(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】射出成形装置および射出成形用の成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/43 20060101AFI20241210BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20241210BHJP
B29C 33/46 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B29C45/43
B29C45/64
B29C33/46
(21)【出願番号】P 2021008562
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 達哉
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-086189(JP,A)
【文献】特開昭63-028610(JP,A)
【文献】特開平06-170898(JP,A)
【文献】特開2011-256435(JP,A)
【文献】特開2002-240105(JP,A)
【文献】特開2003-094496(JP,A)
【文献】実開昭60-041220(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
39/26-39/36
41/38-41/44
43/36-43/42
43/50
45/00-45/84
49/48-49/56
49/70
51/30-51/40
51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、
前記固定型に対向する可動型と、
前記固定型に対して前記可動型を移動させる型締部と、
前記固定型および前記可動型によって区画されるキャビティーに溶融材料を射出する射出部と、
を備え、
前記可動型には、前記キャビティーに連通する流路であって、前記キャビティー内の成形品を加圧して押し出す作動流体が流れる前記流路が形成されて
おり、
前記可動型に対して前記キャビティーとは反対側に配置されたシリンダー部であって、前記流路に連通するシリンダー部と、前記シリンダー部内に配置されたピストン部と、を有し、前記シリンダー部に対する前記ピストン部の相対移動によって前記流路に前記作動流体を圧送する加圧部をさらに備える、
射出成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形装置であって、
前記加圧部は、
前記シリンダー部に対して前記キャビティーとは反対側に配置されたエジェクタープレートであって、前記ピストン部が固定されたエジェクタープレートと、
前記エジェクタープレートと前記シリンダー部との間に配置されたリターンバネと、
をさらに有し、
前記型締部は、前記可動型を前記固定型から遠ざかるように移動させている間に、前記エジェクタープレートを前記シリンダー部に近付けることにより、前記シリンダー部に対して前記ピストン部を相対移動させて、前記加圧部により前記流路に前記作動流体を圧送させ、
前記リターンバネは、前記型締部が前記可動型を前記固定型に近付くように移動させている間に、前記エジェクタープレートを前記シリンダー部から遠ざかるように押し戻す、射出成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形装置であって、
前記可動型には、複数の前記流路が形成されている、射出成形装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の射出成形装置であって、
前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方は、前記キャビティーを区画する入れ子部と、前記入れ子部を収納する収納部とを有する、射出成形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の射出成形装置であって、
前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方は、複数の層が積層された構造を有する、射出成形装置。
【請求項6】
射出成形用の成形型であって、
固定型と、
前記固定型に対向し、前記固定型に対して移動する可動型と、
を備え、
前記固定型および前記可動型は、溶融材料を充填されるキャビティーを区画し、
前記可動型には、前記キャビティーに連通す
る流路であって、前記キャビティー内の成形品を加圧して押し出す作動流体が流れる前
記流路が形成されて
おり、
前記可動型に対して前記キャビティーとは反対側に配置されたシリンダー部であって、前記流路に連通するシリンダー部と、前記シリンダー部内に配置されたピストン部と、を有し、前記シリンダー部に対する前記ピストン部の相対移動によって前記流路に前記作動流体を圧送する加圧部をさらに備える、
