(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】リニアガイド機構およびリニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
F16C29/06
(21)【出願番号】P 2020211494
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】古宇田 直樹
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-061611(JP,A)
【文献】特開2016-090057(JP,A)
【文献】実開昭57-130017(JP,U)
【文献】特開2018-151039(JP,A)
【文献】特開2012-180863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0200277(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0383077(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ブロックをアクチュエータにスライド自在に支持するためのリニアガイド機構であって、前記アクチュエータに取り付けられるアクチュエータ側案内部材と、前記移動ブロックに取り付けられ前記アクチュエータ側案内部材の両側に配置される一対の移動ブロック側案内部材と、前記アクチュエータ側案内部材と前記各移動ブロック側案内部材との間にそれぞれ二列設けられる複数のボールとを含み、前記アクチュエータ側案内部材には前記ボールが循環する循環
穴が設けられ、前記移動ブロック側案内部材は熱処理を施した鋼からなり、前記移動ブロックには前記ボールの予圧を調整可能であるとともに前記移動ブロック側案内部材の真直度を改善可能な押圧機構が設けられるリニアガイド機構。
【請求項2】
請求項1記載のリニアガイド機構において、
前記押圧機構は止めねじとし、前記止めねじは、前記移動ブロックの側壁部を貫通するねじ孔に螺合され、先端が前記移動ブロック側案内部材の外側面に当接するリニアガイド機構。
【請求項3】
請求項2記載のリニアガイド機構において、
前記止めねじは、前記移動ブロックの前記側壁部の長手方向に並んで複数配置されるリニアガイド機構。
【請求項4】
請求項2記載のリニアガイド機構において、
前記移動ブロック側案内部材を前記移動ブロックに固定するとともに前記移動ブロック側案内部材の真直度を改善可能な締結ボルトが設けられ、前記締結ボルトの軸線と前記止めねじの軸線は、前記移動ブロックのスライド方向に沿う方向から見て、互いに垂直な位置関係にあるリニアガイド機構。
【請求項5】
請求項4記載のリニアガイド機構において、
前記締結ボルトは、前記移動ブロック側案内部材の長手方向に並んで複数配置されるリニアガイド機構。
【請求項6】
請求項1記載のリニアガイド機構において、
前記移動ブロック側案内部材は、圧延による鍛造品であるリニアガイド機構。
【請求項7】
請求項1記載のリニアガイド機構において、
前記移動ブロック側案内部材は、前記アクチュエータ側案内部材よりも前記移動ブロックのスライド方向に長いリニアガイド機構。
【請求項8】
請求項1記載のリニアガイド機構を搭載したリニアアクチュエータであって、アクチュエータとしてエアシリンダを用いたリニアアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1記載のリニアガイド機構を搭載したリニアアクチュエータであって、アクチュエータとして電動モータを用いたリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの載置面を有するスライドテーブル等の移動ブロックをアクチュエータにスライド自在に支持するリニアガイド機構およびこれを搭載したリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクチュエータにより駆動するスライドテーブルをアクチュエータにスライド自在に支持するリニアガイド機構が知られている。