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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/165 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020198144
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086239
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 勤
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-116766(JP,A)
【文献】特開2002-113920(JP,A)
【文献】特開2018-144330(JP,A)
【文献】特開2010-194932(JP,A)
【文献】特開2006-129369(JP,A)
【文献】特開2020-006614(JP,A)
【文献】特開平02-102082(JP,A)
【文献】特開2015-189562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0123210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が搬送方向に搬送される搬送経路と、
ノズルが開口するノズル面を有するとともに、前記搬送経路において搬送される前記記
録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載するとともに、前記搬送方向とは異なる幅方向に移動するキャリ
ッジと、
キャップ位置に位置する前記記録ヘッドの前記ノズル面を覆うキャップと、
前記搬送経路、前記記録ヘッド、前記キャリッジ、及び前記キャップを収容する筐体と
、を備え、
前記筐体は、前記搬送方向においてメンテナンス位置より上流に位置する上流開口を開
閉可能な上流カバーと、前記搬送方向において前記メンテナンス位置より下流に位置する
下流開口を開閉可能な下流カバーと、を備え、
メンテナンス時に前記メンテナンス位置で停止する前記記録ヘッドは、前記幅方向にお
いて少なくとも一部が前記搬送経路と前記キャップとの間に位置し、
前記記録ヘッドは、前記搬送方向における上流に位置する上流側面、を備え、
前記上流側面は、前記上流カバーが開状態にあり、且つ前記記録ヘッドが前記メンテナ
ンス位置に停止したときに、前記上流開口を介して前記筐体の外部に露出することを特徴
とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、前記搬送方向における下流に位置する下流側面、を備え、
前記下流側面は、前記下流カバーが開状態にあり、且つ前記記録ヘッドが前記メンテナ
ンス位置に停止したときに、前記下流開口を介して前記筐体の外部に露出することを特徴
とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ノズル面は水平面であり、
前記上流カバーは前記筐体の後壁に配置され、
前記下流カバーは前記筐体の前壁に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求
項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記キャリッジの移動及び停止を制御する制御部を備え、
前記制御部は、ユーザーから前記記録ヘッドのメンテナンスを行う旨の指示を受けたこ
とを条件に、前記記録ヘッドが前記メンテナンス位置となる位置に前記キャリッジを停止
させることを特徴とする請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記上流カバー及び前記下流カバーの少なくとも一方を閉状態にロックす
るロック状態と、前記ロック状態を解除するロック解除状態と、で変位可能なロック部材
を備え、
前記ロック部材は、前記記録ヘッドが前記メンテナンス位置に停止したときに、前記ロ
ック状態から前記ロック解除状態に変位することを特徴とする請求項1~請求項4のうち
何れか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記キャリッジは、前記上流カバー及び前記下流カバーの少なくとも一方が開状態とな
ったときに停止することを特徴とする請求項1~請求項4のうち何れか一項に記載の記録
装置。
【請求項7】
前記メンテナンス位置にある前記記録ヘッドを照らす照明部をさらに備え、
前記照明部は、前記上流カバー及び前記下流カバーの少なくとも一方が開状態であると
きに点灯することを特徴とする請求項1~請求項6のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記照明部は、前記上流カバー及び前記下流カバーの両方が閉状態であるときに消灯し

前記キャリッジは、前記上流カバー及び前記下流カバーの両方が開状態から閉状態とな
ったときに、前記キャップ位置への前記記録ヘッドの移動を開始することを特徴とする請
求項7に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、記録媒体の一例であるロール紙に記録する記録装置の一例であるプリンターがある。プリンターは、記録ヘッドと、キャリッジと、キャップの一例であるキャッピング部と、筐体と、を備える。記録ヘッドは、ロール紙に記録を行う。キャリッジは、ロール紙の搬送方向とは異なる幅方向に走査する。記録ヘッドはキャリッジに搭載される。キャッピング部は、記録ヘッドのノズル面を覆う。筐体は、記録ヘッド、キャリッジ、及びキャッピング部を収容する。
【0003】
