IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電子デバイス 図1
  • 特許-電子デバイス 図2
  • 特許-電子デバイス 図3
  • 特許-電子デバイス 図4
  • 特許-電子デバイス 図5
  • 特許-電子デバイス 図6
  • 特許-電子デバイス 図7
  • 特許-電子デバイス 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20241210BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20241210BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20241210BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20241210BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20241210BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241210BHJP
   H04W 12/73 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W88/06
H04W4/00 110
H04W48/16 110
H04W88/02 110
H04W84/12
H04W12/73
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020192539
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081165
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真幹
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-058061(JP,A)
【文献】特開2019-220962(JP,A)
【文献】特開2013-085050(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096845(WO,A1)
【文献】特開2005-192202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04M1/00
1/24-1/82
99/00
H04N1/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ボタンと、
前記特定ボタンと異なるボタンであって、文字入力ないし選択操作を行うための複数のボタンによって構成される入力インタフェースと、
無線通信を行うための通信インタフェースと、
ディスプレイと、
メモリと、
コンピュータと、
を備える電子デバイスであって、
前記コンピュータは、
前記特定ボタンへの操作に基づいて第1方式のセットアップ手続きを開始し、前記第1方式のセットアップ手続きでは、セットアップの開始を報知し、さらに第1手順によって外部デバイスからの接続情報の取得を試行し、前記接続情報の取得に成功した場合、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行し、
前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかった場合、第2方式のセットアップ手続きを開始し、前記第2方式のセットアップ手続きでは、前記接続情報の入力を求めるメッセージを前記ディスプレイに表示させ、さらに前記入力インタフェースを介した文字入力を含む第2手順によって前記接続情報を取得し、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行し、
さらに前記コンピュータは、
前記第1方式のセットアップ手続きの前記第1手順では、前記外部デバイスとの無線通信を確立し、前記外部デバイスとの無線通信が確立した状態で前記外部デバイスから前記接続情報を取得し、前記外部デバイスには、前記電子デバイスとの無線通信が確立した場合に前記接続情報を前記電子デバイスに転送するプログラムが組み込まれており、
前記第2方式のセットアップ手続きの前記第2手順では、接続可能なアクセスポイントを検索し、検索されたアクセスポイントの中から前記入力インタフェースを介した選択入力を行うことによって接続対象のアクセスポイントを選択し、選択された前記アクセスポイントに対応する前記接続情報の一部を取得し、さらに選択された前記アクセスポイントに対応する前記接続情報の残りを、前記入力インタフェースを介した文字入力によって取得し、前記第2方式のセットアップ手続きでは、選択された前記アクセスポイントに対応する前記接続情報の残りを、前記入力インタフェースを介した文字入力によって取得する際、前記接続情報の入力を求めるメッセージを前記ディスプレイに表示させる、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載する電子デバイスにおいて、
前記コンピュータは、
前記第1方式のセットアップ手続きの前記第1手順では、周囲に存在する前記外部デバイスを第1の無線通信方式による無線通信で検出し、検出した前記外部デバイスから、前記第1の無線通信方式による無線通信で前記接続情報を取得し、
前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかったことで開始された前記第2方式のセットアップ手続きの前記第2手順では、前記第1の無線通信方式での無線通信を止め、接続可能なアクセスポイントを第2の無線通信方式による無線通信で検出し、検出されたアクセスポイントの中から前記入力インタフェースを介した選択入力を行うことによって接続対象のアクセスポイントを選択し、選択された前記アクセスポイントから前記第2の無線通信方式による無線通信で取得した情報に基づいて、選択された前記アクセスポイントに対応する前記接続情報を、前記入力インタフェースを介した文字入力によって取得する、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する電子デバイスにおいて、
前記コンピュータは、
