームのステア角をゼロ度に設定し、検出された前記血管の画像が長軸像である場合、前記超音波ビームのステア角を、前記超音波ビームと前記血管の延在方向の交差角度が可能な限り小さくなる角度に設定し、
前記血管検出部、前記血管画像判定部、及び、前記ステア角設定部は、Bモードからドプラモードに撮像モードが切り替えられるタイミングで処理を実行する
超音波診断装置。
【請求項2】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置であって、
前記断層画像に映る血管を検出する血管検出部と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する血管画像判定部と、
前記血管画像判定部の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定するステア角設定部と、
を備え
前記血管画像判定部は、前記血管が検出された位置とその周辺位置における、血管テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングのマッチ度の分布に基づいて、検出された前記血管の画像の長軸度を算出し、前記長軸度と前記血管が検出された位置における前記マッチ度との2軸評価に基づいて、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する、
超音波診断装置。
【請求項3】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置であって、
前記断層画像に映る血管を検出する血管検出部と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する血管画像判定部と、
前記血管画像判定部の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定するステア角設定部と、
前記血管画像判定部の判定結果の時間的変化を監視する第2データ処理部と、
を備え、
前記第2データ処理部は、前記血管画像判定部の判定結果が変化した場合、その変化の前後に検出された短軸像及び長軸像それぞれに係る前記血管の血管サイズを比較して、その比較結果をユーザに通知する、
超音波診断装置。
【請求項4】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置であって、
前記断層画像に映る血管を検出する血管検出部と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する血管画像判定部と、
前記血管画像判定部の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定するステア角設定部と、
検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度に関する測定項目を自動設定する第3データ処理部と、
を備え、
前記第3データ処理部は、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかによって、前記測定項目の内容を変更し、
前記測定項目は、検出された前記血管の画像から、前記血管の狭窄度を測定するための測定項目である、
超音波診断装置。
【請求項5】
前記断層画像を含む表示用画像を生成する表示処理部を備え、
前記表示処理部は、前記表示用画像内に、前記血管画像判定部の判定結果を表示する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記断層画像を含む表示用画像を生成する表示処理部を備え、
前記表示処理部は、検出された前記血管の位置を示すガイド画像を前記断層画像に重畳して表示し、且つ、前記ガイド画像の画像タイプを、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかによって変更する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記血管画像判定部の判定結果を、前記断層画像と関連付けてメモリに格納する第1データ処理部を備える、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波ビームはカラードプラモード、パワードプラモード若しくはPWドプラモードの少なくともいずれかに係るドプラ画像を生成する際に用いられる超音波ビームである、
請求項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記超音波ビームは、Bモード画像、又は、カラードプラモード、パワードプラモード若しくはPWドプラモードの少なくともいずれかに係るドプラ画像を生成する際に用いられる超音波ビームである、
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記被検体に向けて前記超音波ビームを送信すると共に、前記被検体内から前記超音波ビームの超音波エコーを受信する超音波プローブを有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御方法であって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、ドプラモード実行時の前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
を有し、
前記第3処理では、検出された前記血管の画像が短軸像である場合、前記超音波ビームのステア角をゼロ度に設定し、検出された前記血管の画像が長軸像である場合、前記超音波ビームのステア角を、前記超音波ビームと前記血管の延在方向の交差角度が可能な限り小さくなる角度に設定し、
前記第1処理、前記第2処理、及び、前記第3処理は、Bモードからドプラモードに撮像モードが切り替えられるタイミングで処理を実行する
超音波診断装置の制御方法。
【請求項12】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御方法であって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
を有し
前記第2処理では、前記血管が検出された位置とその周辺位置における、血管テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングのマッチ度の分布に基づいて、検出された前記血管の画像の長軸度を算出し、前記長軸度と前記血管が検出された位置における前記マッチ度との2軸評価に基づいて、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する、
超音波診断装置の制御方法。
【請求項13】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御方法であって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
前記第2処理の判定結果の時間的変化を監視する第4処理と、
を有し、
前記第4処理では、前記血管画像判定部の判定結果が変化した場合、その変化の前後に検出された短軸像及び長軸像それぞれに係る前記血管の血管サイズを比較して、その比較結果をユーザに通知する、
超音波診断装置の制御方法。
【請求項14】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御方法であって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度に関する測定項目を自動設定する第5処理と、
を有し、
前記第5処理では、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかによって、前記測定項目の内容を変更し、
前記測定項目は、検出された前記血管の画像から、前記血管の狭窄度を測定するための測定項目である、
超音波診断装置の制御方法。
【請求項15】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、ドプラモード実行時の前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
を有し、
前記第3処理では、検出された前記血管の画像が短軸像である場合、前記超音波ビームのステア角をゼロ度に設定し、検出された前記血管の画像が長軸像である場合、前記超音波ビームのステア角を、前記超音波ビームと前記血管の延在方向の交差角度が可能な限り小さくなる角度に設定し、
前記第1処理、前記第2処理、及び、前記第3処理は、Bモードからドプラモードに撮像モードが切り替えられるタイミングで処理を実行する
超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項16】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