成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形装置および射出成形用の成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動型から成形品を押し出すためのエジェクター装置を備える射出成形装置が開示されている。この射出成形装置では、エジェクター装置は、エジェクターピンと、エジェクターピンを移動させるための部品であるエジェクト用モーターとを備えており、可動プラテンに取り付けられている。エジェクト用モーターが駆動することによりキャビティーにエジェクターピンが前進して、可動型から成形品が押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のような射出成形装置では、成形品の形状を変更する場合、成形型を変更するだけではなく、エジェクターピンを移動させるための部品をも変更する必要があるので、成形品の形状を変更するために手間や費用がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、射出成形装置が提供される。この射出成形装置は、固定型と、前記固定型に対向する可動型と、前記固定型に対して前記可動型を移動させる型締部と、前記固定型および前記可動型によって区画されるキャビティーに溶融材料を射出する射出部と、を備える。前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方には、前記キャビティーに連通する流路であって、前記キャビティー内の成形品を加圧して押し出す作動流体が流れる前記流路が形成されている。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、射出成形用の成形型が提供される。この成形型は、固定型と、前記固定型に対向し、前記固定型に対して移動する可動型と、を備える。前記固定型および前記可動型は、溶融材料を充填されるキャビティーを区画し、前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方には、前記キャビティーに連通する複数の流路であって、前記キャビティー内の成形品を加圧して押し出す作動流体が流れる前記複数の流路が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の射出成形装置の概略構成を示す正面図。
【
図2】第1実施形態の射出成形装置の概略構成を示す断面図。
【
図3】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図。
【
図5】第1実施形態の成形型の概略構成を示す断面図。
【
図6】第1実施形態の可動型の概略構成を示す平面図。
【
図7】成形品が押し出される様子を示す第1の説明図。
【
図8】成形品が押し出される様子を示す第2の説明図。
【
図9】成形品が押し出される様子を示す第3の説明図。
【
図10】第2実施形態の射出成形装置の概略構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における射出成形装置10の概略構成を示す正面図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向とは反対の方向である。
図2以降に示すX,Y,Z方向は、
図1に示すX,Y,Z方向に対応している。以下の説明において、向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。
【0009】
射出成形装置10は、射出部100と、型締部200と、成形型300と、制御部500とを備えている。本実施形態では、射出部100、型締部200、および、制御部500は、基台20に固定されている。成形型300は、型締部200に装着されている。
【0010】
射出部100には、成形品の材料である成形材料が投入されるホッパー101が接続されている。成形材料として、例えば、ペレット状に形成された熱可塑性樹脂が用いられる。成形材料は、例えば、ペレット状に加工されている。
【0011】
射出部100は、ホッパー101から供給された成形材料の少なくとも一部を可塑化して溶融材料を生成し、成形型300内に溶融材料を射出注入する。「可塑化」とは、熱可塑性を有する成形材料に熱が加わり溶融することを意味する。また、「溶融」とは、熱可塑性を有する成形材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する成形材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化して流動性が発現することをも意味する。成形型300に射出注入された溶融材料は、成形型300内で冷えて固化することによって成形品になる。
【0012】
制御部500は、1つまたは複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。制御部500は、プロセッサーが主記憶装置上にプログラムを読み込んで実行することによって射出部100および型締部200を制御して、成形品を製造する。
【0013】
図2は、射出成形装置10の概略構成を示す断面図である。
図2には、射出部100と型締部200と成形型300との断面が表されている。射出部100は、可塑化部110と、射出制御機構120と、ノズル130とを備えている。
【0014】
可塑化部110は、ホッパー101から供給されたペレット状の成形材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の溶融材料を生成して、溶融材料を射出制御機構120に供給する機能を有している。本実施形態では、可塑化部110は、スクリュー駆動部111と、スクリューケース113と、フラットスクリュー115と、バレル116と、可塑化ヒーター117とを備えている。
