IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-バッテリ 図1
  • 特許-バッテリ 図2
  • 特許-バッテリ 図3
  • 特許-バッテリ 図4
  • 特許-バッテリ 図5
  • 特許-バッテリ 図6
  • 特許-バッテリ 図7
  • 特許-バッテリ 図8
  • 特許-バッテリ 図9
  • 特許-バッテリ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】バッテリ
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241210BHJP
   B62J 43/16 20200101ALI20241210BHJP
   B62J 43/28 20200101ALI20241210BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20241210BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62J43/16
B62J43/28
B62J45/00
H01M50/244 Z
H01M50/583
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020194484
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083187
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】長屋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】行永 滉平
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2012/070109(JP,A1)
【文献】特開2010-251127(JP,A)
【文献】特開2012-051448(JP,A)
【文献】特開2000-082456(JP,A)
【文献】国際公開第2020/188706(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0123483(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016119570(DE,A1)
【文献】登録実用新案第3061222(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62J 43/10
B62J 43/20
B62J 45/00
B62M 6/90
H01M 50/244
H01M 50/249
H01M 50/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の鞍乗型車両の車体フレームの内側に固定されるバッテリであって、
走行用の電力が充電されるバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールに接続された回路部品と、
前記バッテリモジュール及び前記回路部品を収容したバッテリケースと、を備え、
前記バッテリケースは左右のケース半体を有し、一方のケース半体には、前記回路部品を外部に露出させる開口が部分的に形成されると共に、当該開口を覆うカバー部材が着脱可能に取り付けられており、
側面視にて前記開口が前記車体フレームを避けた位置に形成され
前記開口の開口縁部には前記車体フレームに固定されるケース固定部が形成されていることを特徴とするバッテリ。
【請求項2】
前記車体フレームは、前記バッテリケースの側方を通る上側フレーム及び下側フレームを有しており、
前記上側フレーム及び前記下側フレームの間に前記開口が位置付けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記上側フレーム及び前記下側フレームは、車体側方視において前記バッテリケースと重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記回路部品が過電流によって切断されるヒューズであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力によって走行する電動式の鞍乗型車両が開発されている。電動式の鞍乗型車両として、シート下方にバッテリ等を収容したスクータタイプの車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両には、車体フレームとして左右一対のシートフレームが設けられており、一対のシートフレームの内側にバッテリが設置されている。バッテリケースにはバッテリモジュール及び回路部品が収容されており、バッテリケースの外面の複数の固定部がブラケット等を介して一対のシートフレームにネジ止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-081324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回路部品の破損時には、車体フレームからバッテリケースを取り外さなければ、バッテリケースの内側の回路部品の交換作業を実施することができない。