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  • 特許-化粧板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241210BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241210BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B15/08 H
B32B27/00 E
B32B27/36
B32B27/18 A
B32B27/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020186502
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076198
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-326639(JP,A)
【文献】特開2002-103524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0059762(US,A1)
【文献】特開2018-154087(JP,A)
【文献】特開平10-217391(JP,A)
【文献】特開2020-090002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/00-13/30
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板の一方の面に積層され、且つ絵柄を印刷して形成した絵柄印刷層と、
前記一方の面の側における最も外側の層を形成するトップコート層と、
前記金属板と前記絵柄印刷層との間に配置されたベースコート層と、を備え、
前記トップコート層は、ポリエステル系樹脂を用いて形成され、且つ樹脂ビーズと、ワックスと、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち少なくとも紫外線吸収剤と、が添加されており、
前記樹脂ビーズは、平均粒径が10μmのアクリルビーズであり、
前記ワックスの前記トップコート層の樹脂固形分に対する添加率は、3%以上5%以下の範囲内であり、
前記樹脂ビーズの前記トップコート層の樹脂固形分に対する添加率は、5%以上7.5%以下の範囲内であり、
前記ベースコート層は、ポリエステル系樹脂を用いて形成されている化粧板。
【請求項2】
前記トップコート層は、マット剤が添加されている請求項1に記載した化粧板。
【請求項3】
前記ベースコート層は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、防錆剤のうち少なくとも一つが添加されている請求項1又は請求項2に記載した化粧板
【請求項4】
前記ベースコート層は、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち少なくとも紫外線吸収剤が添加されている請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した化粧板。
【請求項5】
前記絵柄印刷層は、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち少なくとも紫外線吸収剤が添加されている請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した化粧板。
【請求項6】
前記金属板の他方の面に積層された裏面コート層をさらに備え、
前記裏面コート層は、防錆剤が添加されている請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載した化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板等の鋼板やアルミ板等の金属板に、塗装や印刷によって化粧が施された化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板に化粧が施された化粧板の技術としては、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。特許文献1に開示されている技術では、金属板の一方の面上に、プライマー層と、ベースコート層と、絵柄層と、絵柄層の上に設けられて凹凸を形成するマット印刷層と、マット印刷層の凹凸を埋めるクリヤコート層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-164924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、木製のガレージシャッターは、木材が有する特有の温もりや上品さから、ガレージシャッターの中で、最も高級感があると認識されている。しかしながら、木製のガレージシャッターに用いる木製のシャッター材は、塗装の剥がれ等、損傷が発生すると大きく目立つため、数年のスパンで再塗装をする等、メンテナンスを行う必要がある。さらに、湿気による木の歪みや、カビの発生、シロアリ被害に遭う場合があり、メンテナンスに手間を要する。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されている技術を用いて、木目印刷を施したシートを基材にラミネートした化粧板を形成することで、メンテナンスが容易なガレージシャッターを形成することが可能となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術を用いて形成した化粧板では、例えば、摺動性、耐傷性、加工性、耐ブロッキング性、耐候性、意匠性等、化粧板を用いて形成したシャッター材としての高い性能を発揮することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能な化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、金属板と、絵柄印刷層と、トップコート層とを備える化粧板である。絵柄印刷層は、金属板の一方の面に積層され、且つ絵柄を印刷して形成されている。トップコート層は、金属板の一方の面の側における最も外側の層を形成し、ワックスが添加されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能な化粧板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態における化粧板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(第1実施形態)
