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特許7600681液体吐出ヘッド制御回路、及び液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド制御回路、及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020217009
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102337
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐弘
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150567(JP,A)
【文献】特開2006-212946(JP,A)
【文献】特開2020-185747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0226054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号に基づいて駆動することでノズルから液体を吐出させる駆動素子と、前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かを切り替える切替回路と、を有する液体吐出ヘッドを制御する液体吐出ヘッド制御回路であって、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記切替回路を制御する切替制御回路と、
を備え、
前記切替制御回路は、
前記ノズルから吐出される液体によって媒体にドットを形成するドット形成周期を規定する周期タイミング信号と、
前記ノズルから吐出される液体の量を規定する吐出制御信号と、
前記切替回路の切り替えタイミングを規定する切替タイミング信号と、
前記切替タイミング信号により規定される制御期間における前記切替回路の状態と前記吐出制御信号との関係を規定する状態選択信号と、
を出力し、
前記ドット形成周期において前記ノズルから液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドを制御する第1期間における前記状態選択信号と、前記ドット形成周期において前記ノズルから液体が吐出されないように前記液体吐出ヘッドを制御する第2期間における前記状態選択信号とは異なる、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド制御回路。
【請求項2】
前記状態選択信号は、nビットの第1データとnビットの第2データとを含み、
前記切替制御回路は、前記第2期間において前記第1データと前記第2データとが同じ前記状態選択信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド制御回路。
【請求項3】
前記第1データのnビットの論理レベルは、前記第2期間において全て同じである、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド制御回路。
【請求項4】
前記切替タイミング信号は、前記切替回路が前記第1データに基づいて前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かの切り替えを実行するのか、前記第2データに基づいて前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かの切り替えを実行するのか、の切り替えタイミングを規定する、
ことを特徴とする請求項2乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド制御回路。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは、前記液体吐出ヘッドに関する情報が記憶された記憶回路を有し、
前記切替制御回路は、
前記第1期間において前記周期タイミング信号、前記吐出制御信号、前記切替タイミング信号、及び前記状態選択信号の少なくとも1つを用いて前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出を制御し、
前記第2期間において前記周期タイミング信号、前記吐出制御信号、前記切替タイミング信号、及び前記状態選択信号の少なくとも1つを用いて前記記憶回路への前記情報の記憶、及び前記記憶回路からの前記情報の読み出しを制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド制御回路。
【請求項6】
駆動信号に基づいて駆動することでノズルから液体を吐出させる駆動素子と、前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かを切り替える切替回路と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを制御する液体吐出ヘッド制御回路と、
を備え、
前記液体吐出ヘッド制御回路は、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記切替回路を制御する切替制御回路と、
を備え、
前記切替制御回路は、
前記ノズルから吐出される液体によって媒体にドットが形成されるドット形成周期を規定する周期タイミング信号と、
前記ノズルから吐出される液体の量を規定する吐出制御信号と、
前記切替回路の切り替えタイミングを規定する切替タイミング信号と、
前記切替タイミング信号により規定される制御期間における前記切替回路の状態と前記吐出制御信号との関係を規定する状態選択信号と、
を出力し、
前記ドット形成周期において前記ノズルから液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドを制御する第1期間における前記状態選択信号と、前記ドット形成周期において前記ノズルから液体が吐出されないように前記液体吐出ヘッドを制御する第2期間における前記状態選択信号とは異なる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド制御回路、及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置としては、液体吐出ヘッドに設けられた圧電素子を含む駆動素子を駆動信号により駆動し、駆動素子の駆動によりキャビティーに充填されたインク等の液体をノズルから吐出させることで、媒体上に文字や画像を形成する所謂圧電方式の液体吐出装置が知られている。
【0003】
このような液体吐出装置には、液体吐出ヘッドから吐出される液体の量を規定する情報を液体吐出ヘッドの駆動を制御する液体吐出ヘッド制御回路から出力することで、使用する液体吐出ヘッドや当該液体吐出ヘッドから吐出されるインクの特性に応じて設定、変更が可能な構成が知られている。例えば、特許文献1には、ノズルから吐出される吐出パターンをプリンタコントローラ(液体吐出ヘッド制御回路)からプリントヘッド(液体吐出ヘッド)へ伝送することで、印刷周期内でインク色ごとに吐出量の制御を可能としたインクジェット式プリンターが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、液体吐出装置が有する液体吐出ヘッドが、当該液体吐出ヘッドの状態を診断する診断回路を有し、液体吐出ヘッドは、診断回路に入力されるラッチ信号LAT、チェンジ信号CHa、クロック信号SCK、及び印刷データ信号SIに基づいて自己診断を行う液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-001824号公報
【文献】特開2020-104507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載される自己診断のような液体の吐出以外の制御を液体吐出ヘッドに実行させる液体吐出ヘッド制御回路、及び液体吐出装置に対して、特許文献1に記載のされるようなノズルから吐出される吐出パターンを液体吐出ヘッド制御回路から液体吐出ヘッドに伝送することでノズルから吐出される吐出パターンを制御する機能を搭載した場合、液体の吐出以外の制御を実行させるための信号と、ノズルから吐出される吐出パターンを規定するための信号とが共通の信号であるが故に、液体吐出装置に誤動作が生じるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体吐出ヘッド制御回路の一態様は、
駆動信号に基づいて駆動することでノズルから液体を吐出させる駆動素子と、前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かを切り替える切替回路と、を有する液体吐出ヘッドを制御する液体吐出ヘッド制御回路であって、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記切替回路を制御する切替制御回路と、
を備え、
前記切替制御回路は、
前記ノズルから吐出される液体の量を規定する吐出制御信号と、
前記切替回路の切り替えタイミングを規定する切替タイミング信号と、
前記切替タイミング信号により規定される制御期間における前記切替回路の状態を規定する状態選択信号と、
を出力し、
前記ノズルから液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドを制御する第1期間における前記状態選択信号と、前記ノズルから液体が吐出されないように前記液体吐出ヘッドを制御する第2期間における前記状態選択信号とは異なる。
【0008】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
駆動信号に基づいて駆動することでノズルから液体を吐出させる駆動素子と、前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かを切り替える切替回路と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを制御する液体吐出ヘッド制御回路と、
を備え、
前記液体吐出ヘッド制御回路は、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記切替回路を制御する切替制御回路と、
を備え、
前記切替制御回路は、
前記ノズルから吐出される液体の量を規定する吐出制御信号と、
前記切替回路の切り替えタイミングを規定する切替タイミング信号と、
前記切替タイミング信号により規定される制御期間における前記切替回路の状態を規定する状態選択信号と、
を出力し、
前記ノズルから液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドを制御する第1期間における前記状態選択信号と、前記ノズルから液体が吐出されないように前記液体吐出ヘッドを制御する第2期間における前記状態選択信号とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体吐出装置の概略構成を示す図である。
図2】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図3】吐出部の概略構成を説明するための図である。
図4】駆動信号選択回路の構成を示す図である。
図5】選択制御回路の電気構成を示す図である。
図6】ラッチ信号、チェンジ信号、クロック信号、及びヘッド制御信号について説明するための図である。
図7】ヘッド制御信号のデータ構成の一例を示す図である。
図8】デコーダーのデコード内容を示す図である。
図9】吐出部の1個に対応する選択回路の構成を示す図である。
図10】駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。
図11】吐出制御期間に制御機構10が出力するヘッド制御信号DIの一例を示す図である。