【0015】
スクリュー駆動部111は、モーターと減速機とによって構成されている。スクリュー駆動部111は、制御部500の制御下で駆動される。スクリュー駆動部111は、フラットスクリュー115に接続されている。
【0016】
フラットスクリュー115は、スクリューケース113とバレル116とによって囲まれた空間に収納されている。上記空間内に収納されているフラットスクリュー115は、スクリュー駆動部111からの回転駆動力によって回転する。
【0017】
バレル116の中央部には、バレル116を貫通する連通孔118が設けられている。連通孔118には、後述する射出シリンダー121が接続されている。連通孔118には、射出シリンダー121よりも上流部に、逆止弁124が設けられている。
【0018】
可塑化ヒーター117は、バレル116に埋め込まれている。可塑化ヒーター117は、電力の供給を受けて発熱する。可塑化ヒーター117の温度は、制御部500によって制御される。
【0019】
図3は、フラットスクリュー115の概略構成を示す斜視図である。フラットスクリュー115は、略円柱形状を有している。フラットスクリュー115の中心軸RXに沿った方向の高さは、フラットスクリュー115の直径よりも小さい。フラットスクリュー115は、バレル116に対向する溝形成面150を有している。溝形成面150には、中央部151を中心にして渦状に延びている溝152が形成されている。溝152は、フラットスクリュー115の側面に形成された材料導入口153に連通している。ホッパー101から供給された成形材料は、材料導入口153から溝152に導入される。本実施形態では、溝形成面150には、3本の溝152が形成されている。溝152同士の間は、凸条部154によって隔てられている。なお、溝152の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本でもよいし、4本以上でもよい。溝152の形状は、渦状に限られず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状でもよいし、中央部151から外周に向かって弧を描く形状でもよい。
【0020】
図4は、バレル116の概略構成を示す平面図である。バレル116は、フラットスクリュー115の溝形成面150に対向する対向面160を有している。対向面160の中央には、連通孔118が設けられている。連通孔118は、フラットスクリュー115の中心軸RXの延長線上に設けられている。対向面160には、連通孔118に接続され、連通孔118から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝161が形成されている。なお、対向面160に設けられた案内溝161は、連通孔118に接続されていなくてもよい。また、対向面160に案内溝161が設けられていなくてもよい。
【0021】
フラットスクリュー115の溝152に供給された成形材料は、フラットスクリュー115の回転および可塑化ヒーター117からの加熱によって、フラットスクリュー115とバレル116との間において可塑化されながら、フラットスクリュー115の回転によって溝152および案内溝161に沿って流動し、フラットスクリュー115の中央部151へと導かれる。中央部151に流入した溶融材料は、連通孔118から射出制御機構120へと導かれる。
【0022】
図2に示すように、射出制御機構120は、射出シリンダー121と、プランジャー122と、プランジャー駆動部123とを備えている。射出制御機構120は、可塑化部110から射出シリンダー121内に供給された溶融材料をノズル130から射出する機能を有している。ノズル130から射出された溶融材料は、後述する成形型300のキャビティーCvに充填される。
【0023】
射出シリンダー121は、バレル116の連通孔118に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー122を備えている。プランジャー122は、モーターによって構成されるプランジャー駆動部123によって射出シリンダー121内を摺動し、射出シリンダー121内の溶融材料をノズル130に圧送する。プランジャー駆動部123は、制御部500の制御下で駆動される。
【0024】
成形型300は、固定型310と、固定型310に対向して配置される可動型320とを有している。固定型310と可動型320とが接触することによって、固定型310と可動型320との間にキャビティーCvが区画される。キャビティーCvは、成形品の形状に応じた形状を有する空間である。キャビティーCvには、ノズル130から溶融材料が射出される。キャビティーCvに充填された溶融材料は、冷えて固化することによって成形品になる。本実施形態では、成形型300には、固定型310に対する可動型320の位置ずれを抑制するためのガイドピン305が設けられている。なお、ガイドピン305が設けられていなくてもよい。
【0025】
型締部200は、固定型310に対して可動型320を移動させる機能、つまり、成形型300を開閉する機能を有している。本実施形態では、型締部200は、固定盤210と、可動盤220と、タイバー230と、ボールねじ部240と、型駆動部250とを備えている。
