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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20241210BHJP
   B65H 35/06 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B65H35/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021009981
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022113947
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 行俊
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026005(JP,A)
【文献】特開2018-171669(JP,A)
【文献】特開2019-177447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0008747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
B65H 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断物を載置可能な載置部材と、
切断刃を装着可能な装着部と、
前記載置部材に載置された前記被切断物と前記装着部とを、第一方向及び前記第一方向と交差する第二方向へ相対移動させる第一移動機構と、
前記第一方向及び前記第二方向に交差する方向であって、前記装着部を前記載置部材に接近させる第三方向及び前記装着部を前記載置部材から離隔させる第四方向に前記装着部を移動させる第二移動機構と、
前記第二移動機構による前記装着部の移動に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を加える圧力付加機構と、
前記第一移動機構と前記第二移動機構とを制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第一移動機構を制御することにより、前記切断刃が前記被切断物に対向し、且つ、前記被切断物に対して前記第四方向に前記切断刃が離隔した対向位置に前記装着部を移動させる第一移動手段と、
前記第二移動機構を制御することにより、前記装着部を前記対向位置から前記第三方向に移動させる第二移動手段と、
前記第二移動手段により前記装着部が前記第三方向に移動する過程において、前記圧力付加機構により前記装着部に付加される前記第三方向の前記圧力に対応する圧力対応値、及び、前記装着部の前記第三方向への移動量を検出する第一検出手段と、
前記第一検出手段により検出した前記圧力対応値及び前記移動量のうち、前記切断刃が前記被切断物に接触した後の前記圧力対応値及び前記移動量に基づき、前記切断刃により前記被切断物を切断するときに前記圧力付加機構により前記装着部に付加される切断圧力に対応する前記圧力対応値である切断圧力対応値を決定する第一決定手段と、
前記被切断物から模様を切断する為の切断データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記切断データに従って、前記第一移動機構及び前記第二移動機構を制御し、前記第一決定手段により決定された前記切断圧力対応値に対応する前記切断圧力を前記圧力付加機構により前記装着部に付加し、前記装着部に装着された前記切断刃により前記被切断物を切断する切断手段と
として機能し、
前記第一検出手段は、
第一圧力に対応する前記圧力対応値である第一圧力対応値、及び、前記第一圧力が加えられた場合の前記装着部の前記移動量である第一移動量、
前記第一圧力よりも大きい第二圧力に対応する前記圧力対応値である第二圧力対応値、及び、前記第二圧力が加えられた場合の前記装着部の前記移動量である第二移動量、及び、
前記第二圧力よりも大きい第三圧力に対応する前記圧力対応値である第三圧力対応値、及び、前記第三圧力が加えられた場合の前記装着部の前記移動量である第三移動量
を検出し、
前記第一決定手段は、
前記第一圧力対応値から前記第二圧力対応値までの前記圧力対応値の変化量、及び、前記第一移動量から前記第二移動量までの変化量に基づき、前記第三圧力が付加された場合の前記装着部の前記移動量の予測値を算出し、前記第三移動量と前記予測値との差分が、所定の差分閾値以上となった場合における前記第三圧力対応値に基づき、前記切断圧力対応値を決定することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記予測値は、前記切断刃が前記被切断物に接触する前に前記第一検出手段により検出された前記圧力対応値及び前記移動量に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項に記載の切断装置。
【請求項3】
前記第一決定手段は、
前記第三移動量の方が前記予測値よりも小さい場合の前記差分が前記差分閾値以上となった場合における前記第三圧力対応値に基づき、前記切断圧力対応値を決定することを特徴とする請求項又はに記載の切断装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第一移動機構を制御することにより、前記切断刃が前記載置部材に対向する位置であって前記切断刃が前記被切断物に対向しない位置に前記装着部を移動させる第三移動手段と、
前記第三移動手段による前記装着部の移動後、前記第二移動機構を制御することにより前記装着部を前記第三方向に移動させる第四移動手段と、
前記切断刃が前記載置部材に接触した場合の前記装着部の前記第三方向の位置を基準位置として検出する第二検出手段と
として機能し、
前記第二移動手段は、
前記第二検出手段によって検出した前記基準位置に基づいて特定される位置まで前記装着部を前記第三方向に移動させる
ことを特徴とする請求項からの何れかに記載の切断装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記被切断物の厚さを検出する厚さ検出手段と、
前記厚さ検出手段によって検出された前記被切断物の厚さに応じて前記差分閾値を決定する第二決定手段と
として機能し、
前記第一決定手段は、
前記第三移動量と前記予測値との前記差分が、前記第二決定手段によって決定された前記差分閾値以上となった場合における前記第三圧力対応値に基づき、前記切断圧力対応値を決定する
ことを特徴とする請求項からの何れかに記載の切断装置。
【請求項6】
前記第二決定手段は、
前記被切断物の厚さが大きい程、大きな値となる前記差分閾値を決定することを特徴とする請求項に記載の切断装置。
【請求項7】
前記第一決定手段は、
前記第三移動量と前記予測値との前記差分が前記差分閾値以上となることなく、前記第二検出手段により検出した前記基準位置まで前記装着部が移動した場合、前記第二検出手段により検出した前記基準位置に基づき検出した前記被切断物の厚さに基づいて、前記切断圧力対応値を決定する
ことを特徴とする請求項に記載の切断装置。
【請求項8】
前記第一決定手段は、
前記第三圧力対応値が、所定の圧力範囲内であるか判断し、
前記第三圧力対応値が前記圧力範囲内である場合、前記第三圧力対応値を前記切断圧力対応値として決定し、
前記第三圧力対応値が前記圧力範囲外である場合、前記第三圧力対応値の代わりに前記圧力範囲内の何れかの圧力に対応する前記圧力対応値を前記切断圧力対応値として決定する
ことを特徴とする請求項からの何れかに記載の切断装置。
【請求項9】
前記第一決定手段は、
前記第三圧力対応値が前記圧力範囲の下限よりも小さい場合には、前記第三圧力対応値の代わりに前記圧力範囲の下限に対応する前記圧力対応値を前記切断圧力対応値として決定し、
前記第三圧力対応値が前記圧力範囲の上限よりも大きい場合には、前記第三圧力対応値の代わりに前記圧力範囲の上限に対応する前記圧力対応値を前記切断圧力対応値として決する
ことを特徴とする請求項に記載の切断装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記被切断物の厚さを検出する厚さ検出手段として機能し、
前記第一決定手段は、
前記厚さ検出手段によって検出された前記被切断物の厚さに応じて前記圧力範囲を設定し、
前記第三圧力対応値が、設定された前記圧力範囲内であるか判断する
ことを特徴とする請求項又はに記載の切断装置。
【請求項11】
被切断物を載置可能な載置部材と、
切断刃を装着可能な装着部と、
前記載置部材に載置された前記被切断物と前記装着部とを、第一方向及び前記第一方向と交差する第二方向へ相対移動させる第一移動機構と、
前記第一方向及び前記第二方向に交差する方向であって、前記装着部を前記載置部材に接近させる第三方向及び前記装着部を前記載置部材から離隔させる第四方向に前記装着部を移動させる第二移動機構と、
前記第二移動機構による前記装着部の移動に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を加える圧力付加機構と、
前記第一移動機構と前記第二移動機構とを制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第一移動機構を制御することにより、前記切断刃が前記被切断物に対向し、且つ、前記被切断物に対して前記第四方向に前記切断刃が離隔した対向位置に前記装着部を移動させる第一移動手段と、
前記第二移動機構を制御することにより、前記装着部を前記対向位置から前記第三方向に移動させる第二移動手段と、
前記第二移動手段により前記装着部が前記第三方向に移動する過程において、前記圧力付加機構により前記装着部に付加される前記第三方向の前記圧力に対応する圧力対応値、及び、前記装着部の前記第三方向への移動量を検出する第一検出手段と、