このため、作業者にとって回路部品の交換作業が煩わしいものになっていた。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、作業者による回路部品の交換作業の作業性を向上させることができるバッテリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のバッテリは、電動式の鞍乗型車両の車体フレームの内側に固定されるバッテリであって、走行用の電力が充電されるバッテリモジュールと、前記バッテリモジュールに接続された回路部品と、前記バッテリモジュール及び前記回路部品を収容したバッテリケースと、を備え、前記バッテリケースは左右のケース半体を有し、一方のケース半体には、前記回路部品を外部に露出させる開口が部分的に形成されると共に、当該開口を覆うカバー部材が着脱可能に取り付けられており、側面視にて前記開口が前記車体フレームを避けた位置に形成され、前記開口の開口縁部には前記車体フレームに固定されるケース固定部が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のバッテリによれば、車体フレームの側方からカバー部材が取り外されることで、側面視にてバッテリケースの開口から回路部品が外部に露出される。回路部品の破損時に車体フレームからバッテリを取り外さなくても、バッテリケースからカバー部材を取り外すことで、バッテリケースの開口を通じて回路部品を交換することができる。よって、作業者が回路部品を容易に交換することができ、回路部品の交換作業の作業性を向上させることができる。バッテリケースの開口付近の剛性が低下するが、車体フレームによって外側からバッテリが保護されているため、バッテリケースの開口付近に強い外力が直に作用することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の側面図である。
図2】本実施例の車体フレーム及び電気機器の右側面図である。
図3】本実施例の車体フレーム及びバッテリの右前方から見た斜視図である。
図4】本実施例の車体フレーム及びバッテリの左前方から見た斜視図である。
図5】本実施例の右側のケース半体の左側面図である。
図6】本実施例の左側のケース半体を取り外したバッテリの左側面図である。
図7】本実施例の左側のケース半体を取り外したバッテリの平面図である。
図8】本実施例の車体フレーム及びバッテリの平面図である。
図9】本実施例の車体フレーム及びバッテリの左側面図である。
図10図9からヒューズカバーを取り外した左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のバッテリは、電動式の鞍乗型車両の車体フレームの内側に固定されている。バッテリのバッテリケースには、走行用の電力が充電されるバッテリモジュール及びバッテリモジュールに接続された回路部品が収容されている。バッテリケースには側面視にて前記車体フレームを避けた位置に開口が形成され、この開口はバッテリケースに着脱可能に取り付けられたカバー部材に覆われている。回路部品の破損時に車体フレームからバッテリを取り外さなくても、車体フレームの側方からカバー部材を取り外すことで、バッテリケースの開口から外部に露出した回路部品を交換することができる。よって、作業者が回路部品を容易に交換することができ、回路部品の交換作業の作業性を向上させることができる。バッテリケースの開口付近の剛性が低下するが、車体フレームによって外側からバッテリが保護されているため、バッテリケースの開口付近に強い外力が直に作用することがない。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。本実施例では鞍乗型車両はスクータタイプの鞍乗型車両であるが、鞍乗型車両は電動式又はハイブリッド式の他の鞍乗型車両でもよい。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
【0011】
図1に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム10(図2参照)に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車両前側にはフロントフレームカバー21が設けられており、フロントフレームカバー21の後側にはライダーの足回りを保護するレッグシールド22が設けられている。レッグシールド22の下端から後方に向かってフートボード23が延在しており、フートボード23の後方にはシートフレームカバー24が設けられている。レッグシールド22とフートボード23によってシート34の前方にライダーの足置き空間が形成されている。
【0012】
フロントフレームカバー21の上側にはハンドル31が設けられ、フロントフレームカバー21の下側には一対のフロントフォーク32を介して前輪33が回転可能に支持されている。シートフレームカバー24の上側にはシート34が設けられており、シートフレームカバー24の下側にはスイングアームカバー36に覆われたスイングアーム(不図示)が設けられている。スイングアームの後部には後輪37が回転可能に支持されており、このスイングアームの後部はサスペンション38を介して車体フレーム10に接続されている。また、シート34の下方にはバッテリ60(図3参照)が収容されている。
