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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】鉛蓄電池の輸送構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/02 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B65D81/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020197770
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022085987
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 優也
(72)【発明者】
【氏名】小島 優
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-002769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266848(US,A1)
【文献】特開2001-151282(JP,A)
【文献】特開2000-255549(JP,A)
【文献】中国実用新案第208761101(CN,U)
【文献】中国実用新案第208377512(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0295212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00-81/17
B65D 5/50
B65D 85/88
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池が梱包されている梱包箱であって、当該梱包箱の対向する2つの第1の壁部から延伸している2つのフラップによって第2の壁部が形成されており、少なくとも一方の前記フラップの先端部分が折り曲げられて当該梱包箱の内部に挿入されている梱包箱と、
前記第2の壁部の外側に配されている緩衝体であって、前記第2の壁部と対向する第3の壁部を有する緩衝体と、
を備え、
前記鉛蓄電池において前記第2の壁部と対向する面が下を向く姿勢で前記梱包箱が落下した場合、前記フラップの先端部分が前記鉛蓄電池と前記第3の壁部とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝され
前記第3の壁部は前記第2の壁部側に張り出す張り出し部を有しており、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て前記フラップの先端部分の少なくとも一部が前記張り出し部と重なっており、
前記鉛蓄電池において前記第2の壁部と対向する面に端子が設けられており、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て前記端子と前記張り出し部とが重なっていない、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て前記フラップの先端部分の全体が前記張り出し部と重なっている、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記張り出し部は、前記第2の壁部と対向する面とは逆側の面側が空洞である、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記端子は、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て、前記鉛蓄電池の短辺方向の中心を基準として前記短辺方向のいずれか一方の側に設けられているか、又は、前記鉛蓄電池の長辺方向の中心を基準として前記長辺方向のいずれか一方の側に設けられており、
前記緩衝体を前記第3の壁部の壁面に垂直な直線周りに180度回転させて配しても前記端子と前記張り出し部とが重ならない、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記第3の壁部の壁面に直交する方向における前記フラップの先端部分の幅は、前記直交する方向における前記端子の幅より広い、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記緩衝体の一部を構成している第4の壁部であって、前記第3の壁部の外周縁部に連なっており、前記梱包箱を囲む枠状の第4の壁部と、
前記緩衝体の一部を構成している第5の壁部であって、前記第4の壁部と接続されており、前記第4の壁部を囲む枠状の第5の壁部と、
を有し、
前記第4の壁部と前記第5の壁部との間に空間が確保されている、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項7】
請求項6に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記第3の壁部及び前記第4の壁部が、前記梱包箱の角部から離間するように凹んでいる、鉛蓄電池の輸送構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の輸送構造であって、