前記第一検出手段により検出した前記圧力対応値及び前記移動量のうち、前記切断刃が前記被切断物に接触した後の前記圧力対応値及び前記移動量に基づき、前記切断刃により前記被切断物を切断するときに前記圧力付加機構により前記装着部に付加される切断圧力に対応する前記圧力対応値である切断圧力対応値を決定する第一決定手段と、
前記被切断物から模様を切断する為の切断データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記切断データに従って、前記第一移動機構及び前記第二移動機構を制御し、前記第一決定手段により決定された前記切断圧力対応値に対応する前記切断圧力を前記圧力付加機構により前記装着部に付加し、前記装着部に装着された前記切断刃により前記被切断物を切断する切断手段と
として機能し、
前記第二移動機構は、パルスの入力により回転するモータを備え、前記モータの回転により前記装着部を前記第三方向又は前記第四方向に移動させ、
前記第二移動手段は、
前記モータにパルスが入力された場合に前記装着部を前記第三方向に移動させ、
前記第一決定手段は、
前記切断刃が前記被切断物に接触した後で前記モータに所定数のパルスが入力された場合の前記装着部の前記移動量の変位量である第一変位量減少した場合において検出される前記圧力対応値に基づき、前記切断圧力対応値を決定することを特徴とする切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物を切断可能な切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切断データに従って、シート状の被切断物と切断刃とを相対的に移動させることにより、被切断物から模様を切断する切断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の切断装置は、被切断物の堅さ及び厚み等を示す種別に応じて各種設定条件を個別に記憶する記憶機器を設け、被切断物の種別に応じた設定条件を上記記憶機器から読み出し、読み出された設定条件に基づいて被切断物を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-246562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の切断装置では、記憶機器に記憶する種別に基づき設定された設定条件が、実際の被切断物に対応していない場合がある。この場合切断装置は、被切断物を適切に切断できない。
【0005】
本発明の目的は、被切断物に適した条件で被切断物を切断可能な切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切断装置は、被切断物を載置可能な載置部材と、切断刃を装着可能な装着部と、前記載置部材に載置された前記被切断物と前記装着部とを、第一方向及び前記第一方向と交差する第二方向へ相対移動させる第一移動機構と、前記第一方向及び前記第二方向に交差する方向であって、前記装着部を前記載置部材に接近させる第三方向及び前記装着部を前記載置部材から離隔させる第四方向に前記装着部を移動させる第二移動機構と、前記第二移動機構による前記装着部の移動に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を加える圧力付加機構と、前記第一移動機構と前記第二移動機構とを制御可能な制御部とを備え、前記制御部は、前記第一移動機構を制御することにより、前記切断刃が前記被切断物に対向し、且つ、前記被切断物に対して前記第四方向に前記切断刃が離隔した対向位置に前記装着部を移動させる第一移動手段と、前記第二移動機構を制御することにより、前記装着部を前記対向位置から前記第三方向に移動させる第二移動手段と、前記第二移動手段により前記装着部が前記第三方向に移動する過程において、前記圧力付加機構により前記装着部に付加される前記第三方向の前記圧力に対応する圧力対応値、及び、前記装着部の前記第三方向への移動量を検出する第一検出手段と、前記第一検出手段により検出した前記圧力対応値及び前記移動量のうち、前記切断刃が前記被切断物に接触した後の前記圧力対応値及び前記移動量に基づき、前記切断刃により前記被切断物を切断するときに前記圧力付加機構により前記装着部に付加される切断圧力に対応する前記圧力対応値である切断圧力対応値を決定する第一決定手段と、前記被切断物から模様を切断する為の切断データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記切断データに従って、前記第一移動機構及び前記第二移動機構を制御し、前記第一決定手段により決定された前記切断圧力対応値に対応する前記切断圧力を前記圧力付加機構により前記装着部に付加し、前記装着部に装着された前記切断刃により前記被切断物を切断する切断手段として機能することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、切断装置は、切断刃が被切断物に接触した後で装着部に付加される圧力と装着部の移動量とに基づき、切断圧力を決定する。従って切断装置は、被切断物に適した切断圧力を装着部に付加することができるので、装着部に装着された切断刃により被切断物を適切に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】切断装置1の斜視図である。
図2】装着部32及び第二移動機構33の平面図である。
図3図2のA-A線で切断した装着部32及び第二移動機構33の斜視図である。
図4】カートリッジ4の筐体先端部41の構成を示す図である。
図5】切断装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図6】被切断物20を下方に移動させた場合における圧力対応値と移動量及び差分との関係を示すグラブである。
図7】カートリッジ4の筐体先端部41と、プラテン3及び被切断物20との位置関係を説明する説明図である。
図8】メイン処理のフローチャートである。
図9】メイン処理のフローチャートであって、図8の続きである。
図10】メイン処理のフローチャートであって、図9の続きである。
図11】初期化処理のフローチャートである。
図12】カートリッジ4の筐体先端部41とプラテン3との位置関係を説明する説明図である。
図13】初期化処理の実行中における圧力対応値と移動量との関係を示すグラブである。
図14】変形例におけるメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る切断装置1を具体化した実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図1の左下方、右上方、右下方、左上方、上方、下方を、各々、切断装置1の前方、後方、右方、左方、上方、下方とする。
【0010】
<切断装置1の概要>
図1図3を参照し、切断装置1の概要を説明する。切断装置1は、切断刃Csを有するカートリッジ4が装着された状態で使用され、切断刃Csを用いて被切断物20を切断することが可能である。本実施形態では、被切断物20として、シート素材20A及び剥離紙20B(図7参照)が積層された粘着シートが用いられる。シート素材20Aの片面には粘着剤が塗布されている。剥離紙20Bは、粘着剤によってシート素材20Aの片面に吸着し、シート素材20Aの片面全域を覆う。剥離紙20Bはシート素材20Aよりも硬い。例えばユーザは、切断装置1により切断された被切断物20のシート素材20Aを剥離紙20Bから剥がし、粘着剤によってシート素材20Aを被着体に貼り付けて使用する。このため切断装置1では、被切断物20の切断時、剥離紙20Bを切断せずにシート素材20Aのみ切断する(ハーフカットする)ことが所望される。
【0011】
図1に示すように、切断装置1は、本体カバー9、プラテン3、ヘッド5、シート供給部7、ロール保持部300、搬送機構8A、第一移動機構8B、第二移動機構33(図2参照)、制御部71(図5参照)等を備える。本体カバー9には、開口部91、カバー92、及び操作部50が設けられる。開口部91は、本体カバー9の正面部に設けられた開口である。カバー92は、本体カバー9に回動可能に支持される。図1では、カバー92が開けられ、開口部91が開放されている。以下では、カバー92が開けられた状態を前提として各種構成を説明する。
【0012】
操作部50は、液晶ディスプレイ(LCD)51、複数の操作スイッチ52、及びタッチパネル53を備える。LCD51には、コマンド、イラスト、設定値、及びメッセージ等の様々な項目を含む画像が表示される。タッチパネル53は、LCD51の表面に設けられる。ユーザは、指及びスタイラスペンの何れかを用いてタッチパネル53の押圧操作を行う(以下、この操作を「パネル操作」という)。切断装置1では、タッチパネル53により検知される押圧位置に対応して、どの項目が選択されたかが認識される。ユーザは、操作スイッチ52及びタッチパネル53を用いて、LCD51に表示された模様の選択、各種パラメータの設定、及び入力の操作等を行うことができる。
【0013】
シート供給部7は、本体部101、切断部102、固定部103を備える。本体部101は矩形板状を有し、カバー92の上側に配置される。本体部101の左端部にガイド101Aが設けられる。ガイド101Aは、本体部101の上面から上方に突出する。後述する被切断物20は、ガイド101Aに右側から当接することにより、左右方向の位置決めがされる。切断部102は、本体部101の上部に着脱可能に設けられる。切断部102は、カッタプレート104及びカッタ105を有する。カッタプレート104は、左右方向に沿って直線状に延びる。カッタ105は、カッタプレート104に沿ってスライド移動可能である。固定部103は、本体部101をカバー92の上側に固定する。
【0014】