前記第2方式のセットアップ手続きでは、前記接続情報の入力を求めるメッセージを前記ディスプレイに表示させ、さらに前記入力インタフェースを介した文字入力を含む前記第2手順によって前記接続情報を取得し、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行し、さらに前記アクセスポイントへの接続に成功した場合、前記アクセスポイントへの接続成功を報知し、前記アクセスポイントへの接続に失敗した場合、前記アクセスポイントへの接続失敗を報知する、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項4】
特定ボタンと、
前記特定ボタンと異なるボタンであって、文字入力ないし選択操作を行うための複数のボタンによって構成される入力インタフェースと、
無線通信を行うための通信インタフェースと、
ディスプレイと、
メモリと、
コンピュータと、
を備える電子デバイスであって、
前記コンピュータは、
前記特定ボタンへの操作に基づいて第1方式のセットアップ手続きを開始し、前記第1方式のセットアップ手続きでは、セットアップの開始を報知し、さらに第1手順によって外部デバイスからの接続情報の取得を試行し、前記接続情報の取得に成功した場合、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行し、
前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかった場合、第2方式のセットアップ手続きを開始し、前記第2方式のセットアップ手続きでは、前記接続情報の入力を求めるメッセージを前記ディスプレイに表示させ、さらに前記入力インタフェースを介した文字入力を含む第2手順によって前記接続情報を取得し、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行し、
さらに前記コンピュータは、
前記メモリに前記接続情報が記憶されていない場合、所定の接続条件を満たした場合に前記第1方式のセットアップ手続きを開始し、前記所定の接続条件には、前記特定ボタンの操作があったことが含まれず、
さらに前記コンピュータは、
前記特定ボタンへの操作に基づいて前記第1方式のセットアップ手続きを開始していれば、前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかった場合、前記第2方式のセットアップ手続きを開始し、
前記所定の接続条件を満たしたことで前記第1方式のセットアップ手続きを開始していれば、前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかった場合、前記第2方式のセットアップ手続きを開始しない、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載する電子デバイスにおいて、
前記所定の接続条件には、前記電子デバイスの電源オンが含まれる、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する電子デバイスにおいて、
前記コンピュータは、
前記第1方式のセットアップ手続きでは、セットアップの開始を報知し、さらに前記第1手順によって前記接続情報の取得を試行し、前記接続情報の取得に成功した場合、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークの前記アクセスポイントへの接続を試行し、さらに前記アクセスポイントへの接続に成功した場合、前記アクセスポイントへの接続成功を報知し、前記アクセスポイントへの接続に失敗した場合、前記アクセスポイントへの接続失敗を報知する。
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載する電子デバイスにおいて、
前記コンピュータは、
前記第1方式のセットアップ手続きでは、前記アクセスポイントへの接続に失敗した場合、前記アクセスポイントへの接続失敗を報知し、
さらに前記コンピュータは、
報知後も、前記アクセスポイントへの接続を試行する、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載する電子デバイスにおいて、
前記コンピュータは、
前記入力インタフェースを介した複数回の所定の選択操作を受け付けることで、前記第2方式のセットアップ手続きを開始することが可能であり、
さらに前記コンピュータは、
前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかった場合、前記複数回の所定の選択操作を受け付けることなく、前記第2方式のセットアップ手続きを開始する、
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載する電子デバイスにおいて、
前記コンピュータは、
前記メモリに前記接続情報が記憶されていてもいなくても、前記特定ボタンへの操作に基づいて前記第1方式のセットアップ手続きを開始し、
前記第1方式のセットアップ手続きで前記接続情報を取得できた場合も、前記第1方式のセットアップ手続きで前記接続情報を取得できず、その後の前記第2方式のセットアップ手続きにて前記接続情報を取得できた場合も、前記メモリに前記接続情報が記憶されていれば、前記接続情報を上書きする、
ことを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、無線ネットワークに接続可能な電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電子デバイスを無線ネットワークに接続するシステムが知られている。各電子デバイスを無線ネットワークに接続するには、各電子デバイスにおいて、無線ネットワークのアクセスポイントに接続するセットアップが必要となる。セットアップでは、例えば電子デバイスを接続情報の入力モードに切り替え、ユーザ操作によって入力された接続情報を利用して、無線ネットワークのアクセスポイントに接続する。
【0003】