以下、図1を参照して、化粧板10の構成について説明する。
化粧板10は、図1に示すように、金属板1と、第一化成処理層2と、第二化成処理層3と、裏面コート層4と、プライマー層5と、ベースコート層6と、絵柄印刷層7と、マット印刷層8と、トップコート層9を備える。
【0013】
<金属板>
金属板1は、化粧板10のベースとなる板であり、非合金化溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ステンレス鋼板、アルミ板のうちいずれかを用いて形成されている。
第1実施形態では、一例として、金属板1が、非合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いて形成されている場合について説明する。非合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板表面に亜鉛めっき(金属被膜)が形成されているが、塗料との密着性及び耐食性の向上のための合金化処理は施されていない鋼板である。
金属板1の厚さは、例えば、0.4[mm]以上である。
【0014】
<第一化成処理層>
第一化成処理層2は、耐食性の向上のために、金属板1の一方の面(図1では、上側の面)に積層された化成被膜である。
また、第一化成処理層2は、例えば、クロメート被膜、クロメートフリー被膜を用いて形成されている。特に、環境負荷の面から、クロメートフリー被膜を用いて形成することが好適である。
【0015】
クロメートフリー被膜は、クロメートフリー処理(ノンクロメート処理)により形成することが可能である。
クロメートフリー処理に使用する処理液としては、例えば、六価クロムを含有しない処理液や、シランカップリング剤を含む処理液等を用いることが可能である。六価クロムを含有しない処理液とは、例えば、ジルコニウムZrの塩を単体で含む処理液や、チタンTiの塩を単体で含む処理液や、ジルコニウムZr及びチタンTiの塩を含む処理液等を用いることが可能である。
【0016】
クロメートフリー処理に使用する処理液を用いたクロメートフリー処理により、溶融亜鉛めっきの層に、チタンTi、ジルコニウムZr、リンP、セリウムCe、シリコンSi、アルミニウムAl、リチウムLi、等を主成分として含有させることが可能である。これに加え、クロムを含有しないクロメートフリー被膜を形成することが可能である。すなわち、クロメートフリー被膜は、例えば、チタンTi、ジルコニウムZr、リンP、セリウムCe、シリコンSi、アルミニウムAl、リチウムLiをそれぞれ単体で形成した皮膜を含む。これに加え、クロメートフリー被膜は、例えば、チタンTi、ジルコニウムZr、リンP、セリウムCe、シリコンSi、アルミニウムAl、リチウムLiを任意で組み合わせた皮膜を含む。
【0017】
<第二化成処理層>
第二化成処理層3は、第一化成処理層2と同様、耐食性の向上のために、金属板1の他方の面(図1では、下側の面)に積層された化成被膜である。
また、第二化成処理層3は、第一化成処理層2と同様、例えば、クロメート被膜、クロメートフリー被膜を用いて形成されている。特に、環境負荷の面から、クロメートフリー被膜を用いて形成することが好適である。
【0018】
<裏面コート層>
裏面コート層4は、第二化成処理層3の金属板1と対向する面と反対の面(図1では、下側の面)に積層されている。すなわち、裏面コート層4は、金属板1の他方の面に積層され、金属板2の裏面を被覆するための層である。
また、裏面コート層4は、例えば、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等を用いて形成されている。
【0019】
第1実施形態では、一例として、エポキシ系樹脂の添加率を約49[%]とし、無機添加剤の添加率を約51[%]とした場合について説明する。
さらに、裏面コート層4は、耐食性を向上させるために、防錆剤が添加されている。
【0020】
<プライマー層>
プライマー層5は、下地となる層であって、第一化成処理層2とベースコート層6との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層5は、第一化成処理層2の金属板1と対向する面と反対の面(図1では、上側の面)に積層されている。
【0021】
さらに、プライマー層5は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
第1実施形態では、一例として、ポリエステル系樹脂の添加率を約57[%]とし、有機添加剤の添加率を約1[%]とし、顔料の添加率を約42[%]とした場合について説明する。
なお、プライマー層5には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層5の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
【0022】
<ベースコート層>
