IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-切断装置及びホルダ 図1
  • 特許-切断装置及びホルダ 図2
  • 特許-切断装置及びホルダ 図3
  • 特許-切断装置及びホルダ 図4
  • 特許-切断装置及びホルダ 図5
  • 特許-切断装置及びホルダ 図6
  • 特許-切断装置及びホルダ 図7
  • 特許-切断装置及びホルダ 図8
  • 特許-切断装置及びホルダ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】切断装置及びホルダ
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20241210BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20241210BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D7/26
B26D7/08 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021012271
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115610
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 範和
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】鹿間 康仁
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0026168(US,A1)
【文献】特開2012-206233(JP,A)
【文献】特開2013-193193(JP,A)
【文献】特開2014-176936(JP,A)
【文献】特開平08-025887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
B26D 7/26
B26D 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断物を載置する載置部材と、
前記載置部材に載置された前記被切断物に対し、第一方向と、前記第一方向と反対方向である第二方向に相対移動可能なキャリッジであって、
前記被切断物を切断する切断刃を保持するホルダを装着可能な装着部、
前記第一方向及び前記第二方向と交差する方向であって前記載置部材に載置された前記被切断物に対して前記装着部を接近させる第三方向、及び、前記載置部材に載置された前記被切断物から前記装着部を離隔させる第四方向に、前記装着部を移動させる移動機構、及び、
前記移動機構の駆動状態に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を付加する第一バネ
を有する前記キャリッジと、
を備えた切断装置であって、
前記ホルダは
前記切断刃に前記第三方向の圧力を付加する第二バネを有することを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記第一バネのばね定数よりも、前記第二バネのばね定数の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記キャリッジは、
前記移動機構による前記装着部の移動に依らず、前記装着部に前記第三方向の圧力を付加する第三バネを更に有し、
前記第三バネのばね定数は、前記第一バネのばね定数、及び、前記第二バネのばね定数よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
被切断物を載置する載置部材と、前記載置部材に載置された前記被切断物に対し、第一方向と、前記第一方向と反対方向である第二方向に相対移動可能なキャリッジであって、装着部、前記第一方向及び前記第二方向と交差する方向であって前記載置部材に載置された前記被切断物に対して前記装着部を接近させる第三方向、及び、前記載置部材に載置された前記被切断物から前記装着部を離隔させる第四方向に、前記装着部を移動させる移動機構、及び、前記移動機構による前記装着部の移動に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を付加する第一バネを有する前記キャリッジと、を備えた切断装置の前記装着部に装着可能なホルダであって、
前記被切断物を切断する切断刃と、
前記切断刃を支持する支持体と、
前記支持体を、第五方向及び前記第五方向と反対方向である第六方向に移動可能に支持し、前記装着部に保持される保持体と、
前記保持体に対して前記支持体を前記第五方向に付勢する第二バネと
を有することを特徴とするホルダ。
【請求項5】
前記切断刃に連結し且つ前記第五方向及び前記第六方向に沿って延び、磁性体からなる回転軸を有し、
前記支持体は、
前記回転軸を回転可能に支持し、
前記回転軸に対して前記第六方向側に位置し、前記回転軸を吸引する磁石を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のホルダ。
【請求項6】
前記第二バネは、前記第五方向及び前記第六方向と平行な延伸方向に伸縮可能なコイルバネであり、
前記支持体の一部である挿通部が、前記コイルバネの内側に挿通され、
前記挿通部の前記延伸方向における長さは、前記第二バネの密着長さよりも短いことを特徴とする請求項4又は5に記載のホルダ。
【請求項7】
前記保持体は、
前記第五方向及び前記第六方向と平行な方向に離隔した第一支持部及び第二支持部により前記支持体を移動可能に支持することを特徴とする請求項4から6の何れかに記載のホルダ。
【請求項8】
前記第二バネは、前記第五方向及び前記第六方向と平行な延伸方向に伸縮可能なコイルバネであり、
前記保持体は、
