IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特許-体温計測装置、及び体温計測方法 図1
  • 特許-体温計測装置、及び体温計測方法 図2
  • 特許-体温計測装置、及び体温計測方法 図3
  • 特許-体温計測装置、及び体温計測方法 図4
  • 特許-体温計測装置、及び体温計測方法 図5
  • 特許-体温計測装置、及び体温計測方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】体温計測装置、及び体温計測方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20241210BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B5/01 350
G01J5/48 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020212084
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098605
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】石渡 忠司
(72)【発明者】
【氏名】土屋 圭二
(72)【発明者】
【氏名】中明 靖文
(72)【発明者】
【氏名】林 啓太
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0153871(US,A1)
【文献】特開平10-160580(JP,A)
【文献】特開2005-148038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者の赤外線画像を撮像する赤外線カメラと、
前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出した露出部の露出部温度を測定する露出部温度測定部と、
前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出していない非露出部の非露出部温度を測定する非露出部温度測定部と、
前記測定対象者がいる測定環境の環境温度を測定する環境温度測定部と、
前記露出部温度、前記非露出部温度、及び前記環境温度に基づいて、前記測定対象者の体温を算出する体温算出部と、を備え
前記体温算出部が、予め測定された馴化曲線のデータを参照して前記体温を算出し、
前記馴化曲線が、前記露出部温度と前記非露出部温度の時間変化のデータを含み、
前記体温算出部が、前記馴化曲線に基づいて前記露出部温度を前記測定環境に馴化した後の温度に補正することで、前記体温を算出する体温計測装置。
【請求項2】
環境温度を変えて測定された複数の前記馴化曲線のデータを記憶するデータ記憶部をさらに備え、
前記非露出部温度から推定された外気温と、前記環境温度との温度差に応じた前記馴化曲線を参照して、前記体温を算出している請求項に記載の体温計測装置。
【請求項3】
前記環境温度と前記非露出部との温度差が閾値以上の場合、所定時間経過後に前記赤外線カメラが前記赤外線画像を再度撮像し、
再度撮像された前記赤外線画像に基づいて、前記露出部温度、及び前記非露出部温度が測定されている請求項1に記載の体温計測装置。
【請求項4】
赤外線カメラを用いて、測定対象者の赤外線画像を撮像するステップと、
前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出した露出部の露出部温度を測定するステップと、
前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出していない非露出部の非露出部温度を測定するステップと、
前記測定対象者がいる測定環境の環境温度を測定するステップと、
前記露出部温度、前記非露出部温度、及び前記環境温度に基づいて、前記測定対象者の体温を算出するステップと、を備え
前記体温を算出するステップでは、
予め測定された馴化曲線のデータを参照し、
前記馴化曲線に基づいて前記露出部温度を前記測定環境に馴化した後の温度に補正することで、前記体温を算出し、
前記馴化曲線が、前記露出部温度と前記非露出部温度の時間変化のデータを含んでいる体温計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体温計測装置、及び体温計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルスなどの感染症患者が、体調がすぐれない状態において無理して行動し、無自覚のうちに感染を拡大させているという問題が発生している。感染症患者数の急激な増加により大きな医療的負荷が病院等へ掛かると、医療崩壊に繋がる懸念があるため、オフィスやスポーツジム、商業施設等における不特定多数が利用する施設では、生体状況を計測するシステムが設置されている。例えば、施設の入口等に、赤外線カメラを用いた体表面温度測定装置が設置されている。