ベースコート層6は、化粧板10に絵柄印刷層7の下地色を付与するための層であり、プライマー層5の第一化成処理層2と対向する面と反対の面(図1では、上側の面)に積層されている。すなわち、ベースコート層6は、金属板1と絵柄印刷層7との間に配置された層である。
【0023】
また、ベースコート層6は、例えば、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、顔料等を用いて形成されている。
第1実施形態では、一例として、ポリエステル系樹脂の添加率を約45[%]とし、メラミン系樹脂の添加率を約15[%]とし、顔料の添加率を約40[%]とした場合について説明する。
【0024】
さらに、ベースコート層6は、耐候剤として、紫外線吸収剤及び光安定剤等が添加されている。
これに加え、ベースコート層6は、耐食性を向上させるために、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及び防錆剤のうち少なくとも一つが添加されている。
ベースコート層6の厚さは、例えば、10[μm]以上30[μm]以下の範囲内である。
【0025】
<絵柄印刷層>
絵柄印刷層7は、印刷によって絵柄を印刷した層であり、化粧板10に、絵柄による意匠性を付与するための層である。
絵柄印刷層7の印刷に用いる印刷インキや塗料等は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷等の各種印刷法や、グラビアコート法やロールコート法等の各種塗工法等で塗布される。
【0026】
また、絵柄印刷層7は、ベースコート層6のプライマー層5と対向する面と反対の面(図1では、上側の面)に積層されている。すなわち、絵柄印刷層7は、金属板1の一方の面に積層されている。
【0027】
また、絵柄印刷層7は、耐候剤として、紫外線吸収剤及び光安定剤等が添加されている。
絵柄印刷層7を形成する塗料としては、染料又は顔料等の着色剤を、適切なバインダ樹脂とともに、適切な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成した、印刷インキ又は塗料等を用いる。バインダ樹脂としては、公知のバインダ樹脂を使用すればよいが、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂得、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を用いることが好適である。
【0028】
第1実施形態では、一例として、ポリエステル系樹脂の添加率を約49[%]とし、有機添加剤の添加率を約1[%]とし、顔料の添加率を約50[%]とした場合について説明する。
顔料としては、公知の顔料、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料、パール顔料等を用いることが可能である。公知の顔料のうち、鉄・複合酸化物は、遮熱顔料として用いられる。
【0029】
絵柄印刷層7が形成する絵柄模様については、特に限定するものではないが、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等を単体で用いることが可能である。また、絵柄印刷層7が形成する絵柄模様については、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等を二種類以上で組み合わせて用いることが可能である。
【0030】
第1実施形態では、一例として、絵柄印刷層7が形成する絵柄模様を、木目模様の絵柄とした場合について説明する。
絵柄印刷層7の厚さは、例えば、0.1[μm]以上1.0[μm]以下の範囲内である。
【0031】
<マット印刷層>
マット印刷層8は、絵柄印刷層7のベースコート層6と対向する面と反対の面(図1では、上側の面)に積層されている。すなわち、マット印刷層8は、絵柄印刷層7の金属板1と対向する面と反対の面に積層されている。
また、マット印刷層8は、細かい骨材(マット)を用いた印刷(マット印刷)により凹凸形状を形成した層である。
【0032】
マットとしては、例えば、アクリルビーズ、ガラスビーズ、尿素樹脂等を用いることが可能である。マットとして、アクリルビーズ、ガラスビーズ、尿素樹脂等を用いる理由は、後述するエンボス加工の圧力に耐えるためである。
凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャー、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0033】
第1実施形態のマット印刷層8は、導管部を構成するように凹凸形状を形成する。導管模様を形成する凸部は、絵柄印刷層7の絵柄と同調して配置されることが好ましい。なお、同調とは、表面側からみて、絵柄と導管とが50[%]以上の範囲で重なるように形成することである。
マット印刷層8を印刷する印刷版は、例えば、高版深(50[μm]以上120[μm]以下の範囲内)を使用する。
【0034】
また、マット印刷層8で形成される凸部の高さは、例えば、5[μm]以上30[μm]以下の範囲内に設定することが好ましい。
さらに、マット印刷層8で形成される凸部の高さは、トップコート層9の厚さの100%以上200%未満の範囲内となるように設定する。なお、マット印刷層8で形成される凸部の高さは、例えば、マットの粒径をトップコート層9の厚さの100%以上200%未満の範囲内として設定する。したがって、マット印刷層8の一部は、トップコート層9から突出している。
【0035】
ここで、マット印刷層8は、シリカ等のマット剤が添加することで白っぽくなる可能性がある。このため、マット印刷層8には、墨やブラックカーボン等の着色顔料を混合することが好ましい。墨を添加することで濃い茶色っぽい色となり、よりリアルな木目を表現可能となる。
【0036】
<トップコート層>
