(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】分散型電源の発電量推定システム、発電量推定方法および発電量推定プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241210BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241210BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2020201663
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】前島 雄介
(72)【発明者】
【氏名】水迫 優晴
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090152(WO,A1)
【文献】特開2009-050064(JP,A)
【文献】特開2020-191764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各分散型電源の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報記憶手段と、
他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の発電量を取得するパイロット発電量取得手段と、
前記パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、該分散型電源の電源情報と前記パイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量を推定する発電量推定手段と、
を備えることを特徴とする分散型電源の発電量推定システム。
【請求項2】
前記発電量推定手段は、前記パイロット分散型電源の発電容量と発電量とに基づいて発電率を算出し、該発電率と前記分散型電源の発電容量とに基づいて前記発電量を推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の分散型電源の発電量推定システム。
【請求項3】
前記電源情報に、分散型電源の発電量に影響がある情報を発電影響情報として含み、
前記発電量推定手段は、前記発電影響情報に基づいて前記発電量を推定する、
ことを特徴とする請求項1
または2のいずれか1項に記載の分散型電源の発電量推定システム。
【請求項4】
各分散型電源の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報記憶ステップと、
他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の発電量を取得するパイロット発電量取得ステップと、
前記パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、該分散型電源の電源情報と前記パイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量を推定する発電量推定ステップと、
を備えることを特徴とする分散型電源の発電量推定方法。
【請求項5】
コンピュータを、
各分散型電源の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報記憶手段と、
他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、該分散型電源の電源情報と前記パイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量を推定する発電量推定手段、
として機能させることを特徴とする分散型電源の発電量推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置や風力発電装置などの分散型電源による発電量を推定する分散型電源の発電量推定システム、発電量推定方法および発電量推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給においては、配電系統の電圧を適正に維持したり、事故発生時に適正に復旧、運用したりするために、実負荷を把握、推定する必要がある。この実負荷には、配電系統から需要家に供給される電力量のみならず、分散型電源で発電されて需要家で消費される電力量も含まれるため、分散型電源で発電される発電量を推定して実負荷を推定する必要がある。従来、例えば、各需要家に設置されている分散型電源が、理想的・良好な発電をするとして発電量を推定し、実負荷を推定していた。
【0003】
しかしながら、分散型電源による発電は、実際には天候や周囲環境などに左右され、常に理想的・良好な発電が行われるとは限らず、発電量が変動する。このため、発電量および実負荷を適正に推定することが困難であった。
【0004】