記録ヘッドは、キャリッジの移動に伴って、記録ヘッドがロール紙に記録を行う記録領域と、メンテナンス位置の一例である第1退避領域と、キャップ位置の一例である第2退避領域と、に移動する。第1退避領域は、ユーザーが記録ヘッドに付着した汚れをふき取る等の記録ヘッドのメンテナンスを行う領域である。第2退避領域は、キャッピング部を用いて記録ヘッドのメンテナンスを行う領域である。第1退避領域は、幅方向において記録領域外に位置する。第2退避領域は、幅方向とは反対方向において記録領域外に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-155649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幅方向における筐体の寸法を縮小することで、記録装置の小型化を図ることができる。幅方向における筐体の寸法は、キャップ位置及びメンテナンス位置の幅方向における配置態様に起因する。そのため、これらの配置態様を変更して、幅方向における筐体の寸法を縮小することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する記録装置は、記録媒体が搬送方向に搬送される搬送経路と、ノズルが開口するノズル面を有するとともに、前記搬送経路において搬送される前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載するとともに、前記搬送方向とは異なる幅方向に移動するキャリッジと、キャップ位置に位置する前記記録ヘッドの前記ノズル面を覆うキャップと、前記搬送経路、前記記録ヘッド、前記キャリッジ、及び前記キャップを収容する筐体と、を備え、前記筐体は、前記搬送方向においてメンテナンス位置より上流に位置する上流開口を開閉可能な上流カバーと、前記搬送方向において前記メンテナンス位置より下流に位置する下流開口を開閉可能な下流カバーと、を備え、メンテナンス時に前記メンテナンス位置で停止する前記記録ヘッドは、前記幅方向において少なくとも一部が前記搬送経路と前記キャップとの間に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における記録装置を示す斜視図。
図2】記録装置を示す模式図。
図3】記録装置の断面図。
図4】記録装置を示す模式図。
図5】記録ヘッドがメンテナンス位置にあるときの記録装置を示す模式図。
図6】下流カバーを示す斜視図。
図7】下流開口付近の筐体の構成を示す模式図。
図8】記録ヘッドがメンテナンス位置にあるときの記録装置を示す模式図。
図9】上流カバーが開放位置にある状態の上流開口付近の筐体の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、記録装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の記録装置は、例えば、用紙などの媒体に液体の一例であるインクを吐出して印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0009】
図面では、記録装置が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、X軸と平行な方向を幅方向Xともいい、Y軸と平行な方向を奥行方向Yともいい、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいう。
【0010】
図1に示すように、記録装置10は、略長方形状の筐体11を備えている。筐体11は、前壁12、後壁13、第1側壁14、第2側壁15、及び上壁16を備えている。前壁12及び後壁13は、Y軸に対して直交する方向に延びている。第1側壁14及び第2側壁15は、X軸に対して直交する方向に延びている。前壁12は後壁13よりも奥行方向Yに位置している。第2側壁15は第1側壁14よりも幅方向Xに位置している。第2側壁15は、幅方向Xにおける前壁12及び後壁13の各々の端部と繋がっている。第1側壁14は、幅方向Xとは反対方向における前壁12及び後壁13の各々の端部と繋がっている。上壁16は、水平面に対して平行に延びている。上壁16は、鉛直方向Zとは反対方向において、前壁12、後壁13、第1側壁14、及び第2側壁15の各々と繋がっている。
【0011】
図2及び図3に示すように、記録装置10は、円筒状のロール体18を収容する収容部17を備えてもよい。ロール体18は、記録媒体19が芯部材20に巻き付けられて形成されている。収容部17は、複数のロール体18を収容可能である。各ロール体18の幅方向Xにおける両端は、収容部17における不図示の保持部に回転可能に装着される。収容部17は、筐体11の前壁12のうち、鉛直方向Zの一部において開口している。収容部17は、鉛直方向Zにおいて、筐体11の内部空間の一部を構成している。
【0012】
記録装置10は、筐体11の内部に板状の支持台21を備えてもよい。支持台21は、収容部17よりも上方に位置している。支持台21の幅方向Xにおける寸法は、記録媒体19の幅方向Xにおける寸法よりも大きい。支持台21は上面において記録媒体19を支持可能である。
【0013】
<キャリッジ22>
図3に示すように、記録装置10は、幅方向Xに移動するキャリッジ22を備える。筐体11はキャリッジ22を収容する。キャリッジ22は、幅方向Xに延びる棒状のガイド軸23に支持されている。記録装置10はキャリッジモーター24を備えてもよい。キャリッジモーター24が駆動されることにより、キャリッジ22はガイド軸23に沿って往復移動可能である。キャリッジ22及びガイド軸23は、支持台21より上方に位置している。
【0014】
<記録媒体19の給送及び搬送>
図3に示すように、記録装置10は、駆動モーター25と、図面に一点鎖線で示す搬送経路26に沿って記録媒体19を搬送する搬送部27と、を備えてもよい。すなわち、記録装置10は搬送経路26を備えるとも言える。筐体11は搬送経路26を収容する。搬送経路26は支持台21上を含んでもよい。搬送経路26は、前壁12に開口する排出口12hに繋がる。
【0015】
ロール体18は、駆動モーター25が駆動することによって回転する。ロール体18の回転に伴って、記録媒体19がロール体18から巻き解かれるとともに搬送経路26に給送される。搬送部27は複数の搬送ローラー対29を備えてもよい。搬送ローラー対29が記録媒体19を挟んだ状態で回転することにより、搬送経路26において記録媒体19が搬送方向Dに搬送される。搬送方向Dは、搬送経路26に沿う方向である。
