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  • 特許-テーブル装置 図1
  • 特許-テーブル装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】テーブル装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20241210BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/68 K
G03F7/20 521
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020190344
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079260
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊徳
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162871(JP,A)
【文献】特開2005-033214(JP,A)
【文献】特開2002-217082(JP,A)
【文献】特開2007-266585(JP,A)
【文献】特開2001-050271(JP,A)
【文献】特開2019-071467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
G03F 7/20
B65G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面と平行なガイド面を有するベース部材と、
前記ベース部材の上に配置される平面視四角形状のテーブルと、
前記テーブルの4つの角部のそれぞれに配置され、前記テーブルを前記ガイド面に沿った方向に移動可能に支持するテーブル支持部と、を備え、
前記テーブル支持部は、前記ベース部材と前記テーブルとの間に気体軸受を形成する3つの軸受部材を備え、
3つの前記軸受部材は、前記テーブルの前記角部に沿って略L字状に配置される、
テーブル装置。
【請求項2】
前記テーブルに対して前記ベース部材を吸引する吸引部材を備え、
前記吸引部材は、隣り合う前記テーブル支持部の間に配置される、請求項1に記載のテーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造及び検査装置に用いられるテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から精密移動・位置決め用のテーブル装置として種々のものが知られており、特許文献1に示すテーブル装置は、平面内で移動・位置決めするものであって、平行配備されたベースガイドと、このベースガイドに対しガイド方向に往復動可能に支持された可動ガイドと、この可動ガイドに対しガイド方向に往復動可能に支持されたテーブルを有している。そして、両ベースガイドおよび可動ガイドは、モータヨークとコイルボビンからなるリニアモータにて構成すると共に、それぞれのモータヨークとコイルボビンとの間には、コイルボビンに加わるXYZ軸荷重を支持する空気軸受を構成している。また、特許文献2に示すテーブル装置は、平面視四角形状であるテーブルの4つの角部に、気体軸受を形成する軸受部材を1つずつ配置するものである(図17の各エアパッド253を参照)。各軸受部材は、相手部材であるベース部材のガイド面との間に微小隙間を介して対向することにより、空気軸受を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-182692号公報
【文献】特開2002-082445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献2に記載のテーブル装置では、テーブルが水平面と平行なX軸方向及びY軸方向に同時に移動する場合(即ち、X軸方向及びY軸方向の両方に対して斜めに移動する場合)、テーブルが移動する際の加減速に伴う慣性力によって、テーブルの角部に配置される1つの軸受部材に負荷が集中する。従って、負荷が集中した軸受部材と気体軸受を形成するガイド面との間の隙間が小さくなり、テーブルが水平方向に対して傾くため、テーブルの加減速度を上げることができなかった。なお、テーブルが大きく傾いた場合、軸受部材の端面がベース部材のガイド面に接触すると、軸受部材やベース部材に摩耗や焼付きが生じることがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、テーブルがX軸方向及びY軸方向に同時に移動した際に生じるテーブルの傾きを抑制して、テーブルの加減速度を上げることができるテーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)所定面と平行なガイド面を有するベース部材と、前記ベース部材の上に配置される平面視四角形状のテーブルと、前記テーブルの4つの角部のそれぞれに配置され、前記テーブルを前記ガイド面に沿った方向に移動可能に支持するテーブル支持部と、を備え、前記テーブル支持部は、前記ベース部材と前記テーブルとの間に気体軸受を形成する複数の軸受部材を備える、テーブル装置。