【0013】
バッテリ60には、高電圧回路の回路部品として過電流によって切断されるヒューズ94が設けられている(図6参照)。ヒューズ94の切断時には、車体フレーム10からバッテリケース61を取り外さなければ、バッテリケース61の内側のヒューズ94を交換できない。そこで、本実施例のバッテリケース61にはヒューズ94を露出させる交換作業用の開口95が形成されている(図10参照)。一般に、バッテリには高電圧回路を遮断するサービスプラグを設けなければならないが、本実施例ではサービスプラグの代わりにヒューズ94の取り外しによって高電圧回路を遮断することができる。
【0014】
以下、図2から図4を参照して、本実施例の車体フレーム及びバッテリについて説明する。図2は本実施例の車体フレーム及び電気機器の右側面図である。図3は本実施例の車体フレーム及びバッテリの右前方から見た斜視図である。図4は本実施例の車体フレーム及びバッテリの左前方から見た斜視図である。なお、図3及び図4は、車体フレームからバッテリ以外の電気機器が取り外された状態を示している。
【0015】
図2に示すように、車体フレーム10の前側部分には、ステアリングシャフト(不図示)が挿入されるヘッドパイプ11が設けられている。ヘッドパイプ11からフロントフレーム12が下方に向かって延出し、フロントフレーム12の下部から一対のロアフレーム13が後方に向かって延出している。一対のロアフレーム13の略中間部から一対のシートフレーム(上側フレーム)14が斜め後方に立ち上がり、一対のロアフレーム13の後部から一対のサポートフレーム(下側フレーム)15が斜め後方に立ち上がっている。一対のシートフレーム14の後部には一対のサポートフレーム15の後部が下側から接続されている。
【0016】
一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15の間、すなわちシートフレームカバー24の内側にはバッテリ60の収容空間が形成されている。設置空間の上側には、電源電力を所定電圧の直流電力に変換する充電器41と、充電器41からの直流電力を充電するバッテリ60と、直流電力の電圧を降圧するDCDCコンバータ42とが設置されている。設置空間の下部には交流電力によって駆動するモータ43が設置されている。モータ43の前方には直流電力を交流電力に変換するインバータ44が設置され、インバータ44を介してモータ43がバッテリ60に接続されている。
【0017】
一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15は、それぞれ一対のピボットブラケット16を介して前後方向で接続されている。一対のピボットブラケット16にはスイングアーム(不図示)が上下方向に揺動可能に連結されており、上記したようにスイングアームにはスイングアームカバー36が取り付けられている。スイングアームカバー36によってモータ43のスプロケット(不図示)及びチェーン(不図示)が覆われている。バッテリ60の電力がモータ43に供給されて、モータ43からスプロケット及びチェーンを介して後輪37に駆動力が出力されている。
【0018】
図3及び図4に示すように、シート34(図1参照)の下方には、一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15の間にバッテリ60の収容空間が形成されている。一対のシートフレーム14にはホルダプレート51が設けられており、この一対のホルダプレート51には車幅方向に延在する前側ブリッジ52が固定されている。一対のシートフレーム14が一対のホルダプレート51及び前側ブリッジ52を介して接続されている。前側ブリッジ52の上側にはバッテリ60が取り付けられ、前側ブリッジ52の下側にはモータ43(図2参照)が取り付けられている。
【0019】
前側ブリッジ52の両端には一対のホルダブラケット53が設けられており、一対のホルダブラケット53が一対のホルダプレート51に固定されている。一対のホルダプレート51は一対のシートフレーム14よりも前方に突き出し、一対のホルダブラケット53は一対のホルダプレート51よりも前方に突き出している。一対のホルダブラケット53及び一対のホルダプレート51によって前側ブリッジ52がシートフレーム14よりも前方に位置付けられている。また、前側ブリッジ52は、バッテリ60の下部前側に干渉しないように、車幅方向外側の一対のホルダブラケット53から車幅方向内側に向かって前方へ湾曲している。
【0020】
前側ブリッジ52には、車幅方向に離間した一対のバッテリブラケット54と一対のモータブラケット55が設けられている。一対のバッテリブラケット54は前側ブリッジ52から上方に突き出してバッテリ60を下側から支持し、一対のモータブラケット55は前側ブリッジ52から下方に突き出してモータ43を上側から支持している。各ブラケット54、55の基端部は前側ブリッジ52の表面に接合されており、各ブラケット54、55の先端部はネジ止め用の取付穴が形成されている。一対のバッテリブラケット54は前側ブリッジ52の中央付近でバッテリ60を支持しており、一対のモータブラケット55は一対のバッテリブラケット54よりも車幅方向外側でモータ43を支持している。一対のサポートフレーム15は、バッテリ60の後方で車幅方向に延在する後側ブリッジ56を介して接続されている。