【0016】
<記録ヘッド31>
図4に示すように、記録装置10は、記録媒体19に記録を行う記録ヘッド31を備えている。筐体11は記録ヘッド31を収容する。記録ヘッド31は、ノズル31aが開口するノズル面31bを有する。ノズル面31bは水平面であってもよい。
【0017】
キャリッジ22は記録ヘッド31を搭載している。記録ヘッド31は、キャリッジ22と共に移動することにより、幅方向X及び幅方向Xとは反対方向に往復移動可能である。記録ヘッド31は、支持台21より上方であって支持台21から離間した位置を移動する。ノズル面31bは、支持台21の上面と平行であってもよい。記録ヘッド31は、ノズル31aから支持台21上の記録媒体19に対して液体を吐出することにより、記録媒体19に対する記録を行ってもよい。なお、支持台21上における搬送方向DはY軸と平行である。支持台21より上を、幅方向Xに移動するキャリッジ22は、搬送方向Dとは異なる方向に移動すると言える。
【0018】
<キャップ30>
図4に示すように、記録装置10は、ノズル面31bを覆うキャップ30を備える。筐体11はキャップ30を収容する。キャップ30は、キャップモーター32によってZ軸に沿って往復移動可能であってもよい。キャップモーター32によるキャップ30の移動に伴って、キャップ30は上方もしくは下方に移動する。キャップ30は、下方の位置である離隔位置Puと、上方の位置である接触位置Ptとの間で移動する。キャップ30の上方は、記録ヘッド31のキャップ位置CP(図5参照)である。キャップ30が接触位置Ptにあるとき、キャップ位置CPで停止している記録ヘッド31にキャップ30が接触する。
【0019】
キャップ30は、ノズル面31bを覆うことにより、記録ヘッド31のノズル31aの開口を囲う。このように、キャップ30がノズル31aの開口を囲うメンテナンスをキャッピングという。キャッピングにより、ノズル31aの乾燥が抑制される。キャップ30は、ノズル面31bに開口する全てのノズル31aをまとめて囲む構成であってもよい。
【0020】
<操作部33>
図5に示すように、記録装置10は、筐体11の上壁16に操作部33を備えてもよい。操作部33は、例えばタッチパネルなどによって構成され、ユーザーが各種の情報の入力を行う際に使用される。ユーザーが操作部33に入力する各種情報としては、例えば記録媒体19への記録の各種情報、記録媒体19への記録開始、及び各種メンテナンスの実行等が挙げられる。各種メンテナンスの実行には、記録ヘッド31のメンテナンスが含まれる。操作部33への各種情報の入力は、操作部33に表示される各種メニューにユーザーが触れることにより行われてもよい。
【0021】
<制御部35>
図5に示すように、記録装置10は制御部35を備えてもよい。制御部35は、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0022】
制御部35は、記録装置10において実行される各種動作を制御してもよい。制御部35は、ユーザーによる操作部33への入力に基づいて、キャリッジモーター24の駆動を制御することにより、キャリッジ22の移動及び停止を制御してもよい。記録ヘッド31は、キャリッジ22の移動に伴って、記録領域PRとキャップ位置CPとの間で移動するとともに、キャリッジ22の停止に伴ってメンテナンス位置MPに停止する。
【0023】
記録領域PRは、ノズル面31bに直交する方向においてノズル面31bが搬送経路26に重なる領域である。詳細には、記録領域PRは、Z軸と平行な方向において、支持台21上の搬送経路26にノズル面31bが重なる領域である。記録領域PRの幅方向Xの寸法は、支持台21上の記録媒体19の載置スペースにおける幅方向Xの寸法と一致する。記録ヘッド31は、記録領域PRを移動しながら、記録媒体19への記録を行ってもよい。
【0024】
キャップ位置CPは、幅方向Xにおいて記録領域PRから離間した位置である。キャップ位置CPは、記録ヘッド31のホームポジションである。記録ヘッド31はキャップ位置CPを移動の始点とする。
【0025】
ユーザーが記録媒体19への記録を開始する旨を操作部33に入力すると、制御部35はキャリッジモーター24の駆動を開始させる。これにより、記録ヘッド31は、記録領域PRを往復移動しながら液体を吐出して記録媒体19への記録を行う。記録媒体19への記録が終了すると、制御部35は、記録ヘッド31をキャップ位置CPまで幅方向Xに移動させる。制御部35がキャリッジモーター24の駆動を停止させることにより、記録ヘッド31はキャップ位置CPにおいて停止する。
【0026】
制御部35は、記録ヘッド31がキャップ位置CPに位置するタイミングにおいて、キャップモーター32の駆動を開始させる。これにより、キャップ30は離隔位置Puから移動する。制御部35は、キャップ30が接触位置Ptまで移動すると、キャップモーター32の駆動を停止させる。これにより、キャップ30は接触位置Ptにおいて停止する。記録ヘッド31がキャップ位置CPにおいて停止し、且つキャップ30が接触位置Ptにおいて停止することにより、キャップ30がノズル面31bを覆うキャッピングが行われる。制御部35は、記録ヘッド31がキャップ位置CPから移動すると、キャップモーター32の駆動を開始させる。これにより、キャップ30は接触位置Ptから移動する。制御部35は、キャップ30が離隔位置Puまで移動すると、キャップモーター32の駆動を停止させる。これにより、キャップ30は離隔位置Puにおいて停止する。
【0027】
制御部35は、ユーザーから記録ヘッド31のメンテナンスを行う旨の指示を受けたことを条件に、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPとなる位置にキャリッジ22を停止させてもよい。制御部35は、ユーザーが記録ヘッド31のメンテナンスを行う旨の入力を操作部33に行ったことをもって、ユーザーから記録ヘッド31のメンテナンスを行う旨の指示を受けたと判断する。