筐体と、前記筐体内で前記第二バネ及び前記支持体を支持する中間体とを備え
前記筐体は、
前記中間体よりも前記第五方向側で前記支持体を支持する第一支持部を有し、
前記中間体は、
前記第二バネの前記第六方向側の端部に当接する当接部と、
前記当接部に対して前記第五方向側に離隔し、前記支持体を支持する第二支持部と、
前記当接部及び前記第二支持部の間に架け渡された架設部と
を有し、
前記第二バネの前記第五方向側の端部は、前記第一支持部よりも前記第六方向側で前記支持体に連結する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のホルダ。
【請求項9】
前記筐体は樹脂製であり、前記中間体は金属製であることを特徴とする請求項8に記載のホルダ。
【請求項10】
前記装着部に前記保持体が保持された状態で、前記第三方向と前記第五方向とが一致し、前記第四方向と前記第六方向とが一致することを特徴とする請求項4から9の何れかに記載のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物を切断刃により切断可能な切断装置、及び、切断刃を保持するホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
被切断物と切断刃とを相対的に移動させることにより、被切断物から模様を切断する切断装置が知られている。特許文献1に記載の切断装置は、被切断物に対して左右方向に移動可能なキャリッジを有する。キャリッジには、カッタホルダ、上下駆動機構、及び圧縮コイルバネが設けられる。切断装置による被切断物の切断時、上下駆動機構によりカッタホルダは下降し、カッタホルダに支持されたカッタの刃先が被切断物に接触する。更にカッタホルダが下降することにより、圧縮コイルバネは圧縮する。圧縮コイルバネの圧縮に応じた付勢力により、カッタが被切断物を押圧するカッタ圧を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-193192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被切断物の種類に応じ、被切断物の切断時に必要となるカッタ圧が異なる。しかし上記切断装置では、圧縮コイルバネの特性に応じた一定のカッタ圧を上限としたカッタ圧しか得られない。このため、圧縮コイルバネの特性に応じたカッタ圧以上のカッタ圧をカッタに付加できず、被切断物を適切に切断できない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、被切断物を適切に切断可能な切断装置、及び、切断刃を保持するホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る切断装置は、被切断物を載置する載置部材と、前記載置部材に載置された前記被切断物に対し、第一方向と、前記第一方向と反対方向である第二方向に相対移動可能なキャリッジであって、前記被切断物を切断する切断刃を保持するホルダを装着可能な装着部、前記第一方向及び前記第二方向と交差する方向であって前記載置部材に載置された前記被切断物に対して前記装着部を接近させる第三方向、及び、前記載置部材に載置された前記被切断物から前記装着部を離隔させる第四方向に、前記装着部を移動させる移動機構、及び、前記移動機構の駆動状態に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を付加する第一バネを有する前記キャリッジと、を備えた切断装置であって、前記ホルダは、前記切断刃に前記第三方向の圧力を付加する第二バネを有することを特徴とする。
【0007】
第一態様によれば、切断装置は、装着部に着脱可能なホルダに第二バネを有することにより、ホルダが第二バネを有しない場合に比べ、被切断物を切断するときに装着部を介して切断刃に付加する圧力(カッタ圧)を大きくすることができる。従って、被切断物の切断時に大きなカッタ圧が必要とされる場合も、適切なカッタ圧を切断刃に付加して被切断物を適切に切断できる。
【0008】
本発明の第二態様に係るホルダは、被切断物を載置する載置部材と、前記載置部材に載置された前記被切断物に対し、第一方向と、前記第一方向と反対方向である第二方向に相対移動可能なキャリッジであって、装着部、前記第一方向及び前記第二方向と交差する方向であって前記載置部材に載置された前記被切断物に対して前記装着部を接近させる第三方向、及び、前記載置部材に載置された前記被切断物から前記装着部を離隔させる第四方向に、前記装着部を移動させる移動機構、及び、前記移動機構による前記装着部の移動に応じて前記装着部に前記第三方向の圧力を付加する第一バネを有する前記キャリッジと、を備えた切断装置の前記装着部に装着可能なホルダであって、前記被切断物を切断する切断刃と、前記切断刃を支持する支持体と、前記支持体を、第五方向及び前記第五方向と反対方向である第六方向に移動可能に支持し、前記装着部に保持される保持体と、前記保持体に対して前記支持体を前記第五方向に付勢する第二バネとを有することを特徴とする。
【0009】
第二態様によれば、ホルダが第二バネを有することにより、ホルダが第二バネを有しない場合に比べ、被切断物を切断するときに装着部を介して切断刃に付加する圧力(カッタ圧)を大きくすることができる。従って、被切断物の切断時に大きなカッタ圧が必要とされる場合も、適切なカッタ圧を切断刃に付加して被切断物を適切に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】切断装置1の斜視図である。
図2】ホルダ6が装着された状態のキャリッジ3の斜視図である。
図3】ホルダ6が脱離された状態のキャリッジ3の斜視図である。
図4】待機位置にあるキャリッジ3及びホルダ6の正面図である。
図5】待機位置から下方に移動したキャリッジ3及びホルダ6の正面図である。
図6】ホルダ6の斜視図である。