このようなリニアガイド機構においては、スライドテーブルのガタを無くしさらにスライド抵抗を小さくすることが重要なテーマとなっており、複数のボール等の転動体を用いてスライドテーブルをアクチュエータに支持することも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多数の転動体を介して移動ブロックを軌道レールに組み付けるリニアガイド装置が記載されている。この軌道レールは、転動体の転走面が形成された一対のレール部材と、該レール部材が嵌合する一対のレール取り付け溝が設けられたレールハウジングとから構成され、一方のレール取り付け溝にはレール部材に接する基準突起が形成されている。そして、他方のレール取り付け溝に嵌合するレール部材をこの基準突起を基準として固定することによって、一対のレール部材の平行度を確保しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、転動体の転走面が形成される案内部材(レール部材)については、特にその転走面において高い硬度が要求されることが多く、成形品に対して熱処理(焼入れ/焼戻し)を行う場合がある。この場合、熱処理によって歪みが生じ、真直度が低下するため、これを改善すべく熱処理後に研削加工を行うことが必要になる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ボールの転走面が形成される案内部材に熱処理を行うことで低下した真直度を、研削加工によらないで改善することができ、移動ブロックがスライドするときのガタが無く、しかも、スライド抵抗が可及的に抑制されるリニアガイド機構およびこれを搭載したリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリニアガイド機構は、移動ブロックをアクチュエータにスライド自在に支持するためのものであって、アクチュエータに取り付けられるアクチュエータ側案内部材と、移動ブロックに取り付けられアクチュエータ側案内部材の両側に配置される一対の移動ブロック側案内部材と、アクチュエータ側案内部材と各移動ブロック側案内部材との間にそれぞれ二列設けられる複数のボールとを含み、アクチュエータ側案内部材にはボールが循環する循環穴が設けられる。そして、移動ブロック側案内部材は熱処理を施した鋼からなり、移動ブロックにはボールの予圧を調整可能であるとともに移動ブロック側案内部材の真直度を改善可能な押圧機構が設けられる。押圧機構には、止めねじを使用する。
【0008】
上記リニアガイド機構によれば、熱処理を施した鋼からなる移動ブロック側案内部材の真直度を止めねじにより改善することができるので、移動ブロック側案内部材に切削加工を施す必要がない。また、アクチュエータ側案内部材と各移動ブロック側案内部材との間に二列に並ぶ複数のボールが設けられる構造、すなわち、サーキュラーアークと呼ばれる支持構造によって移動ブロックがアクチュエータに支持されるので、真直度を改善する際にボールの予圧が増大しても、移動ブロックのスライド抵抗の増加を可及的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るリニアガイド機構は、アクチュエータ側案内部材とその両側に配置される移動ブロック側案内部材との間にそれぞれ二列に並ぶ複数のボールが設けられ、移動ブロックにはボールの予圧を調整可能であるとともに移動ブロック側案内部材の真直度を改善可能な止めねじが設けられるものであるから、熱処理が行われることで低下した移動ブロック側案内部材の真直度を止めねじにより改善することができ、しかも、真直度を改善する際にボールの予圧が増大しても、移動ブロックのスライド抵抗の増加を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るリニアアクチュエータの外観図である。
【
図2】
図1のリニアアクチュエータに搭載されたリニアガイド機構の外観図である。
【
図3】
図1のリニアアクチュエータをIII-III線に沿って切断したときの断面図である。
【
図4】
図1のリニアアクチュエータを部品ないし部品群に展開して所定方向から見た図である。
【
図5】
図1のリニアアクチュエータを部品ないし部品群に展開して
図4とは異なる方向から見た図である。
【
図6】
図1のリニアアクチュエータのテーブル側案内部材が左右方向に湾曲している様子を示す図である。
【
図7】