【0028】
記録ヘッド31のメンテナンスに際しては、まず制御部35がキャリッジモーター24の駆動を開始させることにより、記録ヘッド31がキャップ位置CPから幅方向Xとは反対方向に移動する。制御部35は、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに至ったタイミングでキャリッジモーター24の駆動を停止させる。
【0029】
メンテナンス位置MPは、幅方向Xにおける記録領域PRとキャップ位置CPとの間の位置である。メンテナンス時にメンテナンス位置MPで停止する記録ヘッド31は、幅方向Xにおいて少なくとも一部が搬送経路26とキャップ30との間に位置する。メンテナンス位置MPに停止したときの記録ヘッド31のノズル面31bは、幅方向Xにおける記録領域PR外に位置してもよい。メンテナンス位置MPに記録ヘッド31が停止したとき、幅方向Xにおけるノズル面31bの一部が、キャップ位置CPに記録ヘッド31が停止したときのノズル面31bの一部と重なってもよい。
【0030】
制御部35は、記録ヘッド31がキャップ位置CPからメンテナンス位置MPに向けて移動を開始したとき、キャップモーター32の駆動を開始させる。これにより、キャップ30は接触位置Ptから移動する。記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したとき、キャップ30は、接触位置Ptと離隔位置Puとの間の位置、もしくは離隔位置Puに位置する。そのため、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPにあるときに、キャップ30はノズル面31bから離間している。
【0031】
<下流カバー41>
図5に示すように、筐体11は、下流開口11dを開閉可能な下流カバー41を備える。下流開口11dは筐体11の前壁12に位置することにより、下流カバー41は筐体11の前壁12に配置されてもよい。下流開口11dは、搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPより下流に位置する。これにより、下流カバー41は、搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPより下流に位置する。
【0032】
図6に示すように、下流カバー41は、支持部45、爪部46、及び突部47を備えてもよい。下流カバー41が下流開口11dを閉塞する状態で、幅方向Xにおける下流カバー41の端部を第1下流端41aという。2つの支持部45が、第1下流端41aに沿って位置する。支持部45は、第1下流端41aと平行に延びる回転軸を中心に、下流カバー41を筐体11に対して回動可能に支持する。下流カバー41は、筐体11の下流開口11dを覆う閉位置と、下流開口11dを開放する開位置と、に移動可能である。爪部46及び突部47は、下流カバー41の内面である下流内面41bに位置する。下流カバー41における第1下流端41aとは反対に位置する第2下流端41cに沿って、2つの爪部46が並んでいる。
【0033】
図7に示すように、記録ヘッド31は、記録ヘッド31の搬送方向Dにおける下流に位置する下流側面31dを備えてもよい。記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、下流カバー41は記録ヘッド31の下流側面31dに対向する。下流側面31dは、搬送方向Dの下流におけるノズル面31bの縁部に繋がっている。下流側面31dは、下流カバー41が開状態にあり、且つ記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、下流開口11dを介して筐体11の外部に露出する。
【0034】
<上流カバー61>
図8に示すように、筐体11は、上流開口11uを開閉可能な上流カバー61を備える。上流開口11uは筐体11の後壁13に位置することにより、上流カバー61は筐体11の後壁13に配置されてもよい。上流開口11uは、搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPより上流に位置する。これにより、上流カバー61は、搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPより上流に位置する。
【0035】
筐体11は、筐体11の外部から上流カバー61を覆うインターフェイスカバー62を備えてもよい。インターフェイスカバー62は、上流カバー61を含め、上流カバー61の周りの後壁13を覆っている。インターフェイスカバー62を開放することにより、上流カバー61の開放が可能となる。
【0036】
図9に示すように、上流カバー61は、支持部45、爪部46、及び突部47を備えてもよい。上流カバー61が上流開口11uを閉塞する状態で、上流カバー61の下端を第1上流端61aという。2つの支持部45が、第1上流端61aに沿って位置する。支持部45は、第1上流端61aと平行に延びる回転軸を中心に、上流カバー61を筐体11に対して回動可能に支持する。上流カバー61は、筐体11の上流開口11uを覆う閉位置と、上流開口11uを開放する開位置と、に移動可能である。爪部46及び突部47は、上流カバー61の内面である上流内面61bに位置する。上流カバー61における第1上流端61aとは反対に位置する第2上流端61cに沿って、2つの爪部46が並んでいる。
【0037】
記録ヘッド31は、記録ヘッド31の搬送方向Dにおける上流に位置する上流側面31uを備えてもよい。記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、上流カバー61は、奥行方向Yにおいて、記録ヘッド31の上流側面31uに対向する。上流側面31uは、搬送方向Dの上流におけるノズル面31bの縁部に繋がっている。上流側面31uは、上流カバー61が開状態にあり、且つ記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、上流開口11uを介して筐体11の外部に露出する。
【0038】
