(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B62D25/20 E
(21)【出願番号】P 2021007732
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】片山 伸哉
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-179181(JP,A)
【文献】特開2016-168923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの前部に位置するフロントメンバと、
前記フロントメンバよりも車両後方に位置するリヤメンバと、
前記フロントメンバと前記リヤメンバとをつなぐ一対のフロアサイドメンバと、
前記一対のフロアサイドメンバの車幅方向外側に配置され前記フロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びる一対のサイドシルとを備え、
前記リヤメンバは、車幅方向に延び前記一対のサイドシルを連結するリヤクロスメンバを有し、
前記一対のフロアサイドメンバの各々は、
車幅方向外側に凸の弧状になっていて前記フロントメンバと前記リヤメンバとをつなぐ弧状部であって、該弧状部の車幅方向外側に位置する前記一対のサイドシルの一方に連結する弧状部を有することを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記一対のフロアサイドメンバの弧状部の前端同士が車幅方向に互いに連結されていて、後端同士が車幅方向に互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記フロントメンバは、前記一対のサイドシルよりも車両前方に位置する一対のフロントサイドメンバを含み、
前記一対のフロントサイドメンバの各々は、前記弧状部に連結される尾部を有し、
前記尾部は、前記弧状部の接線方向に対してほぼ直交するように、車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
当該車両下部構造はさらに、前記一対のフロアサイドメンバと前記一対のサイドシルとをそれぞれ連結する一対のブレースを備え、
前記一対のブレースの各々は、前記弧状部に弧状に接合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記一対のフロアサイドメンバの各々はさらに、前記弧状部に形成され車両下方に向かって膨出する膨出部を有し、
前記膨出部には、
前輪用の揺動するサスペンションを固定するサスペンション固定部が固定される下面と、
前記下面に向かって車両前後方向から下方に傾斜する傾斜面とが形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項6】
前記膨出部は、前記弧状部に沿って弧状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両下部構造。
【請求項7】
当該車両下部構造はさらに、
前記フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって上方に隆起して延びるセンタートンネルと、
前記フロアパネルの上面で車幅方向に延び前記センタートンネルと前記一対のサイドシルのそれぞれとを連結する一対のフロアクロスメンバと、
前記センタートンネルの内側であって前記一対のフロアクロスメンバに車幅方向から見て重なる位置に設けられた補強部材とを備え、
前記センタートンネルは、前記一対のフロアサイドメンバの弧状部の前端同士が前記フロントメンバを介して連結される領域と、後端同士が前記リヤメンバを介して連結される領域とに重なるように配置され、
前記一対のフロアクロスメンバ各々は、前記弧状部と前記サイドシルが連結される領域と重なるように配置されていることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、その前部に位置する様々な部材で構成されるフロントメンバと、その後部に位置する様々な部材で構成されるリヤメンバとを、フロアパネルの下側に配置されるフロアサイドメンバによって連結する車両下部構造を備える。かかる車両下部構造は、車両に伝達される荷重や振動を車両前後方向に分散して車両の骨格部材全体で受けることで振動を抑制している。
【0003】
一方、車両旋回時には車幅方向に振動や荷重(例えば、遠心力や慣性力)が発生する。車幅方向の振動や荷重を分散することで、例えばフロアパネルの振動を抑制して車両のNV(Noise and Vibration)特性を向上させ、さらに車両の操縦安定性(操安性)を高めることができる。このため、車両下部構造の車幅方向に作用する振動や荷重も分散することが求められている。
【0004】
特許文献1には、自動車のサスペンション支持部構造が記載されている。この支持部構造は、車両前後方向に延びる一対のメインサイドフレーム1と、その車幅方向外側で所定距離を隔てて車両前後方向に延びる一対のサイドシル2と、車幅方向に延び車両前後方向に離間した複数のクロスメンバ31~35と、複数のトルクボックス41~43とを備える。複数のクロスメンバ31~35は、一対のメインサイドフレーム1を連結する。
【0005】