ロール保持部300は、本体部301及び一対のシート保持板302を有する。本体部301は矩形板状有し、カバー92の前端部に固定される。一対のシート保持板302は、本体部301の上面且つ左右両端部に設けられる。一対のシート保持板302は、被切断物20が巻回されたロール10の左右方向両端部を回転可能に保持する。ロール10から繰り出された被切断物20は、後方のシート供給部7に向けて延び、切断部102のカッタプレート104の下方を通過する。例えばユーザは、カッタプレート104に沿ってカッタ105を右端から左方向に移動させることにより、被切断物20を幅方向に切断できる。
【0015】
搬送機構8Aは、従動ローラ204、及び駆動ローラ(非図示)を備える。従動ローラ204は左右方向に延び、本体カバー9内にて回転可能に支持される。駆動ローラは、従動ローラ204に対して下方に対向し、Y軸モータ15(図5参照)の駆動に応じて回転する。搬送機構8Aは、ロール保持部300からシート供給部7を介して後方に延びる被切断物20を、従動ローラ204と駆動ローラとの間に挟持する。搬送機構8Aは、この状態で駆動ローラが回転することにより、被切断物20を前後方向(「Y方向」「副走査方向」ともいう。)に搬送可能である。
【0016】
プラテン3は、本体カバー9内、且つ、駆動ローラよりも後方に設けられる。プラテン3は左右方向に延びる板状部材である。プラテン3の左右方向の長さは、被切断物20の幅よりも大きい。搬送機構8Aにより後方に搬送された被切断物20は、プラテン3のうち左右方向両端部を除く部分の上面に載置される。被切断物20の剥離紙20B(図7参照)は、シート素材20Aに対して下側に配置され、プラテン3の上面に上側から接触する(図7参照)。プラテン3の左右方向両端部は、被切断物20が載置された状態でも露出する。
【0017】
ヘッド5は、キャリッジ19、装着部32、検出器61(図3参照)、及び第二移動機構33(図2参照)を備える。装着部32は、カートリッジ4を装着可能である。カートリッジ4は、下方に切断刃Csが配置された状態で装着部32に固定される。キャリッジ19は、装着部32の後端部に設けられる。
【0018】
ヘッド5は、第一移動機構8Bにより左右方向(「X方向」「主走査方向」ともいう。)に移動可能である。第一移動機構8Bは、ガイドレール21、X軸モータ25(図5参照)等を備える。ガイドレール21は、本体カバー9内に固定され、左右方向に延びる。キャリッジ19は、ガイドレール21に沿ってX方向へ移動可能に、ガイドレール21に支持される。X軸モータ25の回転運動は、X方向の運動に変換され、キャリッジ19に伝達される。X軸モータ25が正転駆動又は逆転駆動すると、キャリッジ19は左方向又は右方向へ移動される。即ち、第一移動機構8Bは、プラテン3に載置された被切断物20に対し、ヘッド5の装着部32に装着されたカートリッジ4を左右方向(「主走査方向」ともいう。)に相対移動させる。
【0019】
図2に示すように、第二移動機構33は、装着部32をプラテン3に接近させる方向(下方向)及び装着部32をプラテン3から離隔させる方向(上方向)に移動させる。これにより第二移動機構33は、装着部32に装着されたカートリッジ4を上下方向に移動させる。第二移動機構33は、Z軸モータ34(図5参照)及び伝達部材を備える。第二移動機構33は、Z軸モータ34の回動運動を、Z軸モータ34の出力軸に連結した伝達部材により減速し且つ上下運動に変換して装着部32に伝達し、装着部32及びカートリッジ4を上下方向(「Z方向」ともいう。)に駆動させる。
【0020】
図2及び図3に示すように、第二移動機構33は、伝達部材として、ギヤ35、36、軸37、板部48、ピニオン38、及びラック39を有する。ギヤ35は、Z軸モータ34の出力軸40の前端に固定されている。ギヤ35は、ギヤ36と噛み合う。ギヤ35の径は、ギヤ36の径よりも小さい。ギヤ36は前後方向に延びる筒状の軸部46を有する。ギヤ36の軸部46は軸37に挿通される。Z軸モータ34の出力軸40と、軸37とは前後方向に延びる。板部48は、ギヤ36の径よりもやや小さい円盤状である。板部48の前端部はピニオン38の後端部と連結する。板部48はピニオン38と一体の部材である。板部48はギヤ36とは別体の部材である。板部48及びピニオン38は、ギヤ36の回動とは独立して、回動可能である。ピニオン38及び板部48はギヤ36の前方において軸37に挿通される。ピニオン38及び板部48は軸37に対して相対的に回動可能である。ピニオン38の径は、ギヤ35、36の径よりも小さい。ラック39は上下方向に延び、右面にピニオン38と噛み合うギヤ歯を備える。ラック39は、装着部32の背面に固定されている。
【0021】
第二移動機構33は更に、圧力付加機構31を備える。圧力付加機構31は、ギヤ36の軸部46に挿入されたネジリバネである。圧力付加機構31は、装着部32に下方の圧力を付加可能である。圧力付加機構31は、一端が軸部46に固定され、他端が板部48に固定される。圧力付加機構31は、ギヤ36の回動を板部48に伝達する。圧力付加機構31は、ギヤ36の回動に応じてネジリバネが圧縮した場合の弾性力により、装着部32に対して下方の圧力を加える。ネジリバネの圧縮量が変化することに応じ、装着部32に加わる下方の圧力は変化する。
【0022】
検出器61は、装着部32の上下方向の位置を出力可能な位置センサである。検出器61は、装着部32の左後方に配置される。検出器61は、装着部32の上下方向の位置を特定し、特定された位置を示す信号を出力可能である。
【0023】
<カートリッジ4の概要>
図4を参照し、カートリッジ4の概要について説明する。図4の上方、下方、左方、右方を、各々、カートリッジ4の上方、下方、左方、右方とする。カートリッジ4は、円筒状の筐体60(図1参照)を有する。筐体60の先端部(以下、筐体先端部41という。)には、ホルダ42、バネ43、切断刃Cs、及びベアリング44が設けられる。
【0024】
ホルダ42は円筒状であり、上下方向に延びる。ホルダ42は、筐体先端部41に対して上下方向に移動可能に保持される。ホルダ42の上端部にバネ43が設けられる。バネ43は、ホルダ42を下方に付勢する。ホルダ42の下端部は、筐体先端部41から下方に突出する。切断刃Csは、基礎部C1、及び、基礎部C1の下端に接続された刃先部C2を有する。基礎部C1は円柱状を有し、ベアリング44を介して筐体先端部41に固定される。ベアリング44は、上下方向に延びる回転軸Rを中心として切断刃Csを回転可能に支持する。切断刃Csは、外力が作用することに応じ、回転軸Rを中心として回転する。刃先部C2は板状を有し、先端部は水平方向に対して傾斜する。刃先部C2の少なくとも一部は、ホルダ42内に内包される。
【0025】
カートリッジ4による被切断物20の切断時、被切断物20にカートリッジ4が下向きに押し付けられることで、ホルダ42は、バネ43の付勢力に抗して上方に移動する。切断刃Csの刃先部C2の先端部(「切断刃Csの刃先」という。)はホルダ42から露出する(図7参照、後述)。これにより、カートリッジ4は、露出した切断刃Csの刃先によって被切断物20を切断可能となる。
【0026】
<切断装置1の電気的構成>
図5を参照して、切断装置1の電気的構成を説明する。切断装置1は、制御部71、ROM72、RAM73、及び入出力(I/O)インタフェイス75を備える。制御部71は、ROM72、RAM73、及びI/Oインタフェイス75と電気的に接続される。制御部71は、ROM72及びRAM73と共に、切断装置1の主制御を司るCPUである。ROM72は、切断装置1を動作させるための各種プログラム等を記憶する。RAM73は、制御部71が演算処理した演算結果等を一時的に記憶する。
【0027】
I/Oインタフェイス75には、更に、フラッシュメモリ74、LCD51、操作スイッチ52、タッチパネル53、検出器61、駆動回路77~79が接続されている。フラッシュメモリ74は、各種パラメータ、切断データ等を記憶する不揮発性記憶素子である。切断データは、切断刃Cs(図1参照)により被切断物20を切断して所望の模様を切り取るための搬送機構8A、第一移動機構8B、及び第二移動機構33の制御条件を示す。切断データには、搬送機構8A、第一移動機構8B、及び第二移動機構33を制御するための開始座標及び終了座標が、模様に含まれる線分毎に含まれる。座標系の原点は、切断可能な領域の左後方の点である。左右方向がX方向に設定され、前後方向がY方向に設定される。切断データは、切断の対象となる模様毎にフラッシュメモリ74に記憶される。
【0028】
LCD51は、各種指示を報知可能である。検出器61は、装着部32の上下方向の位置を示す信号を出力する。Y軸モータ15、X軸モータ25、及びZ軸モータ34は各々、パルスモータである。駆動回路77~79は各々、Y軸モータ15、X軸モータ25、及びZ軸モータ34にパルスを出力する。制御部71は、駆動回路77~79を介してY軸モータ15、X軸モータ25、及びZ軸モータ34等を駆動し、搬送機構8A、第一移動機構8B、及び第二移動機構33を制御する。これにより制御部71は、装着部32と、プラテン3に載置された被切断物20とを相対移動させる。
【0029】
<装着部32に付加される圧力(圧力対応値)と移動量との関係>
切断装置1が切断刃Csを用いて被切断物20を切断する過程で圧力付加機構31により装着部32に付加される圧力と、装着部32の移動量との関係を説明する。なお、以下説明では、プラテン3に被切断物20が載置され且つ装着部32にカートリッジ4が装着されていることを前提とする。以下、第二移動機構33により最も上方に移動した装着部32の上下方向の位置を、上限位置という。
【0030】
