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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/20 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J19/20 L
B41J2/01 303
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021008266
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112413
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西 真冬
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 敦彦
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-301798(JP,A)
【文献】特開2002-079720(JP,A)
【文献】特開2007-232048(JP,A)
【文献】特開2015-013451(JP,A)
【文献】特開2016-124232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0175669(US,A1)
【文献】中国実用新案第212148011(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 19/20
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、を備え、
前記キャリッジは、
前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、
前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、
前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備え
前記押圧部材の押圧力は、前記キャリッジが前記ガイド部材に対して付与する押圧力よりも小さいことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記押圧部材の押圧力は、前記キャリッジが前記ガイド部材に対して付与する押圧力の半分よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項3】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、を備え、
前記キャリッジは、
前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、
前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、
前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備え
前記含浸部材は、前記摺動部に対して前記走査方向の両側に配置されることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、を備え、
前記キャリッジは、
前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、
前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、
前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備え
前記押圧部材は、前記走査方向と交差する方向に線状に延びる部分で、前記含浸部材を押圧することを特徴とする記録装置。
【請求項5】
前記摺動部と前記含浸部材と前記押圧部材とを搭載するスライダーを有し、前記スライダーが前記キャリッジに対して着脱可能に設けられることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記キャリッジには複数のスライダーが設けられ、当該複数のスライダーは同一形状であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記スライダーと前記摺動部とが別体とされ、
前記摺動部は、前記スライダーに対して少なくとも前記走査方向と交差する方向と平行な軸線を中心に揺動可能に設けられていることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項8】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、
前記キャリッジに対して着脱可能に設けられるスライダーと、を備え、
前記キャリッジは、
前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、
前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、
前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備え
前記スライダーは、前記摺動部と前記含浸部材と前記押圧部材とを搭載し、
前記スライダーと前記摺動部とが別体とされ、
前記摺動部は、
前記スライダーに対して少なくとも前記走査方向と交差する方向と平行な軸線を中心に揺動可能に設けられ、
前記走査方向に沿う方向において所定の長さで前記ガイド部材に当接する当接部と、
前記当接部の前記走査方向における中間位置の裏面に前記キャリッジと当接する凸曲面を有する突起部とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
前記摺動部の前記当接部は、前記走査方向における中央部に前記ガイド部材に当接しない凹部を有することを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項10】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、
前記キャリッジに対して着脱可能に設けられた複数のスライダーと、を備え、
前記キャリッジは、
前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、
前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、
前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備え
前記複数のスライダーは、同一形状であり、かつ、それぞれ前記摺動部と前記含浸部材と前記押圧部材とを搭載し、
前記複数のスライダーのそれぞれにおける前記ガイド部材と対向する面とは反対の面に設けられ、前記含浸部材を保持する保持部と、
前記保持部における前記ガイド部材に対向する位置に形成された開口とを有し、
前記含浸部材の外周部の前記走査方向に対向する2つの辺が開口の外縁に支持され、
前記含浸部材の前記走査方向における中央部が前記押圧部材に押圧されて前記ガイド部材に当接することを特徴とする記録装置。
【請求項11】
搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、
前記キャリッジに対して着脱可能に設けられたスライダーと、を備え、
前記キャリッジは、
前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、
前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、
前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備え
前記スライダーは、前記摺動部と前記含浸部材と前記押圧部材とを搭載し、
前記スライダーと前記摺動部とが別体とされ、
前記摺動部は、前記スライダーに対して少なくとも前記走査方向と交差する方向と平行な軸線を中心に揺動可能に設けられ、
前記スライダーにおける前記ガイド部材と対向する面とは反対の面に設けられ、前記含浸部材を保持する保持部と、
前記保持部における前記ガイド部材に対向する位置に形成された開口とを有し、
前記含浸部材の外周部の前記走査方向に対向する2つの辺が開口の外縁に支持され、
前記含浸部材の前記走査方向における中央部が前記押圧部材に押圧されて前記ガイド部材に当接することを特徴とする記録装置。
【請求項12】
