(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】バーチャルパワープラントの統合制御システムおよびその統合制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20241210BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241210BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241210BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241210BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/14 130
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2020202230
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊豆野 泰道
(72)【発明者】
【氏名】三川 玄洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛裕
(72)【発明者】
【氏名】大久保 典浩
(72)【発明者】
【氏名】石丸 淳一
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205224(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/14
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家が所有する、各地に分散している複数のエネルギーリソースをネットワークを介して統合制御し、あたかも1つの発電所として機能させるバーチャルパワープラントの統合制御システムであって、
前記複数の需要家の電力使用状況を示す情報
、前記複数のエネルギーリソースが接続されている電力系統を示す情報、及び前記複数のエネルギーリソースの地理的な位置を示す情報を含む第1属性情報が記憶される第1属性記憶部と、
前記複数のエネルギーリソースの中から、前記第1属性情報に基づいてエネルギーリソースを選択的に統合して複数の第1バーチャルパワープラントを形成する形成制御部と、
前記複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報
、前記複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統を示す情報、及び前記複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報を含む第2属性情報が記憶される第2属性記憶部と、
前記複数の第1バーチャルパワープラントの中から、前記第2属性情報に基づいて第1バーチャルパワープラントを選択的に統合して前記第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントを形成し、デマンドレスポンスに応じて、前記第2バーチャルパワープラントを制御する統合制御部と、
を備え
、
前記形成制御部は、前記第1属性情報の中で、前記複数のエネルギーリソースの地理的な位置を示す情報よりも、前記複数の需要家の電力使用状況を示す情報および前記複数のエネルギーリソースが接続されている電力系統の情報を優先して、前記エネルギーリソースを選択的に統合して前記複数の第1バーチャルパワープラントを形成し、
前記統合制御部は、前記第2属性情報の中で、前記複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報よりも、前記複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報および前記複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統の情報を優先して、前記第2バーチャルパワープラントを形成する、
バーチャルパワープラントの統合制御システム。
【請求項2】
複数の需要家が所有する、各地に分散している複数のエネルギーリソースをネットワークを介して統合制御し、あたかも1つの発電所として機能させるバーチャルパワープラントの統合制御方法であって、
前記複数のエネルギーリソースの中から、前記複数の需要家の電力使用状況を示す情報
、前記複数のエネルギーリソースが接続されている電力系統を示す情報、及び前記複数のエネルギーリソースの地理的な位置を示す情報を含む第1属性情報に基づいてエネルギーリソースを選択的に統合して複数の第1バーチャルパワープラントを形成
する第1手順と、
前記複数の第1バーチャルパワープラントの中から、前記複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報
、前記複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統を示す情報、及び前記複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報を含む第2属性情報に基づいて第1バーチャルパワープラントを選択的に統合して、前記第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントを形成し、デマンドレスポンスに応じて、前記第2バーチャルパワープラントを制御する
第2手順と、
を有し、
前記第1手順において、前記第1属性情報の中で、前記複数のエネルギーリソースの地理的な位置を示す情報よりも、前記複数の需要家の電力使用状況を示す情報および前記複数のエネルギーリソースが接続されている電力系統の情報を優先して、前記エネルギーリソースを選択的に統合して前記複数の第1バーチャルパワープラントを形成し、
前記第2手順において、前記第2属性情報の中で、前記複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報よりも、前記複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報および前記複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統の情報を優先して、前記第2バーチャルパワープラントを形成する、
バーチャルパワープラントの統合制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチャルパワープラントの統合制御システムおよびその統合制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より安定的で無駄の少ない電力システムを実現するために、需要家が保有する分散型電源や蓄電設備などの様々なエネルギーリソースを統合制御し、あたかも一つの発電所であるかのように機能させるバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant、VPP)の開発が進められている(特許文献1を参照)。