図7】ホルダ6の分解斜視図である。
図8図6のA-A線を矢印方向から視た断面図である。
図9】支持体6B、切断体6D、中間体6E、及び第二バネ6Fの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る切断装置1及びホルダ6を具体化した実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図1の左下方、右上方、右下方、左上方、上方、下方を、各々、切断装置1及びホルダ6の前方、後方、右方、左方、上方、下方とする。
【0012】
<切断装置1の概要>
図1を参照し、切断装置1の概要を説明する。切断装置1は、保持部90に保持された被切断物9を、ホルダ6に保持された切断刃72(図6等参照)を用いて切断することが可能である。切断装置1は、本体カバー2A、プラテン2B、キャリッジ3、搬送機構2C、移動機構2D等を備える。
【0013】
本体カバー2Aには、開口部21、カバー22、及び操作部23が設けられる。開口部21は、本体カバー2Aの正面部に設けられた開口である。カバー22は、本体カバー2Aに回動可能に支持される。図1では、カバー22が開けられ、開口部21が開放されている。以下では、カバー22が開けられた状態を前提として各種構成を説明する。
【0014】
操作部23は、液晶ディスプレイ(LCD)231、複数の操作スイッチ232、及びタッチパネル233を備える。LCD231には、コマンド、イラスト、設定値、及びメッセージ等の様々な項目を含む画像が表示される。タッチパネル233は、LCD231の表面に設けられる。ユーザは、指及びスタイラスペンの何れかを用いてタッチパネル233の押圧操作を行う。切断装置1では、タッチパネル233により検知される押圧位置に対応して、どの項目が選択されたかが認識される。ユーザは、操作スイッチ232及びタッチパネル233を用いて、LCD231に表示された模様の選択、各種パラメータの設定、及び入力の操作等を行うことができる。
【0015】
搬送機構2Cは、従動ローラ24、及び駆動ローラ(非図示)を備える。従動ローラ24は、本体カバー2A内にて回転可能に支持される。駆動ローラは、従動ローラ24に対して下方に対向し、非図示のY軸モータの駆動に応じて回転する。搬送機構2Cは、被切断物9を保持する矩形状の保持部90の左右両端部を、従動ローラ24と駆動ローラとの間に挟持する。搬送機構2Cは、この状態で駆動ローラが回転することにより、保持部90を前後方向(「Y方向」「副走査方向」ともいう。)に搬送可能である。つまり搬送機構2Cは、保持部90に保持された被切断物9を前後方向に搬送可能である。
【0016】
プラテン2Bは、本体カバー2A内、且つ、駆動ローラよりも後方に設けられる。プラテン2Bは左右方向に延びる板状部材である。プラテン2Bの左右方向の長さは、保持部90及び被切断物9の幅よりも大きい。搬送機構2Cにより後方に搬送された保持部90は、プラテン2Bのうち左右方向両端部を除く部分の上面に載置される。即ち、保持部90に保持された被切断物9は、保持部90を介してプラテン2Bに載置される。
【0017】
キャリッジ3にはホルダ6が装着される。キャリッジ3及びホルダ6の詳細は後述する。キャリッジ3は、移動機構2Dにより左右方向(「X方向」「主走査方向」ともいう。)に移動可能である。移動機構2Dは、ガイドレール26、非図示のX軸モータ等を備える。ガイドレール26は、本体カバー2A内に固定され、左右方向に延びる。キャリッジ3は、ガイドレール26に沿ってX方向へ移動可能に、ガイドレール26に支持される。X軸モータの回転運動は、X方向の運動に変換され、キャリッジ3に伝達される。X軸モータが正転駆動又は逆転駆動すると、キャリッジ3は左方向又は右方向へ移動される。これによりキャリッジ3は、保持部90を介してプラテン2Bに載置された被切断物9に対し、左右方向に相対移動可能となる。
【0018】
切断装置1は、搬送機構2C及び移動機構2Dにより、被切断物9に対してキャリッジ3を主走査方向及び副走査方向に相対移動させる。切断装置1は同時に、後述するキャリッジ3の移動機構3C(図2参照)により、被切断物9に対してキャリッジ3を上下方向に相対移動させる。これにより、切断装置1は、キャリッジ3に装着されたホルダ6の切断刃72により、被切断物9を任意の形状に切断する。
【0019】
<キャリッジ3>
図2図5に示すように、キャリッジ3は、支持体3A、装着部3B、移動機構3C、第一バネ3D、第三バネ3E等を備える。キャリッジ3のうちホルダ6が装着される部位を除く部分は、図1に示すカバー30により覆われる。図2図5においてカバー30は省略されている。
【0020】
<支持体3A>
支持体3Aは、装着部3B、移動機構3C、第一バネ3D(図4図5参照)、第三バネ3E等を支持する。支持体3Aは、夫々が板状の基部31、32、33を有する。
【0021】
基部31は前後方向と直交する。基部31は、後面にてガイドレール26(図1参照)に連結する。基部31はガイドレール26により、左右方向に移動可能に支持される。図3に示すように、基部31に対して前方に離隔した位置に、支持軸31A、31Cが設けられる。支持軸31A、31Cは夫々円柱状を有し、上下方向に延びる。図4図5に示すように、支持軸31Aは、基部31の左端部近傍に設けられる。支持軸31Aには後述の第一バネ3Dが巻回され、且つ、後述のラックギヤ43を上下方向に移動可能に支持する。支持軸31Cは、基部31の右端部近傍に設けられる。支持軸31Cには後述の第三バネ3Eが巻回される。
【0022】
図2図3に示すように、基部32は上下方向と直交し、基部31の下端部から前方に延びる。基部32には、上下方向に貫通する貫通孔32Aが形成される。基部33は左右方向と直交し、基部31のうち支持軸31Aよりも左方から前方に延びる。基部33には、後述する移動機構3Cの一部が支持される。
【0023】
<装着部3B>