前記保持部に対して前記走査方向に並ぶ位置に前記潤滑剤を貯留する貯留部を有し、前記貯留部と前記保持部との間には、前記貯留部から前記保持部に保持される前記含浸部材に前記潤滑剤を導く溝部が設けられることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の媒体に記録する記録ヘッドを搭載するキャリッジを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例として、用紙等の記録媒体に記録する記録ヘッドを搭載するキャリッジと、キャリッジを記録媒体の搬送方向と交差する走査方向に移動可能に支持するガイド部材とを備えるシリアル式の記録装置が知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガイド部材がガイドレールである構成の記録装置において、潤滑剤が塗布されたガイドレールにキャリッジおよびスライド部材の摺動部が摺動する構成が開示されている。キャリッジがガイドレールに案内されて走査方向に移動する際の摺動抵抗による負荷が潤滑剤により低減される。
【0004】
また、特許文献2には、ガイド部材がガイド軸である構成の記録装置において、ガイド軸に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部を備えた構成が開示されている。潤滑剤供給部は、ガイド軸の外周面に接触することで潤滑剤を供給する。潤滑剤供給部には、潤滑剤を含侵させたフェルト等の部材が用いられる。なお、特許文献2には、ガイド部材がガイド板である構成も開示されるが、ガイド板に対する潤滑剤供給部の具体的な構成については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-13451号公報
【文献】特開2016-124232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の構成において、特許文献2のように潤滑剤を供給する潤滑剤供給部を備える構成を想定した場合、ガイドレールに対するキャリッジの姿勢の変化に応じて、潤滑剤供給部を構成するフェルト等の含浸部材がガイドレールに当接する強さがばらつく場合がある。当接の強さが弱い側にばらついた場合、含浸部材がガイドレールの被摺動面(レール面)から離間したり被摺動面に対する当接圧が過剰に小さくなったりして、摺動部と被摺動面との間への潤滑剤の供給が滞る可能性があるという課題がある。この場合、潤滑剤の不足による大きな摺動抵抗によってキャリッジの移動速度がばらつき、これに起因して記録装置の記録精度が低下したり、キャリッジの摺動部が早期に摩耗し記録装置11の寿命が短くなったりするなどの不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する記録装置は、搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、を備え、前記キャリッジは、前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の記録装置を示す正面図。
図2】記録装置を示す模式側断面図。
図3】記録部およびガイド部材を示す側面図。
図4】キャリッジガイド構造を示す側面図。
図5】記録部を底面側から見た斜視図。
図6】キャリッジにおける複数の摺動箇所を示す斜視図。
図7】キャリッジにおける2種類の摺動箇所を示す斜視図。
図8】キャリッジに組み付けられた摺動ユニットの断面を示す背断面図。
図9】摺動ユニットを摺動面側から見た斜視図。
図10】摺動ユニットを摺動面と反対側の面から見た斜視図。
図11】摺動ユニットのスライダーを摺動面側から見た斜視図。
図12】摺動ユニットのスライダーを摺動面側とは反対側の面から見た斜視図。
図13】摺動部の作用を示す断面図。
図14】摺動部の揺動による作用を示す断面図。
図15】貯留部から含浸部材へ潤滑剤が供給される様子を示す摺動ユニットの部分断面図。
図16】キャリッジに対する摺動ユニットの着脱手順を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、記録装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の記録装置は、用紙などの媒体に対してインク等の液体を吐出することにより媒体に文字や画像等を印刷(記録)するインクジェット式のプリンターである。
【0010】
記録装置は、芯部材に記録媒体が巻き回されたロール体を回転可能に保持するとともに、ロール体から引き出された記録媒体の表面に液体を吐出することにより、その記録媒体に画像などを記録する。
【0011】
<記録装置の構成>
図1に示すように、記録装置11は、筐体12と、筐体12を支持する脚部13とを備える。筐体12は、略直方体形状を有する。筐体12は、前壁121、後壁122、第1側壁123、第2側壁124、上壁125および、脚部13によって支持されるベースフレーム14とを有する。
【0012】
以下、記録装置11が水平面上に置かれているものとして鉛直方向Zを規定する。鉛直方向Zに対して直交する面に沿う方向であってキャリッジ31の移動方向である走査方向X、鉛直方向Zに対して直交する面に沿う方向であって走査方向Xと交差する方向を、キャリッジ31に搭載される記録ヘッド32が記録媒体に記録するときの記録位置における媒体の搬送方向であるので搬送方向Yという。なお、走査方向Xは、キャリッジ31が往復移動するときの一方の方向である往動方向である+X方向と、その往動方向と反対の方向である-X方向とを含む。また、媒体が搬送される搬送方向D(図2参照)は、記録媒体の搬送経路上の位置に応じて変化する。搬送方向Yは、記録位置における搬送方向Dに等しい。また、本実施形態では、走査方向Xは、記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に等しいので、幅方向Xともいう。さらに、鉛直方向Zは、鉛直方向の一方の方向である下方向+Zと、下方向+Zと反対の方向である上方向-Zとを含む。なお、本実施形態では、走査方向X、搬送方向Yおよび鉛直方向Zは、互いに直交する。
【0013】
図1に示すように、筐体12は、2つの円筒状のロール体25を収容する収容部15を有する。収容部15は、筐体12の前壁121における下部に開口16を有し、この開口16を介して正面側からロール体25の着脱が可能である。
【0014】
<搬送部>
記録装置11は、ロール体25から記録媒体23を搬送する搬送部20を備える。搬送部20は、ロール体25から記録媒体23を巻き解きつつ給送する給送部21と、給送された記録媒体23を挟持して搬送する複数の搬送ローラー対22(図2参照)とを備える。記録装置11は、搬送された記録媒体23を支持する支持台28を備える。支持台28は、キャリッジ31が走査方向Xに移動するときに記録ヘッド32と対向する領域に沿って延びている。支持台28の上方は、記録部30が支持台28に支持された記録媒体23に記録を行うときにキャリッジ31が移動する走査領域となっている。また、支持台28上の領域は、記録ヘッド32が記録媒体23に記録を行う記録領域となっている。
【0015】
支持台28は、筐体12内で幅方向Xに延びる矩形板状をなす部材である。ロール体25から巻き解かれて送出された記録媒体23は、筐体12内を支持台28まで搬送された後、支持台28上を搬送方向Yに向かって搬送される。
【0016】
図1に示すように、記録装置11は、鉛直方向Zに並んだ状態で2つのロール体25を収容部15に収容可能である。ロール体25は、記録対象の記録媒体23が芯部材24に巻き回されることで構成される。
【0017】
2つのロール体25の端部は、ロール体25の一端を保持する第1保持部26と、ロール体25の他端を保持する第2保持部27とにより保持されている。ロール体25は、第1保持部26および第2保持部27に保持されたままの状態で、開口16を通じて筐体12から取り外し可能に構成される。
【0018】
第1保持部26と第2保持部27とは、幅方向Xに延びる軸線を回転中心として筐体12に対して回転可能に装着される。これにより、ロール体25は、筐体12に対して回転可能に保持される。
【0019】
ロール体25は、不図示の駆動部によって回転駆動される。不図示の駆動部は、不図示の駆動モーターの正転駆動により、第1保持部26および第2保持部27を、ロール体25に巻き回された記録媒体23が送出される方向に回転させる。なお、実際に記録が行なわれる際には、2つのロール体25のうちの一方のみから記録媒体23が送出される。2つのロール体25のうち一方の記録媒体23が無くなると、予め準備した他方のロール体25から引き出した記録媒体23をセットすることで短い途切れ時間で印刷の再開が可能である。
【0020】