また、セットアップの自動化に関する技術も知られている。例えば特許文献1では、無線通信装置(PC)が接続情報を記憶しており、その無線接続装置が、無線ネットワークに未接続の無線通信デバイス(プリンタ)に対して接続情報を送信し、その接続情報を利用して未接続の無線通信デバイスが無線ネットワークのアクセスポイントに接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-034560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したようにセットアップ方法が複数あることで、無線ネットワークに接続できる可能性は高まる。しかしながら、セットアップを開始する手順が幾つもあることで操作が複雑になり易い。そのため、セットアップに関する操作性には、改善の余地がある。
【0006】
本明細書は、無線ネットワークに接続可能な電子デバイスであって、無線ネットワークのアクセスポイントに接続するためのセットアップに関する操作性を向上させる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた電子デバイスは、特定ボタンと、前記特定ボタンと異なるボタンであって、文字入力ないし選択操作を行うための複数のボタンによって構成される入力インタフェースと、無線通信を行うための通信インタフェースと、ディスプレイと、メモリと、コンピュータと、を備える電子デバイスであって、前記コンピュータは、前記特定ボタンへの操作に基づいて第1方式のセットアップ手続きを開始し、前記第1方式のセットアップ手続きでは、セットアップの開始を報知し、さらに第1手順によって外部デバイスからの接続情報の取得を試行し、前記接続情報の取得に成功した場合、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行し、前記第1方式のセットアップ手続きの際に前記接続情報を取得できなかった場合、第2方式のセットアップ手続きを開始し、前記第2方式のセットアップ手続きでは、前記接続情報の入力を求めるメッセージを前記ディスプレイに表示させ、さらに前記入力インタフェースを介した文字入力を含む第2手順によって前記接続情報を取得し、取得した前記接続情報を前記メモリに記憶し、さらに取得した前記接続情報を用いて無線ネットワークのアクセスポイントへの接続を試行する、ことを特徴としている。
【0008】
本明細書に開示される電子デバイスによれば、1つの特定ボタンが操作されることで、外部デバイスから接続情報を取得して自動的にセットアップを行う第1方式のセットアップ手続きを開始し、接続情報が取得できなかった場合には、入力インタフェースへの入力操作によって接続情報を取得してセットアップを行う第2方式のセットアップ手続きを自動的に開始する。これにより、ユーザは特定ボタンの操作という1つの操作を行うことで、電子デバイスに2つの方式のセットアップ手続きを行わせることが可能になる。従って、無線ネットワークのアクセスポイントに接続するためのセットアップに関する操作性が向上し、さらに、無線ネットワークに接続できる可能性が高い。
【0009】
上記電子デバイスの機能を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、および当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータにて読取可能な記憶媒体も、新規で有用である。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に開示される技術によれば、無線ネットワークに接続可能な電子デバイスであって、無線ネットワークのアクセスポイントに接続するためのセットアップに関する操作性を向上させる技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本形態のMFPの電気的構成を示すブロック図である。
図2】操作パネルの外観の例を示す説明図である。
図3】第1方式のセットアップ手続きの概要を示す説明図である。
図4】セットアップ処理の手順を示すフローチャートである。
図5】第2方式処理の手順を示すフローチャートである。
図6】第2方式のセットアップ手続きの概要を示す説明図である。
図7】スタート処理の手順を示すフローチャートである。
図8】入力画面の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態にかかる複合機(以下、「MFP」とする)について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
本形態のMFP1は、図1に示すように、CPU11と、メモリ12と、を含むコントローラ10を備えている。また、MFP1は、操作パネル13と、通信インタフェース(以下、「通信IF」とする)14と、画像形成部15と、画像読取部16と、を備え、これらがコントローラ10に電気的に接続されている。MFP1は、電子デバイスの一例であり、CPU11は、コンピュータの一例である。
【0014】
CPU11は、メモリ12から読み出したプログラムに従って、また、ユーザの操作に基づいて、各種の処理を実行する。メモリ12には、図1に示すように、セットアッププログラム21を含む各種のプログラムや、各種のデータが記憶されている。メモリ12は、各種の処理が実行される際の作業領域としても利用される。CPU11が備えるバッファも、メモリの一例である。
【0015】
メモリ12の一例は、MFP1に内蔵されるROM、RAM、HDD等に限らず、CPU11が読み取り可能かつ書き込み可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体とは、non-transitoryな媒体である。non-transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体も含まれる。また、non-transitoryな媒体は、tangibleな媒体でもある。一方、インターネット上のサーバなどからダウンロードされるプログラムを搬送する電気信号は、コンピュータが読み取り可能な媒体の一種であるコンピュータが読み取り可能な信号媒体であるが、non-transitoryなコンピュータが読み取り可能なストレージ媒体には含まれない。
【0016】
操作パネル13は、ユーザに情報を報知するための画面を表示するハードウェアと、ユーザによる操作を受け付けるハードウェアと、を含む。本形態のMFP1の操作パネル13は、例えば、図2にその外観の例を示すように、ディスプレイ31と、無線接続ボタン32と、入力ボタン群33と、電源ボタン34と、を含む。無線接続ボタン32は、特定ボタンの一例であり、入力ボタン群33は、入力インタフェースの一例である。入力ボタン群33は、例えば、上下等の各方向を示す方向ボタンおよびOKボタンを含む、複数の入力ボタンを備えている。なお、本形態のMFP1のディスプレイ31は、例えば、縦に2ライン分の文字列を表示可能なモノクロの液晶表示ディスプレイであり、入力受け付け機能を有していない。