前記緩衝体はパルプモールド製である、鉛蓄電池の輸送構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、鉛蓄電池の輸送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸送対象物を輸送する場合に、輸送対象物の周囲に緩衝体を配することによって輸送中の衝撃から保護することが行われている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に記載の包装構造は、段ボール板製の底箱と、底箱の両側に収納され被梱包物(輸送対象物に相当)の本体部下端両側を受ける下側緩衝体と、下側緩衝体で受けられた被梱包物の本体部の上端両側に当てられる上側緩衝体と、これら全てを覆うための下端が開口する段ボール板製の本体箱とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-313942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は輸送対象物が輸送中に落下した場合の衝撃を緩衝する上で改善の余地があった。
本明細書では、輸送対象物として鉛蓄電池を輸送する場合に、輸送中に鉛蓄電池が落下して破損することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鉛蓄電池が梱包されている梱包箱であって、当該梱包箱の対向する2つの第1の壁部から延伸している2つのフラップによって第2の壁部が形成されており、少なくとも一方の前記フラップの先端部分が折り曲げられて当該梱包箱の内部に挿入されている梱包箱と、前記第2の壁部の外側に配されている緩衝体であって、前記第2の壁部と対向する第3の壁部を有する緩衝体と、を備え、前記鉛蓄電池において前記第2の壁部と対向する面が下を向く姿勢で前記梱包箱が落下した場合、前記フラップの先端部分が前記鉛蓄電池と前記第3の壁部とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝される、鉛蓄電池の輸送構造。
【発明の効果】
【0006】
輸送対象物として鉛蓄電池を輸送する場合に、輸送中に鉛蓄電池が落下して破損することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る鉛蓄電池の斜視図
図2】鉛蓄電池が梱包されている梱包箱の斜視図
図3】梱包箱の斜視図
図4】梱包箱の断面図
図5】梱包箱の断面図
図6】輸送箱の斜視図
図7】鉛蓄電池の輸送構造の部分断面図(図11に示すB-B線の断面図)
図8】輸送箱の落下の形態を示す模式図
図9】上側緩衝体を上から見た斜視図
図10】上側緩衝体を下から見た斜視図
図11】上側緩衝体の上面図
図12A】梱包箱の上に上側緩衝体を配した状態を示す模式図
図12B図12Aに示す上側緩衝体を紙面に垂直な直線周りに180度回転させて配した状態を示す模式図
図13図11に示すA-A線の断面図
図14A】上側緩衝体の短側面の側面図
図14B】上側緩衝体の長側面の側面図
図15】上面落下した輸送箱の断面図
図16】上面落下した輸送箱の断面図
図17】他の実施形態に係る鉛蓄電池の蓋部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施形態の概要)
(1)本発明の一局面によれば、鉛蓄電池の輸送構造は、鉛蓄電池が梱包されている梱包箱であって、当該梱包箱の対向する2つの第1の壁部から延伸している2つのフラップによって第2の壁部が形成されており、少なくとも一方の前記フラップの先端部分が折り曲げられて当該梱包箱の内部に挿入されている梱包箱と、前記第2の壁部の外側に配されている緩衝体であって、前記第2の壁部と対向する第3の壁部を有する緩衝体と、を備え、前記鉛蓄電池において前記第2の壁部と対向する面が下を向く姿勢で前記梱包箱が落下した場合、前記フラップの先端部分が前記鉛蓄電池と前記第3の壁部とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝される。
【0009】
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、フラップの先端部分が折り曲げられて梱包箱の内部に挿入されているので、鉛蓄電池において梱包箱の第2の壁部と対向する面が下を向く姿勢で梱包箱が落下した場合、フラップの先端部分が鉛蓄電池と第3の壁部とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝される。このため上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、輸送対象物として鉛蓄電池を輸送する場合に、輸送中に鉛蓄電池が落下して破損することを抑制できる。
【0010】
(2)本発明の一局面によれば、前記第3の壁部は前記第2の壁部側に張り出す張り出し部を有しており、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て前記フラップの先端部分の少なくとも一部が前記張り出し部と重なっていてもよい。
【0011】
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、第3の壁部の壁面に直交する方向から見てフラップの先端部分の少なくとも一部が張り出し部と重なっているので、先端部分が鉛蓄電池と張り出し部とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝される。
【0012】
(3)本発明の一局面によれば、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て前記フラップの先端部分の全体が前記張り出し部と重なっていてもよい。
【0013】
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、第3の壁部の壁面に直交する方向から見てフラップの先端部分の全体が張り出し部と重なっているので、フラップの先端部分の一部だけが張り出し部と重なっている場合に比べて落下の衝撃がより確実に緩衝される。
【0014】
(4)本発明の一局面によれば、前記張り出し部は、前記第2の壁部と対向する面とは逆側の面側が空洞であってもよい。
【0015】
