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  • 特許-バースクリーン装置 図1
  • 特許-バースクリーン装置 図2
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  • 特許-バースクリーン装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】バースクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
E02B5/08 103Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021003890
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108773
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼重 友典
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-017921(JP,A)
【文献】実開昭51-121224(JP,U)
【文献】特開2003-313849(JP,A)
【文献】実開昭53-079731(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水路を幅方向に横切るように設置されたバースクリーンであって、
前記バースクリーンの上流側の面に沿って上昇移動するレーキと、
前記バースクリーンの下流側において上下に対向し等間隔に設けられた横梁同士の間に回転ブラシと、前記回転ブラシが上下移動をするためのガイドレールと、を備え、
前記回転ブラシは、ブラシ毛が放射状に形成された円筒管の長手方向において所定の間隔をあけて複数のゴム材を備え、
上昇移動する前記レーキの爪と前記回転ブラシの前記ゴム材の先端が当接して前記回転ブラシが上昇し回転することを特徴とするバースクリーン装置。
【請求項2】
回転ブラシは、円筒管の外周面全体にブラシ毛が放射状に形成され、
前記円筒管は中空構造であることを特徴とする請求項1に記載のバースクリーン装置。
【請求項3】
記ゴム材の長さは前記ブラシ毛よりも長く、
前記ゴム材の先端は水流方向へ向かって湾曲していることを特徴とする請求項2に記載のバースクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海より取水する際に水中の塵芥等の異物を除去する目的で設置される除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などの発電プラントにおいて、河川や海からの冷却水として使用するために配置されている取水場より水を取水しているが、その水の中には、塵芥や水生生物が含まれていることがあり、そのまま使用することができない。そのため、取水場では水中の塵芥や水生生物などを捕捉する働きをする除塵装置が設置されている。
除塵装置は、上流側から順に、粗い塵芥を捕捉するスクリーン、次に細かい塵芥を捕捉するスクリーンというように取水路に複数設置することで、効率的に塵芥を除去している。
【0003】
除塵装置の1つであるバースクリーン装置は、取水路を横切るようにバースクリーン(長方形の枠内に等間隔で複数本のフラットバーを並べて縦格子状に構成)を水流方向に対し垂直あるいは所定の傾斜角をもって立設し当該スクリーンに付着した塵芥を水路外に除去する構造である。
【0004】
そこで、バースクリーンに付着した塵芥を除去するために、レーキ付きバケットが設けられ、キャリングチェーンに取り付けられたレーキがバースクリーンに沿って塵芥を掻き上げながら上昇している。このとき、塵芥と共に貝類や貝の胞子も取り除いている。
【0005】
しかしながら、上記のような方法では、バースクリーンの表面(上流側)に付着した塵芥や貝類は取り除くことはできるが、バースクリーンの裏面(下流側)に付着した塵芥や貝類を取り除くことは難しい。
そのため、繁殖力の強い貝類はバースクリーンの裏面に付着し増殖していき、スクリーンを目詰まりさせる問題が生じていた。
【0006】
このような状態になると、レーキ付きバケットと貝類が接触し、最悪の場合、レーキ付きバケットが変形するため、取水路に潜水夫が潜り塵芥や貝類を除去したり、水の流れを角落し(止水ゲート)で堰き止めて水のないドライな空間にした上で塵芥や貝類を除去したり、さらには、バースクリーンを地上に引き上げて除去作業を行なったりしている。