一方、容易に入手可能なデータから太陽光発電システムの最大発電量を推定することができる、という最大発電量推定方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この推定方法は、予測対象である所定期間内において最大となる日射量を算出し、この日射量、太陽光発電システムの設備容量、所定の係数に基づいて、配電系統の系統電流に上乗せされうる太陽光発電システムの最大発電量を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、分散型電源が需要家に設置されるケースが増えており、特許文献1に記載の最大発電量推定方法では、大量の分散型電源に対してそれぞれ最大日射量を算出、予測して、この日射量や設備容量などに基づいて最大発電量を推定しなければならず、処理、演算が煩雑となる。しかも、最大日射量を常に正確に算出、予測することは困難であり、最大日射量の予測に誤差があると、系統全体における発電量推定に大きな誤差が生じる。
【0007】
そして、各分散型電源による発電量を適正に推定できなければ、系統全体における実負荷を適正に推定することはできない。この結果、分散型電源の大量連系に伴い配電系統の電圧を適正に維持したりすることが困難となる。
【0008】
そこでこの発明は、簡易な構成で各分散型電源による発電量を適正に推定可能な分散型電源の発電量推定システム、発電量推定方法および発電量推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、各分散型電源の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報記憶手段と、他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の発電量を取得するパイロット発電量取得手段と、前記パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、該分散型電源の電源情報と前記パイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量を推定する発電量推定手段と、を備えることを特徴とする分散型電源の発電量推定システムである。
【0010】
この発明によれば、パイロット発電量取得手段によってパイロット分散型電源の発電量が取得されると、パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、発電量推定手段によって該分散型電源の電源情報とパイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量が推定される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の分散型電源の発電量推定システムにおいて、前記発電量推定手段は、前記パイロット分散型電源の発電容量と発電量とに基づいて発電率を算出し、該発電率と前記分散型電源の発電容量とに基づいて前記発電量を推定する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の分散型電源の発電量推定システムにおいて、前記電源情報に、分散型電源の発電量に影響がある情報を発電影響情報として含み、前記発電量推定手段は、前記発電影響情報に基づいて前記発電量を推定する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、各分散型電源の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報記憶ステップと、他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の発電量を取得するパイロット発電量取得ステップと、前記パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、該分散型電源の電源情報と前記パイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量を推定する発電量推定ステップと、を備えることを特徴とする分散型電源の発電量推定方法である。
【0015】
請求項5の発明は、コンピュータを、各分散型電源の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報記憶手段と、他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、該分散型電源の電源情報と前記パイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該分散型電源の発電量を推定する発電量推定手段、として機能させることを特徴とする分散型電源の発電量推定プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、請求項4および請求項5に記載の発明によれば、パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である分散型電源に対して、パイロット分散型電源の発電量などに基づいて発電量が推定される。すなわち、パイロット分散型電源の発電量と同等(相似的)に発電量が変動すると考えられる分散型電源に対して、この分散型電源の発電容量とパイロット分散型電源の発電容量および実際の発電量などとに基づいて、発電量が推定される。例えば、パイロット分散型電源の発電量が高い場合には推定対象の分散型電源の発電量も高く、パイロット分散型電源の発電量が低い場合には推定対象の分散型電源の発電量も低いとして、推定対象の分散型電源の発電量が推定される。
【0017】
