(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光変調器の製造方法、試験方法、および試験プログラム、ならびに光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20241210BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20241210BHJP
【FI】
G02F1/01 B
H04B10/516
(21)【出願番号】P 2021012460
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 務
(72)【発明者】
【氏名】河野 直哉
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087846(JP,A)
【文献】特開2004-126024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0107791(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0109322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00ー1/125
G02F 1/21ー7/00
H04B 10/00ー10/90
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調器の製造方法であって、
前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、
前記マッハツェンダ変調器は、
第1電極、第2電極、第1アーム導波路および第2アーム導波路を有し、
前記第1電極は、前記第1アーム導波路に設けられ、
前記第2電極は、前記第2アーム導波路に設けられ、
前記製造方法は、
前記マッハツェンダ変調器を用意する工程と、
前記
第1アーム導波路における光の透過率
および前記第2アーム導波路における光の透過率に基づいて、
前記第1電極に印加される電圧と前記第1アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係である第1の関係、および前記第2電極に印加される電圧と前記第2アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係である第2の関係を取得する工程と、
前記第1の関係および前記第2の関係に基づいて、
前記第1アーム導波路における位相の変化量と前記第2アーム導波路における位相の変化量との差の範囲が所定の大きさになる
ような、前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を取得する工程と、
前記取得する工程で取得された、前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を記憶部に記憶させる工程と、を有する光変調器の製造方法。
【請求項2】
前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、複数の前記マッハツェンダ変調器を用意する工程であり、
前記第1の関係および前記第2の関係を取得する工程と、
前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を取得する工程とは、前記複数のマッハツェンダ変調器のそれぞれに対して行われる請求項1に記載の光変調器の製造方法。
【請求項3】
前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、親マッハツェンダ変調器を用意する工程と、子マッハツェンダ変調器を用意する工程とを含み、
前記第1の関係および前記第2の関係を取得する工程と、
前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を取得する工程とは、前記親マッハツェンダ変調器および前記子マッハツェンダ変調器のそれぞれに対して行われる、請求項1または請求項2に記載の光変調器の製造方法。
【請求項4】
前記第1電極に印加される電圧は、第1電圧と第2電圧との和であり、
前記第2電極に印加される電圧は、前記第1電圧と前記第2電圧との差であり、
前記電圧を取得する工程は、前記位相の変化量の範囲が前記所定の大きさになる前記第1電圧を取得する工程である、請求項
1に記載の光変調器の製造方法。
【請求項5】
前記電圧を取得する工程において、前記位相の変化量の範囲が前記所定の大きさになる前記第1電圧のうち最小値を取得する請求項4に記載の光変調器の製造方法。
【請求項6】
前記
第1アーム導波路
および前記第2アーム導波路それぞれにおける光の透過率である第1透過率を測定する工程と、
前記
第1アーム導波路
および前記第2アーム導波路それぞれにおける光の透過率である第2透過率を算出する工程と、をさらに有し、
前記第2透過率を算出する工程において、
前記第1アーム導波路における前記第2透過率を、前記第1アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量の関数として表し、かつ前記第1アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量を前記第1電極に印加される電圧の関数として表すことで、前記第1アーム導波路における前記第2透過率を算出し、