特許文献1の支持部構造では、車幅方向に隣接するメインサイドフレーム1とサイドシル2を複数のトルクボックス41~43で連結しつつ、車両前後方向に隣接するクロスメンバ31~35同士を連結部材37、38で連結している。このようにして、この支持部構造では、フロアパネルの下面の剛性を高めつつ、側突時のエネルギー吸収効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の支持部構造では、車幅方向の荷重や振動を受けた場合、メインサイドフレーム1とクロスメンバ31~36の接合部周辺に荷重や振動が集中してしまい、これらの荷重や振動を接合部の前方側や後方側に効率的に伝達することが困難と考えられる。
【0008】
また特許文献1の支持部構造では、メインサイドフレーム1の前方から荷重や振動が伝達された場合も、これらの荷重や振動を、一方のメインサイドフレーム1から他方のメインサイドフレーム1およびサイドシル2に効率的に伝達することについて、特に工夫がなされていず、改善の余地がある。
【0009】
したがって、特許文献1の支持部構造では、荷重や振動を車両の骨格部材全体に効率的に伝達し分散させることができず、車体の捩り振動やフロアパネルのフロア振動が発生してしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、車両前後方向や車幅方向から伝達される荷重や振動を車両全体に分散させて、車両の操安性とNV特性を向上させることができる車両下部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの前部に位置するフロントメンバと、フロントメンバよりも車両後方に位置するリヤメンバと、フロントメンバとリヤメンバとをつなぐ一対のフロアサイドメンバと、一対のフロアサイドメンバの車幅方向外側に配置されフロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びる一対のサイドシルとを備え、一対のフロアサイドメンバの各々は、車幅方向外側に凸の弧状になっていてフロントメンバとリヤメンバとをつなぐ弧状部であって、弧状部の車幅方向外側に位置する一対のサイドシルの一方に連結する弧状部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両前後方向や車幅方向から伝達される荷重や振動を車両全体に分散させて、車両の操安性とNV特性を向上させることができる車両下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る車両下部構造を示す下面図である。
【
図2】
図1の車両下部構造の一部を他の方向から見た状態を示す図である。
【
図4】
図3の車両下部構造にフロントメンバやリヤメンバから荷重や振動が伝達される様子を示す図である。
【
図5】
図3の車両下部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両下部構造の代表的な構成は、車両の床面を形成するフロアパネルを備える車両下部構造において、車両下部構造はさらに、フロアパネルの前部に位置するフロントメンバと、フロントメンバよりも車両後方に位置するリヤメンバと、フロントメンバとリヤメンバとをつなぐ一対のフロアサイドメンバと、一対のフロアサイドメンバの車幅方向外側に配置されフロアパネルの縁に沿って車両前後方向に延びる一対のサイドシルとを備え、一対のフロアサイドメンバの各々は、車幅方向外側に凸の弧状になっていてフロントメンバとリヤメンバとをつなぐ弧状部であって、弧状部の車幅方向外側に位置する一対のサイドシルの一方に連結する弧状部を有することを特徴とする。
【0015】
上記構成では、フロントメンバ、リヤメンバおよびサイドシルは、フロアサイドメンバの車幅方向外側に凸の弧状部によって連結されている。なお弧状とは、円の一部である円弧状に限らず、楕円の一部である弧状も含んでいる。このため、車両前後方向や車幅方向から荷重や振動が伝達された場合、フロントメンバとサイドシルの間およびリヤメンバとサイドシルの間では、弧状のフロアサイドメンバを介して荷重や振動が伝達される。これにより、フロントメンバとサイドシルの間およびリヤメンバとサイドシルの間で荷重や振動を伝達するとき、これら荷重や振動が局所的に集中することを回避して効率的に分散させることができる。したがって上記構成によれば、車両の操縦安定性(操安性)を高めつつ、フロアパネルの振動を抑制して車両のNV(Noise and Vibration)特性を向上させることができる。
【0016】
上記の一対のフロアサイドメンバの弧状部の前端同士が車幅方向に互いに連結されていて、後端同士が車幅方向に互いに連結されているとよい。
【0017】
これにより、フロントメンバ、リヤメンバおよび一対のサイドシルは、一対のフロアサイドメンバの弧状部を介して互いに連結される。このため、車両前後方向や車幅方向から伝達された荷重を、一対のサイドシルの間、一対の弧状部の間およびフロントメンバとリヤメンバの間で効率的に分散させることができる。
【0018】
上記のフロントメンバは、一対のサイドシルよりも車両前方に位置する一対のフロントサイドメンバを含み、一対のフロントサイドメンバの各々は、弧状部に連結される尾部を有し、尾部は、弧状部の接線方向に対してほぼ直交するように、車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜しているとよい。
【0019】
このように一対のフロントサイドメンバの尾部は、一対のフロアサイドメンバの弧状部の接線方向にほぼ直交するように傾斜して、弧状部に連結している。このため、一対のフロントサイドメンバの尾部から伝達される荷重や振動を、一対のフロアサイドメンバの弧状部に確実に伝達し、さらに弧状部を介して一対のサイドシルおよびリヤメンバに効率的に分散させることができる。
【0020】
上記の車両下部構造はさらに、一対のフロアサイドメンバと一対のサイドシルとをそれぞれ連結する一対のブレースを備え、一対のブレースの各々は、弧状部に弧状に接合されているとよい。