図12】吐出制御期間における選択制御回路210aが有するデコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
図13】吐出制御期間における選択制御回路210bが有するデコーダーにおけるデコード内容を示す図である。
図14図12,13に示す選択信号Sa,Sbが供給された場合の選択回路の動作を説明するための図である。
図15】制御機構が記憶回路に記憶されている情報を取得する際の動作の一例を示す図である。
図16】非吐出制御期間に制御機構が出力するヘッド制御信号DIA,DIBの一例を示す図である。
図17】非吐出制御期間における選択制御回路210aが有するデコーダー226におけるデコード内容を示す図である。
図18】非吐出制御期間における選択制御回路210bが有するデコーダー226におけるデコード内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.液体吐出装置の概要
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態における液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを吐出する液体吐出ヘッド21が搭載されたキャリッジ20が往復動し、搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに対して画像を形成するシリアル印刷方式のインクジェットプリンターを例示して説明を行う。以下の説明では、キャリッジ20が移動する方向をX方向、媒体Pが搬送される方向をY方向、インクが吐出される方向をZ方向として説明する。なお、X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向として説明を行うが、液体吐出装置1を構成する各種構成が直交して設けられていることに限るものではない。また、媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。なお、液体吐出装置1は、媒体の幅以上にノズル列が形成されるように液体吐出ヘッド21が並設され、搬送される媒体に対して液体吐出ヘッド21からインクを吐出することで、媒体に対して所望の画像を形成する所謂ライン印刷方式のインクジェットプリンターであってもよい。
【0012】
図1に示すように液体吐出装置1は、インク容器2、制御機構10、キャリッジ20、移動機構30、及び搬送機構40を備える。
【0013】
インク容器2には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。インク容器2に貯留されるインクの色彩としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グレー等が挙げられる。このようなインクが貯留されるインク容器2としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0014】
制御機構10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、液体吐出ヘッド21を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0015】
キャリッジ20には、液体吐出ヘッド21が搭載されている。また、キャリッジ20は、移動機構30に含まれる無端ベルト32に固定される。なお、インク容器2は、キャリッジ20に搭載されていてもよい。
【0016】
液体吐出ヘッド21には、制御機構10が出力する液体吐出ヘッド21を制御するための制御信号Ctrl-H、及び液体吐出ヘッド21を駆動するための1又は複数の駆動信号COMが入力される。そして、液体吐出ヘッド21は、入力される制御信号Ctrl-H、及び駆動信号COMに基づいて、インク容器2から供給されるインクを吐出する。
【0017】
移動機構30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモ
ーター31は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ20がX方向に往復動する。
【0018】
搬送機構40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、搬送モーター41の動作に従って回転する。この搬送ローラー42の回転に伴って媒体PがY方向に搬送される。
【0019】
以上のように液体吐出装置1は、搬送機構40による媒体Pの搬送と移動機構30によるキャリッジ20の往復動とに連動して、キャリッジ20に搭載された液体吐出ヘッド21がZ方向に沿ってインクを吐出することで、媒体Pの表面の任意の位置にインクが着弾し、媒体Pに所望の画像が形成される。
【0020】
2.液体吐出装置の機能構成
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図2に示すように液体吐出装置1は、制御機構10、液体吐出ヘッド21、キャリッジモーター31、搬送モーター41、及びリニアエンコーダー90を備える。
【0021】
制御機構10は、駆動回路50、及び制御回路100を含む。制御回路100は、例えば、マイクロコントローラー等のプロセッサーを含む。そして、制御回路100は、外部と通信可能に接続されたホストコンピューター等から入力される画像データ等の各種信号に基づいて、液体吐出装置1を制御するための各種データや当該データに基づく信号を生成し対応する構成に出力する。
【0022】
制御回路100の動作の具体例について説明する。制御回路100は、リニアエンコーダー90から入力される検出信号に基づいて、キャリッジ20に搭載された液体吐出ヘッド21の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、液体吐出ヘッド21の走査位置に応じた各種信号を生成し出力する。詳細には、制御回路100は、液体吐出ヘッド21の往復動を制御するための制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、キャリッジモーター31に入力されてもよく、同様に、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0023】
また、制御回路100は、ホストコンピューターから入力される画像データ等の各種信号と液体吐出ヘッド21の走査位置とに基づいて、液体吐出ヘッド21を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、ヘッド制御信号DIA,DIB、チェンジ信号CHA,CHB、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、液体吐出ヘッド21に出力する。
【0024】
また、制御回路100は、駆動回路50にデジタル信号である基駆動信号dA,dBを出力する。
【0025】
駆動回路50は、駆動信号出力回路51と基準電圧信号出力回路52とを含む。基駆動信号dA,dBは、駆動信号出力回路51に入力される。駆動信号出力回路51は、基駆動信号dA,dBのそれぞれをデジタル/アナログ信号変換したのち、変換されたアナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMとしての駆動信号COMA,COMBを生成
し出力する。すなわち、基駆動信号dAは、駆動信号COMAの波形を規定するデジタル信号であり、基駆動信号dBは、駆動信号COMBの波形を規定するデジタル信号である。そして、駆動信号出力回路51は、基駆動信号dAで規定された波形をD級増幅することで駆動信号COMAを生成し出力するとともに、基駆動信号dBで規定された波形をD級増幅することで駆動信号COMBを生成し出力する。すなわち、駆動信号出力回路51は、2組のD級増幅回路を含む。なお、基駆動信号dA,dBは、駆動信号COMA,COMBの波形を規定することができる信号であればよく、例えば、アナログ信号であってもよい。また、駆動信号出力回路51は、基駆動信号dA,dBのそれぞれが規定する波形を増幅できればよく、例えば、A級増幅回路、B級増幅回路又はAB級増幅回路等を含んで構成されてもよい。
【0026】
基準電圧信号出力回路52は、駆動信号COMA,COMBの基準電位を示す基準電圧信号VBSを出力する。基準電圧信号VBSは、例えば、電圧値が0Vのグラウンド電位の信号であってもよく、電圧値が5.5Vや6V等の直流電圧の信号であってもよい。
【0027】
そして、駆動回路50が出力する駆動信号COMA,COMB、及び基準電圧信号VBSは、液体吐出ヘッド21に出力される。
【0028】
液体吐出ヘッド21は、駆動信号選択回路200、記憶回路250、及び吐出部600[1]~600[m]を含む。なお、吐出部600[1]~600[m]はいずれも同じ構成であり、区別する必要がない場合、単に吐出部600と称する場合がある。
【0029】
記憶回路250には、液体吐出ヘッド21に関する情報が記憶されている。具体的には、記憶回路250には、液体吐出ヘッド21がインクを吐出した媒体Pの吐出面数、液体吐出ヘッド21が制御機構10に接続されてからの経過期間等の液体吐出ヘッド21の使用状況に関する情報や、液体吐出ヘッド21の製造ロット、吐出部600等の初期特性に関する情報、さらに、液体吐出ヘッド21が有する吐出部600の特性のばらつき、また当該ばらつきに対応する補正値等、液体吐出ヘッド21の駆動精度を高めるための情報等の各種情報が記憶されている。
【0030】
このような記憶回路250には、ヘッド制御信号DIA、チェンジ信号CHA、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKが供給される。そして、記憶回路250は、ヘッド制御信号DIA、チェンジ信号CHA、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKに基づいて伝送される情報を記憶するともに、ヘッド制御信号DIA、チェンジ信号CHA、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKに基づいて要求された情報を、読出情報MIとして制御機構10が有する制御回路100に出力する。
【0031】
駆動信号選択回路200は、例えば、集積回路装置として構成されている。駆動信号選択回路200のそれぞれには、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、ヘッド制御信号DIA,DIB、及び駆動信号COMA,COMBが入力される。そして、駆動信号選択回路200は、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、及び入力されるヘッド制御信号DIA,DIBに基づいて、駆動信号COMA,COMBを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成し、対応する吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに出力する。なお、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を区別する必要がない場合、単に駆動信号VOUTと称する場合がある。
【0032】
吐出部600は、駆動信号VOUTが供給される圧電素子60を有する。図3は、吐出部600の概略構成を説明するための図である。図3に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズル651を含む。キャビティ
ー631には、リザーバー641からインクが供給されるインクが充填している。また、リザーバー641には、インク容器2から供給口661を経由してインクが導入される。
【0033】