図2に示すように、ロール体25から給送された記録媒体23は、図2に二点鎖線で示される経路に沿って搬送ローラー対22へ送られる。そして、複数の搬送ローラー対22は支持台28上を通る経路で記録媒体23を搬送する。支持台28に支持された記録媒体23に対して記録部30が記録し、記録後の記録媒体23は必要に応じて切断された後、排出口19から排出される。また、記録装置11は、筐体12の上壁125に操作部18を備える。操作部18は、記録装置11に指示を与えるときにユーザーにより操作される。操作部18は、操作ボタンとタッチパネル式の表示部とのうち少なくとも一方を含む。
【0021】
<記録部>
図1に示すように、記録装置11は、筐体12内において収容部15よりも上方の位置に記録部30を備える。記録部30は、搬送方向Yに搬送される記録媒体23に記録を行う記録ヘッド32と、記録ヘッド32を搭載し、搬送方向Yと交差する走査方向Xに移動(走査)するキャリッジ31と、キャリッジ31を走査方向Xに沿って移動可能にガイドするガイド部材50とを備える。ガイド部材50は、平坦面を有する。
【0022】
キャリッジ31は、ガイド部材50に沿って案内される。また、キャリッジ31は、ガイド部材50に沿って延びるように張設された無端状のタイミングベルト34の一部に固定されている。タイミングベルト34の走査方向Xの両端部は、一対のプーリー33に巻き掛けられている。一対のプーリー33のうち一方がキャリッジモーター35(図3参照)の出力軸に連結された駆動プーリーであり、他方が従動プーリーである。キャリッジモーター35が正逆転駆動されることにより、キャリッジ31が走査方向Xに往復移動する。キャリッジ31が往復移動する過程で記録ヘッド32がノズルからインク等の液体を吐出することで記録媒体23への記録が行われる。
【0023】
ガイド部材50は、支持台28よりも上方の位置でキャリッジ31を支持する。ガイド部材50は、走査方向Xに沿って延びる部材である。ガイド部材50は、キャリッジ31を走査方向Xに沿って移動可能に支持する。
【0024】
図1図2に示すように、キャリッジ31は、支持台28と対向可能な下部に記録ヘッド32を搭載する。キャリッジ31は、キャリッジモーター35が駆動されることにより、ガイド部材50に沿って移動することで、記録ヘッド32を走査方向Xに往復移動させる。記録ヘッド32は、記録媒体23の搬送方向Yと交差する幅方向Xに走査しながら、XY平面と平行な面である記録媒体23の被記録面に液体を吐出して記録を行う。
【0025】
記録された記録媒体23は排出口19へと案内される。記録媒体23において記録された部分が、不図示の切断部によって切断されてもよい。その場合、切断された記録媒体23が排出口19から排出される。
【0026】
次に、図3を参照して、記録部30とガイド部材50との詳細な構成を説明する。
図3に示すように、記録部30は、キャリッジ31と、キャリッジ31に搭載された記録ヘッド32とを備える。キャリッジ31は、記録ヘッド32を支持する部分であるキャリッジ本体36と、キャリッジ本体36の後方に配置されてキャリッジ本体36とガイド部材50との間に介在しキャリッジ31を走査方向Xに移動可能な状態でガイド部材50に対して係合するキャリッジ支持部37とを備える。ガイド部材50は、例えば、筐体12内に設けられたメインフレームの一部により構成されてもよい。この場合、ガイド部材50は、フレーム本体51と、キャリッジ31を案内するレール部52とを備える。なお、ガイド部材50は、メインフレームを兼ねる構成ではなく、メインフレームとは別体で筐体12内に架設されてもよい。
【0027】
<記録部の構成>
図3に示すように、記録部30は、ガイド部材50に沿って走査方向Xに移動可能に支持されるキャリッジ31と、キャリッジ31に搭載された記録ヘッド32とを備える。
【0028】
キャリッジ支持部37は、鉛直方向Zに延びる立設部37Aと、立設部37Aの上端部から後方(-Y方向)へ延出する延出部37Bとを有する。
キャリッジ支持部37には、ベルト固定部37Cを介してタイミングベルト34が固定されている。また、キャリッジ支持部37には、リニアエンコーダー38のセンサーが固定されている。さらに、本例のキャリッジ支持部37には、歯車39が取着されている。例えば、キャリッジ31が走査方向Xの経路上の所定位置まで移動すると、歯車39は駆動歯車と噛み合い、駆動歯車の回転力が歯車39を介してキャリッジ31内に入力される。キャリッジ31が有する所定の駆動機構が駆動される。
【0029】
図3に示すように、キャリッジ31は、ガイド部材50の平坦面の一例としてのレール面53~55に当接して摺動する摺動部61を備える。本実施形態では、摺動部61は摺動ユニット60としてユニット化されている。キャリッジ31には、複数の摺動ユニット60が着脱可能に装着されている。
【0030】
複数の摺動ユニット60は、摺動部61をレール面に対して+Z方向に押し付ける第1の摺動ユニット60と、摺動部61をレール面に対して-Y方向に押し付ける第2の摺動ユニット60と、摺動部61をレール面に対して+Y方向に押し付ける第3の摺動ユニット60とを備える。
【0031】
レール部52は、キャリッジ31が走査方向Xに移動するときにキャリッジ31側の摺動部61が摺動する被摺動面となる平坦面よりなるレール面53~55を有する。本例のレール部52は、鉛直方向Zと直交するレール面53と、搬送方向Yと直交するレール面54,55とを有する。詳しくは、図3に示す例では、レール部52は、鉛直方向Zと直交しかつ+Z方向を向く平坦面よりなる第1レール面53と、搬送方向Yと直交しかつ+Y方向を向く平坦面よりなる第2レール面54と、搬送方向Yと直交しかつ-Y方向を向く平坦面よりなる第3レール面55とを有する。
【0032】
図3に示す側面視において、摺動部61が第1レール面53を+Z方向に強く押すと、キャリッジ31には反時計回り方向に回動変位しようとするため、他の摺動部61がレール面54,55から浮き上がり易くなる。また、摺動部61が第2レール面54を-Y方向に強く押すと、キャリッジ31が時計回り方向に回動変位しようとするため、他の摺動部61がレール面53,55から浮き上がり易くなる。さらに、摺動部61が第3レール面55を+Y方向に強く押すと、キャリッジ31が時計回り方向に回動変位しようとするため、他の摺動部61がレール面53に過度に強く当たったり、レール面54から浮き上がったりし易くなる。
【0033】
摺動部61を-Y方向に向かって第2レール面54に押し当てるとともに摺動部61を+Y方向に向かって第3レール面55に押し当てることで、キャリッジ31の搬送方向Yの位置変動を抑える。つまり、ガイド部材50にガイドされて移動中のキャリッジ31を搬送方向Yに位置決めする。また、摺動部61を鉛直方向Z(+Z方向)に向かって第1レール面53に押し当てることで、キャリッジ31の鉛直方向Zの位置変動が抑えられる。
【0034】
図3に示すように、記録ヘッド32は、幅方向Xと搬送方向Yとで構成されるXY平面に平行なノズル面32Aを有する。すなわち、記録ヘッド32は、支持台28上を搬送方向Yに搬送される記録媒体23の被記録面に平行なノズル面32Aを有する。
【0035】
<記録部の構成>
図4は、ガイド部材50を取り外した状態でのキャリッジ支持部37を示す。図4に示すように、キャリッジ31は複数の摺動部61を有する。すなわち、キャリッジ31は、鉛直方向Zを向く摺動部61と、-Y方向を向く摺動部61と、+Y方向を向く摺動部61とを含む向く方向の異なる複数種の摺動部61を有する。向きの異なる複数種の摺動部61は、どれも摺動機構GSの一部としてキャリッジ31に組み付けられている。摺動機構GSは、スライド方式でキャリッジ31に組み付けられる摺動ユニット60を備える。そして、摺動ユニット60をキャリッジ31に組み付けることで、摺動部61がキャリッジ31の所定位置に所定の向きに組み付けられている。
【0036】
図4に示すように、キャリッジ支持部37には、被組付部41~43が設けられている。摺動部61を有する摺動ユニット60が被組付部41~43に組み付けられることで、各摺動部61はキャリッジ支持部37に対して所定の向きに組み付けられる。
【0037】
摺動ユニット60は、摺動部61と、摺動部61が露出する状態で組み付けられたスライダー62(ケーシング)とを有する。摺動ユニット60は、被組付部41~43に対してスライド挿着されることで所定の位置に位置決めされ、その位置決めされた状態でねじ80により被組付部41~43に固定されることで、その位置決めされた所定の位置に保持される。
【0038】