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、張り出し部は第2の壁部と対向する面とは逆側の面側が空洞であるので、鉛蓄電池において梱包箱の第2の壁部と対向する面が下を向く姿勢で梱包箱が落下した場合に、フラップの先端部分を介して鉛蓄電池によって下に押圧された張り出し部が下に撓み易くなる。このため、張り出し部も衝撃を緩衝するクッションとして機能する。これにより落下の衝撃がより緩衝される。
更に、上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、張り出し部は第2の壁部と対向する面とは逆側の面側が空洞であるので、張り出し部を基準に見た場合、緩衝体において張り出し部以外の部分は、第2の壁部とは逆側に凹む凹部を構成している。凹部は衝撃を受けると潰れるので、落下の衝撃がより緩衝される。
【0016】
(5)本発明の一局面によれば、前記鉛蓄電池において前記第2の壁部と対向する面に端子が設けられており、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て前記端子と前記張り出し部とが重なっていなくてもよい。
【0017】
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、鉛蓄電池において第2の壁部と対向する面が下を向く姿勢で梱包箱が落下した場合、第2の壁部が端子によって下に押圧される。このとき、第3の壁部の壁面に直交する方向から見て端子と張り出し部とが重なっていないことから、端子の下方には緩衝体の凹部が位置している。このため、端子によって下に押圧された第2の壁部が凹部の空間を利用して下に撓むことによってクッションとして機能する。これにより端子に加わる衝撃が緩衝され、梱包箱の第2の壁部全体に衝撃が分散される。このため、端子に衝撃が集中して端子が破損することを抑制できる。
【0018】
(6)本発明の一局面によれば、前記端子は、前記第3の壁部の壁面に直交する方向から見て、前記鉛蓄電池の短辺方向の中心を基準として前記短辺方向のいずれか一方の側に設けられているか、又は、前記鉛蓄電池の長辺方向の中心を基準として前記長辺方向のいずれか一方の側に設けられており、前記緩衝体を前記第3の壁部の壁面に垂直な直線周りに180度回転させて配しても前記端子と前記張り出し部とが重ならなくてもよい。
【0019】
例えば、鉛蓄電池の短辺方向の中心を基準として短辺方向のいずれか一方の側に端子が設けられているとする。そして、緩衝体をある向きで梱包箱に配した場合は端子と張り出し部とが重ならなくても、緩衝体を第3の壁部の壁面に垂直な直線周りに180度回転させて配した場合は端子と張り出し部とが重なるとする。この場合、作業者は緩衝体を配するとき、端子と張り出し部とが重ならないように緩衝体の向きを注意して配する必要があるため、作業性が低下する。
上記の鉛蓄電池の輸送構造よると、緩衝体を第3の壁部の壁面に垂直な直線周りに180度回転させて配しても端子と張り出し部とが重ならないので、作業者は緩衝体を配するときに緩衝体の向きを注意しなくてよい。このため作業性が向上する。
【0020】
(7)本発明の一局面によれば、前記第3の壁部の壁面に直交する方向における前記フラップの先端部分の幅は、前記直交する方向における前記端子の幅より広くてもよい。
【0021】
第3の壁部の壁面に直交する方向におけるフラップの先端部分の幅が、当該直交する方向における端子の幅より広いと、端子が第2の壁部に当接するよりも前に鉛蓄電池がフラップの先端部分に当接して先端部分の潰れが開始される。このため、当該直交する方向におけるフラップの先端部分の幅が端子の幅と同じかあるいは端子の幅より狭い場合に比べ、端子の破損をより確実に抑制できる。
【0022】
(8)本発明の一局面によれば、前記第3の壁部の外周縁部に連なっており、前記梱包箱を囲む枠状の第4の壁部と、前記第4の壁部と接続されており、前記第4の壁部を囲む枠状の第5の壁部と、を有し、前記第4の壁部と前記第5の壁部との間に空間が確保されていてもよい。
【0023】
梱包箱は第2の壁部に直角に連なる壁部(例えば第1の壁部)を有している。梱包箱は落下の際に当該直角に連なる壁部が下になって落下する場合がある。
上記の鉛蓄電池の輸送構造よると、第4の壁部と第5の壁部との間に空間が確保されているので、当該直角に連なる壁部が下になって落下したとき、第5の壁部が第4の壁部との間の空間を利用して撓むことにより(あるいは第4の壁部が第5の壁部との間の空間を利用して撓むことにより)、鉛蓄電池に加わる衝撃を緩衝するクッションとして機能する。このため、当該直角に連なる壁部が下になって落下した場合の衝撃を緩衝できる。
【0024】
(9)本発明の一局面によれば、前記第3の壁部及び前記第4の壁部が、前記梱包箱の角部から離間するように凹んでいてもよい。
【0025】
梱包箱は落下の際に斜めになって角部から床に衝突する場合がある。角部から床に衝突すると鉛蓄電池の角部に衝撃が集中し、緩衝体によって衝撃を吸収しきれずに鉛蓄電池が破損する可能性がある。従来はこれについて十分に検討されていなかった。
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、第3の壁部及び第4の壁部が梱包箱の角部から離間するように凹んでいるので、角部から床に落下した場合に鉛蓄電池の角部に衝撃が集中することを抑制できる。このため、角部に衝撃が集中して鉛蓄電池が破損する可能性を低減できる。
【0026】
(10)本発明の一局面によれば、前記緩衝体はパルプモールド製であってもよい。
【0027】
鉛蓄電池が落下すると鉛蓄電池が破損して電解液が漏れ出す可能性がある。本願発明者は、鋭意検討の結果、緩衝体をパルプモールド製にすれば、仮に電解液が漏れ出たとしても、漏れ出た電解液を緩衝体によってある程度吸収できることを見出した。