図1のリニアアクチュエータのテーブル側案内部材が上下方向に湾曲している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るリニアガイド機構およびこれを搭載したリニアアクチュエータについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下左右の方向に関する言葉を用いたときは、
図3における方向をいう。
【0012】
図1および
図2に示されるように、本実施形態のリニアアクチュエータ10は、アクチュエータとしてのエアシリンダ38を含み、移動ブロックとしてのスライドテーブル12をエアシリンダ38にスライド自在に支持するリニアガイド機構を搭載している。リニアガイド機構は、スライドテーブル12と、テーブル側案内部材24(移動ブロック側案内部材)と、エアシリンダ側案内部材30(アクチュエータ側案内部材)と、テーブル側案内部材24とエアシリンダ側案内部材30との間に設けられる複数のボール36とからなる。
【0013】
スライドテーブル12は、アルミニウム合金からなる断面コ字状の部材であり、平面視矩形状の平板部14と、平板部14の対向する一対の側辺から下方に突出する一対の側壁部(第1側壁部16および第2側壁部18)とを有する。後述するように、これらの側壁部16、18の内側面16a、18aは、テーブル側案内部材24の真直度を改善する基準となる面であり、精度の高い平面に仕上げられている(
図5参照)。スライドテーブル12の上面は、ワークを搭載することができる平坦面となっている。
【0014】
図5に示されるように、平板部14の下面は、各側壁部16、18に近接する一対の第1底面14aと、第1底面14aから段差面14bを経て連なる第2底面14cとを有する。平板部14の上面から第1底面14aまでの距離は、平板部14の上面から第2底面14cまでの距離よりも大きく、第2底面14cは、エアシリンダ側案内部材30の上部が入り込む隙間を形成している。後述するように、第1底面14aは、テーブル側案内部材24の真直度を改善する基準となる面であり、精度の高い平面に仕上げられている。
【0015】
第1側壁部16および第2側壁部18の内側には、それぞれテーブル側案内部材24が装着される第1取付溝20および第2取付溝22が設けられている。これらの取付溝20、22は、平板部14の第1底面14aおよび第1底面14aに垂直な各側壁部16、18の内側面16a、18aによって構成される。
【0016】
第1側壁部16には、左右方向に貫通する複数のねじ孔16cが第1側壁部16の長手方向に並んで設けられている。止めねじ26が第1側壁部16の外側面16bからねじ孔16cに挿入・螺合され、その先端がテーブル側案内部材24の外側面24aに当接する。本実施形態では、合計6本の止めねじ26が使われている。第2側壁部18には、ねじ孔は設けられていない。
【0017】
スライドテーブル12には、平板部14を上下方向に貫通してその下端が第1底面14aに開口する複数の締結ボルト挿通孔14dが設けられている(
図4参照)。複数の締結ボルト挿通孔14dは、第1底面14aの長手方向に並んで設けられている。各締結ボルト挿通孔14dの途中には、締結ボルト28の頭部が当接する段部が形成されている(
図3参照)。
【0018】
図4および
図5に示されるように、テーブル側案内部材24は、断面矩形状の長尺な部材であり、その外側面24aがスライドテーブル12の各側壁部16、18の内側面16a、18aに整合し、かつ、その上面24bがスライドテーブル12の第1底面14aと整合するようにして、第1取付溝20および第2取付溝22に取り付けられる。
【0019】
テーブル側案内部材24の内側面には、テーブル側案内部材24の長手方向全長に亘って延びる凸部24cが設けられており、凸部24cの上側および下側にそれぞれボール36が転動することができる第1転走面24dおよび第2転走面24eが形成されている。
【0020】
テーブル側案内部材24には、スライドテーブル12の締結ボルト挿通孔14dと整合する位置において、上下方向に貫通する複数の締結ボルト取付孔24fが設けられている。締結ボルト28は、スライドテーブル12の上面から締結ボルト挿通孔14dに挿入され、テーブル側案内部材24の締結ボルト取付孔24fに螺合される。締結ボルト28は、テーブル側案内部材24をスライドテーブル12に固定する役割を担う。本実施形態では、テーブル側案内部材24の長手方向に並ぶ3本の締結ボルト28によって各テーブル側案内部材24をスライドテーブル12に固定している。
【0021】