バーチャルパワープラントを形成することにより、電力の需給バランスの調整を、従来のように火力発電所等の大規模発電所の出力を調整することで行う代わりに、上げDR(Demand Response)や下げDR等のデマンドレスポンスによって行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、都市エリアでバーチャルパワープラントを形成する場合と、都市エリアの周辺となる周辺エリアでバーチャルパワープラントを形成する場合と、を比べると、都市エリアでは、発電設備や蓄電設備などの様々な種類のエネルギーリソースが豊富に集まっているため、効率的にバーチャルパワープラントが形成できる場合が多いのに対し、周辺エリアでは特定の種類のエネルギーリソース(例えば太陽光発電設備など)に偏っていることが多いため、バーチャルパワープラントが形成しにくいことが多い。
そのため、周辺エリアに設けられているエネルギーリソースは、バーチャルパワープラントの対象として有効に活用されていないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明は、都市エリアや周辺エリアに関わらず、遍在する様々なエネルギーリソースを効率的に活用してバーチャルパワープラントを形成し、電力の需給量のバランスをより一層確実なものとするバーチャルパワープラントの統合制御システムおよびその統合制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明は、複数の需要家が所有する、各地に分散している複数のエネルギーリソースをネットワークを介して統合制御し、あたかも1つの発電所として機能させるバーチャルパワープラントの統合制御システムであって、前記複数の需要家の電力使用状況を示す情報、前記複数のエネルギーリソースが接続されている電力系統を示す情報、及び前記複数のエネルギーリソースの地理的な位置を示す情報を含む第1属性情報が記憶される第1属性記憶部と、前記複数のエネルギーリソースの中から、前記第1属性情報に基づいてエネルギーリソースを選択的に統合して複数の第1バーチャルパワープラントを形成する形成制御部と、前記複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報、前記複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統を示す情報、及び前記複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報を含む第2属性情報が記憶される第2属性記憶部と、前記複数の第1バーチャルパワープラントの中から、前記第2属性情報に基づいて第1バーチャルパワープラントを選択的に統合して前記第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントを形成し、デマンドレスポンスに応じて、前記第2バーチャルパワープラントを制御する統合制御部と、を備え、前記形成制御部は、前記第1属性情報の中で、前記複数のエネルギーリソースの地理的な位置を示す情報よりも、前記複数の需要家の電力使用状況を示す情報および前記複数のエネルギーリソースが接続されている電力系統の情報を優先して、前記エネルギーリソースを選択的に統合して前記複数の第1バーチャルパワープラントを形成し、前記統合制御部は、前記第2属性情報の中で、前記複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報よりも、前記複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報および前記複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統の情報を優先して、前記第2バーチャルパワープラントを形成する。
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、都市エリアや周辺エリアに関わらず、遍在する様々なエネルギーリソースを効率的に活用してバーチャルパワープラントを形成し、電力の需給量のバランスをより一層確実なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るバーチャルパワープラントの形成を説明する全体図である。
【
図2】アグリゲータサーバの機能を示すブロック図である。
【
図3A】第1属性記憶部に記憶される第1属性情報Aのテーブルデータの一例を示す図である。
【
図3B】第1属性記憶部に記憶される第1属性情報Bのテーブルデータの一例を示す図である。
【
図3C】第1属性記憶部に記憶される第1属性情報Cのテーブルデータの一例を示す図である。
【
図3D】第2属性記憶部に記憶される第2属性情報Dのテーブルデータの一例を示す図である。
【
図3E】第2属性記憶部に記憶される第2属性情報Eのテーブルデータの一例を示す図である。
【
図3F】第2属性記憶部に記憶される第2属性情報Fのテーブルデータの一例を示す図である。
【
図5】第1および第2バーチャルパワープラントを形成する際の形成制御部および統合制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】デマンドレスポンスの応答の流れを自動化した際の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
図1は、本実施形態に係るバーチャルパワープラントの形成を説明する全体図である。バーチャルパワープラントはアグリゲータによって事業運営が行われる。本実施形態では、アグリゲータは、リソースアグリゲータ及びアグリゲーションコーディネータを総称しており、リソースアグリゲータ及びアグリゲーションコーディネータのいずれか一方、あるいは両方を指す場合がある。リソースアグリゲータは、エネルギーリソースを保有する各需要家との契約に基づき、エネルギーリソースの制御を行う。アグリゲーションコーディネータは、各リソースアグリゲータが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う。また本実施形態では、一般送配電事業者及び小売電気事業者を電気事業者と総称する。そのため、電気事業者は、一般送配電事業者及び小売電気事業者のいずれか一方、あるいは両方を指す場合がある。
本実施形態では、例えば、アグリゲータによって、バーチャルパワープラントを形成する対象となる管理エリア10が決定されていることとする。この管理エリア10には、複数の需要家が所有する創エネルギー、蓄エネルギー、省エネルギー等の様々な複数のエネルギーリソースが分散して設置されている。また、管理エリア10の規模は、市区町村程度の比較的小規模のものであってもよいし、都道府県を跨ぐような比較的大規模のものであってもよい。
【0011】
管理エリア10は、例えば、都市エリア10Aおよび当該都市エリア10Aの周辺のエリアである周辺エリア10Bとに大別されている。都市エリア10Aには、経済活動を行うための商業施設や工業施設等が密集する傾向にあり、多くのエネルギーリソース20が集中的に設置されている。一方、周辺エリア10Bには、経済活動を行うための施設に比べて住宅が多い傾向になっており、エネルギーリソース20は都市エリア10Aに比べて少ない数ではあるが設置されていることとする。尚、都市エリア10Aに分散している複数のエネルギーリソースを20Aとし、周辺エリア10Bに分散している複数のエネルギーリソースを20Bとする。これらのエネルギーリソース20A、20Bは、電力網に連系されているが、後述するアグリゲータサーバ50からの指示に従って、IoT等のネットワーク30を介して通信可能に選択的に統合されることとなる。