上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、緩衝体がパルプモールド製であることから、仮に電解液が漏れ出たとしてもパルプモールド製の緩衝体によってある程度吸収できる。このため上記の鉛蓄電池の輸送構造によると、輸送中に鉛蓄電池が落下して鉛蓄電池が破損した場合に電解液が漏れ出すことをより確実に抑制できる。
【0028】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図16によって説明する。以降の説明において上下方向、左右方向及び前後方向とは、図1に示す上下方向、左右方向及び前後方向を基準とする。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0029】
(1)鉛蓄電池
図1を参照して、実施形態1に係る鉛蓄電池10について説明する。鉛蓄電池10は自動車に搭載されてエンジン始動装置(セルモータ)に電力を供給するエンジン始動用の鉛蓄電池である。鉛蓄電池10の用途はエンジン始動用に限定されるものではなく、アイドリングストップ車用として用いることもできるし、ハイブリットシステム起動用の補機バッテリーとして用いることもできるし、これら以外の用途に用いることもできる。
【0030】
鉛蓄電池10は上面視長方形である。鉛蓄電池10は上側が開口する合成樹脂製の電槽11と、電槽11の開口を閉塞する合成樹脂製の蓋部材12とを備えている。電槽11の内部には極板群と電解液とが収容されている。
蓋部材12の上面には上に向かって突出する2つの端子13(正極外部端子13P及び負極外部端子13N)が設けられている。正極外部端子13Pには極板群の正極が接続されており、負極外部端子13Nには極板群の負極が接続されている。
【0031】
2つの端子13は上面視で鉛蓄電池10の長辺方向に互いに離間して配されており、且つ、鉛蓄電池10の短辺方向の中心を基準に短辺方向のいずれか一方の側(図1に示す例では前側)に配されている。蓋部材12には鉛蓄電池10の内部で発生したガスを抜くためのガス抜き穴14が形成されている。
鉛蓄電池10の上面10Aは、後述する梱包箱20(図2参照)の上壁部23(第2の壁部の一例)と対向する面である。
【0032】
(2)鉛蓄電池の輸送構造
図2に示すように、自動車に搭載されている鉛蓄電池の交換用の鉛蓄電池10は梱包箱20(内箱の一例)に梱包されて販売される。梱包箱20は段ボール製であり、4つの側壁部21、底壁部22(図4参照)及び上壁部23(第2の壁部の一例)を有する直方体状に形成されている。側壁部21は第2の壁部に直角に連なる壁部の一例である。
【0033】
図3に示すように、4つの側壁部21の上側からはそれぞれフラップ24(24A,24B,24C,24D)が延伸している。4つのフラップ24のうち横方向の幅が広い側壁部21(第1の側壁部の一例)から延伸している2つのフラップ24A及び24Bは梱包箱20の上壁部23を形成する。これら2つのフラップ24A及び24Bは、上壁部23を形成する部分25と、上壁部23を形成する部分25の先端部に連なる先端部分26とを有しており、先端部分26が略90度折り曲げられている。
4つのフラップ24のうち横方向の幅が狭い側壁部21から延伸しているフラップ24C及び24Dには、前後方向の概ね中央から少し前側にずれた位置において左右方向に延びるスリット24Eが形成されている。
【0034】
図4及び図5に示すように、略90度折り曲げられた先端部分26はフラップ24C及び24Dに形成されているスリット24Eを通過して梱包箱20の内部に挿入されている。梱包箱20の内部に挿入されている先端部分26の下端は鉛蓄電池10の上面10Aよりも少し上に位置している。
図4及び図5に示すように、上下方向におけるフラップ24の先端部分26の幅は、上下方向における端子13の幅より広い。先端部分26の上下方向の幅は端子13の上下方向の幅と同じであってもよいし、端子13の上下方向の幅より狭くてもよい。
【0035】
図6に示すように、交換用の鉛蓄電池10を空輸などで輸送する場合は、鉛蓄電池10が梱包されている梱包箱20がそれぞれ個別の輸送箱30に収容されて輸送される。輸送箱30も段ボール製である。
【0036】
図7に示すように、鉛蓄電池10の輸送構造1は、鉛蓄電池10が梱包されている梱包箱20、ビニール製の内袋41、上下に配されている2つの緩衝体42、粒状の吸収材43、ビニール製の外袋44及び輸送箱30を備えている。
梱包箱20は内袋41に入れられた状態で輸送箱30に収容される。内袋41は輸送中に鉛蓄電池10が傾いてガス抜き穴14から電解液が漏れ出た場合や、輸送中に輸送箱30が落下した衝撃で鉛蓄電池10が破損して電解液が漏れ出た場合などに、輸送箱30の外部に電解液が漏れ出ないようにするためのものである。内袋41は開口部が折り畳まれて粘着テープによって止められている。
【0037】
2つの緩衝体42は輸送中に荷崩れなどによって輸送箱30が落下した場合に衝撃を緩衝するためのものである。2つの緩衝体42は同一形状である。2つの緩衝体42のうち一方の緩衝体42は内袋41に入れられた梱包箱20の下側に配される。他方の緩衝体42は内袋41に入れられた梱包箱20の上側に配される。以降の説明では上側に配される緩衝体42を上側緩衝体42A、下側に配される緩衝体42を下側緩衝体42Bという。緩衝体42の具体的な構成については後述する。
【0038】
粒状の吸収材43は、鉛蓄電池10から漏れ出た電解液が内袋41から漏れ出た場合に、漏れ出た電解液を吸収するためのものである。粒状の吸収材43は粒状に砕かれた雲母などである。粒状の吸収材43は雲母に限られるものではなく、適宜に選択可能である。詳しくは後述するが、下側緩衝体42Bは下に凹む凹部60を有している。吸収材43は下側緩衝体42Bの凹部60にも収容されている。
【0039】
外袋44は、内袋41から電解液が漏れ出た場合に、漏れ出た電解液が外部に漏れ出ないようにするためのものである。外袋44は開口部が折り畳まれて粘着テープによって止められている。
