(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】システム構成提案装置およびシステム構成提案方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20241210BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241210BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
G05B19/05 Z
G06Q50/04
G06F30/10
(21)【出願番号】P 2021008292
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】手嶌 竜一
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-5978(JP,A)
【文献】特開2003-114937(JP,A)
【文献】特開平11-231927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04-19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事例に対するユーザの選択を受け付ける入力部と、
PLC(Programmable Logic Controller)を含むユーザの既存のシステム構成と、選択された前記事例に対応するシステム構成とを比較する比較部と、
比較結果に基づいて、前記事例を実現するために必要な機器を含む新しいシステム構成を前記ユーザに提案する提案部とを備えているシステム構成提案装置。
【請求項2】
前記提案部は、前記事例に対応する前記システム構成に含まれ、かつ前記既存のシステム構成には含まれない前記機器を、前記ユーザに提案する請求項1に記載のシステム構成提案装置。
【請求項3】
前記提案部は、前記既存のシステム構成と、前記事例を実現するために必要な前記機器とを、互いに関連付けて画面に表示する請求項1または2に記載のシステム構成提案装置。
【請求項4】
前記提案部は、前記既存のシステム構成に含まれる各機器と、前記事例を実現するために必要な前記機器とを、視覚的に区別して表示する請求項3に記載のシステム構成提案装置。
【請求項5】
事例に対するユーザの選択を受け付ける入力ステップと、
PLC(Programmable Logic Controller)を含むユーザの既存のシステム構成と、選択された前記事例に対応するシステム構成とを比較する比較ステップと、
比較結果に基づいて、前記事例を実現するために必要な機器を含む新しいシステム構成を前記ユーザに提案する提案ステップとを有するシステム構成提案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム構成提案装置およびシステム構成提案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクトリーオートメーション(Factory Automation:FA)の分野においては、作業の工程を分担する様々な種類の装置の制御が行われる。工場施設等一定の領域において作業に用いられる各種のコントローラ、リモートI/O、および製造装置を連携して動作させるために、これらの装置を接続する、フィールドネットワークとも呼ばれる産業用ネットワークシステムが構築されている。
【0003】
一般的な産業用ネットワークシステムでは、各種のスレーブ装置と、マスタ装置などから構成されるマスタスレーブ方式のネットワークが用いられる。スレーブ装置は、工場内に設置される設備の制御あるいはデータ収集を行う装置である。マスタ装置は、これらのスレーブを集中管理する、例えば(PLC:Programmable Logic Controller)と呼ばれる装置である。
【0004】
従来、産業用ネットワークシステムのユーザを支援する技術が提案されている。例えば特許文献1に、マスター装置と複数のスレーブ装置とから構成されるネットワークシステムの設計支援装置であって、ユーザにより作成された設計上のネットワークシステムにおけるスレーブ装置の情報とトポロジの情報とを少なくとも含む設計情報を記憶する設計情報記憶手段と、実際のネットワークシステムにおいてマスター装置が各スレーブ装置から収集した情報に基づいて、実際のネットワークシステムにおけるスレーブ装置の情報とトポロジの情報とを少なくとも含む実構成情報を生成する実構成情報生成手段と、前記設計情報と前記実構成情報とを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記設計上のネットワークシステムの