締結ボルト取付孔24fに螺合された締結ボルト28の軸線とねじ孔16cに螺合された止めねじ26の軸線は、スライドテーブル12のスライド方向に沿う方向から見て、互いに垂直な位置関係にある(
図3参照)。
【0022】
テーブル側案内部材24は、熱処理を施した鋼からなる。テーブル側案内部材24の製造には、棒状または板状の素材を圧延によって所定の断面形状に成形する工程と、成形品に対して焼入れ/焼戻しによる熱処理を行う工程とが含まれる。なお、テーブル側案内部材24の製造には、圧延の中でも、クロス圧延が適している。
【0023】
クロス圧延は、二組のワークロールによって互いに垂直な二方向に圧縮力を加えながら行う圧延加工であり、滑らかな表面を有する成形品を得るのに有用である。一方、クロス圧延は、断面積が大きい成形品を得るのには不向きであるが、テーブル側案内部材24は、断面積が小さい部材であることから、クロス圧延によって容易に成形することができる。
【0024】
テーブル側案内部材24の成形品に対する焼入れ/焼戻しによる熱処理は、テーブル側案内部材24の第1転走面24dおよび第2転走面24eに必要な硬度を付与するために行われる。この熱処理によって、テーブル側案内部材24はマルテンサイト系の組織となる。長尺で断面積が小さいテーブル側案内部材24には、この熱処理によって反りが発生し、真直度が低下するが、その改善方法については後述する。なお、焼入れ後の焼戻しは必ずしも行わなくてもよいが、靭性を回復させるために焼戻しを行うのが好ましい。
【0025】
エアシリンダ側案内部材30は、断面矩形状の部材であり、スライドテーブル12のスライド方向に沿った長さがテーブル側案内部材24よりも短い。エアシリンダ側案内部材30の一方の側面30aには、ボール36が転動することができる第1転走面32aおよび第2転走面32bが上下に並んで形成されている。エアシリンダ側案内部材30の他方の側面30bには、ボール36が転動することができる第3転走面32cおよび第4転走面32dが上下に並んで形成されている(
図3参照)。エアシリンダ側案内部材30には、上下方向に貫通する一対の固定ボルト取付孔30cが設けられている。
【0026】
図3に示されるように、エアシリンダ側案内部材30の内部には、ボール36が循環することができる第1循環
穴34aないし第4循環
穴34dが設けられている。エアシリンダ側案内部材30の第1転走面32aないし第4転走面32dの両端は、それぞれ第1循環
穴34aないし第4循環
穴34dと繋がっている。
【0027】
一方のテーブル側案内部材24の第1転走面24dとこれに対向するエアシリンダ側案内部材30の第1転走面32aとの間に設けられた複数のボール36は、スライドテーブル12のスライドに伴い、これらの転走面を転動するとともに第1循環穴34aを循環する。一方のテーブル側案内部材24の第2転走面24eとこれに対向するエアシリンダ側案内部材30の第2転走面32bとの間に設けられた複数のボール36は、スライドテーブル12のスライドに伴い、これらの転走面を転動するとともに第2循環穴34bを循環する。
【0028】
同様に、他方のテーブル側案内部材24の第1転走面24dとこれに対向するエアシリンダ側案内部材30の第3転走面32cとの間に設けられた複数のボール36は、これらの転走面を転動するとともに第3循環穴34cを循環し、他方のテーブル側案内部材24の第2転走面24eとこれに対向するエアシリンダ側案内部材30の第4転走面32dとの間に設けられた複数のボール36は、これらの転走面を転動するとともに第4循環穴34dを循環する。
【0029】
上記のとおり、エアシリンダ側案内部材30と各テーブル側案内部材24との間に二列に並ぶ複数のボール36が設けられる構造、すなわち、サーキュラーアークと呼ばれる支持構造によって、スライドテーブル12がエアシリンダ38に支持される。
【0030】
エアシリンダ側案内部材30は、テーブル側案内部材24と同様に、熱処理を施した鋼からなる。第1循環穴34aないし第4循環穴34dが設けられるエアシリンダ側案内部材30は、断面積が大きいので、成形品に対して熱処理を行っても、反りは少ない。
【0031】
エアシリンダ38は、並列に配置された一対のシリンダ室とピストン(いずれも図示せず)を内部に有するシリンダチューブ40を備える。各ピストンに連結されたピストンロッド42の端部は、シリンダチューブ40から外部に延び、エンドプレート44に連結されている。また、スライドテーブル12は、エンドプレート44に連結されている(