を有し
前記第2処理では、前記血管が検出された位置とその周辺位置における、血管テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングのマッチ度の分布に基づいて、検出された前記血管の画像の長軸度を算出し、前記長軸度と前記血管が検出された位置における前記マッチ度との2軸評価に基づいて、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する、
超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項17】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
前記第2処理の判定結果の時間的変化を監視する第4処理と、
を有し、
前記第4処理では、前記血管画像判定部の判定結果が変化した場合、その変化の前後に検出された短軸像及び長軸像それぞれに係る前記血管の血管サイズを比較して、その比較結果をユーザに通知する、
超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項18】
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度に関する測定項目を自動設定する第5処理と、
を有し、
前記第5処理では、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかによって、前記測定項目の内容を変更し、
前記測定項目は、検出された前記血管の画像から、前記血管の狭窄度を測定するための測定項目である、
超音波診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を被検体に向けて送信し、その反射波を受信して受信信号に所定の信号処理を行うことにより、被検体内部の形状、性状又は動態を断層画像として可視化する超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、超音波探触子を体表に当てる又は体内に挿入するという簡単な操作で断層画像を取得することができるので、安全であり、被検体にかかる負担も小さい。
【0003】
従来、この種の超音波診断装置においては、超音波ビームを送信した際の、超音波エコーのドプラ偏移周波数から、被検体内の血流速度を測定するカラードプラモード、パワードプラモード及びPWドプラモード等の機能が実装されている。
【0004】
カラードプラモード、パワードプラモード又はPWドプラモードにおいては、被検体の断層画像上において、サンプルゲート位置や関心領域(Region of Interest(以下、「ROI」と称する))がユーザにより設定される。そして、かかるカラードプラモード、パワードプラモード又はPWドプラモードでは、被検体の当該サンプルゲート位置やROIからの超音波エコーを選択的に抽出し、これにより、被検体内の血流からの超音波エコー及び送信周波数からのドプラ偏移周波数を検出する。そして、血流速度は、超音波ビームのビーム方向と血流方向のなす交差角度に対応する角度補正値(以下、「角度補正値」と略称する)を考慮して、例えば、以下の式(1)を用いて、ドプラ偏移周波数から換算されることになる。
V = c/2cosθ × Fd/F0 …(1)
(但し、V:血流速度、F0:超音波ビームの送信周波数(または受信周波数)、Fd:ドプラ偏移周波数、c:生体内音速、θ:角度補正値)
【0005】
一般に、この種の超音波診断装置においては、ドプラ偏移周波数の検出精度を良好にするため、超音波ビームのビーム方向と血流方向のなす交差角度ができるだけ小さくなるように、ドプラモード実行前に、超音波ビームのステア角(超音波ビームのビーム方向の断層画像深度方向に対する角度を表す。以下同じ)をゼロ度(即ち、断層画像深度方向)から血管延在方向(即ち、血流方向)に沿った方向に変更する処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-010789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の超音波診断装置においては、熟練したユーザでなくとも超音波検査を実施し得るようにするため、可能な限り、ユーザの操作負荷を軽減する要請がある。
【0008】
かかる観点から、例えば、特許文献1には、異なる音線の方向(0°,+30°,-30°)でそれぞれカラードプラ画像を得て、それらのうちで最も画質の良いカラードプラ画像が得られた方向(+30°)に音線を向けるようにステア角を自動設定する手法が記載されている。
【0009】
しかしながら、断層画像に映る血管は、必ずしも特許文献1で想定しているように、長軸像(血管の長手方向の断面が撮像された血管画像を表す。以下同じ)であるわけではなく、短軸像(血管の短手方向の断面が撮像された血管画像を表す。以下同じ)の場合も存在する。
【0010】
図1Aは、血管の短軸像の一例を示す図であり、図1Bは、血管の長軸像の一例を示す図である。尚、図1A及び図1B中において、点線で囲んだ領域が血管の領域である。
【0011】
この点、特許文献1に記載の従来技術では、断層画像に映る血管の画像が短軸像の場合と長軸像の場合とで処理を変更することなく、ステア角を設定する構成となっている。しかしながら、断層画像に映る血管の画像が短軸像の場合には、ステア角を変更してもカラードプラ画像の画質に大きな差が出ないため、特許文献1に記載の従来技術では、不適切なステア角に設定してしまう場合がある。又、特許文献1に記載の従来技術では、ステア角を設定するために音線の方向を変えて異なる音線の方向で複数の二次元血流画像を生成しなければならず、設定までに時間がかかるという課題もある。
【0012】
特に、近年の超音波検査では、頸動脈の狭窄の観察等を目的として、短軸像の血管と長軸像の血管の両方の撮影が行われる場合がある。かかる超音波検査では、例えば、Bモード画像で血管の短軸像を描出し、対象血管上にカラードプラモードのROIを設定して、カラードプラモードで血流情報を描出し、狭窄の有無などを確認した後、ユーザが超音波プローブの角度を変更して、血管の長軸像で狭窄の箇所を描出し、狭窄箇所付近の血流量の観察や径の計測を行う。このような場合に、特許文献1に係る従来技術では、血管が短軸像に変化する度に、ステア角が不適切な角度に設定され、ユーザが、都度、手動で再設定を行う必要が生じるおそれがある。
【0013】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ドプラモード実行時のユーザの操作負荷を軽減し、且つ、信頼性の高い血流状態の測定を実施することを可能とする超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置であって、
前記断層画像に映る血管を検出する血管検出部と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する血管画像判定部と、
前記血管画像判定部の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定するステア角設定部と、
を備える超音波診断装置である。
【0015】
又、他の局面では、
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御方法であって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理と、
を有する制御方法である。
【0016】
又、他の局面では、
超音波の送受信により、被検体の断層画像を生成する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記断層画像に映る血管を検出する第1処理と、
前記断層画像の画像解析により、検出された前記血管の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する第2処理と、
前記第2処理の判定結果に基づいて、検出された前記血管の性状又は前記血管内の血流速度を測定する際に用いる超音波ビームのステア角を設定する第3処理である。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る超音波診断装置によれば、ドプラモード実行時のユーザの操作負荷を軽減し、且つ、信頼性の高い血流状態の測定を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】血管の短軸像の一例を示す図
図1B】血管の長軸像の一例を示す図
図2】超音波診断装置の外観の一例を示す図
図3】超音波診断装置の全体構成の一例を示す図
図4】超音波診断装置において、血流測定時に表示されるモニタ画面の一例を示す図
図5】ドプラパラメータ設定部の詳細構成の一例を示す図
図6】血管検出部が実行する処理の一例を示すフローチャート