装着部3Bは、支持体3Aのうち基部31よりも前方、基部32よりも上方、支持軸31Cよりも左方、及び、支持軸31Aよりも右方に配置される。装着部3Bにはホルダ6(図2参照)を装着可能ある。装着部3Bは、保持体36及びレバー37を有する。保持体36は、装着された状態のホルダ6を保持する。レバー37は、保持体36に保持された状態のホルダ6を固定し、脱離不能とする。
【0024】
図3に示すように、保持体36は、側板部36S、36R、36L、上板部36U、及び下板部36Bを有する。側板部36Sは、支持体3Aの基部31の前側に配置され、前後方向と直交する。側板部36Sは、基部31に対して上下方向に移動可能に連結される。これにより装着部3Bは、支持体3Aに対して上下方向に移動可能に支持される。側板部36Rは、側板部36Sの右端部から前方に向けて延びる。側板部36Lは、側板部36Sの左端部から前方に向けて延びる。側板部36R、36Lは、夫々、左右方向と直交する。上板部36Uは、側板部36S、36R、36Lの各々の上端部に設けられる。下板部36Bは、側板部36S、36R、36Lの各々の下端部に設けられる。上板部36U及び下板部36Bは、夫々、上下方向と直交する。保持体36の前端部は開放される。
【0025】
上板部36Uには、上下方向に貫通する円形の貫通孔363が形成される。下板部36Bには、上下方向に貫通する円形の貫通孔364が形成される。図2に示すように、保持体36にホルダ6が保持された状態で、ホルダ6は貫通孔363,364に挿通される。この状態で、ホルダ6の上端部は貫通孔363よりも上方に突出し、ホルダ6の下端部は貫通孔364よりも下方に突出する。
【0026】
図4図5に示すように、側板部36Lの下端部に可動板部361が設けられ、上端部に可動板部365が設けられる。可動板部361、365は側板部36Lの左面から左方に延び、上下方向と直交する。可動板部361、365には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、支持体3Aの支持軸31Aが挿通される。側板部36Rに可動板部362が設けられる。可動板部362は、側板部36Rの右面から右方に延び、上下方向と直交する。可動板部362には、上下方向に貫通する貫通孔が形成され、支持体3Aの支持軸31Cが挿通される。
【0027】
図2図3に示すように、レバー37は、保持体36の側板部36R、36Lに揺動可能に支持される。レバー37は、左右方向に長い板状の摘み部37Aを有する。図2に示すように、摘み部37Aが下方に移動する方向にレバー37が揺動した状態で、保持体36に保持されたホルダ6は固定され、保持体36から脱離不能となる。一方、図3に示すように、摘み部37Aが上方に移動する方向にレバー37が揺動した状態で、保持体36に対してホルダ6が固定された状態は解除される。このため、この状態でホルダ6は保持体36から脱離可能となる。
【0028】
<移動機構3C>
移動機構3Cは、支持体3Aに対して装着部3Bを上下方向に移動させるための機構である。なお、装着部3Bが下方に移動することにより、プラテン2Bに載置された被切断物9に対して装着部3Bは近接する。一方、装着部3Bが上方に移動することにより、プラテン2Bに載置された被切断物9から装着部3Bは離隔する。
【0029】
図2図5に示すように、移動機構3Cは、Z軸モータ41、ギヤユニット42、ラックギヤ43等を有する。Z軸モータ41は、支持体3Aの基部33の左側に配置され、基部33により支持体3Aに固定される。Z軸モータ41の回転軸は右方に延び、基部33に形成された貫通孔33A(図2図3参照)を右方に貫通する。Z軸モータ41の回転軸にギヤ41Aが設けられる。ギヤ41Aは、基部33よりも右方に突出する。
【0030】
ギヤユニット42は、内歯車42A及びピニオンギヤ42Bを有する。内歯車42Aは円板状を有し、左右方向と直交する。内歯車42Aの左面に、右方に凹む円形の凹部が形成される。凹部の内側面に歯が形成される。内歯車42Aの右面に、ピニオンギヤ42Bが設けられる。ピニオンギヤ42Bの直径は、内歯車42Aの直径よりも小さい。内歯車42A及びピニオンギヤ42Bの夫々の回転中心の位置は一致し、左右方向に延びる。以下、内歯車42A及びピニオンギヤ42Bの夫々の回転中心を、「ギヤユニット42の回転中心」という。内歯車42A及びピニオンギヤ42Bは、一体で回転する。
【0031】
図4図5に示すように、ギヤユニット42は、支持体3Aの基部33よりも右方に設けられ、基部33に回転可能に支持される。ギヤユニット42の回転中心は、Z軸モータ41の回転軸よりも下方に位置する。Z軸モータ41の回転軸に設けられたギヤ41Aは、内歯車42Aの左面に設けられた凹部に左方から進入し、内歯車42Aの内側面に設けられた歯に噛み合う。Z軸モータ41が駆動してギヤ41Aが回転することに応じ、Z軸モータ41の駆動力は、ギヤ41A及び内歯車42Aを介してギヤユニット42に伝達される。これにより、ギヤユニット42のピニオンギヤ42Bも回転する。
【0032】
ラックギヤ43は、ピニオンギヤ42Bの後方に設けられる。ラックギヤ43は、上下方向に延びる角柱状の基台の前面に、歯43Bを有する。ラックギヤ43は更に、上下方向に貫通する貫通孔を基台に有する。支持体3Aに固定された支持軸31Aは、この貫通孔に挿通する。ラックギヤ43は、支持軸31Aに沿って上下方向に移動可能である。ラックギヤ43の歯43Bは、ピニオンギヤ42Bに噛み合う。ラックギヤ43は、ピニオンギヤ42Bの回転に応じて上下方向に移動する。
【0033】
<第一バネ3D>
第一バネ3Dは、ラックギヤ43の下方に位置する。第一バネ3Dは圧縮コイルバネであり、支持軸31Aの下端部近傍に巻回される。第一バネ3Dの上端部は、ラックギヤ43の下端部に連結する。第一バネ3Dの下端部は、装着部3Bの可動板部361に連結する。第一バネ3Dは、ラックギヤ43と装着部3Bの可動板部361との間に介在し、ラックギヤ43を上方に付勢する。これにより、ラックギヤ43の上端部は、装着部3Bの可動板部365に下方から接触し、可動板部365を上方に向けて押す。第一バネ3Dのばね定数を、「第一ばね定数K1」と表記する。