このため、パイロット分散型電源と発電傾向(発電挙動、発電変動)が同等・類似である分散型電源に対して、発電量を適正に推定することが可能となる。そして、発電傾向が同等である複数の分散型電源をグループ化して、各グループのパイロット分散型電源の発電量を取得することで、広域にわたって各分散型電源の発電量を適正に推定することが可能となる。このようにして各分散型電源の発電量を適正に推定できる結果、系統全体における実負荷を適正に推定することが可能になり、分散型電源の大量連系に伴い配電系統の電圧を適正に維持したりすることが可能となる。
【0018】
また、実際の発電量はパイロット分散型電源に対してだけ取得すればよく、しかも、パイロット分散型電源の発電量等と各分散型電源の電源情報だけで発電量を推定するため、簡易な構成で推定することが可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、パイロット分散型電源の発電容量と発電量とに基づいて発電率を算出し、この発電率と分散型電源の発電容量とに基づいて発電量を推定するため、より適正かつ簡易に発電量を推定することが可能となる。すなわち、パイロット分散型電源と発電傾向が同等である分散型電源は、発電率がパイロット分散型電源と同等であると考えられるため、この分散型電源の発電容量にパイロット分散型電源の発電率を乗算等することで、より適正かつ簡易に発電量を推定することが可能となる。
【0020】
また、請求項1、請求項4および請求項5に記載の発明によれば、他の分散型電源に比べて発電容量が桁違いに大きい分散型電源をパイロット分散型電源とするため、より適正に発電量を推定することが可能となる。すなわち、発電容量が大きい大規模な分散型電源をパイロット分散型電源とし、このパイロット分散型電源の発電量を取得することで、パイロット分散型電源の発電傾向(発電率など)をより正確に取得・把握することが可能となり、この結果、推定対象の分散型電源の発電量をより適正に推定することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、分散型電源の発電量に影響がある発電影響情報に基づいて発電量を推定するため、より適正に発電量を推定することが可能となる。すなわち、分散型電源の劣化度や周囲環境など、発電量に影響を及ぼす要因に基づいて発電量を推定するため、より適正に発電量を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の実施の形態に係る分散型電源の発電量推定システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の発電量推定システムの推定コンピュータを示す概略構成ブロック図である。
【
図3】
図2の推定コンピュータの電源情報データベースのデータ構成図である。
【
図4】
図1の発電量推定システムにおける配電系統図の分割例を示す図である。
【
図5】
図2の推定コンピュータの推定タスクのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
図1~
図5は、この発明の実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係る分散型電源の発電量推定システム(以下、適宜「発電量推定システム」という)1を示す概略構成図である。この発電量推定システム1は、太陽光発電装置や風力発電装置などの分散型電源による発電量を推定するためのシステムであり、主として、複数のパイロット用計器(パイロット発電量取得手段)2と推定コンピュータ3とが、通信網NWを介して通信自在に接続されて構成されている。
【0025】
ここで、この実施の形態では、分散型電源が太陽光発電装置の場合について主として説明し、各太陽光発電装置は、電力事業者の配電系統に連系されている。また、発電容量・定格容量が10kW未満程度の小規模な太陽光発電装置(以下、適宜「小規模ソーラー」という)GSと、これらに比べて発電容量が桁違いに大きい(例えば、10倍以上)1MW以上の大規模な太陽光発電装置(以下、適宜「メガソーラー」という)GMが混在し、メガソーラーGMをパイロット分散型電源とする場合について主として説明する。また、小規模ソーラーGSは、配電系統から電力の供給を受ける需要家に設置され、メガソーラーGMは、広い敷地に設置されているものとする。
【0026】
パイロット用計器2は、各メガソーラーGMに設けられ、メガソーラーGMの実際の発電量を計量、取得する計器である。すなわち、所定の計量周期ごとに(例えば、15分ごとに)メガソーラーGMから出力される電圧と電流を計測して、所定の演算式に従って発電量を算出、計量する。そして、計量した発電量を逐次、リアルタイムに推定コンピュータ3に送信するものである。
【0027】
このように、この実施の形態では、各メガソーラーGM側(発電側)において発電量を計量しているが、発電された電力をすべて電力事業者側に送電する場合には、電力事業者側・配電系統側において送電量つまり発電量を計測してもよい。また、通常、メガソーラーGMには、発電量を正確に計量するための計量器が設けられており、このような計量器をパイロット用計器2として利用してもよい。あるいは、計測機能付開閉器(配電線路に設置され高圧電線の電圧電流を計測できる機能を備えた開閉器)を利用してもよい。
【0028】