キャリッジ31は、押し当て方向の異なる複数の各摺動部61をそれぞれ対応するレール面53~55に押し付け可能に付勢する複数のばね81,82を備える。すなわち、キャリッジ支持部37には、搬送方向Yに付勢する第1ばね81と、走査方向Xと鉛直方向Zとの両方向に成分をもつ斜め方向に付勢する第2ばね82とが張設されている。なお、配置される向きが同じである摺動部61の種類ごとにそれぞれ対応するレール面53~55に摺動部61を押し付け可能に付勢する1つずつまたは複数個ずつのばねを備えてもよい。
【0039】
また、図4に示すように、キャリッジ支持部37の後部には、リニアエンコーダー38を構成するリニアスケール38Aを光学的に読み取るセンサー38Bが取着されている。センサー38Bは、キャリッジ31の走査方向Xの移動距離に比例する数のパルスを含む検出信号を出力する。また、キャリッジ支持部37の後部には、タイミングベルト34を固定するベルト固定部37Cが設けられている。ベルト固定部37Cに固定されたタイミングベルト34が、キャリッジモーター35の正逆転駆動により正転・逆転することで、キャリッジ31は走査方向Xに往復動することが可能である。
【0040】
図5に示すように、キャリッジ31の底部中央部には、記録ヘッド32が設けられている。記録ヘッド32は、支持台28(図2参照)と対向する下面が複数のノズル(図示略)が開口するノズル面32Aとなっている。ノズル面32Aには、液体を吐出して記録媒体23に記録を行う複数のノズル(図示略)が配置される。ノズル面32A上には、複数のノズルが一方向に一定の間隔で多数並ぶように開口している。複数のノズルはノズル列NAを構成する。ノズルの開口は、記録媒体23の搬送方向Yに並び、複数のノズル列NAを構成する。1つのノズル列NAを構成するノズルは、同じ種類の液体を吐出する。1つのノズル列NAを構成するノズルのうち、搬送方向Yの上流側に位置するノズルと、搬送方向Yの下流側に位置するノズルとは、幅方向Xに位置をずらして形成されている。複数のノズル列NAは、2列ずつ幅方向Xに接近して並ぶ。
【0041】
図6に示すように、キャリッジ支持部37は、3つの被組付部41~43を有する。3つの被組付部41~43は、摺動ユニット60が組み付けられる被組付面41A~43Aを有する。3つの被組付面41A~43Aは、それぞれ面と垂直な方向が異なる。すなわち、第1被組付面41Aは、この第1被組付面41Aと垂直な方向が+Z方向となる向きの面である。第2被組付面42Aは、この第2被組付面42Aと垂直な方向が-Y方向となる向きの面である。第3被組付面43Aは、この第3被組付面43Aと垂直な方向が+Y方向となる向きの面である。第1被組付面41Aおよび第2被組付面42Aは、キャリッジ支持部37の下部に形成され、第3被組付面43Aはキャリッジ支持部37の上部に形成されている。
【0042】
図6に示すように、それぞれ向きの異なる3種類の被組付面41A~43Aのそれぞれに摺動ユニット60が着脱可能に設けられている。本実施形態の摺動ユニット60は、キャリッジ31に対して着脱可能に取着されている。詳しくは図7に示すように、摺動ユニット60は、キャリッジ31に形成されたスライド部44に沿ってスライド可能な状態で装着される。本例では、摺動ユニット60は、スライド部44に対して走査方向Xへのスライドによって着脱が可能となっている。そして、摺動ユニット60は、スライド部44に装着された状態でねじ80によりキャリッジ31に固定されることで、走査方向Xに移動して抜けないように抜け止めされている。
【0043】
図7図8に示すように、摺動ユニット60は、摺動部61と含浸部材63と押圧部材64とを搭載するスライダー62を有する。スライダー62がキャリッジ31に対して着脱可能に設けられる。摺動部61が摩耗した場合に、摺動ユニット60をスライダー62ごとの交換で済ませられ、潤滑剤GRの補充、含浸部材63の交換が容易である。
【0044】
図7図8に示すように、スライダー62をスライド部44に対して走査方向Xから差し込んで、走査方向Xからねじ80で固定する。スライダー62は、把持部62Bを有する。把持部62Bは、孔621(図9参照)を有する。孔621は、例えば、治具などを引っ掛けてスライダー62を取り外すときに利用される。また、把持部62Bは、滑り止め部622(図9参照)を有する。
【0045】
キャリッジ31には複数の摺動ユニット60が組み付けられる。キャリッジ31には複数のスライダー62が設けられ、各スライダー62が同一形状である。レール面53~55に押し付けられる向きが異なる複数の摺動部61間で、共通のスライダー62が用いられてもよい。この場合、スライダー62の部品の共通化によって、キャリッジ31の製造コストが抑えられている。また、同じ複数の摺動部61間で、共通の摺動ユニット60が用いられてもよい。この場合、摺動ユニット60の部品の共通化によって、キャリッジ31の製造コストがさらに抑えられる。
【0046】
図7図8に示すように、キャリッジ31は、摺動部61と、潤滑剤GRを含浸させた含浸部材63とを備える。潤滑剤GRはグリスを含む。さらに、キャリッジ31は、含浸部材63へ供給する潤滑剤GRを貯留する貯留部65を有している。本実施形態では、摺動部61、含浸部材63および貯留部65が1つの部材にまとめて配置された摺動ユニット60として構成される。摺動部61は、摺動ユニット60ごと交換することが可能である。
【0047】
図7図8に示すように、キャリッジ31は、摺動部61の走査方向Xにおける少なくとも一方に、潤滑剤GRを含浸させた含浸部材63と、含浸部材63に対してガイド部材50とは反対側の面から、含浸部材63をガイド部材50側に押圧する押圧部材64とを備える。本実施形態では、キャリッジ31は、摺動部61の走査方向Xにおける両側に、潤滑剤GRを含浸させた含浸部材63を備える。両側の含浸部材63は、ガイド部材50とは反対側の面から押圧部材64によってガイド部材50側に押圧されている。潤滑剤GRを含浸させた含浸部材63は、例えば、潤滑剤GRを含浸させたフェルト材である。潤滑剤GRは、例えばグリスである。グリスは、常温で半流動体のオイルである。潤滑剤GRは、常温で液状のオイルであってもよいし、グリスとオイルとの混合物を含んでもよい。なお、含浸部材63の配置位置および数は、摺動部61に対して走査方向Xの両側ではなくどちらか一方でもよい。本例では、含浸部材63は、潤滑剤GRを含浸させたフェルト材により構成されてもよい。
【0048】
押圧部材64の押圧力は、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する押圧力よりも小さい。ここで、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する押圧力を第1押圧力F、押圧部材64の押圧力を第2押圧力fとする。キャリッジ31がレール面53~55を押圧する第1押圧力Fとは、記録部30の自重、ばね81,82等の付勢力およびこれらの自重および付勢力によるモーメントに基づく押圧力を指す。押圧部材64は、例えば、ばねである。押圧部材64がばねである場合、例えば、図7図8に示すような板ばねでもよいし、含浸部材63を付勢可能なコイルばねでもよい。
【0049】
押圧部材64の押圧力は、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する押圧力の半分よりも小さくてもよい。例えば、押圧部材64の第2押圧力fは、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する第1押圧力Fの1/20~1/2未満の大きさであってもよい。押圧部材64の第2押圧力fは、第1押圧力Fと比べるとかなり小さく、例えば、第1押圧力Fの1/20~1/5未満の大きさであってもよい。押圧部材64の第2押圧力fは、例えば、第1押圧力Fの1/10程度としてもよい。
【0050】
押圧部材64の第2押圧力fを、第1押圧力Fよりも小さな値に設定することで、キャリッジ31がガイド部材50に対して浮き上がるなどして姿勢が不安定になることを防止しやすくする。また、含浸部材63を過剰に強く押圧して潤滑剤GRが過排出されることを防止しやすくする。
【0051】
本実施形態では、摺動ユニット60は、キャリッジ31の複数個所に配置される。複数の摺動ユニット60間で、押圧部材64を共通部品とする場合は、押圧部材64の付勢力は、キャリッジ31からレール面53~55にかかる荷重のうちの最小の荷重よりも小さい。一方、複数の摺動ユニット60のそれぞれの個所で押圧部材64の付勢力を異なる押圧力に変える場合、各押圧部材64の押圧力fは、それぞれのキャリッジ31にかかる荷重よりも小さくしている。摺動機構GSで受けるキャリッジ31の荷重がそれぞれ異なっても、押圧部材64の押圧力がどれも、キャリッジ31からの最小の荷重よりも小さければよい。
【0052】