【0034】
第一バネ3Dは、移動機構3CのZ軸モータ41が駆動した場合、ラックギヤ43の上下方向への移動に連動して装着部3Bを上下方向に移動させる。又、第一バネ3Dは、ラックギヤ43が下方に移動することに応じて圧縮した場合、装着部3Bに対して下向きの圧力を付加する。
【0035】
<第三バネ3E>
第三バネ3Eは圧縮コイルバネであり、支持軸31Cに巻回される。第三バネ3Eの上端部は、支持軸31Cの上端部に固定された固定ワッシャ310に下方から接触する。第三バネ3Eの下端部は、装着部3Bの可動板部362に連結する。第三バネ3Eは、固定ワッシャ310と装着部3Bの可動板部362との間に介在し、装着部3Bに下方の圧力を付与する。第三バネ3Eのばね定数を、「第三ばね定数K3」と表記する。第三ばね定数K3は、第一バネ3Dの第一ばね定数K1よりも小さい。第三バネ3Eは、移動機構3CのZ軸モータの駆動状態に関わらず、常に装着部3Bに対して下向きの圧力を付加する。
【0036】
<ホルダ6>
図6図9を参照し、ホルダ6について説明する。ホルダ6は、装着部3Bに装着された状態で使用され、切断刃72により被切断物9を切断する。図7に示すように、ホルダ6は、筐体6A、支持体6B、回転軸6C、切断体6D、中間体6E、及び第二バネ6Fを有する。
【0037】
<筐体6A>
筐体6Aは樹脂製であり、後述の支持体6B、回転軸6C、切断体6D、中間体6E、及び第二バネ6Fを収容する。図6図7に示すように、筐体6Aは、本体部61、蓋部62、及びスクリューキャップ63を有する。
【0038】
図7に示すように、本体部61は、各々が上下方向に延びる角筒部61A、及び、円筒部61B、61C、61Dを有する。角筒部61Aは、上下方向と直交する断面が左右方向に長い長方形となる。蓋部62は、角筒部61Aの上端部の開口を閉塞する。円筒部61B、61C、61Dは、角筒部61Aよりも下方に設けられ、円筒部61B、61C、61Dの順で下方に向けて並ぶ。円筒部61Bの直径は、角筒部61Aの左右方向の長さよりも短い。円筒部61Bの直径は、装着部3Bの上板部36Uに設けられた貫通孔363(図3参照)の直径と略同一である。円筒部61Cの直径は、円筒部61Bの直径よりも小さい。円筒部61Cの側面に、後述のスクリューキャップ63が嵌る複数のねじ山が設けられている。円筒部61Dの直径は、円筒部61Cの直径よりも小さい。以下、円筒部61B、61C、61Dの中心に沿って上下方向に延びる直線を、「中心線C」という。
【0039】
図8に示すように、円筒部61B、61C、61Dの内部を上下方向に貫通する貫通孔610は、内径が異なる内径部611、612を有する。内径部611、612は、この順で下方に向けて並ぶ。内径部611の内径よりも、内径部612の内径の方が小さい。内径部611は、円筒部61Bの内側に配置される。内径部612は、円筒部61C、61Dの内側に配置される。内径部612の下端部近傍に、中心線Cに向けて突出する部位(以下、「第一支持部613」という。)が設けられる。
【0040】
図6図7に示すように、スクリューキャップ63は、本体部61の円筒部61C、61Dに締結され固定される。スクリューキャップ63は円筒状を有し、上下方向の両端部に開口が設けられる。スクリューキャップ63の内面に設けられた複数のねじ山は、円筒部61Cの側面に設けられた複数のねじ山に嵌合する。スクリューキャップ63は、後述する支持体6B、回転軸6C、及び切断体6Dを交換するときに、本体部61から脱離される。スクリューキャップ63の外径は、装着部3Bの下板部36Bに設けられた貫通孔364(図3参照)の直径と略同一である。
【0041】
ホルダ6が装着部3Bに装着された状態で、筐体6Aは装着部3Bにより保持される。図2に示すように、筐体6Aの本体部61の円筒部61Bは、装着部3Bの上板部36Uの貫通孔363(図3参照)に嵌る。筐体6Aのスクリューキャップ63は、装着部3Bの下板部36Bの貫通孔364(図3参照)に嵌る。又、筐体6Aの本体部61の角筒部61Aは、装着部3Bの上板部36Uよりも上方に配置される。図4に示すように、筐体6Aのスクリューキャップ63の下端部は、下板部36Bの下端よりも下方に突出する。
【0042】
<支持体6B、回転軸6C>
図7に示すように、支持体6Bは、後述する回転軸6Cを介して切断体6Dを支持する。支持体6Bは円筒状を有する。支持体6Bは、外径が互いに相違する拡径部66A及び挿通部66Bを有する。挿通部66Bは、拡径部66Aの上側に位置する。図8に示すように、支持体6Bを上下方向に貫通する貫通孔660の内径は、拡径部66Aと挿通部66Bとで相違する。挿通部66Bの貫通孔661の内径は、拡径部66Aの貫通孔662の内径よりも大きい。
【0043】
図7に示すように、挿通部66Bの側面のうち拡径部66Aと近接する部分に、中心線Cに向けて凹んだ凹部663が設けられる。凹部663の底面の直径は、挿通部66Bの外径よりも小さい。図8に示すように、凹部663に固定ワッシャ67Aが係合される。固定ワッシャ67Aの外径は、拡径部66Aの外径よりも大きい。
【0044】
拡径部66Aの貫通孔662に回転軸6Cが挿通される。回転軸6Cは磁性体、より詳細には金属製である。図7に示すように、回転軸6Cは円柱状を有し、上下方向に延びる。図8に示すように、回転軸6Cの下端部は、支持体6Bの下端部よりも下方に突出する。回転軸6Cの下端部に、後述の切断体6Dが連結される。回転軸6Cの直径は、支持体6Bの拡径部66Aの貫通孔662の内径と略同一である。回転軸6Cは、支持体6Bの貫通孔662に密着し、支持体6Bによって回転可能に支持される。貫通孔662の下端部に、ベアリング68が保持される。ベアリング68は、支持体6Bに対して回転軸6Cが回転する時の摩擦を軽減させ、回転軸6Cを円滑に回転させる。