制御部71は、第二移動機構33のZ軸モータ34を回転させることによって、装着部32を上限位置から下方に移動させる。ここで、駆動回路79から出力されてZ軸モータ34に入力されるパルス数と、圧力付加機構31(図2参照)により装着部32に作用する下向きの圧力とには相関がある。本実施形態において、圧力付加機構31から装着部32に加わる圧力に対応する圧力対応値として、Z軸モータ34に入力されるパルスの累計数が用いられる。つまり、装着部32が上限位置に配置された状態からZ軸モータ34に入力されたパルスの累計数が、圧力対応値として用いられる。
【0031】
図2図3に示すように、Z軸モータ34にパルスが入力されることに応じ、出力軸40及びギヤ35、36は回動し、圧力付加機構31はギヤ36の回動を板部48に伝達する。制御部71は、装着部32を下方に移動する際にZ軸モータ34に入力されるパルス数をカウントして圧力対応値を検出する。同時に制御部71は、検出器61から出力される信号に基づいて装着部32の上下方向の位置を特定し、上限位置からの移動量を検出する。制御部71は、圧力対応値及び移動量の検出を周期的に繰り返し、検出された圧力対応値及び移動量を対応付けてRAM73に記憶する。以下、この処理を「検出処理」という。
【0032】
図6は、検出処理が周期的に繰り返し実行されることによって検出された圧力対応値(横軸)と移動量(縦軸)との関係を示す。切断刃Csが被切断物20に対して上方に対向した状態で、装着部32を下方に移動させた場合を前提とする。移動量の単位を、便宜上、unitという。i(iは、1以上の整数)回目に実行される検出処理を、「第i検出処理」という。第i検出処理により検出された圧力対応値を、「v(i)」と表記する。第i検出処理により検出された移動量を「m(i)」と表記する。圧力対応値v(i)により第二移動機構33が制御されて圧力付加機構31により装着部32に付加される圧力を、「p(i)」と表記する。
【0033】
図7(a)に示すように、カートリッジ4のホルダ42が被切断物20に接触していない状態では、カートリッジ4を装着した装着部32(図2図3参照)に対して上向きの圧力は加わらない。このため、Z軸モータ34の出力軸40(図2図3参照)が回動した場合、圧力付加機構31(図2参照)はギヤ36(図2図3参照)の回転を板部48及びピニオン38(図2図3参照)に伝達する。板部48及びピニオン38は、ギヤ36の回動と同じだけ回動する。結果、装着部32は下方に移動する。
【0034】
図6(a)に示すように、装着部32が下方に移動する過程でホルダ42が被切断物20に接触するまでの間(図7(a)参照)、領域T11におけるプロットで示されるように、移動量は、圧力対応値が増加する程大きくなる。装着部32が下方に移動する過程でカートリッジ4のホルダ42が被切断物20のシート素材20Aに接触した場合(図7(b)参照)、装着部32に上向きの圧力が作用する。Z軸モータ34にパルスが継続して入力されることにより、出力軸40が更に回動する。ギヤ36は板部48及びピニオン38に対して相対的に回動し、圧力付加機構31のねじれが大きくなる。ギヤ36の回動が板部48に伝達されることに応じ、圧力付加機構31により装着部32に作用する下向きの圧力は次第に大きくなる。しかし、装着部32に作用する下向きの圧力が、装着部32に加わる上向きの圧力を上回るまで、板部48及びピニオン38は回動しない。この場合、装着部32は下方に移動しない。このため、領域T12におけるプロットで示されるように、圧力対応値が増加しても、移動量は一定レベル(約600unit)で推移する。
【0035】
Z軸モータ34にパルスが継続して入力され、出力軸40が更に回動すると、ギヤ36は板部48及びピニオン38に対して相対的に回動し、圧力付加機構31のねじれは更に大きくなる。圧力付加機構31から板部48及びピニオン38を介して装着部32に作用する下向きの圧力は更に大きくなる。そして、圧力付加機構31から装着部32に作用する下向きの圧力が、装着部32に加わる上向きの圧力を上回った場合、ピニオン38は回動し、装着部32は下方への移動を再開する(図7(b)~図7(c)参照)。なお、ホルダ42がシート素材20Aに接触しているためホルダ42の下方への移動は抑制されるので、切断刃Csはホルダ42に対して下方に相対移動し、バネ43は収縮する。圧力付加機構31から装着部32に作用する下向きの圧力は、バネ43の弾性力に応じた上向きの圧力に抗して装着部32を下方に移動させる。従って、領域T13におけるプロットで示されるように、移動量は、圧力対応値が増加する程大きくなる。
【0036】
装着部32が下方に更に移動する過程でカートリッジ4の切断刃Csが被切断物20のシート素材20Aに接触した場合(図7(c)参照)、切断刃Cs(装着部32)に上向きの圧力が作用する。Z軸モータ34にパルスが継続して入力されることにより、出力軸40が更に回動する。ギヤ36は板部48及びピニオン38に対して相対的に回動し、圧力付加機構31のねじれが大きくなる。この状態で装着部32は下方に継続して移動し、切断刃Csの刃先はシート素材20Aに進入する(図7(d)参照)。装着部32は上向きの圧力を受けながら下方に移動するため、装着部32の下方への移動速度は、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前(図7(b)参照)よりも遅くなる。このため、領域T14におけるプロットで示されるように、移動量の増加率(傾き)は、領域T13における移動量の増加率(傾き)よりも緩やかとなる。
【0037】
カートリッジ4の切断刃Csの刃先がシート素材20Aを通り抜け、剥離紙20Bに接触する(図7(e)参照)。ここで、剥離紙20Bはシート素材20Aよりも硬い。このため、切断刃Csの刃先がシート素材20Aに接触した場合(図7(c)参照)と同様、装着部32は下方に移動し難くなり、装着部32に作用する上向きの圧力は増加する。従って、切断刃Csが剥離紙20Bを通過する過程(図7(f)参照)において、領域T15におけるプロットで示されるように、移動量の増加率(傾き)は、領域T14における移動量の増加率(傾き)よりも更に緩やかとなる。
【0038】
<メイン処理>
図8図11を参照し、切断装置1の制御部71によって実行されるメイン処理について説明する。メイン処理では、はじめに、被切断物20のうち剥離紙20Bを切断せずにシート素材20Aのみを切断する(ハーフカットする)為に装着部32に付加する圧力(「切断圧力」という。)が決定される。言い換えれば、圧力付加機構31により装着部32に切断圧力を加えるための圧力対応値(以下、「切断圧力対応値」という。)が決定される(S11~S25(図8参照)、S41~S61(図9参照)、S81~S91(図10参照)、S101~S113(図11参照))。その後、決定された切断圧力対応値に基づいて第二移動機構33が制御され、被切断物20のシート素材20Aが切断刃Csにより切断される(S63、S65(図9参照))。
【0039】
メイン処理は、模様を指定して切断動作を開始するための指示がパネル操作により入力された場合、ROM72に記憶されたプログラムを制御部71が読み出して実行することによって開始される。なお図1に示すように、上記パネル操作の前にロール保持部300にロール10がセットされ、ロール10から被切断物20が繰り出される。繰り出された被切断物20は、シート供給部7のカッタプレート104の下方を通され、先端部がプラテン3に載置される。又、装着部32にカートリッジ4が装着される。装着部32は上限位置に配置される。
【0040】
メイン処理が開始された場合、はじめに制御部71は、切断刃Csがプラテン3に接触する時の装着部32の上下方向の位置(「基準位置」という。)を検出する為、初期化処理(図11参照)を実行する(S11)。
【0041】
図11を参照し、初期化処理について説明する。制御部71は第一移動機構8Bを制御し、左右方向の移動可能範囲のうち最右端まで装着部32を移動させる(S101)。これにより装着部32は、プラテン3の右端部であって被切断物20が載置されずに露出した部分の上方に配置される。このとき、切断刃Csは上下方向において被切断物20に対向せず、プラテン3に対向する。次に制御部71は、第二移動機構33を制御し、装着部32の上限位置から下方への移動を開始する(S103)。同時に、制御部71は検出処理を開始する。これにより、圧力対応値及び移動量の検出が周期的に繰り返され、検出された圧力対応値及び移動量がRAM73に記憶される。
【0042】
図12(a)~図12(b)に示すように、装着部32の上限位置から下方への移動が開始されてから、カートリッジ4のホルダ42がプラテン3に接触するまでの間、装着部32に対して上向きの圧力は加わらない。このため、図13の領域T21におけるプロットで示されるように、移動量は、圧力対応値の増加に伴って大きくなる。図12(b)に示すように、ホルダ42がプラテン3に接触した場合、装着部32に上向きの圧力が作用し、装着部32の下方への移動は停止する。このため、図13の領域T22におけるプロットで示されるように、圧力対応値が増加しても移動量は一定レベル(約685unit)で推移する。制御部71は、領域T22で示される圧力対応値と移動量との関係を検出した場合、図11に示すように、ホルダ42がプラテン3に接触したと判定する(S105)。制御部71は、ホルダ42がプラテン3に接触した時点で検出処理により検出された圧力対応値を、第一圧力対応値(図13参照)として特定し、RAM73に記憶する(S105)。
【0043】
Z軸モータ34にパルスが継続して入力されることにより、圧力付加機構31から装着部32に作用する下向きの圧力が、装着部32に加わる上向きの圧力を上回った場合、図12(b)~図12(c)に示すように、装着部32は下方への移動を再開する。この場合、図13の領域T23におけるプロットで示されるように、移動量は、圧力対応値の増加に伴って大きくなる。
【0044】