ここで、押圧部材64が過大な力で含浸部材63をレール面53~55に押し付けてしまうと、その過大な力でレール面53~55に押圧されることでキャリッジ31が回動してその姿勢が適正な姿勢からずれてしまい、他の摺動部61がレール面53~55に対して浮くなどして接触しなくなる。また、押圧部材64が過大な力で含浸部材63をレール面53~55に強く押し付けると、含浸部材63に含浸された潤滑剤GRが過剰に滲み出してしまう。これは、早期の潤滑剤切れを発生させ、摺動部61のレール面53~55に対する摺動負荷が増大してしまいキャリッジ31の耐久性が損なわれてしまう。一方、摺動部61がレール面53~55と接触しない場合は、潤滑剤GRを摺動部61に供給できなくなる。この場合も、摺動部61のレール面53~55に対する摺動負荷が増大してキャリッジ31の耐久性が損なわれてしまう。
【0053】
特に、含浸部材63が布や繊維などの液状の潤滑剤GRを吸収し易い材質である場合、湿度の影響を受けやすいので、摺動部61とレール面53~55との接触圧の管理が難しい。なお、含浸部材63に対してガイド部材50とは反対側の面から、含浸部材63をガイド部材50側に押圧する押圧部材64は、押圧できれば何でもよく、板ばね等のばねでもよいし、弾性を有する合成樹脂製のシートまたはフィルムであってもよい。
【0054】
押圧部材64は、含浸部材63の走査方向Xと交差する方向の略全域を押圧する。含浸部材63が可撓性を有するフェルト材よりなる本例では、板ばねよりなる押圧部材64の走査方向Xと交差する方向に線状に延びる部分(先端部)で、含浸部材63を背面から押圧してもよい。これにより、含浸部材63の走査方向Xと交差する方向のほぼ幅全域をガイド部材50に当接させるようにしている。
【0055】
このように、摺動ユニット60は、フェルト材よりなる含浸部材63を一定の力で押し出す構造を有してもよい。キャリッジ31の摺動部61に対してその走査方向Xにおける前後近傍に、潤滑剤GRを供給する含浸部材63が配置され、含浸部材63がガイド部材50のレール面53~55に押圧される構成となっている。詳しくは、フェルト材よりなる含浸部材63のレール面53~55と対向する側と反対側の中央部に弾性力の弱い押圧部材64を当て、押圧部材64の弱い弾性力で含浸部材63を押圧する。
【0056】
例えば、ガイド部材50が円柱状のガイド軸の場合は、キャリッジ側の被挿通部に挿通されるガイド軸の周囲を囲むように設けられた摺動部が一方向に強く当たるとその反対側の当たりは弱くなるため、キャリッジとガイド軸とが適切な当たりとなる位置に調整される。これに対して、ガイド部材50がガイドレールである本実施形態の構成では、摺動部61がレール面53~55に対してその直交方向に位置ずれすると、過大な強さの当たりになるか、接触不良となる。このため、摺動部61とレール面53~55との接触圧の管理が重要になる。
【0057】
本実施形態では、押圧部材64によって、キャリッジ31の自重、ばね付勢力、ばね付勢力のモーメントなどのキャリッジ31のレール面53~55にかかる荷重と同じ方向に、含浸部材63を付勢する。このため、複数の摺動部61間での摺動面(レール面)に対する当たりが、過大な強さまたは接触不良になることが回避される。押圧部材64が含浸部材63を付勢する付勢力は、キャリッジ31のレール面53~55にかかる荷重よりも小さな強度に設定されてもよい。
【0058】
本実施形態では、押圧部材64によって含浸部材63を構成するフェルト材を背面側から押し出す。押圧部材64の付勢力(ばね力)は管理できるので、フェルト材よりなる含浸部材63を必ずレール面53~55に接触させることができ、レール面53~55のうち少なくともいずれか一つに対して、含浸部材63(例えばフェルト材)を過大な力で押し付けてキャリッジ31が正規の姿勢から回動する回動ずれが発生することもない。このため、キャリッジ31の摺動部61がレール面53~55から浮くことはない。
【0059】
摺動ユニット60は、含浸部材63の脱落防止構造を有している。スライダー62のガイド部材50と対向する面とは反対の面には、含浸部材63を保持する保持部78と、保持部78のガイド部材50と対向する位置に形成された開口72Aとを有する。含浸部材63の外周部の走査方向Xにおいて対向する2つの辺が開口72Aの外縁に支持される。含浸部材63の走査方向Xにおける中央部が押圧部材64に押圧されてガイド部材50に当接する。
【0060】
図8に示すように、含浸部材63の周縁部をレール面53(54,55)側から保持部78が覆うことで含浸部材63をスライダー62に保持する。含浸部材63は、押圧部材64により背面から中央部を押圧されることで開口72Aからレール面53(54,55)側へ膨らむように露出している。本実施形態では、スライダー62に形成された保持部78により、含浸部材63の周縁部をレール面53(54,55)側から覆う。これにより、含浸部材63のスライダー62からの脱落を防止する。
【0061】
摺動部61を単純にレール面53~55に摺動させるだけでは、摺動抵抗が大きくなるので、潤滑剤GRを供給する含浸部材63を配置している。含浸部材63は、潤滑剤GRとしてグリスが含浸された例えばフェルト材であり、レール面53~55に押圧部材64による所定の押圧力で押し当てられることで、潤滑剤GRが滲みだしてその滲み出した潤滑剤GRがレール面53~55に供給される。
【0062】
図8に示すように、キャリッジ31は貯留部65を有してもよい。本実施形態では、摺動ユニット60が貯留部65を備える。これは、フェルト材に含浸させた潤滑剤GRだけでは記録装置11の耐用年数に対して潤滑剤GRが不足するためである。貯留部65は、走査方向Xにおいて含浸部材63の隣に位置する。貯留部65は、スライダー62に潤滑剤GRを溜めることが可能に凹設された収容凹部73(図9参照)と、収容凹部73に収容された潤滑剤GRと、収容凹部73と含浸部材63が収容される収容空間とを連通する溝部75(図9参照)とを備える。フェルト材の潤滑剤GRが消費されると、貯留部65から溝部75を通って液状の潤滑剤GRが毛管現象などによって含浸部材63に供給される。こうして、貯留部65の潤滑剤GRが含浸部材63に供給され、さらに含浸部材63からレール面53~55へ潤滑剤GRが供給される。
【0063】
図8に示すように、摺動機構GSは、レール面53~55(被摺動面)がうねっているなど、湾曲箇所を有していても、その当接部61Aがレール面53~55に追従できる調心機構ASを有している。摺動ユニット60と摺動部61とが別体とされ、前記スライダーに対して少なくとも走査方向Xと交差する方向と平行な軸線を中心に揺動可能に設けられている。
【0064】
摺動部61は、走査方向Xに沿う方向において所定の長さでガイド部材50に当接する当接部61Aと、当接部61Aの走査方向Xにおける中間位置の裏面にキャリッジ31と当接する突起部61Bとを有する。
【0065】
摺動部61の背面部は、凸曲面状になっているので、摺動部61の背面に形成された突起部61Bは、キャリッジ31のフレーム面44Aに対して点接触または線接触する。摺動部61の突起部61Bは、例えば、凸球面状(図10参照)に形成されてもよい。凸球面状であれば、スライダー62に対して走査方向Xと平行な軸線を中心にも揺動可能である。
【0066】
このため、摺動部61は、突起部61Bの点接触部分または接触部分を支点C(図13図14を参照)として揺動可能である。このため、摺動部61は、レール面53~55(被摺動面)が湾曲していても、その当接部61Aがレール面53(54,55)と広い接触面積を維持した状態でレール面53~55に追従することが可能となっている。このため、摺動部61の当接部を確実にレール面53~55に当接させてキャリッジの姿勢を安定させている。
【0067】
図8図9に示すように、摺動部61は、走査方向Xにおける中央部にガイド部材50に当接しない凹部61Cを有する。つまり、走査方向Xに凹部61Cを隔てて当接部61Aが2箇所に分かれている。当接部61Aの走査方向Xの距離を長くして姿勢を安定させつつ、接触面積を減らしてキャリッジ31の摺動抵抗を低減させることが可能である。
【0068】
次に、図9図10を参照して摺動ユニット60の詳細な構成を説明する。なお、図9図12において、摺動ユニット60の長手方向をDx、短手方向をDy、厚さ方向をDzとする。例えば、レール面53に沿って装着される摺動ユニット60においては、長手方向Dxが走査方向Xに一致し、短手方向Dyが搬送方向Yに一致し、厚さ方向Dzが鉛直方向Zに一致する。
【0069】
図9に示すように、摺動ユニット60の摺動面側である第1面には、長手方向Dxの中央部に摺動部61が組み付けられている。摺動部61の当接部61Aは、長手方向Dxの中央部に形成された凹部61Cを挟んで両側の2箇所に分かれている。
【0070】