【0045】
支持体6Bの挿通部66Bの貫通孔661には、スペーサ67B及び磁石67Cが配置される。スペーサ67Bは、貫通孔661の下端部近傍に位置する。スペーサ67Bの貫通孔に、回転軸6Cの上端部の一部が挿通する。磁石67Cは、貫通孔661のうちスペーサ67Bに対して上側に位置する。磁石67Cは、回転軸6Cに対して上側に隣接する。磁石67Cの下端部と回転軸6Cの上端部との間には隙間が形成される。磁石67Cの磁力により、回転軸6Cは上方に吸引される。
【0046】
支持体6Bは、筐体6Aの貫通孔610に挿通される。この状態で、筐体6Aの内径部612に設けられた第一支持部613は、支持体6Bの下端部近傍に接触する。筐体6Aは、第一支持部613によって支持体6Bを上下方向に移動可能に支持する。支持体6Bの下端部は、筐体6Aの円筒部61Dの下端部よりも下方に突出し、スクリューキャップ63の内側に配置される。
【0047】
<切断体6D>
図6図8に示すように、切断体6Dは、筐体6Aの下端部に設けられる。切断体6Dは、回転支持部71、切断刃72、支軸73等を有する。
【0048】
図7に示すように、切断刃72は円形板状を有し、周端部にて被切断物9を切断可能である。切断刃72の中心には貫通孔が形成される。回転支持部71は、基部71A、一対の支持部71B、及び突出部71Cを有する。基部71Aの上端部に、下方に向けて凹んだ凹部710が形成される。図8に示すように、回転軸6Cの下端部は、凹部710に上方から進入して係合する。この状態で、切断体6Dは回転軸6Cに連結される。図7に示すように、一対の支持部71Bは、各々水平方向に離隔し、基部71Aの下端部から下方に向けて延びる。一対の支持部71Bは、切断刃72に対して水平方向の両側に位置する。一対の支持部71Bの夫々の先端部に、水平方向に延びる貫通孔が形成される。突出部71Cは円形板状を有し、基部71Aの上端部から中心線Cと反対側に向けて、水平方向に突出する。
【0049】
支軸73は、軸部73A、頭部73B、及び止め輪73Cを有する。軸部73Aは円柱状を有し、水平方向に延びる。頭部73Bは、軸部73Aの一端部に設けられ、外方に突出する。軸部73Aは、回転支持部71の一対の支持部71Bの貫通孔、及び、切断刃72の貫通孔に挿通する。これにより、切断刃72は、回転支持部71に対して回転可能に支持される。止め輪73Cは、軸部73Aの他端側に係合し、軸部73Aの抜けを防止する。
【0050】
図8に示すように、切断体6Dの突出部71Cは、筐体6Aの円筒部61Dとスクリューキャップ63の下端部とによって上下方向から挟持される。これにより、切断体6Dは筐体6Aに対して回転可能に支持され、脱離不能となる。切断体6Dは、被切断物9の切断時において切断刃72と被切断物9とが相対移動する方向(切断方向)に応じ、筐体6Aに対して回転可能となる。
【0051】
<中間体6E>
中間体6Eは筐体6A内に配置され、支持体6Bと後述の第二バネ6Fを支持する。中間体6Eは金属製である。図7図9に示すように、中間体6Eは、当接部76、第二支持部77、及び架設部78を有する。
【0052】
図7に示すように、当接部76は、左右方向に長い長方形の板状を有し、上下方向と直交する。当接部76の下面には、下方に突出する円形の凸部76Aが形成される(図8参照)。当接部76のうち、凸部76Aの左右両側に、一対の貫通孔76Bが形成される。一対の貫通孔76Bは、夫々円形であり、当接部76を上下方向に貫通する。第二支持部77は、略正方形の板状を有し、上下方向と直交する。第二支持部77は、当接部76に対して下方に離隔する。第二支持部77の中心に貫通孔77Aが形成される。貫通孔77Aは円形であり、第二支持部77を上下方向に貫通する。貫通孔77Aの直径は、支持体6Bの拡径部66Aの外径と略同一である。
【0053】
架設部78は、当接部76と第二支持部77との間に亘って上下方向に延びる。架設部78は板状を有し、前後方向と直交する。架設部78は、当接部76と第二支持部77と間に架け渡され、当接部76と第二支持部77とが上下方向に離隔した状態を保持する。
【0054】
図8に示すように、2つの螺子760は、中間体6Eの当接部76の一対の貫通孔76B(図7参照)に上側から挿通し、筐体6A内の螺子穴に螺合される。これにより、中間体6Eは筐体6Aの内部に固定される。この状態で、中間体6Eは、筐体6Aの第一支持部613よりも上方に位置する。又、中間体6Eの第二支持部77は、筐体6Aの貫通孔610のうち内径部611と内径部612との間の境界部分に形成された段差614に上方から接触する。
【0055】
図9に示すように、中間体6Eの第二支持部77の貫通孔77A(図7参照)に対し、支持体6Bが下方から挿通する。支持体6Bの挿通部66B、及び、支持体6Bの凹部663(図7図8参照)に係合した固定ワッシャ67Aは、第二支持部77よりも上方に位置する。図8に示すように、第二支持部77の貫通孔77Aは、支持体6Bの拡径部66Aの上端部近傍に接触する。中間体6Eは、第二支持部77によって支持体6Bを上下方向に移動可能に支持する。なお、既述のように、支持体6Bは、筐体6Aの第一支持部613によっても上下方向に移動可能に支持される。つまり、支持体6Bは、上下方向に互いに離隔した第一支持部613及び第二支持部77によって上下方向に移動可能に支持される。
【0056】
<第二バネ6F>
図7に示すように、第二バネ6Fは圧縮コイルバネであり、上下方向に伸縮可能である。第二バネ6Fは、切断体6Dの切断刃72に下方向の圧力を付加するために設けられる。
【0057】
図8図9に示すように、第二バネ6Fは、中間体6Eの当接部76と第二支持部77との間に介在する。第二バネ6Fの上端部は、中間体6Eの当接部76の下面に下方から接触する。当接部76の凸部76Aは、第二バネ6Fの上端部の内側に位置し、当接部76に対して第二バネ6Fの上端部の位置がずれることを抑制する。支持体6Bの挿通部66Bは、第二バネ6Fの下端部近傍の内側に挿通する。第二バネ6Fの下端部は、支持体6Bの凹部663に係合した固定ワッシャ67Aの上面に上方から接触する。つまり、第二バネ6Fの下端部は、筐体6Aの第一支持部613、及び、中間体6Eの第二支持部77よりも上方において、支持体6Bに連結する。