【0012】
バーチャルパワープラントは、都市エリア10Aや周辺エリア10Bに関わらず、管理エリア10内のエネルギーリソース20A、20Bの中から、複数の需要家やエネルギーリソース20A、20Bについて予め定められた属性に該当するエネルギーリソース20A、20B(例えば
図1においてVPPと記載した太枠内)を、ネットワーク30を介して統合することによって形成される。このようにして形成されたバーチャルパワープラントは、電力の供給量に対して需要家による電力の需要量がバランスすることに貢献するように、その時点の電力の供給量に応じて発生する上げDR、下げDR等のデマンドレスポンスに応じて、電力の需要量を意図的に増加または減少させる動作を行う。つまり、バーチャルパワープラントは、仮想的な発電所として機能する。
【0013】
エネルギーリソース20A、20Bは、ネットワーク30を通してバーチャルパワープラントを形成することができるように、GW(ゲートウェイ:gateway)、HEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)等の通信を中継する中継システム40(電力マネジメントシステムとも言う)と接続され、更に、この中継システム40およびネットワーク30を介して、エネルギーリソース20A、20Bの統合ひいてはバーチャルパワープラントの形成を行うためのアグリゲータサーバ50と通信可能に接続されている。
【0014】
デマンドレスポンスとは、電力の供給量と需要家による電力の需要量とがバランスするように、バーチャルパワープラントを形成する複数のエネルギーリソース20A、20Bによる電力の需要量を制御して電力需要パターンを変化させるための需要応答指令のことである。デマンドレスポンスには、上げDRと下げDRがある。上げDRとは、電力の供給量よりも電力の需要量が少ないときに、バーチャルパワープラント内の複数のエネルギーリソース20A、20Bによる電力の需要量(消費量)を増加させるための指令のことである。例えば、電力系統に連系されている太陽光発電システムによる電力の供給量が晴天の影響を受けて供給過多になる虞がある場合、上げDRを発生し、例えば、バーチャルパワープラントを形成するエネルギーリソース20A、20Bに蓄電池(蓄エネルギーリソース)が含まれている場合、蓄電池の需要を増加させることによって、供給過多となる電力量を蓄電池に充電させる。一方、下げDRとは、電力の供給量よりも電力の需要量が多いときに、バーチャルパワープラント内の複数のエネルギーリソース20A、20Bによる電力の需要量を減少させる指令のことである。例えば、猛暑でエアコン等の稼働の需要が多く、電力の供給量が不足する虞がある場合、下げDRを発生し、バーチャルパワープラント内の何れかのエネルギーリソース20A、20Bの需要量を減少させる。このように、バーチャルパワープラント内の複数のエネルギーリソース20A、20Bの需要パターンを変化させることによって、電力の需給量をバランスさせることに貢献することが可能となる。
【0015】
エネルギーリソース20A、20Bの1つの種類である創エネルギーリソースとは、電気を創出するリソースのことであり、例えば、太陽光発電システム、コジェネレーションシステム、再生可能エネルギー熱(地中熱・太陽熱・雪氷熱等)利用システム、燃料電池自動車等が一例として挙げられる。また、エネルギーリソース20A、20Bの他の1つの種類である蓄エネルギーリソースとは、電気エネルギーを蓄えるリソースのことであり、例えば、家庭用蓄電池、系統用蓄電池、ヒートポンプ給湯器等が一例として挙げられる。また、エネルギーリソース20A、20Bの他の1つの種類である省エネルギーリソースとは、電気の節電を行うリソースのことであり、例えば、業務・産業用EMS(Energy Management System)、IoT化された照明器具、空調設備、冷凍機器等が一例として挙げられる。バーチャルパワープラントは、これらの複数のエネルギーリソース20A、20Bに含まれる創エネルギーリソース、蓄エネルギーリソース、省エネルギーリソースを、複数の需要家や複数のエネルギーリソース20A、20Bの属性に基づいて選択的に統合することによって形成される。
【0016】
アグリゲータサーバ50は、アグリゲータによって管理されるサーバである。上述したように、アグリゲータは、リソースアグリゲータとアグリゲーションコーディネータとを総称しているため、リソースアグリゲータによって管理されるサーバ(リソースアグリゲータサーバとも記す)と、アグリゲーションコーディネータによって管理されるサーバ(アグリゲーションコーディネータサーバとも記す)と、が存在するが、本実施形態では、リソースアグリゲータサーバとアグリゲーションコーディネータサーバとを総称してアグリゲータサーバ50としている。アグリゲータサーバ50は、ハードウエアとしてはコンピュータによって構成され、当該コンピュータのソフトウエア処理によってアグリゲータサーバ50としての各種機能を実現する。
【0017】
電気事業者サーバ60は、電気事業者によって管理されるサーバである。上述したように、電気事業者は一般送配電事業者及び小売電気事業者を総称しているため、一般送配電事業者によって管理されるサーバ(一般送配電事業者サーバとも記す)と、小売電気事業者によって管理されるサーバ(小売電気事業者サーバとも記す)と、が含まれるが、本実施形態では、一般送配電事業者サーバと小売電気事業者サーバとを総称して電気事業者サーバ60としている。電気事業者サーバ60は、アグリゲータサーバ50にデマンドレスポンスを発生したり、アグリゲータサーバ50からデマンドレスポンスに従ってエネルギーリソース20A、20Bの動作を制御した結果を受け取ったりする。電気事業者サーバ60は、ハードウエアとしてはコンピュータによって構成され、当該コンピュータのソフトウエア処理によって電気事業者サーバ60としての各種機能を実現する。
【0018】
以下の説明では、バーチャルパワープラントは、第1バーチャルパワープラントと、第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントとを総称する。第1バーチャルパワープラント及び第2バーチャルパワープラントは、いずれも、複数のエネルギーリソース20A、20Bから構成されている点では共通であるが、第1バーチャルパワープラントは、どのバーチャルパワープラントにも属していない複数のエネルギーリソース20A、20Bを統合することによって形成されるのに対し、第2バーチャルパワープラントは、複数のバーチャルパワープラントを統合することによって形成される点で相違する。
【0019】
アグリゲータサーバ50は、エネルギーリソース20A、20Bを所有する複数の需要家や、複数のエネルギーリソース20A、20Bに関して予め定められた属性に基づいて、都市エリア10Aや周辺エリア10Bに関わらず、管理エリア10内に設置されている複数のエネルギーリソース20A、20Bを、ネットワーク30を介して選択的に統合し、これによって第1バーチャルパワープラントを形成する。更に、アグリゲータサーバ50は、例えば、電気事業者サーバ60から発生するデマンドレスポンスに応答するには第1バーチャルパワープラントの需要量では不足する虞がある場合、既に形成された状態にある複数の第1バーチャルパワープラントの属性に基づいて、管理エリア10内の複数の第1バーチャルパワープラントを、ネットワーク30を介して選択的に統合し、これによって第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントを形成する。