【0021】
このように、フロアサイドメンバとサイドシルは、フロアサイドメンバの弧状部に弧状に接合されるブレースを介して連結されている。このため、サイドシルと弧状部との間で荷重や振動が局所的に集中することを回避することができ、これらの荷重や振動を効率的に伝達し分散させることができる。
【0022】
上記の一対のフロアサイドメンバの各々はさらに、弧状部に形成され車両下方に向かって膨出する膨出部を有し、膨出部には、前輪用の揺動するサスペンションを固定するサスペンション固定部が固定される下面と、下面に向かって車両前後方向から下方に傾斜する傾斜面とが形成されているとよい。
【0023】
このように、フロアサイドメンバの弧状部に車両下方に向かって膨出する膨出部が形成されていて、サスペンション固定部が膨出部の下面に固定され、さらに膨出部の下面の車両前後には傾斜面が形成されている。このため、サスペンション固定部から荷重や振動が伝達された場合、これらの荷重や振動を、フロアサイドメンバの弧状部の膨出部の下面から傾斜面を介してフロントメンバ、サイドシルおよびリヤメンバに効率的に伝達して分散させることができる。
【0024】
上記の膨出部は、弧状部に沿って弧状に形成されているとよい。
【0025】
これにより、サスペンション固定部から荷重や振動が伝達された場合、これらの荷重や振動を、弧状の膨出部を介してサイドシルに効率的に伝達して分散させることができる。また一方のサスペンション固定部から伝達された荷重や振動を、一方のフロアサイドメンバの弧状の膨出部を介して、他方のフロアサイドメンバまで伝達して分散させることができる。
【0026】
上記の車両下部構造はさらに、フロアパネルの車幅方向の中央で車両前後方向にわたって上方に隆起して延びるセンタートンネルと、フロアパネルの上面で車幅方向に延びセンタートンネルと一対のサイドシルのそれぞれとを連結する一対のフロアクロスメンバと、センタートンネルの内側であって一対のフロアクロスメンバに車幅方向から見て重なる位置に設けられた補強部材とを備え、センタートンネルは、一対のフロアサイドメンバの弧状部の前端同士がフロントメンバを介して連結される領域と、後端同士がリヤメンバを介して連結される領域とに重なるように配置され、一対のフロアクロスメンバ各々は、弧状部とサイドシルが連結される領域と重なるように配置されているとよい。
【0027】
このため、車両前後方向や車幅方向から荷重や振動が伝達された場合、これらの荷重や振動を、フロアサイドメンバの弧状部だけでなく、センタートンネルや一対のフロアクロスメンバに伝達して分散させることができる。またフロアパネルは、一対の弧状部の間でセンタートンネルと一対のフロアクロスメンバを境界にしてフロア振動面を4分割できるため、フロア振動を抑制することができる。
【実施例】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
図1は、本発明の実施例に係る車両下部構造100を示す下面図である。図中では車両下部構造100を車両下方から見た状態を示している。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0030】
車両下部構造100は、車両の床面を形成するフロアパネル102と、フロントメンバ104とを備える。なお車両下部構造100は、
図1に示すように左右対称な構造となっているため、以下では、特に必要な場合を除き、車幅方向右側の構造のみ説明する。
【0031】
フロントメンバ104は、フロアパネル102の下側の前部に位置する部材であって、一対のフロントサイドメンバ120、122と、一対のエプロンサイドメンバ124、126と、サスペンションフレーム128と、一対のトルクボックス130、132と、連結部材133とを有する。
【0032】
車両下部構造100はさらに、リヤメンバ106と、一対のサイドシル112、114とを備える。リヤメンバ106は、フロントメンバ102よりも車両後方に位置する部材であって、車幅方向に延び一対のサイドシル112、114を連結するリヤクロスメンバ134と、一対のリヤサイドメンバ136、138とを有する。一対のリヤサイドメンバ136、138は図示のように、車幅方向外側に凸の弧状になっていて車両後側からリヤクロスメンバ134に連結されている。
【0033】
車両下部構造100はさらに、一対のフロアサイドメンバ108、110を備える。一対のサイドシル112、114は、図示のように一対のフロアサイドメンバ108、110の車幅方向外側に配置されていて、フロアパネル102の縁140、142に沿って車両前後方向に延びている。一対のフロアサイドメンバ108、110は、フロアパネル102の下側でフロントメンバ104とリヤメンバ106とをつなぐ部材であって、弧状部144、146を有する。
【0034】
車両下部構造100はさらに、一対のブレース116、118を備える。弧状部144、146は、車幅方向外側に凸の弧状になっていてフロントメンバ104とリヤメンバ104とをつないでいて、さらに車幅方向外側に位置するサイドシル112、114にブレース116、118(後述)を介して連結されている。なお弧状とは、円の一部である円弧状に限らず、楕円の一部である弧状も含んでいる。
【0035】
ここでは、弧状部144、146の前端148、150同士は、フロントメンバ104である連結部材133を介して車幅方向に互いに連結されている。また弧状部144、146の後端152、154同士は、リヤメンバ106であるリヤクロスメンバ134を介して互いに車幅方向に連結されている。
【0036】
