(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】配電自動化システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/18 20060101AFI20241210BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20241210BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J3/18 128
H02J3/12
H02J3/18 178
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2020201662
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】前島 雄介
(72)【発明者】
【氏名】水迫 優晴
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-235623(JP,A)
【文献】特開2014-204579(JP,A)
【文献】特開2014-147202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
H02J 3/18
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動電圧調整装置の状態を含む配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置と、
配電系統内の機器を制御可能な監視制御装置と、
を備え、前記監視制御装置から開閉器の開閉操作が入力された場合に、当該操作によって前記自動電圧調整装置またはその周辺機器が損傷するため操作不可とするか否かを前記配電系統状態に基づいて判定し、操作不可と判定した場合には警報を発するものであり、
前記自動電圧調整装置である段階制御式リアクトル装置に投入量がある状態で、該段階制御式リアクトル装置の直近上流側の開閉器に対して前記監視制御装置から切操作が入力された場合には、操作不可と判定する、
ことを特徴とする配電自動化システム。
【請求項2】
自動電圧調整装置の状態を含む配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置と、
配電系統内の機器を制御可能な監視制御装置と、
を備え、前記監視制御装置から開閉器の開閉操作が入力された場合に、当該操作によって前記自動電圧調整装置またはその周辺機器が損傷するため操作不可とするか否かを前記配電系統状態に基づいて判定し、操作不可と判定した場合には警報を発するものであり、
前記自動電圧調整装置である負荷時タップ切換変圧器装置によって負荷側が昇圧または降圧されている状態で、前記監視制御装置から開閉器の入操作が入力されて、該入操作によって前記負荷時タップ切換変圧器装置を含む閉回路が形成される場合には、操作不可と判定する、
ことを特徴とする配電自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動電圧調整装置を含む配電系統を監視、制御する配電自動化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配電系統の監視や開閉器の制御などを行い、停電が発生すると配電系統上の停電エリアを特定したり、監視、制御の結果に基づいて、停電の発生や給電の復旧などの停電情報を生成したりする配電自動化システムが設置、運用されている。また、配電線の電圧を適正に維持するための自動電圧調整装置として、例えば、負荷時タップ切換変圧器装置(SVR:Static Voltage Regulator)が配電線途中に配設されたり、段階制御式リアクトル装置(SSR:Step Switched Reactor)が配電線の端末側に配設されたりしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、系統を切り替える際には、自動電圧調整装置などの機器が損傷して配電線事故に波及しないように、配電系統の状態などを考慮・注意(養生)する必要がある。例えば、開閉器を開閉することでSVRや開閉器が損傷しないかを確認して開閉器を操作する必要があるが、このような確認は、従来、担当者・オペレータが行っていた。