【0026】
射出部100、固定盤210、および、可動盤220は、X方向に沿ってこの順に配置されている。固定盤210は、X方向に沿って設けられたタイバー230の先端部に固定されている。固定盤210の可動盤220側の面には、例えば、ボルトまたはクランプによって固定型310が固定されている。
【0027】
可動盤220は、タイバー230に沿って移動可能に構成されている。可動盤220は、X方向に沿って設けられたボールねじ部240に接続されている。可動盤220の固定盤210側の面には、例えば、ボルトまたはクランプによって可動型320が固定されている。
【0028】
型駆動部250は、モーターと減速機とによって構成されている。型駆動部250は、制御部500の制御下で駆動される。型駆動部250は、ボールねじ部240を介して可動型320に接続されている。型駆動部250は、ボールねじ部240を回転させて、固定盤210に固定された固定型310に対して可動盤220に固定された可動型320を移動させることによって、成形型300を開閉する。
【0029】
図5は、成形型300の概略構成を示す断面図である。
図6は、可動型320の概略構成を示す平面図である。
図5には、型締めされた状態の成形型300が表されている。本実施形態では、成形型300は、固定型310と、可動型320と、加圧部340とを有している。
【0030】
本実施形態では、可動型320は、入れ子部321と、収納部322とを有している。収納部322は、筒状に構成されている。入れ子部321は、収納部322の内側に収納されている。入れ子部321は、固定型310に対向する面に凹部325を有している。固定型310と入れ子部321とが接触すると、固定型310と凹部325とによってキャビティーCvが区画される。固定型310には、ノズル130が挿入される貫通孔が設けられており、キャビティーCvには、ノズル130から溶融材料が射出される。
【0031】
入れ子部321は、キャビティーCvに連通する複数の流路330を有している。本実施形態では、
図6に示すように、16個の流路330が入れ子部321に設けられている。
図5に示すように、各流路330は、X方向に沿って入れ子部321を貫通している。各流路330の開口形状は、円形である。各流路330のキャビティーCv側の開口部は、キャビティーCvに射出された溶融材料の流路330への流入を抑制可能な大きさで設けられている。本実施形態では、各流路330のキャビティーCv側の開口部の直径は、数マイクロメートルから数百マイクロ―メートルである。キャビティーCvに射出される溶融材料の粘度が小さいほど各流路330のキャビティーCv側の開口部が小径で設けられることが好ましい。なお、流路330の個数は、複数ではなく、1つでもよい。流路の330の開口形状は、円形に限られず、例えば、楕円形や、四角形等の多角形でもよい。
【0032】
各流路330には、キャビティーCvにて成形された成形品を加圧して押し出す作動流体がキャビティーCvに向かって流れる。本実施形態では、作動流体として、圧縮空気が用いられる。作動流体として、圧縮空気以外の気体や、油等の液体が用いられてもよい。
【0033】
加圧部340は、シリンダー部341と、ピストン部342と、エジェクタープレート343と、リターンピン344と、リターンバネ345とを備えている。シリンダー部341は、入れ子部321および収納部322に対してキャビティーCvとは反対側に配置されている。シリンダー部341は、例えば、ボルト等によって収納部322に固定されている。シリンダー部341は、筒状に構成されている。シリンダー部341の内部空間は、入れ子部321に設けられた流路330に連通している。
【0034】
ピストン部342は、シリンダー部341の内部空間に配置されている。ピストン部342は、シリンダー部341の内壁面349に沿った外形形状を有している。ピストン部342は、シリンダー部341に対してX方向に相対移動する。本実施形態では、シリンダー部341の内壁面349は、円筒状に構成されており、ピストン部342は、円柱状に構成されている。なお、シリンダー部341の内壁面349が角柱状に構成され、ピストン部342が角柱状に構成されてもよい。
【0035】
エジェクタープレート343は、シリンダー部341に対してキャビティーCvとは反対側に配置されている。エジェクタープレート343は、シリンダー部341との間に隙間を空けて配置されている。エジェクタープレート343の中央部分には、ピストン部342が固定されている。エジェクタープレート343の外周部分には、リターンピン344が固定されている。
【0036】
リターンピン344は、X方向に沿って設けられた棒状部材である。リターンピン344は、シリンダー部341と可動型320の収納部322とに設けられた貫通孔に挿通されている。エジェクタープレート343およびリターンピン344は、ピストン部342とともにシリンダー部341に対してX方向に相対移動する。
【0037】
リターンバネ345は、シリンダー部341とエジェクタープレート343との間に配置されている。リターンバネ345は、X方向に沿って伸縮する圧縮コイルバネである。リターンバネ345は、リターンピン344に沿って設けられている。リターンバネ345の一端は、シリンダー部341に接触しており、リターンバネ345の他端は、エジェクタープレート343に接触している。リターンバネ345は、シリンダー部341に接近したエジェクタープレート343を押し戻す。