図12(c)に示すように、装着部32が下方に更に移動して切断刃Csがプラテン3に接触した場合、装着部32の下方への移動は停止する。このため、図13の領域T24におけるプロットで示されるように、圧力対応値が増加しても移動量は一定レベル(約845unit)で推移する。制御部71は、領域T24で示される圧力対応値と移動量との関係を検出した場合、図11に示すように、切断刃Csがプラテン3に接触したと判定する(S107)。制御部71は、切断刃Csがプラテン3に接触した時点で検出処理により検出された圧力対応値を、第二圧力対応値(図13参照)として特定し、RAM73に記憶する(S107)。
【0045】
制御部71は、切断刃Csがプラテン3に接触した時点で検出処理により検出された移動量分上限位置から下方に離隔した位置を、切断刃Csがプラテン3に接触した時点における装着部32の上下方向の位置(「基準位置」という。)として検出する(S109)。制御部71は、検出した基準位置をRAM73に記憶する。
【0046】
制御部71は、S105の処理によって特定された第一圧力対応値(図13参照)、即ち、ホルダ42がプラテン3に接触した時点で検出処理により検出された圧力対応値を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、S107の処理によって特定された第二圧力対応値(図13参照)、即ち、切断刃Csがプラテン3に接触した時点で検出処理により検出された圧力対応値を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、ホルダ42がシート素材20Aに接触してから(図7(b)参照)、切断刃Csがシート素材20Aに接触する(図7(c)参照)までの圧力対応値の変化量の推定値として、第二圧力対応値から第一圧力対応値を減算した値(「推定対応値」という。図13参照)を算出する。制御部71は、算出した推定対応値をRAM73に記憶する(S111)。
【0047】
制御部71は、領域T24で示される圧力対応値と移動量との関係を検出した場合、第二移動機構33を制御し、S101の処理によって開始した装着部32の下方への移動を停止させる。同時に、制御部71は検出処理を停止させる。制御部71は、第二移動機構33を制御し、装着部32を上限位置に向けて上方に移動させる(S113)。制御部71は、装着部32が上限位置まで移動した後、第二移動機構33を制御して装着部32の移動を停止させる。制御部71は初期化処理を終了し、処理をメイン処理(図8参照)に戻す。
【0048】
図8に示すように、初期化処理(S11参照)の終了後、制御部71は第一移動機構8Bを制御し、装着部32を左方に移動させる。制御部71は、プラテン3に載置された被切断物20に対して切断刃Csが上下方向に対向する位置まで装着部32が移動した後、第一移動機構8Bを制御して装着部32の移動を停止させる(S13)。なお、装着部32は上下方向において上限位置に配置された状態が維持される。装着部32に装着された切断刃Csは、被切断物20に対して上方に離隔する。以下、S13による処理後の装着部32の位置を、「対向位置」という。
【0049】
制御部71は、第二移動機構33を制御し、装着部32の対向位置から下方への移動を開始する(S15)。同時に、制御部71は検出処理を開始する。これにより、圧力対応値及び移動量の検出が周期的に繰り返され、検出された圧力対応値及び移動量がRAM73に記憶される(S17)。
【0050】
制御部71は、カートリッジ4のホルダ42が被切断物20のシート素材20Aに接触したか否かを判定する。なお、装着部32が対向位置から下方に移動開始してから、カートリッジ4のホルダ42がシート素材20Aに接触するまでの間(図7(a)参照)、圧力対応値に対する移動量の増加率(傾き)は一定値で推移する(領域T11、図6参照)。一方、ホルダ42がシート素材20Aに接触した後(図7(b)参照)、圧力対応値が増加しても移動量は一定レベルで推移する(領域T12、図6参照)。このため制御部71は、領域T11、T12で示される圧力対応値と移動量との関係、すなわち圧力対応値が増加しても移動量の増加が極小となったもしくは無くなったことを検出した場合、ホルダ42がシート素材20Aに接触したと判定する(S19)。
【0051】
制御部71は、S111(図11参照)の処理によって算出した推定対応値(図13参照)を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、ホルダ42がシート素材20Aに接触した時点からの圧力対応値の変化量が推定対応値と一致したか否かを、検出処理によって圧力対応値及び移動量が検出される毎に判定する。制御部71は、ホルダ42がシート素材20Aに接触した時点からの圧力対応値の変化量が推定対応値と一致した場合、切断刃Csがシート素材20Aに接触したと判定する(S21)。
【0052】
制御部71は、切断刃Csがシート素材20Aに接触したと判定した時点で検出処理により検出された移動量を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、取得した移動量分上限位置から下方に離隔した位置を、切断刃Csがシート素材20Aに接触した時点における装着部32の上下方向の位置(「参照位置」という。図7(c)参照)として特定する。更に制御部71は、S109(図11参照)の処理によって検出した基準位置、即ち、切断刃Csがプラテン3に接触した時点における装着部32の上下方向の位置(図12(c)参照)を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、基準位置と参照位置との差分を、被切断物20の厚さとして検出する(S23)。
【0053】
制御部71は、S23の処理によって検出した被切断物20の厚さに応じて、差分閾値を決定する(S25)。差分閾値は、切断刃Csが剥離紙20Bに接触したことを検出するために使用される閾値(S45、図9参照)であり、詳細は後述する。なお、差分閾値は、検出された被切断物20の厚さが大きい程、大きな値となるように決定される。
【0054】
被切断物20の厚さに応じて差分閾値を決定する方法は特に限定されないが、例えば以下の方法により決定される。例えば制御部71は、被切断物20の厚さの複数の範囲と、各範囲に応じた差分閾値とを対応付けた対応表をフラッシュメモリ74に予め記憶してもよい。制御部71は、S23の処理によって検出した被切断物20の厚さが含まれる範囲に対応付けられた差分閾値を、対応表に基づいて決定してもよい。又、例えば制御部71は、被切断物20の厚さを代入することで差分閾値を算出できる算出式を、フラッシュメモリ74に予め記憶してもよい。制御部71は、S23の処理によって検出した被切断物20の厚さを算出式に代入することで、差分閾値を決定してもよい。制御部71は、決定した差分閾値をRAM73に記憶する。
【0055】
図9に示すように、制御部71は、以下に示す予測処理を実行し、予測移動量を算出する(S41)。ここで、S21(図8参照)の処理において、第k検出処理により検出された移動量m(k)に基づき、切断刃Csがシート素材20Aに接触したと判定されたとする。この場合、図6(b)に示すように、第k検出処理により検出された圧力対応値v(k)及び移動量m(k)は、各々、切断刃Csがシート素材20Aに接触した時点又は接触した後で検出された圧力対応値及び移動量であることになる。一方、第k検出処理よりも2回前に実行された第k-2検出処理により検出された圧力対応値v(k-2)及び移動量m(k-2)と、第k検出処理よりも1回分前に実行された第k-1検出処理で検出された圧力対応値v(k-1)及び移動量m(k-1)とは、各々、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前に検出された圧力対応値及び移動量であることになる。なお、領域T13、T14において装着部32が下方に移動する過程において、圧力付加機構31により装着部32に付加される圧力は次第に大きくなる。このため、圧力対応値v(k-2)に対応する圧力p(k-2)よりも、圧力対応値v(k-1)に対応する圧力p(k-1)の方が大きくなる。又、圧力p(k-1)よりも、圧力対応値v(k)に対応する圧力p(k)の方が大きくなる。
【0056】
制御部71は、圧力対応値v(k-2)から圧力対応値v(k-1)までの圧力対応値の変化量と、移動量m(k-2)から移動量m(k-1)までの移動量の変化量とに基づき、圧力対応値v(k)に対応する圧力p(k)が圧力付加機構31により付加された場合における装着部32の移動量の予測値(「予測移動量」という。)を算出する(S41)。予測移動量を算出する処理を、「予測処理」という。以後、制御部71は、k+1回目以降に検出処理が実行される度に予測処理を実行する(S41)。第i検出処理により圧力対応値v(i)及び移動量m(i)が検出されることに応じて実行される予測処理を、「第i予測処理」という。第i予測処理によって算出される予測移動量を、「e(i)」と表記する。
【0057】
予測処理における予測移動量の算出方法を、具体例を挙げて説明する。例えば、第k検出処理により圧力対応値v(k)及び移動量m(k)が検出された場合、制御部71は、第k-2検出処理により検出された圧力対応値v(k-2)及び移動量m(k-2)と、第k-1検出処理により検出された圧力対応値v(k-1)及び移動量m(k-1)とを、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、図6(b)における2つの座標点((v(k-2),m(k-2))及び(v(k-1),m(k-1))に基づいて最小二乗法を適用し、圧力対応値v(k)に対応する座標点(v(k),e(k))を算出する。算出された値e(k)が、第k予測処理により算出される予測移動量に対応する。制御部71は、圧力対応値v(k)と、算出された予測移動量e(k)とを対応付けてRAM73に記憶する。
【0058】