【0003】
特許文献1には、監視領域を撮像する赤外線カメラを備えた赤外線監視システムが開示されている。特許文献1のシステムは、赤外線画像における、背景領域とは異なる温度変化領域を検出する手段を備えている。そして、温度計測範囲が、背景領域の最低温度と最高温度とで定まる範囲となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-38217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FIR(Far Infrared Rays)カメラなどの赤外線カメラでは、被写体の表面から放出される赤外線を検出することで、温度分布を測定している、このような赤外線カメラを用いた場合、体温を精度良く計測することができない場合がある。例えば、施設内の室内温度と施設外の外気温との差が大きい場合、体表面温度と、体温との差が大きくなる。FIRカメラは体表面から放出される赤外線を検出しているため、測定精度にばらつきが生じる。
【0006】
特に、室内温度に対して、外気温が非常に低い場合、体表面温度と深部温度との温度差が大きくなる。体表面温度を測定する赤外線カメラが用いられている場合、測定誤差が大きくなってしまう。
【0007】
本開示は上記の点に鑑みなされたものであり、体温を精度良く計測することができる体温計測装置、及び体温計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態にかかる体温計測装置は、測定対象者の赤外線画像を撮像する赤外線カメラと、前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出した露出部の露出部温度を測定する露出部温度測定部と、前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出していない非露出部の非露出部温度を測定する非露出部温度測定部と、前記測定対象者がいる環境環境の環境温度を測定する環境温度測定部と、前記露出部温度、前記非露出部温度、及び前記環境温度に基づいて、前記測定対象者の体温を算出する体温算出部と、を備えている。
【0009】
本実施形態にかかる体温計測方法は、赤外線カメラを用いて、測定対象者の赤外線画像を撮像するステップと、前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出した露出部の露出部温度を測定するステップと、前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者の皮膚が露出していない非露出部の非露出部温度を測定するステップと、前記赤外線画像に基づいて、前記測定対象者がいる測定環境の環境温度を測定するステップと、前記露出部温度、前記非露出部温度、及び前記環境温度に基づいて、前記測定対象者の体温を算出するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、体温を精度良く計測することができる体温計測装置、及び体温計測方法を提供することを目的とする
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】体温計測装置の構成を示すブロック図である。
図2】赤外線カメラで撮像された赤外線画像を示す模式図である。
図3】馴化曲線の一例を示す図である。
図4】馴化曲線の一例を示す図である。
図5】馴化曲線の一例を示す図である。
図6】体温計測方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
【0013】
本実施の形態にかかる体温計測装置、及び体温計測方法について、図1、及び図2を参照に説明する。図1は、体温計測装置100の構成を示すブロック図である。図2は、赤外線カメラ1が撮像した赤外線画像の一例を示す図である。例えば、施設の入口など検温エリアに設けられており、この検温エリアに体温計測装置100が設置されている。
【0014】
体温計測装置100は、入力部10、データ記憶部5、体温算出部6、出力部7を備えている。入力部10は、赤外線カメラ1、露出部温度測定部2、非露出部温度測定部3、環境温度測定部4を備えている。
【0015】
赤外線カメラ1は、測定対象者Pの赤外線画像Fを撮像する。例えば、施設の入口に設置された赤外線カメラ1が、施設への入館者を撮像する。赤外線カメラ1は、カメラフレーム内の被写体から発生される赤外線を検出するマイクロボロメータを備えている。マイクロボロメータの出力は、電気信号へ変換されて映像化されることで、赤外線画像Fが生成される。赤外線画像Fは、体温算出部6に入力される。
【0016】