【0038】
本実施形態では、固定型310および可動型320の収納部322は、金属材料で形成されている。固定型310および収納部322は、金属材料の塊に切削加工や放電加工等を施すことによって製造されている。固定型310および収納部322を形成するための金属材料として、例えば、工具鋼やステンレス鋼等を用いることができる。なお、固定型310は、金属材料ではなく、樹脂材料やセラミック材料で形成されてもよい。収納部322は、金属材料ではなく、樹脂材料やセラミック材料で形成されてもよい。
【0039】
本実施形態では、可動型320の入れ子部321は、樹脂材料で形成されている。入れ子部321は、三次元造形装置を用いて樹脂材料の層を積層することによって製造されている。そのため、入れ子部321は、複数の層が積層された構造を有している。入れ子部321を形成するための樹脂材料として、例えば、環状オレフィンコポリマー(COC)や、ポリベンゾイミダゾール(PBI)や、ポリフェニレンスルファイド(PPS)や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や、ポリアセタール(POM)や、ポリアミド66(PA66)等を用いることができる。成形材料が結晶性の樹脂材料である場合には、入れ子部321は、成形材料の融点に比べて融点の高い結晶性の樹脂材料、または、成形材料の融点に比べてガラス転移点の高い非晶性の樹脂材料で形成されることが好ましい。成形材料が非晶性の樹脂材料である場合には、入れ子部321は、成形材料のガラス転移点に比べて融点の高い結晶性の樹脂材料、または、成形材料のガラス転移点に比べてガラス転移点の高い非晶性の樹脂材料で形成されることが好ましい。なお、入れ子部321は、三次元造形装置を用いずに製造されてもよい。入れ子部321は、樹脂材料ではなく、金属材料やセラミック材料で形成されてもよい。入れ子部321と収納部322とが同じ材料で形成されてもよい。
【0040】
本実施形態では、シリンダー部341、ピストン部342、エジェクタープレート343、および、リターンピン344は、金属材料で形成されている。シリンダー部341、ピストン部342、エジェクタープレート343、および、リターンピン344を形成するための金属材料として、例えば、工具鋼やステンレス鋼等を用いることができる。なお、シリンダー部341、ピストン部342、エジェクタープレート343、および、リターンピン344は、金属材料ではなく、樹脂材料やセラミック材料で形成されてもよい。
【0041】
図7は、成形品MDが押し出される様子を示す第1の説明図である。
図8は、成形品MDが押し出される様子を示す第2の説明図である。
図9は、成形品MDが押し出される様子を示す第3の説明図である。
【0042】
図5に示したように、キャビティーCvに溶融材料が射出される前には、キャビティーCvとシリンダー部341内とが流路330を介して連通している。この状態では、シリンダー部341内の空気の圧力は、大気圧と同じである。
【0043】
図7に示すように、ノズル130からキャビティーCvに溶融材料が射出されると、流路330のキャビティーCv側の開口部が溶融材料によって閉塞される。その後、キャビティーCvの溶融材料が冷えて固化して、成形品MDになる。
【0044】
図8に示すように、成形型300が型開きされる際に、型締部200の可動盤220の移動によって、可動型320およびシリンダー部341が固定型310から離れるように移動する。この際、ピストン部342、エジェクタープレート343、および、リターンピン344は、リターンバネ345に付勢されて、可動型320およびシリンダー部341とともに移動する。
【0045】
図9に示すように、エジェクタープレート343がボールねじ部240の先端部に接触すると、ピストン部342、エジェクタープレート343、および、リターンピン344は、移動を停止する。これに対して、可動型320およびシリンダー部341は、可動盤220の移動によって、固定型310から離れるようにさらに移動する。そのため、ピストン部342がシリンダー部341の内壁面349上を摺動する。流路330のキャビティーCv側の開口部が成形品MDによって閉塞されているので、シリンダー部341に対するピストン部342の相対移動によって、シリンダー部341および流路330内の空気が圧縮される。成形品MDは、流路330内の圧縮空気からの圧力によって固定型310に向かって押される。圧縮空気の圧力が所定の圧力を超えると、成形品MDが離型する。離型した成形品MDは、例えば、射出成形装置10の隣に設置された取り出しロボットによって搬送される。
【0046】
成形品MDが凹部325外に取り出されると、流路330のキャビティーCv側の開口部が開放されるので、流路330およびシリンダー部341内の空気の圧力は、大気圧と同じ圧力に戻る。成形型300が再び型締めされる際に、ピストン部342.エジェクタープレート343、および、リターンピン344は、リターンバネ345に押し戻されて、
図5に示した状態に戻る。
【0047】