【0058】
第二バネ6Fのばね定数を、「第二ばね定数K2」という。第二ばね定数K2は、第一バネ3D(図4図5参照)の第一ばね定数K1、及び、第三バネ3E(図4図5参照)の第三ばね定数K3よりも大きい。第三バネ3Eが最大限収縮して螺旋状の素線どうしが密着した場合における伸縮方向の長さを、密着長さという。第三バネ3Eの密着長さよりも、支持体6Bの挿通部66Bの上下方向の長さの方が短い。
【0059】
<動作説明>
装着部3Bにホルダ6が装着され、且つ、装着部3Bが上下方向の移動可能範囲のうち最上位に配置される。又、被切断物9を保持した保持部90がプラテン2Bに載置される。最上位に配置された装着部3Bの上下方向の位置を、「待機位置」という。
【0060】
図4は、待機位置に配置された装着部3B、及び、装着部3Bに装着されたホルダ6を示す。装着部3Bに装着されたホルダ6の筐体6Aの下端部は、装着部3Bを支持する支持体3Aの基部32よりも上方に位置する。又、筐体6Aの下端部に設けられた切断体6Dは、基部32の貫通孔32A(図2参照)に挿通する。切断体6Dの切断刃72は、基部32よりも下方に僅かに突出する。又、切断刃72は、保持部90を介して切断装置1のプラテン2Bに載置された被切断物9に対し、上方に離隔する。
【0061】
装着部3Bが待機位置に配置された状態で、第三バネ3Eは、上端部の固定ワッシャ310と下端部の可動板部362との間で収縮した状態となっている。このため、第三バネ3Eは、装着部3Bの可動板部362に下向きの圧力を付与する。装着部3Bは、可動板部362を介して第三バネ3Eから下向きの力を受ける。一方、ラックギヤ43に噛み合うピニオンギヤ42Bの回転はZ軸モータ41の回転負荷により抑制されるので、ラックギヤ43の上下方向の移動は抑制される。このため、ラックギヤ43の上端部に接触する装着部3Bの可動板部365の下方への移動も抑制される。従って、装着部3Bは、第三バネ3Eから下向きの力を受けた状態でも、下方に移動せず静止する。
【0062】
切断刃72による被切断物9の切断時、切断装置1の非図示の制御部はZ軸モータ41を駆動し、ギヤ41Aを回転させる。ギヤ41Aの回転に応じ、ギヤユニット42の内歯車42A及びピニオンギヤ42Bは一体となって回転する。これにより、ピニオンギヤ42Bに噛み合うラックギヤ43は下方に移動する。ラックギヤ43の下方への移動に応じ、ラックギヤ43の下端部に連結した第一バネ3Dも、収縮することなく下方に移動する。なお、装着部3Bは、可動板部365を介してラックギヤ43の上端部に接触し、且つ、可動板部361を介して第一バネ3Dの下端部に連結している。このため装着部3Bは、ラックギヤ43の移動に応じて待機位置から下方に移動する。
【0063】
装着部3Bの下方への移動に応じ、ホルダ6も下方に移動する。ホルダ6の切断刃72は、下方に位置する被切断物9に対して徐々に近接し、接触する。この時、切断刃72が被切断物9に接触しているため、ホルダ6を介して装着部3Bに上向きの圧力が作用する。Z軸モータ41が継続して駆動することにより、ラックギヤ43は更に下方に移動する。このとき、第一バネ3D及びホルダ6の第二バネ6F(図7参照)よりもばね定数が小さい第三バネ3Eは、可動板部362を介して装着部3Bに下向きの力を付与する。この力により、装着部3Bに装着されたホルダ6の切断刃72は、被切断物9に進入して切断しようとする。
【0064】
ここで、被切断物9が硬く、第三バネ3Eが付与する力では被切断物9に切断刃72を進入させることができない場合がある。このとき、装着部3Bの下向きの移動は、ホルダ6を介して被切断物9から受ける上向きの力により抑制される。この状態で更にピニオンギヤ42Bが回転した場合、ラックギヤ43は更に下方に移動する。これによりラックギヤ43の上端部は可動板部365から離隔し、ラックギヤ43は、ホルダ6の第二バネ6Fよりもばね定数が小さい第一バネ3Dを収縮させながら、下方に移動する。第一バネ3Dは、第三バネ3Eよりも強い下向きの力を、可動板部361を介して装着部3Bに付与する。この力により、装着部3Bに装着されたホルダ6の切断刃72は、下方に移動して被切断物9に進入し、被切断物9を切断しようとする。
【0065】
更に被切断物9が硬く、第一バネ3Dが付与する力では被切断物9に切断刃72を進入させることができない場合がある。装着部3Bの下向きの移動は抑制される。ピニオンギヤ42Bが回転してラックギヤ43が更に下方へ移動することにより、第一バネ3Dは、図5に示すように更に収縮する。装着部3Bが第一バネ3Dから受ける下向きの力は増大する。このとき、第一バネ3Dよりもばね定数が大きいホルダ6の第二バネ6Fは、第一バネ3Dから受ける下向きの力により、当接部76と、支持体6Bに係合した固定ワッシャ67Aとの間で収縮する。第二バネ6Fは、第一バネ3D及び第三バネ3Eよりも強い下向きの力を、固定ワッシャ67Aを介して支持体6Bに付与する。この力により、支持体6Bが回転軸6Cを介して支持する切断体6Dの切断刃72は、被切断物9に進入して切断する。
【0066】
<本実施形態の作用、効果>
切断装置1は、装着部3Bに着脱可能なホルダ6に第二バネ6Fを設けたことにより、ホルダ6が第二バネ6Fを有さない場合に比べ、被切断物9を切断するときに装着部3Bを介して切断刃72に付加する圧力(カッタ圧)を大きくすることができる。従って、被切断物9の切断時に大きなカッタ圧が必要とされる場合も、適切なカッタ圧を切断刃72に付加して被切断物9を適切に切断できる。
【0067】