図7】血管検出部が実行する処理の一例を模式的に説明する図
図8】血管検出部が参照する血管のテンプレート画像の一例を示す図
図9】血管画像判定部の判定処理の一例について、説明する図
図10A】血管画像判定部の判定処理の一例について、説明する図
図10B】血管画像判定部の判定処理の一例について、説明する図
図10C】血管画像判定部の判定処理の一例について、説明する図
図11】サンプルゲート設定部における、血管サイズを検出する処理の一例を模式的に説明する図
図12】ステア角設定部における、血管延在方向の算出処理の一例す図
図13A】ステア角設定部における、ステア角設定処理の一例を示す図
図13B】ステア角設定部における、ステア角設定処理の一例を示す図
図14】ドプラパラメータ設定部の動作の一例を示すフローチャート
図15】変形例1に係るドプラパラメータ設定部の構成を示す図
図16A】変形例1に係るROI設定部が設定するROIの一例を示す図
図16B】変形例1に係るROI設定部が設定するROIの一例を示す図
図17】変形例2に係る表示処理部が表示する表示用画像の一例を示す図
図18A】変形例3に係る表示処理部が表示するガイド画像の一例を示す図
図18B】変形例3に係る表示処理部が表示するガイド画像の一例を示す図
図19】変形例5に係る第2データ処理部の比較結果の通知態様の一例を示す図
図20】一般的な血管の狭窄度の測定方法について、説明する図
図21】変形例7に係るBステア設定部の構成の一例を示す図
図22A】変形例7に係るBステア設定部によるBステアの設定処理の一例を示す図
図22B】変形例7に係るBステア設定部によるBステアの設定処理の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
[超音波診断装置の構成]
以下、図2図4を参照して、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。
【0021】
図2は、超音波診断装置Aの外観の一例を示す図である。図3は、超音波診断装置Aの全体構成の一例を示す図である。
【0022】
図4は、超音波診断装置Aにおいて、血流測定時に表示されるモニタ画面の一例を示す図である。
【0023】
超音波診断装置Aは、被検体内の形状、性状又は動態を超音波画像として可視化し、画像診断するために用いられる。尚、本実施形態では、超音波診断装置Aが、Bモード動作とPWドプラモード動作を時分割で実行し、断層画像とドプラスペクトル画像を生成する態様について、説明する(図4を参照)。但し、本発明の超音波診断装置Aは、PWドプラモードに加えて、又は、PWドプラモードに代えて、カラードプラモード又はパワードプラモードを実装したものにも適用し得る。
【0024】
超音波診断装置Aは、図2に示すように、超音波診断装置本体100及び超音波プローブ200を備える。
【0025】
超音波プローブ200は、超音波ビーム(ここでは、1~30MHz程度)を被検体(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検体内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサーとして機能する。
【0026】
ユーザは、超音波プローブ200の超音波ビームの送受信面を被検体に接触させて超音波診断装置Aを動作させ、超音波診断を行う。尚、ここでは、超音波プローブ200を被検体の外側表面から被検体内部に超音波ビームを送信してその超音波エコーを受信するものとしているが、超音波プローブ200としては、消化管や血管などの内部や、体腔内などに挿入して用いるものであってもよい。又、超音波プローブ200には、コンベックスプローブ、リニアプローブ、セクタプローブ、又は三次元プローブ等の任意のものを適用することができる。
【0027】
超音波プローブ200は、例えば、マトリクス状に配設された複数の振動子(例えば、圧電素子)と、当該複数の振動子の駆動状態のオンオフを個別に又はブロック単位(以下、「チャンネル」と称する)で切替制御するためのチャンネル切替部(例えば、マルチプレクサ)を含んで構成される。
【0028】
超音波プローブ200の各振動子は、超音波診断装置本体100(送信部1)で発生された電圧パルスを超音波ビームに変換して被検体内へ送信し、被検体内で反射した超音波エコーを受信して電気信号(以下、「受信信号」と称する)に変換し、超音波診断装置本体100(受信部2)へ出力する。
【0029】
超音波診断装置本体100は、送信部1、受信部2、断層画像生成部3、ドプラ処理部4、表示処理部5、モニタ6、操作入力部7、及び、制御装置10を備えている。
【0030】
送信部1は、超音波プローブ200に対して駆動信号たる電圧パルスを送出する送信器である。送信部1は、例えば、高周波パルス発振器、パルス設定部等を含んで構成される(いずれも図示せず)。送信部1は、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、パルス設定部で設定した電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ200のチャンネルごとに送出する。
【0031】
送信部1は、超音波プローブ200の複数のチャンネルそれぞれにパルス設定部を有しており、複数のチャンネルごとに電圧パルスの電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングを設定可能になっている。例えば、送信部1は、複数のチャンネルに対して適切な遅延時間を設定することによって目標とする深度を変更したり、異なるパルス波形を発生させる(例えば、Bモードでは1波のパルス、PWドプラモードでは4波のパルスを送出する)。
【0032】
受信部2は、超音波プローブ200で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する受信器である。受信部2は、プリアンプ、AD変換部、受信ビームフォーマー、及び処理系統切替部を含んで構成される(いずれも図示せず)。
【0033】
受信部2は、プリアンプにて、チャンネルごとに微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、AD変換部にて、受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、受信部2は、受信ビームフォーマーにて、各チャンネルの受信信号を整相加算することで複数チャンネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとする。又、受信部2は、処理系統切替部にて、受信ビームフォーマーで生成された受信信号を送信する先を切り替え制御し、実行する動作モードに応じて、断層画像生成部3又はドプラ処理部4に一方に出力する。
【0034】
断層画像生成部3は、Bモード動作の際に受信部2から受信信号を取得して、被検体の内部の断層画像(Bモード画像とも称される)を生成する。
【0035】
断層画像生成部3は、例えば、超音波プローブ200が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度(Intensity)を時間的に連続してラインメモリに蓄積する。そして、断層画像生成部3は、超音波プローブ200からの超音波ビームが被検体内を走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度をラインメモリに順次蓄積し、フレーム単位となる二次元データを生成する。そして、断層画像生成部3は、被検体の内部の各位置で検出される超音波エコーの信号強度を輝度値に変換することによって、断層画像を生成する。
【0036】
断層画像生成部3は、例えば、包絡線検波回路、ダイナミックフィルター及び対数圧縮回路を含んで構成される。包絡線検波回路は、受信信号を包絡線検波して、信号強度を検出する。対数圧縮回路は、包絡線検波回路で検出された受信信号の信号強度に対して対数圧縮を行う。ダイナミックフィルターは、深度に応じて周波数特性を変化させたバンドパスフィルターであって、受信信号に含まれるノイズ成分を除去する。
【0037】
ドプラ処理部4は、PWドプラモード動作、カラードプラモード動作又はパワードプラモード動作の際に受信部2から受信信号を取得して、血流からの超音波エコーの送信周波数に対するドプラ偏移周波数を検出する。
【0038】
例えば、ドプラ処理部4は、PWドプラモード動作においては、超音波プローブ200が、パルス繰り返し周波数に従って一定間隔でパルス状の超音波ビームを送信している際に、当該パルス繰り返し周波数に同期して超音波エコーに係る受信信号をサンプリングする。そして、ドプラ処理部4は、例えば、同じサンプルゲート位置からのn番目の超音波ビームに係る超音波エコーとn+1番目の超音波ビームに係る超音波エコーの位相差に基づいて、ドプラ偏移周波数を検出する。
【0039】