【0017】
通信IF14は、Wi-Fi(登録商標)方式によって無線LANに接続するためのハードウェアを含む。なお、本形態のMFP1は、Wi-Fiダイレクト方式(以下、「WFD方式」とする)の接続機能と、アクセスポイントを利用した無線LAN方式(Wi-Fi方式と呼んでも良い。以下では、「WLAN方式」とする)の接続機能とを、ともに備えている。WFD方式は、第1の無線通信方式の一例であり、WLAN方式は、第2の無線通信方式の一例である。
【0018】
MFP1は、WFD方式の接続情報を予め記憶しており、WFD方式の接続機能が有効にされるとネットワークを管理するグループオーナー機器となって、クライアント装置との無線ネットワークを構築することができる。また、MFP1は、アクセスポイントの接続情報(以下、「AP情報」とする)をアクセスポイントに送信することで、クライアント装置としてWLAN方式で無線ネットワークに接続することができる。なお、図1に破線で示すように、AP情報23は、MFP1の工場出荷時には、メモリ12に記憶されていない。
【0019】
画像形成部15は、シート等の印刷媒体に画像データに基づく画像を印刷する構成を含む。画像形成部15の画像形成方式は、例えば、電子写真方式、インクジェット方式である。画像読取部16は、原稿の画像を読み取って画像データを生成する構成を含む。
【0020】
次に、MFP1による無線ネットワークへの接続のためのセットアップの手順について説明する。なお、以下の処理は、基本的に、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を示す。すなわち、以下の説明における「判断」、「抽出」、「選択」、「算出」、「決定」、「特定」、「取得」、「受付」、「制御」等の処理は、CPU11の処理を表している。CPUによる処理は、OSのAPIを用いたハードウェア制御も含む。本明細書では、OSの記載を省略して各プログラムの動作を説明する。すなわち、以下の説明において、「プログラムBがハードウェアCを制御する」という趣旨の記載は、「プログラムBがOSのAPIを用いてハードウェアCを制御する」ことを指してもよい。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を、省略した文言で記載することがある。例えば、「CPU11が行う」のように記載することがある。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU11の処理を、「プログラムAが行う」のようにCPUを省略した文言で記載することがある。
【0021】
なお、「取得」は要求を必須とはしない概念で用いる。すなわち、CPU11が要求することなくデータを受信するという処理も、「CPUがデータを取得する」という概念に含まれる。また、本明細書中の「データ」とは、コンピュータに読取可能なビット列で表される。そして、実質的な意味内容が同じでフォーマットが異なるデータは、同一のデータとして扱われるものとする。本明細書中の「情報」についても同様である。また、「要求する」、「指示する」とは、要求していることを示す情報や、指示していることを示す情報を相手に出力することを示す概念である。また、要求していることを示す情報や指示していることを示す情報のことを、単に、「要求」、「指示」とも記載する。
【0022】
また、CPU11による、情報Aは事柄Bであることを示しているか否かを判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか否かを判断する」のように概念的に記載することがある。CPU11による、情報Aが事柄Bであることを示しているか、事柄Cであることを示しているか、を判断する処理を、「情報Aから、事柄Bであるか事柄Cであるかを判断する」のように概念的に記載することがある。
【0023】
本形態のMFP1は、セットアップ手続きを完了させるための方式として、第1方式と第2方式との2種類の方式を備えている。セットアップ手続きは、アクセスポイントを利用したWLAN方式による接続をセットアップするための手続きである。セットアップ手続きでは、MFP1は、接続対象のアクセスポイントのAP情報を取得してメモリ12に記憶し、記憶したAP情報を利用して、通信IF14を介して当該アクセスポイントに接続する。
【0024】
第1方式は、既にMFP1の接続対象であるアクセスポイント(以下、「対象AP」とする)への接続に成功している端末装置、例えば、後述するパーソナルコンピュータ(以下、「PC」とする)と通信することで、端末装置からAP情報を取得することによるセットアップ手続きである。第1方式は、AP情報のユーザによる文字入力の手順を含まない。一方、第2方式は、端末装置を利用せず、ユーザによる情報の入力を受け付けてAP情報を取得することによるセットアップ手続きである。第2方式は、AP情報の少なくとも一部を、例えば、入力ボタン群33を介したユーザの文字入力によって、取得する手順を含む。本形態のMFP1は、操作パネル13の無線接続ボタン32への操作を受け付けると、第1方式のセットアップ手続きを試行し、第1方式のセットアップ手続きにてセットアップを完了できなかった場合、第2方式のセットアップ手続きを試行する。
【0025】
第1方式のセットアップ手続きの手順の概要を、図3に示す。第1方式のセットアップ手続きでは、ユーザは、対象AP6のAP情報を既に有しているPC5を用意する。PC5は、図3に示すように、接続アプリ51と、対象AP6の接続情報であるAP情報52と、を有し、対象AP6と無線通信可能な装置である。接続アプリ51は、PC5にAP情報52の送信処理を実行させるためのアプリケーションプログラムである。接続アプリ51は、AP情報を転送するプログラムの一例である。
【0026】