前記第2アーム導波路における前記第2透過率を、前記第2アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量の関数として表し、かつ前記第2アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量を前記第2電極に印加される電圧の関数として表すことで、前記第2アーム導波路における前記第2透過率を算出し、
前記
第1の関係および前記第2の関係を取得する工程において、
前記第1アーム導波路および前記第2アーム導波路のそれぞれで、前記第1透過率に近づくように前記第2透過率を調整することで、
前記第1の関係および前記第2の関係を取得する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光変調器の製造方法。
【請求項7】
前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、前記マッハツェンダ変調器を形成する工程を含み、
前記マッハツェンダ変調器を形成する工程は、第1半導体層と、コア層と、第2半導体層と、を有する前記
第1アーム導波路および前記第2アーム導波路を形成する工程を含み、
前記第1半導体層、前記コア層および前記第2半導体層は、順に積層され、
前記第1半導体層は第1の導電型を有し、
前記第2半導体層は第2の導電型を有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光変調器の製造方法。
【請求項8】
光変調器の試験方法であって、
前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、
前記マッハツェンダ変調器は、
第1電極、第2電極、第1アーム導波路および第2アーム導波路を有し、
前記第1電極は、前記第1アーム導波路に設けられ、
前記第2電極は、前記第2アーム導波路に設けられ、
前記試験方法は、
前記
第1アーム導波路における光の透過率
および前記第2アーム導波路における光の透過率に基づいて、
前記第1電極に印加される電圧と前記第1アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係である第1の関係、および前記第2電極に印加される電圧と前記第2アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係である第2の関係を取得する工程と、
前記第1の関係および前記第2の関係に基づいて、
前記第1アーム導波路における位相の変化量と前記第2アーム導波路における位相の変化量との差の範囲が所定の大きさになる
ような、前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を取得する工程と、を有する光変調器の試験方法。
【請求項9】
光変調器の試験プログラムであって、
前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、
前記マッハツェンダ変調器は、
第1電極、第2電極、第1アーム導波路および第2アーム導波路を有し、
前記第1電極は、前記第1アーム導波路に設けられ、
前記第2電極は、前記第2アーム導波路に設けられ、
前記試験プログラムは、
コンピュータに、
前記
第1アーム導波路における光の透過率
および前記第2アーム導波路における光の透過率に基づいて、
前記第1電極に印加される電圧と前記第1アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係である第1の関係、および前記第2電極に印加される電圧と前記第2アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係である第2の関係を取得する処理と、
前記第1の関係および前記第2の関係に基づいて、
前記第1アーム導波路における位相の変化量と前記第2アーム導波路における位相の変化量との差の範囲が所定の大きさになる
ような、前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を取得する処理と、を実行させる光変調器の試験プログラム。
【請求項10】
複数のマッハツェンダ変調器と、
記憶部と、を具備し、
前記複数のマッハツェンダ変調器は、
第1電極、第2電極、第1アーム導波路および第2アーム導波路を有し、
前記第1電極は、前記第1アーム導波路に設けられ、
前記第2電極は、前記第2アーム導波路に設けられ、
前記記憶部は、前記複数のマッハツェンダ変調器ごとに、
前記第1アーム導波路における位相の変化量と前記第2アーム導波路における位相の変化量との差の範囲が所定の大きさになる
ような、前記第1電極に印加する電圧および前記第2電極に印加する電圧を記憶する光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光変調器の製造方法、試験方法、および試験プログラム、ならびに光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体層で形成され、光を変調するマッハツェンダ変調器が開発されている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-164243号公報
【文献】特開2016-111398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光はマッハツェンダ変調器のアーム導波路を伝搬する。マッハツェンダ変調器に電圧を印加することで、光の位相を調整することができる。位相を所望の大きさに調整するために、電圧の印加による位相の変化量の範囲(位相調整範囲)を所定の大きさとすることが重要である。