<下流カバー41及び上流カバー61付近の筐体11の構造>
図7及び図9に示すように、筐体11は、爪部46が挿入可能な受部48を備えてもよい。受部48は、前壁12及び後壁13の各々を貫通する貫通孔であり、前壁12及び後壁13の各々に2つずつ設けられている。
【0039】
筐体11は、内部に内部部材49を備えてもよい。内部部材49は、下流開口11dの上方及び上流開口11uの下方に対向している。内部部材49は、内部部材49を貫通する貫通孔49aを備えている。
【0040】
下流カバー41及び上流カバー61が閉位置にあるとき、受部48の各々に爪部46が挿入し、貫通孔49aに突部47が挿入する。爪部46が受部48に挿入されると、受部48を介して前壁12及び後壁13に爪部46が係合する。これにより、下流カバー41及び上流カバー61は、ユーザーによる解放時以外に、容易に解放されることが抑制される。
【0041】
記録装置10は、筐体11の内部にインターロックセンサー50を備えてもよい。インターロックセンサー50は、内部部材49の貫通孔49aと奥行方向Yにおいて並んでいる。下流カバー41の突部47が貫通孔49aに挿入されているとき、インターロックセンサー50は下流カバー41が閉位置にあるとして検出する。下流カバー41の突部47が貫通孔49aに挿入されていないとき、インターロックセンサー50は下流カバー41が開位置にあるとして検出する。上流カバー61の突部47が貫通孔49aに挿入されているとき、インターロックセンサー50は上流カバー61が閉位置にあるとして検出する。上流カバー61の突部47が貫通孔49aに挿入されていないとき、インターロックセンサー50は上流カバー61が開位置にあるとして検出する。インターロックセンサー50は、下流カバー41及び上流カバー61の開閉状態に応じた信号を制御部35に出力する。
【0042】
筐体11はロック部材51を備えてもよい。ロック部材51は、下流カバー41及び上流カバー61を閉状態にロックするロック状態と、ロック状態を解除するロック解除状態と、で変位可能である。ロック部材51は、下流カバー41及び上流カバー61のそれぞれに対応するように、筐体11に複数配置されていてもよい。ロック部材51は、受部48に挿入された下流カバー41の爪部46をロックすることにより、下流カバー41を閉状態にロックしてもよい。ロック部材51は、受部48に挿入された上流カバー61の爪部46をロックすることにより、上流カバー61を閉状態にロックしてもよい。
【0043】
記録装置10は、メンテナンス位置MPにある記録ヘッド31を照らす照明部52を備えてもよい。照明部52は、上流カバー61及び下流カバー41の少なくとも一方が開状態であるときに点灯する。ロック部材51におけるロック状態及びロック解除状態の切り替えと、照明部52の点灯及び消灯の切り替えと、は制御部35によって制御されてもよい。
【0044】
<下流カバー41及び上流カバー61の開閉に伴う制御>
制御部35は、メンテナンス位置MPに記録ヘッド31が停止したときに、ロック部材51をロック状態からロック解除状態に切り替えてもよい。これにより、ロック部材51は、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、ロック状態からロック解除状態に変位する。ユーザーは、下流カバー41及び上流カバー61を開放することが可能になる。
【0045】
制御部35は、ロック部材51がロック解除状態である状況下で、下流カバー41及び上流カバー61の両方が閉状態である旨の信号をインターロックセンサー50から受信することを条件に、ロック部材51をロック状態に切り替えてもよい。ロック部材51がロック解除状態からロック状態に切り替えられることにより、下流カバー41及び上流カバー61の両方が閉状態にロックされてもよい。
【0046】
なお、制御部35がロック部材51をロック状態に切り替えるための条件は、下流カバー41及び上流カバー61の両方が閉状態である旨の信号をインターロックセンサー50から受信するといった条件に限らない。例えば、制御部35は、下流カバー41及び上流カバー61の両方が閉状態である旨の信号をインターロックセンサー50から所定時間継続して受信することを条件に、ロック部材51をロック状態に切り替えてもよい。制御部35は、下流カバー41及び上流カバー61の両方が閉状態である旨の信号をインターロックセンサー50から受信し、且つユーザーが操作部33に記録ヘッド31のメンテナンス以外の操作を行ったことを条件に、ロック部材51をロック解除状態からロック状態に切り替えてもよい。
【0047】
制御部35は、上流カバー61及び下流カバー41の少なくとも一方が開状態である旨の信号をインターロックセンサー50から受信したときに、ユーザーによって上流カバー61及び下流カバー41の少なくとも一方が開位置に移動されたと判断して、照明部52を点灯してもよい。制御部35は、上流カバー61及び下流カバー41の両方が閉状態である旨の信号をインターロックセンサー50から受信したときに、ユーザーによって上流カバー61及び下流カバー41の両方が閉位置に移動されたと判断して、照明部52を消灯してもよい。すなわち、照明部52は、上流カバー61及び下流カバー41の両方が閉状態であるときに消灯してもよい。
【0048】
制御部35は、上流カバー61及び下流カバー41の両方が閉状態である旨の信号をインターロックセンサー50から受信したときに、キャリッジモーター24の駆動を開始させることにより、キャリッジ22の移動を開始させてもよい。すなわち、キャリッジ22は、上流カバー61及び下流カバー41の両方が開状態から閉状態となったときに、メンテナンス位置MPからキャップ位置CPへの記録ヘッド31の移動を開始してもよい。なお、制御部35は、キャリッジ22の移動開始を、ロック部材51をロック状態に切り替えた後に行ってもよい。
【0049】
<本実施形態の作用>
本実施形態の作用について説明する。
記録ヘッド31のメンテナンスに際して、ユーザーが操作部33を操作すると、制御部35は、キャリッジモーター24の駆動を開始させることにより、記録ヘッド31をキャップ位置CPからメンテナンス位置MPに移動させる。制御部35は、記録ヘッド31をメンテナンス位置MPで停止させる。