【0020】
図2は、アグリゲータサーバ50の機能を示すブロック図である。
アグリゲータサーバ50は、第1バーチャルパワープラントを形成するための手段として、第1属性記憶部510および形成制御部530を有し、また、第2バーチャルパワープラントを形成するための手段として、第2属性記憶部520および統合制御部540を有している。アグリゲータサーバ50は、ハードウエアとしては電気事業者サーバ60と同様にコンピュータによって構成され、当該コンピュータのソフトウエア処理によって、上記の第1及び第2属性記憶部510、520、形成制御部530、および統合制御部540の機能を実現する。
【0021】
第1属性記憶部510には、形成制御部530が複数のエネルギーリソース20A、20Bを選択的に統合する際の根拠となる属性情報が予め記憶されている。属性情報は、例えば、管理エリア10に分散して設置されている複数のエネルギーリソース20A、20Bに関して、これらのエネルギーリソース20A、20Bを所有する複数の需要家の電力使用状況を示す第1属性情報A、複数のエネルギーリソース20A、20Bが接続されている電力系統を示す第1属性情報B、複数のエネルギーリソース20A、20Bの地理的な位置を示す第1属性情報Cを含んでいる。尚、第1属性記憶部510は、例えば、ハードディスクや半導体不揮発性メモリ等のハードウエアを用いて構成され、ソフトウエア処理によって第1属性情報A~Cの参照や更新等の機能が可能となっている。
【0022】
図3Aは第1属性記憶部510に記憶される第1属性情報Aのテーブルデータの一例を示している。
図3Bは第1属性記憶部510に記憶される第1属性情報Bのテーブルデータの一例を示している。
図3Cは第1属性記憶部510に記憶される第1属性情報Cのテーブルデータの一例を示している。
【0023】
第1属性情報Aは、例えば、エネルギーリソース20A、20Bを所有する複数の需要家それぞれの、1日における所定時間毎の電力消費量(電力消費カーブ)を電力使用状況として捉えた情報である。所定時間は、例えば15分単位でも1時間単位でもよい。また、この1日は、例えば平日と休日・祝日とに分けてもよく、この場合、平日における所定時間毎の電力消費量は、例えば月曜~金曜までの電力消費量を所定時間ごとに平均した値とすることができ、一方、休日・祝日における所定時間毎の電力消費量は、例えば土曜、日曜、祝日の電力需要量を所定時間毎に平均した値とすることができる。1日の所定時間毎の電力消費量を平日と休日・祝日とで分ける場合、この情報を例えば1週間単位で更新して第1属性記憶部510に記憶させればよい。これにより、複数の需要家の最新の電力使用状況を示す情報を、第1バーチャルパワープラントの形成に効果的に用いることが可能となる。例えば、複数の需要家をX1~Xnとし、各需要家X1~Xnの平日の電力使用状況を示す情報をW11~W1nとし、各需要家X1~Xnの休日・祝日の電力使用状況を示す情報をW21~W2nとする。
【0024】
図4は電力系統の一例を示す図であり、例えば、
図4に記載された全エリアが管理エリア10に相当するものとする。
図4には、例えば、2つの変電所H1、H2、変電所H1、H2にそれぞれ接続された母線K1、K2、母線K1から分岐する配電線F1、F2、母線K2から分岐する配電線F3、F4が示されている。例えば、配電線F1、F2には都市エリア10Aが跨るように形成され、この都市エリア10A内では複数のエネルギーリソース20A(白丸印)が分散し且つ密集して設置されていることとする。更に、配電線F2~F4には周辺エリア10Bが跨るように形成され、この周辺エリア10B内では複数のエネルギーリソース20B(白三角印)が分散して設置されていることとする。
【0025】
第1属性情報Bは、例えば、複数のエネルギーリソース20A、20Bが接続されている配電線F1~F4を示す情報である。例えば、配電線F1、F2に跨る都市エリア10A内に分散している複数のエネルギーリソースを20A1~20Anとすると、複数のエネルギーリソース20A1~20Anは、接続される配電線F1、F2の情報および該当するエネルギーリソース20A1~20Anを所有する需要家X1~Xnを示す情報とともに対応付けられて、第1属性情報Bとして第1属性記憶部510に記憶される。また、配電線F2~F4に跨る周辺エリア10B内に分散している複数のエネルギーリソースを20B1~20Bnとすると、複数のエネルギーリソース20B1~20Bnは、接続される配電線F2~F4の情報および該当するエネルギーリソース20B1~20Bnを所有する需要家X1~Xnを示す情報とともに対応付けられて、第1属性情報Bとして第1属性記憶部510に記憶される。ここで、需要家X1~Xnを示す情報は、第1属性情報Aにおける需要家X1~Xnと同一の情報でもよいし、第1属性情報Aにおける需要家X1~Xnに対応する情報でもよい。つまり、第1属性情報A、Bにおける需要家X1~Xnが一致する情報であれば如何なる情報を用いてもよい。
【0026】
第1属性情報Cは、複数のエネルギーリソース20A、20Bがそれぞれ都市エリア10Aおよび周辺エリア10Bに設置されている地理的な位置を示す情報である。
図4の都市エリア10A内で分散している複数のエネルギーリソース20A1~20Anは、当該複数のエネルギーリソース20A1~20Anの地理的な位置を示す情報および該当する複数のエネルギーリソース20A1~20Anを所有する需要家X1~Xnを示す情報とともに対応付けられて、第1属性情報Cとして第1属性記憶部510に記憶される。同様に、
図4の周辺エリア10B内で分散している複数のエネルギーリソース20B1~20Bnは、当該複数のエネルギーリソース20B1~20Bnの地理的な位置を示す情報および該当する複数のエネルギーリソース20B1~20Bnを所有する需要家X1~Xnを示す情報とともに対応付けられて、第1属性情報Cとして第1属性記憶部510に記憶される。ここで、需要家X1~Xnを示す情報は、第1属性情報Aにおける需要家X1~Xnと同一の情報でもよいし、第1属性情報Aにおける需要家X1~Xnに対応する情報でもよい。つまり、第1属性情報A、Cにおける需要家X1~Xnが一致する情報であれば如何なる情報を用いてもよい。また、複数のエネルギーリソース20A、20Bの地理的な位置を示す情報は、例えば、該当するエネルギーリソース20A、20Bの設置位置を示す住所情報や経度緯度情報とすることができるが、本実施形態では住所情報であることとする。例えば、エネルギーリソース20A1~20Anの住所情報をAD11~AD1nとし、エネルギーリソース20B1~20Bnの住所情報をAD21~AD2nとする。
【0027】
形成制御部530は、都市エリア10A内に分散する複数のエネルギーリソース20Aおよび周辺エリア10Bに分散する複数のエネルギーリソース20Bの中から、第1属性記憶部510に記憶されている第1属性情報A~Cのテーブルデータを参照することによって、デマンドレスポンスに応答する場合に最適と判断される複数のエネルギーリソース20A、20Bを、ネットワーク30を介して選択的に統合し、第1バーチャルパワープラントを形成する。