【0005】
電圧に対する位相の変化の割合(位相調整効率)には、マッハツェンダ変調器ごとにばらつきがある。同一の電圧を複数のマッハツェンダ変調器に印加する場合、あるマッハツェンダ変調器での位相変化量は大きく、別のマッハツェンダ変調器での位相変化量は小さい。位相調整効率の小さなマッハツェンダ変調器においても、位相調整範囲を所定の大きさとするためには、電圧を増加させればよい。しかし、位相調整効率と、光の吸収損失との間には、正の相関がある。電圧を増加させることで、光の吸収損失も増大してしまう。そこで、光の吸収損失の増加を抑制することが可能な光変調器の製造方法、試験方法、および試験プログラム、ならびに光送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る製造方法は、光変調器の製造方法であって、前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、前記マッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記製造方法は、前記マッハツェンダ変調器を用意する工程と、前記アーム導波路における光の透過率に基づいて、前記電極に印加される電圧と、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する工程と、前記関係に基づいて、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を取得する工程と、前記電圧を記憶部に記憶させる工程と、を有する。
【0007】
本開示に係る試験方法は、光変調器の試験方法であって、前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、前記マッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記試験方法は、前記アーム導波路における光の透過率に基づいて、前記電極に印加される電圧と、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する工程と、前記関係に基づいて、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を取得する工程と、を有する。
【0008】
本開示に係る試験プログラムは、光変調器の試験プログラムであって、前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、前記マッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記試験プログラムは、コンピュータに、前記アーム導波路における光の透過率に基づいて、前記電極に印加される電圧と、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する処理と、前記関係に基づいて、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を取得する処理と、を実行させる。
【0009】
本開示に係る光送信装置は、複数のマッハツェンダ変調器と、記憶部と、を具備し、前記複数のマッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記記憶部は、前記複数のマッハツェンダ変調器ごとに、光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を記憶する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光の吸収損失の増加を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態に係る光送信装置を例示するブロック図である。
【
図1B】
図1Bは制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、子マッハツェンダ変調器における差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図4A】
図4Aは、電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図4B】
図4Bは、電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図5A】
図5Aは、差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図5B】
図5Bは、差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図6A】
図6Aは、電圧と光の吸収損失の変化量との関係を例示する図である。
【
図6B】
図6Bは、電圧と光の吸収損失の変化量との関係を例示する図である。
【
図7A】
図7Aは、差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図7B】
図7Bは、差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。
【
図8】
図8は、光変調器の製造方法を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は、試験を例示するフローチャートである。
【
図11B】
図11Bは、測定された透過率と最適化後の透過率とを例示する図である。
【
図13】