トップコート層9は、化粧板10に、耐候性や、曲げ加工性、耐傷付性、清掃性を付与するための、透明な層であり、マット印刷層8の絵柄印刷層7と対向する面と反対の面(図1では、上側の面)に積層されている。すなわち、トップコート層9は、化粧板10において、金属板1の一方の面の側における、最も外側の層を形成する層である。
【0037】
また、トップコート層9は、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、有機添加剤、無機添加剤等を用いて形成されている。すなわち、トップコート層9は、ポリエステル系樹脂が添加されている。
第1実施形態では、一例として、ポリエステル系樹脂の添加率を約84[%]とし、有機添加剤の添加率を約7[%]とし、無機添加剤の添加率を約9[%]とした場合について説明する。
【0038】
さらに、トップコート層9は、ワックスと、樹脂ビーズが添加されている。
ワックスとしては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いる。なお、ワックスとしては、例えば、PTFEにPE(ポリエチレン)を添加したものを用いてもよい。
ワックスの、トップコート層9の樹脂固形分に対する添加率は、例えば、3[%]以上5[%]以下の範囲内である。
【0039】
樹脂ビーズは、例えば、平均粒径が10[μm]のアクリルビーズである。
樹脂ビーズの、トップコート層9の樹脂固形分に対する添加率は、例えば、5[%]以上7.5[%]以下の範囲内である。
これに加え、トップコート層9は、耐候剤として、紫外線吸収剤及び光安定剤等が添加されている。
【0040】
トップコート層9の厚さは、例えば、5[μm]以上15[μm]以下の範囲内である。
さらに、トップコート層9は、意匠性を向上させるために、骨材として、シリカが添加されている。
なお、トップコート層9には、耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤等の耐候剤を添加してもよい。さらに、トップコート層9には、艶を調節するため、マット剤を添加してもよい。また、トップコート層9には、消臭性や芳香性等を付与するための添加剤や、抗菌性を付与するための添加剤を添加してもよい。
【0041】
なお、上述した第1実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0042】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の化粧板10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)金属板1の一方の面に積層され、且つ絵柄を印刷して形成した絵柄印刷層7と、金属板1の一方の面の側における最も外側の層を形成するトップコート層9を備え、トップコート層9は、ワックスが添加されている。
その結果、トップコート層9にワックスが添加されていない構成と比較して、摺動性や耐ブロッキング性等、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能な化粧板10を提供することが可能となる。
【0043】
また、木目印刷を施したシートを基材にラミネートしたシャッター材では、シートを製造する工程と、ラミネートを行う工程との二工程が必要であるため、製造コストが増加するという問題がある。また、木製のシャッター材や、シートラッピングのシャッター材は、有機質量が多いため、防火性が低いという問題がある。
【0044】
そして、耐候性や耐候性が高く、また、防火性も有するシャッター材としては、基材に直接塗装を施した塗装鋼鈑や塗装アルミがあるが、基材に直接塗装を施した塗装鋼鈑や塗装アルミでは、単色で形成することが一般的である。このため、木製のシャッターのような高い意匠性を有するシャッター材を形成することは困難である。
【0045】
これらの問題に対し、第1実施形態の化粧板10であれば、金属板1に、ラミネート等を実施せず、直接印刷を行うため、高い意匠性を有することが可能である。これに加え、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能であるとともに、防火性を有する意匠鋼鈑を、低い製造コストで製造することが可能である。
【0046】
(2)ワックスの、トップコート層9の樹脂固形分に対する添加率は、3[%]以上5[%]以下の範囲内である
その結果、高い耐傷性を発揮することが可能であるとともに、意匠性の低下を抑制することが可能となる。
【0047】
(3)トップコート層9は、樹脂ビーズが添加されている。
その結果、トップコート層9に樹脂ビーズが添加されていない構成と比較して、摺動性や耐ブロッキング性等、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能となる。
【0048】
(4)トップコート層9に添加されている樹脂ビーズは、平均粒径が10[μm]のアクリルビーズである。
その結果、トップコート層9にナイロンビーズやガラスビーズが添加されている構成と比較して、摺動性、耐傷性、耐ブロッキング性等、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能となる。
【0049】
(5)樹脂ビーズの、トップコート層9の樹脂固形分に対する添加率は、5[%]以上7.5[%]以下の範囲内である
その結果、樹脂ビーズの、トップコート層9の樹脂固形分に対する添加率が5[%]未満である構成や、7.5[%]を超える構成と比較して、摺動性、耐傷性、耐ブロッキング性等、シャッター材としての高い性能を発揮することが可能となる。
【0050】
(6)トップコート層9は、ポリエステル系樹脂が添加されている。
その結果、トップコート層9にアクリル系樹脂が添加されている構成と比較して、加工性や防火性を向上させることが可能となる。
【0051】
(7)ベースコート層6は、ポリエステル系樹脂が添加されている。