車両下部構造100はさらに、センタートンネル156と、一対のフロアクロスメンバ158、160と、補強部材162とを備える。センタートンネル156は、フロアパネル102の車幅方向の中央で車両前後方向にわたって上方に隆起して延びている。一対のフロアクロスメンバ158、160は、フロアパネル102の上面で車幅方向に延びセンタートンネル156と一対のサイドシル112、114のそれぞれとを連結する。補強部材162は、センタートンネル156の内側であって一対のフロアクロスメンバ158、160に車幅方向から見て重なる位置に設けられている。
【0037】
センタートンネル156は、一対のフロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146の前端148、150同士がフロントメンバ104を介して連結される領域164と、後端152、154同士がリヤメンバ106を介して連結される領域166とに重なるように配置されている。一対のフロアクロスメンバ158、160は、弧状部144、146とサイドシル112、114が連結される領域168、170と重なるように配置されている。
【0038】
また一対のフロアサイドメンバ108、110はさらに、膨出部172、174を有する。膨出部172、174は、弧状部144、146の前端148、150を含む前部176、178に形成され、車両下方に向かって膨出している部位である。
【0039】
図2は、
図1の車両下部構造100の一部を他の方向から見た状態を示す図である。
図2では、フロアサイドメンバ108の膨出部172およびその周辺を示している。
図3は、
図1の車両下部構造100の一部を示す図である。なお
図3では、
図1の車両下部構造100からサスペンションフレーム128を省略した状態を示している。
【0040】
膨出部172には、
図2に示すように下面180と、各傾斜面すなわち第1傾斜面182、第2傾斜面184および
図3に示す第3傾斜面186とが形成されている。下面180には、前輪用の揺動するサスペンション188を固定するサスペンション固定部190が固定される。なおサスペンション188は、例えばサスペンション固定部190を含むサスペンションフレーム128と、
図1に示すサスペンションタワー192とで構成されている。
【0041】
第1傾斜面182は、下面180に向かって車両後方から下方に傾斜して下面180に接続されている。第2傾斜面184は、下面180に向かって車両前方から下方に傾斜して下面180に接続されている。第3傾斜面186は、
図3に示すようにフロアサイドメンバ108の下側フランジ194から下面180に向かって下方に傾斜して、下面180、第1傾斜面182および第2傾斜面184に接続されている。
【0042】
フロアサイドメンバ108の下側フランジ194は、
図3に示すトルクボックス130および連結部材133に接合されている。また
図2の点線に示すように、膨出部172の内側側面196は、略台形状になっている。さらに膨出部172は、
図3に示すように弧状部144に沿って弧状に形成されている。
【0043】
一対のフロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146は、
図3に示すように上記の前部176、178と、後部198、200とを有する。前部176、178は、車両後方に向かうほどサイドシル112、114に近づくように延びている。後部198、200は、前部176、178よりも車両後方に位置していて、車両後方に向かうほどサイドシル112、114から遠ざかるように延びている。
【0044】
また
図3に示す一対のフロントサイドメンバ120、122は、例えばサイドシル112、114よりも車両前方に位置していて、さらに尾部202、204を有する。尾部202、204は、弧状部144、146の前部176、178に連結部材133とトルクボックス130、132を介して間接的に連結される。
【0045】
また尾部202、204は、
図3に示す弧状部144、146の前部176、178のうち前端148、150付近の接線方向A、Bに対してほぼ直交するように、点線C、Dに示すように車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜している。
【0046】
連結部材133は、前面部206と後面部208と有する。前面部206は、後面部208よりも車幅方向外側に延びる延長部210、212を有する。この延長部210、212の外側側面214、216は、トルクボックス130、132に連結されている。また、延長部210、212の後面218、220は、フロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146の前部176、178に沿って傾斜していて、弧状部144、146に接合されている。
【0047】
またフロントサイドメンバ120、122の尾部202、204は、連結部材133の延長部210、212の前面222、224およびトルクボックス130、132の前面226、228に接合している。また、トルクボックス130、132と連結部材133の接合面すなわち延長部210、212の外側側面214、216に沿った面の前後で、フロントサイドメンバ120、122の尾部202、204とフロアサイドメンバ108、110の傾斜した前部176、178の前端148、150付近が対面している。
【0048】
また連結部材133の後面部208は、その両側面230、232が車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜している。フロアサイドメンバ108、110の前端148、150は、このような連結部材133とトルクボックス130、132によって挟持されている。