【0040】
(3)輸送箱の落下
図8を参照して、輸送箱30の落下について説明する。前述したように輸送箱30は輸送中に荷崩れなどによって落下する可能性がある。輸送箱30の落下の形態には上面落下、底面落下、側面落下及び角部落下がある。
【0041】
上面落下は輸送箱30の上面が下になって落下する形態である。言い換えると、上面落下は、鉛蓄電池10の上面10A(鉛蓄電池10において梱包箱20の上壁部23と対向する面)が下を向く姿勢で落下する形態である。
底面落下は輸送箱30の底面が下になって落下する形態である。
【0042】
側面落下は輸送箱30の側面が下になって落下する形態である。言い換えると、側面落下は、梱包箱20の第2の壁部(上壁部23)に直角に連なる壁部(側壁部21)が下になって落下する形態である。輸送箱30の側面には水平方向の幅が狭い短側面と水平方向の幅が広い長側面とがある。側面落下には短側面が下になって落下する場合と長側面が下になって落下する場合とがある。
角部落下は落下の際に輸送箱30が斜めになって角部から床に衝突する形態である。角部落下には輸送箱30の下側の角部から落下する場合と、輸送箱30の上側の角部から落下する場合とがある。
【0043】
輸送箱30が落下すると接地の際の衝撃によって鉛蓄電池10が破損し、内部に収容されている電解液が漏れ出す可能性がある。航空機や船舶によって輸送される舶用品には航空機や船舶の安全を確保するために落下試験の基準が設定されている。この基準では鉛蓄電池10が収容されている輸送箱30を1.3m~1.6m程度の高さから落下させても鉛蓄電池10が破損しないことが求められている。
【0044】
(4)緩衝体の構成
図9から図14を参照して、緩衝体42について説明する。前述したように上側緩衝体42Aと下側緩衝体42Bとは同一形状であるので、ここでは上側緩衝体42Aを例に説明する。便宜上、図9~11,13及び14では上側緩衝体42Aの上下を逆にして示している。以降の説明において「上」とは、上側緩衝体42Aが梱包箱20の上に配されている状態では「下」のことをいう。「下」についても同様であり、上側緩衝体42Aが梱包箱20の上に配されている状態では「上」のことをいう。
【0045】
上側緩衝体42Aはパルプモールド製である。パルプモールドにはソフトモールドと、ソフトモールドより硬いハードモールドとがある。上側緩衝体42Aはハードモールドである。
【0046】
図9に示すように、上側緩衝体42Aの形状は前後対称であり、且つ、左右対称である。上側緩衝体42Aは、上側緩衝体42Aが梱包箱20の上に配されている状態において梱包箱20の上壁部23(第2の壁部)と対向する上壁部51(第3の壁部の一例)、上壁部51の外周縁部から立ち上がっている略枠状の額縁部52、及び、額縁部52から全周に亘って水平方向に張り出しているフランジ部53を有している。額縁部52の内周形状は梱包箱20の外周形状と略一致している。上壁部51やフランジ部53の壁の厚みは5mm~6mm程度である。
【0047】
上壁部51は上側(上側緩衝体42Aが梱包箱20の上に配されている状態において梱包箱20の上壁部23側)に張り出す張り出し部54を有している。図10に示すように、張り出し部54は下側から見ると上に向かって凹んでいる。すなわち、張り出し部54は上壁部23と対向する面とは逆側の面側が空洞である。張り出し部54の面積は上壁部51の面積の5割以上8割以下であることが好ましい。
【0048】
図11に示すように、張り出し部54は前後方向の中央において左右方向に延びる第1の張り出し部54Aと、第1の張り出し部54Aの前後両側に連なる第2の張り出し部54Bとを有する。理解を容易にするため、図11では第1の張り出し部54A及び第2の張り出し部54Bを一点鎖線で示している。第1の張り出し部54Aは前後方向にある程度の幅を有している。具体的には、第1の張り出し部54Aの前後方向の幅は上壁部51の前後方向の幅の1/3~1/4程度である。
【0049】
上述したように張り出し部54は上壁部23と対向する面とは逆側の面側が空洞であることから、張り出し部54を基準に見た場合、上壁部51において張り出し部54以外の部分は下(上壁部23とは逆側)に向かって凹む凹部60を構成している。具体的には、凹部60には4つの第1の凹部60A、2つの第2の凹部60B、4つの第3の凹部60C、および、4つの第4の凹部60Dがある。
【0050】
4つの第1の凹部60Aは第1の張り出し部54Aを挟んで前後両側に2つずつ形成されている。第1の張り出し部54Aを挟んで前後方向の同じ側にある2つの第1の凹部60Aは互いに左右方向に離間している。左後の第1の凹部60Aを例に説明すると、第1の凹部60Aは左右方向に長い長方形状の部分62と、長方形状の部分62の左後から後側に拡張されている拡張部分61とを有する形状である。
【0051】
2つの第2の凹部60Bは左右方向の中央において第1の張り出し部54Aの前後両側に形成されている。第2の凹部60Bは第1の張り出し部54Aに隣接して設けられている。第2の凹部60Bは左右方向に長い長方形状である。
4つの第3の凹部60Cは第1の張り出し部54Aを挟んで前後に2つずつ形成されている。具体的には、前側の2つの第3の凹部60Cは第1の張り出し部54Aから前側に離間した位置に設けられており、且つ、左右方向の中心を挟んで左右に離間して設けられている。後側の2つの第3の凹部60Cも同様である。
【0052】
ここで、上壁部51において前側の2つの第3の凹部60Cの前側には中段部63が形成されている。中段部63の上面は第1の張り出し部54Aの上面より低く、凹部60の底面より高い。後側の2つの第3の凹部60Cの後側にも同様に中段部63が設けられている。
【0053】