ユーザの指示等に基づいて、接続アプリ51を実行することで、PC5は、AP情報52の送信相手の装置に対し、図3(A)に示すように、WFD方式での接続を要求する。接続アプリ51は、MFP1のWFD方式による接続情報を予め有しており、接続アプリ51を実行中のPC5は、その接続情報を利用したWFD方式の接続要求を発信する。なお、PC5は、接続アプリ51を実行指示を受けて、自装置のユーザインタフェースに、送信相手の装置におけるWFD方式の接続機能を有効にする指示、例えば、MFP1の無線接続ボタン32を操作する指示、を含むメッセージを表示しても良い。ユーザは、セットアップ手続きを実行させるMFP1にて、操作パネル13の無線接続ボタン32を操作する。
【0027】
無線接続ボタン32への操作を受け付けることで、MFP1にて実行されるセットアップ手続きの処理であるセットアップ処理の手順について、図4のフローチャートを参照して説明する。セットアップ処理は、無線接続ボタン32への操作を受け付けたことを契機に、MFP1のCPU11にて実行される。
【0028】
ユーザによって無線接続ボタン32が操作されると、CPU11は、AP情報を取得するためのセットアップ手続きを開始したことを報知する(S101)。CPU11は、例えば、図3(A)に示すように、ディスプレイ31にセットアップ手続き中を示すメッセージ311を表示させる。また、例えば、無線接続ボタン32にバックライトが設けられていれば、CPU11は、そのバックライトを点滅または点灯させるなど、点灯パターンを変化させることで報知しても良い。なお、CPU11は、無線接続ボタン32が操作された後であってS101の前に、セットアップ手続きを開始するか否かを問い合わせる表示を行って、ユーザの指示を受け付けても良い。
【0029】
さらに、CPU11は、自装置のWFD方式の接続機能を有効にする(S102)。そして、CPU11は、端末装置からのWFD方式による接続要求の受け付けを待機する(S103)。これにより、MFP1は、周囲に存在するPC1等をWFD方式による無線通信で検出する。そして、CPU11は、WFD方式による端末装置との接続に成功したか否かを判断する(S104)。
【0030】
MFP1は、PC5から発信される接続要求に応答することで、PC5とのWFD方式の無線通信を確立できる。接続要求を受信していない等、端末装置との無線通信が確立されていないと判断した場合(S104:NO)、CPU11は、所定のタイムアウト時間が経過したか否かを判断する(S105)。タイムアウト時間が経過していないと判断した場合(S105:NO)、CPU11は、端末装置と接続されるか、タイムアウトするか、のいずれかとなるまで待機する。タイムアウト時間は、予め決められた固定時間であっても良いし、ユーザの指示等に基づく可変時間であっても良い。なお、MFP1は、複数の端末装置から接続要求を受信した場合、ユーザの操作による接続相手の選択を受け付けても良いし、接続エラーとしてS104にてNOと判断しても良い。
【0031】
WFD方式による無線通信の確立に成功し、PC5と接続されたと判断した場合(S104:YES)、CPU11は、接続された端末装置であるPC5からAP情報52を受信する(S111)。そして、CPU11は、PC5から受信したAP情報52を、AP情報23としてメモリ12に記憶する(S112)。PC5は、接続アプリ51の機能によって、MFP1からの要求に応じてAP情報52を送信する。具体的には、PC5との接続に成功した後、MFP1は、PC5にAP情報52を要求する信号を送信し、例えば、図3(B)に示すように、PC5からAP情報52を取得してメモリ12に記憶する。
【0032】
これにより、MFP1は、メモリ12に記憶されているAP情報23を用いて、WLAN方式にて対象AP6との無線通信が可能となる。例えば、MFP1は、AP情報23を用いて対象AP6を介してPC5等と接続し、印刷ジョブを受信できる。なお、AP情報23に既に情報が記憶されている場合、CPU11は、AP情報23を上書きする。つまり、AP情報23には、1つのアクセスポイントの情報のみが記憶される。CPU11は、上書きするか否かをユーザに確認しても良い。AP情報23は、複数の情報を含む場合もあり、例えば、SSID(Service Set IDentifierの略)は、AP情報の一部の一例である。
【0033】
そして、CPU11は、S102にて開始したWFD方式の接続機能を無効にする(S113)。なお、CPU11は、S113の前に、PC5との接続を切断しても良い。さらに、CPU11は、WLAN方式の接続機能を有効にする(S114)。
【0034】
WFD方式によって端末装置と接続し、端末装置からAP情報を受信するMFP1の手順、すなわち、S102~S112の手順は、第1手順の一例である。第1手順には、ユーザによる入力ボタン群33への入力操作は含まれない。つまり、第1方式のセットアップ手続きでは、接続アプリ51を備えるPC5を利用することで、無線接続ボタン32の操作を受け付けた後にはユーザによる入力操作を受け付けることなく、MFP1は、AP情報52を取得できる。なお、第1手順には、セットアップ処理の開始指示の操作、複数のAP情報を取得した場合のAP情報の選択操作、複数の端末装置からの接続要求を受信した場合のデバイスの選択操作等、少数のユーザ操作が含まれても良い。
【0035】
一方、本形態のMFP1は、PC5等の端末装置からの接続要求を受信できないなど、端末装置とのWFD方式の通信に失敗した場合、第2方式のセットアップ手続きを自動的に開始する。接続要求の待機時間がタイムアウト時間に達したと判断した場合(S105:YES)、CPU11は、WFD方式の接続機能を無効にし(S121)、WLAN方式の接続機能を有効にする(S122)。なお、CPU11は、WFD方式の接続がタイムアウトとなった後、第1方式のセットアップ手続きでのAP情報の取得に失敗したことを報知して、第2方式のセットアップ手続きでのAP情報の取得を試行するか否かをユーザに問い合わせても良い。
【0036】
MFP1にて無線接続ボタン32が操作されたものの、接続アプリを実行中の端末装置とMFP1とのWFD方式での通信が不可能であるなど、WFD方式の接続要求を所定時間内に受け付けなかった場合、MFP1は、WFD方式の接続の試行を中止する。また、PC5での接続アプリ51の実行が中断されたりPC5が適切なAP情報52を有していないなど、PC5との接続には成功したもののAP情報52を受信できなかった場合にも、MFP1は、第1方式のセットアップ手続きを中止し、第2方式のセットアップ手続きを開始する。
【0037】