振動板621は、図3において上面に設けられた圧電素子60の駆動によって変位する。そして、振動板621の変位に伴って、インクが充填されるキャビティー631の内部容積が拡大、縮小する。すなわち、振動板621は、キャビティー631の内部容積を変化させるダイヤフラムとして機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられ開口部であって、キャビティー631と連通している。そして、キャビティー631の内部容積が変化することで、内部容積の変化に応じた量のインクが、キャビティー631に導入されるとともに、ノズル651から吐出される。
【0034】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,電極612で挟んだ構造である。そして、圧電素子60の電極611には駆動信号VOUTが供給され、電極612には、基準電圧信号VBSが供給されることで、圧電体601は、電極611,電極612により供給された電圧の電位差に応じて、電極611,電極612の中央部分が、振動板621とともに上下方向に変位する。すなわち、駆動信号COMA,COMBに基づく駆動信号VOUTが供給されることで、圧電素子60は駆動する。
【0035】
以上のように構成された吐出部600では、圧電素子60が上方向に撓むことで、振動板621が上方向に変位し、キャビティー631の内部容積が拡大する。これにより、リザーバー641に貯留されているインクがキャビティー631に引き込まれる。一方、圧電素子60が下方向に撓むことで、振動板621が下方向に変位し、キャビティー631の内部容積が縮小する。そして、キャビティー631の内部容積の縮小の程度に応じた量のインクが、キャビティー631と連通するノズル651から吐出される。なお、圧電素子60は、図3に示す構造に限られるものではなく、圧電素子60の駆動に伴ってノズル651からインクが吐出できる構造であればよい。
【0036】
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1は、駆動信号COMA,COMBに基づいて生成された駆動信号VOUTにより駆動することでノズル651からインクを吐出させる圧電素子60と、駆動信号COMA,COMBを圧電素子60に供給するか否かを切り替える駆動信号選択回路200と、を有する液体吐出ヘッド21と、駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路51、及び駆動信号選択回路200を制御するクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIA,DIBを出力する制御回路100を有する制御機構10と、を備える。そして、制御機構10の制御により液体吐出ヘッド21が制御されることで、媒体Pの所望の位置にインクが着弾し、これにより、媒体Pに所望の画像が形成される。
【0037】
ここで、圧電素子60が駆動素子の一例であり、駆動信号選択回路200が切替回路の一例であり、液体吐出ヘッド21を制御する制御機構10が液体吐出ヘッド制御回路の一例である。また、駆動信号選択回路200を制御するクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIA,DIBを出力する制御回路100が切替制御回路の一例である。そして、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMAが本実施形態における駆動信号の一例である。なお、本実施形態では、液体吐出装置1が1つの液体吐出ヘッド21を備えている場合を例示し説明を行うが、液体吐出装置1は、複数の液体吐出ヘッド21を備えていてもよい。
【0038】
3.駆動信号選択回路の構成
次に駆動信号選択回路200の構成について説明する。図4は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。図4に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210a,210bと、選択回路230[1]~230[m]とを有する。
【0039】
選択制御回路210aには、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA、及びヘッド制御信号DIAが入力される。そして、選択制御回路210aは、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA、及びヘッド制御信号DIAに基づいて、後述する選択回路230[1]~230[m]のそれぞれが、駆動信号COMAを駆動信号VOUTとして出力するか否かを切り替えるための選択信号Sa[1]~Sa[m]を出力する。
【0040】
また、選択制御回路210bには、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHB、及びヘッド制御信号DIBが入力される。そして、選択制御回路210bは、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHB、及びヘッド制御信号DIBに基づいて、後述する選択回路230[1]~230[m]のそれぞれが、駆動信号COMBを駆動信号VOUTとして出力するか否かを切り替えるための選択信号Sb[1]~Sb[m]を出力する。
【0041】
選択回路230[1]~230[m]は、吐出部600[1]~600[m]に対応して設けられている。そして、選択回路230[1]~230[m]は、選択制御回路210aが出力する選択信号Sa[1]~Sa[m]に基づいて駆動信号COMAを駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]として出力するか否かを切り替え、選択制御回路210bが出力する選択信号Sb[1]~Sa[m]に基づいて駆動信号COMBを駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]として出力するか否かを切り替える。
【0042】
具体的には、選択回路230[1]には、選択制御回路210aが出力する選択信号Sa[1]と選択制御回路210bが出力する選択信号Sb[1]と、駆動信号COMA,COMBとが入力される。そして、選択回路230[1]は、選択信号Sa[1],Sb[1]に基づいて、駆動信号COMA,COMBを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[1]を生成し、吐出部600[1]に出力する。また、選択回路230[m]には、選択制御回路210aが出力する選択信号Sa[m]と選択制御回路210bが出力する選択信号Sb[m]と、駆動信号COMA,COMBとが入力される。そして、選択回路230[m]は、選択信号Sa[m],Sb[m]に基づいて、駆動信号COMA,COMBを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[m]を生成し、吐出部600[m]に出力する。すなわち、選択回路230[i](iは1~mのいずれか)には、選択制御回路210aが出力する選択信号Sa[i]と選択制御回路210bが出力する選択信号Sb[i]と、駆動信号COMA,COMBとが入力される。そして、選択回路230[i]は、選択信号Sa[i],Sb[i]に基づいて、駆動信号COMA,COMBを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[i]を生成し、吐出部600[i]に出力する。
【0043】
次に選択制御回路210a,210bの構成の具体例について説明する。なお、選択制御回路210a,210bは、入力される信号及び出力する信号が異なるのみであって、同様の構成である。そのため、以下の説明では、選択制御回路210a,210bを区別する必要がない場合、単に選択制御回路210と称して説明を行う。また、選択制御回路210は、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIが入力され、選択信号S[1]~S[m]を出力するとして説明を行う。
【0044】
図5は、選択制御回路210の電気構成を示す図である。図5に示すように、選択制御回路210は、制御ロジック回路260と、m個の吐出部600に対応して設けられるm個の選択信号出力部270とを有する。すなわち、選択制御回路210は、駆動信号VOUTを出力する吐出部600の総数と同数のm個の選択信号出力部270を有する。そして、選択制御回路210は、入力されるラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHで規定
されるタイミングにおいて、クロック信号SCKに同期して伝搬されるヘッド制御信号DIに基づいて、吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに対応する選択信号S[1]~S[m]を生成し対応する選択回路230[1]~230[m]に出力する。
【0045】
ここで、選択制御回路210の電気構成を説明するにあたり、まず、選択制御回路210に入力されるラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及びヘッド制御信号DIについて説明する。図6は、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及びヘッド制御信号DIについて説明するための図である。
【0046】
ラッチ信号LATは、リニアエンコーダー90が出力する液体吐出ヘッド21を搭載したキャリッジ20の走査位置を示す信号に基づいて、制御回路100が出力するパルス信号である。液体吐出ヘッド21は、このラッチ信号LATのパルス間において、媒体にドットを形成するためのインクを吐出する。これにより、主走査方向に沿った媒体Pの所望の位置で、液体吐出ヘッド21が所定の量のインクを吐出することができ、したがって、媒体Pの所望の位置に所望のサイズのドットを形成することができる。このラッチ信号LATの立ち上がりから次のラッチ信号の立ち上がるまでの期間が、媒体Pにドットを形成するためのドット形成周期Tに相当する。すなわち、ラッチ信号LATは、媒体Pに対する液体吐出ヘッド21の走査位置を示す信号であるとともに、液体吐出ヘッド21の走査位置に応じて媒体Pにドットを形成するドット形成周期Tを規定する信号である。
【0047】
チェンジ信号CHは、駆動信号選択回路200が駆動信号COMを駆動信号VOUTとして吐出部600に供給するか否かを切り替える切替タイミングを規定するパルス信号であり、制御回路100は、ドット形成周期Tを複数の周期に分割するようにチェンジ信号CHを出力する。本実施形態では、チェンジ信号CHは、ドット形成周期Tにおいて1度だけ出力されるパルス信号であるとして説明する。すなわち、本実施形態において、チェンジ信号CHは、ドット形成周期Tを期間T1と期間T2との2つに分割する。そして、駆動信号選択回路200は、期間T1において駆動信号COMを駆動信号VOUTとして吐出部600に供給するか否かを切り替えるとともに、期間T2において駆動信号COMを駆動信号VOUTとして吐出部600に供給するか否かを切り替える。その結果、媒体Pには、ドット形成周期Tにおいて、期間T1に吐出されたインクと期間T2に吐出されたインクとが結合し、1つのドットが形成される。
【0048】
以上のように、チェンジ信号CHを用いてドット形成周期Tを期間T1と期間T2とに分割し、期間T1において駆動信号COMを駆動信号VOUTとして吐出部600に供給するか否か、及び期間T2において駆動信号COMを駆動信号VOUTとして吐出部600に供給するか否かを個別に切り替えることで、液体吐出ヘッド21は、4種類の大きさのドットを媒体Pに形成することが可能となる。これにより、媒体Pには、4階調のドットを形成することができ、媒体Pに高精細な画像を形成することができる。すなわち、チェンジ信号CHは、駆動信号選択回路200の切替タイミングを規定する。なお、本実施形態においてチェンジ信号CHは、ドット形成周期Tを期間T1,T2の2つに分割するとして説明を行うが、使用される媒体の材質や、インクの物性、さらには使用者の要求に応じて、チェンジ信号CHは、ドット形成周期Tを3つ以上に分割してもよい。