【0049】
以下、ブレース116およびその周辺について説明する。なおブレース118も、ブレース116と同一の構成および機能などを有する。ブレース116は、
図3に示すフロントブレース部234と、リヤブレース部236と、下面部238とを有する。
【0050】
フロントブレース部234は、フロアサイドメンバ108の前部176に沿って延びて前部176をサイドシル112に連結する部位である。フロアサイドメンバ108の前部176は、車幅方向外側に凸の円弧状に延びている。フロントブレース部234は、車幅方向内側に凸の円弧状に延びていて、さらに前部176の車幅方向外側の側面240に連続するように接合されている。その結果、これら前部176およびフロントブレース部234は、
図3に示すように平面視でS字状に湾曲した形状になるよう互いに接合されている。
【0051】
リヤブレース部236は、フロアサイドメンバ108の後部198に沿って延びて後部198をサイドシル112に連結する部位である。フロアサイドメンバ108の後部198は、車幅方向外側に凸の円弧状に延びている。リヤブレース部236は、車幅方向内側に凸の円弧状に延びていて、さらに後部198の車幅方向外側の側面242に連続するように接合されている。その結果、後部198およびリヤブレース部236は、
図3に示すように平面視でS字状に湾曲した形状になるよう互いに接合されている。
【0052】
ブレース116の下面部238は、
図3に示すようにサイドシル112の下面244とフロアサイドメンバ108の下面246とを接合する部位である。下面部238は、フロアサイドメンバ108の前部176および後部198にまたがって、前部176の下面248および後部198の下面250に接合されている。そしてブレース116の下面部238は、その車幅方向内側の側面252がフロアサイドメンバ108の弧状部144に弧状に接合されている。
【0053】
さらに、ブレース116の下面部238は、
図3に示すように、フロントブレース部234側よりもリヤブレース部236側においてより大きな領域でサイドシル112の下面244とフロアサイドメンバ108の下面246とを接合している。
【0054】
ここで
図3に示すフロアクロスメンバ158は、平面視でブレース116と重なるように配置されている。そこで、ブレース116とフロアクロスメンバ158の接続剛性を高めるために、例えば
図4(a)に斜線で示す接合領域254、256では、フロアパネル102の下面258と、ブレース116の下側フランジ260、262と、フロアサイドメンバ108の上側フランジ264、266とが重ねられて三枚接合されている。
【0055】
図4は、
図3の車両下部構造100にフロントメンバ104やリヤメンバ106から荷重や振動が伝達される様子を示す図である。なお
図3に示す鎖線Eは、車両下部構造100にブレース116から車幅方向の荷重が伝達された場合の伝達経路である。
図4(a)に示す鎖線Fは、車両下部構造100にフロントメンバ104であるフロントサイドメンバ120から車両後方に向かう荷重が伝達された場合の伝達経路を示している。
図4(b)に示す鎖線Gは、車両下部構造100にリヤメンバ106であるリヤサイドメンバ136から車両前方に向かう荷重が伝達された場合の伝達経路を示している。
【0056】
上記したようにフロントメンバ104およびリヤメンバ106はフロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146によって連結され、さらに、サイドシル112、114はブレース116、118を介して弧状部144、146に連結されている。
【0057】
このため、
図3の鎖線E、
図4(a)の鎖線Fおよび
図4(b)の鎖線Gに示すように、車両前後方向や車幅方向から荷重や振動が伝達された場合、フロントメンバ104とサイドシル112、114の間およびリヤメンバ106とサイドシル112、114の間では、弧状のフロアサイドメンバ108、110を介して荷重や振動が伝達される。これにより、フロントメンバ104とサイドシル112、114の間およびリヤメンバ106とサイドシル112、114の間で荷重や振動を伝達するとき、これら荷重や振動が局所的に集中することを回避して効率的に分散させることができる。したがって車両下部構造100によれば、車両の操安性を高めつつ、フロアパネル102の振動を抑制して車両のNV特性を向上させることができる。
【0058】
フロントサイドメンバ120、122の尾部202、204は、フロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146の前端148、150付近の接線方向A、Bに対してほぼ直交するように傾斜して(点線C、D参照)、弧状部144、146の前部176、178に間接的に連結している。
【0059】
このため、フロントサイドメンバ120、122の尾部202、204から伝達される荷重や振動を、弧状部144、146の前部176、178に確実に伝達し、さらに弧状部144、146を介してサイドシル112、114およびリヤメンバ106に効率的に分散させることができる。
【0060】
フロアサイドメンバ108、110とサイドシル112、114は、弧状部144、146に弧状に接合されるブレース116、118を介して連結されている。このため、サイドシル112、114と弧状部144、146との間で荷重や振動が局所的に集中することを回避することができ、これらの荷重や振動を効率的に伝達し分散させることができる。
【0061】