構成と前記実際のネットワークシステムの構成とをそれらの一致点及び相違点とともに示す比較画面を生成し、表示装置に出力する出力手段と、を有することを特徴とする設計支援装置、が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2に、PLCと情報処理装置とを備える制御システムであって、前記PLCは、外部機器とのインターフェースとして機能するインターフェースユニットと、前記インターフェースユニットを制御するCPUユニットと、を備え、前記インターフェースユニットは、内部回路と前記外部機器との間の接点を有するリレー素子と、該インターフェースユニットを識別するユニット識別情報を記憶する第3記憶部と、を備え、前記CPUユニットは、第1記憶部と、前記リレー素子の前記接点を開閉した回数をカウントして、開閉した前記回数を表す開閉回数情報を前記第1記憶部に格納するプロセッサと、前記第1記憶部に格納された前記開閉回数情報を、前記情報処理装置に送信し、前記ユニット識別情報を前記インターフェースユニットから取得して、前記情報処理装置に送信する送信部と、を備え、前記情報処理装置は、前記PLCを識別するPLC識別情報と、前記PLCが実行するプログラムと、前記インターフェースユニットを配置する提案を表す提案情報の生成ルールと、を記憶する第2記憶部と、前記開閉回数情報と前記ユニット識別情報とを受信する受信部と、表示部と、前記受信部が受信した前記開閉回数情報と前記ユニット識別情報とを、前記PLC識別情報に関連付けて前記第2記憶部に格納し、前記プログラムを解析して開閉回数の予測値を算出し、算出した前記予測値に基づいて前記生成ルールに従って前記提案情報を生成し、生成した前記提案情報を前記表示部に表示させる制御部と、を備える、制御システム、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-194631号公報
【文献】特許6732146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ユーザがこれらの従来技術を活用しても、ユーザがやりたいことを実現できる新しいシステム構成の設計を支援することはできない。したがって、ユーザがやりたいことを実現するための新たなシステム構成を構築する際のユーザの負担を減らすことができない。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザがやりたいことを実現するための新たなシステム構成を構築する際のユーザの負担を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るシステム構成提案装置は、前記の課題を解決するために、事例に対するユーザの選択を受け付ける入力部と、PLC(Programmable Logic Controller)を含むユーザの既存のシステム構成と、選択された前記事例に対応するシステム構成とを比較する比較部と、比較結果に基づいて、前記事例を実現するために必要な機器を含む新しいシステム構成を前記ユーザに提案する提案部とを備えている。
【0010】
前記の構成によれば、PLCを含むユーザの既存のシステム構成と、ユーザによって選択された事例に対応するシステム構成との比較結果に基づいて、当該事例を実現するための機器を含む新しいシステム構成が、ユーザに提案される。すなわち、ユーザの既存のシステムを活かした新しいシステム構成が、事例を実現できるシステム構成としてユーザに提案される。このような提案を受けるユーザは、事例を実現するための新しいシステム構成を自ら設計する必要がない。ユーザの既存のシステム構成に対して何の機器を追加すれば事例を実現する新規システム構成を構築できるのかを、ユーザが自ら検討する必要もない。このように、システム構成提案装置は、ユーザがやりたいことを実現するための新たなシステム構成を構築する際のユーザの負担を減らすことができる。
【0011】
一実施形態において、前記提案部は、前記事例に対応する前記システム構成に含まれ、かつ前記既存のシステム構成には含まれない前記機器を、前記ユーザに提案する。
【0012】
前記の構成によれば、ユーザがやりたい事例を実現するために必要な機器をユーザに適切に提案することができる。
【0013】
一実施形態において、前記提案部は、前記既存のシステム構成と、前記事例を実現するために必要な前記機器とを、互いに関連付けて画面に表示する。
【0014】
前記の構成によれば、ユーザは、ユーザがやりたい事例を実現できる新規システム構成の全体像を把握することができる。
【0015】
一実施形態において、前記提案部は、前記事例を実現するため前記既存のシステム構成に含まれる各機器と、前記事例を実現するために必要な前記機器とを、視覚的に区別して表示する。