以上で説明した本実施形態における射出成形装置10によれば、エジェクターピンを用いずに、可動型320に設けられた流路330を流れる圧縮空気によって成形品MDを加圧して、成形品MDを離型させることができる。成形品MDの形状を変更する場合には、加圧部340を変更せずに、可動型320を変更するだけで、変更後の成形品MDを成形して離型させることができる。そのため、成形品MDの形状を変更する場合に、固定型310や可動型320以外の部品を変更する手間や費用がかかることを抑制できる。特に、本実施形態では、流路330は、可動型320のうち、キャビティーCvを区画する面を有する入れ子部321に設けられている。そのため、成形品MDの形状を変更する場合に、収納部322を流用できるので、可動型320を製造するための材料費を少なくできる。
【0048】
また、本実施形態では、可動型320には、複数の流路330が設けられているので、成形品MDの複数個所を加圧することができる。そのため、成形品MDを効果的に離型させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、シリンダー部341とピストン部342との相対移動によって流路330に圧縮空気を圧送することができる。そのため、簡素な構成で、成形品MDを離型させることができる。特に、本実施形態では、型締部200が可動型320を移動させることによって、可動型320に固定されたシリンダー部341に対してピストン部342が相対移動して、流路330に圧縮空気が圧送される。そのため、シリンダー部341に対してピストン部342を相対移動させるための装置を別途設けずに、流路330に圧縮空気を圧送できる。
【0050】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態における射出成形装置10bの概略構成を示す側面図である。第2実施形態では、
図5に示した加圧部340が可動型320に取り付けられておらず、加圧ポンプ400によって流路330に圧縮空気が供給されることが第1実施形態とは異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0051】
本実施形態では、流路330には、可撓性を有するチューブ410を介して加圧ポンプ400が接続されている。加圧ポンプ400は、基台20内に固定されている。加圧ポンプ400は、制御部500の制御下で駆動される。本実施形態では、作動流体として圧縮空気が用いられるので、加圧ポンプ400には、例えば、遠心式圧縮機や、ターボ型コンプレッサーを用いることができる。なお、作動流体として油等の液体が用いられる場合には、加圧ポンプ400には、例えば、渦巻ポンプや、ギアポンプや、ピストンポンプ等を用いることができる。制御部500は、型開きの際に、加圧ポンプ400を駆動させて流路330に圧縮空気を圧送することによって、キャビティーCvにて成形された成形品MDを離型させる。なお、加圧ポンプ400のことを加圧部と呼ぶことがある。
【0052】
以上で説明した本実施形態における射出成形装置10bによれば、制御部500の制御下で駆動される加圧ポンプ400によって、流路330に圧縮空気を圧送して、成形品MDを離型させることができる。特に、本実施形態では、制御部500が加圧ポンプ400の出力を調整することによって流路330に供給される圧縮空気の圧力を調整できる。
【0053】
C.他の実施形態:
(C1)上述した各実施形態の射出成形装置10,10bでは、キャビティーCvに向かって作動流体が流れる流路330が可動型320に設けられている。これに対して、流路330は、固定型310に設けられてもよい。この場合、例えば、
図10に示した加圧ポンプ400を用いて、固定型310に設けられた流路330に作動流体を圧送することによって、成形品を加圧して押し出すことができる。また、固定型310と可動型320とに流路330が設けられてもよい。固定型310に設けられた流路330には、例えば、加圧ポンプ400を用いて作動流体を圧送できる。可動型320に設けられた流路330には、例えば、加圧部340または加圧ポンプ400を用いて作動流体を圧送できる。固定型310と可動型320とのうちの成形品が貼り付く一方に設けられた流路330に作動流体を圧送することによって、成形品を加圧して押し出すことができる。
【0054】
(C2)上述した各実施形態の射出成形装置10,10bにおいて、射出成形装置10,10bに加圧部340や加圧ポンプ400が設けられていなくてもよい。この場合、例えば、圧縮空気が流れる工場のパイプラインと成形型300の流路330とが、制御部500の制御下で開閉されるバルブを介して接続され、上記バルブが開弁されることによって流路330に作動流体としての圧縮空気が供給されてもよい。
【0055】
(C3)上述した各実施形態の射出成形装置10,10bでは、可動型320は、入れ子部321と収納部322とに分割された入れ子構造を有している。これに対して、可動型320は、入れ子構造を有していなくてもよい。つまり、入れ子部321と収納部322とが一体化されていてもよい。入れ子部321と収納部322とシリンダー部341とが一体化されていてもよいし、入れ子部321と収納部322とが一体化されずに、収納部322とシリンダー部341とが一体化されてもよい。また、固定型310が入れ子構造を有してもよい。
【0056】