ドプラ処理部4は、例えば、直交検波部、ローパスフィルター、レンジゲート、及びFFT解析部を含んで構成される(いずれも図示せず)。直交検波部は、受信信号に対して、送信した超音波ビームと同相の参照信号及び送信した超音波ビームとπ/2だけ位相の異なる参照信号をミキシングして、直交検波信号を生成する。ローパスフィルターは、直交検波信号の高周波成分を除去して、ドプラ偏移周波数に係る受信信号を生成する。レンジゲートは、サンプルゲート位置からの超音波エコーのみを取得する。FFT解析部は、レンジゲートから出力された受信信号の時間的変化に基づいて、超音波エコーのドプラ偏移周波数を算出する。
【0040】
表示処理部5は、断層画像生成部3から出力される断層画像、及び、ドプラ処理部4から出力される超音波エコーのドプラ偏移周波数を取得して、モニタ6に表示させる表示用画像を生成する(図4を参照)。
【0041】
表示処理部5は、流速算出部5a、及び、グラフィック処理部5bを有している。
【0042】
流速算出部5aは、PWドプラモード動作、カラードプラモード動作又はパワードプラモード動作の際に、サンプルゲート位置又はROIにおける血流速度を算出する。流速算出部5aは、例えば、上記した式(1)を用いて、ドプラ処理部4から出力される超音波エコーのドプラ偏移周波数から、血流速度を算出する。このときの角度補正値(超音波ビームのビーム方向と血管の延在方向とがなす交差角度に対応した補正値)θは、制御装置10(ドプラパラメータ設定部12)からの指令により設定される。
【0043】
流速算出部5aは、PWドプラモード動作のときには、例えば、図4に示すように、時系列の血流速度の分布を表すドプラスペクトル画像(図4のT2)を生成する。ドプラスペクトル画像は、時間を横軸とし、血流速度を縦軸とした画像である。ドプラスペクトル画像においては、例えば、各時点の血流速度は、一本のラインのような形態で表現され、血流速度毎(即ち、周波数毎)のパワーが画素の輝度の大きさによって表現される(図4中では、輝度の変化の図示を省略している)。尚、流速算出部5aは、カラードプラモード動作又はパワードプラモード動作のときには、ROIの各位置における血流速度を画像化したカラードプラ画像を生成する(図示せず)。
【0044】
グラフィック処理部5bは、断層画像生成部3から出力される断層画像に対して、座標変換処理やデータ補間処理等の所定の画像処理を施す。そして、グラフィック処理部5bは、画像処理を施した断層画像とドプラスペクトル画像とを画像合成し、表示用画像を生成する。
【0045】
又、グラフィック処理部5bは、制御装置10(ここでは、ドプラパラメータ設定部12)にて設定されたサンプルゲート位置、サンプルゲートサイズ、超音波ビームのステア角、及び、角度補正値等に係る情報を取得しており、ユーザが、これらの情報を認識し得るように、表示用画像内に、これらの情報に対応する画像(例えば、これらの数値、及びマーク等)を埋め込む。尚、グラフィック処理部5bは、例えば、サンプルゲート位置、サンプルゲートサイズ、及び、超音波ビームのステア角、血流の向き(血管の延在方向)を示す画像を、断層画像に重畳するように表示する。
【0046】
図4のモニタ画面は、Bモード動作とPWドプラモード動作とが並列に実行されている際に、グラフィック処理部5bにて生成された表示用画像である。図4中のTallは表示用画像の全体領域、T1は断層画像(T1Xは血流領域、T1Yは組織領域)、T1aはPWドプラモード動作時の超音波ビームのステア角、T1bはPWドプラモード動作時の超音波ビームのサンプルゲート位置、T2はドプラスペクトル画像、及び、Tθは角度補正値を示す角度補正値表示ボックスを表している。
【0047】
尚、断層画像生成部3、ドプラ処理部4、及び表示処理部5は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等で構成されたデジタル演算回路によって実現される。但し、これらの構成は、種々に変形可能であり、例えば、その一部又は全部がハードウェア回路によって実現されてもよいし、プログラムに従った演算処理によって実現されてもよい。
【0048】
モニタ6は、表示処理部5に生成された表示用画像を表示するディスプレイであって、例えば、液晶ディスプレイにて構成される。
【0049】
操作入力部7は、ユーザが入力操作を行うためのユーザインターフェイスであり、例えば、押しボタンスイッチ、キーボード、及びマウス等で構成される。操作入力部7は、ユーザが行った入力操作を操作信号に変換し、制御装置10に入力する。
【0050】
制御装置10は、超音波プローブ200、送信部1、受信部2、断層画像生成部3、ドプラ処理部4、表示処理部5、モニタ6、及び、操作入力部7と信号を相互にやり取りし、これらを統括制御する。尚、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。そして、制御装置10の各機能は、CPUがROMやRAMに格納された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、制御装置10の機能の一部又は全部は、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア回路、又はこれらの組み合わせによっても実現できることは勿論である。
【0051】
制御装置10は、送受信制御部11、及び、ドプラパラメータ設定部12を備えている。
【0052】
送受信制御部11は、超音波プローブ200のチャンネル切替部(図示せず)を制御して、複数のチャンネルのうち、駆動対象のチャンネルを選択的に決定する。そして、送受信制御部11は、送信部1及び受信部2それぞれを制御して、駆動対象のチャンネルに対して超音波の送信及び受信を実行させる。
【0053】
送受信制御部11は、Bモード動作の際(即ち、断層画像を生成する際)には、複数のチャンネルのうち駆動対象のチャンネルを、走査方向に沿って順に駆動することによって、超音波プローブ200にて被検体内を超音波走査させる。
【0054】
送受信制御部11は、PWドプラモード動作、カラードプラモード動作又はパワードプラモード動作の際(即ち、血流速度を測定する際)には、超音波プローブ200から、所定の角度で、被検体内のサンプルゲート位置又はROIに対して超音波ビームが送信されるように、超音波プローブ200に設けられた複数の振動子を選択的に駆動させる。又、送受信制御部11は、この際、超音波プローブ200から、所定のパルス繰り返し周波数で、パルス状の超音波ビーム(バースト波)が繰り返し送信されるように送信部1を制御し、且つ、当該超音波ビームの超音波エコーを受信するように受信部2を制御する。
【0055】
送受信制御部11は、基本的には、操作入力部7を介してユーザに設定された超音波プローブ200の種類(例えば、コンペックス型、セクタ型、又は、リニア型等)、被検体内の撮像対象の深度、及び、撮像モード(例えば、Bモード、PWドプラモード、カラードプラモード、又は、パワードプラモード)等に基づいて、超音波ビームの送受信条件を決定する。
【0056】
但し、送受信制御部11は、PWドプラモード動作の際には、ドプラパラメータ設定部12に設定されたサンプルゲート位置、サンプルゲートのサイズ、及び、超音波ビームのステア角に基づいて、超音波ビームの送受信条件を決定する。尚、送受信制御部11は、例えば、PWドプラモードで使用する駆動対象のチャンネル番号、及び各チャンネルにおける遅延時間等を適宜に設定することで、ドプラパラメータ設定部12に設定されたサンプルゲート位置、サンプルゲートのサイズ、及び、超音波ビームのステア角を実現する。
【0057】
ドプラパラメータ設定部12は、PWドプラモード動作、カラードプラモード動作又はパワードプラモード動作の際(本実施形態では、PWドプラモード動作)、被検体内の血管を流れる血流の速度を高精度に検出し得るように、各種パラメータを設定する。ドプラパラメータ設定部12は、断層画像の画像情報に基づいて、自動的に、サンプルゲート位置、サンプルゲートのサイズ、及び、超音波ビームのステア角を設定する。
【0058】
但し、ドプラパラメータ設定部12は、自動的に、サンプルゲート位置、サンプルゲートのサイズ、及び、超音波ビームのステア角を設定可能とする機能と共に、ユーザの操作により、手動で、これらを設定可能とする機能を有していてもよい。
【0059】
[ドプラパラメータ設定部12の詳細構成]
次に、図5図10を参照して、ドプラパラメータ設定部12の詳細構成について、説明する。尚、ここでは、PWドプラモードを行う際における、ドプラパラメータ設定部12の測定領域等の設定処理について説明するが、ドプラパラメータ設定部12は、同様の処理にて、カラードプラモード及びパワードプラモードのROIの設定処理及びステア角の設定処理を行うことも可能である。
【0060】
図5は、ドプラパラメータ設定部12の詳細構成の一例を示す図である。
【0061】
ドプラパラメータ設定部12は、血管検出部12a、血管画像判定部12b、サンプルゲート設定部12c、及び、ステア角設定部12dを備えている。