【0050】
記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止しているとき、ユーザーは、上流カバー61を開状態にすることにより、上流開口11uを介して、記録ヘッド31のノズル面31b及び上流側面31uのメンテナンスを行うことができる。
【0051】
記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止しているとき、ユーザーは、下流カバー41を開状態にすることにより、下流開口11dを介して、記録ヘッド31のノズル面31b及び下流側面31dのメンテナンスを行うことができる。
【0052】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果について説明する。
(1)記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したとき、ユーザーは、上流カバー61を開状態にすることにより、上流開口11uを介して記録ヘッド31のメンテナンスを行うことができる。記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したとき、ユーザーは、下流カバー41を開状態にすることにより、下流開口11dを介して記録ヘッド31のメンテナンスを行うことができる。メンテナンス時にメンテナンス位置MPで停止する記録ヘッド31は、幅方向Xにおいて少なくとも一部が搬送経路26とキャップ30との間に位置する。そのため、キャップ位置CPが幅方向Xにおける搬送経路26外の位置であるとともにメンテナンス位置MPが幅方向Xとは反対方向における搬送経路26外の位置である場合と比較して、幅方向Xにおける筐体11の寸法を縮小できる。
【0053】
(2)上流カバー61が開状態にあり、且つ記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、記録ヘッド31の上流側面31uは上流開口11uを介して筐体11の外部に露出する。下流カバー41が開状態にあり、且つ記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、記録ヘッド31の下流側面31dは下流開口11dを介して筐体11の外部に露出する。そのため、ユーザーは、筐体11の上流開口11uを介して記録ヘッド31の上流側面31uを視認しながら、上流側面31uのメンテナンスを行うことができる。ユーザーは、筐体11の下流開口11dを介して記録ヘッド31の下流側面31dを視認しながら、下流側面31dのメンテナンスを行うことができる。したがって、ユーザーによる記録ヘッド31の上流側面31u及び下流側面31dのメンテナンスの効率を向上できる。
【0054】
(3)制御部35は、ユーザーから記録ヘッド31のメンテナンスを行う旨の指示を受けたことを条件に、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPとなる位置にキャリッジ22を停止させる。そのため、メンテナンス位置MPへの記録ヘッド31の停止が定期的に行われる場合と比較して、ユーザーが記録ヘッド31のメンテナンスを行おうとしてから記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止するまでの間にユーザーを待たせる時間を短くできる。したがって、記録ヘッド31のメンテナンスの際に、ユーザーの作業効率を向上することができる。
【0055】
(4)筐体11は、上流カバー61及び下流カバー41の両方を閉状態にロックするロック状態と、ロック状態を解除するロック解除状態と、で変位可能なロック部材51を備える。ロック部材51は、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、ロック状態からロック解除状態に変位する。そのため、記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに移動している間に、ユーザーが上流カバー61及び下流カバー41を閉状態から開状態に変位させることを抑制できる。したがって、記録ヘッド31の移動中に、ユーザーが記録ヘッド31のメンテナンスを行うことを抑制できる。
【0056】
(5)記録装置10は、メンテナンス位置MPにある記録ヘッド31を照らす照明部52を備える。照明部52は、上流カバー61及び下流カバー41の少なくとも一方が開状態であるときに点灯する。そのため、照明部52が記録ヘッド31を照らした状態で、ユーザーは記録ヘッド31のメンテナンスを行うことができる。したがって、記録ヘッド31のメンテナンスの際に、ユーザーの作業効率を向上することができる。
【0057】
(6)上流カバー61及び下流カバー41が開状態から閉状態になると、点灯していた照明部52が消灯するとともに、キャリッジ22がキャップ位置CPへの記録ヘッド31の移動を開始させる。そのため、記録ヘッド31のメンテナンス終了後、ユーザーは、上流カバー61及び下流カバー41を閉状態にする作業とは別に、照明部52を消灯する作業と記録ヘッド31を移動させるための作業を行う必要がない。したがって、記録ヘッド31のメンテナンスの際に、ユーザーの作業効率を向上することができる。
【0058】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ロック部材51は上流カバー61及び下流カバー41の一方を閉状態にロックするものであってもよい。筐体11はロック部材51を備えなくてもよい。
【0059】
・キャリッジ22は、上流カバー61及び下流カバー41の少なくとも一方が開状態となったときに停止してもよい。
上記変更例によれば、上記実施形態の(1)~(3)、(5)、及び(6)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0060】