赤外線カメラ1は、FIRカメラなどのサーモグラフィであり、非接触で被写体の温度分布を測定することができる。ここでは、赤外線カメラ1が測定対象者Pを正面から撮像している。赤外線画像Fは、測定対象者Pの頭部及び上半身が含まれている。
【0017】
露出部温度測定部2は、測定対象者Pの皮膚が露出した露出部A1の露出部温度を測定する。ここで、露出部A1は、露出していない部分を含んでもよい。露出部温度測定部2は、測定した露出部温度を体温算出部6に伝送する。特に好適な皮膚表面の場所は、額、目頭、耳等の顔部分である。図2に示すように、露出部A1は、測定対象者Pの額、目頭、耳等の顔部分を含んでいる。あるいは、露出部A1は測定対象者Pの首を含んでいてもよい。また、図2では、露出部A1が顔部分を含む矩形状となっているが、顔の形状となっていても良い。
【0018】
例えば、露出部温度測定部2は、赤外線画像Fに対して、顔認識などの画像処理を行う。そして、露出部温度測定部2は、顔認識エリア内のマイクロボロメータのピークを捉えて、露出部温度とする。露出部温度は、測定対象者Pの皮膚表面の温度(体表面温度ともいう)を示す。ここでは、露出部温度測定部2は、露出部A1において最も温度が高い部分の温度を露出部温度として測定している。露出部A1においても最も体表面温度が高い部分は人によって異なるが、例えば、額、目頭、口元、耳である。
【0019】
非露出部温度測定部3は、赤外線画像Fに基づいて、測定対象者Pの皮膚が露出していない非露出部A2の非露出部温度を測定する。非露出部温度測定部3は、測定した非露出部温度を体温算出部6に伝送する。
【0020】
非露出部A2は、例えば、測定対象者Pの髪、衣服などである。非露出部温度測定部3は、顔認識部の上部1/4のエリアを髪部と想定して、非露出部A2Uとする。さらに、非露出部温度測定部3は、顔認識エリアの下部を衣服と想定して、非露出部A2Dとする。非露出部温度測定部3は、非露出部A2Uと非露出部A2Dの出力値を比較して、最も温度が低い部分を非露出部温度とする。非露出部温度は外気温に相当するものである。つまり、施設に入った直後の人の非露出部A2の温度が外気温に相当している。非露出部A2は、皮膚以外の部分である。例えば、非露出部A2は、髪、衣服、靴等できるだけ多くの人が共通して持つ部分や物にすることが望ましい。
【0021】
環境温度測定部4は、測定対象者Pがいる環境の環境温度を測定する。環境温度測定部4は、測定した環境温度を体温算出部6に伝送する。例えば、赤外線カメラ1に搭載された温度センサが、検温エリアの温度を検出する。あるいは、環境温度測定部4は、赤外線カメラ1とは別個に設けられた温度センサを有していてもよい。そして、温度センサが、検温エリアの室温を環境温度として測定する。もちろん、環境温度は、赤外線画像Fに基づいて、環境温度を測定してもよい。つまり、環境温度測定部4は、赤外線画像Fの測定対象者P等の人物以外の部分の温度を環境温度として測定してもよい。あるいは、環境温度測定部4は、エアコンなどに設けられた温度センサの温度データをデータ通信により、取得してもよい。
【0022】
データ記憶部5は、馴化曲線のデータを記憶している。馴化曲線のデータは、体表面温度の馴化度合いを数値化したデータである。図3は、馴化曲線の一例を示すグラフである。図3では、横軸が経過時間であり、縦軸が温度となっている。図3は、露出部温度T1と非露出部温度T2が測定環境に馴化していくときの時間変化を示している。入室時の時間を0分とし、時間の経過に従って、露出部温度T1と非露出部温度T2が徐々に上昇している。
【0023】
体温算出部6は、露出部温度、非露出部温度、及び環境温度に基づいて、測定対象者Pの体温を算出する。測定対象者Pが、測定空間と温度差がある別空間から、測定空間に移動してきた場合、体表面温度と体温とにずれが生じている。例えば、施設内に暖房が動作していると、施設外の外気温は施設内の測定空間の室温に比べて極めて低くなる。この場合、体表面温度と体温との間の温度差が大きくなる。体温算出部6は、測定対象者Pの体表面温度が、外気温から測定環境の室温に馴化していく特性を用いて、体温を算出している。体温算出部6での算出方法については、後述する。
【0024】
体温算出部6は、算出した体温を出力部7に出力する。出力部7は、測定対象者Pの体温を外部装置に出力する。外部装置は、例えば、体温を表示可能なモニタなどである。あるいは、外部装置は、体温を音声として出力するスピーカであってもよい。体温が基準範囲の上限値以上の場合、外部装置がアラームや警告メッセージを出力してもよい。
【0025】
以下、体温算出部6の処理の一例について、説明する。ここでは、体温算出部6がデータ記憶部5に記憶されている馴化曲線のデータを参照して、測定対象者Pの体温を算出している。
【0026】