また、このとき、バースクリーンに付着した貝類からは臭気が発生しているため、ドライな空間における除去作業は作業環境が悪い。
【0007】
これらの全ての除去作業は非常に手間がかかるうえに長期間に及ぶため、その間、取水路からの冷却水を利用する火力発電所などの発電プラントは運転を休止しなければならない。仮に、発電プラントの運転休止が、電力供給量の多い夏場に起こったとしたら、電力不足により私たちの生活に大きな影響を与えることになる。
【0008】
そこで、特許文献1に開示するように、バースクリーンの上流側の付着塵芥物を掻き上げるレーキの上昇移動を利用して移動するスクレーパをバースクリーンの下流側に設けることが提案されている。これによって、バースクリーンの下流側をスクレーパが擦り、付着塵芥物を除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-17921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、河川や海から取水した水の中には木切れ等が浮かんでいる場合があり、このような場合、特許文献1の構造ではバースクリーンとスクレーパとの間に木切れ等の固いものを噛み込んで付着塵芥物の除去機能を停止させてしまう恐れがある。
そうすると、取水路に潜水夫が潜っての除去作業や水の流れを角落し(止水ゲート)で堰き止めて水のないドライな空間にしたうえでの除去作業が必要になるため、発電プラントを長期間の運転休止にしなければならない。
【0011】
また、特許文献1を含めた従来技術では、バースクリーンを支持し固定するバーのブレースに付着した塵芥物を除去することは不可能であった。
バースクリーン以外の場所であっても、取水路に浸っているバースクリーン装置の構造部分に塵芥や貝類が付着すると、通水面積に影響を与え、取水量が低下する恐れがある。
【0012】
本発明は、以上、説明した問題点に鑑みてなされたものであり、バースクリーンの下流側において、付着塵芥物を連続的に除去できるバースクリーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、第1の手段として、取水路を幅方向に横切るように設置されたバースクリーンであって、
前記バースクリーンの上流側の面に沿って上昇移動するレーキと、
前記バースクリーンの下流側において上下に対向し等間隔に設けられた横梁同士の間に回転ブラシと、前記回転ブラシが上下移動をするためのガイドレールと、を備え、
前記回転ブラシは、ブラシ毛が放射状に形成された円筒管の長手方向において所定の間隔をあけて複数のゴム材を備え、
上昇移動する前記レーキの爪と前記回転ブラシの前記ゴム材の先端が当接して前記回転ブラシが上昇し回転することを特徴とするバースクリーン装置を提供することにある。
【0014】
上記第1の手段によれば、バースクリーンの上流側の付着塵芥を掻き出すレーキの上昇移動によって、回転ブラシがバースクリーンの下流側を回転しながら上昇移動するため、バースクリーンで捕捉した塵芥を連続的に除去し目詰まりを防ぐことができる。
【0015】
上記課題を解決するために、第2の手段として、回転ブラシは、円筒管の外周面全体にブラシ毛が放射状に形成され、
前記円筒管は中空構造であることを特徴とする第1の手段に記載のバースクリーン装置を提供することにある。
【0016】
上記第2の手段によれば、バースクリーンの上流側の付着塵芥を掻き出すレーキの上昇移動によって、回転ブラシがバースクリーンの下流側を回転しながら上昇移動するため、回転ブラシのブラシ毛によって、バースクリーンで捕捉した塵芥を連続的に除去し目詰まりを防ぐことができる。
また、回転ブラシを構成する中空構造の円筒管の内部に空気を封入することで、回転ブラシは水中で上昇しやすくなるため、レーキの爪が当接して回転ブラシを上昇させる動作にかかる動力を抑えることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、第3の手段として、前記ゴム材の長さは前記ブラシ毛よりも長く、
前記ゴム材の先端は水流方向へ向かって湾曲していることを特徴とする第2の手段に記載
のバースクリーン装置を提供することにある。
【0018】
上記第3の手段によれば、バースクリーンの上流側の付着塵芥を掻き出すレーキの上昇移動によって、回転ブラシがバースクリーンの下流側を回転しながら上昇移動するため、バースクリーンで捕捉した塵芥を連続的に除去し目詰まりを防ぐことができる。