【0016】
前記の構成によれば、ユーザは、事例を実現するために追加すべき機器がどれであるのかを容易に把握することができる。
【0017】
本発明の一態様に係るシステム構成提案方法は、前記の課題を解決するために、事例に対するユーザの選択を受け付ける入力ステップと、PLC(Programmable Logic Controller)を含むユーザの既存のシステム構成と、選択された前記事例に対応するシステム構成とを比較する比較ステップと、比較結果に基づいて、前記事例を実現するために必要な機器を含む新しいシステム構成を前記ユーザに提案する提案ステップとを有する。
【0018】
前記の構成によれば、ユーザがやりたいことを実現するための新たなシステム構成を構築する際のユーザの負担を減らすことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、ユーザがやりたいことを実現するための新たなシステム構成を構築する際のユーザの負担を減らすことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステム構成提案装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】事例DBに格納される情報の一例を示す図である。
【
図3】システム構成提案装置によって実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】3つの事例が表示されたディスプレイを示す図である。
【
図5】プロジェクトファイルで定義されるユーザのシステム構成が表示されたディスプレイを示す図である。
【
図6】ユーザがやりたいことを実現するために必要な機器が表示されたディスプレイを示す図である。
【
図7】ユーザがやりたいことを実現するために必要な機器が表示されたディスプレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)が、図面に基づいて説明される。
【0022】
§1 適用例
まず、本発明が適用される場面の一例が述べられる。
図1に示すシステム構成提案装置1は、PLC(Programmable Logic Controller)を含むシステム構成をユーザに提案するために、ユーザによって使用される。ユーザは、既存のPLCシステムを所有済みであり、かつ、何らかのPLCシステムを使用して新しくやりたいことがある。システム構成提案装置1は、そのようなユーザのやりたいことに対応する事例を、ユーザに提示する。
【0023】
システム構成提案装置1は、事例に対するユーザの選択を受け付けると、ユーザの既存のシステム構成と、受け付けた事例に対応するシステム構成とを比較する。そして、比較結果に基づいて、事例を実現するために必要な機器を含む新しいシステム構成を、ユーザに提案する。例えば、ユーザの既存のシステム構成に追加すれば事例を実現できる新しいシステム構成が得られる機器を特定し、そのような機器をユーザの既存のシステム構成に追加することを、ユーザに提案する。このように、ユーザの既存のシステム構成を活かした新しいシステム構成がユーザに提案されるので、ユーザがやりたいことを実現するための新しいシステム構成を構築する際のユーザの手間を減らすことができる。
【0024】
§2 構成例
実施形態に係るシステム構成提案装置1について、
図1を用いてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム構成提案装置1の構成を示すブロック図である。システム構成提案装置1は、ユーザがやりたいことを実現するためのPLCシステムを、ユーザに提案する装置である。
図1に示すように、システム構成提案装置1は、制御部10、ディスプレイ12、入力デバイス11、および記録デバイス13を備えている。制御部10は、表示部22(提案部)、入力部21、および比較部23を備えている。
【0025】
制御部10は、システム構成提案装置1における各種の処理を統括的に制御する。入力デバイス11は、マウス、キーボード、およびタッチパネルなどの、システム構成提案装置1に対するユーザの操作が入力されるデバイスである。ディスプレイ12は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどの、画面に情報を表示するデバイスである。記録デバイス13は、システム構成提案装置1による処理の実行に必要な各種のデータ(情報)を格納するデバイスである。本実施形態では、記録デバイス13にユーザデータベース(ユーザDB)31および事例データベース(事例DB)32が形成されている。
【0026】