【0062】
<血管検出部12a>
血管検出部12aは、断層画像生成部3にて生成された断層画像R1を取得して、当該断層画像R1の画像情報に基づいて、当該断層画像R1内に映る血管を検出する。血管検出部12aは、予めメモリ(図示せず)に記憶された血管のパターンのデータ(以下、「血管のテンプレート画像」とも称する)を用いて、例えば、公知のテンプレートマッチングにより、断層画像R1内に映る血管を検出する。
【0063】
そして、血管検出部12aは、例えば、断層画像R1内で最も鮮明に血管が映る領域を、ドプラ処理の対象のサンプルゲート位置(即ち、サンプルゲートの中心位置)として設定する。
【0064】
図6は、血管検出部12aが実行する処理の一例を示すフローチャートである。図7は、血管検出部12aが実行する処理の一例を模式的に説明する図である。図8は、血管検出部12aが参照する血管のテンプレート画像Rwの一例を示す図である。
【0065】
まず、ステップS1において、血管検出部12aは、血管のテンプレート画像Rwを読み出す。そして、血管検出部12aは、例えば、断層画像R1内をラスタスキャンするように、断層画像R1内にテンプレート画像Rwと同一サイズ(例えば、100ピクセル×100ピクセル)の比較対象の画像領域(以下、「比較対象領域」と称する)を順番に設定し、当該比較対象領域毎に、テンプレート画像Rwとのマッチ度(即ち、類似度)を算出する。そして、血管検出部12aは、断層画像R1内の各座標についてテンプレート画像Rwとのマッチ度を算出する。
【0066】
これによって、断層画像R1内で血管が鮮明に映る領域を探索する。
【0067】
尚、血管検出部12aが参照する血管のテンプレート画像Rwとしては、例えば、図8のように、血管領域Rwaと組織領域Rwbとを有し、血管領域Rwaが画像中央領域に横方向に延在し、血管領域Rwaを挟んで上下に組織領域Rwbが存在する画像が用いられる。
【0068】
次に、ステップS2において、血管検出部12aは、続くステップS3の縮小処理を2段階実行したか否かを判定する。そして、ステップS3の縮小処理を2段階実行している場合(ステップS2:YES)、ステップS4に処理を進め、ステップS3の縮小処理を2段階実行していない場合、(ステップS2:NO)、ステップS3に処理を進める。
【0069】
次に、ステップS3において、血管検出部12aは、断層画像R1を所定倍率(例えば、0.9倍)だけ縮小して、縮小画像を生成する。そして、血管検出部12aは、ステップS1に戻って、当該縮小画像に対して、同様に、血管のテンプレート画像Rwを用いて、テンプレートマッチングを行い、当該縮小画像の各座標についてマッチ度を算出する。尚、この際には、血管のテンプレート画像Rwのサイズについては変更せずに、元の断層画像R1に適用した血管のテンプレートを用いる。
【0070】
尚、この縮小画像を用いた探索処理は、断層画像R1に映る血管のサイズがテンプレート画像Rwと異なる場合を考慮した処理である。
【0071】
次に、ステップS4において、血管検出部12aは、断層画像R1の各座標、縮小画像の各座標、及び、再縮小画像(2段階縮小した断層画像R1)の各座標のうちから、マッチ度が最大の座標を選択する。
【0072】
血管検出部12aは、かかる処理により、断層画像R1内で血管が最も鮮明に映る領域を探索し、当該領域(即ち、中心座標)を、ドプラモードで測定すべき対象の血管Rdの位置として出力する。
【0073】
ここで、血管検出部12aが用いる血管のテンプレート画像Rwとしては、例えば、図8のように、典型的には血管の長軸像に類似する画像であるが、かかるテンプレート画像Rwは、部分的には血管の短軸像にも類似する。そのため、血管検出部12aの処理では、断層画像R1に映る血管Rd1の画像が長軸像である場合に限らず、断層画像R1に映る血管Rd1の画像が短軸像である場合にも、断層画像R1に映る血管を検出し得るようになっている。
【0074】
尚、血管検出部12aが血管を検出する手法は、任意であって、機械学習によって学習済みの識別器(例えば、CNN(Convolutional Neural Network))等が用いられてもよい。
【0075】
<血管画像判定部12b>
血管画像判定部12bは、断層画像R1の画像解析を行い、血管検出部12aにて検出された血管Rd1(以下、単に「血管Rd1」と称する)の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する。血管画像判定部12bは、例えば、血管Rd1の検出位置及びその周辺位置における、断層画像とテンプレート画像とのマッチ度の分布に基づいて、血管Rd1の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判定する。
【0076】
図9図10A図10Cは、血管画像判定部12bの判定処理の一例について、説明する図である。
【0077】
図9は、血管Rd1の画像が短軸像である場合、及び、血管Rd1の画像が長軸像である場合それぞれに得られる、マッチ度(横軸)と長軸度(縦軸)の分布を表している。尚、図9には、これらの分布から特定される、血管Rd1の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかを判別するための判別境界も示している。
【0078】
図9に示す「マッチ度」は、血管Rd1の検出位置におけるマッチ度を意味する。又、図9に示す「長軸度」は、血管Rd1の画像の長軸らしさの度合いを意味し、血管Rd1の検出位置及びその周辺位置における断層画像とテンプレート画像とのマッチ度の分布により求められる。
【0079】
図10A図10Bは、血管画像判定部12bにおける、血管Rd1の長軸度を算出する方法の一例を示す図である。
【0080】
血管画像判定部12bは、例えば、血管Rd1の検出位置を基準として、左右の所定の範囲にテンプレート画像(例えば、図8に示したテンプレート画像Rw)を動かして、血管Rd1の検出位置の左右の所定の範囲の各位置のマッチ度を算出する。そして、血管画像判定部12bは、血管Rd1の検出位置のマッチ度と、その左右の所定の範囲の各位置のマッチ度の平均値を「長軸度」とする。
【0081】
ここで、血管Rd1の画像が長軸像である場合には、血管Rd1の検出位置の左右の位置においても、高いマッチ度が得られるため、長軸度は高い値として算出される(図10Aを参照)。一方、血管Rd1の画像が短軸像である場合には、血管Rd1の検出位置の左右の位置においては、マッチ度は低くなるため、長軸度は低い値として算出される(図10Bを参照)。
【0082】
図10Cは、血管画像判定部12bにおける、血管Rd1の長軸度を算出する他の一例を示す図である。血管画像判定部12bは、図10Cに示すように、血管Rd1の検出位置の周囲の各位置のマッチ度の分布から、血管Rd1の延在方向を推定し、血管Rd1の検出位置から、当該延在方向に沿った左右の所定の範囲の各位置のマッチ度の平均値を「長軸度」としてもよい。
【0083】
尚、上の説明では血管検出部12aで検出した血管Rd1の検出位置にもとづいて長軸度を算出したが、以下のようにしてもよい。すなわち、断層画像R1の原画像、断層画像R1の縮小画像、及び断層画像R1の再縮小画像(図6を参照)のそれぞれでマッチ度が最大の座標に対して上記と同様の方法により長軸度を求める。そして、断層画像R1の原画像、断層画像R1の縮小画像、断層画像R1の再縮小画像のうちから長軸度が最大のものを選択し、その座標を長軸血管の検出位置とする。このようにして求められた長軸度と、図6のフローチャートのステップ4で決定したマッチ度とを用いて図9の判定を行う。長軸像と判定された場合は、前記の長軸血管の検出位置を血管Rd1の検出位置とする。短軸像と判定された場合は、ステップ4で選択された座標を血管Rd1の検出位置とする。このように断層画像R1の原画像、断層画像R1の縮小画像、及び断層画像R1の再縮小画像のそれぞれで長軸度を算出して最大となるものを選択することにより、断層画像R1が長軸像である場合に、より長軸らしさの高い座標が血管Rd1の検出位置として求められる。
【0084】
又、その他、血管画像判定部12bは、長軸度を算出する際、血管検出部12aと同様のテンプレートマッチングの処理を再度実行する態様を示したが、血管画像判定部12bは、血管検出部12aにて算出された断層画像の各位置のマッチ度を参照して、長軸度を算出してもよい。
【0085】
このように、血管Rd1の長軸度を算出することで、血管Rd1の画像が短軸像であるか、又は長軸像であるかの判別が可能となる。特に、図9に示すように、マッチ度と長軸度とを基準とした2軸の分布グラフを用いることで、血管Rd1の検出位置における画像の局所的特徴と、血管Rd1の検出位置の周囲における画像の大局的特徴と、の2つの視点から、血管Rd1の画像が短軸像であるか、又は長軸像であるかの判別が可能となるため、当該判別処理は、より容易となる。
【0086】