また、回転ブラシを構成するゴム材の先端形状は水流方向へ向かって湾曲しているため、水流の力を受けて回転し易くなっており、効率的にバースクリーン上の付着塵芥を除去することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バースクリーンの裏面に付着した塵芥を連続的に除去、洗浄することができるため、常時バースクリーンの目詰まりを防止できる。
そのため、バースクリーンの目詰まりによる突発的な発電プラントの停止を回避できるだけでなく、バースクリーンの洗浄作業において、作業の手間を省き、発電プラントの運転を休止する必要も無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るバースクリーン装置の部分側断面図であり、レーキ の爪の上昇移動において(a)は移動前を、(b)は移動後を示している。
図2】本実施形態に係るバースクリーン装置の回転ブラシの説明図であり、(a) は平面図を、(b)は斜視図を、(c)は側面図を示している。
図3】本実施形態に係るバースクリーン装置の回転ブラシとガイドレールの位置関 係を説明する斜視図である。
図4】従来のバースクリーン装置の簡略化した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るバースクリーン装置について説明する。
【0022】
[従来のバースクリーン装置20]
図4は、バースクリーン27が固定されたバーの下流側を横梁24で連結した従来のバースクリーン装置20を示しており、上部スプロケット21Aと下部スプロケット21Bにより無端状に掛け回されたキャリングチェーン26が回動することにより、レーキ25が上昇しバースクリーン27に捕捉された塵芥を掻き出している。掻き出された塵芥はレーキ25によって、上方へ持ち上げられていき、ハウジング22内にある案内板23を伝ってトラフ28へと廃棄される。
【0023】
ところが、レーキ25はバースクリーン27の裏面(下流側)まで突出して掻きとることができないため、バースクリーン27の下流側に付着した塵芥や貝類を取り除くことは難しい。
そのため、バースクリーン27の下流側で取り残した塵芥が溜まったり、繁殖力の強い貝類が増殖したりすると、目詰まりを生じさせる問題があった。バースクリーン27に目詰まりが生じると、通水ができず流量不足を引き起こすため、十分な冷却水を確保できなくなる。
また、取り除けなかった貝類とレーキ25が接触し、最悪の場合、レーキ25が変形する。
【0024】
このような状態になると、取水路に潜水夫が潜ったり、水の流れを角落し(止水ゲート)で堰き止めて水のないドライな空間にしたりして塵芥や貝類を除去する。さらには、バースクリーン27を地上に引き上げて除去作業を行なうこともある。このとき、バースクリーン27に付着した貝類からは臭気が発生しているため、ドライな空間における除去作業は作業環境が悪い。
また、全ての除去作業は非常に手間がかかるうえに長期間に及ぶため、その間、取水路からの冷却水を利用する発電プラントは運転を休止しなければならない。
【0025】
[本発明の実施形態に係るバースクリーン装置]
図1は本発明の実施形態に係るバースクリーン装置の部分側断面図であり、バースクリーン7を支持し固定するバーの下流側を上下に対向した横梁4で連結している。横梁4同士の間に、ガイドレール9に沿って移動をする回転ブラシ10を設けている。
レーキ5が上昇するのに伴って、レーキの爪8と回転ブラシ10のゴム材2の先端が当接することで、回転ブラシ10が上昇し回転する構造である。
【0026】
上下に対向した横梁4同士の間には、回転ブラシ10がスライドして上下に移動できるガイドレール9が設けられており、回転ブラシ10の数は1ないしは2個が好ましい。
図1に示すガイドレール9の形状は、側面より見ると上流側に下底を、下流側に上底を成す台形型であり、2個の回転ブラシ10が上昇と下降で異なる通路を通る。この他にも、ガイドレール9の形状は、回転ブラシ10が上昇と下降で同じ通路を通る直線型であっても良い。
【0027】
レーキ5の上昇移動において、図1(a)が示す位置関係から移動した後を(b)は示している。つまり、上昇移動をするレーキの爪8が回転ブラシ10のゴム材2の先端が当接することで、回転ブラシ10は回転しながら上昇していき、レーキの爪8から離れると、ガイドレール9に沿って回転しながら下降していく様子を示している。
【0028】
[回転ブラシ10]
図2に示す実施形態において、回転ブラシ10は円筒管13を中心にして、円筒管13の外周面全体を覆うように無数のブラシ毛14を放射状に形成している。