4つの第4の凹部60Dは、上側から見て略枠状の額縁部52の内側の角に形成されている。額縁部52には内側の4つの角にそれぞれ外側に向かって凹む凹部65が形成されている。このため、上側緩衝体42Aが梱包箱20の上に配された状態のとき、梱包箱20の上側の角部は上壁部51からも額縁部52からも離間した状態になる。
【0054】
図15及び図16を参照して、フラップ24の先端部分26と第1の張り出し部54Aとの位置関係について説明する。図15及び図16は輸送箱30が上面落下した場合を示している。図15及び図16では内袋41、外袋44及び吸収材43は省略している。図15に示すように、輸送箱30が上面落下したとき、フラップ24の先端部分26は第1の張り出し部54Aの真上に位置している。より具体的には、図16に示すように、先端部分26は左右方向の全幅に亘って第1の張り出し部54Aの真上に位置している。言い換えると、上下方向(第3の壁部の壁面に直交する方向)から見て先端部分26の全体が第1の張り出し部54Aと重なっている。
【0055】
図12A及び図12Bを参照して、2つの端子13と4つの第1の凹部60Aとの位置関係について説明する。便宜上、図12A及び図12Bでは上側緩衝体42Aの2つの長辺のうち一方を長辺A、他方を長辺Bとしている。図12Aに示すように、4つの第1の凹部60Aは、上側緩衝体42Aを梱包箱20の上に配したときに2つの第1の凹部60Aが鉛蓄電池10の2つの端子13の真上となる位置に形成されている。言い換えると、上下方向(第3の壁部の壁面に直交する方向の一例)から見て端子13と張り出し部54とが重なっていない。
【0056】
図12Aに示す左後の第1の凹部60Aを例に具体的に説明する。左後の第1の凹部60Aは長方形状の部分62と、長方形状の部分62の左後から後側に拡張されている拡張部分61とを有している。上側緩衝体42Aが梱包箱20の上に配されている状態のとき、負極外部端子13Nの一部は拡張部分61の真下に位置している。正極外部端子13Pも同様である。すなわち、第1の凹部60Aに拡張部分61を設けた理由は、第1の凹部60Aが端子13の真上に位置するようにするためである。
【0057】
図12Bは長辺Aと長辺Bとが入れ替わるように上側緩衝体42Aを鉛直線(第3の壁部の壁面に垂直な直線の一例)周りに180度回転させて配した状態を示している。図12Bに示すように、上側緩衝体42Aを180度回転させても4つの第1の凹部60Aのうち2つの第1の凹部60Aが端子13の真上に位置する。言い換えると、上下方向から見て、上側緩衝体42Aを鉛直線周りに180度回転させても端子13と張り出し部54とが重ならない。
【0058】
拡張部分61は鉛蓄電池10の長辺方向にある程度の幅を有している。これは、異なるサイズの鉛蓄電池10に対応するためである。具体的には、鉛蓄電池10には長辺方向のサイズの違いによって複数の種類がある。サイズが異なる鉛蓄電池10は長辺方向における端子13の位置が異なる。拡張部分61の長辺方向の幅をある程度広くすると、サイズが異なる複数種類の鉛蓄電池10に対して同一の緩衝体42を用いることができる。このため、鉛蓄電池10のサイズごとに緩衝体42を用意する場合に比べて緩衝体42のコストを低減できる。
【0059】
図9を参照して、額縁部52について説明する。額縁部52において左右方向に延びる部分は、左右方向の中央部分が切り欠かれている。切り欠かれている部分の左右方向の幅は上側緩衝体42Aの左右方向の幅の1/3程度である。同様に、額縁部52において前後方向に延びる部分は、前後方向の中央部分が切り欠かれている。切り欠かれている部分の前後方向の幅は上側緩衝体42Aの前後方向の幅の1/5~1/6程度である。
【0060】
図13に示すように、額縁部52は梱包箱20を囲む略枠状の第4の側壁部70(第4の壁部の一例)と、第4の側壁部70の外側に配されている第5の側壁部71(第5の壁部の一例)とを有している。第5の側壁部71は上側が第4の側壁部70と接続されており、第4の側壁部70と第5の側壁部71との間に空間73が確保されている。
【0061】
図14Aに示すように、第5の側壁部71において前後方向に延びる部分には、前後方向の中心を挟んで前後両側に、下端面から上に向かって凹む凹部73が形成されている。図14Bに示すように、第5の側壁部71において左右方向に延びる部分には、左右方向の中心を挟んで左右両側に、下端面から上に向かって凹む凹部74が形成されている。これらの凹部73及び74は第5の側壁部71の強度を向上させるためのものである。
【0062】
図9及び図11に示すように、額縁部52には額縁部52の外周面の下端部から水平方向に張り出すフランジ部53が全周に亘って一体に形成されている。フランジ部53は上側緩衝体42Aの強度を向上させるためのものである。
【0063】
前述したように、緩衝体42が下側緩衝体42Bとして用いられる場合は、内袋41に入れられた梱包箱20の下側に緩衝体42が配される。緩衝体42が下側緩衝体42Bとして用いられる場合は、下側緩衝体42Bの凹部60にも粒状の吸収材43が配される。すなわち、凹部60は、緩衝体42が下側緩衝体42Bとして用いられる場合に吸収材43を収容する役割も有している。
【0064】
(5)緩衝体による衝撃の吸収
図15及び図16に示すように、輸送箱30が上面落下した場合は、梱包箱20のフラップ24の先端部分26が鉛蓄電池10によって下に押圧される。このとき、先端部分26の真下に第1の張り出し部54Aがあることから、先端部分26は鉛蓄電池10によって第1の張り出し部54Aに向けて押し付けられる。
ここで、前述したように上側緩衝体42Aはハードモールドであり、上壁部51は壁の厚みが5mm~6mm程度であることから、ある程度の強度を有している。このため、鉛蓄電池10によって先端部分26が第1の張り出し部54Aに向けて押し付けられたとき、先端部分26は第1の張り出し部54Aによって下から支持される。このため、先端部分26は鉛蓄電池10と第1の張り出し部54Aとに挟まれて座屈するように潰れる。