図9の分布データは、例えば、予め実験やシミュレーション等により求められ、制御装置10の記憶部(例えば、ROM)に格納されている。尚、判別処理を行うために用いる分布データとしては、マッチ度と長軸度との2軸で評価可能なものであればよく、正規化処理等(例えば、血管Rd1の検出位置のマッチ度とその左右の所定の範囲の各位置のマッチ度の平均値を、血管Rd1の検出位置のマッチ度で除算した値を、長軸度として用いる)が施されたものが用いられてもよい。
【0087】
<サンプルゲート設定部12c>
サンプルゲート設定部12cは、血管Rd1の検出位置を中心として、PWドプラモードを実行する際のサンプルゲートのサイズ(即ち、レンジゲート)を設定する。
【0088】
具体的には、サンプルゲート設定部12cは、まず、血管Rd1の検出位置を、サンプルゲートの中心位置として設定する。次に、サンプルゲート設定部12cは、血管Rd1の検出位置における血管サイズから、サンプルゲートのサイズを設定する。
【0089】
図11は、サンプルゲート設定部12cにおける、血管サイズを検出する処理の一例を模式的に説明する図である。
【0090】
サンプルゲート設定部12cは、例えば、血管Rd1の検出位置の画像領域において、エッジが強く、且つ、当該エッジが滑らかに連続する経路を血管と血管外組織との境界とみなして、経路探索を行う。具体的には、サンプルゲート設定部12cは、境界検出問題を、コストが最小となる経路を探す経路探索問題に置き換え、エッジが小さい方向及び経路が滑らかではない方向をそれぞれコストが大きくなる方向として、血管Rd1の検出位置の画像領域の左端側(図11では、Rda)からコストが最小となる経路を探索する。これによって、血管の上部側壁部と血管外組織との境界位置、及び、血管の下部側壁部と血管外組織との境界位置を検出する。そして、サンプルゲート設定部12cは、血管の上部側壁部の境界位置と血管の下部側壁部の境界位置の間の幅(例えば、横方向の各位置で算出される血管幅の最大値)を、サンプルゲートのサイズとして、設定する。
【0091】
尚、本実施形態では、サンプルゲート設定部12cは、血管Rd1の画像が短軸像である場合と、血管Rd1の画像が長軸像である場合とで、同様の手法により、サンプルゲートのサイズを設定する態様を示している。但し、サンプルゲート設定部12cは、血管Rd1の画像が短軸像である場合と、血管Rd1の画像が長軸像である場合とで、異なる手法を用いて、サンプルゲートのサイズを設定してもよい。例えば、サンプルゲート設定部12cは、血管Rd1の画像が短軸像である場合には、横方向の各位置で算出される血管幅の最大値を、サンプルゲートのサイズとして、設定し、血管Rd1の画像が長軸像である場合には、横方向の各位置で算出される血管幅の平均値を、サンプルゲートのサイズとして、設定してもよい。これによって、サンプルゲートのサイズを、より適切な値に設定することが可能である。
【0092】
<ステア角設定部12d>
ステア角設定部12dは、血管画像判定部12bの判定結果に基づいて、血管Rd1の検出位置における血流状態を測定する際に用いる超音波ビーム(ここでは、PWドプラモード実行時に用いる超音波ビーム)のステア角を設定する。
【0093】
具体的には、ステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が短軸像である場合、超音波ビームのステア角をゼロ度に設定する。又、ステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が長軸像である場合、超音波ビームのステア角を、血管Rd1の断層画像内における延在方向に応じた角度に設定する。
【0094】
尚、ステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が長軸像である場合には、まず、血管Rd1の延在方向を算出し、その延在方向を参照して、超音波ビームのステア角を設定することになる。
【0095】
図12は、ステア角設定部12dにおける、血管延在方向の算出処理の一例を示す図である。ステア角設定部12dは、例えば、図11に示したサンプルゲート設定部12cの処理で特定された、血管の上部側壁部の境界の延在方向と血管の下部側壁部の境界の延在方向との平均値を、血管Rd1の延在方向として算出する。尚、図12では、断層画像R1の走査方向をX軸、深度方向をY軸として、XY座標系の傾き角として、血管Rd1の延在方向を算出している。
【0096】
図13A図13Bは、ステア角設定部12dにおける、ステア角設定処理の一例を示す図である。尚、図13A図13BのF1a、F1bは、ステア角設定部12dに設定された超音波ビームのビーム方向を表している。
【0097】
通常、血管Rd1の画像が短軸像である場合、超音波ビームのステア角をゼロ度(即ち、断層画像深度方向)からゼロ度よりも大きい角度に変更したところで、超音波ビームのビーム方向と血流方向のなす交差角度に変化はない。むしろ、短軸像として映る血管に対して超音波ビームを送信する際、ステア角をゼロ度からゼロ度よりも大きい変更した場合には、超音波ビームが血管壁にて散乱反射して、SN比が低下するおそれもある。
【0098】
そこで、本実施形態に係るステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が短軸像である場合、超音波ビームのステア角をゼロ度に設定する(図13Aを参照)。
【0099】
一方、血管Rd1の画像が長軸像である場合、上記した式(1)からも分かるように、超音波ビームのビーム方向と血管Rd1の延在方向(即ち、血流方向)のなす交差角度が大きくなるほど、血流速度の検出誤差が大きくなる。
【0100】
そこで、本実施形態に係るステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が長軸像である場合、超音波ビームのビーム方向と血管Rd1の延在方向(即ち、血流方向)とのなす交差角度が可能な限り小さくなるように、超音波ビームのステア角を設定する(図13Bを参照)。つまり、ステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が長軸像である場合、理想的には、超音波ビームのビーム方向が血管Rd1の延在方向と平行になるように、超音波ビームのステア角を設定する。
【0101】
但し、実際には、超音波ビームのステア角には限界角度(例えば、30度)が存在するため、血管が断層画像の水平方向(即ち、スキャン方向)に延在するような場合には、ステア角設定部12dは、超音波ビームのステア角を当該限界角度に設定する。
【0102】
又、ステア角設定部12dは、超音波ビームのステア角を設定した後、当該ステア角に応じた角度補正値を設定する。具体的には、ステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が長軸像である場合、設定したステア角のときの、「超音波ビームのビーム方向と血管Rd1の延在方向とのなす交差角度に対応する値」を、角度補正値として設定する。ステア角設定部12dは、例えば、超音波ビームのビーム方向と血管Rd1の延在方向とのなす交差角度がゼロ度であれば、角度補正値をゼロ度に設定し、超音波ビームのビーム方向と血管Rd1の延在方向とのなす交差角度がステア角の限界角度であれば、「90度-限界角度の値」を角度補正値に設定する。一方、ステア角設定部12dは、血管Rd1の画像が短軸像である場合、例えば、「0度」を、角度補正値として設定する。
【0103】
尚、血管検出部12a、血管画像判定部12b、サンプルゲート設定部12c、及び、ステア角設定部12dに設定されたサンプルゲート位置、血管Rd1の画像の長軸短軸の判定結果、サンプルゲートのサイズ、超音波ビームのステア角、及び、角度補正値に係る情報は、PWドプラモード動作の際の超音波ビームの送受信条件として、表示処理部5及び送受信制御部11に出力される。
【0104】
<ドプラパラメータ設定部12の動作>
図14は、ドプラパラメータ設定部12の動作の一例を示すフローチャートである。図14に示すフローチャートは、例えば、ドプラパラメータ設定部12が、BモードからPWドプラモードに撮像モードが切り替えられるタイミングで、ドプラモード実行時のドプラパラメータを自動設定する処理を示している。
【0105】
ステップS11において、まず、ドプラパラメータ設定部12は、断層画像生成部3にて生成された断層画像R1を取得して、断層画像R1内に映る血管Rd1を検出する。尚、このステップS11では、ドプラパラメータ設定部12は、例えば、図6に示すフローチャートに従って、テンプレートマッチングにより、断層画像R1内に映る血管Rd1を検出する。
【0106】