(7)記録ヘッド31の移動中に、ユーザーが上流カバー61及び下流カバー41の少なくとも一方を閉状態から開状態に変位させると、記録ヘッド31が停止する。したがって、記録ヘッド31が移動している状態で、ユーザーが記録ヘッド31のメンテナンスを行うことを抑制できる。
【0061】
・記録装置10は、幅方向Xに移動するキャリッジ22に押されることで、離隔位置Puに位置するキャップ30を接触位置Ptに移動させるカムを備えてもよい。この場合、記録ヘッド31が移動してキャップ位置CPに近づくにつれて、キャップ30は接触位置Ptに向けて上方に徐々に移動する。記録ヘッド31がキャップ位置CPに位置するタイミングにおいて、キャップ30は接触位置Ptにまで移動するとともに接触位置Ptにおいて停止する。記録ヘッド31がキャップ位置CPにおいて停止し、且つキャップ30が接触位置Ptにおいて停止することにより、キャップ30がノズル面31bを覆うキャッピングが行われる。記録ヘッド31が移動してキャップ位置CPからメンテナンス位置MPに近づくにつれて、キャップ30は下方に徐々に移動する。記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに位置するタイミングにおいて、キャップ30は接触位置Ptと離隔位置Puとの間の位置、もしくは離隔位置Puに位置する。記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止され、記録ヘッド31のメンテナンスを行うとき、記録ヘッド31とキャップ30とは離間している。
【0062】
・照明部52の点灯及び消灯は、ユーザーによる操作部33の操作に基づいて行われてもよい。
・上流カバー61の付近と下流カバー41の付近とで、2つの照明部52を配置してもよい。この場合、一方の照明部52は上流カバー61が開状態であるときに点灯するようにしてもよい。他方の照明部52は下流カバー41が開状態であるときに点灯するようにしてもよい。記録装置10は照明部52を備えなくてもよい。
【0063】
・ユーザーは、操作部33の操作にかえて、通信機器を用いて制御部35と通信することにより、制御部35に各種制御を行わせてもよい。この場合、制御部35は、通信機器を用いたユーザーとの通信に基づいて、ユーザーから記録ヘッド31のメンテナンスを行う旨の指示を受けたと判断する。
【0064】
・ノズル面31bは水平面に対して傾斜する傾斜面であってもよい。この場合、例えば搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPよりも上流に筐体11の上壁16が位置するとともに、搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPよりも下流に筐体11の前壁12が位置することがある。こうした場合においては、上流カバー61を筐体11の上壁16に配置してもよい。下流カバー41を筐体11の前壁12に配置してもよい。
【0065】
・上流カバー61が開状態にあり、且つ記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、上流開口11uを介して筐体11の外部に露出する記録ヘッド31の部分は、上流側面31uに限らない。要するに搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPより上流に、上流開口11uが位置すれば、上流開口11uを介して、メンテナンス位置MPに停止した記録ヘッド31のメンテナンスを行うことができる。下流カバー41が開状態にあり、且つ記録ヘッド31がメンテナンス位置MPに停止したときに、下流開口11dを介して筐体11の外部に露出する記録ヘッド31の部分は、下流側面31dに限らない。要するに、搬送方向Dにおいてメンテナンス位置MPより下流に下流開口11dが位置すれば、下流開口11dを介して、メンテナンス位置MPに停止した記録ヘッド31のメンテナンスを行うことができる。
【0066】
・記録装置10は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりして記録を行う液体噴射装置であってもよい。液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する装置がある。液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体噴射装置は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ、光学レンズ、などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置であってもよい。液体噴射装置は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置であってもよい。
【0067】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)記録装置は、記録媒体が搬送方向に搬送される搬送経路と、ノズルが開口するノズル面を有するとともに、前記搬送経路において搬送される前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載するとともに、前記搬送方向とは異なる幅方向に移動するキャリッジと、キャップ位置に位置する前記記録ヘッドの前記ノズル面を覆うキャップと、前記搬送経路、前記記録ヘッド、前記キャリッジ、及び前記キャップを収容する筐体と、を備え、前記筐体は、前記搬送方向においてメンテナンス位置より上流に位置する上流開口を開閉可能な上流カバーと、前記搬送方向において前記メンテナンス位置より下流に位置する下流開口を開閉可能な下流カバーと、を備え、メンテナンス時に前記メンテナンス位置で停止する前記記録ヘッドは、前記幅方向において少なくとも一部が前記搬送経路と前記キャップとの間に位置する。
【0068】