入力部21は、入力デバイス11に対して入力されたユーザの操作を受け付ける。表示部22は、ディスプレイ12における情報の表示を制御する。比較部23の詳細は後述する。
【0027】
ユーザDB31は、ユーザのプロジェクトファイルを格納している。プロジェクトファイルは、ユーザが所有するPLCシステムの構成(システム構成)を定義したファイルである。プロジェクトファイルには、ユーザのシステム構成に含まれる各機器の情報と、各機器を動作させるユーザプログラムとが含まれている。機器として、PLCのマスタ(コントローラ)およびスレーブが挙げられる。プロジェクトファイルは、マスタの情報と、マスタによって制御される少なくとも1つのスレーブの情報とを含んでいる。
【0028】
図2は、事例DB32に格納される情報の一例を示す図である。事例DB32は、PLCシステムにおける各種事例に関する情報を格納している。事例とは、ユーザが何らかのPLCシステムを使用してやりたいことの例である。事例として、例えば以下のようなものが挙げられる:
・装置および設備の使用電力をモニタリング
・センサ検出面に付着する汚れによるライン突発停止頻度と清掃回数の削減
・三接続誘導モータの低圧開閉器のねじトラブル回避とスペース課題
・インデックステーブルのワーク有無検出
・プッシュインプラス端子台タイプのターミナルリレーによる配線工数削減
・スクラバー(蒸気ガス処理設備)の脱臭ファンモータの常時監視
・冷却水循環ポンプの軸受(ベアリング)以上を常時監視
・ホモジナイザー摺動部のパッキン劣化を常時監視
・ファイバユニット選定工数削減
・装置内狭小スペースでの電子部品の誤検出削減
・スティックコーヒー(食品・飲料製品)通過検出時の異物混入防止
・背景(下地)と微妙な色差のカラーマーク(レジマーク)を安定検出。
【0029】
図2の例では、事例DB32は、事例Aに関する情報、事例Bに関する情報、および事例Cに関する情報を格納している。事例Aは、実際には「センサ検出面に付着する汚れによるライン突発停止頻度と清掃回数の削減」である。事例Bは、事例Aとは異なる他の事例である。事例Cは、事例AおよびBとは異なる他の事例である。
【0030】
事例DB32は、複数の事例を個別に表す複数の事例IDを格納している。
図2の例では、事例A、事例B、および事例Cをそれぞれ表す3つの事例IDが、事例DB32に格納されている。
図2に示される事例A、事例B、事例Cは、それぞれ事例Aを表す事例ID、事例Bを表す事例ID、および事例Cを表す事例IDに相当する。
【0031】
事例DB32は、さらに、事例ごとに、対応する事例を実現するために必要なシステム構成の情報を事例IDに関連付けて格納している。
図2の例では、システム構成A1の情報と、システム構成A2の情報とが、事例Aの事例IDに関連付けられて事例DB32に格納されている。さらに、システム構成B1の情報と、システム構成B2の情報とが、事例Bの事例IDに関連付けられて事例DB32に格納されている。さらに、システム構成C1の情報が、事例Cの事例IDに関連付けられて事例DB32に格納されている。
【0032】
システム構成A1およびA2は、いずれも、事例Aを実現するために必要なシステム構成である。システム構成A1は、マスタAおよび入力ユニットXを含み、システム構成A2は、マスタBおよび入力ユニットXを含む。マスタAおよびBは、いずれも、事例Aを実現するために必要なマスタである。マスタAおよびBは、性能、スペック、およびコストなどが互いに異なるマスタであるが、事例Aの実現に使用されることに変わりはない。入力ユニットXは、事例Aを実現するために必要なスレーブである。
【0033】
各システム構成は、対応する事例を実現するために必要最小限の構成である。例えば、事例Aに対応するシステム構成A1には、事例Aを実現するために必要最小限のマスタAおよび入力ユニットXが含まれる。これは、マスタAおよび入力ユニットXを含む最小限のシステム構成A1によって、事例Aが実現できることを意味している。
【0034】
事例A、すなわち「センサ検出面に付着する汚れによるライン突発停止頻度と清掃回数の削減」という事例は、PLCシステムにおいて、ある光電センサを使用することによって、解決される。この光電センサを、以下では光電センサXと称する。光電センサXは、特定の形状のコネクタを有している。光電センサXは、さらに、センシング機能を有する機器であるため、入力端子を有するスレーブに接続される必要がある。したがって、光電センサXを何らかのPLCシステムにおいて使用するためには、光電センサXを挿入可能な特定形状のコネクタと、入力端子とを有するスレーブが必要となる。入力ユニットXはこの条件を満たすスレーブであるため、事例Aを実現するために必要なスレーブの一種である。
【0035】