図9に示すように、含浸部材63は、走査方向Xの両側の周縁部が保持部78に保持された状態で、背面中央部が押圧部材64の先端部によって押圧されている。摺動ユニット60は、保持部78に対して走査方向Xにおいて並ぶ位置に潤滑剤GRを貯留する貯留部65を有する。貯留部65と保持部78との間には、貯留部65から保持部78に保持される含浸部材63へ潤滑剤GRを導く溝部75が設けられている。
【0071】
摺動ユニット60は、長手方向Dxの一端部に走査方向Xに延出する把持部62Bを有する。把持部62Bには、孔621と滑り止め部622が形成されている。
また、摺動ユニット60には走査方向Xに把持部62Bと反対側の先端部に係止部62Cが延出している。摺動ユニット60はスライド部44にスライドさせて終端位置まで挿入されると、係止部62Cがキャリッジ31側の穴45(図7図8を参照)に挿入されることで先端側が位置決めされる。また、摺動ユニット60には把持部62Bが延出する方向と交差する厚さ方向Dzのうち第1面と反対側の面である第2面側に延出する支持部62Dを有する。支持部62Dには、ねじ80の軸部を挿通可能なねじ挿通孔623が形成されている。
【0072】
図10に示すように、摺動部61の走査方向Xの中央部の背面側には凸球面を有する突起部61Bが形成されている。この突起部61Bは、摺動ユニット60がスライド部44に挿着された状態で、スライド部44の底面であるフレーム面44A(図8参照)に凸球面にて当接する。フレーム面44Aは平坦面である。突起部61Bはフレーム面44Aに対して凸球面で点接触し、この点接触する位置を支点とする摺動部61の揺動が可能となっている。スライダー62には、長手方向Dxにおいて収容孔72の隣の位置に凹部74が凹設されている。凹部74は、押圧部材64の基部64Aが取り付けられる取付部として機能する。基部64Aが凹部74に取り付けられた状態で、押圧部材64の先端部64Bは含浸部材63を背面側から押圧している。なお、本例の凹部74は、スライダー62において収容凹部73が凹設された面とは反対側の面に、収容凹部73と対向する位置に設けられている。
【0073】
次に、図11図12を参照してスライダー62の詳細な構成を説明する。
図11に示すように、スライダー62は、そのスライダー本体62Aに、摺動部61が収容される収容孔71と、含浸部材63を露出させる開口72Aを有する収容孔72と、潤滑剤GRを貯留する貯留部65となる収容凹部73とを有する。スライダー62は、摺動部61が収容される収容孔71の内壁面に、複数の規制部76と、複数の凸部77を有する。複数の規制部76は、スライダー62の収容孔71に摺動部61(図9参照)が組み付けられた状態において、摺動部61の長手方向Dxの両端部が厚さ方向Dzにおけるレール面53(54,55)(図14参照)側に変位可能な範囲を規制する。また、複数の凸部77は、スライダー62の収容孔71に組み付けられた摺動部61の抜け止めとして機能する。そして、複数の規制部76と複数の凸部77とにより、突起部61Bの点接触箇所を支点C(図14参照)とする摺動部61の揺動代が規定される。また、図11に示すように、収容孔72と収容凹部73との間には、収容孔72と収容凹部73とを連通する溝部75が形成されている。スライダー62は、長手方向Dxの両端部に前述した把持部62Bと係止部62Cとを有する。また、スライダー62は、把持部62Bの基部から把持部62Bの延出方向と交差する方向に延出するとともにねじ挿通孔623が形成された前述の支持部62Dを有する。
【0074】
次に、記録装置11の作用を説明する。
含浸部材63が、摺動部61の走査方向Xにおける両側に設けられているので、潤滑剤GRがレール面53~55に供給される。例えば、図8において、キャリッジ31が+X方向に移動する往動時は、その進行方向の下流側(図8では左側)に位置する含浸部材63からレール面53に潤滑剤GRが供給される。そして、その潤滑剤GRが供給されたレール面53(54,55)を摺動部61が摺動することで、潤滑剤GRがレール面53(54,55)と摺動部61との間に供給される。
【0075】
また、図8において、キャリッジ31が-X方向に移動する復動時は、その進行方向の下流側(図8では右側)に位置する含浸部材63からレール面53(54,55)に潤滑剤GRが供給される。そして、その潤滑剤GRが供給されたレール面53(54,55)を摺動部61が摺動することで、潤滑剤GRがレール面53(54,55)と摺動部61との間に供給される。このように、本実施形態では、含浸部材63が摺動部61の走査方向Xにおける両側に配置されているので、キャリッジ31の往動時も復動時も潤滑剤GRを確実にレール面53に供給できる。これは、他のレール面54,55を摺動機構GSの摺動部61が摺動する場合も同様である。
【0076】
また、含浸部材63はガイド部材50と面する側とは反対側から、押圧部材64によってガイド部材50側に押圧される。そのため、キャリッジ31の姿勢が適正な姿勢からずれても、含浸部材63は押圧部材64により押し付けられるため、含浸部材63はガイド部材50の平坦面よりなるレール面53から浮き上がりにくい。よって、含浸部材63はレール面53(54,55)と確実に摺動することができるので、潤滑剤GRがレール面53(54,55)に確実に供給される。
【0077】
また、記録部30の自重、摺動部61をレール面53~55に押し付けるためのばね81,82の付勢力、およびこれら自重および付勢力によりキャリッジ31が回動しようとして発生するモーメントに起因する記録部30の荷重が、摺動部61を介してレール面53~55にかかる。押圧部材64の押圧力が、この記録部30の荷重より小さな値、特に記録部30の荷重の半分よりも小さな値に設定されている場合、押圧部材64の押圧力が原因で記録部30のレール面53~55にかかる荷重が過度に大きくなって、キャリッジ31が回動しようとして姿勢がずれ、他の摺動部61がレール面53~55から浮き上がることを回避できる。すなわち、どの摺動部61もレール面53~55に対して適切な当接圧で当接する。この結果、記録中にキャリッジ31が走査方向Xに往復動する際にキャリッジ31の姿勢が安定する。また、潤滑剤GRが確実に供給されるため、例えば、潤滑剤GRが不足して摺動部61とレール面53~55との摺動抵抗が大きくなってキャリッジ31がガイド部材50に沿って走査方向Xに移動する際の負荷が大きくなることを回避できる。このため、例えば、キャリッジ31が安定な姿勢でかつ安定な速度で移動することができる。この結果、記録媒体23に高い記録精度で記録を行うことができる。
【0078】
さらに、摺動ユニット60は、レール面53~55がうねるなど湾曲していても、摺動部61を湾曲したレール面53~55に追従させることが可能な調心機構ASを備える。例えば、図13に示すように、キャリッジ31が平坦なレール面53(54,55)に沿って移動するときは、摺動部61は当接部61Aがレール面と平行となる定常の姿勢に保持され、その2つの当接部61Aが共にレール面53(54,55)に当接することで摺動する。
【0079】
また、図14に示すように、レール面53(54,55)がうねるなど湾曲していると、摺動部61が支点Cを中心にレール面53(54,55)に追従するように揺動する。すなわち、図14に実線で示すように摺動部61は支点Cを中心に時計回り方向に回動することで、レール面53(54,55)に追従する。また、図14に二点鎖線で示すように摺動部61は支点Cを中心に反時計回り方向に回動することで、レール面53(54,55)に追従する。レール面53(54,55)がうねるなど湾曲していても、移動中のキャリッジ31の姿勢が安定する。
【0080】
また、摺動部61は、図13に示す定常姿勢にあるときにその背面よりも少しの距離を離した位置に突設された複数の凸部77と係合するまでは、摺動部61が支点Cを中心として揺動できるだけの揺動代が確保される。また、摺動ユニット60をキャリッジ31から取り外したときは、摺動部61は複数の凸部77と係合することでスライダー62から抜けることを防止する抜け止め機能がある。この結果、摺動部61を揺動可能に支持でき、且つ摺動ユニット60を取り外すときの抜け止めとされる。
【0081】
また、図15に示すように、含浸部材63には、貯留部65に貯留されている潤滑剤GRが溝部75を通って補充される。このため、含浸部材63に含浸された潤滑剤GRが不足することが発生しにくい。また、記録装置11の耐用年数の間で、摺動ユニット60の交換回数が少なく済む。
【0082】
また、含浸部材63は、押圧部材64によってレール面53(54,55)側に押圧されている。押圧部材64は、その基部64Aが凹部74に取り付けられるとともに、その先端部64Bが含浸部材63における走査方向Xの略中央部を押圧している。含浸部材63とレール面53(54,55)とが離れようとすると、押圧部材64の押圧力により含浸部材63が開口72Aからの突出量が多くなることで、レール面53(54,55)に押し付けられた状態を維持したまま追従できる。このため、レール面53(54,55)の湾曲や、記録部30のレール面53にかかる過大な荷重によってキャリッジ31が回動しようとして他のレール面54,55において他の摺動部61が浮き上がるようなことが仮にあっても、含浸部材63をレール面53(54,55)に当接する状態を維持することができる。
