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  • 特許-燃料電池システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241210BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20241210BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241210BHJP
   H01M 8/04791 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04701
H01M8/04858
H01M8/04791
H01M8/04 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021005830
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110424
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江森 作馬
(72)【発明者】
【氏名】赤松 一志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022652(JP,A)
【文献】特開2018-120659(JP,A)
【文献】特開2004-192959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに接続されており、内部に冷却液が循環する冷却液循環路と、
前記冷却液に対してイオン交換処理を実施するイオン交換器と、
制御回路、
を有し、
前記冷却液循環路が、
前記燃料電池スタックが設けられた冷却流路と、
放熱流路と、
前記イオン交換器が設けられたイオン交換器流路と、
を備え、
前記制御回路が、
前記イオン交換器流路を閉じた状態で前記冷却流路と前記放熱流路に前記冷却液を循環させながら前記燃料電池スタックにより発電を行うことで前記冷却液の温度を上昇させる第1動作と、
前記第1動作の後に、前記放熱流路を閉じた状態で前記冷却流路と前記イオン交換器流路に前記冷却液を循環させながら前記イオン交換器によって前記冷却液に対して前記イオン交換処理を実施する第2動作と、
を実施するように構成されている、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記第2動作では、前記第1動作よりも低い発電量で前記燃料電池スタックにより発電を行う、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、燃料電池システムに関する。
【0002】
特許文献1には、燃料電池システムが開示されている。一般に、燃料電池システムは、冷却液循環流路を有している。冷却液循環流路内に冷却液が流れることで、燃料電池スタックが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-277407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムの冷却液中にイオンが溶出して冷却液の絶縁性が低下する場合がある。冷却液の絶縁性が過度に低下すると、燃料電池スタック内で冷却液を介して電流が漏れる。このため、燃料電池システムでは、冷却液中に溶出したイオンをイオン交換器によって除去するイオン交換処理が定期的に実施される。イオン交換処理を実施することで、冷却液の絶縁性を回復することができる。本明細書では、燃料電池システムにおいて、冷却液のイオン交換処理を効率的に実施する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する燃料電池システムは、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックに接続されているとともに内部に冷却液が循環する冷却液循環路と、前記冷却液に対してイオン交換処理を実施するイオン交換器と、制御回路、を有する。前記制御回路が、前記燃料電池スタックにより発電を行うことで前記冷却液の温度を上昇させる第1動作と、前記第1動作の後に前記イオン交換器によって前記冷却液に対して前記イオン交換処理を実施する第2動作と、を実施するように構成されている。
【0006】
この燃料電池システムでは、第1動作によって冷却液の温度を上昇させた後に、第2動作で冷却液に対するイオン交換処理が実施される。冷却液の温度が高い状態でイオン交換処理を実施できるので、冷却液中に溶出したイオンを効率的に冷却液から除去できる。したがって、短時間で冷却液の絶縁性を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】燃料電池システム10の回路図。
図2】燃料電池システム10を収容するコンテナを示す図。
図3】メンテナンス運転の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す燃料電池システム10は、定置式の燃料電池システムである。例えば、燃料電池システム10は、図2に示すコンテナ10a内に収容されている。図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池スタック20、水素ガス供給系30、酸素ガス供給系40、冷却系50、及び、制御回路70を有している。燃料電池スタック20は、積層された複数の燃料電池セルによって構成されている。水素ガス供給系30は、燃料電池スタック20に水素ガスを供給する。酸素ガス供給系40は、燃料電池スタック20に酸素ガスを供給する。燃料電池スタック20に供給された水素ガスと酸素ガスは、燃料電池スタック20内の各燃料電池セルで互いに反応する。これによって、燃料電池スタック20が有する出力端子20a、20bの間に電圧が出力される。冷却系50は、燃料電池スタック20内に冷却液を流すことで、燃料電池スタック20を冷却する。制御回路70は、燃料電池システム10の各部を制御する。
【0009】