システム構成B1およびB2は、いずれも、事例Bを実現するために必要なシステム構成である。システム構成B1は、マスタXおよびスレーブXを含み、システム構成B2は、マスタY、スレーブY、およびスレーブZを含む。マスタXおよびYは、いずれも、事例Bを実現するために必要なマスタである。マスタXおよびYは、性能、スペック、およびコストなどが互いに異なるマスタであるが、事例Bの実現に必要なマスタであることに変わりはない。スレーブX、Y、およびZは、いずれも、事例Bを実現するために必要なスレーブである。スレーブX、Y、およびZは、性能、スペック、およびコストなどが互いに異なるスレーブであるが、事例Bの実現に必要なスレーブであることに変わりはない。スレーブYおよびZは、両者が揃って初めて事例Bを実現することができるスレーブである。
【0036】
システム構成C1は、事例Cを実現するために必要なシステム構成である。システム構成C1は、マスタZおよびスレーブZを含む。マスタZは、事例Cを実現するために必要なスレーブである。スレーブZは、事例Cを実現するために必要なスレーブである。
【0037】
§3 制御例
図3は、システム構成提案装置1によって実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。システム構成提案装置1において、表示部22は、複数の事例をディスプレイ12に表示する(ステップS1)。具体的には、表示部22は、事例DB32に格納されている複数の事例IDと、これらの事例IDに関連付けられる事例情報とを読み出す。そして、読み出した各事例情報を一覧にして表示する。
【0038】
図4は、3つの事例A~Cが表示されたディスプレイ12を示す図である。表示部22は、例えば
図4に示すように、3つの事例A~Cをディスプレイ12の画面において横並びに表示する。
図4に表示される事例A、事例B、および事例Cは、上述した事例の一覧のいずれかであるとする。例えば事例Aは、「センサ検出面に付着する汚れによるライン突発停止頻度と清掃回数の削減」という事例である。事例BおよびCは、これ以外の他の事例である。
図4では説明の便宜のため事例A、事例B、事例Cと簡略化して図示しているが、実際の画面には、事例情報として、実際の事例を説明するテキストが表示される。例えば、事例Aの表示位置には、事例Aを説明する「センサ検出面に付着する汚れによるライン突発停止頻度と清掃回数の削減」というテキストと、事例Aを表す画像またはアイコンとが表示される。ユーザは、これらのテキストおよび画像を視認し、ユーザがやりたいことに対応するいずれかの事例を選択する。
【0039】
ここでは、ユーザがやりたいことが事例Aであるとする。ユーザは、入力デバイス11を操作して、ディスプレイ12に表示された事例Aを選択する。入力部21は、この操作を検出することによって、ユーザによる事例Aの選択を受け付ける(ステップS2)。次にユーザは、入力デバイス11を操作して、ユーザが現在所有しているPLCシステムの構成に対応するプロジェクトファイルを選択する。入力部21は、この操作を検出することによって、入力部21は、ユーザのプロジェクトファイルの選択を受け付ける(ステップS3)。
【0040】
図5は、プロジェクトファイルで定義されるユーザの既存のシステム構成が表示されたディスプレイ12を示す図である。入力部21は、プロジェクトファイルが選択されたことを表示部22に通知する。表示部22は、選択されたプロジェクトファイルをユーザDB31から読み出す。表示部22は、読み出したプロジェクトファイルで定義されるユーザの既存のシステム構成を、
図5に示すようにディスプレイ12に表示する。
【0041】
プロジェクトファイルには、ユーザのシステム構成に含まれる複数の機器が定義されている。ここでは、選択されたプロジェクトファイルに、マスタA、入力ユニットA、入力ユニットB、サーボドライバ、画像ユニット、カプラユニットA、およびカプラユニットBが定義されている。これらはいずれも、プロジェクトファイルで定義されるシステム構成に含まれる機器である。マスタAはPLCのコントローラ(制御装置)である。入力ユニットA、入力ユニットB、サーボドライバ、画像ユニット、カプラユニットA、およびカプラユニットBは、いずれもマスタAによって制御されるPLCのスレーブである。表示部22は、これらのマスタAおよび各スレーブを、
図5に示すように互いに関連付けてディスプレイ12に表示する。
図5では、マスタAを相対的に最も上の位置に表示し、入力ユニットA、入力ユニットB、サーボドライバ、画像ユニット、カプラユニットA、およびカプラユニットBを、この順でマスタAの下にそれぞれ表示する。ユーザは、
図5に示す画面を視認することによって、選択したプロジェクトファイルで定義されるシステム構成の詳細を把握する。