【0065】
更に、第1の張り出し部54Aは梱包箱20の上壁部23と対向する面とは逆側の面側が空洞であるので、輸送箱30が上面落下した場合に、フラップ24の先端部分26によって下に押圧された第1の張り出し部54Aが下に撓み易くなる。このため、第1の張り出し部54Aも衝撃を緩衝するクッションとして機能する。更に、上側緩衝体42Aの凹部60は衝撃を受けると潰れるように撓むので、凹部60も衝撃を緩衝するクッションとして機能する。
【0066】
更に、輸送箱30が上面落下した場合は、端子13が梱包箱20の上壁部23を下に押圧するが、端子13の下方に上側緩衝体42Aの第1の凹部60Aがあることから、端子13によって下に押圧された上壁部23が第1の凹部60Aの空間を利用して下に撓むことによってクッションとして機能する。
【0067】
輸送箱30が底面落下した場合も、凹部60が潰れるように撓むことによって衝撃が緩衝される。
【0068】
輸送箱30が側面落下した場合は、第4の側壁部70が第5の側壁部71側に撓むことにより、あるいは第5の側壁部71が第4の側壁部70側に撓むことにより、側面落下の衝撃が緩衝される。
【0069】
輸送箱30が角部落下した場合は、緩衝体42に形成されている第4の凹部60Dと第4の側壁部70の内側の角部に形成されている凹部65とによって梱包箱20の角部が緩衝体42から離間していることにより、鉛蓄電池10の角部に衝撃が集中することが抑制される。
【0070】
(6)緩衝体の高さ及び強度
緩衝体42の高さが高いと輸送箱30を大きくする必要がある。その一方で、緩衝体42の高さが低いと十分に衝撃を緩衝できない虞がある。このため、輸送箱30を大きくすることなく衝撃を十分に緩衝するためには、緩衝体42の高さは8mm~15mmであることが好ましい。
【0071】
緩衝体42の強度が低いと、上面落下によってフラップ24の先端部分26が第1の張り出し部54Aに向けて押圧されたとき、第1の張り出し部54Aの強度が低いことによって先端部分26が潰れ難くなり、衝撃を十分に緩衝できない虞がある。このため、先端部分26によって衝撃を十分に緩衝するためには、先端部分26が潰れるだけの強度を緩衝体42が有していることが好ましい。具体的には、緩衝体42の強度は1000kgf以上であることが好ましい。
【0072】
(7)実施形態の効果
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、輸送箱30が上面落下した場合、フラップ24の先端部分26が鉛蓄電池10と上側緩衝体42Aの上壁部51とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝される。このため鉛蓄電池10の輸送構造1によると、輸送対象物として鉛蓄電池10を輸送する場合に、輸送中に鉛蓄電池10が落下して破損することを抑制できる。
【0073】
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、上下方向(第3の壁部の壁面に直交する方向)から見てフラップ24の先端部分26の少なくとも一部が張り出し部54と重なっているので、先端部分26が鉛蓄電池10と張り出し部54とに挟まれて潰れることによって落下の衝撃が緩衝される。
【0074】
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、上下方向から見てフラップ24の先端部分26の全体が張り出し部54と重なっているので、先端部分26の一部だけが張り出し部54と重なっている場合に比べて落下の衝撃がより確実に緩衝される。
【0075】
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、第1の張り出し部54Aは梱包箱20の上壁部23と対向する面とは逆側の面側が空洞であるので、張り出し部54も衝撃を緩衝するクッションとして機能する。これにより落下の衝撃がより緩衝される。更に、鉛蓄電池10の輸送構造1によると、凹部60も衝撃を緩衝するクッションとして機能するので、落下の衝撃がより緩衝される。
【0076】
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、端子13によって下に押圧された上壁部23が凹部60の空間を利用して下に撓むことによってクッションとして機能する。これにより端子13に加わる衝撃が緩衝され、梱包箱20の上壁部23全体に衝撃が分散される。このため、端子13に衝撃が集中して端子13が破損することを抑制できる。
【0077】
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、上下方向におけるフラップ24の先端部分26の幅は、上下方向における端子13の幅より広いので、端子13が梱包箱20の上壁部23(第2の壁部)に当接するよりも前に鉛蓄電池10がフラップ24の先端部分26に当接して先端部分26の潰れが開始される。このため、フラップ24の先端部分26の上下方向の幅が端子13の上下方向の幅と同じかあるいは端子13の上下方向の幅より狭い場合に比べ、端子13の破損をより確実に抑制できる。
【0078】
鉛蓄電池10の輸送構造1によると、上側緩衝体42Aを鉛直線周りに180度回転させて配しても端子13と張り出し部54とが重ならないので、作業者は上側緩衝体42Aを配するときに上側緩衝体42Aの向きを注意しなくてよい。このため作業性が向上する。
【0079】
鉛蓄電池10の輸送構造1よると、輸送箱30が側面落下したとき、第5の側壁部71が空間73を利用して撓むことにより(あるいは第4の側壁部70が空間73を利用して撓むことにより)、鉛蓄電池10に加わる衝撃を緩衝するクッションとして機能する。このため、輸送箱30が側面落下した場合の衝撃を緩衝できる。
【0080】
鉛蓄電池10の輸送構造1よると、輸送箱30が角部落下した場合に鉛蓄電池10の角部に衝撃が集中することを抑制できるので、角部に衝撃が集中して鉛蓄電池10が破損する可能性を低減できる。