(2)前記テーブル支持部は、3つの前記軸受部材を備え、3つの前記軸受部材は、前記テーブルの前記角部に沿って略L字状に配置される、(1)に記載のテーブル装置。
(3)前記テーブルに対して前記ベース部材を吸引する吸引部材を備え、前記吸引部材は、隣り合う前記テーブル支持部の間に配置される、(1)又は(2)に記載のテーブル装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テーブルの4つの角部のそれぞれに配置され、テーブルをガイド面に沿った方向に移動可能に支持するテーブル支持部を備え、テーブル支持部が、ベース部材とテーブルとの間に気体軸受を形成する複数の軸受部材を備えるため、テーブルの角部に掛かるテーブル移動時の負荷を複数の軸受部材で支持することができる。これにより、テーブルがX軸方向及びY軸方向に同時に移動した際に生じるテーブルの傾きを抑制することができる。この結果、テーブルの加減速度を上げることが可能となり、テーブルの移動を高速化することができる。これにより、本発明のテーブル装置を使用した製造装置及び検査装置のサイクルタイム(加工時間、検査時間)を短縮して、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るテーブル装置の一実施形態を説明する側面図である。
図2図1に示すテーブル装置の下面図である。
図3図1に示すテーブル装置の変形例を説明する下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るテーブル装置の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面と直交する第1軸と平行な方向をZ軸方向とし、所定面内の第2軸と平行な方向をX軸方向とし、所定面内において第2軸と直交する第3軸と平行な方向をY軸方向とする。Z軸(第1軸)は、X軸(第2軸)及びY軸(第3軸)のそれぞれと直交する。X軸は、YZ平面と直交する。Y軸は、XZ平面と直交する。Z軸は、XY平面と直交する。XY平面は、所定面と平行である。本実施形態において、XY平面は、水平面と平行である。Z軸方向は、鉛直方向である。なお、XY平面(所定面)が水平面に対して傾斜してもよい。
【0011】
図1は、本実施形態に係るテーブル装置10を-Y側から見た側面図である。図2は、本実施形態に係るテーブル装置10を-Z側から見た下面図である。なお、図1においては、テーブル装置10を断面で示す。また、本実施形態では、+Z側は上側とし、-Z側は下側とする。
【0012】
図1及び図2に示すように、テーブル装置10は、ベース部材1と、ベース部材1の上に配置される平面視四角形状のテーブル2と、テーブル2の4つの角部2aのそれぞれに配置されるテーブル支持部20と、を備える。なお、テーブル2は、不図示の駆動システムによってベース部材1に対してX軸方向及びY軸方向の2つの方向に移動される。
【0013】
ベース部材1は、XY平面(所定面)と平行な上面であるガイド面1Aを有する。ガイド面1Aは、平坦である。ベース部材1は、インディアンブラックのような石定盤でもよいし、鋳鉄定盤でもよいし、セラミックス製の定盤でもよい。ベース部材1は、例えば、テーブル装置10が設置される施設(例えば工場)の床面に配置される。
【0014】
テーブル2は、図2に示すように、ベース部材1の上方(+Z方向)に配置される。テーブル2は、物体Sを支持して移動可能である。本実施形態では、テーブル2の外形は、X軸方向及びY軸方向に沿った正方形である。
【0015】
テーブル支持部20は、図1に示すように、ベース部材1とテーブル2との間に気体軸受21Gを形成する複数(本実施形態では各気体軸受21Gに3個ずつ、テーブル2の合計で12個)の軸受部材21を備える。本実施形態では、3つの軸受部材21は、図2に示すように、テーブル2の角部2aに沿って略L字状に配置される。そして、テーブル支持部20は、軸受部材21が形成する気体軸受21Gによりテーブル2をベース部材1のガイド面1Aに沿った方向(X軸方向及びY軸方向の少なくとも1方向)に移動可能に支持する。