図13は、中心電圧と位相調整範囲との関係を例示する図である。
【
図14】
図14は、測定された透過率と最適化後の透過率とを例示する図である。
【
図16】
図16は、中心電圧と位相調整範囲との関係を例示する図である。
【
図17】
図17は、測定された透過率と最適化後の透過率とを例示する図である。
【
図19】
図19は、中心電圧と位相調整範囲との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0013】
本開示の一形態は、(1)光変調器の製造方法であって、前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、前記マッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記製造方法は、前記マッハツェンダ変調器を用意する工程と、前記アーム導波路における光の透過率に基づいて、前記電極に印加される電圧と、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する工程と、前記関係に基づいて、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を取得する工程と、前記電圧を記憶部に記憶させる工程と、を有する光変調器の製造方法である。取得された電圧をマッハツェンダ変調器に印加することで、位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(2)前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、複数の前記マッハツェンダ変調器を用意する工程であり、前記電圧と前記位相の変化量との関係を取得する工程と、前記電圧を取得する工程とは、前記複数のマッハツェンダ変調器のそれぞれに対して行われてもよい。複数のマッハツェンダ変調器ごとに電圧が最適化される。最適化された電圧をマッハツェンダ変調器に印加することで、位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(3)前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、親マッハツェンダ変調器を用意する工程と、子マッハツェンダ変調器を用意する工程とを含み、前記電圧と前記位相の変化量との関係を取得する工程と、前記電圧を取得する工程とは、前記親マッハツェンダ変調器および前記子マッハツェンダ変調器のそれぞれに対して行われてもよい。親マッハツェンダ変調器および子マッハツェンダの位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(4)前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、第1アーム導波路と、第2アーム導波路と、第1電極と、第2電極とを有する前記マッハツェンダ変調器を用意する工程を含み、前記第1電極は、前記第1アーム導波路に設けられ、前記第2電極は、前記第2アーム導波路に設けられ、前記電圧と前記位相の変化量との関係を取得する工程は、前記第1電極に印加される電圧と前記第1アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する工程、および前記第2電極に印加される電圧と前記第2アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する工程を含み、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲は、前記第1アーム導波路における位相の変化量と前記第2アーム導波路における位相の変化量との差の範囲であり、前記電圧を取得する工程は、前記位相の変化量の範囲が前記所定の大きさになるような、前記第1電極に印加される電圧および前記第2電極に印加される電圧を取得する工程でもよい。位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(5)前記第1電極に印加される電圧は、第1電圧と第2電圧との和であり、前記第2電極に印加される電圧は、前記第1電圧と前記第2電圧との差であり、前記電圧を取得する工程は、前記位相の変化量の範囲が前記所定の大きさになる前記第1電圧を取得する工程でもよい。第1電圧を中心電圧とし、第2電圧を差動電圧として、マッハツェンダ変調器を差動駆動する。位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(6)前記アーム導波路における光の透過率である第1透過率を測定する工程と、前記アーム導波路における光の透過率である第2透過率を算出する工程と、をさらに有し、前記第2透過率を算出する工程において、前記第2透過率を、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量の関数として表し、かつ前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量を、前記電極に印加される電圧の関数として表すことで、前記第2透過率を算出し、前記電圧と前記位相の変化量との関係を取得する工程において、前記第1透過率に近づくように前記第2透過率を調整することで、前記電圧と前記位相の変化量との関係を取得してもよい。第2透過率を第1透過率に近づけることで、電圧と位相の変化量との正確性の高い関係が得られる。