【0083】
また、含浸部材63は、走査方向Xに対向する2辺の周縁部が、開口72Aに近づくほどレール面53(54,55)に近づく側の向きに傾斜する保持部78に保持される。このため、押圧部材64により背面中央部を押圧される含浸部材63を開口72Aから湾曲するように膨出させることができる。例えば、保持部78の断面が長方形である場合、含浸部材63に保持部78の断面長方形の角で折れが発生し、その折れの周辺で例えばフェルト材の繊維が密となり、潤滑剤GRが浸透しにくくなる可能性がある。
【0084】
また、同じ開口サイズの開口72Aであっても、含浸部材63が開口72Aから膨出する部分を、対向するレール面53~55へ投影した投影面積を相対的に広く確保できる。すなわち、開口72Aの開口サイズが同じでありながら、含浸部材63をレール面53~55に接触できる接触面積を相対的に広く確保できる。
【0085】
貯留部65への潤滑剤GRの補充や、摺動部61を交換するなどのメンテナンスは、摺動ユニット60をキャリッジ31から取り外して行われる。摺動ユニット60は、摺動部61と含浸部材63と押圧部材64とを搭載するため、摺動ユニット60をキャリッジ31から取り外せば、摺動部61と含浸部材63と押圧部材64とをまとめて一度に取り外しできる。
【0086】
図16に示すように、まずねじ80を緩めて取り外し、次に把持部62Bを把持して摺動ユニット60を走査方向Xのうち取り外し方向にスライドさせることで、キャリッジ31から取り外す。また、把持部62Bに形成された孔621に工具または針金などを引っ掛けて引張り出すこともできる。例えば、作業者の手が届かない狭い空間でも、工具またが針金を使って、摺動ユニット60をキャリッジ31から取り外すことができる。そして、メンテナンス時は、摺動ユニット60の摺動部61や含浸部材をメンテナンスしたり、貯留部65に潤滑剤GRを補充したりする。また、摺動ユニット60を交換する場合は、新しい摺動ユニット60を用意する。
【0087】
そして、交換後の摺動ユニット60をスライド部44に沿って走査方向Xにスライドさせることでキャリッジ31に装着する。キャリッジ31に装着した後、ドライバー等の工具を用いてねじ80を、キャリッジ31側のねじ穴46に締結する(図7参照)。
【0088】
この実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)記録装置11は、搬送方向Dに搬送される記録媒体23に記録を行う記録ヘッド32と、記録ヘッド32を搭載し、搬送方向Dと交差する走査方向Xに走査するキャリッジ31と、キャリッジ31を走査方向Xにガイドする平坦面の一例であるレール面53~55を有するガイド部材50とを備える。キャリッジ31は、ガイド部材50に当接して摺動する摺動部61と、摺動部61の走査方向Xにおける少なくとも一方に、潤滑剤GRを含浸させた含浸部材63と、含浸部材63に対してガイド部材50とは反対側の面から、含浸部材63をガイド部材50側に押圧する押圧部材64とを備える。この構成によれば、含浸部材63が押圧部材64によりガイド部材50側へ押圧されるので、含浸部材63がガイド部材50から離間することが抑制される。このため、押圧部材64がない構成に比べ、含浸部材63から摺動部61が摺動するガイド部材50のレール面53~55に潤滑剤GRをより確実に供給できる。ガイド部材50への潤滑剤GRの供給が滞ることに起因してキャリッジ31の摺動抵抗が大きくなることを抑制することができる。
【0089】
(2)押圧部材64の押圧力は、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する押圧力よりも小さい。このため、押圧部材64の押圧力が原因でキャリッジ31が適正な姿勢からずれることを抑制することができる。
【0090】
(3)押圧部材64の押圧力は、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する押圧力の半分よりも小さい。よって、キャリッジ31が浮き上がるなどして姿勢が不安定になることを防止できる。また、摺動部61および含浸部材63がガイド部材50に強く当接して含浸部材63から潤滑剤GRが過排出されることを防止できる。
【0091】
(4)記録装置11は、摺動部61と含浸部材63と押圧部材64とを搭載するスライダー62を有する。スライダー62がキャリッジ31に対して着脱可能に設けられる。よって、摺動部61が摩耗した場合にスライダー62のみの交換で済ませられる。また、潤滑剤GRの補充、含浸部材63の交換が容易である。
【0092】
(5)キャリッジ31には複数のスライダー62が設けられ、複数のスライダー62は同一形状である。よって、複数のスライダー62の部品を共通化することで、記録装置11の製造コストを低減できる。
【0093】
(6)スライダー62と摺動部61とが別体とされている。摺動部61は、スライダー62に対して少なくとも走査方向Xと交差する方向と平行な軸線を中心に揺動可能に設けられている。この構成によれば、ガイド部材50の被摺動面が湾曲していても、摺動部61がその湾曲した被摺動面に追従して摺動部61の姿勢を変化させることができるので、キャリッジ31が走査方向Xに移動するときに摺動部61の当接部61Aを確実にガイド部材50に当接させることができる。よって、キャリッジ31を安定な姿勢に保持することができる。
【0094】
(7)摺動部61は、走査方向Xに沿う方向において所定の長さでガイド部材50に当接する当接部61Aと、当接部61Aの走査方向Xにおける中間位置の裏面にキャリッジ31と当接する凸曲面を有する突起部61Bとを備える。この構成によれば、摺動部61を簡単な構成で、揺動可能に支持することができる。よって、キャリッジ31をガイド部材50により走査方向Xに移動可能に案内するガイド構造を簡単な構成で実現できる。
【0095】
(8)摺動部61の当接部61Aは、走査方向Xにおける中央部にガイド部材50に当接しない凹部61Cを有する。この構成によれば、摺動部61の当接部61Aは走査方向Xに凹部を隔てて複数の領域に分かれている。このため、摺動部61の当接部61Aの走査方向Xの距離を長くして姿勢を安定させつつ、接触面積を減らして、キャリッジ31の摺動抵抗を低減することができる。
【0096】
(9)含浸部材63は、摺動部61に対して走査方向Xの両側に配置される。この構成によれば、キャリッジ31の往復時と復動時の両方で、含浸部材63から摺動部61材とガイド部材50との間に潤滑剤GRを供給することができる。
【0097】
(10)スライダー62は、ガイド部材50と対向する面とは反対の面に設けられ、含浸部材63を保持する保持部78と、保持部78におけるガイド部材50に対向する位置に形成された開口72Aとを有する。含浸部材63の外周部の走査方向Xに対向する2つの辺が開口72Aの外縁に支持され、含浸部材63の走査方向Xにおける中央部が押圧部材64に押圧されてガイド部材50に当接する。よって、スライダー62からの含浸部材63の脱落を防止できる。
【0098】
(11)押圧部材64は、走査方向Xと交差する方向に線状に延びる部分で、含浸部材63を押圧する。こよって、含浸部材63の走査方向Xと交差する方向の幅全域または幅全域に近い領域をガイド部材50に当接させることが可能になる。
【0099】
(12)保持部78に対して走査方向Xに並ぶ位置に潤滑剤GRを貯留する貯留部65を有し、貯留部65と保持部78との間には、貯留部65から保持部78に保持される含浸部材63に潤滑剤GRを導く溝部75が設けられる。よって、潤滑剤GRを貯留する貯留部65から含浸部材63へ潤滑剤GRを供給することができる。貯留部65がない構成に比べ、潤滑剤GRを補給しなくても長期間に亘り、キャリッジ31を大きな負荷なく安定に移動させることができる。
【0100】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0101】
・押圧部材64の押圧力(第2押圧力)は、キャリッジ31がガイド部材50に対して付与する押圧力(第1押圧力)よりも小さければ、第2押圧力の半分よりも大きくてもよい。
【0102】
・貯留部65は含浸部材63の上側に配置してもよい。また、貯留部65は、摺動部61の上側でもよい。
・貯留部65は、なくてもよい。
【0103】