推定コンピュータ3は、電力事業者の施設に配設され、全太陽光発電装置の発電量、さらには配電系統全体における実負荷を推定するためのコンピュータであり、
図2に示すように、主として、通信部31と、入力部32と、表示部33と、電源情報データベース(電源情報記憶手段)34と、推定タスク(発電量推定手段)35と、これらを制御などする中央処理部36と、を備える。
【0029】
通信部31は、各パイロット用計器2などと通信するためのインターフェイスである。入力部32は、外部から各種情報や指令を入力するためのインターフェイスであり、例えば、後述する各地区の大きさや範囲などを指定したりする。表示部33は、各種情報を表示するためのディスプレイであり、例えば、後述する配電系統図や推定結果などを表示する。
【0030】
電源情報データベース34は、各太陽光発電装置の発電容量と設置位置を含む電源情報などを記憶するデータベースであり、
図3に示すように、電源ID341ごとつまり太陽光発電装置ごとに、容量342、位置343、需要家情報344、パイロット345、グループ346、影響情報347および発電量348などが記憶されている。
【0031】
電源ID341には、太陽光発電装置の識別情報が記憶され、太陽光発電装置がメガソーラーGMの場合には、メガソーラーGMであることが識別できる識別情報(例えば、一桁目が「1」)が記憶されている。容量342には、太陽光発電装置の発電容量・定格容量、つまり発電率が100%の場合の発電量が記憶されている。ここで、実際にはパワーコンディショナー(PCS)を備えるため、パワーコンディショナーの容量が太陽光パネルの発電容量よりも小さい場合には、パワーコンディショナーの容量が発電容量として記憶される。つまり、パワーコンディショナーを含めた太陽光発電システムとして、発電率が100%の場合の発電量が記憶される。位置343には、太陽光発電装置の設置位置の緯度、経度が記憶され、需要家情報344には、太陽光発電装置を所有、運用する需要家に関する情報、例えば、需要家名、需要家の連絡先などが記憶されている。
【0032】
パイロット345には、この太陽光発電装置が小規模ソーラーG
Sの場合に、発電量を推定する際の基準となるメガソーラーG
Mの識別情報が記憶され、地区346には、この太陽光発電装置が設置されている地区の識別情報が記憶されている。すなわち、この実施の形態では、
図4に示すように、配電系統図が所定間隔のメッシュ状・網目状に区切られ、複数の地区R1~R12等に分割されている。そして、少なくとも同一地区内に設置された全太陽光発電装置の発電傾向が同等となっている。換言すると、各地区の大きさや範囲(網目の間隔)が変更可能で、少なくとも同一地区内に設置されたすべての太陽光発電装置の発電傾向が同等となるように、各地区の大きさや範囲が設定されている。
【0033】
ここで、発電傾向が同等であるとは、発電量が相似的に変動して発電挙動、発電変動が似ていることであり、ある太陽光発電装置の発電量・発電率が高い場合には他の太陽光発電装置の発電量・発電率も高く、ある太陽光発電装置の発電量・発電率が低い場合には他の太陽光発電装置の発電量・発電率も低い、という状態である。例えば、地区R2が晴天であれば地区R2内の全太陽光発電装置の発電量・発電率が高く、地区R7が晴時々曇りであれば地区R7内の全太陽光発電装置の発電量・発電率が中程度で、地区R11が雨天であれば地区R11内の全太陽光発電装置の発電量・発電率が低く(ゼロに)なる。
【0034】
また、異なる地区であっても太陽光発電装置の発電傾向が同等の場合があり、さらに、メガソーラーGMが設置されていない地区が存在する場合や、同一地区に複数のメガソーラーGMが設置されている場合がある。このため、例えば、メガソーラーGMが設置されていない地区に設置されている小規模ソーラーGSに対しては、発電傾向が同等である地区に設置されているメガソーラーGMの識別情報が、パイロット345に記憶される。つまり、パイロット345に記憶されているメガソーラーGMの地区と、地区346に記憶されている地区とは必ずしも同じではない。
【0035】
例えば、地区346に地区1が記憶されている小規模ソーラーGSに対して、周辺地域である地区2に設置されているメガソーラーGMの識別情報がパイロット345に記憶される。このようにして、この実施の形態では、メガソーラーGMが設置されていない地区に設置されている小規模ソーラーGSに対しても、周辺地域のメガソーラーGMの発電量に基づいて、後述するようにして発電量の推定が可能となる。
【0036】
これに対して、メガソーラーGMが設置されている地区の小規模ソーラーGSに対しては、このメガソーラーGMの識別情報がパイロット345に記憶される。また、同一地区に複数のメガソーラーGMが設置されている場合には、発電傾向がより近いメガソーラーGMの識別情報がパイロット345に記憶される。
【0037】
影響情報347には、この太陽光発電装置の発電量に影響がある情報が発電影響情報として記憶されている。例えば、太陽光発電装置が劣化している場合や、建物などの周囲環境によって日照が遮られる時間帯がある場合には、その旨が記憶され、さらに、これらによって発電量・発電率がどのくらい(例えば、何%)低下するかが記憶されている。発電量348には、メガソーラーGMの場合には、パイロット用計器2から受信した発電量の実測値が記憶され、小規模ソーラーGSの場合には、後述する推定タスク35で推定された発電量が記憶される。なお、この発電量348は、電源ID341~影響情報347とは異なり電源情報ではなく、別のデータベースなどに記憶してもよい。