次に、第k+1検出処理により圧力対応値v(k+1)及び移動量m(k+1)が検出された場合、制御部71は、第k-1検出処理により検出された圧力対応値v(k-1)及び移動量m(k-1)と、第k検出処理により検出された圧力対応値v(k)と、第k予測処理により算出された予測移動量e(k)とを、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、図6(b)における2つの座標点((v(k-1),m(k-1))、及び(v(k),e(k))に基づいて最小二乗法を適用し、圧力対応値v(k+1)に対応する座標点(v(k+1),e(k+1))を算出する。算出された値e(k+1)が、第k+1予測処理により算出される予測移動量に対応する。制御部71は、圧力対応値v(k+1)と、算出された予測移動量e(k+1)とを対応付けてRAM73に記憶する。つまり、制御部71は、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前に検出処理によって検出された圧力対応値及び移動量に基づき、予測移動量を算出する。
【0059】
図6(b)において、線分L1(実線)は、検出処理により検出された移動量のプロットを連結した線分である。線分L2(一点鎖線)は、予測処理により算出された予測移動量のプロットを連結した線分である。線分L1、L2で示されるように、線分L1で示されるプロット(検出処理により検出された移動量)の方が、線分L2で示すプロット(予測処理により算出された予測移動量)よりも小さくなる。この理由は、予測移動量が、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前に検出処理によって検出された圧力対応値及び移動量に基づき算出されているためである。一方、切断刃Csがシート素材20Aに接触した後で検出処理によって検出される移動量は、切断刃Csが下方に移動する過程でシート素材20Aから受ける圧力に応じて小さくなるため、予測移動量よりも小さくなる。
【0060】
図9に示すように、制御部71は、k回目以降の検出処理が実行された場合、予測処理を実行して予測移動量を算出する(S41)。以下、予測処理により予測移動量を算出する契機となった検出処理を、「対象検出処理」という。例えば、第k予測処理が実行される場合、第k検出処理が対象検出処理に対応し、第k+1予測処理が実行される場合、第k+1検出処理が対象検出処理に対応する。対象検出処理により検出された圧力対応値を、「対象圧力対応値」という。対象検出処理により検出された移動量を、「対象移動量」という。
【0061】
制御部71は、対象検出処理により検出された対象圧力対応値及び対象移動量を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、取得した対象移動量から、S41の処理により算出した予測移動量を減算し、差分を算出する(S43)。制御部71は、算出された差分と、S25(図8参照)の処理によって決定した差分閾値とを比較する(S45)。
【0062】
図6(b)において、線分L3(二点鎖線)は、S43(図9参照)の処理によって算出された差分のプロットを連結した線分である。ここで、切断刃Csが剥離紙20Bに接触するまでの間(領域T14)、差分は-2unitよりも小さい範囲で推移するのに対し、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した後(領域T15)、差分は-2unitよりも大きくなる。つまり、対象移動量から予測移動量を減算した差分の絶対値は、切断刃Csが剥離紙20Bに接触するまでの間は相対的に小さく、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した後では相対的に大きくなる。
【0063】
このため、図9に示すように、制御部71は、S43の処理によって算出された差分の絶対値が差分閾値よりも小さい場合(S45:NO)、装着部32が下方に移動する過程で切断刃Csが剥離紙20Bに到達していないと判定する。この場合、制御部71は、取得された対象移動量分対向位置から下方に離隔した位置を、装着部32の現時点での上下方向の位置として特定する。制御部71は、S109(図11参照)の処理によって検出した基準位置を、RAM73から読み出して取得する。制御部71は、現時点での装着部32の位置と基準位置とに基づき、切断刃Csが剥離紙20Bを貫通してプラテン3に接触したかを判定する(S47)。制御部71は、切断刃Csがプラテン3に接触していないと判定した場合(S47:NO)、処理をS41に戻す。制御部71は、次に検出処理が実行された場合に予測移動量を算出し(S41)、S43、S45、S47の処理を繰り返す。
【0064】
制御部71は、S43の処理によって算出された差分の絶対値が差分閾値以上となった場合(S45:YES)、装着部32が下方に移動する過程で切断刃Csが剥離紙20Bに到達し、切断刃Csが剥離紙20Bに接触したと判定する。なお、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した時、対象圧力対応値に対応する圧力が圧力付加機構31により装着部32に付加された状態であることになる。制御部71は、第二移動機構33を制御し、S15(図8参照)により開始した装着部32の下方への移動を停止させる。
【0065】
制御部71は、S23(図8参照)の処理によって検出された被切断物20の厚さを取得する(S51)。制御部71は、S51の処理により取得した被切断物20の厚さと、予め規定された厚さ閾値とを比較する(S53)。制御部71は、被切断物20の厚さが厚さ閾値以上と判定した場合(S53:YES)、圧力対応値の所定の範囲として、予め規定された第一圧力範囲(図6(b)参照)を決定する。第一圧力範囲は、被切断物20の厚さが厚さ閾値以上の場合において、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した時の圧力対応値として取り得る範囲を規定する。制御部71は、処理をS55に進める。一方、制御部71は、被切断物20の厚さが厚さ閾値よりも小さいと判定した場合(S53:NO)、圧力対応値の所定の範囲として、予め規定された圧力範囲であって第一圧力範囲よりも狭い第二圧力範囲(図6(b)参照)を決定する。第二圧力範囲は、被切断物20の厚さが厚さ閾値よりも小さい場合において、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した時の圧力対応値として取り得る範囲を規定する。制御部71は、処理をS59に進める。つまり、制御部71は、被切断物20の厚さに応じて圧力範囲を変更する。
【0066】
制御部71は、圧力範囲として第一圧力範囲を決定した場合(S53:YES)、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した時の圧力対応値に相当する対象圧力対応値が第一圧力範囲内に含まれるか判定する(S55)。制御部71は、第一圧力範囲内に対象圧力対応値が含まれると判定した場合(S55:YES)、被切断物20のうち剥離紙20Bを切断せずにシート素材20Aのみを切断する為に装着部32に付加する圧力に応じた切断圧力対応値として、対象圧力対応値を決定する(S57)。なお、決定される切断圧力対応値は、対象移動量から予測移動量を減算した差分の絶対値が差分閾位置以上になった場合における圧力対応値に相当する。制御部71は、処理をS63に進める。
【0067】
制御部71は、第一圧力範囲内に対象圧力対応値が含まれないと判定した場合(S55:NO)、処理をS61に進める。制御部71は、対象圧力対応値が第一圧力範囲の下限よりも小さい時、切断圧力対応値として、第一圧力範囲の下限値を決定する(S61)。一方、制御部71は、対象圧力対応値が第一圧力範囲の上限よりも大きい時、切断圧力対応値として、第一圧力範囲の上限値を決定する(S61)。これにより、被切断物20の厚さに応じた想定範囲(第一圧力範囲)よりも大きい値や小さい値が切断圧力対応値として決定されることを抑制する。制御部71は、処理をS63に進める。
【0068】
一方、制御部71は、圧力範囲として第二圧力範囲を決定した場合(S53:NO)、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した時の圧力対応値に相当する対象圧力対応値が第二圧力範囲内に含まれるか判定する(S59)。制御部71は、第二圧力範囲内に対象圧力対応値が含まれると判定した場合(S59:YES)、切断圧力対応値として対象圧力対応値を決定する(S57)。制御部71は、第二圧力範囲内に対象圧力対応値が含まれないと判定した場合(S59:NO)、処理をS61に進める。制御部71は、対象圧力対応値が第二圧力範囲の下限よりも小さい時、切断圧力対応値として、第二圧力範囲の下限値を決定する(S61)。一方、制御部71は、対象圧力対応値が第二圧力範囲の上限よりも大きい時、切断圧力対応値として、第二圧力範囲の上限値を決定する(S61)。これにより、被切断物20の厚さに応じた想定範囲(第二圧力範囲)よりも大きい値や小さい値が切断圧力対応値として決定されることを抑制する。制御部71は、処理をS63に進める。
【0069】
制御部71は、S43の処理によって算出された差分の絶対値が差分閾値よりも小さい状態(S45:NO)で、切断刃Csがプラテン3に接触したと判定した場合(S47:YES)、処理をS81(図10参照)に進める。この場合、検出されるはずの切断刃Csと剥離紙20Bとの接触が検出されなかったことになるので、切断刃Csと剥離紙20Bとの接触の検出に失敗した可能性がある。
【0070】
図10に示すように、制御部71は、S15(図8参照)の処理によって開始した装着部32の下方への移動を停止する(S81)。即ち、制御部71は、S109(図11参照)の処理によって検出した基準位置に切断刃Csが到達する位置まで、装着部32を下方に移動させ、停止させる。