位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(7)前記マッハツェンダ変調器を用意する工程は、前記マッハツェンダ変調器を形成する工程を含み、前記マッハツェンダ変調器を形成する工程は、第1半導体層と、コア層と、第2半導体層と、を有する前記アーム導波路を形成する工程を含み、前記第1半導体層、前記コア層および前記第2半導体層は、順に積層され、前記第1半導体層は第1の導電型を有し、前記第2半導体層は第2の導電型を有してもよい。第1半導体層および第2半導体層にドーパントを添加する。ドーパントの熱拡散量のばらつきによって、マッハツェンダ変調器の位相調整効率にもばらつきが生じる。取得された電圧をマッハツェンダ変調器に印加することで、位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(8)光変調器の試験方法であって、前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、前記マッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記試験方法は、前記アーム導波路における光の透過率に基づいて、前記電極に印加される電圧と、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する工程と、前記関係に基づいて、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を取得する工程と、を有する光変調器の試験方法である。取得された電圧をマッハツェンダ変調器に印加することで、位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(9)光変調器の試験プログラムであって、前記光変調器は、マッハツェンダ変調器を有し、前記マッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記試験プログラムは、コンピュータに、前記アーム導波路における光の透過率に基づいて、前記電極に印加される電圧と、前記アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量との関係を取得する処理と、前記関係に基づいて、前記マッハツェンダ変調器における光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を取得する処理と、を実行させる光変調器の試験プログラムである。取得された電圧をマッハツェンダ変調器に印加することで、位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
(10)複数のマッハツェンダ変調器と、記憶部と、を具備し、前記複数のマッハツェンダ変調器は、電極とアーム導波路とを有し、前記電極は、前記アーム導波路に設けられ、前記記憶部は、前記複数のマッハツェンダ変調器ごとに、光の位相の変化量の範囲が所定の大きさになる電圧を記憶する光送信装置である。記憶された電圧をマッハツェンダ変調器に印加することで、位相の変化量の範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光変調器の製造方法、試験方法、および試験プログラム、ならびに光送信装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
<第1実施形態>
(光送信装置)
図1Aは、第1実施形態に係る光送信装置100を例示するブロック図である。
図1Aに示すように、光送信装置100は、制御部10、波長可変レーザ素子22、自動バイアス制御(ABC)回路24、ドライバIC(Integrated Circuit)26、および光変調器40を備える。
【0016】
波長可変レーザ素子22は、例えば半導体レーザ素子などを含む発光素子である。ABC回路24は、光変調器40に位相調整のための電圧を印加し、自動バイアス制御を行う。ドライバIC26は、光変調器40に変調信号を入力する。光変調器40は、波長可変レーザ素子22から入射される光を変調し、変調光を出射する。制御部10は、例えばパーソナルコンピュータ(PC:Personnel Computer)などのコンピュータを含む。
【0017】
図1Bは、制御部10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1Bに示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)30、RAM(Random Access Memory)32、記憶装置34(記憶部)、インターフェース36を備える。CPU30、RAM32、記憶装置34およびインターフェース36は、互いにバスなどで接続されている。RAM32は、プログラムおよびデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置34は、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスクドライブ(HHD:Hard Disc Drive)などである。記憶装置34は、後述の処理を実行するためのプログラム、および処理で得られる電圧などを記憶する。
【0018】
CPU30がRAM32に記憶されるプログラムを実行することにより、制御部10に、
図1Aに示す位相制御部12、レーザ制御部14、算出部15、変調制御部16および記憶制御部18が実現される。位相制御部12は、ABC回路24を制御し、ABC回路24が光変調器40に印加する電圧を調整する。レーザ制御部14は、波長可変レーザ素子22を制御する。算出部15は、後述のように透過率、位相変化量、および位相調整範囲などを算出する。変調制御部16は、ドライバIC26を制御する。記憶制御部18は、