【0038】
推定タスク35は、メガソーラーGMの周辺地域に設置されて発電傾向が同等である小規模ソーラーGSに対して、この小規模ソーラーGSの電源情報とメガソーラーGMの電源情報および実発電量とに基づいて、この小規模ソーラーGSの発電量を推定するタスク・プログラムであり、定期的に、あるいは任意時に起動される。ここで、この実施の形態では、一度の起動で各メガソーラーGMの発電量に基づいて、広域な配電系統における複数・多数の小規模ソーラーGSの発電量を推定する場合について説明する。これに対して、推定の基準となるメガソーラーGMや推定対象の小規模ソーラーGSを指定して、特定の小規模ソーラーGSに対してのみ推定してもよい。
【0039】
具体的には、
図5に示すように、まず、最初のメガソーラーG
Mの電源情報と実際の発電量を電源情報データベース34から取得し(ステップS1)、このメガソーラーG
Mの発電率を算出する(ステップS2)。すなわち、このメガソーラーG
Mの発電容量(容量342)で発電量(発電量348)を除算して発電率を算出する。この際、計量された発電量ごとに(計量周期ごとに)発電率を算出する。
【0040】
次に、このメガソーラーGMの周辺地域に設置されて発電傾向が同等である、最初の小規模ソーラーGSの電源情報を電源情報データベース34から取得する(ステップS3)。すなわち、このメガソーラーGMの識別情報がパイロット345に記憶されている、最初の小規模ソーラーGSの電源情報を電源情報データベース34から取得する。
【0041】
続いて、この小規模ソーラーGSの電源情報とステップS2で算出した発電率とに基づいて、この小規模ソーラーGSの発電量を推定する(ステップS4)。すなわち、この小規模ソーラーGSの発電容量にステップS2の発電率を乗算し、力率なども考慮して所定の演算式に従って発電量を推定する。この際、算出された発電率ごとに(計量周期ごとに)発電量を推定する。さらに、この小規模ソーラーGSの発電影響情報(影響情報347)に基づいて発電量を推定する。例えば、周囲環境によって日照が遮られる時間帯において発電量・発電率が20%低下することが影響情報347に記憶されている場合には、この時間帯においては、ステップS2の発電率に基づく発電量よりも20%減算して発電量を推定する。
【0042】
ここで、この実施の形態では、発電量・発電率がどのくらい低下するかが影響情報347に予め設定、記憶されているが、影響情報347に記憶されている劣化状態などに基づいてステップS4で設定してもよい。このようにして推定した所定時間ごと(計量周期ごと)の発電量を発電量348に記憶する。
【0043】
次に、同じメガソーラーGMの周辺地域に設置されて発電傾向が同等である、次の小規模ソーラーGSがある場合(ステップS5で「Y」の場合)には、その電源情報を電源情報データベース34から取得する(ステップS6)。つまり、同じメガソーラーGMの識別情報がパイロット345に記憶されている、次の小規模ソーラーGSの電源情報を電源情報データベース34から取得する。そして、この小規模ソーラーGSに対して、上記と同様にして発電量を推定、記憶する(ステップS4)。
【0044】
このようにして、このメガソーラーGMの周辺地域に設置されて発電傾向が同等である、すべての小規模ソーラーGSに対する発電量の推定が終了した場合(ステップS5で「N」の場合)には、推定基準となる次のメガソーラーGMがあるか否かを判定する。そして、次のメガソーラーGMがある場合(ステップS7で「Y」の場合)には、その電源情報と実際の発電量を電源情報データベース34から取得する(ステップS8)。次に、ステップS2に戻って上記と同様にして、このメガソーラーGMの発電率を算出して、周辺地域に設置されて発電傾向が同等である全小規模ソーラーGSに対して発電量を推定する。このようにして、すべてのメガソーラーGMの実際の発電量に基づいて各周辺地域の全小規模ソーラーGSの発電量推定が終了した場合(ステップS7で「N」の場合)には、処理を終了する。
【0045】
次に、このような構成の発電量推定システム1の動作および、発電量推定システム1による分散型電源の発電量推定方法について説明する。
【0046】
まず、各太陽光発電装置の電源情報が電源情報データベース34に記憶され(電源情報記憶ステップ)、各パイロット用計器2でそれぞれのメガソーラーGMの実際の発電量が計量されると、その発電量値が逐次、リアルタイムに推定コンピュータ3に送信される(パイロット発電量取得ステップ)。次に、定期的に、あるいは任意時に推定タスク35が起動されると、各メガソーラーGMの周辺地域に設置されて発電傾向が同等である小規模ソーラーGSに対して発電量が推定される(発電量推定ステップ)ものである。
【0047】
以上のように、この発電量推定システム1および発電量推定方法によれば、メガソーラーGMの周辺地域に設置されて発電傾向が同等である小規模ソーラーGSに対して、メガソーラーGMの発電量などに基づいて発電量が推定される。すなわち、メガソーラーGMの発電量と同等(相似的)に発電量が変動すると考えられる小規模ソーラーGSに対して、この小規模ソーラーGSの発電容量とメガソーラーGMの発電容量および実際の発電量などとに基づいて、発電量が推定される。例えば、メガソーラーGMの発電量が高い場合には推定対象の小規模ソーラーGSの発電量も高く、メガソーラーGMの発電量が低い場合には推定対象の小規模ソーラーGSの発電量も低いとして、推定対象の小規模ソーラーGSの発電量が推定される。