その結果、トップコート層9にアクリル系樹脂が添加されている構成と比較して、加工性を向上させることが可能となる。
【0052】
(8)トップコート層9は、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち少なくとも紫外線吸収剤が添加されている。
その結果、化粧板10の耐候性を向上させることが可能となる。
【0053】
(9)トップコート層9は、マット剤が添加されている。
その結果、トップコート層9の艶を調節することが容易となる。
【0054】
(10)ベースコート層6は、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及び防錆剤のうち少なくとも一つが添加されている。
その結果、化粧板10の耐食性を向上させることが可能となる。
【0055】
(11)ベースコート層6は、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち少なくとも紫外線吸収剤が添加されている。
その結果、化粧板10の耐候性を向上させることが可能となる。
【0056】
(12)絵柄印刷層7は、紫外線吸収剤及び光安定剤のうち少なくとも紫外線吸収剤が添加されている。
その結果、化粧板10の耐候性を向上させることが可能となる。
【0057】
(13)裏面コート層4は、防錆剤が添加されている。
その結果、化粧板10の耐食性を向上させることが可能となる。
【0058】
(変形例)
(1)第1実施形態では、化粧板10を、裏面コート層4、第二化成処理層3、金属板1、第一化成処理層2、プライマー層5、ベースコート層6、絵柄印刷層7、マット印刷層8、トップコート層9を積層した積層体により構成したが、これに限定するものではない。すなわち、化粧板10を、裏面コート層4、第二化成処理層3、金属板1、第一化成処理層2、プライマー層5、ベースコート層6、絵柄印刷層7、トップコート層9を積層した積層体により構成としてもよい。
【実施例
【0059】
第1実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から4の化粧板と、比較例1から11の化粧板について説明する。
【0060】
(実施例1)
金属板として、JIS‐G3302に準拠した、厚さが0.4[mm]の溶融亜鉛めっき鋼板(SGC440鋼板)を用いた。
第一化成処理層と第二化成処理層は、ジルコンフッ化水素酸系化成処理剤を用いて、金属板の両面に化成処理を施して形成した。
【0061】
第一化成処理層と第二化成処理層を形成した後、裏面コート層を形成すると共に、プライマーを塗布してプライマー層を形成した。塗布したプライマーの乾燥は、200[℃]以上の温度による焼付乾燥によって実施した。また、塗布するプライマーとしては、ポリエステル系樹脂(約57%)、有機添加剤(約1%)及び顔料(約42%)を含むプライマーを用いた。プライマーの乾燥塗布量は、9.5[g/m]とした。
【0062】
ベースコート層は、裏面コート層とプライマー層を形成した後、各種添加剤を添加したポリエステル系ベースコートをプライマー層に塗布し、厚さが13[μm]程度のベースコート層を形成した。ベースコート層の乾燥は、200[℃]以上の温度による焼付乾燥によって実施した。
【0063】
ベースコート層を形成した後、グラビアオフセット印刷方式により、厚さが数[μm]程度であり、2色で印刷した絵柄を有する絵柄印刷層を形成した。
マット印刷層は、形成していない。
【0064】
絵柄印刷層を形成した後、ポリエステル系トップコートを8[μm]~9[μm]程度の厚さで塗布して、トップコート層を形成した。トップコート層の乾燥は、200[℃]以上の温度による焼付乾燥によって実施した。ポリエステル系トップコートには、ワックス(PTFE)を、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して4[%]の添加率で添加した。これに加え、ポリエステル系トップコートには、平均粒径が10[μm]のアクリルビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して5[%]の添加率で添加した。
以上により、実施例1の化粧板を作製した。
【0065】
(実施例2)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のアクリルビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して7.5[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧板を製造した。
【0066】
(実施例3)
ポリエステル系トップコートに、ワックスを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して3[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の化粧板を製造した。
【0067】
(実施例4)
ポリエステル系トップコートに、ワックスを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して5[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例4の化粧板を製造した。
【0068】
(比較例1)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のナイロンビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して2.5[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧板を製造した。
【0069】