【0042】
次に、比較部23は、選択された事例Aに対応するシステム構成を、事例DB32から取得する(ステップS5)。取得の手順は次の通りである。表示部22は、選択された事例Aを表す事例IDを、比較部23に通知する。比較部23は、通知された事例IDに関連付けて事例DB32に格納されている任意のシステム構成を取得する。ここでは、事例Aに対応するシステム構成A1およびA2のうち、システム構成A1のみを取得したものとする。
【0043】
比較部23は、既存のシステム構成と、取得されたシステム構成A1とを比較する(ステップS6)。具体的には、比較部23は、システム構成A1に含まれるマスタAおよび入力ユニットXと、既存のシステム構成に含まれる入力ユニットA等の各機器とが、互いに一致するか否かを、順に比較する。
図5に示すように、既存のシステム構成はマスタAを含んでいる。したがって比較部23は、事例Aを実現するために必要なマスタAは、ユーザの既存のシステム構成に既に含まれていることを特定する。また、既存のシステム構成に含まれる各スレーブは、すべて入力ユニットXとは異なるスレーブである。したがって比較部23は、事例Aを実現するために必要な入力ユニットXが、ユーザの既存のシステム構成に含まれていないことを特定する。比較部23は、これらの特定結果を表示部22に通知する。
【0044】
図6は、ユーザがやりたいことを実現するために必要な機器が表示されたディスプレイ12を示す図である。表示部22は、
図6に示すように、ユーザがやりたいこと(事例A)を実現するために新たに必要な入力ユニットXを、ディスプレイ12に表示する(ステップS7)。これにより、入力ユニットXを含む新しいシステム構成をユーザに提案する。この際、表示部22は、入力ユニットXをユーザのシステム構成に関連付けて、これらを一度に表示する。
図6の例では、表示部22は、入力ユニットXを、ユーザのシステム構成における末端のスレーブに接続される状態で表示する。
図5に示すように、末端のスレーブはカプラユニットBである。そこで表示部22は、
図6に示すように、入力ユニットXを、カプラユニットBに接続されかつカプラユニットBの下流に配置されるように、ディスプレイ12に表示する。システム構成A1に含まれるマスタAは、既存のシステム構成に既に含まれているため、表示部22は、マスタAの追加をユーザに提案せず、既存のマスタAをそのまま表示する。
【0045】
ユーザは、
図6に示すような、入力ユニットXが追加表示された新システム構成を視認することによって、ユーザがやりたい事例Aを実現できる新規システム構成の全体像を把握することができる。さらに、ユーザの既存のシステム構成に入力ユニットXを追加すれば、事例Aを実現できることを把握することができる。
【0046】
表示部22は、ユーザの既存のシステム構成に追加すべき入力ユニットXを、当該システム構成に既に含まれる各機器とを、視覚的に区別して表示する。
図6では、表示部22は、入力ユニットXの表示色を、入力ユニットA等の表示色と異ならせている。ユーザは、
図6に示すディスプレイ12の画面を視認することによって、事例Aの実現のために追加すべき機器が入力ユニットXであることを容易に把握することができる。
【0047】
ユーザは、入力デバイス11を操作して、表示された入力ユニットXを選択することができる。入力部21は、この操作を検出すると、選択された入力ユニットXを、ユーザの既存のシステム構成に組み込む。具体的には、入力ユニットXを、ユーザDB31内のプロジェクトファイルに追加保存する。
【0048】
図7は、ユーザがやりたいことを実現するために必要な機器が表示されたディスプレイ12を示す図である。表示部22は、ユーザがやりたいことを実現するために必要な入力ユニットXを、
図6に示すようにディスプレイ12に表示してもよい。
図7の例では、表示部22は、入力ユニットXを、ユーザのシステム構成における既存のスレーブ系統とは異なる別の系統に追加される状態で表示する。具体的には、表示部22は、マスタAの直下に接続される分岐ユニットと、分岐ユニットに接続される入力ユニットXとをディスプレイ12に表示する。さらに、入力ユニットAの接続先がマスタAから分岐ユニットに変更されるように、入力ユニットXの接続先の表示を変更する。ユーザは、
図7に示すような、入力ユニットXが追加表示された新システム構成を視認することによって、ユーザの既存のシステム構成に分岐ユニットおよび入力ユニットXを追加すれば、事例Aを実現することができることを把握する。
【0049】
図7の例では、表示部22は、ユーザの既存のシステム構成に追加すべき入力ユニットXを、当該システム構成に既に含まれる各機器とを、視覚的に区別して表示する。