また、フロアサイドメンバ108、110とサイドシル112、114がブレース116、118を介して連結されているため、一対のフロアサイドメンバ108、110の支持点を増やすことができる。このため、フロアサイドメンバ108、110自体の振動を抑制しつつ、一方のリヤサイドメンバ136、138から他方のフロアサイドメンバ108、110に伝達された荷重や振動を、剛性の高いサイドシル112、114に効率的に伝達し分散させることができる。
【0062】
フロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146には車両下方に向かって膨出する膨出部172、174が形成されている。また膨出部172では、
図2に示すようにサスペンション固定部190が下面180に固定され、さらに膨出部172の下面180の車両前後には第1傾斜面182および第2傾斜面184が形成されている。
【0063】
このため、サスペンション固定部190から荷重や振動が伝達された場合、これらの荷重や振動を、弧状部144の膨出部172の下面180から第1傾斜面182および第2傾斜面184を介して、フロントメンバ104、サイドシル112およびリヤメンバ106に効率的に伝達して分散させることができる。
【0064】
さらに、膨出部172、174は、弧状部144、146に沿って弧状に形成されている。このため、サスペンション固定部190から荷重や振動が伝達された場合、これらの荷重や振動を、弧状の膨出部172を介してサイドシル112に効率的に伝達して分散させることができる。また一方のサスペンション固定部190から伝達された荷重や振動を、一方のフロアサイドメンバ108の弧状の膨出部172を介して、他方のフロアサイドメンバ110まで伝達して分散させることができる。
【0065】
センタートンネル156は、弧状部144、146の前端148、150同士がフロントメンバ104を介して連結される領域164(
図1参照)と、後端152、154同士がリヤメンバ106を介して連結される領域166とに重なるように配置されている。さらにフロアクロスメンバ158、160は、弧状部144、146とサイドシル112、114が連結される領域168、170と重なるように配置されている。
【0066】
このため、車両前後方向や車幅方向から荷重や振動が伝達された場合、これらの荷重や振動を、フロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146だけでなく、センタートンネル156やフロアクロスメンバ158、160に伝達して分散させることができる。またフロアパネル102は、一対の弧状部144、146の間でセンタートンネル156とフロアクロスメンバ158、160を境界にしてフロア振動面を4分割できるため、フロア振動を抑制することができる。
【0067】
さらに、フロアサイドメンバ108の弧状の前部176および後部198に沿ってそれぞれ延びるブレース116のフロントブレース部234およびリヤブレース部236によって、フロアサイドメンバ108の前部176および後部198とサイドシル112とを連結している。
【0068】
このため、サイドシル112に車幅方向から伝達される荷重や振動を、
図3の鎖線Eに示すようにブレース116のフロントブレース部234およびフロアサイドメンバ108の前部176を介してフロントメンバ104に伝達することができる。またこれらの荷重や振動を、鎖線Eに示すようにブレース116のリヤブレース部236およびフロアサイドメンバ108の後部198を介してリヤメンバ106に伝達することができる。
【0069】
またフロントメンバ104からフロアサイドメンバ108に伝達される荷重や振動を、
図4(a)の鎖線Fに示すようにフロアサイドメンバ108の前部176およびブレース116のフロントブレース部234を介して剛性の高いサイドシル112に効率的に伝達することができる。さらに、リヤメンバ106からフロアサイドメンバ108に伝達される荷重や振動を、
図4(b)の鎖線Gに示すようにフロアサイドメンバ108の後部198およびブレース116のリヤブレース部236を介してサイドシル112に効率的に伝達することができる。
【0070】
このように車両下部構造100では、車両前後方向や車幅方向から伝達された荷重や振動が局所的に集中することを回避して、これらの荷重や振動を効率的に分散させることができるため、車両の操安性を高めつつ、フロアパネル102の振動を抑制して車両のNV特性を向上させることができる。
【0071】
また、ブレース116のフロントブレース部234は、フロアサイドメンバ108の前部176の車幅方向外側の側面240に連続するように接合されていて、リヤブレース部236は、フロアサイドメンバ108の後部198の車幅方向外側の側面242に連続するように接合されている。
【0072】
このため、フロントブレース部234とフロアサイドメンバ108の前部176との接合面およびリヤブレース部236とフロアサイドメンバ108の後部198との接合面に荷重や振動が局所的に集中することを回避して、荷重や振動の伝達効率を高めることができる。
【0073】
フロアサイドメンバ108の前部176とブレース116のフロントブレース部234は円弧状であるため、これらの部位に荷重や振動が局所的に集中することを低減して、荷重や振動の伝達効率を高めることができる。また、円弧状の前部176と円弧状のフロントブレース部234が接合された状態において平面視でS字状に湾曲した形状を形成している。このため、フロアサイドメンバ108の前部176とフロントブレース部234との接合面で荷重や振動が局所的に集中することを回避して、荷重や振動の伝達効率を高めることができる。
【0074】