【0021】
バッテリ60のバッテリケース61は、左右割り構造であり、左側のケース半体62と右側のケース半体63とを有している。左側のケース半体62は右面を開口したボックス状に形成され、右側のケース半体63は左面を開口したボックス状に形成されている。左側のケース半体62が収容空間の左寄りに位置付けられ、右側のケース半体63が収容空間の中央に位置付けられている。左右のケース半体62、63の車幅方向の合計寸法は、各ケース半体62、63の車長方向及び高さ方向の寸法よりも小さい。車体フレーム10には、短手方向が車幅方向を向くようにバッテリ60が搭載されている。
【0022】
左側のケース半体62の前面は、車両前方から車両後方に向かって車幅方向の寸法が大きくなるように傾斜している。左側のケース半体62の前面には一対の高電圧ハーネスコネクタ64が設けられている。左側のケース半体62の左側面下部にはヒューズカバー(カバー部材)65が取り付けられている。ケース半体62の左側面のヒューズカバー65付近に左側ケース固定部(ケース固定部)66が形成され、左側ケース固定部66は左側ブラケット67を介して左側のサポートフレーム15に固定されている。ケース半体62の後面から後方に後側ケース固定部68(図8参照)が突き出し、後側ケース固定部68は後側ブリッジ56に固定されている。
【0023】
バッテリ60の前面から左右のケース半体62、63の合わせ面付近が前方に突き出して縦長の突出部71が形成されている。右側のケース半体63の前面上部から前方にシート連結部72が突き出しており、ケース半体63の前面下部から前方に前側ケース固定部73が突き出している。ケース半体63の前面中央部には、突出部71の右側の空間を上下に分ける隔壁74が形成されている。シート連結部72と隔壁74の間で突出部71の右側面に低電圧ハーネスコネクタ75が設けられ、隔壁74と前側ケース固定部73の間で突出部71の右側面に高電圧ハーネスコネクタ76が設けられている。
【0024】
シート連結部72にはシート34に固定されたシートヒンジブラケット(不図示)が揺動可能に支持されている。シート34は、シートヒンジブラケットを介してシートフレームカバー24(図1参照)の内側のバッテリ60によって下方から支持されている。バッテリ60の前端部分を支点にしてシート34が開かれることで、シートフレームカバー24の内側のバッテリ60が外部に露出される。シート連結部72が右側のケース半体63に一体的に成形されているため、シート34が開かれた状態でシート34からの下向きの負荷に対するシート連結部72の支持剛性が高められている。
【0025】
前側ケース固定部73は、車幅方向に取付穴が貫通した円筒状に形成されている。前側ケース固定部73の取付穴と一対のバッテリブラケット54の取付穴に長尺ボルトが差し込まれて、長尺ボルトを介して前側ケース固定部73が一対のバッテリブラケット54に固定されている。右側のケース半体63の右側面の前側ケース固定部73の付近から右方に右側ケース固定部77が突き出し、右側のケース半体63の右側面の後端付近から右方に後側ケース固定部78が突き出している。右側ケース固定部77は右側のホルダプレート51に固定され、後側ケース固定部78は後側ブリッジ56に固定されている。
【0026】
このように、バッテリケース61の外面には、車体フレーム10の前後方向に離れた箇所に固定される前側ケース固定部73及び後側ケース固定部68、78が形成されている。前側ケース固定部73が前側ブリッジ52に固定され、後側ケース固定部68、78が後側ブリッジ56に固定されて、バッテリケース61を介して車体フレーム10の前後方向に離れた前側ブリッジ52及び後側ブリッジ56が連結されている。バッテリ60を介して前側ブリッジ52及び後側ブリッジ56が一体化されて、バッテリ60の剛性によって前後方向の荷重に対する車体フレーム10の剛性が高められている。
【0027】
図5から図7を参照して、バッテリの詳細構成について説明する。図5は本実施例の右側のケース半体の左側面図である。図6は本実施例の左側のケース半体を取り外したバッテリの左側面図である。図7は本実施例の左側のケース半体を取り外したバッテリの平面図である。
【0028】
図5に示すように、右側のケース半体63は、上下方向及び前後方向に広い右側壁81と、右側壁81の外縁から車幅方向に延びる上壁82、底壁83、前壁84、後壁85とを有している。右側壁81の内面には、前壁84付近に上下に離間したハーネスコネクタ75、76(図6参照)用のコネクタ開口86、87が形成され、コネクタ開口86、87の後隣りに上下に並んだ前側モジュール固定部88a-88cが形成されている。また、右側壁81の内面には、後壁85に沿って後側モジュール固定部88dが形成され、上壁82に沿って上側モジュール固定部88eが形成され、底壁83に沿って下側モジュール固定部88f、88gが形成されている。
【0029】