図4参照)。
【0032】
図4に示されるように、シリンダチューブ40の上面には、エアシリンダ側案内部材30の下部が嵌合する凹部40aが設けられている。また、シリンダチューブ40には、上下方向に貫通し凹部40aに開口する一対の固定ボルト挿通孔40bが設けられている。固定ボルト46がシリンダチューブ40の下方から固定ボルト挿通孔40bに挿通され、その先端がシリンダチューブ40の凹部40aに嵌合したエアシリンダ側案内部材30の固定ボルト取付孔30cに螺合する。これにより、エアシリンダ側案内部材30がシリンダチューブ40に位置決めされ固定される。
【0033】
シリンダ室にエアが給排されてピストンが駆動されると、スライドテーブル12がピストンと同方向にスライドする。本実施形態では、スライドテーブル12を駆動するためのアクチュエータとしてエアシリンダ38を用いたが、電動モータを用いてもよい。
【0034】
次に、テーブル側案内部材24の真直度の改善方法について説明する。前述のとおり、長尺で断面積が小さいテーブル側案内部材24は、熱処理を行ったときに反りが発生し、真直度が低下している。この反りは、テーブル側案内部材24をスライドテーブル12に取り付ける際の左右方向に湾曲する反りと上下方向に湾曲する反りとに分けることができる。以下、左右方向の反りを矯正する場合と上下方向の反りを矯正する場合のそれぞれについて説明する。
【0035】
(左右方向の反りを矯正する場合)
図6には、スライドテーブル12の第1取付溝20内でテーブル側案内部材24が内側に凸となるように湾曲している様子、すなわち、長手方向中央部が長手方向両端部よりも第1側壁部16の内側面16aから離れるようにテーブル側案内部材24が湾曲している様子が示されている。なお、
図6では、便宜上、テーブル側案内部材24の反りが誇張して描かれている。この反りを矯正するには、スライドテーブル12の第1側壁部16のねじ孔16cに装着された各止めねじ26の先端がテーブル側案内部材24に向けて突出する量を調整すればよい。
【0036】
具体的には、エアシリンダ38のシリンダチューブ40を床面等に固定した状態で、スライドテーブル12の第1側壁部16の外側から第1側壁部16のねじ孔16cに工具の先端を挿入して各止めねじ26を回転せしめ、テーブル側案内部材24の長手方向両端部に近い位置にある止めねじ26の突出量を大きくする。このとき、併せて、テーブル側案内部材24の長手方向中央部に近い位置にある止めねじ26の突出量を上記突出量に合わせるようにしてもよい。
【0037】
テーブル側案内部材24は、外側面24aが複数の止めねじ26によって押圧されると、内側面が複数のボール36との接触点においてボール36から反力を受ける。したがって、上記のように止めねじ26の突出量を調整すれば、テーブル側案内部材24の真直度を改善することができる。すなわち、スライドテーブル12の第1側壁部16の内側面16aを基準として、第1取付溝20内のテーブル側案内部材24の真直度を改善することができる。
【0038】
スライドテーブル12の第1取付溝20内でテーブル側案内部材24が外側に凸となるように湾曲している場合、すなわち、長手方向両端部が長手方向中央部よりも第1側壁部16の内側面16aから離れるようにテーブル側案内部材24が湾曲している場合は、テーブル側案内部材24の長手方向中央部に近い位置にある止めねじ26の突出量を大きくする。このとき、併せて、テーブル側案内部材24の長手方向両端部に近い位置にある止めねじ26の突出量を上記突出量に合わせるようにしてもよい。
【0039】
また、スライドテーブル12の第2取付溝22内でテーブル側案内部材24が内側または外側に凸となるように湾曲している場合は、各止めねじ26の突出量を大きくすればよい。止めねじ26の突出量を全体的に大きくすれば、スライドテーブル12の剛性により第1側壁部16との間隔を維持しようとする第2側壁部18が第2取付溝22内でテーブル側案内部材24を押し付ける力が大きくなる。したがって、第2取付溝22内のテーブル側案内部材24は、第2側壁部18の内側面18aを基準として、その真直度が改善される。
【0040】
(上下方向の反りを矯正する場合)