そして、CPU11は、第2方式処理を実行する(S123)。第2方式処理は、第2方式のセットアップ手続きを行う処理である。第2方式処理の手順について、図5のフローチャートを参照して説明する。また、第2方式のセットアップ手続きの概要を、図6に示す。
【0038】
第2方式処理では、CPU11は、第2方式のセットアップ手続きを開始したことを報知する。具体的には、CPU11は、接続可能なアクセスポイントのSSIDを検索中であることを報知する(S201)。CPU11は、例えば、図6(A)に示すように、ディスプレイ31にSSID検索中を示すメッセージ312を表示させる。第2方式を開始したことを報知することで、例えば、PC5とのWFD方式での通信に失敗したことをユーザが把握できる。
【0039】
第2方式では、MFP1は、WLAN方式にて通信可能なアクセスポイントを検索し(S202)、アクセスポイントからのSSIDを含む応答信号を待機する。第2方式のセットアップ手続きでは、MFP1は、例えば図6(A)に示すように、通信IF14を介して、アクセスポイントを検索する検索信号を送信し、対象AP6等からの応答信号を待機する。
【0040】
応答信号を受信したら、CPU11は、検索結果一覧をディスプレイ31に表示させ(S203)、ユーザによる選択入力を受け付ける。検索結果一覧の選択肢には、検索によって見つかったSSIDの名称の一覧に加え、新規のSSIDの入力指示を受け付ける選択肢が含まれる。なお、本形態のMFP1のディスプレイ31は、2ラインのみ表示可能であることから、CPU11は、例えば、図6(A)に示すように、検索結果の1つを含む入力受付メッセージ313を表示させ、入力ボタン群33中の方向ボタンへの入力に応じて表示される選択肢を変更し、OKボタンへの入力によって選択の決定を受け付ける。
【0041】
CPU11は、検索によって見つかったSSIDの選択を受け付けたか否かを判断する(S204)。SSIDの選択を受け付けていないと判断した場合(S204:NO)、CPU11は、新規SSIDの入力指示を受け付けたか否かを判断する(S205)。新規SSIDの入力指示も受け付けていないと判断した場合(S205:NO)、SSIDの選択と新規入力とのいずれかを受け付けるまで待機する。
【0042】
新規SSIDの入力指示を受け付けたと判断した場合(S205:YES)、CPU11は、新規SSIDの入力の受け付けを開始する入力画面をディスプレイ31に表示させ(S206)、入力を受け付ける(S207)。CPU11は、操作パネル13の入力ボタン群33への操作によって、例えば、1文字ずつの入力を受け付ける。
【0043】
S207の後、または、SSIDの選択を受け付けたと判断した場合(S204:YES)、CPU11は、認証方法の選択を受け付ける(S210)。本形態のMFP1は、例えば、オープンシステム認証、共有キー認証、ユーザIDとパスワードとによるユーザ認証など、複数の認証方法に対応している。S210にて、CPU11は、例えば、選択可能な認証方法の選択肢をディスプレイ31に表示させ、OKボタンへの入力による選択を受け付ける。認証方法の選択を受け付けていないと判断した場合(S210:NO)、CPU11は、受け付けるまで待機する。
【0044】
認証方法の選択を受け付けたと判断した場合(S210:YES)、CPU11は、選択された認証方法にて用いられる認証情報の入力画面をディスプレイ31に表示させ(S211)、入力を受け付ける(S212)。例えば、SSIDとパスワードとの組み合わせによる認証方法が選択された場合、CPU11は、S211にて、例えば、図6(B)に示すように、パスワードの入力の受け付けを開始する入力画面314をディスプレイ31に表示させ、ユーザによるパスワードの入力を受け付ける。パスワードは、AP情報の残りの一例である。MFP1は、例えば、操作パネル13の入力ボタン群33への操作による1文字ずつの文字入力によって、パスワードの入力を受け付ける。ユーザによる入力ボタン群33を介した文字入力を含むAP情報の取得手順は、第2手順の一例である。
【0045】
CPU11は、S204での選択またはS207での入力によって決定したSSIDと、S212にて受け付けたパスワードと、の組をAP情報23としてメモリ12に記憶し(S213)、第2方式処理を終了して、セットアップ処理に戻る。S213でも、CPU11は、AP情報23を上書きする。なお、選択された認証方法がオープンシステム認証であれば、パスワード等の追加の入力は不要であり、CPU11は、S211とS212をスキップして、SSIDをAP情報23としてメモリ12に記憶する。
【0046】
図4のセットアップ処理の説明に戻る。S114の後、または、S123の第2方式処理の終了後、CPU11は、メモリ12に記憶したAP情報23を利用して、WLAN方式での対象AP6への接続を試行する(S131)。そして、接続に成功したか否かを判断する(S132)。接続に成功したと判断した場合(S132:YES)、CPU11は、接続成功を報知する(S133)。
【0047】
一方、接続に失敗したと判断した場合(S132:NO)、CPU11は、接続失敗を報知する(S134)。S134では、CPU11は、第2方式処理のS201での報知とは異なる内容であって、セットアップには成功したものの対象AP6への接続には失敗したことを報知する。この報知により、CPU11は、電源が入っていない等の対象AP6側の不具合、あるいは、第2方式のセットアップ手続きを行った場合にはパスワード等の入力ミス、の可能性をユーザに示唆できる。
【0048】
さらに、CPU11は、接続の試行を開始してから所定時間または所定回数の試行を行い、接続の試行をタイムアウトするか否かを判断する(S135)。タイムアウトしないと判断した場合(S135:NO)、CPU11は、S131に戻り、対象AP6への接続をリトライする。S133の後、または、タイムアウトすると判断した場合(S135:YES)、CPU11は、セットアップ処理を終了する。なお、CPU11は、セットアップ処理の終了前に、OKボタン等へのユーザの操作を受け付けを待機し、受け付け後にセットアップ処理を終了するとしても良い。また、対象AP6への接続に失敗したとしても、AP情報23はメモリ12に記憶されているので、MFP1は、例えば、定常的に対象AP6への接続を試行できる。これで、セットアップ処理の説明を終了する。
【0049】