【0028】
形成制御部530は、第1属性情報Cよりも第1属性情報A、Bの方を優先して用いて、複数のエネルギーリソース20A、20Bを選択的に統合する。
【0029】
ここで、第1属性情報Aには、各需要家X1~Xnの1日における所定時間毎の電力消費量を示す情報が含まれている。そこで、形成制御部530は、第1属性情報Aの中から、類似した電力消費を行う需要家X1~Xnを選択して、選択された需要家X1~Xnが所有するエネルギーリソース20A、20Bをネットワーク30を介して統合する。一例として、下げDRによって、例えば平日の12時から15時までの電力の需要量を下げる必要がある場合、形成制御部530は、第1属性情報Aの中から、平日の12時から15時までの間の電力の消費量が一定以上に大きくなる電力使用状況を示す情報W11~W1nのみを選択し、この選択された電力使用状況を示す情報W11~W1nに該当する需要家X1~Xnが所有するエネルギーリソース20A、20Bをネットワーク30を介して統合する。このように形成された第1バーチャルパワープラント内では、平日の12時から15時の間、下げDRに従って、エネルギーリソース20A、20Bによる電力消費量を効率的に低減させることが可能となる。このように、第1属性情報Aは、デマンドレスポンスに応じて第1バーチャルパワープラントを構成するエネルギーリソース20A、20Bの需要をどのように制御するのかに関して、その需要を予測するための有益な情報となる。また、第1属性情報Aの中から選択された需要家X1~Xnは類似した電力使用状況にあることから、第1バーチャルパワープラントが1回のデマンドレスポンスで効率的に動作するために用いる情報としては、優先度が高い情報となる。
【0030】
第1属性情報Bは、複数のエネルギーリソース20A、20Bが配電線F1~F4のうちどの配電線に接続されているのかを示す情報である。配電線F1、F2は、共通の母線K1から分岐する電力線であることから、相関が強く、また、配電線F1、F2の系統間距離は、他の電力系統(例えば配電線F3、F4)と比べて比較的短い。同様に、配電線F3、F4は、共通の母線K2から分岐する電力線であることから、相関が強く、また、配電線F3、F4の系統間距離は、他の電力系統(例えば配電線F1、F2)と比べて比較的短い。このことから、配電線F1、F2(または配電線F3、F4)に接続された複数のエネルギーリソース20A、20Bは、同様の自然環境(天候や災害等)の影響を受ける可能性が高い。また、配電線F1~F4のうち何れか1つの配電線に共通に接続されるエネルギーリソース20A、20Bについても同様のことが言える。よって、配電線F1、F2の少なくとも一方や、配電線F3、F4の少なくとも一方に接続されたエネルギーリソース20A、20Bは、類似した電力使用状況を呈する可能性が高くなることから、第1バーチャルパワープラントが1回のデマンドレスポンスで効率的に動作するために用いる情報としては、優先度が高い情報となる。
【0031】
第1属性情報Cは、複数のエネルギーリソース20A、20Bの地理的な位置を示す情報であって、デマンドレスポンスの条件によっては、地理的に近い位置に分散しているエネルギーリソース20A、20B(例えば配電線F1、F2に接続されているエネルギーリソース20A、20B)や、地理的に遠い位置に分散しているエネルギーリソース20A、20B(例えば配電線F1、F4に接続されているエネルギーリソース20A、20B)を、第1バーチャルパワープラントを形成するための情報として用いることができる。電力の供給量に対して需要家が消費する電力の需要量をバランスさせることを目的として、少ない回数のデマンドレスポンスで第1バーチャルパワープラントを効率的に動作させる場合、本実施形態では、第1属性情報Cよりも第1属性情報A、Bを優先的に用いることとする。
【0032】
尚、本実施形態では、第1属性情報A~Cを用いているが、属性情報はこれに限定されるものではない。第1属性情報A~Cのほかに、例えば、エネルギーリソース20A、20Bが分際している地域の気象予測情報やイベント情報、ハザード情報等を、複数のエネルギーリソース20A、20Bを統合するために適宜使用するようにしてもよい。
【0033】
第2属性記憶部520には、統合制御部540が、形成制御部530によって既に形成されている複数の第1バーチャルパワープラントの中から、第2バーチャルパワープラントとして統合されるべき複数の第1バーチャルパワープラントを選択する際の根拠となる属性情報が予め記憶されている。属性情報は、例えば、管理エリア10内で形成されている複数の第1バーチャルパワープラントそれぞれの電力使用状況を示す第2属性情報D、複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統を示す第2属性情報E、複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す第2属性情報Fを含んでいる。尚、第2属性記憶部520は、第1属性記憶部510と同様に、例えば、ハードディスクや半導体不揮発性メモリ等のハードウエアを用いて構成され、ソフトウエア処理によって第2属性情報D~Fの参照や更新等の機能が可能となっている。尚、第1および第2属性記憶部510、520は、同一のハードディスクや同一の半導体不揮発性メモリ内で、アドレス空間を分けるように構成されてもよい。
【0034】
図3Dは第2属性記憶部520に記憶される第2属性情報Dのテーブルデータの一例を示している。
図3Eは第2属性記憶部520に記憶される第2属性情報Eのテーブルデータの一例を示している。
図3Fは第2属性記憶部520に記憶される第2属性情報Fのテーブルデータの一例を示している。尚、第2属性情報D~Fは、それぞれ、複数の第1バーチャルパワープラントが形成された後、各第1バーチャルパワープラントを形成している全てのエネルギーリソース20A、20Bに関する第1属性情報A~Cを、統合制御部540が例えば集計して編集することにより生成される。
【0035】
第2属性情報Dは、例えば、形成制御部530によって形成された複数の第1バーチャルパワープラントそれぞれの、1日における所定時間毎の電力消費量(電力消費カーブ)を電力使用状況として捉えた情報である。所定時間は、例えば15分単位でも1時間単位でもよい。また、この1日は、例えば平日と休日・祝日とに分けてもよく、この場合、平日における所定時間毎の電力消費量は、例えば月曜~金曜までの電力消費量を所定時間ごとに平均した値とすることができ、一方、休日・祝日における所定時間毎の電力消費量は、例えば土曜、日曜、祝日の電力需要量を所定時間毎に平均した値とすることができる。1日の所定時間毎の電力消費量を平日と休日・祝日とで分ける場合、この情報を例えば1週間単位で更新して第2属性記憶部520に記憶させればよい。これにより、複数の第1バーチャルパワープラントの最新の電力使用状況を示す情報を、第2バーチャルパワープラントの形成に効果的に用いることが可能となる。例えば、複数の第1バーチャルパワープラントをVPP11~VPP1nとし、各第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nの平日の電力使用状況を示す情報をW31~W3nとし、各第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nの休日・祝日の電力使用状況を示す情報をW41~W4nとする。