図1Bに示したRAM32および記憶装置34を制御し、これらにデータを記憶させる。制御部10の各部は、回路などのハードウェアでもよい。
【0019】
(変調器)
図2Aは、光変調器40aを例示する平面図である。第1実施形態では、
図1Aの光変調器40として、光変調器40aを用いる。光変調器40aは、IQ(In-phase Quadrature modulator)変調器であり、基板41、2つの子マッハツェンダ変調器42aおよび42b、および親マッハツェンダ変調器44aを有する。基板41は、例えばセラミックなどで形成された絶縁基板である。基板41に、
図1AのABC回路24、ドライバIC26および不図示のレンズなどを設けることで、光変調器40aを含むモジュールを形成してもよい。
【0020】
基板41の上面に、半導体基板80、2つの終端素子78aおよび78bが搭載されている。終端素子78aおよび78bは、例えば終端抵抗およびキャパシタなどを含む。2つの子マッハツェンダ変調器42aおよび42b、親マッハツェンダ変調器44a、入力導波路50および出力導波路56は、半導体基板80に形成されている。半導体基板80は、4つの端面80a、80b、80cおよび80dを有する。端面80aと端面80bとは互いに対向する。端面80cと端面80dとは互いに対向する。
【0021】
入力導波路50の第1の端部は、半導体基板80の4つの端面のうち端面80aに位置する。入力導波路50の第2の端部は、カプラ58に接続されている。出力導波路56の第1の端部は、カプラ64に接続されている。出力導波路56の第2の端部は、半導体基板80の4つの端面のうち端面80bに位置する。カプラ58は、1入力2出力(1×2)の多モード干渉(MMI:Multi mode interference)カプラである。カプラ64は、2入力1出力(2×1)のMMIカプラである。カプラ58とカプラ64との間に、2つの子マッハツェンダ変調器42aおよび42bが並列に配置される。2つの子マッハツェンダ変調器42aおよび42bとカプラ64との間に、親マッハツェンダ変調器44aが配置される。
【0022】
(子マッハツェンダ変調器)
子マッハツェンダ変調器42aは、例えばIch側の変調器である。子マッハツェンダ変調器42bは、例えばQch側の変調器である。子マッハツェンダ変調器42aは、アーム導波路52a、54aおよび54b、変調電極66aおよび66b、位相調整電極68aおよび68b、グランド電極66cおよび68cを有する。アーム導波路54aは、例えばp側の導波路である。アーム導波路54bは、例えばn側の導波路である。
【0023】
アーム導波路52aの第1の端部は、カプラ58の2つの出力端のうち第1の出力端に接続される。アーム導波路52aの第2の端部は、カプラ60aの入力端に接続される。アーム導波路54a(第1アーム導波路)の第1の端部は、カプラ60aの2つの出力端のうちの第1の出力端に接続される。アーム導波路54aの第2の端部は、カプラ62aの2つの入力端のうち第1の入力端に接続される。アーム導波路54b(第2アーム導波路)の第1の端部は、カプラ60aの2つの出力端のうちの第2の出力端に接続される。アーム導波路54bの第2の端部は、カプラ62aの2つの入力端のうち第2の入力端に接続される。
【0024】
アーム導波路52aは、カプラ58側で屈曲する。アーム導波路54aおよび54bは、カプラ60a側で屈曲し、カプラ62a側で屈曲する。これら屈曲した部分以外において、アーム導波路52a、54aおよび54bは互いに平行であり、かつ半導体基板80の端面80cと平行である。
【0025】
変調電極66aおよび位相調整電極68aは、アーム導波路54aの上に設けられている。変調電極66aと位相調整電極68a(第1電極)とは、互いに離間し、カプラ60a側からカプラ62a側に向けて順に並ぶ。変調電極66bおよび位相調整電極68bは、アーム導波路54bの上に設けられている。変調電極66bと位相調整電極68b(第2電極)とは、互いに離間し、カプラ60a側からカプラ62a側に向けて順に並ぶ。
【0026】
アーム導波路54aおよび54bの延伸方向とは交差する方向において、変調電極66aと変調電極66bとは対向する。グランド電極66cは、変調電極66aと変調電極66bとの間に位置する。位相調整電極68aと位相調整電極68bとは対向する。グランド電極68cは、位相調整電極68aと位相調整電極68bとの間に位置する。変調電極66aおよび66b、位相調整電極68aおよび68b、グランド電極66cおよび68cは、アーム導波路54aおよび54bと同じ方向に延伸し、半導体基板80の端面80cに平行である。
【0027】
配線72aおよび74aは、変調電極66aに電気的に接続される。配線72aは、変調電極66aの第1の端部から、半導体基板80の端面80aまで延伸する。配線74aは、変調電極66aの第2の端部から、半導体基板80の端面80cまで延伸する。配線72bおよび74bは、変調電極66bに電気的に接続される。配線72bは、変調電極66bの第1の端部から端面80aまで延伸する。配線74bは、変調電極66bの第2の端部から端面80cまで延伸する。配線72cおよび74cは、グランド電極66cに電気的に接続される。配線72cは、グランド電極66cの第1の端部から端面80aまで延伸する。配線74cは、グランド電極66cの第2の端部から端面80cまで延伸する。
【0028】
変調電極66aは、配線72aを介して、