フロアサイドメンバ108の後部198とブレース116のリヤブレース部236は円弧状であるため、これらの部位に荷重や振動が局所的に集中することを低減して、荷重や振動の伝達効率を高めることができる。また、円弧状の後部198と円弧状のリヤブレース部236が接合された状態において平面視でS字状に湾曲した形状を形成している。このため、フロアサイドメンバ108の後部198とリヤブレース部236との接合面で荷重や振動が局所的に集中することを回避して、荷重や振動の伝達効率を高めることができる。
【0075】
ブレース116の下面部238は、フロアサイドメンバ108の前部176および後部198にまたがって前部176および後部198の下面248、250に接合されている。さらに下面部238の側面252は、これら円弧状の前部176および後部198に沿うように延びている。このため、ブレース116とフロアサイドメンバ108の間で振動や荷重を伝達する場合、ブレース116の下面部238に振動や荷重が局所的に集中することを回避することができ、荷重や振動の伝達効率を高めることができる。
【0076】
フロアサイドメンバ108は、その前部176の車幅方向外側の側面240に接合されたトルクボックス130を介して、サイドシル112とフロントサイドメンバ120に連結されている。このため、フロントサイドメンバ120およびトルクボックス130を含むフロントメンバ104と、サイドシル112との間で振動や荷重の伝達効率を高めることができる。
【0077】
ブレース116の下面部238は、フロントブレース部234側よりもリヤブレース部236側においてより大きな領域でサイドシル112の下面244とフロアサイドメンバ108の下面246とを接合している。このため、ブレース116のリヤブレース部236側において振動や荷重の伝達効率を高めて、サイドシル112とリヤメンバ106の間で荷重や振動の伝達効率を高めることができる。
【0078】
フロアクロスメンバ158は、フロアパネル102の上面に接合され、さらに平面視でブレース116と重なるように配置されている。このため、ブレース116の下面部238、サイドシル112、フロアサイドメンバ108の車幅方向外側の側面240、242およびフロアクロスメンバ158によって閉断面が形成されて、剛性を高めることができる。
【0079】
連結部材133の後面部208は、その両側面230、232が車両後方に向かうほど車幅方向内側に傾斜している。このため、一方のフロアサイドメンバ108の前端148から伝達される荷重や振動を、他方のフロントサイドメンバ122の尾部204に伝達しやすくなる。また、後面部208の両側面230、232が、フロアサイドメンバ108、110で挟まれるので、一方の前端148から他方の前端150に荷重や振動を伝達しやすくなる。
【0080】
連結部材133の延長部210、212の後面218、220は、フロアサイドメンバ108、110の弧状部144、146の前部176、178に沿って傾斜しているため、弧状部144、146との接合面積を増やすことができる。さらに、延長部210、212は、その後面218、220と弧状部144、146が接合され、その外側側面214、216とトルクボックス130、132が連結されている。このように延長部210、212は、弧状部144、146およびトルクボックス130、132に平面視で略L字状に例えば溶接されることにより、接合剛性を高めることができる。
【0081】
フロントサイドメンバ120、122の尾部202、204は、連結部材133の延長部210、212の前面222、224およびトルクボックス130、132の前面226、228に接合している。このため、フロントサイドメンバ120、122からトルクボックス130、132および連結部材133に荷重や振動を伝達することができる。
【0082】
トルクボックス130、132と連結部材133との接合面の前後で、フロントサイドメンバ120、122の尾部202、204とフロアサイドメンバ108、110の傾斜した前部176、178とは対面している。このため、車両前方からの荷重や振動をフロアサイドメンバ108、110に伝達しやすく、さらに前部176、178の前面全体で荷重や振動を伝達することができる。しかもフロントサイドメンバ120、122の尾部202、204の点線C、Dに示す傾斜方向と接合面が重なっているので、荷重や振動をより効率的に伝達することができる。
【0083】
フロアサイドメンバ108、110の前端148、150は、連結部材133とトルクボックス130、132によって挟持されている。そのため、フロアサイドメンバ108、110自体の車幅方向の振動を抑制することができる。
【0084】
なお車両下部構造100では、フロントメンバ104をフロアパネル102の下側の前部に配置し、さらにフロアサイドメンバ108、110をフロアパネル102の下側に配置したが、これに限定されない。一例として、フロントメンバ104をフロアパネル102の上側の前部に配置し、さらにフロアサイドメンバ108、110をフロアパネル102の上側に配置してもよい。そして、フロアサイドメンバ108、110がフロアパネル102の上側に配置されている場合、フロアサイドメンバ108、110の膨出部172、174を車両上方に向かって膨出させ、さらにその膨出部172、174の上面にサスペンション固定部190、268を固定してもよい。
【0085】
図5は、
図3の車両下部構造100の変形例を示す図である。
図5(a)に示す変形例の車両下部構造100Aは、一対のフロアサイドメンバ108A、110Aの前端148A、150A同士が、連結部材133Aを介在せずに車幅方向に互いに連結されている点で、車両下部構造100と異なる。なお一対のフロアサイドメンバ108A、110Aの前端148A、150A同士は一体化してもよい。
【0086】