【0016】
軸受部材21は、ベース部材1とテーブル2との間に気体軸受(静圧軸受)21Gを形成する。本実施形態では、軸受部材21は、ベース部材1のガイド面1Aと対向するテーブル2の下面に配置される。気体軸受21Gが形成されることによって、テーブル2は、ベース部材1のガイド面1Aに非接触で支持される。ベース部材1は、軸受部材21によって形成される気体軸受21Gによって、X軸方向及びY軸方向にテーブル2を非接触で移動可能に支持する。本実施形態では、不図示のコンプレッサから送られてきた圧縮空気を、軸受部材21からベース部材1に向けて供給することにより、気体軸受21Gが形成される。なお、軸受部材21は、円形状に限定されず、四角形状などの多角形状であってもよい。
【0017】
本実施形態では、軸受部材21は、多孔体(多孔質部材)を含む。多孔体は、例えば、特許第5093056号、特開2007-120527号などに開示されているようなグラファイト(カーボングラファイト)製でもよい。なお、多孔体がセラミックス製でもよい。本実施形態では、多孔体の孔(供給口)から気体が供給される。
【0018】
また、図1及び図2に示すように、テーブル2においてX軸方向及びY軸方向に隣り合うテーブル支持部20の間には、真空吸引部材30がそれぞれ設けられる。本実施形態では、真空吸引部材30は、テーブル2の下面に配置される。真空吸引部材30は、図示しない吸引ポンプにより真空吸引されて真空吸引部材30の内部空間を負圧の状態に保つことにより、テーブル2に対してベース部材1を吸引している。そして、真空吸引部材30は、複数の軸受部材21による浮上力に予圧を付与して、気体軸受21Gの剛性を高めている(テーブル2が+Z軸方向に浮き上がるのを防止している)。さらに、真空吸引部材30は、テーブル2の下面とべース部材1のガイド面1Aとの間に供給された気体(軸受部材21から供給された圧縮空気)の一部を真空吸引により外部に排出する機能を有する。また、気体軸受21Gに予圧を掛ける手段としては、磁石を使用した磁気吸引方式であってもよい。なお、軸受部材21による浮上力とテーブル装置10の自重とをバランスさせる場合は、真空吸引部材30を設けなくてもよい。
【0019】
以上説明したように、本実施形態のテーブル装置10によれば、テーブル2の4つの角部2aのそれぞれに複数の軸受部材21が設けられるため、テーブル2の角部2aに掛かるテーブル移動時の負荷を複数の軸受部材21で支持することができる。これにより、テーブル2がX軸方向及びY軸方向に同時に移動した際に生じる、テーブル2の傾きを抑制することができる。この結果、テーブル2及びテーブル2に支持された物体Sの加減速度を上げることが可能となり、テーブル2の移動を高速化することができる。これにより、テーブル装置10を使用した製造装置及び検査装置のサイクルタイム(加工時間、検査時間)を短縮して、生産性を向上することができる。
【0020】
また、本実施形態のテーブル装置10によれば、3つの軸受部材21が、テーブル2の角部2aに沿って略L字状に配置されるため、テーブル2の角部2aに掛かるテーブル移動時の負荷を効率よく支持することができる。これにより、テーブル2がX軸方向及びY軸方向に同時に移動した際に生じるテーブル2の傾きを更に抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態の変形例として、図3に示すように、テーブル支持部20は、2つの軸受部材21で構成されていてもよい。この変形例では、2つの軸受部材21は、テーブル2の対角線に対して対称に配置される。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、テーブル支持部を構成する軸受部材の数は、上述した2つ又は3つに限定されず、テーブルの大きさに応じて4つ以上であってもよい。
また、複数の軸受部材がテーブルの対角線に対して対称に配置されるのであれば、軸受部材の大きさ、形状、空気供給量を異ならせてもよい。
また、テーブルは、テーブル支持部及び真空吸引部材と重ならない部分に、テーブルをZ軸方向に貫通する、1つ或いは複数の貫通孔を形成してもよい。これにより、テーブルが軽量化され、より加減速度を上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
10 テーブル装置
1 ベース部材
1A ガイド面
2 テーブル
2a 角部
20 テーブル支持部
21 軸受部材
21G 気体軸受
30 真空吸引部材
S 物体
図1
図2
図3