馴化曲線は、図3に示すように、露出部温度T1と非露出部温度T2が測定環境の温度に馴化していくときの時間変化のデータである。外気温10℃の室外から、環境温度25℃の室内へ入ってきた場合について考える。入室直後の時間が図3の経過時間0となる。非露出部A2は例えば衣服などの外気の曝されている部分であるため、入室直後において、非露出部温度T2は、ほぼ外気温と等しい温度となっている。図3の経過時間0での非露出部温度T2が外気温に相当する。入室直後に赤外線カメラ1が赤外線画像Fを撮像している。露出部温度測定部2が測定した露出部温度が経過時間0での露出部温度T1に対応している。非露出部温度測定部3が測定した露出部温度が経過時間0での非露出部温度T2に対応している
【0027】
非露出部温度T2は、一定の時間をかけて環境温度に馴化していく。図3では、約10分後に、非露出部温度T2が外気温10℃から室温である環境温度25℃まで上昇する。一方、露出部温度T1は、入室直後であっても、人間の体温(発熱)により外気温には一致せず、あるオフセット値を持っている。つまり、露出部温度T1は、非露出部温度T2よりも高くなっている。ここでは、入室直後の露出部温度T1は約24℃程度となっている。そして、露出部温度T1は、時間経過とともに測定すべき体温へと馴化していく。
【0028】
露出部温度T1の馴化時間は、外気温と環境温度の差が大きいほど長くなる。その特性を用いて、体温算出部6は、測定された露出部温度と、非露出部温度と、環境温度とから、体温を推定する。例えば、測定した非露出部温度と環境温度との温度差を求める。そして、体温算出部6は、この温度差に応じた馴化曲線から、馴化時間を推定する。体温算出部6は、測定した露出部温度が馴化時間経過後に上昇した温度を体温とする。つまり、体温算出部6は、露出部温度の測定値が測定環境に馴化したときに到達する温度を体温として推定する。馴化時間経過後に、露出部温度T1、及び非露出部温度T2の温度がほぼ一定となる。つまり、馴化時間経過後の露出部温度T1、及び非露出部温度T2の温度上昇が飽和する。
【0029】
外気温と環境温度との温度差がある所定値S以上の場合は、体温算出部6が、馴化曲線を参照して、体温を算出する。つまり、体温算出部6が、露出部温度を測定環境に馴化した後の温度に補正することで、体温を算出する。このようにすることで、より高精度な体温計測を実現することができる。なお、外気温と環境温度との温度差が小さい場合、露出部温度を体温としてもよい。
【0030】
このように、体温算出部6は、馴化曲線のデータを参照して、露出部温度から体温を推定している。体温算出部6は、馴化曲線を参照し、体表面温度を馴化後の温度に補正することで、体温を算出している。このようにすることで、精度よく体温を測定することができる。
【0031】
また、環境温度と、非露出部温度から推定された外気温との温度差が所定の閾値より大きい場合、体温を高い精度で算出することが困難となる。ここで、所定の閾値は、前述の所定値Sより大きい。このような場合、出力部7が測定対象者Pに対して、所定時間経過後に再測定を行うように促してもよい。例えば、出力部7が外部装置を通じて、測定エラーが発生したことを出力する。
【0032】
そして、所定時間経過後に赤外線カメラ1が赤外線画像を再度撮像する。そして、再度撮像された赤外線画像に基づいて、露出部温度測定部2、及び非露出部温度測定部3が露出部温度、及び非露出部温度を測定する。体温算出部6は、再測定された露出部温度、及び非露出部温度に基づいて、体温を算出する。このようにすることで、より高い精度で体温を計測することができる。
【0033】
具体的には、外気温と環境温度との温度差が15℃以上ある場合、体温計測装置100が、再測定を行うようにしてもよい。この場合、出力部7が外部装置のモニタを通じて、測定対象者Pに1分間の待機時間を提示する。そして、1分間経過した後に撮像された赤外線画像に基づいて、体温計測装置100が、体温を計測する。また、最初に撮像した赤外線画像と、再度撮像された赤外線画像の撮像時間の時間差に応じて、体温算出部6が適切な馴化曲線を選択してもよい。もちろん、温度差の閾値は15℃に限られるものではない。また、待機時間も1分に限られるものではない。
【0034】
なお、図1に示した体温計測装置100は、単一の装置となっていなくてもよい。例えば、赤外線カメラ1と、演算処理を行う体温算出部6とが物理的に異なる装置に分散されていてもよい。さらに、体温算出部6は、ネットワークを介してデータ記憶部5にアクセスしてもよい。
【0035】
上記の説明では、露出部温度と非露出部温度の測定値は、図3の馴化曲線の経過時間0での温度に対応していたが、経過時間0以外の時間の温度に対応していてもよい。例えば、測定場所と施設入口とが離れている場合等は、馴化曲線において、露出部温度と非露出部温度の測定時間を経過時間0以外の時間としてもよい。
【0036】
このとき、露出部温度と非露出部温度の温度差が、馴化曲線においてどの経過時間に相当するかを読み取ることで、経過時間を推定できる。例えば、露出部温度と非露出部温度の温度差が10℃の場合、図3のT1とT2の差が10℃となる経過時間を、推定した経過時間とする。