ステップS12において、ドプラパラメータ設定部12は、ステップS11において検出された血管Rd1の画像が、長軸像か否かを判定する。尚、このステップS12において、ドプラパラメータ設定部12は、例えば、血管Rd1の血管テンプレート画像とのマッチ度、及び、血管Rd1の長軸度に基づいて、血管Rd1の画像が、長軸像か否かを判定する。そして、ドプラパラメータ設定部12は、血管Rd1の画像が、長軸像である場合(S12:YES)、ステップS13に処理を進め、血管Rd1の画像に対して長軸像フラグを設定した後(ステップS13)、ステップS15に処理を進める。一方、ドプラパラメータ設定部12は、血管Rd1の画像が、長軸像ではない場合(S12:NO)、ステップS14に処理を進め、血管Rd1の画像に対して短軸像フラグを設定した後(ステップS14)、ステップS15に処理を進める。
【0107】
ステップS15において、ドプラパラメータ設定部12は、サンプルゲートを設定する。尚、このステップS15では、ドプラパラメータ設定部12は、例えば、図11に示した手法で、血管Rd1の幅を検出し、当該血管Rd1の幅に対応するサンプルゲートを設定する。
【0108】
ステップS16において、ドプラパラメータ設定部12は、ステア角を設定する。尚、このステップS16では、ドプラパラメータ設定部12は、例えば、血管Rd1の画像が、短軸像である場合には、ステア角をゼロ度に設定し、血管Rd1の画像が、長軸像である場合には、超音波ビームと血管Rd1の延在方向の交差角度が可能な限り小さくなるように、ステア角を設定する。
【0109】
以上のような一連の処理によって、ドプラパラメータ設定部12は、ドプラモード実行時のドプラパラメータの自動設定を行う。
【0110】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aによれば、断層画像に映る血管が長軸像に該当するか、又は短軸像に該当するかを判別した上で、適切に、ステア角を自動設定することが可能である。これによって、ドプラモード実行時のユーザの操作負荷を軽減し、且つ、信頼性の高い血流状態の測定を実施することが可能となる。
【0111】
(変形例1)
図15は、変形例1に係るドプラパラメータ設定部12の構成を示す図である。変形例1に係るドプラパラメータ設定部12は、カラードプラモードを実行する際に機能する設定部であり、サンプルゲート設定部12cに代えて、ROI設定部12caが設けられている点で、図5に示したドプラパラメータ設定部12と相違する。
【0112】
ROI設定部12caは、血管検出部12aにて検出された血管Rd1の検出位置を中心として、カラードプラモードを実行する際に測定対象とするROIを設定する。
【0113】
図16A図16Bは、ROI設定部12caが設定するROIの一例を示す図である。図16Aは、血管Rd1が短軸像の場合に、ROI設定部12caが設定するROI(図16Aの点線領域)を示し、図16Bは、血管Rd1が長軸像の場合に、ROI設定部12caが設定するROI(図16Bの点線領域)を示している。尚、図16Bで、ROIが平行四辺形の領域になっているのは、血管Rd1が長軸像の場合には、超音波ビームにステア角が設定されるためである。
【0114】
まず、ROI設定部12caは、例えば、図11に示した手法により、血管Rd1の検出位置における血管サイズを検出する。次に、ROI設定部12caは、血管Rd1の検出位置における血管サイズを、ROIの深度方向の範囲として設定する。次に、ROI設定部12caは、ROIの走査方向の範囲を設定する。
【0115】
ここで、ROIの走査方向の範囲については、ROI設定部12caは、血管Rd1の画像が短軸像であるか、長軸像であるかによって、その設定方法を変更してもよい。具体的には、ROI設定部12caは、血管Rd1の画像が長軸像である場合には、予め設定された範囲を、ROIの走査方向の範囲として設定し、一方、血管Rd1の画像が短軸像である場合には、関心領域の深度方向の範囲と同一のサイズを、ROIの走査方向の範囲として設定してもよい。これは、血管Rd1の画像が短軸像である場合には、血管Rd1は、略円形状に観察されるためである。
【0116】
なお、図16A図16Bでは、血管Rd1の血管サイズを、ROIの深度方向の範囲として設定した場合を示しているが、あらかじめ設定されたオフセット値を加え、血管Rd1の血管サイズより大きい範囲が設定できるようにしてもよい。又、その他、ROIの範囲は、血管Rd1の検出位置を中心としてあらかじめ規定されたサイズに設定されてもよい。
【0117】
以上のように、変形例1に係る超音波診断装置Aによれば、カラードプラモード実行時にも、適切に、ドプラパラメータ(ROI、及びステア角等)を設定することが可能である。
【0118】
尚、ここでは、超音波診断装置Aが、カラードプラモードを実行する機能を有する場合のドプラパラメータ設定部12の構成について説明したが、超音波診断装置Aが、パワードプラモードを実行する機能を有する場合のドプラパラメータ設定部12の構成についても、同様の構成により実現可能である。
【0119】
(変形例2)
表示処理部5は、表示用画像Tall内に、血管画像判定部12bの判定結果を表示してもよい。
【0120】
図17は、変形例2に係る表示処理部5が表示する表示用画像Tallの一例を示す図である。変形例2に係る表示処理部5は、ドプラパラメータ設定部12から、血管Rd1が長軸像であるか、短軸像であるかについての判定結果を取得し、当該判定結果に対応する内容Tmを、表示用画像Tall内に表示する構成となっている。
【0121】
このように、表示用画像Tall内に、血管画像判定部12bの判定結果を表示することによって、現在測定対象となっている血管が長軸像であるか、短軸像であるかについて、ユーザに容易に認識させることが可能である。
【0122】
以上のように、変形例2に係る超音波診断装置Aによれば、血流状態を超音波検査する際の利便性を、より向上することが可能である。
【0123】
(変形例3)
表示処理部5は、血管Rd1の検出位置及び延在方向を示すガイド画像T1gを、断層画像R1(ここでは、図4のT1領域に表示される断層画像)に重畳して表示してもよい。
【0124】
一般に、超音波診断装置Aは、被検体である患者の体内に穿刺針を挿入して組織や体液を採取して生体組織を診断する場合や、穿刺針を用いて治療を行う場合に用いられることがある。これらの診断又は治療において、ユーザ(例えば、医師)は、超音波診断装置Aにより得られる断層画像を見て、穿刺針の位置と穿刺部位(ターゲット)の位置を確認しながら穿刺を行う。
【0125】
変形例3に係る表示処理部5は、超音波診断装置Aのかかる利用態様を考慮して、ガイド画像T1gにて、血管Rd1の検出位置及び延在方向を示し、ユーザの穿刺針刺入作業を支援する。
【0126】
図18A図18Bは、変形例3に係る表示処理部5が表示するガイド画像T1gの一例を示す図であり、図18Aは、断層画像R1に検出された血管Rd1が短軸像である場合に表示するガイド画像T1g、図18Bは、断層画像R1に検出された血管Rd1が長軸像である場合に表示するガイド画像T1gを示している。尚、図18A図18Bは、いずれも、血管内に穿刺針R1sが挿入された状態の断層画像を表す。
【0127】
ここで、変形例3に係る表示処理部5は、図18A図18Bに示すように、血管Rd1の画像が短軸像又は長軸像のいずれに該当するかによって、ガイド画像T1gの画像タイプを変更する。具体的には、表示処理部5は、例えば、血管Rd1の画像が短軸像の場合、血管Rd1の短手断面の中心位置を識別し得るような形状(図18Aでは、矩形状)のガイド画像T1gを表示する。又、表示処理部5は、例えば、血管Rd1の画像が長軸像の場合、血管Rd1の長手断面の血管中心の延在方向を識別し得るような形状(図18Bでは、線形状)のガイド画像T1gを表示する。
【0128】
尚、表示処理部5は、例えば、ドプラパラメータ設定部12から出力される血管Rd1の位置、血管Rd1の画像の長軸短軸の判定結果、及び、血管Rd1の延在方向の情報から、ガイド画像T1gの画像タイプを決定するとともに、ガイド画像T1gの表示位置を決定して、図18A図18Bに示すようなガイド画像T1gを表示する。
【0129】
これによって、ユーザは、ガイド画像T1gを視認することで、容易に、穿刺針R1sの刺入方向を把握することが可能である。
【0130】
以上のように、変形例3に係る超音波診断装置Aによれば、血流状態を超音波検査する際の利便性を、より向上することが可能である。
【0131】
(変形例4)
超音波診断装置A(例えば、制御装置10)は、血管画像判定部12bの判定結果を、断層画像R1と関連付けてメモリに格納する第1データ処理部(図示せず)を有していてもよい。
【0132】
第1データ処理部は、例えば、ドプラパラメータ設定部12から、血管Rd1が長軸像であるか、短軸像であるかについての判定結果を取得する。そして、第1データ処理部は、例えば、当該判定結果を、断層画像R1と関連付け、外部記憶装置(例えば、直前数分間に取得された複数のフレーム画像を動画再生可能に一時的に記憶するシネメモリ)に格納する。尚、このとき、第1データ処理部が、血管画像判定部12bの判定結果を関連付ける対象の断層画像は、断層画像生成部3に生成されたローデータとしての断層画像R1であってもよいし、表示処理部5に生成された断層画像R1が埋め込まれた表示用画像であってもよい。