図7では、表示部22は、入力ユニットXの表示色を、入力ユニットA等の表示色と異ならせている。分岐ユニットの表示色は、入力ユニットA等の表示色と同一である。しかし表示部22は、分岐ユニットの表示色についても、入力ユニットXと同様に、入力ユニットA等の表示色と異ならせてもよい。ユーザは、
図7に示すディスプレイ12の画面を視認することによって、事例Aの実現のために追加すべき機器が入力ユニットXであることを容易に把握することができる。
【0050】
(主要な作用効果)
本実施形態によれば、システム構成提案装置1は、ユーザがやりたいこと(すなわち事例A)を実現する機器をための新しいシステム構成を、ユーザの既存のシステム構成に基づいてユーザに提案する。これにより、ユーザの既存のシステム構成を活かした提案が可能となる。このような提案を受けるユーザは、事例Aを実現するための新しいシステム構成を自ら設計する必要がない。ユーザの既存のシステム構成に対して何の機器を追加すれば事例Aを実現する新規システム構成を構築できるのかを、ユーザが自ら検討する必要もない。このように、システム構成提案装置1は、ユーザがやりたいことを実現するための新たなシステム構成を構築する際のユーザの負担を減らすことができる。
【0051】
(変形例)
表示部22は、追加の入力ユニットXを含むシステムをユーザに提案する際、追加される入力ユニットXの性能およびスペックを、入力ユニットXと共にディスプレイ12に表示してもよい。
【0052】
表示部22は、ユーザに提案されるシステムに含まれる追加の入力ユニットXのコストを、入力ユニットXと共にディスプレイ12にさらに表示してもよい。表示部22は、追加の複数のスレーブを含むシステムをユーザに提案する場合、追加される複数のスレーブの各コストの合計を、追加される複数のスレーブと共にディスプレイ12に表示してもよい。
【0053】
比較部23は、事例Aが選択された場合、事例Aに対応するシステム構成A2を、事例DB32から取得してもよい。この場合、比較部23は、ユーザのシステム構成に含まれるマスタAと、事例Aに対応するシステム構成A1に含まれるマスタBとを比較する。この際、マスタBの性能は、マスタAよりも高いものとする。したがって、比較部23は、マスタBの性能がマスタAよりも高いことを特定する。比較部23は、さらに、事例Aを実現するために必要な入力ユニットYが、ユーザの既存のシステム構成に含まれていないことを特定する。比較部23は、これらの特定結果を表示部22に通知する。
【0054】
表示部22は、この通知を受けて、マスタBおよび入力ユニットYの双方をディスプレイ12に表示することによって、マスタBおよび入力ユニットYの双方をユーザに提案する。ユーザは、この提案を受けて、既存のマスタAを新しいマスタBに置き換え、かつ入力ユニットYを追加すれば、事例Aを実現するPLCシステムを構築できることを把握する。
【0055】
表示部22は、マスタBおよび入力ユニットYの双方をユーザに提案する際、マスタBのコストと入力ユニットYのコストとの合計を、マスタBおよび入力ユニットYと共にディスプレイ12に表示してもよい。
【0056】
表示部22は、ユーザによって選択された事例に、複数の異なるシステム構成が対応している場合、これらのシステム構成を一度に表示してもよい。例えば、
図3の例では、事例Aにはシステム構成A1およびシステム構成A2の双方が対応している。すなわち、事例Aは、システム構成A1およびシステム構成A2のいずれによっても実現される。そこで表示部22は、ユーザが事例Aを選択した場合、システム構成A1に含まれる入力ユニットXと、システム構成A2に含まれるマスタBおよび入力ユニットYとを、ディスプレイ12に一度に表示してもよい。これにより、入力ユニットXを選択するか、あるいはマスタBおよびユニットYを選択するかを検討する機会を、ユーザに与えることができる。ユーザは、各ユニットのコストおよび性能、あるいはマスタBの性能およびコストなどの諸条件考慮し、より好ましい機器を適宜選択することができる。
【0057】
表示部22は、選択された事例を実現するために必要な機器が、ユーザの既存のシステム構成に何ら含まれない場合、選択された事例に対応する複数のシステム構成のうち最小限の機器を含むシステム構成を提案してもよい。例えば、ユーザが事例Bを選択したとする。この場合、比較部23は、事例Bに対応するシステム構成B1またはB2を事例DB32から取得することができる。比較部23は、まずシステム構成B1を取得し、システム構成B1に含まれる各機器と、ユーザの既存のシステム構成に含まれる各機器とを比較する。これにより比較部23は、システム構成B1に含まれるマスタXおよびスレーブXが、いずれも既存のシステム構成に含まれないことを特定する。
【0058】