【0071】
制御部71は、S23(図8参照)の処理によって検出された被切断物20の厚さと厚さ閾値とを比較する(S83)。制御部71は、被切断物20の厚さが厚さ閾値以上と判定した場合(S83:YES)、圧力対応値の所定の範囲として第一圧力範囲を決定する(S85)。制御部71は、第一圧力範囲の上限値と下限値との間の中央値を、切断圧力対応値として決定する(S87)。制御部71は、処理をS63(図9参照)に進める。
【0072】
制御部71は、S23(図8参照)の処理によって検出された被切断物20の厚さが、厚さ閾値よりも小さいと判定した場合(S83:NO)、圧力対応値の所定の範囲として第二圧力範囲を決定する(S89)。制御部71は、第二圧力範囲の上限値と下限値との間の中央値を、切断圧力対応値として決定する(S91)。制御部71は、処理をS63(図9参照)に進める。
【0073】
制御部71は、第二移動機構33を制御し、装着部32が上下方向において上限位置に配置されるまで、装着部32を上方に移動させる。
【0074】
制御部71は、パネル操作により指定された模様を被切断物20から切断する為の切断データを、フラッシュメモリ74から読み出して取得する(S63)。制御部71は、取得した切断データにより示される制御条件に基づき、搬送機構8A、第一移動機構8B、及び第二移動機構33を制御する。又、制御部71は、決定した切断圧力対応値に対応する切断圧力が圧力付加機構31により装着部32に付加されるよう、第二移動機構33を制御する。これにより、制御部71は、装着部32に装着されたカートリッジ4の切断刃Csを用い、指定された模様のシート素材20Aを被切断物20から切断する(S65)。制御部71は、メイン処理を終了させる。
【0075】
<本実施形態の作用、効果>
本実施形態によれば、切断装置1は、被切断物20の剥離紙20Bに切断刃Csが接触した後で装着部32に付加される圧力の圧力対応値と移動量とに基づき、切断圧力を決定する。従って切断装置1は、被切断物20のシート素材20A及び剥離紙20Bに適した切断圧力を装着部32に付加できるので、装着部32に装着されたカートリッジ4の切断刃Csにより、被切断物20のうちシート素材20Aのみを適切に切断できる。
【0076】
本実施形態のように、シート素材20Aと、シート素材20Aの片面に形成された粘着層を覆う剥離紙20Bとにより構成された被切断物20を、切断装置1の切断刃Csにより切断する場合がある。ここで、切断装置1によりハーフカットが実行される場合、シート素材20Aのみ切断され、剥離紙20Bは切断されないのが望ましい。しかし、被切断物20の種類に応じてシート素材20Aの厚さは異なる。これに対し、切断装置1において、シート素材20Aのみ切断し剥離紙を切断しないように制御が行われることが好ましい。
【0077】
これに対し、切断装置1は、装着部32に付加される圧力に対応する圧力対応値と移動量とに基づいて、シート素材20Aと剥離紙20Bとの境界位置を検出し、シート素材20Aのみ切断するための切断圧力を決定する。従って、切断装置1は、被切断物20のうちシート素材20Aのみ切断することができるので、ハーフカットを適切に実行できる。
【0078】
切断装置1は、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前に検出処理によって検出された圧力対応値及び移動量に基づき、予測移動量を算出する(S41)。この場合、切断装置1は、切断刃Csがシート素材20Aを貫通して剥離紙20Bに到達したかを、予測移動量と対象移動量との差分の絶対値が差分閾値以上となったか否かを判定することによって精度よく検出できる。従って、切断装置1は、シート素材20Aのみ切断可能な切断圧力を精度よく検出できる。
【0079】
図6(b)の線分L1で示されるプロット(検出処理により検出された移動量)の方が、線分L2で示すプロット(予測処理により算出された予測移動量)よりも小さくなる。このため切断装置1は、対象移動量から予測移動量を減算して算出される差分の絶対値を、差分閾値と比較する。この場合、切断装置1は、切断刃Csがシート素材20Aを貫通して被切断物20よりも硬い剥離紙20Bに到達したことを特定し、切断刃Csがシート素材20Aのみ切断できるように切断圧力を制御できる。
【0080】
切断装置1は、検出されるはずの切断刃Csと剥離紙20Bとの接触が検出されなかった場合(S47:NO)、基準位置に切断刃Csが到達する位置まで装着部32を下方に移動させた後、装着部32の下方への移動を停止させる(S81)。これにより切断装置1は、切断刃Csがプラテン3接触した後、装着部32の移動を速やかに停止させることができるので、切断刃Csの劣化を抑制できる。又この場合、切断装置1は、被切断物20の厚さに応じて決定される第一圧力範囲又は第二圧力範囲の何れかの中央値を、切断圧力に対応する圧力対応値として決定する(S83~S91)。これにより切断装置1は、被切断物20におけるシート素材20Aと剥離紙20Bとの境界が検出できない時でも、切断圧力を決定できる。
【0081】
切断装置1は、被切断物20の厚さを検出し(S23)、検出された被切断物20の厚さに応じて差分閾値を決定する(S25)。これにより切断装置1は、被切断物20の厚さに応じた適切な差分閾値を決定できるので、切断刃Csがシート素材20Aのみ切断できるような切断圧力に対応する圧力対応値を、精度よく決定できる。又、切断装置1は、被切断物20の厚さが大きい程大きな値となるように差分閾値を決定する。これにより切断装置1は、対象移動量と予測移動量との差分の誤差が、被切断物20の厚さが大きくなることに応じて大きくなる場合でも、圧力対応値を精度よく決定できる。
【0082】
切断装置1は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲に対象圧力対応値が含まれる場合(S55:YES、S59:YES)、切断圧力対応値として対象圧力対応値を決定する(S57)。一方、制御部71は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の上限よりも対象圧力対応値が大きい場合(S55:NO、S59:NO)、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の上限値を切断圧力対応値として決定する(S61)。又、制御部71は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の下限よりも対象圧力対応値が小さい場合(S55:NO、S59:NO)、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の下限値を切断圧力対応値として決定する(S61)。これにより切断装置1は、無効な圧力対応値が切断対応値として決定されることを抑制できる。又、切断装置1は、被切断物20の厚さに応じ、圧力範囲として第一圧力範囲又は第二圧力範囲の何れかを決定する(S53)。これにより、切断装置1は、被切断物20の厚さに応じた適切な圧力範囲を用いて切断圧力対応値を決定できるので、シート素材20Aのみ切断して剥離紙20Bを切断しないように切断圧力を適切に調整できる。
【0083】
<変形例>
図14を参照し、メイン処理の変形例について説明する。変形例では、移動量の変位量に基づいて切断刃Csが剥離紙20Bに接触したことを検出するという点で、上記におけるメイン処理(図8図11参照)と異なる。図8図11と同一の処理については、図14において同一符号を付し、説明を省略する。
【0084】
図14に示すように、制御部71は、S19の処理によってホルダ42がシート素材20Aに接触したと判定した場合、変位量算出処理を開始する(S20)。変位量算出処理では、周期的に実行される検出処理により圧力対応値及び移動量が検出されたことに基づき、前回の検出処理により検出された移動量に対する、今回の検出処理により検出された移動量の変位量を算出する。制御部71は、算出した変位量を、RAM73に記憶する。
【0085】
制御部71は、S21の処理によって切断刃Csがシート素材20Aに接触したと判定した後、処理をS145に進める。上記実施形態と同様、S21の処理において、第k検出処理により検出された移動量m(k)に基づき、切断刃Csがシート素材20Aに接触したと判定されたとする。制御部71は、k回目以降の検出処理が実行されたことに応じて変位量算出処理が実行された場合、前回の変位量算出処理により算出された変位量に対し、今回の変位量算出処理により算出された変位量が減少したか判定する(S145)。
【0086】
ここで図7に示すように、切断刃Csがシート素材20Aに接触してから剥離紙20Bに接触するまでの間における圧力対応値に対する移動量の増加率(傾き)よりも、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した後における圧力対応値に対する移動量の増加率(傾き)の方が小さくなる。即ち、切断刃Csがシート素材20Aに接触した後において、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した後の変位量は、切断刃Csが剥離紙20Bに接触する前の変位量に対して減少する。
【0087】
図14に示すように、制御部71は、変位量が減少していない場合(S145:NO)、装着部32が下方に移動する過程で切断刃Csが剥離紙20Bに到達していないと判定する。この場合、制御部71は処理をS47に進める。一方、制御部71は、変位量が減少した場合(S145:YES)、装着部32が下方に移動する過程で切断刃Csが剥離紙20Bに到達し、切断刃Csが剥離紙20Bに接触したと判定する。この場合、制御部71は、処理をS51に進める。
【0088】