このように、右側のケース半体63の内面には、バッテリモジュール90の前側を固定する前側モジュール固定部88a-88cと、バッテリモジュール90の後側を固定する後側モジュール固定部88dとが形成されている。また、ケース半体63の内面には、バッテリモジュール90の上側を固定する上側モジュール固定部88eと、バッテリモジュール90の下側を固定する下側モジュール固定部88f、88gとが形成されている。バッテリモジュール90が全周に亘って右側のケース半体63に固定されて、バッテリモジュール90の剛性によって前後方向及び上下方向の荷重に対するケース半体63の剛性が高められている。
【0030】
前側モジュール固定部88aは前壁84を挟んでシート連結部72の逆側に形成されている。バッテリモジュール90の剛性によってシート連結部72が補強されて、シート34側からの荷重に対するシート連結部72の剛性が向上されている。前側モジュール固定部88cは前壁84を挟んで前側ケース固定部73の逆側に形成され、後側モジュール固定部88dは後壁85を挟んで後側ケース固定部78の逆側に形成されている。バッテリモジュール90の剛性によって前側ケース固定部73及び後側ケース固定部78が補強されて、車体フレーム10に対するバッテリ60の固定位置の剛性が高められている。
【0031】
図6及び図7に示すように、バッテリケース61には、バッテリモジュール90、各種電子部品、各種回路部品が収容されている。バッテリモジュール90は、複数のバッテリセルを電気的に接続して、複数のバッテリセルを積み重ねたボックス状に形成されている。バッテリモジュール90には走行用の電力が充電されている。バッテリモジュール90の外縁はケース半体63の周壁に沿って形成され、バッテリモジュール90の下縁の前側よりも下縁の後側が下方に位置する段状に形成されている。バッテリモジュール90の外縁には各モジュール固定部88a-88g(図5参照)に固定される取付部91a-91gが設けられている。
【0032】
バッテリモジュール90の右側は伝熱シート(不図示)を介して右側のケース半体63の右側壁81に接している。バッテリモジュール90の左側はケース半体63から左方にはみ出しており、バッテリモジュール90の左方には板状のモジュールブラケット92が位置付けられている。モジュールブラケット92は、右側のケース半体63の複数のモジュール固定部88a-88g(図5参照)のうち任意の数か所に固定されている。モジュールブラケット92の左側面には、バッテリ60を制御するバッテリ制御装置93、電力を中継するリレー等の電子部品と、過電流によって切断されるヒューズ94等の回路部品とが取り付けられている。
【0033】
側面視にて、バッテリモジュール90の後部上側に重なるように、バッテリ制御装置93が設けられ、バッテリモジュール90の後部下側に重なるように、ヒューズ94が設けられている。ヒューズ94はバッテリモジュール90の下方に位置しており、ヒューズカバー65(図9参照)の裏側に位置している。側面視にて、他の電子部品及び回路部品もバッテリモジュール90に重なっており、バッテリモジュール90の左側面の投影面の内側に設置されている。このため、バッテリケース61の内側には、バッテリモジュール90、電子部品、回路部品がコンパクトに収容されている。
【0034】
モジュールブラケット92上の電子部品及び回路部品は、左側のケース半体62に覆われている。このとき、右側のケース半体63に重量物であるバッテリモジュール90、モジュールブラケット92上の電子部品及び回路部品が取り付けられ、左側のケース半体62にバッテリモジュール90、電子部品、回路部品の負荷が作用していない。このため、左側のケース半体62はケース内側の各部品に対して間隔が空けられていればよく、左側のケース半体62の形状自由度が高められている。ケース半体62の強度よりも軽量化を優先させることもできる。
【0035】
図8を参照して、バッテリの支持構造について説明する。図8は本実施例の車体フレーム及びバッテリの平面図である。なお、図8は、車体フレームからバッテリ以外の電気機器が取り外された状態を示している。
【0036】
図8に示すように、車体フレーム10の前側ブリッジ52にバッテリケース61の前側ケース固定部73が固定され、車体フレーム10の後側ブリッジ56にバッテリケース61の後側ケース固定部68、78が固定されている。バッテリケース61を介して前側ブリッジ52及び後側ブリッジ56が連結されることで、バッテリケース61の剛性によって車体フレーム10の剛性が向上されている。車体フレーム10の剛性をさらに向上させるためには、バッテリケース61の内側に固定されたバッテリモジュール90の剛性を利用して、バッテリケース61自体の剛性を高める必要がある。
【0037】
通常は、バッテリケース61の内側に緩衝材を挟んでバッテリモジュール90が固定され、バッテリケース61の内側にバッテリモジュール90が直に固定されていない。本実施例では、バッテリケース61の内側にバッテリモジュール90が直に固定されて、バッテリケース61がバッテリモジュール90によって内側から支えられることで、バッテリケース61自体の剛性が高められている。バッテリモジュール90の剛性を利用することで、バッテリケース61の材料強度を高めるために材料コストが増加することがない。バッテリケース61に緩衝材の組付けが不要になって組付け作業が簡略化される。