【0036】
第2属性情報Eは、例えば、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nがそれぞれ接続されている配電線F1~F4を示す情報である。例えば、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nは、それぞれ、接続される配電線F1~F4の情報と対応付けられて、第2属性情報Eとして第2属性記憶部520に記憶される。
【0037】
第2属性情報Fは、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nがそれぞれ形成される管理エリア10内の地理的な位置を示す情報である。ここで、各第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nには複数のエネルギーリソース20A、20Bが含まれているため、各第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nの地理的な位置を示す情報は、各第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nのエリアを示す情報として捉えることが望ましい。そこで、統合制御部540は、第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nそれぞれにおいて、例えば8個のそれぞれの方角(南、南東、東、北東、北、北西、西、南東)に最も近いエネルギーリソース20A、20Bの住所情報を第1属性情報Cから抽出し、8角形のエリア情報AREA1~AREAnを生成する。そして、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nは、それぞれ、8角形のエリア情報AREA1~AREAnと対応付けられて第2属性情報Fとして第2属性記憶部520に記憶される。尚、エリア情報AREA1~AREAnを生成する際に、8方角よりも多い数の方角(例えば16方角)を用いて、より精度の高いエリア情報AREA1~AREAnを生成してもよい。
【0038】
統合制御部540は、管理エリア10内で形成されている複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nの中から、第2属性記憶部520に記憶されている第2属性情報D~Fのテーブルデータを参照することによって、デマンドレスポンスに応答する場合に最適と判断される複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nを、ネットワーク30を介して選択的に統合し、第2バーチャルパワープラントを形成する。
【0039】
統合制御部540は、第2属性情報Fよりも第2属性情報D、Eの方を優先して用いて、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nを選択的に統合する。
【0040】
ここで、第2属性情報Dには、各第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nの1日における所定時間毎の電力消費量を示す情報が含まれている。そこで、統合制御部540は、第2属性情報Dの中から、類似した電力消費を行う第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nを選択し、選択された第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nをネットワーク30を介して統合する。一例として、下げDRによって、例えば平日の12時から15時までの電力の需要量を下げる必要があるが、形成制御部530によって形成された第1バーチャルパワープラント単体では、下げDRに対応する需要量を確保することが難しい場合、統合制御部540は、第2属性情報Dの中から、既に選択されている第1バーチャルパワープラント(例えばVPP11)以外で、平日の12時から15時までの間の電力の消費量が一定以上に大きくなる電力使用状況を示す情報W32~W3nの何れか1つ(例えば第1バーチャルパワープラントVPP12)を選択し、これらの選択された第1バーチャルパワーユニットVPP11、VPP12をネットワーク30を介して統合することによって、第2バーチャルパワープラントを形成する。このように形成された第2バーチャルパワープラント内では、平日の12時から15時の間、下げDRに対応する需要量を確保するように、エネルギーリソース20A、20Bによる電力消費量を効率的に低減させることが可能となる。このように、第2属性情報Dは、デマンドレスポンスに応じて第2バーチャルパワープラントを構成するエネルギーリソース20A、20Bの需要をどのように制御するのかに関して、その需要を予測するための有益な情報となる。また、第2属性情報Dの中から選択された第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nは類似した電力使用状況にあることから、第2バーチャルパワープラントが1回のデマンドレスポンスで効率的に動作するために用いる情報としては、優先度が高い情報となる。
【0041】
第2属性情報Eは、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nが配電線F1~F4のうちどの配電線に接続されているのかを示す情報である。第1属性情報Bと同様に、配電線F1、F2(または配電線F3、F4)に接続された複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nは、同様の自然環境(天候や災害等)の影響を受ける可能性が高い。また、配電線F1~F4のうち何れか1つの配電線に共通に接続される第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nについても同様のことが言える。よって、配電線F1、F2の少なくとも一方や、配電線F3、F4の少なくとも一方に接続された第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nは、類似した電力使用状況を呈する可能性が高くなることから、第2バーチャルパワープラントが1回のデマンドレスポンスで効率的に動作するために用いる情報としては、優先度が高い情報となる。
【0042】
第2属性情報Fは、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nの地理的な位置を示す情報であって、デマンドレスポンスの条件によっては、地理的に近い位置に形成されている第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1n(例えば配電線F1、F2に接続されている第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1n)や、地理的に遠い位置に分散している第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1n(例えば配電線F1、F4に接続されている第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1n)を、第2バーチャルパワープラントを形成するための情報として用いることができる。電力の供給量に対して需要家が消費する電力の需要量をバランスさせることを目的として、少ない回数のデマンドレスポンスで第2バーチャルパワープラントを効率的に動作させる場合、本実施形態では、第2属性情報Fよりも第2属性情報D、Eを優先的に用いることとする。