【0049】
ヘッド制御信号DIは、クロック信号SCKに同期した信号であり、m個の吐出部600のそれぞれが有するノズル651が媒体Pに対して吐出するインクの量を個別に規定する吐出制御信号SIと、チェンジ信号CHにより規定される期間T1,T2のそれぞれにおいて出力される選択信号Sの論理レベルと吐出制御信号SIとの関係を規定するための設定情報信号SPとをシリアルに含む。このヘッド制御信号DIは、クロック信号SCKに同期してラッチ信号LATが立ち上がる前のドット形成周期Tにおいて、選択制御回路210に供給され、選択制御回路210が有するレジスターにm個の吐出部600に対応
した状態で保持される。そして、レジスターに保持されたヘッド制御信号DIは、ラッチ信号LATの立ち上がりで一斉にラッチされることで、当該ラッチ信号LATを含み規定されるドット形成周期Tにおける選択信号Sの論理レベルが規定される。
【0050】
ここで、吐出制御信号SIと設定情報信号SPとを含むヘッド制御信号DIの詳細について、図7を用いて説明する。図7は、ヘッド制御信号DIのデータ構成の一例を示す図である。図7に示すようにヘッド制御信号DIは、吐出制御信号SIと設定情報信号SPとを含み、また、吐出制御信号SIは、上位吐出データSIH、及び下位吐出データSILを含む。
【0051】
具体的には、吐出制御信号SIは、吐出部600に含まれる圧電素子60の駆動を制御するための上位吐出データSIHと下位吐出データSILとの2ビットのデータを、m個の吐出部600のそれぞれに対応して含む、合計2mビットのシリアル信号である。詳細には、吐出制御信号SIは、mビットの上位吐出データSIHを、吐出部600[m]に対応する上位吐出データSIH、吐出部600[m-1]に対応する上位吐出データSIH、…、吐出部600[1]に対応する上位吐出データSIHの順にシリアルに含み、当該上位吐出データSIHの後に、mビットの下位吐出データSILを、吐出部600[m]に対応する下位吐出データSIL、吐出部600[m-1]に対応する下位吐出データSIL、…、吐出部600[1]に対応する下位吐出データSILの順にシリアルに含む。ここで、以下の説明において、吐出部600[i]に対応する上位吐出データSIHを上位吐出データSIHiと称し、吐出部600[i]に対応する下位吐出データSILを下位吐出データSILiと称する場合がある。
【0052】
そして、吐出部600[i]から、上位吐出データSIHiと下位吐出データSILiとの2ビットで規定される量のインクが吐出される。すなわち、吐出制御信号SIは、吐出部600に含まれる圧電素子60の駆動を制御することで、ノズル651から吐出されるインクの量を規定する。ここで、以下の説明において、吐出部600に対応する上位吐出データSIHと下位吐出データSILとを、吐出データ[SIH,SIL]と称する場合があり、また、吐出部600[i]に対応する上位吐出データSIHiと下位吐出データSILiとを、吐出データ[SIHi,SILi]と称する場合がある。
【0053】
設定情報信号SPは、圧電素子60の駆動パターンを規定するためのデータを含むシリアル信号であって、具体的には、設定情報信号SPは、チェンジ信号CHにより規定される期間T1における吐出制御信号SIに含まれる吐出データ[SIH,SIL]によって決定される圧電素子60の駆動パターンを示す4種類の設定情報SP00~SP03と、期間T2において吐出制御信号SIに含まれる吐出データ[SIH,SIL]との組み合わせによって決定される圧電素子60の駆動パターンを示す4種類の設定情報SP10~SP13とが、設定情報SP13,SP12,SP11,SP10,SP03,SP02,SP01,SP00の順にシリアルに含まれる合計8ビットの信号である。すなわち、設定情報信号SPは、チェンジ信号CHにより規定される期間T1,T2における駆動信号選択回路200の状態であって、具体的には、後述する選択回路230[1]~230[m]の状態を規定する選択信号Sの論理レベルと、吐出制御信号SIに含まれる吐出データ[SIH,SIL]との関係を規定する。なお、本実施形態では、設定情報信号SPが8ビットの信号であるとして説明するが、チェンジ信号CHによって分割された期間の数等に応じて8ビット以上の信号、若しくは8ビット以下の信号であってもよい。
【0054】
以上のように、制御回路100は、選択制御回路210に対して、ドット形成周期Tを規定するラッチ信号LATと、駆動信号選択回路200が駆動信号COMを駆動信号VOUTとして吐出部600に供給するか否かを切り替える切替タイミングを規定するチェンジ信号CHと、m個のノズル651が媒体Pに対して吐出するインクの量を個別に規定す
る吐出制御信号SIと、期間T1,T2のそれぞれにおける選択回路230[1]~230[m]の状態を規定する選択信号Sの論理レベルと吐出制御信号SIとの関係を規定するための設定情報信号SPと、吐出制御信号SI及び設定情報信号SPをシリアルに含むヘッド制御信号DIを伝搬するクロック信号SCKと、を出力する。
【0055】
図5に戻り、制御ロジック回路260は、SP用レジスター群261と、選択制御信号生成部262とを含む。SP用レジスター群261は、シリアルに接続された複数のレジスターを含み、クロック信号SCKに同期して入力されるヘッド制御信号DIを、順次後段のレジスターに伝搬する所謂シフトレジスターを構成している。そして、クロック信号SCKの供給が停止すると、SP用レジスター群261には、ヘッド制御信号DIの内、設定情報信号SPに含まれる設定情報SP00~SP13が保持される。選択制御信号生成部262は、ラッチ信号LATの立ち上がりでSP用レジスター群261に保持されている設定情報SP00~SP13をラッチするとともに、ラッチした設定情報SP00~SP13を翻訳することで、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03を含み、期間T1の期間において選択制御回路210から出力される選択信号Sの論理レベルを規定する選択制御信号Q1と、設定情報SP10,SP11,SP12,SP13を含み、期間T1の期間において選択制御回路210から出力される選択信号Sの論理レベルを規定する選択制御信号Q2と、を生成し、m個の選択信号出力部270のそれぞれが有するデコーダー226に出力する。
【0056】
ここで、以下の説明において、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03を含む選択制御信号Q1を、選択制御信号Q1[SP00,SP01,SP02,SP03]と称し、設定情報SP10,SP11,SP12,SP13を含む選択制御信号Q2を、選択制御信号Q2[SP10,SP11,SP12,SP13]と称する場合がある。
【0057】
m個の選択信号出力部270は、それぞれが第1レジスター222a、第2レジスター222b、第1ラッチ回路224a、第2ラッチ回路224b、及びデコーダー226を有する。
【0058】
m個の選択信号出力部270のそれぞれに含まれる第2レジスター222bは、複数のレジスターを含むSP用レジスター群261の後段にシリアルに接続され、m個の選択信号出力部270のそれぞれに含まれる第1レジスター222aは、シリアルに接続されたm個の第2レジスター222bの後段にシリアルに接続されている。具体的には、SP用レジスター群261の後段には、吐出部600[1]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222bが接続される。また、吐出部600[1]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222bの後段に、吐出部600[2]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222b、吐出部600[3]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222b、…、吐出部600[m]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222bの順にシリアルに接続されている。そして、吐出部600[m]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222bの後段には、吐出部600[1]に対応する選択信号出力部270に含まれる第1レジスター222aが接続されている。また、吐出部600[1]に対応する選択信号出力部270に含まれる第1レジスター222aの後段に、吐出部600[2]に対応する選択信号出力部270に含まれる第1レジスター222a、吐出部600[3]に対応する選択信号出力部270に含まれる第1レジスター222a、…、吐出部600[m]に対応する選択信号出力部270に含まれる第1レジスター222aの順にシリアルに接続されている。
【0059】
すなわち、SP用レジスター群261と、m個の選択信号出力部270のそれぞれに含まれるm個の第2レジスター222bと、m個の選択信号出力部270のそれぞれに含ま
れるm個の第1レジスター222aとは、シフトレジスターを構成している。そして、SP用レジスター群261に入力されたヘッド制御信号DIは、クロック信号SCKに同期してm個の選択信号出力部270のそれぞれに含まれるm個の第2レジスター222b、m個の選択信号出力部270のそれぞれに含まれるm個の第1レジスター222aの順に後段に伝搬される。その後、クロック信号SCKの供給が停止することで、吐出部600[i]に対応する選択信号出力部270に含まれる第2レジスター222bには、吐出部600[i]に対応する下位吐出データSILiが保持され、吐出部600[i]に対応する選択信号出力部270に含まれる第1レジスター222aには、吐出部600[i]に対応する上位吐出データSIHiが保持される。
【0060】
m個の選択信号出力部270のそれぞれが有する第1レジスター222aに保持された上位吐出データSIHは、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応する第1ラッチ回路224aによりラッチされ、m個の選択信号出力部270のそれぞれが有する第2レジスター222bに保持された下位吐出データSILは、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応する第2ラッチ回路224bによりラッチされる。第1ラッチ回路224aは、ラッチした上位吐出データSIHをラッチデータLTaとしてデコーダー226に出力し、第2ラッチ回路224bは、ラッチした下位吐出データSILをラッチデータLTbとしてデコーダー226に出力する。
【0061】
なお、以下の説明において、吐出部600[i]に対応する選択信号出力部270が有する第1ラッチ回路224aが出力するラッチデータLTaを、ラッチデータLTaiと称し、吐出部600[i]に対応する選択信号出力部270が有する第2ラッチ回路224bが出力するラッチデータLTbを、ラッチデータLTbiと称する場合がある。また、ラッチデータLTa,LTbをラッチデータ[LTa,LTb]と称する場合があり、また、吐出部600[i]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]を、ラッチデータ[LTai,LTbi]と称する場合がある。
【0062】
デコーダー226には、選択制御信号生成部262が出力する選択制御信号Q1[SP00,SP01,SP02,SP03]、及び選択制御信号Q2[SP10,SP11,SP12,SP13]と、吐出データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]とが入力される。そして、デコーダー226は、選択制御信号Q1,Q2とラッチデータ[LTa,LTb]とに基づいて、選択信号Sを生成し、対応する選択回路230に出力する。