【0037】
本実施の形態では、様々な状況に応じた馴化曲線を予め測定されていることが好ましい。例えば、測定環境の環境温度と、外気温との温度差を変えて、馴化曲線を測定しておく。馴化曲線の温度は、赤外線画像に基づいて測定されていてもよく、他の温度センサで測定されていても良い。データ記憶部5は複数の馴化曲線を記憶する。体温算出部6は、複数の馴化曲線の中から、非露出部温度と環境温度との測定値の温度差に適した馴化曲線を選択する。あるいは、体温算出部6が、データ補間により馴化曲線を求めてもよい。また、環境温度、露出部温度、及び非露出部温度の測定値に基づいて、体温を算出する算出式を求めてよい。算出式は、多項式などで近似して求めることができる。
【0038】
図4,及び図5は、馴化曲線の別の例を示すグラフである。図4は、測定環境の環境温度が25℃で、外気温が0℃の時の馴化曲線を示す。図4に示すように、環境温度よりも外気温が極端に低い場合であっても、非露出部温度T2は、急速に上昇する。よって、体温計測装置100が最初の測定の後、1分程度経過した後に再度撮像された赤外線画像を用いることで、精度よく体温を計測することができる。また、環境温度よりも外気温(非露出部温度)が極端に低いか否かを判定し、判定が真の場合にはすぐに測定せず、1分経過後に最初の測定をしてもよい。
【0039】
図5は、測定環境の環境温度が25℃で外気温が35℃のときの馴化曲線を示す。外気温が環境温度よりも高い場合でも、時間経過とともに、非露出部温度T2が、環境温度に馴化していく。つまり、非露出部温度T2が環境温度まで、徐々に下がっていく。また、露出部温度T1も時間経過とともに減少していき、体温と同等の温度に馴化していく。
【0040】
図5に示すように外気温が環境温度よりも高い場合の馴化曲線を用意しておくことで、様々な状況でも測定精度を高くすることができる。つまり、測定環境で冷房が動作しているような場合であっても、体温を正確に計測することができる。
【0041】
本実施の形態にかかる体温計測方法について、図6を用いて説明する。図6は、体温計測方法を示すフローチャートである。体温計測装置100は、赤外線カメラ1を用いて、測定対象者Pの赤外線画像Fを撮像する(S101)。つぎに、赤外線画像Fに基づいて、露出部温度測定部2が、測定対象者の皮膚が露出した露出部の露出部温度を測定する(S102)。つまり、赤外線カメラ1の赤外線画像Fに基づいて、露出部温度測定部2が、人の体表面温度である露出部温度を測定する。
【0042】
赤外線画像Fに基づいて、非露出部温度測定部3が、測定対象者Pの皮膚が露出していない非露出部の非露出部温度を測定する(S103)。非露出部温度測定部3が、赤外線画像Fにおいて、皮膚以外の部分を非露出部として、非露出部温度を測定する。非露出部温度測定部3で測定された非露出部温度により外気温を推定することができる。
【0043】
環境温度測定部4が、測定対象者Pがいる環境の環境温度を測定する(S104)。体温算出部6が、環境温度と非露出部温度との温度差が閾値以上である否かを判定する(S105)。非露出部温度は、上記のように外気温に相当する。温度差が閾値以上である場合(S105のYES)、赤外線カメラ1が赤外線画像を再度撮像する。例えば、上記のように、出力部7が再測定を促すことで、所定時間悔過後の赤外線画像Fが撮像される。これにより、再度、露出部温度、非露出部温度、及び環境温度が測定される。
【0044】
温度差が閾値以上でない場合(S105のNO)、体温算出部6が、露出部温度、非露出部温度、及び環境温度に基づいて、測定対象者Pの体温を算出する(S106)。ここでは、上記のように、体温算出部6が、データ記憶部5に記憶された馴化曲線のデータを参照して、体温を算出する。
【0045】
このようにすることで、精度よく体温を計測することができる。なお、ステップS102~ステップS104の測定順は特に限定されるものではない。例えば、環境温度の測定後に、非露出部温度と露出部温度が測定されていてもよい。また、環境温度、非露出部温度、露出部温度の測定は、実質的に同時に行われていてもよい。また、ステップS105は省略してもよい。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記の実施の形態の2つ以上を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 体温計測装置
10 入力部
1 赤外線カメラ
2 露出部温度測定部
3 非露出部温度測定部
4 環境温度測定部
5 データ記憶部
6 体温算出部
7 出力部
8 外部装置
F 赤外線画像
P 測定対象者
A1 露出部
A2 非露出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6