【0043】
尚、本実施形態では、第2属性情報D~Fを用いているが、属性情報はこれに限定されるものではない。第1属性情報A~Cのときと同様に、第2属性情報D~Fのほかに、例えば、第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nが形成されている地域の気象予測情報やイベント情報、ハザード情報等を、複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nを選択的に統合するために適宜使用するようにしてもよい。
【0044】
図5は、第1バーチャルパワープラントを形成する際の形成制御部530と、第2バーチャルパワープラントを形成する際の統合制御部540との一連の動作の一例を示すフローチャートである。尚、説明の便宜上、第1バーチャルパワープラントの形成に際して、第1属性記憶部510に記憶されている第1属性情報A、Bを用いることとし、また、第2バーチャルパワープラントの形成に際して、第2属性記憶部520に記憶されている第2属性情報D、Eを用いることとする。また、デマンドレスポンスは例えば下げDRであって、上記のように平日の12時から15時までの電力消費量を一定量下げる指令であることとする。
【0045】
先ず、形成制御部530は、電気事業者サーバ60からデマンドレスポンスを受信したか否かを判定する(ステップS10)。形成制御部530は、デマンドレスポンスを受信していない場合(ステップS10:NO)、デマンドレスポンスを受信するまで、ステップS10の判定動作を繰り返し実行する。一方、形成制御部530は、デマンドレスポンスを受信した場合(ステップS10:YES)、第1属性記憶部510に記憶されている第1属性情報Aのテーブルデータを参照し、平日の電力使用状況を示す情報W11~W1nの中から、12時から15時までの電力消費量が一定以上に増加している情報を選択する(ステップS20)。
【0046】
次に、形成制御部530は、第1属性記憶部510に記憶されている第1属性情報Bのテーブルデータを参照し、第1属性情報Aの中から選択された、平日の12時から15時までの電力消費量が一定以上に増加する情報W11~W1nに該当するエネルギーリソース20A、20Bを、配電線F1~F4のそれぞれに接続されるグループに大別する(ステップS30)。
【0047】
次に、形成制御部530は、大別されたそれぞれのグループ内のエネルギーリソース20A、20Bをネットワーク30を介して接続し、複数の第1バーチャルパワープラントを形成する(ステップS40)。尚、
図4では、配電線F2に接続された1つのグループからなる第1バーチャルパワープラントVPP11、配電線F2に接続されたもう1つのグループからなる第1バーチャルパワープラントVPP12、配電線F1に接続された更にもう1つのグループからなる第1バーチャルパワープラントVPP13のみを太線枠で示すこととする。
【0048】
次に、統合制御部540は、複数の第1バーチャルパワープラントの中から、エネルギーリソース20A、20Bの合計数が最大となる第1バーチャルパワープラント(例えばVPP11)を最終候補として選択する(ステップS50)。エネルギーリソース20A、20Bの合計数が最も多い第1バーチャルパワープラントVPP11を選択する理由は、1回の下げDRに応答して、エネルギーリソース20A、20Bで大きな電力消費量の削減を行う可能性が高まるからである。また、1回の下げDRで要求される電力消費量は例えばメガワットオーダーの大きさであるため、エネルギーリソース20A、20Bの合計数が多い方が、下げDRに応答できる可能性が高まるからである。
【0049】
次に、統合制御部540は、最終候補として選択したバーチャルパワープラント(第1バーチャルパワープラントVPP11)を形成するエネルギーリソース20A、20Bによる需要量が、下げDRに対して不足するか否かを判定する(ステップS60)。選択したバーチャルパワープラントを形成するエネルギーリソース20A、20Bによる需要量が下げDRに対して不足しない場合(ステップS60:NO)、統合制御部540は、このバーチャルパワープラント(バーチャルパワープラントVPP11)を下げDRに応答するものとして設定する(ステップS70)。
【0050】
一方、このバーチャルパワープラントを形成するエネルギーリソース20A、20Bによる需要量が下げDRに対して不足する場合つまり下げDRに対する応答が困難な場合(ステップS60:YES)、統合制御部540は、このバーチャルパワープラント(バーチャルパワープラントVPP11)を除いてエネルギーリソース20A、20Bの合計数が最大の第1バーチャルパワープラントVPP12をネットワーク30を介して統合し、第2バーチャルパワープラントを形成し、これを新たな最終候補とする(ステップS80)。
【0051】
そして、ステップS60に戻り、新たな最終候補として統合されたバーチャルパワープラントを形成するエネルギーリソース20A、20Bによる需要量が下げDRに対して不足するか否かを判定する。このバーチャルパワープラントを形成するエネルギーリソース20A、20Bによる需要量が下げDRに対して不足しない場合(ステップS60:NO)、統合制御部540は、このバーチャルパワープラントを下げDRに応答するものとして設定する(ステップS70)。
【0052】
図6は、デマンドレスポンスの応答の流れを自動化した際の一例を示すフローチャートである。ここでは、第1バーチャルパワープラントを形成するエネルギーリソース20A、20Bだけでは下げDRへの対応が困難なため、第2バーチャルパワープラントを形成して対応する場合を例示する。
【0053】
先ず、電気事業者サーバ60から、上記の下げDRを示すデマンドレスポンスが発生する(ステップS100)。
【0054】
次に、アグリゲータサーバ50では、平日にこの下げDRを受信すると(ステップS110)、
図5に示す手順で、第1属性情報A、Bに基づいて複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nを形成し、第2属性情報D、Eに基づいて、下げDRに応じることが可能な複数の第1バーチャルパワープラントVPP11~VPP1nをネットワーク30を介して統合して第2バーチャルパワープラントを形成する(ステップS120)。ここで、
図5では、第1バーチャルパワープラントの形成に際して第1属性情報A、Bを用いた手順を示したが、下げDRの条件によっては、下げDRにより確実に応じるために第1属性情報A、Bを用いた上で更に第1属性情報Cを用いてもよい。例えば、第1バーチャルパワープラントを更に地理的に絞り込んで形成したい場合など、第1属性情報Cは有益な情報となる。このように、アグリゲータサーバ50は、第1属性情報A、B、Cの少なくともいずれかを用いて第1バーチャルパワープラントを形成する。例えば、アグリゲータサーバ50は、DRの条件によっては、第1属性情報Bを用いずに、第1属性情報Aのみを用いて第1バーチャルパワープラントを形成してもよいし、第1属性情報AとCを用いて第1バーチャルパワープラントを形成してもよい。また同様に、第2バーチャルパワープラントを形成する際にも、第2属性情報D、Eのほかに第2属性情報Fを用いてもよい。