【0063】
図8は、デコーダー226のデコード内容を示す図である。図8に示すように、デコーダー226は、期間T1において、選択制御信号Q1[SP00,SP01,SP02,SP03]で規定される論理レベルを選択し、選択信号Sとして出力し、期間T2において、選択制御信号Q2[SP10,SP11,SP12,SP13]で規定される論理レベルを選択し、選択信号Sとして出力する。すなわち、期間T1と期間T2とを規定するチェンジ信号CHは、駆動信号選択回路200が選択制御信号Q1[SP00,SP01,SP02,SP03]に基づいて駆動信号COMA,COMBを圧電素子60に供給するか否かの切り替えを実行するのか、選択制御信号Q2[SP10,SP11,SP12,SP13]に基づいて駆動信号COMA,COMBを圧電素子60に供給するか否かの切り替えを実行するのか、の切り替えタイミングを規定する。
【0064】
具体的には、デコーダー226は、ドット形成周期Tにおいて吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、選択制御信号Q1,Q2で規定される内容に従い、期間T1において設定情報SP00の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間T2において設定情報SP10の論理レベルを選択信号Sとして出力する。同様に、デコーダー226は、ドット形成周期Tにおいて吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]が入
力された場合、選択制御信号Q1,Q2で規定される内容に従い、期間T1において設定情報SP01の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間T2において設定情報SP11の論理レベルを選択信号Sとして出力する。また、デコーダー226は、ドット形成周期Tにおいて吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、選択制御信号Q1,Q2で規定される内容に従い、期間T1において設定情報SP02の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間T2において設定情報SP12の論理レベルを選択信号Sとして出力する。また、デコーダー226は、ドット形成周期Tにおいて吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、選択制御信号Q1,Q2で規定される内容に従い、期間T1において設定情報SP03の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間T2において設定情報SP13の論理レベルを選択信号Sとして出力する。
【0065】
以上のように、選択制御回路210は、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIに基づいて、吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに対応する選択回路230[1]~230[m]の状態を制御する選択信号S[1]~S[m]を出力する。すなわち、駆動信号選択回路200において、選択制御回路210aは、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA、及びヘッド制御信号DIAに基づいて、吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに対応する選択回路230[1]~230[m]の状態を制御する選択信号Sa[1]~Sa[m]を出力し、選択制御回路210bは、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHB、及びヘッド制御信号DIBに基づいて、吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに対応する選択回路230[1]~230[m]の状態を制御する選択信号Sb[1]~Sb[m]を出力する。
【0066】
次に選択回路230[1]~230[m]の構成について説明する。ここで、選択回路230[1]~230[m]は、いずれも同様の構成である。そのため、選択回路230[1]~230[m]を区別する必要がない場合、単に選択回路230と称する場合がある。そして、選択回路230には、選択信号Sa[1]~Sa[m]の内の選択信号Saと、選択信号Sb[1]~Sb[m]の内の選択信号Sbとが入力されるとして説明を行う。
【0067】
図9は、吐出部600の1個に対応する選択回路230の構成を示す図である。図9に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232a,232bと、トランスファーゲート234a,234bとを有する。
【0068】
選択制御回路210aが出力する選択信号Saは、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232aによって論理反転されて、トランスファーゲート234aにおいて丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234aの入力端には、駆動信号COMAが供給される。具体的には、トランスファーゲート234aは、入力される選択信号SaがHレベルの場合に入力端と出力端との間を導通とし、入力される選択信号SaがLレベルの場合に入力端と出力端との間を非導通とする。
【0069】
また、選択制御回路210bが出力する選択信号Sbは、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232bによって論理反転されて、トランスファーゲート234bにおいて丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234bの入力端には、駆動信号COMBが供給される。具体的には、トランスファーゲート234bは、入力される選択信号SbがHレベルの場合に入力端と出力端との間を導通とし、入力される選択信号SbがLレベルの場合に入力端と出力端との間を非導通とする。
【0070】
そして、トランスファーゲート234aの出力端と、トランスファーゲート234bの出力端とが共通に接続され、当該共通に接続された接続点から駆動信号VOUTが出力される。
【0071】
以上のように、本実施形態における駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、及びヘッド制御信号DIA,DIBに基づいて、駆動信号COMA,COMBを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成し、対応する吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに出力する。
【0072】
4.制御機構による液体吐出ヘッドの制御
以上のように、本実施形態における駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、及びヘッド制御信号DIA,DIBに基づいて、駆動信号COMA,COMBを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成し、対応する吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに出力する。すなわち、制御機構10は、駆動信号選択回路200をクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、及びヘッド制御信号DIA,DIBにより制御することで、吐出部600[1]~600[m]のそれぞれに駆動信号COMA,COMBに基づく駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を供給し、対応する吐出部600[1]~600[m]からインクを吐出させる。
【0073】
また、制御機構10は、図2に示すようにクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIAにより液体吐出ヘッド21が有する記憶回路250を制御することで、記憶回路250に所望の情報を記憶するとともに、記憶回路250に記憶されている情報の読み出しも実行する。すなわち、制御機構10は、液体吐出ヘッド21の制御として、液体吐出ヘッド21が有する駆動信号選択回路200の制御と、液体吐出ヘッド21が有する記憶回路250の制御との双方を、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、及びヘッド制御信号DIA,DIBを用いて実行する。
【0074】
すなわち、本実施形態における液体吐出装置1は、制御機構10は、ノズル651からインクが吐出される液体吐出ヘッド21を制御する吐出制御期間と、ノズル651からインクが吐出されないように液体吐出ヘッド21を制御する非吐出制御期間とを有する。そして、制御機構10は、吐出制御期間と非吐出制御期間とで、異なるデータを含むヘッド制御信号DIAを出力することで、共通の信号であるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHA,CHB、及びヘッド制御信号DIA,DIBを用いて、液体吐出ヘッド21が有する駆動信号選択回路200の制御と記憶回路250の制御とを実行する場合であっても、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれを低減している。
【0075】
吐出制御期間、及び非吐出制御期間のそれぞれにおける制御機構10、液体吐出ヘッド21の動作、及び制御機構が出力するヘッド制御信号DIA,DIBの具体例について説明する。まず、吐出制御期間において制御機構10が実行する液体吐出ヘッド21の制御の詳細について説明する。吐出制御期間において制御機構10が実行する液体吐出ヘッド21の制御の詳細を説明するにあたり、ノズル651からインクを吐出させるために駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMA,COMBの波形の一例について説明する。その後、吐出制御期間における液体吐出ヘッド21の制御について説明を行う。なお、以下の説明において、ラッチ信号LATにより規定されるドット形成周期Tの内、チェンジ信号CHAにより分割される期間T1を期間Ta1、期間T2を期間Ta2と称し、チェンジ信号CHBにより分割される期間T1を期間Tb1、期間T2を期間Tb2と称する場合がある。
【0076】
図10は、駆動信号COMA,COMBの波形の一例を示す図である。図10に示すように、駆動信号COMAは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHAが立ち上がるまでの期間Ta1に配置された台形波形Adp1と、チェンジ信号CHAが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間Ta2に配置された台形波形Adp2とを連続させた波形を含む。台形波形Adp1は、ノズル651から、小程度の量のインクを吐出させるための波形であり、台形波形Adp2は、ノズル651から、小程度の量よりも多い中程度の量のインクを吐出させるための波形である。
【0077】
また、駆動信号COMBは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHBが立ち上がるまでの期間Tb1に配置された台形波形Bdp1と、チェンジ信号CHBが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間Tb2に配置された台形波形Bdp2とを連続させた波形を含む。台形波形Bdp1は、ノズル651からインクを吐出させない波形であり、ノズル651の開孔部付近のインクを微振動させて、インク粘度の増大を防止するための波形である。また、台形波形Bdp2は、台形波形Adp1と同様に、ノズル651から小程度の量のインクを吐出させる波形である。