【0038】
バッテリケース61の内側に高重量のバッテリモジュール90が収容されているため、鞍乗型車両1の操縦安定性を保つために左右の重量バランスをとる必要がある。このため、バッテリケース61の右側のケース半体63が中央に位置付けられて、ケース半体63と共にケース半体63に固定されたバッテリモジュール90が車両前後方向に延びる中心線Lに重ねられている。鞍乗型車両1の左右の重量バランスが均一に近づけられて操縦安定性が向上され、鞍乗型車両1を左右に傾けたときの復元力が均一に近づけられてコーナリング走行時の旋回性が向上される。
【0039】
図9及び図10を参照して、ヒューズの交換作業について説明する。図9は本実施例の車体フレーム及びバッテリの左側面図である。図10図9からヒューズカバーを取り外した左側面図である。
【0040】
図9に示すように、バッテリケース61は一対のシートフレーム14及び一対のサポートフレーム15の間に設置されている。側面視にて、一対のシートフレーム14は、バッテリ60の中央を通るように車両前方から車両後方に向かって斜め上方に延びている。側面視にて、一対のサポートフレーム15は、バッテリケース61の後部下側を通るように車両前方から車両後方に向かって斜め上方に延びている。バッテリケース61の後方でシートフレーム14にサポートフレーム15が接続され、シートフレーム14の下側及びサポートフレーム15の下側がピボットブラケット16を介して接続されている。
【0041】
バッテリケース61(ケース半体62)には、バッテリケース61内のヒューズ94(図10参照)を外部に露出させる開口95(図10参照)が形成されている。側面視にて、車体フレーム10を避けた位置に開口95が形成されており、シートフレーム14、サポートフレーム15、ピボットブラケット16の内側に開口95が位置付けられている。具体的には、シートフレーム14とサポートフレーム15の間で、ピボットブラケット16の後方に開口95が位置付けられている。バッテリケース61には、複数の小ネジ96によって開口95を覆うヒューズカバー65が着脱可能に取り付けられている。
【0042】
図10に示すように、シートフレーム14、サポートフレーム15、ピボットブラケット16の間にドライバー等の工具の侵入経路が確保されている。工具を用いてヒューズカバー65の小ネジ96(図9参照)が外されることで、開口95を通じてバッテリケース61内のヒューズ94が外部に露出される。ヒューズ94の切断時には、開口95を通じてバッテリケース61内のヒューズ94を交換することができる。このとき、車体フレーム10にバッテリケース61を固定した状態で、ヒューズ94を容易に交換することができるため、ヒューズ94の交換作業の作業負担を軽減することができる。
【0043】
ヒューズ94の交換作業の他にも、モータ43やインバータ44(図2参照)等の電気機器を車体フレーム10から取り外す際に、ヒューズ94を最初に取り外すことで高電圧回路の遮断を容易に行うことができる。バッテリ60のヒューズ94を容易に交換することができるため、バッテリ60にサービスプラグを設けずに、ヒューズ94で代用して部品点数を低減することができる。また、バッテリケース61の下方に開口95が形成されているため、高電圧がかかるヒューズ94からシート34が十分に離されて、シート34に着座したライダーの安全性が確保される。
【0044】
バッテリケース61の開口95付近にはヒューズカバー65(図9参照)が装着されているが、バッテリケース61の開口95付近が他の部分よりも剛性が低下している。バッテリケース61の開口95の左方はシートフレーム14、サポートフレーム15、ピボットブラケット16によって保護されており、バッテリケース61の開口95付近に強い外力が直に作用することがない。よって、バッテリケース61の開口95付近の変形が抑えられ、ヒューズカバー65による開口95の密閉性が高められている。なお、バッテリケース61の開口縁部には密閉性を高めるOリング97が装着されている。
【0045】
バッテリケース61の開口縁部は左側ケース固定部66を介してサポートフレーム15に固定されている。左側ケース固定部66によって開口95付近が補強されて、バッテリケース61の開口95付近の変形が抑えられ、ヒューズカバー65による開口95の密閉性がより高められている。バッテリケース61を支持する左側ケース固定部66がバッテリケース61の開口95付近の補強に利用されている。バッテリケース61の開口95付近の材料強度を高めたり、バッテリケース61の開口95付近の厚みを増やしたりする必要がなく、バッテリケース61の開口95付近の強度を高めるためのコストが低減される。
【0046】
以上、本実施例によれば、車体フレーム10の側方からヒューズカバー65が取り外されることで、側面視にてバッテリケース61の開口95からヒューズ94が外部に露出される。ヒューズ94の切断時に車体フレーム10からバッテリ60を取り外さなくても、バッテリケース61からヒューズカバー65を取り外すことで、バッテリケース61の開口95を通じてヒューズ94を交換することができる。よって、作業者がヒューズ94を容易に交換することができ、ヒューズ94の交換作業の作業性を向上させることができる。バッテリケース61の開口95付近の剛性が低下するが、車体フレーム10によって外側からバッテリ60が保護されているため、バッテリケース61の開口95付近に強い外力が直に作用することがない。