この構成によれば、記録ヘッドがメンテナンス位置に停止したとき、ユーザーは、上流カバーを開状態にすることにより、上流開口を介して記録ヘッドのメンテナンスを行うことができる。記録ヘッドがメンテナンス位置に停止したとき、ユーザーは、下流カバーを開状態にすることにより、下流開口を介して記録ヘッドのメンテナンスを行うことができる。メンテナンス時にメンテナンス位置で停止する記録ヘッドは、幅方向において少なくとも一部が搬送経路とキャップとの間に位置する。そのため、キャップ位置が幅方向における搬送経路外の位置であるとともにメンテナンス位置が幅方向とは反対方向における搬送経路外の位置である場合と比較して、幅方向における筐体の寸法を縮小できる。
【0069】
(B)記録装置において、前記記録ヘッドは、前記搬送方向における上流に位置する上流側面と、前記搬送方向における下流に位置する下流側面と、を備え、前記上流側面は、前記上流カバーが開状態にあり、且つ前記記録ヘッドが前記メンテナンス位置に停止したときに、前記上流開口を介して前記筐体の外部に露出し、前記下流側面は、前記下流カバーが開状態にあり、且つ前記記録ヘッドが前記メンテナンス位置に停止したときに、前記下流開口を介して前記筐体の外部に露出してもよい。
【0070】
この構成によれば、ユーザーは、筐体の上流開口を介して記録ヘッドの上流側面を視認しながら、上流側面のメンテナンスを行うことができる。ユーザーは、筐体の下流開口を介して記録ヘッドの下流側面を視認しながら、下流側面のメンテナンスを行うことができる。したがって、ユーザーによる記録ヘッドの上流側面及び下流側面のメンテナンスの効率を向上できる。
【0071】
(C)記録装置において、前記ノズル面は水平面であり、前記上流カバーは前記筐体の後壁に配置され、前記下流カバーは前記筐体の前壁に配置されていてもよい。
(D)記録装置において、前記キャリッジの移動及び停止を制御する制御部を備え、前記制御部は、ユーザーから前記記録ヘッドのメンテナンスを行う旨の指示を受けたことを条件に、前記記録ヘッドが前記メンテナンス位置となる位置に前記キャリッジを停止させてもよい。
【0072】
この構成によれば、メンテナンス位置への記録ヘッドの停止が定期的に行われる場合と比較して、ユーザーが記録ヘッドのメンテナンスを行おうとしてから記録ヘッドがメンテナンス位置に停止するまでの間にユーザーを待たせる時間を短くできる。したがって、記録ヘッドのメンテナンスの際に、ユーザーの作業効率を向上することができる。
【0073】
(E)記録装置において、前記筐体は、前記上流カバー及び前記下流カバーの少なくとも一方を閉状態にロックするロック状態と、前記ロック状態を解除するロック解除状態と、で変位可能なロック部材を備え、前記ロック部材は、前記記録ヘッドが前記メンテナンス位置に停止したときに、前記ロック状態から前記ロック解除状態に変位してもよい。
【0074】
この構成によれば、記録ヘッドがメンテナンス位置に移動している間に、ユーザーが上流カバー及び下流カバーを閉状態から開状態に変位させることを抑制できる。したがって、記録ヘッドの移動中に、ユーザーが記録ヘッドのメンテナンスを行うことを抑制できる。
【0075】
(F)記録装置において、前記キャリッジは、前記上流カバー及び前記下流カバーの少なくとも一方が開状態となったときに停止してもよい。
この構成によれば、記録ヘッドの移動中に、ユーザーが上流カバー及び下流カバーの少なくとも一方を閉状態から開状態に変位させると、記録ヘッドが停止する。したがって、記録ヘッドが移動している状態で、ユーザーが記録ヘッドのメンテナンスを行うことを抑制できる。
【0076】
(G)記録装置において、前記メンテナンス位置にある前記記録ヘッドを照らす照明部をさらに備え、前記照明部は、前記上流カバー及び前記下流カバーの少なくとも一方が開状態であるときに点灯してもよい。
【0077】
この構成によれば、照明部が記録ヘッドを照らした状態で、ユーザーは記録ヘッドのメンテナンスを行うことができる。したがって、記録ヘッドのメンテナンスの際に、ユーザーの作業効率を向上することができる。
【0078】
(H)記録装置において、前記照明部は、前記上流カバー及び前記下流カバーの両方が閉状態であるときに消灯し、前記キャリッジは、前記上流カバー及び前記下流カバーの両方が開状態から閉状態となったときに、前記キャップ位置への前記記録ヘッドの移動を開始してもよい。
【0079】
この構成によれば、上流カバー及び下流カバーが開状態から閉状態になると、点灯していた照明部が消灯するとともに、キャリッジがキャップ位置への記録ヘッドの移動を開始させる。そのため、記録ヘッドのメンテナンス終了後、ユーザーは、上流カバー及び下流カバーを閉状態にする作業とは別に、照明部を消灯する作業と記録ヘッドを移動させるための作業を行う必要がない。したがって、記録ヘッドのメンテナンスの際に、ユーザーの作業効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0080】
CP…キャップ位置、D…搬送方向、MP…メンテナンス位置、PR…記録領域、Pt…接触位置、Pu…離隔位置、X…幅方向、Y…奥行方向、Z…鉛直方向、10…記録装置、11…筐体、11d…下流開口、11u…上流開口、12…前壁、12h…排出口、13…後壁、14…第1側壁、15…第2側壁、16…上壁、17…収容部、18…ロール体、19…記録媒体、20…芯部材、21…支持台、22…キャリッジ、23…ガイド軸、24…キャリッジモーター、25…駆動モーター、26…搬送経路、27…搬送部、29…搬送ローラー対、30…キャップ、31…記録ヘッド、31a…ノズル、31b…ノズル面、31d…下流側面、31u…上流側面、32…キャップモーター、33…操作部、35…制御部、41…下流カバー、41a…第1下流端、41b…下流内面、41c…第2下流端、45…支持部、46…爪部、47…突部、48…受部、49…内部部材、49a…貫通孔、50…インターロックセンサー、51…ロック部材、52…照明部、61…上流カバー、61a…第1上流端、61b…上流内面、61c…第2上流端、62…インターフェイスカバー。
図1
図2
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図7
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図9