制御部71は、S51の処理により検出されたシート素材20Aの厚さに応じ、圧力範囲として第一圧力範囲を決定した場合(S53:YES)、切断刃Csが剥離紙20Bに接触した時の圧力対応値に相当する対象圧力対応値が第一圧力範囲内に含まれるか判定する(S55)。制御部71は、第一圧力範囲内に対象圧力対応値が含まれると判定した場合(S55:YES)、切断圧力対応値として対象圧力対応値を決定する(S157)。又、制御部71は、シート素材20Aの厚さに応じ、圧力範囲として第二圧力範囲を決定した場合(S53:NO)、対象圧力対応値が第二圧力範囲内に含まれるか判定する(S59)。制御部71は、第二圧力範囲内に対象圧力対応値が含まれると判定した場合(S59:YES)、切断圧力対応値として対象圧力対応値を決定する(S157)。なお、決定される切断圧力対応値は、変位量が減少した場合における圧力対応値に相当する。
【0089】
制御部71は、フラッシュメモリ74から切断データを読み出し(S63)、搬送機構8A、第一移動機構8B、及び第二移動機構33を制御する。又、制御部71は、決定した切断圧力対応値に対応する切断圧力が圧力付加機構31により装着部32に付加されるよう、第二移動機構33を制御する。これにより、制御部71は、装着部32に装着されたカートリッジ4の切断刃Csを用いて被切断物20を切断する(S65)。これにより、切断装置1は、被切断物20のうち剥離紙20Bを切断せずにシート素材20Aのみを切断する(ハーフカットする)ことができる。
【0090】
<その他の変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。カートリッジ4はホルダ42を有さなくてもよく、切断刃Csは常に露出していてもよい。被切断物20のシート素材20Aに切断刃Csが接触したことを検出する方法、及び、被切断物20の剥離紙20Bに切断刃Csが達したことを検出する方法は、上記の方法に限定されない。例えば切断装置1は、ホルダ42又は切断刃Csがシート素材20Aに接触したことを検出可能な接触センサを備えてもよい。切断装置1は、接触センサによる検出結果に基づき、シート素材20Aにホルダ42又は切断刃Csが接触したかを判定してもよい。
【0091】
切断装置1は、プラテン3上に板状の保持部材が載置された状態で使用されてもよい。この場合、被切断物20は、保持部材の上面に保持された状態で、切断装置1により切断されてもよい。シート素材20Aと剥離紙20Bとが積層された被切断物20と異なる被切断物が用いられてもよい。例えば、被切断物20のシート素材20Aに粘着剤が塗布されていなくてもよい。被切断物20は、シート素材20Aのみからなる構成を有し、剥離紙20Bを有さなくてもよい。又は、被切断物20は、シート素材20Aのうち剥離紙20Bが吸着する面と反対側の面に別の層(例えば保護層等)を有してもよい。
【0092】
切断装置1は、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前に検出された圧力対応値v(k-2)、v(k-1)及び移動量m(k-2)、m(k-1)に基づき、切断刃Csがシート素材20Aに接触した後で検出された圧力対応値v(k)に対応する予測移動量e(k)を算出した(S41)。これに対し、切断装置1は、切断刃Csがシート素材20Aに接触した後で検出処理によって検出された圧力対応値v(k)、v(k+1)及び移動量m(k)、m(k+1)に基づき、予測移動量e(k+2)を算出してもよい。又は、切断装置1は、切断刃Csがシート素材20Aに接触する前に検出処理によって検出された圧力対応値v(k-3)、v(k-2)及び移動量m(k-3)、m(k-2)に基づき、予測移動量e(k-1)を算出してもよい。これらの場合、検出処理により検出された移動量の方が、予測処理により算出された予測移動量より大きくなってもよい。予測移動量を算出する時のサンプル数は、上記実施形態のように2つに限定されず、3つ以上でもよい。予測移動量e(k)を算出する時に用いる手法は、最小二乗法に限らず、他の周知の近似手段を適用して予測移動量を算出してもよい。
【0093】
切断装置1は、切断刃Csがプラテン3に接触したと判定した(S47:NO)後、装着部32の下方への移動を停止させた(S81)。これに対し、切断装置1は、切断刃Csがプラテン3に接触する前(例えば、切断刃Csがプラテン3に接触する直前)で、装着部32の下方への移動を停止させてもよい(S81)。より具体的には、切断装置1は、基準位置よりも所定距離分上方の位置まで装着部32が下方に移動した場合、装着部32の下方への移動を停止させてもよい。又、切断装置1は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の何れかの中央値を切断圧力対応値として決定しなくてもよい。例えば切断装置1は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の何れかの値を、切断圧力対応値として決定してもよい。又、代わりに切断装置1は、検出されるはずの切断刃Csと剥離紙20Bとの接触が検出されなかったことをユーザに通知するための画面を、LCD51に表示してもよい。
【0094】
切断装置1は、検出された被切断物20の厚さに応じて差分閾値を決定した(S25)。これに対し、切断装置1は、シート素材20Aの厚さに応じて差分閾値を決定してもよい。例えばユーザは、パネル操作によりシート素材20Aの厚さを切断装置1に入力してもよい。切断装置1は、入力されたシート素材20Aの厚さに応じて差分閾値を決定してもよい。切断装置1は、被切断物20やシート素材20Aの厚さ応じて差分閾値を変更せず、常に一定の差分閾値を用いてもよい。
【0095】
制御部71は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の上限よりも対象圧力対応値が大きい場合(S55:NO、S59:NO)、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の上限値に近似する値を、切断圧力対応値として決定してもよい(S61)。又、制御部71は、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の下限よりも対象圧力対応値が小さい場合(S55:NO、S59:NO)、第一圧力範囲又は第二圧力範囲の下限値に近似する値を、切断圧力対応値として決定してもよい(S61)。切断装置1は、シート素材20Aの厚さにかかわらず、常に一定の圧力範囲を用いてもよい。
【0096】
制御部71は、はじめに、装着部32が基準位置に到達するまで下方に移動させつつ検出処理を実行し、圧力対応値及び移動量を対応付けてRAM73に繰り返し記憶してもよい。制御部71は、装着部32が基準位置に到達した後、RAM73に記憶された圧力対応値及び移動量に基づいてS19~S25(図8参照)、S41~S61(図9参照)を実行し、切断圧力対応値を決定してもよい。つまり制御部71は、装着部32を基準位置まで移動させた後、予測移動量及び差分を算出し(S41、S43)、差分に基づいて切断圧力対応値を決定してもよい。
【0097】
例えば制御部71は、S51の処理で、切断刃Csがシート素材20Aに接触したと判定された時(図7(c)参照)に検出処理により検出された移動量と、S45の処理によって切断刃Csが剥離紙20Bに接触したと判定された時(図7(e)参照)に検出処理により検出された移動量との差分を、シート素材20Aの厚さとして検出してもよい。制御部71は、検出したシート素材20Aの厚さと、予め規定された厚さ閾値とを比較し(S53)、第一圧力範囲又は第二圧力範囲を設定してもよい。
【0098】
制御部71は、S23の処理で、基準位置と参照位置との差分を、被切断物20の厚さとして検出した。これに対し、制御部71は、例えばパネル操作によりユーザが入力した被切断物20の厚さを、被切断物20の厚さとして検出してもよい。または、切断装置1は、被切断物20の種類を特定する情報と、被切断物20の種類ごとの厚さとを対応付けてフラッシュメモリ74に記憶しておいてもよい。制御部71は、ユーザが操作パネルにより入力した被切断物20の種類を特定する情報を取得してもよい。制御部71は、取得した被切断物20の種類に対応付けられた厚さをフラッシュメモリ74から読み出し、被切断物20の厚さとして検出してもよい。
【0099】
<その他>
プラテン3は、本発明の「載置部材」の一例である。左方は、本発明の「第一方向」の一例である。右方は、本発明の「第二方向」の一例である。下方は、本発明の「第三方向」の一例である。上方は、本発明の「第四方向」の一例である。S13の処理を行う制御部71は、本発明の「第一移動手段」の一例である。S15の処理を行う制御部71は、本発明の「第二移動手段」の一例である。S17の処理を行う制御部71は、本発明の「第一検出手段」の一例である。S19~S25、S41~S61、S81~S91の処理を行う制御部71は、本発明の「第一決定手段」の一例である。S63の処理を行う制御部71は、本発明の「取得手段」の一例である。S17の処理を行う制御部71は、本発明の「切断手段」の一例である。予測移動量は、本発明の「予測値」の一例である。S101の処理を行う制御部71は、本発明の「第三移動手段」の一例である。S103の処理を行う制御部71は、本発明の「第四移動手段」の一例である。S107の処理を行う制御部71は、本発明の「第二検出手段」の一例である。S23の処理を行う制御部71は、本発明の「厚さ検出手段」の一例である。S25の処理を行う制御部71は、本発明の「第二決定手段」の一例である。
【符号の説明】
【0100】
1:切断装置、3:プラテン、4:カートリッジ、8B:第一移動機構、20:被切断物、20A:シート素材、20B:剥離紙、31:圧力付加機構、32:装着部、33:第二移動機構、34:Z軸モータ、71:制御部、Cs:切断刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14