【0055】
第2バーチャルパワープラントの形成が完了すると、統合制御部540では、下げDRに従って、平日の12時から15時までの間、第2バーチャルパワープラントを形成する複数のエネルギーリソース20A、20Bに対して、電力消費量を一定量削減するための指示を行う。この指示は、エネルギーリソース20A、20Bに接続されている中継システム40に与えられ、これによってエネルギーリソース20A、20Bによる電力消費量の削減量が一定量に達するように制御される(ステップS130)。例えば、エネルギーリソース20A、20Bが照明機器や空調機器の場合、これらの機器の出力を抑えるための制御が自動で行われる。
【0056】
第2バーチャルパワープラント内での電力消費量を削減する期間(平日の12時~15時)が経過すると、統合制御部540は、第2バーチャルパワープラント内で電力消費量の削減を行ったエネルギーリソース20A、20Bに接続されている中継システム40から、電力消費に係る削減量を示す実績データを取得して集計し、この集計データを電気事業者サーバ60に送信する(ステップS140)。
【0057】
電気事業者サーバ60では、統合制御部540から集計データを取得すると、アグリゲータサーバ50に対して、この集計データが示す電力消費の削減量に応じた報酬を支払うための処理を行う(ステップS150)。尚、アグリゲータは、アグリゲータサーバ50を通して、電力消費の削減量に応じた報酬の受け取り処理が完了したことを確認した後、第2バーチャルパワープラント内のエネルギーリソース20A、20Bを所有する需要家に上記の報酬を支払うことで、一連のネガワット取引を終了する。もちろん、デマンドレスポンスに応じた場合に需要家に報酬が支払われるかどうかは需要家の契約内容によって変わるものであり、本実施形態は一例に過ぎない。
【0058】
以上説明したように、複数の需要家X1~Xnが所有する、各地に分散している複数のエネルギーリソース20A、20Bをネットワーク30を介して統合制御し、あたかも1つの発電所として機能させるバーチャルパワープラントの統合制御システムであって、複数の需要家X1~Xnの電力使用状況を示す情報Aを含む第1属性情報が記憶される第1属性記憶部510と、複数のエネルギーリソース20A、20Bの中から、第1属性情報に基づいてエネルギーリソース20A、20Bを選択的に統合して複数の第1バーチャルパワープラントを形成する形成制御部530と、複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報Dを含む第2属性情報が記憶される第2属性記憶部520と、複数の第1バーチャルパワープラントの中から、第2属性情報に基づいて第1バーチャルパワープラントを選択的に統合して第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントを形成し、デマンドレスポンスに応じて、第2バーチャルパワープラントを制御する統合制御部540と、を備える。
【0059】
また、第1属性情報は、複数のエネルギーリソース20A、20Bが接続されている電力系統を示す情報Bを更に含む。
【0060】
また、第1属性情報は、複数のエネルギーリソース20A、20Bの地理的な位置を示す情報Cを更に含む。
【0061】
また、第2属性情報は、複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統を示す情報Eを更に含む。
【0062】
また、第2属性情報は、複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報Fを更に含む。
【0063】
また、形成制御部530は、第1属性情報の中で、複数のエネルギーリソース20A、20Bの地理的な位置を示す情報Cよりも、複数の需要家の電力使用状況を示す情報Aおよび複数のエネルギーリソース20A、20Bが接続されている電力系統の情報Bを優先して、エネルギーリソース20A、20Bを選択的に統合して複数の第1バーチャルパワープラントを形成する。
【0064】
また、統合制御部540は、第2属性情報の中で、複数の第1バーチャルパワープラントの地理的な位置を示す情報Cよりも、複数の第1バーチャルパワープラントの電力使用状況を示す情報Dおよび複数の第1バーチャルパワープラントが接続されている電力系統の情報Eを優先して、第2バーチャルパワープラントを形成する。
【0065】
このように、本実施形態によれば、都市エリア10Aや周辺エリア10Bに関わらず、遍在する様々なエネルギーリソース20A、20Bを効率的に活用して第1バーチャルパワープラント、およびデマンドレスポンスで要求される需要量の大きさによっては当該第1バーチャルパワープラントよりも規模が大きい第2バーチャルパワープラントを形成し、電力の需給量のバランスをより一層確実なものとすることが可能となる。
【0066】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0067】
本実施形態では、第2バーチャルパワープラントが下げDRに従って消費電力量を削減するように動作したが、これに限定されない。第2バーチャルパワープラントは、上げDRに従って消費電力量を増加させるように動作することも可能である。つまり、アグリゲータサーバ50は、上げDRおよび下げDRの何れにも効率的に対応できるように、第2バーチャルパワープラントを形成して制御することが可能である。
【0068】
また、本実施形態では、第1段階として複数の第1バーチャルパワープラントを形成し、第2段階として複数の第1バーチャルパワープラントを統合して第2バーチャルパワープラントを形成する、所謂2段階でデマンドレスポンスに応答することが可能なバーチャルパワープラントを形成したが、これに限定されない。例えば、
図5のフローチャートに示すように、第2バーチャルパワープラントを形成する際には、デマンドレスポンスに応答可能な需要量を確保できるまで、複数の第1バーチャルパワープラントを繰り返し統合する、2段階以上の多段階の統合を行えばよい。
【0069】
また、本実施形態では、1つの第2バーチャルパワープラントを形成する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、上記のようにして形成される第2バーチャルパワープラントを複数形成し、複数の第2バーチャルパワープラントを、上記のような属性に基づいて多段階に統合した広範囲にわたるバーチャルパワープラントを形成してもよい。この場合、市町村規模から都道府県規模までのさまざまな規模のバーチャルパワープラントによる制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
10 管理エリア
10A 都市エリア
10B 周辺エリア
20A、20B エネルギーリソース
30 ネットワーク
40 中継システム
50 アグリゲータサーバ
60 電気事業者サーバ
510 第1属性記憶部
520 第2属性記憶部
530 形成制御部
540 統合制御部