・摺動部61が有する突起部61Bの面形状である凸曲面は、凸球面ではなく、半円柱状でもよい。この場合、半円柱の円弧面(凸曲面)を、キャリッジ31側のフレーム面44Aに当接させる。
【0104】
・摺動部61は、スライダー62に対して揺動不能に固定されていてもよい。
・スライド方向は、走査方向Xに替え、搬送方向Yとしてもよい。
・摺動ユニット60は、スライド方式に替え、キャリッジ31側の面と直交する方向に着脱可能に設けられる構成でもよい。
【0105】
・複数の摺動部61が3方向を向く状態に摺動ユニット60をキャリッジ31に組み付けたが、複数の摺動部61が向く方向は2方向でもよい。例えば、+Z方向と-Y方向との2方向を向く状態に複数の摺動部61をキャリッジ31に設けてもよい。また、+Z方向と+Y方向との2方向を向く状態に複数の摺動部61をキャリッジ31に設けてもよい。また、1方向を向く摺動部のみがガイド部材50に摺動する構成でもよい。
【0106】
・複数のスライダー62は、全て共通の部品でなくてもよい。複数のスライダー62のうちの一部のみが共通の部品であってもよい。
・ガイド部材50は、メインフレームと別体でもよい。
【0107】
・摺動部61をレール面53に対して鉛直方向Zに付勢するばねを設けてもよい。
・摺動部61と含浸部材63と貯留部とのうち2つのみが一体でキャリッジ31に組み付けられる構成でもよい。例えば、含浸部材63と貯留部65が一体に構成され、これらと摺動部61は別体である構成でもよい。
【0108】
・摺動部61と含浸部材63と貯留部とを別々にキャリッジ31に組み付ける構成でもよい。
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
【0109】
(A)記録装置は、搬送方向に搬送される記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載し、前記搬送方向と交差する走査方向に走査するキャリッジと、前記キャリッジを前記走査方向にガイドする平坦面を有するガイド部材と、を備え、前記キャリッジは、前記ガイド部材に当接して摺動する摺動部と、前記摺動部の前記走査方向における少なくとも一方に、潤滑剤を含浸させた含浸部材と、前記含浸部材に対して前記ガイド部材とは反対側の面から、前記含浸部材を前記ガイド部材側に押圧する押圧部材とを備える。
【0110】
この構成によれば、含浸部材が押圧部材によりガイド部材側へ押圧されるので、含浸部材がガイド部材から離間することが抑制される。このため、含浸部材から摺動部が摺動するガイド部材の面に潤滑剤をより確実に供給できる。ガイド部材への潤滑剤の供給が滞ることに起因してキャリッジの摺動抵抗が大きくなることを抑制することができる。
【0111】
(B)上記記録装置において、前記押圧部材の押圧力は、前記キャリッジが前記ガイド部材に対して付与する押圧力よりも小さくてもよい。
この構成によれば、押圧部材の押圧力は、キャリッジがガイド部材に対して付与する押圧力よりも小さいので、押圧部材の押圧力が原因でキャリッジが適正な姿勢からずれることを抑制することができる。
【0112】
(C)上記記録装置において、前記押圧部材の押圧力は、前記キャリッジが前記ガイド部材に対して付与する押圧力の半分よりも小さくてもよい。
この構成によれば、キャリッジが浮き上がるなどして姿勢が不安定になることを防止できる。また、摺動部および含浸部材がガイド部材に強く当接して含浸部材から潤滑剤が過排出されることを防止できる。
【0113】
(D)上記記録装置は、前記摺動部と前記含浸部材と前記押圧部材とを搭載するスライダーを有し、前記スライダーが前記キャリッジに対して着脱可能に設けられてもよい。
この構成によれば、摺動部が摩耗した場合にスライダーのみの交換で済ませられる。潤滑剤の補充、含浸部材の交換が容易である。
【0114】
(E)上記記録装置において、前記キャリッジには複数のスライダーが設けられ、当該複数のスライダーは同一形状であってもよい。
この構成によれば、複数のスライダーの部品を共通化することで、記録装置の製造コストを低減できる。
【0115】
(F)上記記録装置では、前記スライダーと前記摺動部とが別体とされ、前記摺動部は、前記スライダーに対して少なくとも前記走査方向と交差する方向と平行な軸線を中心に揺動可能に設けられてもよい。
【0116】
この構成によれば、ガイド部材の被摺動面が湾曲していても、摺動部がその湾曲した被摺動面に追従して摺動部の姿勢を変化させることができるので、キャリッジが走査方向に移動するときに摺動部の当接部を確実にガイド部材に当接させることができる。よって、キャリッジを安定な姿勢に保持することができる。
【0117】
(G)上記記録装置において、前記摺動部は、前記走査方向に沿う方向において所定の長さで前記ガイド部材に当接する当接部と、前記当接部の前記走査方向における中間位置の裏面に前記キャリッジと当接する凸曲面を有する突起部とを備えてもよい。
【0118】
この構成によれば、摺動部を簡単な構成で、揺動可能に支持することができる。よって、キャリッジをガイド部材により走査方向に移動可能に案内するガイド構造を簡単な構成で実現できる。
【0119】
(H)上記記録装置において、前記摺動部の前記当接部は、前記走査方向における中央部に前記ガイド部材に当接しない凹部を有してもよい。
この構成によれば、摺動部の当接部は走査方向に凹部を隔てて複数の領域に分かれている。このため、摺動部の当接部の走査方向の距離を長くして姿勢を安定させつつ、接触面積を減らして、キャリッジの摺動抵抗を低減することができる。
【0120】
(I)上記記録装置において、前記含浸部材は、前記摺動部に対して前記走査方向の両側に配置されてもよい。
この構成によれば、キャリッジの往復時と復動時の両方で、含浸部材から摺動部材とガイド部材との間に潤滑剤を供給することができる。
【0121】
(J)上記記録装置において、前記スライダーにおける前記ガイド部材と対向する面とは反対の面に設けられ、前記含浸部材を保持する保持部と、前記保持部における前記ガイド部材に対向する位置に形成された開口とを有し、前記含浸部材の外周部の前記走査方向に対向する2つの辺が開口の外縁に支持され、前記含浸部材の前記走査方向における中央部が前記押圧部材に押圧されて前記ガイド部材に当接してもよい。
【0122】
この構成によれば、スライダーからの含浸部材の脱落を防止できる。
(K)前記押圧部材は、前記走査方向と交差する方向に線状に延びる部分で、前記含浸部材を押圧してもよい。
【0123】
この構成によれば、押圧部材は、走査方向と交差する方向に延びる部分で含浸部材を押圧するので、含浸部材の走査方向と交差する方向の幅全域または幅全域に近い領域をガイド部材に当接させることが可能になる。
【0124】
(L)前記保持部に対して前記走査方向に並ぶ位置に前記潤滑剤を貯留する貯留部を有し、前記貯留部と前記保持部との間には、前記貯留部から前記保持部に保持される前記含浸部材に前記潤滑剤を導く溝部が設けられてもよい。
【0125】
この構成によれば、潤滑剤を貯留する貯留部から含浸部材へ潤滑剤を供給することができる。貯留部がない構成に比べ、潤滑剤を補給しなくても長期間に亘り、キャリッジを大きな負荷なく安定に移動させることができる。
【符号の説明】
【0126】
11…記録装置、12…筐体、15…収容部、16…開口、20…搬送部、21…給送部、22…搬送ローラー対、23…記録媒体、24…芯部材、25…ロール体、26…第1保持部、27…第2保持部、28…支持台、30…記録部、31…キャリッジ、32…記録ヘッド、34…タイミングベルト、35…キャリッジモーター、36…キャリッジ本体、37…キャリッジ支持部、41…第1被組付部、41A…第1被組付面、42…第2被組付部、42A…第2被組付面、43…第3被組付部、43A…第3被組付面、44…スライド部、44A…フレーム面、50…ガイド部材、51…フレーム本体、52…レール部、53…平坦面の一例である第1レール面、54…平坦面の一例である第2レール面、55…平坦面の一例である第3レール面、60…摺動ユニット、61…摺動部、61A…当接部、61B…突起部、61C…凹部、62…スライダー、62A…スライダー本体、62B…把持部、62C…係止部、62D…支持部、621…孔、622…滑り止め部、623…ねじ挿通孔、63…含浸部材、64…押圧部材、65…貯留部、71…収容孔、72…収容孔、72A…開口、73…収容凹部、74…凹部、75…溝部、77…凸部、78…保持部、GS…摺動機構、AS…調心機構、GR…潤滑剤、X…走査方向、Y…搬送方向、Z…鉛直方向、D…搬送方向、Dx…長手方向、Dy…短手方向、Dz…厚さ方向、F…キャリッジがガイド部材に対して付与する押圧力の一例である第1押圧力、f…押圧部材の押圧力の一例である第2押圧力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16