図1Aに示したドライバIC26と電気的に接続される。変調電極66bは、配線72bを介してドライバIC26と電気的に接続される。グランド電極66cは、配線72cを介してドライバIC26と電気的に接続される。配線74a、74bおよび74cは、ボンディングワイヤにより終端素子78aに電気的に接続される。
【0029】
配線75aは、位相調整電極68aに電気的に接続されている。配線75bは、位相調整電極68bに電気的に接続されている。配線75cは、グランド電極68cに電気的に接続されている。配線75a、75bおよび75cは、端面80cまで延伸する。位相調整電極68aは、配線75aを介して、ABC回路24と電気的に接続される。位相調整電極68bは、配線75bを介してABC回路24と電気的に接続される。グランド電極68cは、配線75cを介してABC回路24と電気的に接続される。
【0030】
子マッハツェンダ変調器42bは、アーム導波路52b、54cおよび54d、変調電極66dおよび66e、位相調整電極68dおよび68e、グランド電極66fおよび68fを有する。アーム導波路54c(第1アーム導波路)は、例えばp側の導波路である。アーム導波路54d(第2アーム導波路)は、例えばn側の導波路である。
【0031】
アーム導波路52bの第1の端部は、カプラ58の第2の出力端に接続される。アーム導波路52bの第2の端部は、カプラ60bの入力端に接続される。アーム導波路54cおよび54dは、カプラ60bとカプラ62bとに接続される。子マッハツェンダ変調器42bのアーム導波路の長さは、子マッハツェンダ変調器42aの対応するアーム導波路の長さに等しい。子マッハツェンダ変調器42bのアーム導波路の形状は、子マッハツェンダ変調器42aの対応するアーム導波路の形状と同じである。
【0032】
変調電極66dおよび位相調整電極68d(第1電極)は、アーム導波路54cの上に設けられている。変調電極66eおよび位相調整電極68e(第2電極)は、アーム導波路54dの上に設けられている。グランド電極66fは、変調電極66dと変調電極66eとの間に設けられている。グランド電極68fは、位相調整電極68dと位相調整電極68eとの間に設けられている。
【0033】
配線72dおよび74dは、変調電極66dに電気的に接続されている。配線72eおよび74eは、変調電極66eに電気的に接続されている。配線72fおよび74fは、グランド電極66fに電気的に接続されている。配線72d、72eおよび72fは、半導体基板80の端面80aまで延伸する。変調電極66dは、配線72dを介してドライバIC26と電気的に接続される。変調電極66eは、配線72eを介してドライバIC26と電気的に接続される。グランド電極66fは、配線72fを介してドライバIC26と電気的に接続される。配線74d、74eおよび74fは、半導体基板80の端面80dまで延伸し、終端素子78bに電気的に接続される。
【0034】
配線75dは、位相調整電極68dに電気的に接続されている。配線75eは、位相調整電極68eに電気的に接続されている。配線75fは、グランド電極68fに電気的に接続されている。配線75d、75eおよび75fは、端面80dまで延伸する。位相調整電極68dは、配線75dを介してABC回路24と電気的に接続される。位相調整電極68eは、配線75eを介してABC回路24と電気的に接続される。グランド電極68fは、配線75fを介してABC回路24と電気的に接続される。
【0035】
変調電極66a、66b、66dおよび66eの長さ、グランド電極66cおよび66fの長さは、互いに等しい。位相調整電極68a、68b、68dおよび68eの長さは、互いに等しく、変調電極の長さより小さい。グランド電極68cおよび68fの長さは互いに等しく、位相調整電極の長さより小さい。
【0036】
(親マッハツェンダ変調器)
親マッハツェンダ変調器44aは、アーム導波路55aおよび55b、位相調整電極70aおよび70b、ならびにグランド電極70cを有する。アーム導波路55a(第1アーム導波路)の第1の端部は、カプラ62aの出力端に接続されている。アーム導波路55b(第2アーム導波路)の第1の端部は、カプラ62bの出力端に接続されている。アーム導波路55aおよび55bそれぞれの第2の端部は、カプラ64の入力端に接続されている。アーム導波路55aおよび55bは、子マッハツェンダ変調器に近い側では半導体基板80の端面80cに平行であり、カプラ64に近い側では屈曲する。
【0037】
位相調整電極70a(第1電極)は、アーム導波路55aの上に設けられている。位相調整電極70b(第2電極)は、アーム導波路55bの上に設けられている。グランド電極70cは、アーム導波路55aとアーム導波路55bとの間に設けられている。位相調整電極70aおよび70b、グランド電極70cは、アーム導波路と同じ方向に延伸し、端面80cに平行である。
【0038】
配線76aは、位相調整電極70aの端部に電気的に接続され、端面80cまで延伸する。配線76bは、位相調整電極70bの端部に電気的に接続され、端面80dまで延伸する。配線76cは、グランド電極70cの端部に電気的に接続され、端面80cまで延伸する。位相調整電極70aは、配線76aを介してABC回路24と電気的に接続される。位相調整電極70bは、配線76bを介してABC回路24と電気的に接続される。グランド電極70cは、配線76cを介してABC回路24と電気的に接続される。
【0039】
図2Bは、
図2Aの線A-Aに沿った断面図であり、子マッハツェンダ変調器42aの断面を図示している。子マッハツェンダ変調器42bおよび親マッハツェンダ変調器44aも、子マッハツェンダ変調器42aと同様の構成を有する。
【0040】