このため、担当者の経験不足や注意不足などによって確認・判断を誤るおそれがあり、その結果、機器が損傷して配電線事故に至るおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、開閉器の開閉によって機器が損傷するのを防止可能な配電自動化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、自動電圧調整装置の状態を含む配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置と、配電系統内の機器を制御可能な監視制御装置と、を備え、前記監視制御装置から開閉器の開閉操作が入力された場合に、当該操作によって前記自動電圧調整装置またはその周辺機器が損傷するため操作不可とするか否かを前記配電系統状態に基づいて判定し、操作不可と判定した場合には警報を発するものであり、前記自動電圧調整装置である段階制御式リアクトル装置に投入量がある状態で、該段階制御式リアクトル装置の直近上流側の開閉器に対して前記監視制御装置から切操作が入力された場合には、操作不可と判定する、ことを特徴とする配電自動化システムである。
【0008】
請求項2の発明は、自動電圧調整装置の状態を含む配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置と、配電系統内の機器を制御可能な監視制御装置と、を備え、前記監視制御装置から開閉器の開閉操作が入力された場合に、当該操作によって前記自動電圧調整装置またはその周辺機器が損傷するため操作不可とするか否かを前記配電系統状態に基づいて判定し、操作不可と判定した場合には警報を発するものであり、前記自動電圧調整装置である負荷時タップ切換変圧器装置によって負荷側が昇圧または降圧されている状態で、前記監視制御装置から開閉器の入操作が入力されて、該入操作によって前記負荷時タップ切換変圧器装置を含む閉回路が形成される場合には、操作不可と判定する、ことを特徴とする配電自動化システムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、監視制御装置から開閉器の開閉操作が入力された場合に、この操作によって自動電圧調整装置やその周辺機器が損傷するおそれがあるため操作不可か否かが自動判定され、操作不可と判定した場合には警報が発せられる。このため、開閉器の開閉によって機器が損傷するのを防止することが可能となり、さらには、配電線事故を防止して電力供給の信頼度、安定性を向上させることが可能となる。しかも、操作不可か否かが本配電自動化システムで自動的に判定されるため、担当者・オペレータの経験や注意力などによらず適正に判定することが可能であるとともに、判定・確認に要する時間と労力を削減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、段階制御式リアクトル装置に投入量がある状態で、この段階制御式リアクトル装置の直近上流側(手前)の開閉器に対して切操作が入力された場合には、操作不可と判定され警報が発せられる。すなわち、このような開閉器の切操作が実行されると、当該開閉器が破損するため、操作不可と判定して警報を発することで、当該開閉器の損傷さらには配電線事故を防止することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、負荷時タップ切換変圧器装置によって負荷側が昇圧または降圧されている状態で、この負荷時タップ切換変圧器装置を含む閉回路が形成される開閉器入操作が入力された場合には、操作不可と判定され警報が発せられる。すなわち、このような閉回路が形成されると、負荷時タップ切換変圧器装置が焼損するため、操作不可と判定して警報を発することで、負荷時タップ切換変圧器装置の損傷さらには配電線事故を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態に係る配電自動化システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の配電自動化システムによって操作の可否を判定する第1の例を示す概念図である。
【
図3】
図1の配電自動化システムによって操作の可否を判定する第2の例を示す概念図である。
【
図4】
図1の配電自動化システムによって操作の可否を判定する第3の例を示す概念図である。
【
図5】
図1の配電自動化システムによって操作の可否を判定する第4の例を示す概念図である。
【
図6】
図1の配電自動化システムによって操作の可否を判定する第5の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図6は、この発明の実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係る配電自動化システム1を示す概略構成図である。この配電自動化システム1は、自動電圧調整装置を含む配電系統を監視、制御するシステムであり、後述するようにして操作・制御の可否を自動判定する点を除いて従来と同等の構成であり、従来と同等の構成については詳述を省略するが、概略次のような構成となっている。
【0015】