ホルダ6は、より大きなばね定数(第二ばね定数K2)の第二バネ6Fを有する。このため切断装置1は、被切断物9を切断する時に大きなカッタ圧が必要な場合でも、第二バネ6Fにより被切断物9を適切に切断できる。
【0068】
切断装置1は、更に第三バネ3Eを有する。第三バネ3Eは、装着部3Bの下方への移動過程において第一バネ3Dにより圧力が付加される前の状態で、装着部3Bに圧力を付加できる。このため切断装置1は、装着部3Bの下方への移動過程におけるより広い移動範囲で、装着部3Bを介して切断刃72に圧力を付加できる。
【0069】
ホルダ6では、切断体6Dに連結した回転軸6Cが磁石67Cによって上方に吸引される。このためホルダ6は、スクリューキャップ63が脱離した状態で支持体6Bから切断体6Dが脱離することを抑制できるので、ユーザによる切断体6Dの交換作業を容易化できる。同時に、ホルダ6は、被切断物9の切断時において、切断方向に応じて切断体6Dの切断刃72が回転することを、磁石67Cにより許容できる。
【0070】
支持体6Bの挿通部66Bの上下方向における長さは、第二バネ6Fの密着長さよりも短い。このためホルダ6は、第二バネ6Fが最大限圧縮した時でも、挿通部66Bの上端部が中間体6Eの当接部76に接触しない。このためホルダ6は、第二バネ6Fが最大限圧縮した時でも、支持体6Bを介して切断刃72に圧力を付加できる。
【0071】
ホルダ6は、筐体6Aの第一支持部613と、中間体6Eの第二支持部77とによって支持体6Bを支持する。第一支持部613と第二支持部77とは、支持体6Bの移動方向である上下方向に離隔する。このためホルダ6、支持体6Bを安定的に支持し、上下方向に円滑に移動させることができる。
【0072】
中間体6Eの当接部76は、第二バネ6Fが接触したときの圧力に応じた負荷がかかり易い。又、中間体6Eの第二支持部77は、支持体6Bに接触する為負荷がかかり易い。これに対し、ホルダ6では、当接部76と第二支持部77とを中間体6Eに含め、筐体6Aと別部材とする。これによりホルダ6は、筐体6Aの耐久性を高めることができる。又、ホルダ6は、負荷がかかり易い中間体6Eを金属製として強度を高めることができるので、経年劣化を抑制できる。
【0073】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上記において、被切断物9は、保持部90に保持された状態でプラテン2Bに載置され、切断装置1により切断された。これに対し、被切断物9は、単体でプラテン2Bに載置され、切断装置1により切断されてもよい。ホルダ6は、装着部3Bに固定され、脱離不能であってもよい。第一バネ3D、第二バネ6F、第三バネ3Eの夫々は、複数の圧縮コイルバネを含んでいてもよい。この場合、第一バネ3D、第二バネ6F、第三バネ3Eのばね定数は、複数のバネのばね定数の合計であってもよい。
【0074】
第一バネ3Dの第一ばね定数K1、第二バネ6Fの第二ばね定数K2、及び第三バネ3Eの第三ばね定数K3の大小関係(K2>K1>K3)は、上記実施形態に限定されない。例えば第一ばね定数K1は、第二ばね定数K2より大きくてもよい。第三ばね定数K3は、第一ばね定数K1及び第二ばね定数K2より大きくてもよい。第一ばね定数K1、第二ばね定数K2、第三ばね定数K3は同一であってもよい。第一バネ3D及び第三バネ3Eの少なくとも一方は、圧縮コイルばねに限らず、例えば渦巻きバネでもよい。移動機構3Cは、Z軸モータ41の駆動により渦巻きバネを回転させることにより、装着部3Bに下向きの力を付加してもよい。切断装置1は第三バネ3Eを有さず、第一バネ3Dのみ有してもよい。
【0075】
ホルダ6の切断刃72は円形板状に限らず、先端が尖った矩形板状を有してもよい。ホルダ6に回転軸6Cは設けられなくてもよい。この場合、磁石67Cは、切断体6Dを直接上方に吸引してもよい。
【0076】
第二バネ6Fはコイルバネに限定されず、皿バネ、輪バネ、板バネ等でもよい。中間体6Eの当接部76には、凸部76Aに代えて貫通孔が形成されてもよい。貫通孔の径は、支持体6Bの挿通部66Bの径より大きくてもよい。この場合、支持体6Bの挿通部66Bの上下方向における長さが、第二バネ6Fの密着長さより長くてもよい。なお、第二バネ6Fが最大限圧縮した場合、支持体6Bの挿通部66Bは、当接部76に形成された貫通孔に挿通する。このため、挿通部66Bの上端部が中間体6Eの当接部76に接触することを抑制できるので、ホルダ6は、第二バネ6Fが最大限圧縮した時でも、支持体6Bを介して切断刃72に圧力を付加できる。
【0077】
筐体6Aの内径部612は、上下方向の全域において支持体6Bに接触してもよい。この場合、中間体6Eは第二支持部77を有さず、支持体6Bを支持しなくてもよい。中間体6Eは当接部76のみで構成されてもよい。更に、ホルダ6は中間体6Eを有さなくてもよい。この場合、第二バネ6Fの上端部は、筐体6Aに直接当接してもよい。筐体6Aは樹脂製に限定されず、他の材料(例えば金属等)により構成されてもよい。中間体6Eは金属製に限定されず、他の材料(例えば樹脂等)により構成されてもよい。
【0078】
<その他>
プラテン2Bは、本発明の「載置部材」の一例である。左右方向のうち一方は、本発明の「第一方向」の一例であり、他方は、本発明の「第二方向」の一例である。下方向は、本発明の「第三方向」「第五方向」の一例である。上方向は、本発明の「第四方向」「第六方向」の一例である。上下方向は、本発明の「延伸方向」の一例である。筐体6A及び中間体6Eは、本発明の「保持体」の一例である。
【符号の説明】
【0079】
1:切断装置、2B:プラテン、3:キャリッジ、3B:装着部、3C:移動機構、3D:第一バネ、3E:第三バネ、6:ホルダ、6B:支持体、6C:回転軸、6D:切断体、6E:中間体、6F:第二バネ、9:被切断物、67C:磁石、72:切断刃、76:当接部、77:第二支持部、78:架設部、613:第一支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9