続いて、上述したセットアップ処理とは異なるセットアップ手続きについて説明する。本形態のMFP1は、メモリ12にAP情報23が記憶されていない状態で操作パネル13の電源ボタン34(図2参照)が操作された場合、無線接続ボタン32への操作を受け付けていなくても、自動的にセットアップ手続きを開始する。自動的に実行されるセットアップ手続きを含むスタート処理の手順について、図7のフローチャートを参照して説明する。スタート処理は、MFP1の電源オンを契機に、MFP1のCPU11にて実行される。なお、スタート処理のうち、図4のセットアップ処理と同じ手順については、図4と同じ符号を付して、説明を簡略化する。
【0050】
スタート処理では、CPU11は、まず、メモリ12にAP情報23が記憶されているか否かを判断する(S301)。記憶されていると判断した場合(S301:YES)、CPU11は、記憶されているAP情報23を読み出す(S302)。
【0051】
メモリ12にAP情報23が記憶されていないと判断した場合(S301:NO)、CPU11は、第1方式のセットアップ手続きを開始する。具体的には、CPU11は、WFD方式の接続機能を有効にし(S102)、端末装置からの接続要求を待機する(S103~S105)。端末装置と接続されたと判断した場合(S104:YES)、CPU11は、端末装置からAP情報を受信して(S111)、メモリ12に記憶し(S112)、WFD方式の接続機能を無効にする(S113)。つまり、本形態のMFP1は、メモリ12にAP情報23が記憶されていない状態で電源ボタン34が操作された場合、無線接続ボタン32への操作を受け付けることなく、第1方式のセットアップ手続きを開始する。電源ボタン34への操作による電源オンの受け付けは、所定の接続条件を満たす一例である。
【0052】
S302またはS113の後、CPU11は、WLAN方式の接続機能を有効にし(S114)、メモリ12に記憶されたAP情報23を用いて、対象AP6への接続を試行する(S131)。対象AP6への接続に成功したと判断した場合(S132:YES)、CPU11は、接続成功を報知する(S133)。CPU11は、例えば、ディスプレイ31に接続成功を示すメッセージを表示させ、アクセスポイントを介しての無線ネットワークへの接続が完了していることを報知する。CPU11は、例えば、ディスプレイ31にWi-Fiのマークを表示させる、無線接続ボタン32のバックライトを点灯する、としても良い。
【0053】
一方、端末装置との接続に失敗したと判断した場合(S105:YES)、または、AP情報23を用いた対象AP6への接続に失敗したと判断した場合(S132:NO)、CPU11は、接続失敗を報知する(S134)。なお、AP情報23がメモリ12に記憶されている場合、CPU11は、対象AP6への接続をリトライしても良い。
【0054】
このようにすれば、電源オンによって直ぐに第1方式のセットアップ手続きが開始され、アクセスポイントへの接続が試行されるので、無線接続ボタン32を操作するユーザの手間も省くことができる。ただし、この場合のセットアップ手続きは、ユーザによる入力操作によって開始したものではないので、第2方式のセットアップ手続きが自動的に開始されて入力操作を求められるとユーザが戸惑う可能性がある。本形態のMFP1は、スタート処理では、第1方式にてAP情報23を取得できなかった場合であっても、第2方式のセットアップ手続きを開始しないので、ユーザが戸惑う可能性を低減できる。
【0055】
続いて、ユーザ操作に基づいて、第2方式のセットアップ手続きを開始する手順について説明する。本形態のMFP1は、上述したセットアップ処理を開始する無線接続ボタン32への操作とは異なる操作での、第2方式のセットアップ手続きの開始の指示も受け付け可能である。MFP1は、入力ボタン群33への複数回の選択操作によって、第1方式のセットアップ手続きを試行することなく、第2方式のセットアップ手続きを開始する指示を受け付ける。
【0056】
MFP1は、例えば、メニューボタンへの操作を受け付けた場合、各種のメニューを選択可能に表示させ、ユーザの選択を受け付ける。本形態のMFP1のディスプレイ31は、2ラインの文字列のみを表示可能であり、例えば、図8に示すように、操作方法の指示と1つの選択肢のみが表示される。表示される選択肢を変更させるためには、ユーザが入力ボタン群33の方向ボタンへの操作を行う必要がある。
【0057】
具体的には、MFP1は、図8(A)に示すように、メニューボタンの操作を受け付けるとメニューの選択肢を1つずつ表示する。方向ボタンとOKボタンとの操作によってネットワークの設定が選択されると、MFP1は、図8(B)に示すように、通信方式の選択を受け付ける。さらに、WLANが選択されると、MFP1は、図8(C)に示すように、セットアップ手続き方法の選択を受け付ける。
【0058】
WLAN方式でのセットアップウィザードの実行指示を受け付けると、MFP1は、前述した第2方式処理と同様に、SSIDを検索し、検索結果からのユーザによる選択を受け付け、さらに認証方法の選択と認証情報の入力とを受け付けることで、対象AP6のAP情報の取得を試行する。この手順によっても、MFP1は、対象AP6のAP情報が取得できたらメモリ12に記憶し、対象AP6への接続を試行する。
【0059】
以上、詳細に説明したように、本形態のMFP1は、1つの無線接続ボタン32が操作されることで、端末装置からAP情報を取得して自動的にセットアップを行う第1方式のセットアップ手続きを開始し、第1方式にてAP情報が取得できなかった場合には、入力ボタン群33への入力操作によってAP情報を取得してセットアップを行う第2方式のセットアップ手続きを自動的に開始する。これにより、ユーザは無線接続ボタン32の操作という1つの簡単な操作によって、MFP1に2つの方式のセットアップ手続きを試行させることが可能になり、無線ネットワークのアクセスポイントへの接続のためのセットアップに関する操作性が向上している。
【0060】
さらに、本形態のMFP1は、無線接続ボタン32の操作を受け付けるだけで、WFD方式とWLAN方式とを切り替えて無線通信する。つまり、AP情報を提供可能な端末装置からのAP情報の取得を優先したうえで、取得できなくても、続けて接続可能なアクセスポイントを検索するので、AP情報の入力につながる情報を取得できる可能性が高い。
【0061】