すなわち、配電自動化サーバ2と遠制親局(配電遠制装置)3とが通信自在に接続され、配電自動化サーバ2と監視制御卓(監視制御装置)4とが通信自在に接続されている。また、各電柱に取り付けられた遠制子局(図示せず)が遠制親局3と通信自在に接続され、遠制子局を介して電柱上の開閉器(遠制開閉器)41が開閉制御されるようになっている。
【0016】
そして、配電線Lの運用状態(配電系統状態)を常時監視し、例えば、配電線事故による停電が発生すると、開閉器41等を制御しながら停電を引き起こした事故箇所を特定し、監視制御卓4からの操作や自動によって事故区間以外の配電線Lへの配電(自動逆送)を行う。このようにして、開閉器41等の開閉によって停電エリアが確定され、開閉器41等を境にして停電エリアと非停電エリアとが分かれることになる。また、変電所事故(特高事故、瞬時電圧低下など)による停電が発生すると、監視制御卓4からの操作や自動によって、停電が発生した地域に対して周辺の配電線Lからの配電(自動逆送)を行ったりするものである。
【0017】
ここで、運転制御センターCに配電自動化サーバ2が設置され、各営業所などに遠制親局3や監視制御卓4が設置されるが、この実施の形態では、運転制御センターCに配電自動化サーバ2、遠制親局3および監視制御卓4が設置されているものとする。また、配電線Lには、複数の負荷がぶら下がるように配設されているとともに、開閉器41を介して太陽光発電装置(分散型電源)42が配設され、さらに、配電線Lの電圧を適正に維持・調整するための自動電圧調整装置として、SSR(段階制御式リアクトル装置)51とSVR(負荷時タップ切換変圧器装)52とが配設されている。具体的に、この実施の形態では、太陽光発電装置42の上位・上流側にSVR52が配設され、太陽光発電装置42の下位・下流側にSSR51が配設されている。
【0018】
次に、本配電自動化システム1の特徴的な構成、機能について説明する。
【0019】
まず、自動電圧調整装置の状態を含む配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置(データベース)21を運転制御センターCに備える。すなわち、監視して得られた現状・最新の配電系統や各機器の状態などが配電系統図上に記された配電系統状態が、逐次リアルタイムに系統状態記憶装置21に記憶されるようになっている。この系統状態記憶装置21は、配電自動化サーバ2とアクセス自在に接続されている。
【0020】
監視制御卓4は、配電系統状態をモニタで監視可能で配電系統内の機器・設備を制御可能(操作命令を入力可能)な装置であり、少なくとも1台の監視制御卓4を備える。例えば、所定の開閉器41の入操作または切操作を入力することで、当該開閉器41を遠隔で開閉制御できるようになっている。
【0021】
これに対して、配電自動化サーバ2は、監視制御卓4から入力された操作の適否を判定する操作判定機能を備える。すなわち、監視制御卓4から開閉器41の開閉(入切)操作が入力された場合に、当該操作によって自動電圧調整装置またはその周辺機器が損傷するため操作不可とするか否かを、系統状態記憶装置21の配電系統状態に基づいて判定し、操作不可と判定した場合には警報を発する。
【0022】
具体的には、第1に、SSR51に投入量がある状態で、このSSR51の直近上流側の開閉器41に対して監視制御卓4から切(開)操作が入力された場合には、操作不可と判定する。すなわち、
図2に示すように、SSR51が「自動」または「手動、投入量≠0」の状態で、配電線L上でSSR51の直近上流側(すぐ手前側)に設置されている開閉器41-1に対する切操作は、操作不可と判定し、この操作を実行しないで監視制御卓4などに警報を発する。
【0023】
なぜなら、SSR51に投入量がある状態とは、リアクトル分で配電線Lに無効電力を発生させて電圧を調整している状態であり、このような状態で開閉器41-1を切ると、SSR51の無効電力による遅れ電流を遮断することになり、開閉器41-1に異常電圧が発生する。つまり、電流裁断現象が生じ、異常電圧によって開閉器41-1が破損・損傷し、さらには、配電線事故が発生して対象の配電線Lが停電してしまうからである。
【0024】
ここで、警報は、どのような警報であってもよいが、監視制御卓4などのモニタに注意メッセージを表示したり、監視制御卓4などのスピーカからアラーム音を発生させたりする。また、
図2中の開閉器41-2は、SSR51を配電線Lに接続・切離するためにSSR51と一体的に配電線Lに配設された(ぶら下がって配設された)開閉器であり、配電線L上でのSSR51の直近上流側の開閉器ではない。
【0025】
第2に、SVR52によって負荷側が昇圧または降圧されている状態で、監視制御卓4から開閉器41の入(閉)操作が入力されて、この入操作によってSVR52を含む閉回路が形成される場合には、操作不可と判定する。すなわち、