図7には、スライドテーブル12の第1取付溝20内または第2取付溝22内でテーブル側案内部材24が下側に凸となるように湾曲している様子、すなわち、長手方向中央部が長手方向両端部よりもスライドテーブル12の第1底面14aから離れるようにテーブル側案内部材24が湾曲している様子が示されている。なお、
図7では、便宜上、テーブル側案内部材24の反りが誇張して描かれている。この反りを矯正するには、テーブル側案内部材24をスライドテーブル12に固定する締結ボルト28における締め付け量を大きくすればよい。
【0041】
具体的には、スライドテーブル12の上面に臨む各締結ボルト28の頭部に工具を係合して締結ボルト28を所定方向に回転せしめると、平板部14の締結ボルト挿通孔14dの段部に当接する締結ボルト28の頭部背面と、テーブル側案内部材24の上面24bとの距離が狭まる。これにより、テーブル側案内部材24の上面24bがスライドテーブル12の第1底面14aに圧接し、テーブル側案内部材24の真直度が改善される。すなわち、スライドテーブル12の第1底面14aを基準として、テーブル側案内部材24の真直度が改善される。
【0042】
スライドテーブル12の第1取付溝20内または第2取付溝22内でテーブル側案内部材24が上側に凸となるように湾曲している場合、すなわち、長手方向両端部が長手方向中央部よりもスライドテーブル12の第1底面14aから離れるようにテーブル側案内部材24が湾曲している場合も、同様に、各締結ボルト28による締め付け量を大きくすればよい。
【0043】
テーブル側案内部材24の左右方向の反りおよび上下方向の反りを矯正する方法は、以上のとおりである。左右方向と上下方向の両成分をもつ反りの場合は、止めねじ26による調整と締結ボルト28による締め付けの両者を組み合わせて矯正すればよい。テーブル側案内部材24が長尺で断面積が小さいことは、反りの矯正を容易にしている。テーブル側案内部材24をスライドテーブル12の第1取付溝20または第2取付溝22に組み込むときに反りを矯正する場合、熱処理後のテーブル側案内部材24の反りの状態(反りの向き等)を予め測定しておくとよい。
【0044】
ところで、止めねじ26は、ボール36の予圧を調整する役割も担っている。各止めねじ26の突出量を大きくすれば、ボール36の予圧を大きくすることができ、各止めねじ26の突出量を小さくすれば、ボール36の予圧を小さくすることができるからである。ボール36の予圧の大きさには適正な範囲があり、予圧が適正範囲を下回るとガタが発生し、予圧が適正範囲を上回ると、スライドテーブル12のスライド抵抗が過大となる。
【0045】
ここで、左右各二列のボールを用いたサーキュラーアークと呼ばれる支持構造は、左右各一列のボールを用いたゴシックアーチと呼ばれる支持構造と比べて、ボールの予圧に対するボールの転がり抵抗の特性が格段に良好なものとなっている。すなわち、サーキュラーアークでは、ボールの予圧が増大しても、転がり抵抗はそれほど増加しない。
【0046】
止めねじ26によってテーブル側案内部材24の左右方向の反りを矯正するのに伴って、ボール36の予圧が増大するが、スライドテーブル12がサーキュラーアークによってエアシリンダ38に支持されているので、ボール36の予圧が増大しても、スライドテーブル12のスライド抵抗の増加を可及的に抑制することができる。
【0047】
本実施形態に係るリニアガイド機構によれば、テーブル側案内部材24の真直度を止めねじ26および締結ボルト28により改善することができるので、熱処理後のテーブル側案内部材24に研削加工を行う必要がなく、スライドテーブル12がスライドするときのガタを無くすことができる。
【0048】
また、テーブル側案内部材24は、ボール36の循環溝を備えておらず、長尺で断面積が小さい部材であるから、止めねじ26および締結ボルト28によるテーブル側案内部材24の真直度を容易に改善することができる。
【0049】
本発明に係るリニアガイド機構およびリニアアクチュエータは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
10…リニアアクチュエータ 12…スライドテーブル(移動ブロック)
16…第1側壁部(側壁部) 16c…ねじ孔
24…テーブル側案内部材(移動ブロック側案内部材)
24a…外側面 26…止めねじ
28…締結ボルト
30…エアシリンダ側案内部材(アクチュエータ側案内部材)
34a~34d…第1~第4循環穴(循環穴)
36…ボール 38…エアシリンダ(アクチュエータ)