図示は省略するが、車両下部構造100Aの一対のフロアサイドメンバ108A、110Aの後端152、154同士は、リヤクロスメンバ134を介在せずに車幅方向に互いに連結または一体化してもよい。さらに、一対のフロアサイドメンバ108A、110Aは、連結部材133Aと一体化してもよい。
【0087】
車両下部構造100、100Aの、一対のフロアサイドメンバ108、108A、100、110Aと、フロントサイドメンバ120、122とは、一体化してもよい。なおこの場合は、連結部材133、133Aも、一対のフロアサイドメンバ108、108A、100、110Aおよびフロントサイドメンバ120、122と一体化することになる。
【0088】
車両下部構造100、100Aの一対のフロアサイドメンバ108、108A、100、110Aの弧状部144、146は、一対のブレース116、118を介さずに一対のサイドシル112、114にそれぞれ直接接合されていてもよい。このような場合、フロントメンバ104、リヤメンバ106および一対のサイドシル112、114は、一対のフロアサイドメンバ108、108A、100、110Aの弧状部144、146を介して互いに連結される。このため、車両前後方向や車幅方向から伝達された荷重を、一対のサイドシル112、114の間、一対の弧状部144、146の間およびフロントメンバ104とリヤメンバ106の間で効率的に分散させることができる。
【0089】
車両下部構造100の連結部材133において、延長部210、212や前面部206はトルクボックス130、132と一体であってもよい。また、延長部210は、連結部材133と別体であってもよい。さらに、延長部210を含む連結部材133が一対のフロアサイドメンバ108、110と一体構造であってもよい。
【0090】
またブレース116において、フロントブレース部234およびリヤブレース部236は、弧状部144の側面240、242の稜線に沿って弧状部144に接合されているため、局所的な荷重や振動の集中を抑制して、荷重や振動を伝達しやすくなる。
【0091】
車両下部構造100、100Aの弧状部144、146とサイドシル112、114とは、接続せずに近接配置してもよい。このような場合であっても、少なくともフロアパネル102の振動を抑制することができ、さらに側突時にサイドシル112、114が車幅方向内側に変形または移動して弧状部144、146に接触したときに荷重や振動を車両全体に伝達することもできる。
【0092】
図5(b)に示す変形例の車両下部構造100Bは、一体化された円弧状のフロアサイドメンバ108B、110Bを備える。車両下部構造100Bでは、フロアサイドメンバ108Bの膨出部172Aがサスペンションフレーム128のサスペンション固定部190に向かって膨出しこれに固定された後、そのままの高さを維持してフロアサイドメンバ110Bの膨出部174Aまで延びて、膨出部174Aが他方のサスペンション固定部268に固定されている。
【0093】
このように車両下部構造100Bでは、一体化された円弧状のフロアサイドメンバ108B、110Bによってサスペンション固定部190、268同士が車幅方向に互いに連結されている。このため、サスペンション固定部190、268の間、またはサスペンション固定部190、268とサイドシル112、114の間で荷重や振動を効率的に伝達することができる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、車両下部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
100、100A、100B…車両下部構造、102…フロアパネル、104…フロントメンバ、106…リヤメンバ、108、108A、108B、110、110A、110B…フロアサイドメンバ、112、114…サイドシル、116、118…ブレース、120、122…フロントサイドメンバ、124、126…エプロンサイドメンバ、128…サスペンションフレーム、130、132…トルクボックス、133、133A…連結部材、134…リヤクロスメンバ、136、138…リヤサイドメンバ、140、142…フロアパネルの縁、144、146…弧状部、148、148A、150、150A…弧状部の前端、152、154…弧状部の後端、156…センタートンネル、158、160…フロアクロスメンバ、162…補強部材、164、166、168、170…領域、172、172A、174、174A…膨出部、176、178…弧状部の前部、180…膨出部の下面、182…第1傾斜面、184…第2傾斜面、186…第3傾斜面、188…サスペンション、190、268…サスペンション固定部、192…サスペンションタワー、194…フロアサイドメンバの下側フランジ、196…膨出部の内側側面、198、200…弧状部の後部、202、204…フロントサイドメンバの尾部、206…連結部材の前面部、208…連結部材の後面部、210、212…延長部、214、216…延長部の外側側面、218、220…延長部の後面、222、224…延長部の前面、226、228…トルクボックスの前面、230、232…連結部材の後面部の両側面、234…フロントブレース部、236…リヤブレース部、238…ブレースの下面部、240…フロアサイドメンバの前部の車幅方向外側の側面、242…フロアサイドメンバの後部の車幅方向外側の側面、244…サイドシルの下面、246…フロアサイドメンバの下面、248…フロアサイドメンバの前部の下面、250…フロアサイドメンバの後部の下面、252…ブレースの下面部の側面、254、256…接合領域、258…フロアパネルの下面、260、262…ブレースの下側フランジ、264、266…フロアサイドメンバの上側フランジ