図3に示すように、SVR52によって負荷側が昇圧または降圧されている状態で(SVR52が自動モード状態で)、開閉器41-13等が入れられることでSVR52を含む閉回路が形成される場合には、開閉器41-13等の入操作を操作不可と判定し、この操作を実行しないで監視制御卓4などに警報を発する。
【0026】
なぜなら、SVR52によって負荷側が昇圧または降圧され、例えば、開閉器41-11、41-12が入状態で開閉器41-13が入れられると、SVR52の両端(1次―2次間)に電圧が誘起される。そして、誘起された電圧がSVR52を含む閉回路にかかることで(閉回路のインピーダンスが小さいため)、大電流Iが流れる。これにより、SVR52が焼損・損傷し、さらには、配電線事故が発生して対象の配電線Lが停電してしまうからである。
【0027】
従って、このような判定・チェックは、入操作されることでSVR52を含む閉回路が形成され得る、すべての開閉器41に対して行われる。例えば、
図4に示すように、3台吊りの場合、入操作されることでSVR52を含む閉回路が形成され得る、3台の開閉器41がチェック範囲・対象となる。この場合、開閉器41-11、SVR52、開閉器41-12、開閉器41-13の1つの閉回路が形成され得、この閉回路が形成されるかを判定する。
【0028】
また、
図5に示すように、4台吊りの場合、入操作されることでSVR52を含む閉回路が形成され得る、4台の開閉器41がチェック範囲・対象となる。この場合、開閉器41-11、SVR52、開閉器41-13の閉回路と、開閉器41-12、開閉器41-14、SVR52の閉回路の、2つの閉回路が形成され得、これらの閉回路が形成されるかを判定する。
【0029】
同様に、
図6に示すように、5台吊りの場合、入操作されることでSVR52を含む閉回路が形成され得る、5台の開閉器41がチェック範囲・対象となる。この場合、開閉器41-11、SVR52、開閉器41-13の閉回路と、開閉器41-12、開閉器41-14、SVR52の閉回路と、開閉器41-11、SVR52、開閉器41-12、開閉器41-15の閉回路の、3つの閉回路が形成され得、これらの閉回路が形成されるかを判定する。
【0030】
このような構成の配電自動化システム1によれば、監視制御卓4から開閉器41の開閉操作が入力された場合に、この操作によって自動電圧調整装置やその周辺機器が損傷するおそれがあるため操作不可か否かが自動判定される。そして、操作不可と判定した場合には、操作が実行されずに(開閉器41が開閉されずに)監視制御卓4などに警報が発せられる。このため、開閉器41の開閉によって機器が損傷するのを防止することが可能となり、さらには、配電線事故を防止して電力供給の信頼度、安定性を向上させることが可能となる。しかも、操作不可か否かが本配電自動化システム1で自動的に判定されるため、担当者・オペレータの経験や注意力などによらず適正に判定することが可能であるとともに、判定・確認に要する時間と労力を削減することができる。
【0031】
具体的には、SSR51に投入量がある状態で、このSSR51の直近上流側(手前)の開閉器41に対して切操作が入力された場合には、操作不可と判定され警報が発せられる。すなわち、このような開閉器41の切操作が実行されると、当該開閉器41が破損するため、操作不可と判定して警報を発することで、当該開閉器41の損傷さらには配電線事故を防止することが可能となる。
【0032】
また、SVR52によって負荷側が昇圧または降圧されている状態で、このSVR52を含む閉回路が形成される開閉器41の入操作が入力された場合には、操作不可と判定され警報が発せられる。すなわち、このような閉回路が形成されると、SVR52が焼損するため、操作不可と判定して警報を発することで、SVR52の損傷さらには配電線事故を防止することが可能となる。
【0033】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、配電自動化サーバ2に操作判定機能を備える場合について説明したが、監視制御卓4やその他の装置に操作判定機能を備えてもよい。また、監視制御卓4から特定の開閉器41に対する入切操作のみが入力された場合について説明したが、監視制御卓4から一連の操作手順が入力された場合に、一連の操作手順のなかから上記のような機器損傷を招く操作があるか否かを判定し、ある場合には操作不可と判定して警報を発してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 配電自動化システム
2 配電自動化サーバ
21 系統状態記憶装置
3 遠制親局(配電遠制装置)
4 監視制御卓(監視制御装置)
41 開閉器
51 SSR(段階制御式リアクトル装置、自動電圧調整装置)
52 SVR(負荷時タップ切換変圧器装、自動電圧調整装置)