(比較例2)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のナイロンビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して5[%]の添加率で添加した点を除き、比較例1と同様に形成して、比較例2の化粧板を製造した。
【0070】
(比較例3)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のナイロンビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して7.5[%]の添加率で添加した点を除き、比較例1と同様に形成して、比較例3の化粧板を製造した。
【0071】
(比較例4)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のナイロンビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して10[%]の添加率で添加した点を除き、比較例1と同様に形成して、比較例4の化粧板を製造した。
【0072】
(比較例5)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のアクリルビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して2.5[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例5の化粧板を製造した。
【0073】
(比較例6)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のアクリルビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して10[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例6の化粧板を製造した。
【0074】
(比較例7)
ポリエステル系トップコートに、平均粒径が10[μm]のガラスビーズを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して2.5[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例7の化粧板を製造した。
【0075】
(比較例8)
ベースコート層を、アクリル系ベースコートを用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例8の化粧板を製造した。
【0076】
(比較例9)
トップコート層を、アクリル系トップコートを用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例9の化粧板を製造した。
【0077】
(比較例10)
ポリエステル系トップコートに、ワックスを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して2[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例10の化粧板を製造した。
【0078】
(比較例11)
ポリエステル系トップコートに、ワックスを、ポリエステル系トップコートの樹脂固形分に対して6[%]の添加率で添加した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例11の化粧板を製造した。
【0079】
(性能評価、評価結果)
実施例1から4の化粧板と、比較例1から11の化粧板に対し、それぞれ、摺動性、耐傷性、加工性、耐ブロッキング性、防火性を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0080】
<摺動性>
化粧板に対し、1[kg]の荷重を加えたトップコート層を10000回連続で擦る摺動性試験を行い、摺動性を評価した。そして、素地の露出が無い状態を「○」と評価し、素地の露出している状態を「×」と評価した。
【0081】
<耐傷性>
化粧板に対し、硬度が「H」以上の鉛筆をトップコート層に押し付ける鉛筆硬度試験を行い、耐傷性を評価した。そして、トップコート層に傷が形成されていない状態を「○」と評価し、トップコート層に傷が形成されている状態を「×」と評価した。
【0082】
<加工性>
化粧板に対し、180[°]の曲げ加工を行い、加工性を評価した。そして、トップコート層に割れが発生していない状態を「○」と評価し、トップコート層に割れが発生している状態を「×」と評価した。
【0083】
<耐ブロッキング性>
化粧板に対し、温度が60[℃]、荷重が10[kg/cm]、試験時間が24時間の条件下で耐ブロッキング性試験を、耐ブロッキング性を評価した。そして、ブロッキングが発生していない状態を「○」と評価し、ブロッキングが発生している状態を「×」と評価した。
【0084】
<防火性>
化粧板に対し、コーンカロリーメーターを用いた試験方法(ISO5660-1に準拠)にて、防火性を評価した。そして、化粧板が引火していない状態を「○」と評価し、化粧板が引火している状態を「×」と評価した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から4の化粧板は、いずれの評価試験においても優れた性能を示したが、比較例1から10の化粧板は、いずれの評価試験においても、実施例1から4の化粧板と比較して、シャッター材としての性能が劣る結果となった。また、比較例11の化粧板は、シャッター材としての性能は良好であったが、表面に白濁した部分が形成されており、実施例1から4の化粧板と比較して、意匠性が低下することが確認された。
【符号の説明】
【0088】
1…金属板、2…第一化成処理層、3…第二化成処理層、4…裏面コート層、5…プライマー層、6…ベースコート層、7…絵柄印刷層、8…マット印刷層、9…トップコート層、10…化粧板
図1