(C4)上述した各実施形態の射出成形装置10,10bでは、可動型320は、三次元造形装置によって製造されており、樹脂材料からなる複数の層が積層された構造を有している。これに対して、可動型320は、複数の層が積層された構造を有していなくてもよい。また、固定型310は、三次元造形装置によって製造されることによって、樹脂材料からなる複数の層が積層された構造を有してもよい。
【0057】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0058】
(1)本開示の第1の形態によれば、射出成形装置が提供される。この射出成形装置は、固定型と、前記固定型に対向する可動型と、前記固定型に対して前記可動型を移動させる型締部と、前記固定型および前記可動型によって区画されるキャビティーに溶融材料を射出する射出部と、を備える。前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方には、前記キャビティーに連通する流路であって、前記キャビティー内の成形品を加圧して押し出す作動流体が流れる前記流路が形成されている。
この形態の射出成形装置によれば、エジェクターピンを用いずに、固定型に設けられた流路を流れる作動流体、または、可動型に設けられた流路を流れる作動流体によって、成形品を加圧して押し出すことができる。そのため、成形品の形状を変更する場合に、固定型や可動型以外の部品を変更する手間や費用がかかることを抑制できる。
【0059】
(2)上記形態の射出成形装置において、前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方には、複数の前記流路が形成されてもよい。
この形態の射出成形装置によれば、成形品の複数個所を加圧することができるので、成形品を効果的に押し出すことができる。
【0060】
(3)上記形態の射出成形装置は、前記流路に前記作動流体を圧送する加圧部を備えてもよい。
この形態の射出成形装置によれば、加圧部から流路に作動流体を圧送することによって、成形品を押し出すことができる。
【0061】
(4)上記形態の射出成形装置において、前記加圧部は、前記流路に連通するシリンダー部と前記シリンダー部内に配置されたピストン部とを有し、前記シリンダー部に対する前記ピストン部の相対移動によって前記流路に前記作動流体を圧送してもよい。
この形態の射出成形装置によれば、シリンダー部とピストン部との相対移動によって流路に作動流体を圧送することができる。
【0062】
(5)上記形態の射出成形装置は、前記可動型には、前記流路が形成されており、前記型締部は、前記シリンダー部を前記可動型とともに移動させることによって、前記シリンダー部に対して前記ピストン部を相対移動させてもよい。
この形態の射出成形装置によれば、シリンダー部とピストン部とを相対移動させるための装置を別途設けずに、型締部によってシリンダー部とピストン部とを相対移動させることができる。
【0063】
(6)上記形態の射出成形装置において、前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方は、前記キャビティーを区画する入れ子部と、前記入れ子部を収納する収納部とを有してもよい。
この形態の射出成形装置によれば、成形品の形状を異ならせる場合に、入れ子部以外の部品を流用できる。
【0064】
(7)上記形態の射出成形装置において、前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方は、複数の層が積層された構造を有してもよい。
この形態の射出成形装置によれば、複数の層が積層された固定型や可動型を、三次元造形装置を用いて製造できる。
【0065】
(8)本開示の第2の形態によれば、射出成形用の成形型が提供される。この成形型は、固定型と、前記固定型に対向し、前記固定型に対して移動する可動型と、を備える。前記固定型および前記可動型は、溶融材料を充填されるキャビティーを区画し、前記固定型と前記可動型との少なくともいずれか一方には、前記キャビティーに連通する複数の流路であって、前記キャビティー内の成形品を加圧して押し出す作動流体が流れる前記複数の流路が形成されている。
この形態の成形型によれば、エジェクターピンを用いずに、固定型に設けられた流路を流れる作動流体、または、可動型に設けられた流路を流れる作動流体によって、成形品を加圧して押し出すことができる。そのため、成形品の形状を変更する場合に、固定型や可動型以外の部品を変更する手間や費用がかかることを抑制できる。
【0066】
本開示は、射出成形装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、射出成型用の成形型等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0067】
10…射出成形装置、100…射出部、101…ホッパー、110…可塑化部、120…射出制御機構、130…ノズル、200…型締部、210…固定盤、220…可動盤、230…タイバー、240…ボールねじ部、250…型駆動部、300…成形型、305…ガイドピン、310…固定型、320…可動型、321…入れ子部、322…収納部、325…凹部、330…流路、340…加圧部、341…シリンダー部、342…ピストン部、343…エジェクタープレート、344…リターンピン、345…リターンバネ、400…加圧ポンプ、410…チューブ、500…制御部