【0078】
ここで、図10に示すように、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のそれぞれの開始タイミング及び終了タイミングでの電圧は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp1,Adp2,Bdp1,Bdp2のそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する。
【0079】
なお、図10では、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とが同じ波形であるとして図示しているが、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とは異なる波形であってもよい。また、台形波形Adp1が吐出部600に供給された場合と、台形波形Bdp1が吐出部600に供給された場合とでは、共に対応するノズル651から小程度の量のインクが吐出されるとして説明を行うが、異なる量のインクが吐出されてもよい。すなわち、駆動信号COMA,COMBの波形は、図10に示す波形に限られるものではなく、液体吐出ヘッド21が搭載されるキャリッジ20の移動速度や、液体吐出ヘッド21に供給されるインクの性質、及び媒体Pの材質等に応じて、様々な波形が組み合わされてもよい。
【0080】
次に、吐出制御期間において制御機構10が液体吐出ヘッド21を制御する場合の動作について説明する。図11は、吐出制御期間に制御機構10が出力するヘッド制御信号DIA,DIBの一例を示す図である。ここで、前述の通り、ヘッド制御信号DIA,DIBのそれぞれに含まれる吐出制御信号SIは、m個のノズル651毎に吐出されるインクの量を規定する信号であり、吐出制御期間において、論理レベルが適宜変化する。すなわち、吐出制御信号SIに含まれる吐出データ[SIH,SIL]は、ドット形成周期Tにおいて対応するノズル651から吐出されるインクの量に応じて0又は1のいずれかとなる。そのため、図11では、0又は1のいずれかであることを「0/1」として図示している。なお、以下の説明では、 “1”がHレベルの信号を意味し“0”がLレベルの信号を意味するとして説明を行う。
【0081】
図11に示すように、吐出制御期間において制御機構10は、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13のそれぞれが“1”“1”“0”“0”“1”“0”“0”“0”である設定情報信号SPを含むヘッド制御信号DIAを選択制御回路210aに出力する。したがって、選択制御回路210aが有する制御ロジック回路260に含まれる選択制御信号生成部262は、設定情報信号SPに基づいて、選択制御信号Q1[SP00,SP01,SP02,SP03]=[1,1,0,0]と、選択制御信号Q2[SP10,SP11,SP12,SP13]=[1,0,0,0]とを生成し、デコーダー226に出力する。
【0082】
図12は、吐出制御期間における選択制御回路210aが有するデコーダー226におけるデコード内容を示す図である。図12に示すように、デコーダー226は、吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、期間T1においてHレベル、期間T2においてHレベルの選択信号Saを出力し、吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、期間T1においてHレベル、期間T2においてLレベルの選択信号Saを出力し、吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、期間T1においてLレベル、期間T2においてLレベルの選択信号Saを出力し、吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、期間T1においてLレベル、期間T2においてLレベルの選択信号Saを出力する。
【0083】
図11に戻り、吐出制御期間において制御機構10は、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13のそれぞれが“0”“0”“0”“1”“0”“1”“1”“0”である設定情報信号SPを含むヘッド制御信号DIBを選択制御回路210bに出力する。したがって、選択制御回路210bが有する制御ロジック回路260に含まれる選択制御信号生成部262は、設定情報信号SPに基づいて、選択制御信号Q1[SP00,SP01,SP02,SP03]=[0,0,0,1]と、選択制御信号Q2[SP10,SP11,SP12,SP13]=[0,1,1,0]とを生成し、デコーダー226に出力する。
【0084】
図13は、吐出制御期間における選択制御回路210bが有するデコーダー226におけるデコード内容を示す図である。図13に示すように、デコーダー226は、吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、期間T1においてLレベル、期間T2においてLレベルの選択信号Sbを出力し、吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、期間T1においてLレベル、期間T2においてHレベルの選択信号Sbを出力し、吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、期間T1においてLレベル、期間T2においてHレベルの選択信号Sbを出力し、吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、期間T1においてHレベル、期間T2においてLレベルの選択信号Sbを出力する。
【0085】
図14は、図12,13に示す選択信号Sa,Sbが供給された場合の選択回路230の動作を説明するための図である。図14に示すように、吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]の場合、トランスファーゲート234aには、期間Ta1においてHレベルの選択信号Saが供給され、期間Ta2においてHレベルの選択信号Saが供給される。一方、トランスファーゲート234bには、ドット形成周期Tにおいて継続してLレベルの選択信号Sbが供給される。よって、ドット形成周期Tにおいて、対応する圧電素子60には、台形波形Adp1と台形波形Adp2とが連続した駆動信号VOUTが供給される。その結果、ノズル651から小程度の量のインクと中程度の量のインクとが吐出され、媒体Pに着弾する。その後、媒体Pに着弾した小程度の量のインクと中程度の量のインクとが結合することで、媒体Pに大ドットが形成される。
【0086】
また、吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]の場合、トランスファーゲート234aには、期間Ta1においてHレベルの選択信号Saが供給され、期間Ta2においてLレベルの選択信号Saが供給される。また、トランスファーゲート234bには、期間Tb1においてLレベルの選択信号Sbが供給され、期間Tb2においてHレベルの選択信号Saが供給される。よって、ドット形成周期Tにおいて、対応する圧電素子60には、台形波形Adp1と台形波形Bdp2とが連続した駆動信号VOUTが供給される。その結果、ノズル651から小程度の量のインクが2回に分けて吐出され、媒体Pに着弾する。その後、媒体Pに着弾した小程度の量のインクと小程度の量のインクとが結合することで、媒体Pに中ドットが形成される。
【0087】
また、吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]の場合、トランスファーゲート234aには、ドット形成周期Tにおいて継続してLレベルの選択信号Saが供給される。一方で、トランスファーゲート234bには、期間Tb1においてLレベルの選択信号Sbが供給され、期間Tb2においてHレベルの選択信号Sbが供給される。よって、ドット形成周期Tにおいて、対応する圧電素子60には、電圧Vcで一定の波形と台形波形Bdp2とが連続した駆動信号VOUTが供給される。その結果、ノズル651から小程度の量のインクが1回吐出され、媒体Pに着弾する。したがって、媒体Pには小ドットが形成される。
【0088】
また、吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]の場合、トランスファーゲート234aには、ドット形成周期Tにおいて継続してLレベルの選択信号Saが供給される。一方で、トランスファーゲート234bには、期間Tb1においてHレベルの選択信号Sbが供給され、期間Tb2においてLレベルの選択信号Sbが供給される。よって、ドット形成周期Tにおいて、対応する圧電素子60には、台形波形Bdp1と電圧Vcで一定の波形とが連続した駆動信号VOUTが供給される。この場合、ノズル651の近傍が微振動するのみであり、ノズル651からインクは吐出されない。したがって、媒体Pにはドットが形成されない。
【0089】
以上のように、吐出制御期間において、制御機構10が図11に示すようなヘッド制御信号DIA,DIBを液体吐出ヘッド21に出力することで、液体吐出ヘッド21は、吐出制御信号SIと設定情報信号SPとに基づいて、大ドット、中ドット、小ドット、及び非記録の4種類のドットを媒体Pに形成する。
【0090】
次に、非吐出制御期間において制御機構10が液体吐出ヘッド21を制御する場合の動作であって、制御機構10が記憶回路250に記憶されている情報を取得する場合の動作について説明する。
【0091】
図15は、制御機構10が記憶回路250に記憶されている情報を取得する際の動作の一例を示す図である。図15に示すように、制御機構10が記憶回路250に記憶されている情報を取得する場合、まず、制御機構10は、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHAの論理レベルを所定の論理レベルとするトリガー信号Trを生成し、記憶回路250に出力する。これにより、記憶回路250は、保持されている情報の読み出しや、所定の情報の書き込み等が可能なアクセス可能状態となる。ここで、トリガー信号Trは、ラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHAの論理レベルが吐出制御期間において取り得ない論理レベルを含むことが好ましく、例えば、本実施形態におけるトリガー信号Trは、ラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHAの双方の論理レベルがHレベルである状態を含む。
【0092】
トリガー信号Trに基づいて記憶回路250がアクセス可能状態となった後、制御機構10は、記憶回路250に保持されている情報の取得、若しくは、記憶回路250への所定の情報の書き込みを実行するためのコマンド信号CMDを含むヘッド制御信号DIAをクロック信号SCKに同期して記憶回路250に出力する。これにより、コマンド信号CMDに応じた情報が記憶回路250に記憶されるとともに、当該コマンド信号CMDに応じた情報が読出情報MIとして読み出される。
【0093】
ここで、非吐出制御期間において制御機構10が出力するコマンド信号CMDを含むヘッド制御信号DIAは、駆動信号選択回路200にも供給される。その結果、駆動信号選択回路200が有するm個の第1レジスター222a、m個の第2レジスター222b、及びSP用レジスター群261には、コマンド信号CMDに応じた信号が保持される。さ