【0048】
このため、メガソーラーGMと発電傾向(発電挙動、発電変動)が同等・類似である小規模ソーラーGSに対して、発電量を適正に推定することが可能となる。そして、発電傾向が同等である複数の太陽光発電装置をグループ化して、各グループのメガソーラーGMの発電量を取得することで、広域にわたって各小規模ソーラーGSの発電量を適正に推定することが可能となる。このようにして各小規模ソーラーGSの発電量を適正に推定できる結果、系統全体における実負荷を適正に推定することが可能になり、太陽光発電装置の大量連系に伴い配電系統の電圧を適正に維持したりすることが可能となる。
【0049】
また、実際の発電量はメガソーラーGMに対してだけ計量、取得すればよく、しかも、メガソーラーGMの発電量等と各小規模ソーラーGSの電源情報だけで発電量を推定するため、簡易な構成で推定することが可能となる。
【0050】
また、メガソーラーGMの発電容量と発電量とに基づいて発電率を算出し、この発電率と小規模ソーラーGSの発電容量とに基づいて発電量を推定するため、より適正かつ簡易に発電量を推定することが可能となる。すなわち、メガソーラーGMと発電傾向が同等である小規模ソーラーGSは、発電率がメガソーラーGMと同等であると考えられるため、この小規模ソーラーGSの発電容量にメガソーラーGMの発電率を乗算等することで、より適正かつ簡易に発電量を推定することが可能となる。
【0051】
さらに、小規模ソーラーGSに比べて発電容量が桁違いに大きいメガソーラーGMをパイロット分散型電源とするため、より適正に発電量を推定することが可能となる。すなわち、発電容量が大きい大規模なメガソーラーGMをパイロット分散型電源とし、このメガソーラーGMの発電量を計量、取得することで、メガソーラーGMの発電傾向(発電率など)をより正確に取得・把握することが可能となり、この結果、推定対象の小規模ソーラーGSの発電量をより適正に推定することが可能となる。
【0052】
また、小規模ソーラーGSの発電量に影響がある発電影響情報に基づいて発電量を推定するため、より適正に発電量を推定することが可能となる。すなわち、小規模ソーラーGSの劣化度や周囲環境など、発電量に影響を及ぼす要因に基づいて発電量を推定するため、より適正に発電量を推定することが可能となる。
【0053】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、分散型電源が太陽光発電装置の場合について説明したが、分散型電源が風力発電装置などであってもよい。例えば、風力発電装置の場合には、風速や風向きなどが同等で発電傾向が同等である風力発電装置に対して、パイロット風力発電装置の発電量などに基づいて発電量を推定する。また、大規模な太陽光発電装置をパイロット分散型電源とする場合について説明したが、実際の発電量を取得できれば、小規模あるいは中規模な太陽光発電装置をパイロット分散型電源置としてもよい。
【0054】
さらに、上記の実施の形態では、発電量を推定する際の基準となるメガソーラーGMの識別情報が予めパイロット345に設定、記憶されているが、推定タスク35などにおいて自動的に逐次設定するようにしてもよい。例えば、推定タスク35が起動された時点において、過去や直近の気象情報などに基づいて、日照状況が同等で発電傾向が同等であると考えられる地区同士をグループ化する。そして、例えば、地区R1と地区R2とを同一グループにグループ化し、地区R2にメガソーラーGMが設置されている場合に、地区R2のメガソーラーGMを基準に発電量を推定する際に、地区R1と地区R2の小規模ソーラーGSを推定対象とする。
【0055】
また、同一地区に複数のメガソーラーGMが設置されている場合に、あるメガソーラーGMの実際の発電量に基づいて、他のメガソーラーGMおよび各小規模ソーラーGSの発電量を推定してもよい。さらに、各小規模ソーラーGSの発電量をそれぞれ推定しているが、複数の小規模ソーラーGSによる総発電量をまとめて推定してもよい。例えば、同一地区に設置された各小規模ソーラーGSの発電容量を積算して、この総発電容量に発電率を乗算等して総発電量を推定してもよい。
【0056】
ところで、次のような発電量推定プログラムを汎用のコンピュータにインストールすることで、上記のような推定コンピュータ3を構成してもよい。すなわち、コンピュータを、各太陽光発電装置の発電容量と設置位置を含む電源情報を記憶する電源情報データベース34と、メガソーラーGMをパイロット分散型電源とし、該パイロット分散型電源の周辺地域に設置されて発電傾向が同等である小規模ソーラーGSに対して、該小規模ソーラーGSの電源情報とパイロット分散型電源の電源情報および発電量とに基づいて、該小規模ソーラーGSの発電量を推定する発電量推定手段、として機能させることを特徴とする分散型電源の発電量推定プログラム。
【符号の説明】
【0057】
1 発電量推定システム
2 パイロット用計器(パイロット発電量取得手段)
3 推定コンピュータ
34 電源情報データベース(電源情報記憶手段)
35 推定タスク(発電量推定手段)
GM メガソーラー(パイロット分散型電源)
GS 小規模ソーラー(推定対象の分散型電源)
NW 通信網