円筒管13はステンレスなどの軽量金属もしくは繊維強化プラスチックの素材が好ましく、中空構造の円筒管13の内部は空洞であって空気が封入されており、レーキの爪が当接すると水中で上昇しやすくなる。
【0029】
回転ブラシ10には、ブラシ毛14の長さよりも長いゴム材12が長手方向に所定の間隔をあけて複数本配置されている。図2(a)の回転ブラシ10の平面図に示すように、ゴム材12を円筒管13の長手方向の長さの中程において等間隔に2本配置されるのが好ましい。また、ゴム材12は可撓性を有する硬質ゴムが好ましい。
【0030】
図2(b)は円筒管13に形成されるブラシ毛14とゴム材12の一部分のみを示した斜視図である。ゴム材12は円筒管13を中心に対称軸として、対称に配置されている。
また、図2(c)の側面図に示すように、円筒管13を中心にして、外周面全体にブラシ毛14が放射状に形成されたところに、点対称にゴム材12が所定の間隔をあけて6本配置されている。ゴム材12が配置される数は、2~8本が好ましく、より好ましくは6本である。
さらに、回転ブラシ10を構成するゴム材12の先端形状は水流の力を受けやすいように、水流方向へ向かって湾曲している。
【0031】
図3はガイドレール19に係合する回転ブラシ10の斜視図である。ここでは、回転ブラシ10のブラシ毛14とゴム材12は省略している。
図3に示す実施形態において、回転ブラシ10を構成する円筒管13の両端部とガイドレール19は係合しているため、回転ブラシ10の両端部は摩耗しやすい。そこで、回転ブラシ10を構成する円筒管13の両端部には係合部における滑りを良くするために、超高分子量ポリエチレンなどの樹脂ライナーを形成している。さらに、昇降時に回転ブラシ10が傾いて引っかかり固定されないように、また円筒管13の両端部がガイドレール19から外れないように、フランジ16を設けている。
【0032】
上記、本発明の実施形態において、レーキ5の上昇移動に伴ってレーキの爪8が回転ブラシ10のブラシ毛14のゴム材12の先端に当接することで、回転ブラシ10が上昇し回転する力が働く。このとき、回転ブラシ10を構成する円筒管13は水に浮きやすいように浮力を有する構造であるため、回転ブラシ10は浮力によって上昇しやすくなっている。
また、回転ブラシ10のゴム材12の先端形状は水流方向へ向かって湾曲しているため、取水路を流れる流水の力を受けて回転しやすくなっている。
これらのことから、本実施形態の回転ブラシ10の上昇と回転は、レーキ5の上昇移動による動力だけに頼っておらず、省エネ運転が可能となる。
【0033】
図1に示す台形型のガイドレール9において、上昇するレーキ5によって回転ブラシ10は回転しながら上流側のガイドレール9の最上位まで移動した後、レーキの爪8がブラシの先端から外れ、台形の脚部分から下流側のガイドレール9へ移動し回転ブラシ10は回転しながら自重により下降していく。
【0034】
このようにして、回転ブラシ10は常に回転しながらガイドレール9に沿って上昇と下降移動を繰り返しているため、河川や海から取水した水の中に木切れ等があってもバースクリーン7と回転ブラシ10との間に噛み込むことなく、連続的に付着塵芥物を除去することができる。
また、本実施形態の台形型のガイドレール9においては、バースクリーン7の裏面(下流側)だけでなく、バースクリーン7を下流側で支持し固定するバーと横梁4で連結するブレース6に付着した塵芥物を除去することも可能である。
【0035】
さらに、回転ブラシ10の円筒管13の管径サイズや、ブラシ部分であるブラシ毛14とゴム材12の長さを調整することで、回転ブラシ10のブラシ部分が当たる範囲を調整できるため塵芥除去の範囲が調整可能となる。
【0036】
このような本発明のバースクリーン装置によれば、バースクリーンの裏面に付着した塵芥を連続的に除去、洗浄することができるため、常時バースクリーンの目詰まりを防止できる。
そのため、バースクリーンの目詰まりによる突発的な発電プラントの停止を回避できるだけでなく、バースクリーンの洗浄作業において、作業の手間を省き、発電プラントの運転を休止する必要も無くなる。
【0037】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
2、12 ゴム材
4、24 横梁
5、25 レーキ
6 ブレース
7、27 バースクリーン
8 レーキの爪
9、19 ガイドレール
10 回転ブラシ
13 円筒管
14 ブラシ毛
16 フランジ
20 従来のバースクリーン装置
21A 上部スプロケットホイール
21B 下部スプロケットホイール
22 ハウジング
23 案内板
26 キャリングチェーン
図1
図2
図3
図4