らに、上述の通り制御機構10は、ラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHAの論理レベルを所定の論理レベルとするトリガー信号Trによって、記憶回路250をアクセス可能状態としているが故に、チェンジ信号CHAの立ち上がりやラッチ信号LATの立ち上がりにおいて、m個の第1レジスター222a、m個の第2レジスター222b、及びSP用レジスター群261に保持された情報が一斉にラッチされ、デコーダー226に入力される。その結果、選択制御回路210aが意図しない選択信号Saを選択回路230に出力し、その結果、選択回路230は、意図しない電圧を駆動信号VOUTとして圧電素子60に供給することとなる。すなわち、圧電素子60に意図しない電圧が供給される。
【0094】
非吐出制御期間において、圧電素子60に意図しない電圧が供給された場合、圧電素子60に意図しない変位が生じ、その結果、液体吐出ヘッド21がインクを誤吐出するおそれがある。さらに、圧電素子60に意図しない電圧が継続して供給された場合、圧電素子60に異常が生じ、その結果、液体吐出ヘッド21におけるインクの吐出精度が低下する。すなわち、液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれがある。
【0095】
このような問題に対して、本実施形態における液体吐出装置1では、非吐出制御期間において、制御機構10が出力するヘッド制御信号DIA,DIBのデータ構成に工夫を凝らすことで、制御機構10は、液体吐出装置1の構成が煩雑になるおそれ、及び液体吐出装置1の小型化が困難となるおそれを低減しつつ、非吐出制御期間において圧電素子60に意図しない電圧が供給されるおそれを低減している。
【0096】
図16は、非吐出制御期間に制御機構10が出力するヘッド制御信号DIA,DIBの一例を示す図である。図16に示すように、制御機構10は、非吐出制御期間においてpビットのコマンド信号CMDの後段に、疑似設定情報信号DSPがシリアルに付加されたヘッド制御信号DIA,DIBを生成し、液体吐出ヘッド21に出力する。
【0097】
疑似設定情報信号DSPは、吐出制御期間において制御機構10が出力するヘッド制御信号DIA,DIBに含まれる設定情報信号SPと同じビット数の疑似設定情報dq00~dq13を含む。すなわち、疑似設定情報信号DSPに含まれる疑似設定情報dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13は、それぞれが設定情報信号SPに含まれる設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13に対応する。これにより、非吐出制御期間において、ヘッド制御信号DIA,DIBを伝搬するクロック信号SCKの供給が停止した場合に、選択制御回路210a,210bのそれぞれが有するSP用レジスター群261には、疑似設定情報dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13が保持される。
【0098】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がることで、選択制御信号生成部262は、疑似設定情報dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13を一斉にラッチするとともに翻訳することで、選択制御信号Q1に対応する疑似選択制御信号DQ1[dq00,dq01,dq02,dq03]と、選択制御信号Q2に対応する疑似選択制御信号DQ2[dq10,dq11,dq12,dq13]とを生成しデコーダー226に出力する。すなわち、制御機構10は、非吐出制御期間においてpビットのコマンド信号CMDの後段に、疑似設定情報信号DSPがシリアルに付加されたヘッド制御信号DIA,DIBを出力することで、非吐出制御期間において、チェンジ信号CHA,CHBにより規定される期間Ta1,Ta2,Tb1,Tb2における駆動信号選択回路200の状態を規定することができる。よって、非吐出制御期間において、制御回路100が記憶回路250を制御するためにpビットのコマンド信号CMDを含むヘッド制御信号DIA,DIBを出力する場合であっても、駆動信号選択回路200の状態が不定となるおそれが低減し、その結果、圧電素子60に意図しない電圧が供給されるおそ
れが低減する。
【0099】
ここで、図16に示すように非吐出制御期間におけるヘッド制御信号DIAは、疑似設定情報[dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13]=[1,1,1,1,1,1,1,1]を含む。したがって、ヘッド制御信号DIAに基づいて出力される疑似選択制御信号DQ1は、疑似選択制御信号DQ1[dq00,dq01,dq02,dq03]=[1,1,1,1]であり、疑似選択制御信号DQ2は、疑似選択制御信号DQ2[dq10,dq11,dq12,dq13]=[1,1,1,1]となる。すなわち、制御回路100は、非吐出制御期間において、疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とが同じ疑似設定情報信号DSPであって、疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とに含まれる疑似設定情報dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13の論理レベルはすべて同じ疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とを出力する。
【0100】
図17は、非吐出制御期間における選択制御回路210aが有するデコーダー226におけるデコード内容を示す図である。図17に示すように、非吐出制御期間において、選択制御回路210aが有するデコーダー226は、吐出データ[SIH,SIL]の論理レベルに依らず、期間T1、及び期間T2においてHレベルの選択信号Sbを出力する。すなわち、本実施形態における液体吐出装置1において、選択制御回路210aは、チェンジ信号CHAで規定される期間Ta1,Ta2、及びラッチデータ[LTa,LTb]の論理レベルに依らず、Hレベルの選択信号Sbを出力する。
【0101】
また、図16に戻り、非吐出制御期間におけるヘッド制御信号DIBは、疑似設定情報[dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13]=[0,0,0,0,0,0,0,0]を含む。したがって、ヘッド制御信号DIBに基づいて出力される疑似選択制御信号DQ1は、疑似選択制御信号DQ1[dq00,dq01,dq02,dq03]=[0,0,0,0]であり、疑似選択制御信号DQ2は、疑似選択制御信号DQ2[dq10,dq11,dq12,dq13]=[0,0,0,0]となる。すなわち、制御回路100は、非吐出制御期間において、疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とが同じ疑似設定情報信号DSPであって、疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とに含まれる疑似設定情報dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13の論理レベルはすべて同じ疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とを出力する。
【0102】
図18は、非吐出制御期間における選択制御回路210bが有するデコーダー226におけるデコード内容を示す図である。図18に示すように、非吐出制御期間において、選択制御回路210bが有するデコーダー226は、吐出データ[SIH,SIL]の論理レベルに依らず、期間T1、及び期間T2においてLレベルの選択信号Sbを出力する。すなわち、本実施形態における液体吐出装置1において、選択制御回路210bは、チェンジ信号CHBで規定される期間Tb1,Tb2、及びラッチデータ[LTa,LTb]の論理レベルに依らず、Lレベルの選択信号Sbを出力する。
【0103】
以上のように、制御回路100が、非吐出制御期間において、疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とが同じ疑似設定情報信号DSPであって、疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とに含まれる疑似設定情報dq00,dq01,dq02,dq03,dq10,dq11,dq12,dq13の論理レベルはすべて同じ疑似選択制御信号DQ1と疑似選択制御信号DQ2とを出力することで、チェンジ信号CHA,CHBで規定される期間Ta1,Ta2,Tb1,Tb2、及びラッチデータ[LTa,LTb]の論理レベルに依らず、駆動信号選択回路200の状態を規定することができる。すなわち、非吐出制御期間であっても、駆動信号選択回路200の状態を特定するこ
とが可能となり、その結果、圧電素子60に意図しない電圧が供給されるおそれが低減する。すなわち、吐出制御期間において液体吐出ヘッド21からインクの吐出を制御するヘッド制御信号DIA,DIBを用いて、液体吐出ヘッド21が有する記憶回路250の制御も実行する場合であっても、液体吐出ヘッド21が有する圧電素子60に意図しない電圧が印加されるおそれが低減し、その結果、液体吐出ヘッド21に誤動作が生じるおそれが低減する。
【0104】
ここで、本実施形態に示すように、非吐出制御期間に入力されるヘッド制御信号DIA,DIBに含まれる疑似設定情報信号DSPの疑似設定情報dq00~dq13の論理レベルは、ヘッド制御信号DIAにおいてすべて同じであり、また、ヘッド制御信号DIBにおいてすべて同じであることが好ましいが、少なくとも、吐出制御期間に入力されるヘッド制御信号DIA,DIBに含まれる設定情報信号SPの設定情報SP00~SP13の論理レベルと、非吐出制御期間に入力されるヘッド制御信号DIA,DIBに含まれる疑似設定情報信号DSPの疑似設定情報dq00~dq13の論理レベルと、が異なればよい。
【0105】
設定情報SP00~SP13の論理レベルと、疑似設定情報dq00~dq13の論理レベルとが異なることで、選択制御信号生成部262は、保持された情報が駆動信号選択回路200の切り替えを求める情報ではないと判断できる。よって、設定情報SP00~SP13の論理レベルとは異なる疑似設定情報dq00~dq13が入力された場合に、選択信号Sa,Sbの状態が切り替わらない疑似選択制御信号DQ1,DQ2に翻訳することができる。すなわち、少なくとも吐出制御期間に入力されるヘッド制御信号DIA,DIBに含まれる設定情報信号SPの設定情報SP00~SP13の論理レベルと、非吐出制御期間に入力されるヘッド制御信号DIA,DIBに含まれる疑似設定情報信号DSPの疑似設定情報dq00~dq13の論理レベルとが異なることで、液体吐出ヘッド21が有する圧電素子60に意図しない電圧が印加されるおそれが低減し、その結果、液体吐出ヘッド21に誤動作が生じるおそれが低減することができる。
【0106】
また、本実施形態では、非吐出制御期間中に制御機構10が実行する液体吐出ヘッド21の制御として記憶回路250の制御を例示して説明を行ったが、非吐出制御期間中に制御機構10が実行する液体吐出ヘッド21の制御はこれに限るものではなく、たとえば、液体吐出ヘッド21が正常に動作可能であるか否かを診断する診断回路を有し、当該診断回路をヘッド制御信号DIA,DIBに基づいて制御する場合であっても、同様の作用効果を奏する。
【0107】