【0133】
これによって、超音波検査終了後、ユーザが、外部記憶装置から所望の断層画像を検索して閲覧する際の検索フラグとすることができる。
【0134】
以上のように、変形例4に係る超音波診断装置Aによれば、血流状態を超音波検査する際の利便性を、より向上することが可能である。
【0135】
(変形例5)
超音波診断装置A(例えば、制御装置10)は、血管画像判定部12bの判定結果の時間的変化を監視し、血管画像判定部12bの判定結果が変化した場合、その変化の前後に検出された短軸像及び長軸像それぞれに係る血管Rd1の血管サイズを比較して、その比較結果をユーザに通知する第2データ処理部(図示せず)を有していてもよい。
【0136】
上記したように、超音波診断装置Aは、同一箇所の血管を、短軸像及び長軸像それぞれにて観察した後に、長軸像にて血流量を計測する。この時、検査者は短軸像にて観察あるいは計測した血管径と長軸像にて計測した血管径が同一であるかを確認し、超音波ビームが血管中心を通っているか否かを判断する。したがって、短軸像における血管径と長軸像における血管径が同一であるか否かを容易に判別し得るようにできれば利便である。
【0137】
第2データ処理部は、かかる観点から、ドプラパラメータ設定部12から各種データ(ここでは、血管の血管サイズのデータ及び血管画像判定部12bの判定結果に係るデータ)を取得し、ユーザが超音波プローブ200を移動および回転させることに伴って、断層画像R1に映る血管Rd1が短軸像から長軸像に変化したこと、及び/又は、断層画像R1に映る血管Rd1が長軸像から短軸像に変化したことを検出する。そして、第2データ処理部は、断層画像R1に映る血管Rd1が短軸像から長軸像に変化した場合、又は、断層画像R1に映る血管Rd1が長軸像から短軸像に変化した場合に、短軸像のときに検出された血管Rd1のサイズと長軸像のときに検出された血管Rd1のサイズとを比較し、その比較結果として、その変化の前後に検出された短軸像の血管サイズと長軸像の血管サイズとが同一である蓋然性を通知する。
【0138】
これによって、ユーザが超音波プローブ200を移動あるいは回転させた際に、ユーザに対して、超音波ビームが血管中心を通っている、すなわち同一箇所の血管の適切な長軸像が得られているか否かを、容易に認識させることが可能である。
【0139】
図19は、第2データ処理部の比較結果の通知態様の一例を示す図である。図19では、第2データ処理部は、表示処理部5が生成する表示用画像Tall内に、短軸像及び長軸像それぞれに係る血管の血管サイズの一致度Tnを表示する態様を示している。
【0140】
以上のように、変形例5に係る超音波診断装置Aによれば、血流状態を超音波検査する際の利便性を、より向上することが可能である。
【0141】
(変形例6)
超音波診断装置A(例えば、制御装置10)は、血管Rd1の性状に関する測定項目を自動設定する第3データ処理部(図示せず)を有していてもよい。第3データ処理部が設定する測定項目としては、例えば、血管Rd1の画像から、血管Rd1の狭窄度を測定するための測定項目が挙げられる。
【0142】
図20は、一般的な血管の狭窄度の測定方法について、説明する図である。図20の上図は、断層画像内に長軸像の血管が観察されている状態を示し、図20の下図は、断層画像内に短軸像の血管が観察されている状態を示す。
【0143】
一般に、血管の狭窄率の測定方法として、NASCET(North American Symptomatic Endarterectomy Trial)法、ECST(European Carotid Surgery Trial)法、及び、area stenosis法等が知られている。NASCET法は、図20の上図に示す(血管幅C-血管幅B/血管幅C)×100%にて、血管の狭窄率を表現する手法である。又、ECST法は、図に示す(血管幅A-血管幅B/血管幅B)×100%にて、血管の狭窄率を表現する手法である。又、area stenosis法は、図20の下図に示す(血管領域面積E-血管領域面積D/血管領域面積E)×100%にて、血管の狭窄率を表現する手法である。NASCET法、ECST法は、血管の画像が長軸像である場合に、血管の狭窄率を表現する手法であり、area stenosis法は、血管の画像が短軸像である場合に、血管の狭窄率を表現する手法である。
【0144】
このように、血管の狭窄率を表現する際、血管の画像が短軸像であるか、又は、長軸像であるかで、その表現方法が異なっていることを考慮して、第3データ処理部は、断層画像R1内に検出された血管Rd1の画像が長軸像である場合(図20の上図)、例えば、NASCET法を用いて血管の狭窄率を表現し得るように、測定項目(例えば、血管幅A及び血管幅Bを入力する項目)を設定し、断層画像R1内に検出された血管Rd1の画像が短軸像である場合(図20の下図)、例えば、area stenosis法を用いて血管の狭窄率を表現し得るように、測定項目(例えば、血管領域面積D及び血管領域面積Eを入力する項目)を設定する。
【0145】
尚、図20の上図に示す血管幅A、血管幅B及び血管幅Cの測定や、図20の下図に示す血管領域面積D及び血管領域面積Eの測定は、画像認識処理(例えば、公知のテンプレートマッチング)によって自動的に実行されるのが好ましい。但し、これらの測定自体は、ユーザの目視による入力によって行われてもよい。
【0146】
以上のように、変形例6に係る超音波診断装置Aによれば、血流状態を超音波検査する際の利便性を、より向上することが可能である。
【0147】
(変形例7)
超音波診断装置A(例えば、制御装置10)は、断層画像R1の画像情報に基づいて、Bモードを実行する際の超音波ビームのステア角(Bステアとも称される)を設定するBステア設定部12Xを有していてもよい。
【0148】
図21は、Bステア設定部12Xの構成の一例を示す図である。
【0149】
Bステア設定部12Xは、例えば、血管検出部12a、血管画像判定部12b、及び、Bステア角設定部12daを有する。ここで、Bステア角設定部12daが有する血管検出部12a及び血管画像判定部12bの構成は、ドプラパラメータ設定部12が有する血管検出部12a及び血管画像判定部12bの構成と同一である。Bステア角設定部12daは、ドプラパラメータ設定部12が有するステア角設定部12dと同様の手法で、血管画像判定部12bの判定結果等に基づいて、Bモードを実行する際のステア角を設定する。
【0150】
図22A図22Bは、Bステア角設定部12daによるステア角の設定処理の一例を示す図である。尚、図22A図22BのF1c、F1dは、Bステア角設定部12daに設定された超音波ビームのビーム方向を表している。
【0151】
断層画像内で、血管壁等を鮮明に描画することを希望する場合には、Bモードを実行する際の超音波ビームのビーム方向を血管の延在方向に対して90度に近づけるのが好ましい。但し、血管壁における散乱反射等を考慮すると、Bステアのステア角を設定する場合にも、ドプラモード実行時にステア角を設定する場合と同様に、断層画像R1内に映る血管R1dが長軸像であるか又は短軸像であるかに基づいて、ステア角の設定内容を変更する必要がある。
【0152】
かかる観点から、変形例7に係るBステア設定部12Xは、断層画像に映る血管Rd1を検出した後、血管Rd1が長軸像であるか又は短軸像であるかを判定する。そして、血管Rd1が短軸像である場合には、Bステア設定部12Xは、Bステアのステア角をゼロ度に設定する(図22Aを参照)。一方、血管Rd1が長軸像である場合には、Bステア設定部12Xは、血管Rd1の延在方向を検出すると共に、超音波ビームのビーム方向を可能な限り血管の延在方向に対して90度に近づけるように、Bステアのステア角を設定する(図22Bを参照)。
【0153】
以上のように、変形例7に係る超音波診断装置Aによれば、Bモードを実行する際のステア角を適切に設定することができ、断層画像内に血管の性状をより鮮明に描画することが可能となる。
【0154】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本開示に係る超音波診断装置によれば、ドプラモード実行時のユーザの操作負荷を軽減し、且つ、信頼性の高い血流状態の測定を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0156】
A 超音波診断装置
100 超音波診断装置本体
200 超音波プローブ
1 送信部
2 受信部
3 断層画像生成部
4 ドプラ処理部
5 表示処理部
5a 流速算出部
5b グラフィック処理部
6 モニタ
7 操作入力部
10 制御装置
11 送受信制御部
12 ドプラパラメータ設定部
12a 血管検出部
12b 血管画像判定部
12c サンプルゲート設定部
12ca ROI設定部
12d ステア角設定部
12da Bステア角設定部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22A
図22B