【0081】
鉛蓄電池10の輸送構造1よると、緩衝体42はパルプモールド製であることから、仮に電解液が漏れ出たとしてもパルプモールド製の緩衝体42によってある程度吸収できる。このため、輸送中に鉛蓄電池10が落下して鉛蓄電池10が破損した場合に電解液が漏れ出すことをより確実に抑制できる。
例えば段ボール板を重ね合わせて緩衝体を形成することも可能であるが、段ボール板は表面が滑らかであるので輸送中に輸送箱30の内部で梱包箱20が滑って位置が安定し難いという課題がある。これに対し、パルプモールド製は表面が粗いので、梱包箱20が滑り難いという利点もある。
【0082】
一般に段ボール板は角が鋭いので、外袋44に緩衝体を収容するときに作業者が怪我をしたり、段ボールの角で外袋44が破れたりする可能性がある。パルプモールド製は段ポール製に比べて鋭い角が少ないので、作業者が怪我をしたり外袋44が破れたりする可能性を低減できる。
【0083】
段ボール板を重ね合わせて緩衝体を形成する場合は接着剤が必要であるが、パルプモールド製では接着剤が不要であり、段ボール板を重ね合わせる工程も不要であることから、段ボール板製に比べて安価に製造できるという利点もある。
パルプモールドは段ボール板製に比べて複雑な形状の成型が容易であるため、衝撃が緩衝されるように形状を工夫し易いという利点もある。
例えば緩衝体として発泡スチロール製の緩衝体を用いることも可能であるが、発泡スチロールは焼却時に燃焼温度が高温になり、焼却炉を早期に傷めてしまうという問題や有害ガスが発生するという問題があった。これに対し、パルプモールド製の緩衝体42はこのような問題を改善できるという利点もある。
【0084】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
(1)上記実施形態では、フラップ24の先端部分26は全体が第1の張り出し部54Aの真下に位置している場合を例に説明した。これに対し、前後方向から見て少なくとも端子13に重なる位置だけに先端部分26が設けられてもよい。前後方向から見て端子13に重なる位置に先端部分26が設けられているだけでも、端子13に加わる衝撃をある程度緩衝できるからである。
【0086】
(2)上記実施形態では緩衝体42の上壁部51(第3の壁部)が張り出し部54を有している場合を例に説明したが、上壁部51は張り出し部54を備えていなくてもよい。言い換えると、上壁部51は平板状であってもよい。
【0087】
(3)上記実施形態では緩衝体42の第1の張り出し部54Aは上壁部23と対向する面とは逆側の面側が空洞である場合を例に説明したが、逆側の面側は空洞でなくてもよい。その場合は第1の張り出し部54Aの下に床があることによって第1の張り出し部54Aが撓み難くなるので、逆側の面側が空洞である場合に比べて緩衝体42の強度を低くしてもよい。
【0088】
(4)上記実施形態では梱包箱20及び緩衝体42が輸送箱30に収容される場合を例に説明したが、これらは輸送箱30に収容されない状態で輸送されてもよい。その場合は例えばPP(ポリプロピレン)バンドによって緩衝体42を梱包箱20に固定してもよいし、その他の方法で緩衝体42を梱包箱20に固定してもよい。
【0089】
(5)上記実施形態1では緩衝体42が梱包箱20の上下両方に配される場合を例に説明したが、緩衝体42は上だけに配されてもよい。
【0090】
(6)上記実施形態1では、第1の凹部60Aは前後方向の中心を基準にして前後方向の両側に形成されており、緩衝体42を鉛直線周りに180度回転させて配しても第1の凹部60Aが端子13の真上に位置する場合を例に説明した。これに対し、第1の凹部60Aは前後方向の中心を基準にして前後方向のいずれか一方の側だけに形成されていてもよい。ただし、その場合は上側緩衝体42Aを配する際に向きを注意する必要がある。
【0091】
(7)上記実施形態では鉛蓄電池10の上面10Aから端子13が上に向かって突出している場合を例に説明した。これに対し、図17に示すように、鉛蓄電池10の蓋部材12の上面にT字状の凸部81を備え、端子13はT字状の凸部81以外の部分に設けられていてもよい。
【0092】
(8)上記実施形態では端子13が鉛蓄電池10の上面10Aに設けられている場合を例に説明したが、端子13が設けられている面は上面10Aに限定されない。例えば端子13は鉛蓄電池10の側面に設けられていてもよい。
【0093】
(9)上記実施形態1では2つのフラップ24A及び24Bの両方に先端部分26が設けられている場合を例に説明したが、先端部分26はいずれか一方のフラップ24だけに設けられていてもよい。
【0094】
(10)上記実施形態1では2つの端子13が鉛蓄電池10の短辺方向の一方の側に設けられている場合を例に説明したが、2つの端子は鉛蓄電池10の長辺方向の一方の側に設けられていてもよい。
【0095】
(11)上記実施形態1では自動車に搭載される鉛蓄電池10を例に説明したが、鉛蓄電池10は自動車に搭載されるものに限定されない。例えば鉛蓄電池10は自動二輪車に搭載されるものであってもよいし、他の用途に用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1:鉛蓄電池の輸送構造
10:鉛蓄電池
10A:上面(鉛蓄電池において第2の壁部と対向する面の一例)
13:端子
20:梱包箱
21:側壁部(4つの側壁部のうち横方向の幅が広い2つの側壁部は第1の壁部の一例)
23:上壁部(第2の壁部の一例)
24A,24B:フラップ
26:先端部分
42A:上側緩衝体(緩衝体の一例)
51:上壁部(第3の壁部の一例)
54:張り出し部
70:第4の側壁部(第4の壁部の一例)
71:第5の側壁部(第5の壁部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17