冷却系50は、燃料電池スタック20に接続された冷却液循環路52を有している。冷却液循環路52内に冷却液が流れる。冷却液循環路52は、冷却流路52a、イオン交換流路52b、及び、放熱流路52cを有している。冷却流路52aは、燃料電池スタック20内を通過するように構成されている。図示していないが、冷却流路52aは燃料電池スタック20内で複数に分岐しており、分岐した各流路が各燃料電池セルに沿って配設されている。冷却流路52a内を流れる冷却液によって、燃料電池スタック20が冷却される。冷却流路52aには、ポンプ60が設置されている。ポンプ60は、冷却流路52a内の冷却液を上流側から下流側へ送出する。冷却流路52aの上流端は、イオン交換流路52bの下流端と放熱流路52cの下流端に接続されている。冷却流路52aの下流端は、三方弁54を介してイオン交換流路52bの上流端と放熱流路52cの上流端に接続されている。三方弁54は、冷却流路52aからイオン交換流路52bに冷却液が流れる状態と、冷却流路52aから放熱流路52cに冷却液が流れる状態との間で接続状態を切り換える。三方弁54は、制御回路70によって制御される。放熱流路52cには、ラジエータ58が設置されている。ラジエータ58は、放熱流路52c内を流れる冷却液から外気へ放熱することで、冷却液を冷却する。イオン交換流路52bの一部は、第1流路52b1と第2流路52b2に分岐している。第2流路52b2に、イオン交換器56が設置されている。イオン交換器56は、イオン交換樹脂等を用いたイオン交換器である。イオン交換器56は、第2流路52b2中を流れる冷却液に対してイオン交換処理を実施する。
【0010】
燃料電池システム10で発電運転を行う場合には、制御回路70は、水素ガス供給系30から燃料電池スタック20に水素ガスを供給するとともに酸素ガス供給系40から燃料電池スタック20に酸素ガスを供給する。これによって、燃料電池スタック20で発電を実施する。さらに、制御回路70は、発電運転中に、三方弁54を冷却流路52aから放熱流路52cに冷却液が流れる状態した状態で、ポンプ60を作動させる。これによって、冷却流路52aと放熱流路52cによって構成される環状流路に冷却液が循環する。また、制御回路70は、ラジエータ58を動作させる。したがって、ラジエータ58で冷却された冷却液が、冷却流路52aによって燃料電池スタック20に供給される。これによって、燃料電池スタック20が冷却される。
【0011】
また、制御回路70は、定期的にメンテナンス運転を実行する。図3に示すように、メンテナンス運転では、制御回路70は、出力確認動作とイオン交換動作を実施する。出力確認動作は、燃料電池スタック20で適切な出力電圧が得られるか否かを確認する動作である。イオン交換動作は、冷却液循環路52内の冷却液の絶縁性を回復させる動作である。冷却液には、燃料電池システム10の各部(例えば、冷却液循環路52の配管等)から不純物イオン(例えば、金属イオン、塩化物イオン等)が溶け出す。このため、時間の経過とともに冷却液中の不純物イオンの濃度が上昇する。冷却液中の不純物イオンの濃度が上昇すると、冷却液の絶縁性が低下する。冷却液の絶縁性が過度に低くなると、冷却液を介して電流が漏れる場合がある。したがって、制御回路70は、定期的にイオン交換動作を実施して、冷却液の絶縁性を回復させる。
【0012】
出力確認動作では、制御回路70は、上述した発電運転と同様にして、燃料電池スタック20で発電を実施する。すなわち、制御回路70は、水素ガス供給系30から燃料電池スタック20に水素ガスを供給するとともに酸素ガス供給系40から燃料電池スタック20に酸素ガスを供給することによって、燃料電池スタック20で発電を実施する。図3に示すように、出力確認動作では、出力端子20a、20bの間に比較的高い出力電圧を出力する。制御回路70は、出力確認動作において出力電圧を測定する。これによって、出力電圧が正常値であるか否かが確認される。また、制御回路70は、出力確認動作中に、冷却流路52aと放熱流路52cによって構成される循環流路に冷却液を循環させて、燃料電池スタック20を冷却する。発電によって燃料電池スタック20の温度が上昇しているので、冷却液が燃料電池スタック20によって加熱される。したがって、出力確認動作中に、冷却液の温度が上昇する。制御回路70は、冷却液の温度が60℃以上となるまで出力確認動作を継続する。なお、出力確認動作中に、ラジエータ58を動作させてもよいし、させなくてもよい。
【0013】
制御回路70は、出力確認動作の後にイオン交換動作を実施する。イオン交換動作では、図3に示すように、制御回路70は燃料電池スタック20の出力電圧を低下させる。すなわち、イオン交換動作中は、低い出力電圧が出力されるように燃料電池スタック20で発電を実施する。また、制御回路70は、冷却流路52aからイオン交換流路52bに冷却液が流れるように三方弁54を切り換える。したがって、イオン交換動作では、冷却流路52aとイオン交換流路52bによって構成される循環流路に冷却液が循環する。したがって、イオン交換流路52bの第2流路52b2に冷却液が流れる。イオン交換器56は、第2流路52b2内を流れる冷却液中の不純物イオンを、プロトン(H)または水酸化物イオン(OH)と交換する。これによって、冷却液中の不純物イオンを除去する。したがって、イオン交換動作中に、冷却液中の不純物イオン濃度が低下し、冷却液の絶縁性が回復する。
【0014】
イオン交換器56におけるイオン交換の効率は、冷却液の温度が高いほど向上する。上記のメンテナンス運転では、出力確認動作で冷却液の温度を上昇させた後に、イオン交換動作を実施する。したがって、冷却液の温度が高い状態でイオン交換動作を開始することができる。このため、イオン交換動作において効率的にイオン交換を行うことができる。したがって、短時間で冷却液の絶縁性を回復することができ、短時間でイオン交換動作を終了させることができる。したがって、実施形態の燃料電池システムでは、メンテナンス動作の時間(すなわち、燃料電池システム10を使用できない時間)を短縮することができる。
【0015】
また、上記の実施形態では、イオン交換動作中に燃料電池スタック20で低い出力電圧を出力する発電を実施した。したがって、イオン交換動作中に冷却液の温度が低下し難い。このため、より効率的にイオン交換を行うことができる。但し、冷却液の温度の低下がそれほど問題とならない場合には、イオン交換動作中に燃料電池スタック20の発電を停止させてもよい。
【0016】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0017】
10 :燃料電池システム
20 :燃料電池スタック
30 :水素ガス供給系
40 :酸素ガス供給系
50 :冷却系
52 :冷却液循環路
52a :メイン流路
52b :イオン交換流路
52c :放熱流路
56 :イオン交換器
58 :ラジエータ
60 :ポンプ
70 :制御回路
図1
図2
図3