さらに、本形態のMFP1は、第1手順では、アクセスポイントと通信せずにPC5等の端末装置からAP情報を取得し、第2手順ではアクセスポイントと通信してAP情報の一部を取得するという別々の手順でAP情報の取得を試行するので、AP情報を取得できる確率が高まる。また、第1手順でのAP情報の取得に失敗した場合や、取得したAP情報によるアクセスポイントへの接続に失敗した場合に、それぞれ異なる内容を報知するので、どちらの場合でも次の行うべきユーザのアクションが分かり易い。
【0062】
さらに、本形態のMFP1は、メモリ12にAP情報23が記憶されていてもいなくても、無線接続ボタン32が操作されればセットアップ処理を実行し、セットアップ処理にてAP情報23が取得できればメモリ12に上書きする。従って、例えば、AP情報23を更新したい場合でも、メモリ12に記憶済みのAP情報23を取得した際の取得方法に関わらず、ユーザの手順は初回と同様に無線接続ボタン32の操作だけでよいので、操作が簡単で安心である。
【0063】
さらに、本形態のMFP1は、無線接続ボタン32を操作する代わりに、入力ボタン群33への操作によって第2方式のセットアップ手続きを開始させることもできる。ただし、本形態のMFP1のようにディスプレイ31に表示できる内容が少なく、入力ボタン群33に含まれるボタンの種類も多くない場合、操作方法が分かり難く、操作回数も多くなりがちであって、第2方式のセットアップ手続きを開始させるまでの入力操作が煩雑になる。一方、本形態のMFP1は、無線接続ボタン32への操作だけで、第1方式のセットアップ手続きにてAP情報23を取得できなかった場合、入力ボタン群33への複数回の操作を必要とせず、自動的に第2方式のセットアップ手続きを開始するので、ユーザの手間が少ない。
【0064】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。従って本明細書に開示される技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、電子デバイスの一例は、一般的な家庭用ないしオフィス用プリンタ、スキャナ、複合機の他、例えばミシン、ラベルプリンタ、産業用プリンタ、3Dプリンタ、画像データに従った加工を行う工作機械が該当する。また、外部デバイスの一例は、PCに限らず、スマートフォン、タブレットコンピュータであっても良い。
【0065】
また、図2に示した操作パネル13の外観は一例であり、各ボタンの配置やボタンの数等は、図示の例に限らない。例えば、各ボタンは、メカニカルなボタンであってもよいし、タッチパネルに表示されるソフトボタンであってもよい。また、例えば、本形態では、2行の文字列を表示できるディスプレイ31の例を示しているが、1行のみまたは3行以上の文字列を表示できるものでも良い。
【0066】
また、本形態では、第1方式のセットアップ手続きでは、WFD方式にてPC5と接続するとしたが、WFD方式に限らない。例えば、近接無線通信によって接続しても良いし、USB等の有線接続でも良い。
【0067】
また、例えば、本形態では、AP情報23には1つのみのアクセスポイントの接続情報が記憶されるとしたが、MFP1は、複数のアクセスポイントの接続情報を記憶しても良い。その場合、MFP1は、記憶している複数の接続情報のうち、接続可能なアクセスポイントの接続情報を用いるとすればよい。
【0068】
また、例えば、本形態では、第1方式のセットアップ手続きにてAP情報23を取得した場合、アクセスポイントとの接続に失敗しても第2方式のセットアップ手続きは行わないとしたが、行っても良い。ただし、AP情報23を取得した上でアクセスポイントとの接続に失敗した場合、アクセスポイント側の不具合である可能性が高く、第2方式のセットアップ手続きを行ったとしても接続に失敗する可能性が高い。そのため、アクセスポイントへの接続成否を報知した後はセットアップ手続きを終了する方が好ましい。
【0069】
また、例えば、本形態では、AP情報23を取得した後、アクセスポイントへの接続に失敗した場合、リトライするとしたが、しなくても良い。例えば、セットアップ処理のS135の判断を削除し、S132にてNOであれば、S134による報知後、直ちにセットアップ処理を終了するとしても良い。ただし、アクセスポイントとの通信環境が悪い場合などには、リトライすることで接続される可能性もあることから、所定回数リトライすることで接続に成功する可能性が高まる。
【0070】
また、例えば、本形態では、第1方式のAP情報23の取得に失敗した場合、第2方式を開始したことを示す報知を行うとしたが、報知しなくても良い。ただし、報知することで、例えば、PCの接続アプリの実行状況を確認する等のユーザの行為を促すことができる。また、MFP1は、キャンセルボタン等の操作によってセットアップ手続きを中断できるとしても良く、その場合、例えば、第2方式を実行させたくないユーザは、報知されることでキャンセルするタイミングが分かる。
【0071】
また、例えば、本形態では、入力ボタン群33への操作によって、第1方式のセットアップ手続きを行わず第2方式のセットアップ手続きを開始できるとしたが、できなくても良い。例えば、無線LANでのアクセスポイントへの接続をセットアップするための指示は、常に無線接続ボタン32によって受け付けるとしても良い。
【0072】
また、例えば、本形態では、メモリ12にAP情報23が記憶されていない状態で電源オンを受け付けた場合、第1方式のセットアップ手続きを行うとしたが、行わなくても良い。つまり、スタート処理は、無くても良い。
【0073】
また、実施の形態に開示されている任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる、または並列に実行できる。
【0074】
また、実施の形態に開示されている処理は、単一のCPU、複数のCPU、ASICなどのハードウェア、またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また、実施の形態に開示されている処理は、その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体、または方法等の種々の態様で実現することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 MFP
11 CPU
13 操作パネル
14 通信IF
31 ディスプレイ
32 無線接続ボタン
33 入力ボタン群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8