そこで比較部23は、次に、システム構成B2を事例DB32から取得し、システム構成B2に含まれる各機器と、ユーザの既存のシステム構成に含まれる各機器とを比較する。これにより比較部23は、システム構成B2に含まれるマスタX、スレーブY、およびスレーブZが、いずれも既存のシステム構成に含まれないことを特定する。
【0059】
比較部23は、これらの特定結果に基づいて、選択された事例Bを実現するために必要な機器が、ユーザの既存のシステム構成に何ら含まれないことを特定する。そこで比較部23は、事例Bに対応するシステム構成B1およびB2のうち、システム構成に含まれる機器の数が最も少ないシステム構成B1を、表示部22に通知する。表示部22は、この通知を受けて、システム構成B1に含まれるマスタXおよびスレーブXを、ユーザに提案する。これによりユーザは、事例Bを実現するために必要な最小限の機器を選択することができるので、最小限のコストで事例Bを実現する新システムを構築することができる。
【0060】
ユーザは、事例Aを選択した後、事例Aを実現する新システム構成に含まれるマスタに求める制御周期を入力してもよい。例えば、125μs、500μs、または2msのいずれかを入力する。入力部21は、この入力操作を受け付け、比較部23に通知する。比較部23は、事例Aに対応し、かつ選択された制御周期以下の制御周期で動作可能なマスタを含むシステム構成を、事例DB32から取得する。表示部22は、取得されたシステム構成をユーザに提案する。例えば、マスタBが200μs以下の制御周期で動作できるものとする。また、ユーザが、事例Aを選択し、かつ500μsを入力したとする。この場合、比較部23は、500μs以下で動作可能なマスタBを含み、かつ事例Aに対応するシステム構成A2を、事例DB32から取得する。表示部22は、システム構成A2に含まれるマスタBおよび入力ユニットYをディスプレイ12に表示する。これによりシステム構成提案装置1は、ユーザが求める制御周期を満たすマスタBをユーザに提案することができる。
【0061】
表示部22は、追加の入力ユニットXを含む新たなシステム構成をユーザに提案する際、システム構成に含まれるマスタAにおけるファンクションブロックの追加をユーザにさらに提案することができる。例えば、追加される候補のファンクションブロックを、入力ユニットXと共にディスプレイ12に表示すればよい。
【0062】
ユーザは、入力デバイス11を操作して、提案されるシステム構成においてユーザが使用を希望する装置(サーボ、インバータ、ロボットなど)を選択することができる。表示部22は、入力部21がこの操作を受け付けた場合、ユーザの選択結果に応じて、ユーザに提案するシステム構成を適宜変更する。例えば、サーボが選択された場合、サーボに対応するシステム構成をディスプレイ12に表示すればよい。
【0063】
システム構成提案装置1は、外部のサーバと通信する通信部(不図示)をさらに備えてもよい。通信部は、事例A~Cを含むウェブページをサーバから取得してもよい。この場合、表示部22は、取得されたウェブページをディスプレイ12に表示することによって、事例A~Cをディスプレイ12に表示する。通信部は、表示されたウェブページを通じて例えばユーザによって事例Aが選択された場合、事例Aが選択されたことをサーバに通知する。サーバは、この通知を受けて、事例Aを表す事例IDをシステム構成提案装置1に送信する。通信部は、送信された事例IDを受信し、比較部23に出力する。比較部23は、入力された事例Aの事例IDに対応するシステム構成A1またはシステム構成A2を事例DB32から取得する。
【0064】
〔実現例〕
システム構成提案装置1の各機能ブロック(特に、入力部21、表示部22、および比較部23)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0065】
後者の場合、制御装置は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。
【0066】
前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。
【0067】
また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0068】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることによって、新しい技術的特徴を形成することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 システム構成提案装置
10 制御部
11 入力デバイス
12 ディスプレイ
13 記録デバイス
21 入力部
22 表示部
23 比較部
31 ユーザDB
32 事例DB