ここで、吐出制御期間が第1期間の一例であり、非吐出制御期間が第2期間の一例である。また、駆動信号選択回路200が有する選択回路230の切替タイミングであって、吐出制御期間において、選択信号Saの論理レベルを選択制御信号Q1で規定される論理レベルから選択制御信号Q2で規定される論理レベルに切り替えるタイミング、及び非吐出制御期間において、疑似選択制御信号DQ1で規定される論理レベルから疑似選択制御信号DQ2で規定される論理レベルに切り替えるタイミングを規定するチェンジ信号CHAが切替タイミング信号の一例であり、チェンジ信号CHAにより規定される制御期間の一例である期間Ta1,期間Ta2における駆動信号選択回路200の状態を規定する設定情報信号SP、及び疑似設定情報信号DSPが状態選択信号の一例である。
【0108】
また、設定情報信号SPにおいて選択制御信号Q1に含まれる4ビットのデータである設定情報SP00~SP03、及び疑似設定情報信号DSPにおいて疑似選択制御信号DQ1に含まれる4ビットのデータである疑似設定情報dq00~dq03がnビットの第1データの一例であり、選択制御信号Q2に含まれる4ビットのデータである設定情報SP10~SP13、及び疑似設定情報信号DSPにおいて疑似選択制御信号DQ2に含まれる4ビットのデータである疑似設定情報dq10~dq13がnビットの第2データの
一例である。
【0109】
なお、設定情報信号SPにおいて選択制御信号Q1,Q2に含まれるデータ数、疑似設定情報信号DSPにおいて疑似選択制御信号DQ1,DQ2に含まれるデータ数は、4ビットに限るものではなく、ドット形成周期Tをチェンジ信号CHA,CHBにより分割される分割数や、媒体に形成されるドットサイズの種類の数に応じて、4ビット以上であってもよい。
【0110】
5.作用効果
以上のように本実施形態における液体吐出装置1が有する制御機構10は、ノズル651からインクが吐出されるように液体吐出ヘッド21を制御する吐出制御期間において、チェンジ信号CHAにより規定される期間Ta1,Ta2における駆動信号選択回路200の状態を規定する設定情報信号SPとノズル651からインクが吐出されないように液体吐出ヘッド21を制御する非吐出制御期間において、チェンジ信号CHAにより規定される期間Ta1,Ta2における駆動信号選択回路200の状態を規定する疑似設定情報信号DSPと出力する。その場合において、設定情報信号SPと疑似設定情報信号DSPとを異なるデータを含む信号とすることで、疑似設定情報信号DSPが駆動信号選択回路200に供給された場合に、駆動信号選択回路200の動作を固定することが可能となる。これにより、ノズル651からインクが吐出されないように液体吐出ヘッド21を制御する非吐出制御期間において、液体吐出ヘッド21が有する駆動信号選択回路200の動作が不定となり、その結果、圧電素子60に意図しない電圧が印加されるおそれが低減する。すなわち、本実施形態における制御機構10を備えた液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれを低減することができる。
【0111】
また、本実施形態における液体吐出装置1において、チェンジ信号CHAにより規定される期間Ta1における駆動信号選択回路200の状態を規定する疑似設定情報信号DSPに含まれる疑似選択制御信号DQ1と、チェンジ信号CHAにより規定される期間Ta2における駆動信号選択回路200の状態を規定する疑似設定情報信号DSPに含まれる疑似選択制御信号DQ2の論理レベルとを同じとすることで、非吐出制御期間においてチェンジ信号CHAに基づく新たな期間が規定された場合であっても、液体吐出ヘッド21が有する駆動信号選択回路200の動作状態を固定することができる。よって、簡易な構成で圧電素子60に意図しない電圧が印加されるおそれが低減する。すなわち、本実施形態における制御機構10を備えた液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれを低減することができる。
【0112】
さらに、本実施形態における液体吐出装置1において、チェンジ信号CHAにより規定される期間Ta1における駆動信号選択回路200の状態を規定する疑似設定情報信号DSPに含まれる疑似選択制御信号DQ1の論理レベルをすべて同一とすることで、非吐出制御期間において駆動信号選択回路200に入力される信号に依らず液体吐出ヘッド21が有する駆動信号選択回路200の動作状態を固定することができる。よって、簡易な構成で圧電素子60に意図しない電圧が印加されるおそれがさらに低減する。すなわち、本実施形態における制御機構10を備えた液体吐出装置1に誤動作が生じるおそれをさらに低減することができる。
【0113】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0114】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形
態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0115】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0116】
液体吐出ヘッド制御回路の一態様は、
駆動信号に基づいて駆動することでノズルから液体を吐出させる駆動素子と、前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かを切り替える切替回路と、を有する液体吐出ヘッドを制御する液体吐出ヘッド制御回路であって、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記切替回路を制御する切替制御回路と、
を備え、
前記切替制御回路は、
前記ノズルから吐出される液体の量を規定する吐出制御信号と、
前記切替回路の切り替えタイミングを規定する切替タイミング信号と、
前記切替タイミング信号により規定される制御期間における前記切替回路の状態を規定する状態選択信号と、
を出力し、
前記ノズルから液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドを制御する第1期間における前記状態選択信号と、前記ノズルから液体が吐出されないように前記液体吐出ヘッドを制御する第2期間における前記状態選択信号とは異なる。
【0117】
この液体吐出ヘッド制御回路によれば、ノズルから液体が吐出されるように液体吐出ヘッドを制御する第1期間における状態選択信号と、ノズルから液体が吐出されないように液体吐出ヘッドを制御する第2期間における状態選択信号とが異なることで、意図しないタイミングで切替回路の状態が切り替わるおそれが低減し、その結果、液体吐出装置に誤動作が生じるおそれが低減する。
【0118】
前記液体吐出ヘッド制御回路の一態様において、
前記状態選択信号は、nビットの第1データとnビットの第2データとを含み、
前記切替制御回路は、前記第2期間において前記第1データと前記第2データとが同じ前記状態選択信号を出力してもよい。
【0119】
この液体吐出ヘッド制御回路によれば、第2期間において状態選択信号に含まれるnビットの第1データと状態選択信号に含まれるnビットの第2データとが同じ状態選択信号を切替制御回路が出力することで、意図しないタイミングで第1データと第2データとを切り替える信号が液体吐出ヘッドに入力された場合であっても、切替回路の状態が切り替わるおそれが低減する。したがって、液体吐出装置に誤動作が生じるおそれがさらに低減する。
【0120】
前記液体吐出ヘッド制御回路の一態様において、
前記第1データのnビットの論理レベルが全て同じであってもよい。
【0121】
この液体吐出ヘッド制御回路によれば、第2期間において状態選択信号に含まれるnビットの第1データと状態選択信号に含まれるnビットの第2データとが同じ状態選択信号であって、第1データのnビットの論理レベルが全て同じ状態選択信号を切替制御回路が出力することで、意図しない信号が液体吐出ヘッドに入力された場合であっても、切替回路の状態が切り替わるおそれが低減する。したがって、液体吐出装置に誤動作が生じるお
それがさらに低減する。
【0122】
前記液体吐出ヘッド制御回路の一態様において、
前記切替タイミング信号は、前記切替回路が前記第1データに基づいて前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かの切り替えを実行するのか、前記第2データに基づいて前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かの切り替えを実行するのか、の切り替えタイミングを規定してもよい。
【0123】
この液体吐出ヘッド制御回路によれば、切替タイミング信号によって、切替回路が第1データに基づいて駆動信号を駆動素子に供給するか否かの切り替えを実行するのか、又は第2データに基づいて駆動信号を駆動素子に供給するか否かの切り替えを実行するのかのタイミングが規定されている場合であっても、切替回路の状態が切り替わるおそれが低減しているが故に、液体吐出装置に誤動作が生じるおそれが低減している。
【0124】
前記液体吐出ヘッド制御回路の一態様において、
前記液体吐出ヘッドは、記憶回路を有し、
前記切替制御回路は、前記第2期間において前記記憶回路を制御してもよい。
【0125】
この液体吐出ヘッド制御回路によれば、第2期間において記憶回路の制御を実行する場合であっても、切替回路の状態が切り替わるおそれが低減しているが故に、液体吐出装置に誤動作が生じるおそれが低減している。
【0126】
液体吐出装置の一態様は、
駆動信号に基づいて駆動することでノズルから液体を吐出させる駆動素子と、前記駆動信号を前記駆動素子に供給するか否かを切り替える切替回路と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを制御する液体吐出ヘッド制御回路と、
を備え、
前記液体吐出ヘッド制御回路は、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記切替回路を制御する切替制御回路と、
を備え、
前記切替制御回路は、
前記ノズルから吐出される液体の量を規定する吐出制御信号と、
前記切替回路の切り替えタイミングを規定する切替タイミング信号と、
前記切替タイミング信号により規定される制御期間における前記切替回路の状態を規定する状態選択信号と、
を出力し、
前記ノズルから液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドを制御する第1期間における前記状態選択信号と、前記ノズルから液体が吐出されないように前記液体吐出ヘッドを制御する第2期間における前記状態選択信号とは異なる。
【0127】
この液体吐出装置によれば、液体吐出ヘッド制御回路が、ノズルから液体が吐出されるように液体吐出ヘッドを制御する第1期間における状態選択信号と、ノズルから液体が吐出されないように液体吐出ヘッドを制御する第2期間における状態選択信号とが異なることで、意図しないタイミングで切替回路の状態が切り替わるおそれが低減し、その結果、液体吐出装置に誤動作が生じるおそれが低減する。
【符号の説明】
【0128】
1…液体吐出装置、2…インク容器、10…制御機構、20…キャリッジ、21…液体
吐出ヘッド、30…移動機構、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送機構、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、51…駆動信号出力回路、52…基準電圧信号出力回路、60…圧電素子、90…リニアエンコーダー、100…制御回路、200…駆動信号選択回路、210,210a,210b…選択制御回路、222a…第1レジスター、222b…第2レジスター、224a…第1ラッチ回路、224b…第2ラッチ回路、226…デコーダー、230…選択回路、232a,232b…インバーター、234a,234b…トランスファーゲート、250…記憶回路、260…制御ロジック回路、261…SP用レジスター群、262…選択制御信号生成部、270…選択信号出力部、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、P…媒体
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