【0047】
なお、本実施例のバッテリはスクータタイプの鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。また、鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、シートの下方にバッテリが設置される乗り物であればよい。
【0048】
また、本実施例では、バッテリモジュールがボックス状に形成されたが、バッテリモジュールは複数のバッテリセルを保持可能な形状であれば特に限定されない。
【0049】
また、本実施例では、左側のケース半体がボックス状に形成されたが、左側のケース半体が平板状に形成されていてもよい。
【0050】
また、本実施例では、右側のケース半体にバッテリモジュールが固定されたが、左側のケース半体にバッテリモジュールが固定されてもよい。この場合、右側のケース半体が収容空間の右寄りに位置付けられ、左側のケース半体が収容空間の中央に位置付けられる。
【0051】
また、本実施例では、バッテリケースにヒューズを露出させる開口が形成されているが、バッテリケースにはリレーや電流センサ等の他の回路部品を露出させる開口が形成されてもよい。
【0052】
また、本実施例では、バッテリケースの開口縁部に左側ケース固定部が設けられているが、バッテリケースの開口縁部にケース固定部が設けられていなくてもよい。
【0053】
また、本実施例では、車体フレームが一対のシートフレーム及び一対のサポートフレームを有しているが、車体フレームは少なくとも一対のシートフレームを有していればよい。
【0054】
また、本実施例では、バッテリが車体フレームに固定されているが、車体フレームにはバッテリホルダが固定され、バッテリホルダに対してバッテリが着脱可能に装着されてもよい。
【0055】
以上の通り、本実施例のバッテリ(60)は、電動式の鞍乗型車両(1)の車体フレーム(10)の内側に固定されるバッテリであって、走行用の電力が充電されるバッテリモジュール(90)と、バッテリモジュールに接続された回路部品(ヒューズ94)と、バッテリモジュール及び回路部品を収容したバッテリケース(61)と、を備え、バッテリケースには、回路部品を外部に露出させる開口(95)が形成されると共に、当該開口を覆うカバー部材(ヒューズカバー65)が着脱可能に取り付けられており、側面視にて開口が車体フレームを避けた位置に形成されている。この構成によれば、車体フレームの側方からカバー部材が取り外されることで、側面視にてバッテリケースの開口から回路部品が外部に露出される。回路部品の破損時に車体フレームからバッテリを取り外さなくても、バッテリからカバー部材を取り外すことで、バッテリケースの開口を通じて回路部品を交換することができる。よって、作業者が回路部品を容易に交換することができ、回路部品の交換作業の作業性を向上させることができる。バッテリケースの開口付近の剛性が低下するが、車体フレームによって外側からバッテリが保護されているため、バッテリケースの開口付近に強い外力が直に作用することがない。
【0056】
本実施例のバッテリにおいて、車体フレームは、バッテリケースの側方を通る上側フレーム(シートフレーム14)及び下側フレーム(サポートフレーム15)を有しており、上側フレーム及び下側フレームの間に開口が位置付けられている。この構成によれば、上側フレーム及び下側フレームの間に工具の侵入経路が確保され、工具を用いてカバー部材を取り外して、バッテリケースの開口を通じて回路部品を交換することができる。上側フレーム及び下側フレームによって外側からバッテリが保護されているため、バッテリケースの開口付近に強い外力が直に作用することがない。
【0057】
本実施例のバッテリにおいて、開口の開口縁部には車体フレームに固定されるケース固定部(左側ケース固定部66)が形成されている。この構成によれば、ケース固定部によって開口付近の剛性を高めて、バッテリケースの変形を抑えることができる。
【0058】
本実施例のバッテリにおいて、回路部品が過電流によって切断されるヒューズ(94)である。この構成によれば、ヒューズの切断時に車体フレームからバッテリを取り外さなくても、バッテリケースの開口を通じてヒューズを交換することができる。また、バッテリにサービスプラグを設けずにヒューズで代用して部品点数を低減することができる。
【0059】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0060】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0061】
1 :鞍乗型車両
10 :車体フレーム
14 :シートフレーム(上側フレーム)
15 :サポートフレーム(下側フレーム)
60 :バッテリ
61 :バッテリケース
65 :ヒューズカバー
66 :左側ケース固定部(ケース固定部)
90 :バッテリモジュール
94 :ヒューズ(回路部品)
95 :開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10