図2Bに示すように、半導体基板80の上面に、クラッド層82(第1半導体層)が設けられている。クラッド層82は、2つの位置において、半導体基板80とは反対側(図中の上方)に突出する。当該突出部分に、コア層84、クラッド層86、およびコンタクト層88が、順に積層されている。クラッド層82、コア層84、クラッド層86、およびコンタクト層88が、メサ状のアーム導波路54aおよび54bを形成する。クラッド層86およびコンタクト層88は、第2半導体層に対応する。
【0041】
半導体基板80は、例えば半絶縁性のインジウムリン(InP)で形成されている。クラッド層82は、例えば厚さ800nmのn型InP(n-InP)で形成されている。クラッド層86は、例えば厚さ1300nmのp-InPで形成されている。コンタクト層88は、例えば厚さ200nmのp-InGaAsで形成されている。n型のクラッド層82には、例えばシリコン(Si)がドープされている。p型のクラッド層86およびコンタクト層88には、例えば亜鉛(Zn)がドープされている。
【0042】
コア層84は、例えば多重量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)を有する。コア層84は、交互に積層された複数の井戸層とバリア層とを含む。井戸層は、例えばアルミニウムガリウムインジウム砒素(AlGaInAs)で形成される。バリア層は、例えばアルミニウムインジウム砒素(AlInAs)で形成される。コア層84の厚さは、例えば500nmである。
【0043】
半導体基板80の上面、クラッド層82の表面、アーム導波路54aおよび54bの側面および上面は、絶縁膜81に覆われる。絶縁膜81は、例えば酸化シリコン(SiO2)などの絶縁体で形成されている。樹脂層85は、例えばベンゾシクロブテン(BCB:Benzocyclobutene)などで形成され、絶縁膜81の表面を覆う。絶縁膜81および樹脂層85は、クラッド層82の上面のうちアーム導波路間の部分に開口部を有し、アーム導波路54aおよび54bの上に開口部を有する。
【0044】
変調電極66aは、アーム導波路54aの上に設けられている。変調電極66bは、アーム導波路54bの上に設けられている。変調電極66aおよび66bは、絶縁膜81および樹脂層85の開口部から露出するコンタクト層88と電気的に接続される。グランド電極66cは、クラッド層82の上に設けられ、絶縁膜81および樹脂層85から露出するクラッド層82と電気的に接続される。
図2Aに示す位相調整電極68aおよび68bも、コンタクト層88の上面に設けられている。グランド電極68cも、クラッド層82の上面に設けられている。
【0045】
変調電極および位相調整電極は、それぞれオーミック電極層および配線層を有する。オーミック電極層は、例えば白金(Pt)の層、チタン(Ti)の層、白金(Pt)の層、および金(Au)の層を含む。これらの層は、コンタクト層88側から順に積層されている。配線層は、例えばAuなどで形成され、オーミック電極層の上面に接触する。グランド電極は、例えば合金層およびAu層を有する。合金層は、例えばAu、ゲルマニウム(Ge)およびニッケル(Ni)の合金で形成される。Au層は、合金層の上面に接触する。
図2Aに示した配線は、
図2Bの樹脂層85の上に設けられ、例えばAuなどの金属で形成される。
【0046】
(光送信装置の動作)
次に光送信装置100の動作について説明する。
図1Aに示す制御部10のレーザ制御部14は、波長可変レーザ素子22に光を出射させる。
図2Aに示す光変調器40aの入力導波路50に入射した光は、カプラ58において分岐し、アーム導波路52aおよび52bを伝搬する。アーム導波路52aを伝搬する光は、カプラ60aにおいて分岐し、アーム導波路54aおよび54bを伝搬する。アーム導波路52bを伝搬する光は、カプラ60bにおいて分岐し、アーム導波路54cおよび54dを伝搬する。
【0047】
図1Aの制御部10の変調制御部16は、送信データに基づいて変調信号を生成し、ドライバIC26に入力する。ドライバIC26から、子マッハツェンダ変調器42aの変調電極66aおよび66bに変調信号が入力される。ドライバIC26から、子マッハツェンダ変調器42bの変調電極66dおよび66eに、変調信号が入力される。変調信号の入力により、アーム導波路の屈折率が変化し、光の変調が行われる。
【0048】
アーム導波路54aを伝搬する変調光と、アーム導波路54bを伝搬する変調光とは、カプラ62aで合波する。合波後の変調光は、親マッハツェンダ変調器44aのアーム導波路55aを伝搬する。アーム導波路54cを伝搬する変調光と、アーム導波路54dを伝搬する変調光とは、カプラ62bで合波する。合波後の変調光は、親マッハツェンダ変調器44aのアーム導波路55bを伝搬する。アーム導波路55aを伝搬する光と、アーム導波路55bを伝搬する光とは、カプラ64で合波し、出力導波路56を伝搬する。変調光は、出力導波路56から、光変調器40aの外に出射される。
【0049】
制御部10の位相制御部12は、ABC回路24を用いて自動バイアス制御を行い、光の位相を調整する。ABC回路24が、位相調整電極に電圧を印加することで、アーム導波路の屈折率が変化し、光路長が変化する。光路長の変化により、アーム導波路を伝搬する光の位相が変化する。位相制御部12は、親マッハツェンダ変調器44aにおける光の位相と、子マッハツェンダ変調器42aおよび42bそれぞれにおける光の位相とを、独立に制御することができる。
【0050】
子マッハツェンダ変調器42aに変調信号が入力されていない状態で、アーム導波路54aを伝搬する光と、アーム導波路54bを伝搬する光との位相差がπ(rad)、またはπ±2π×n(nは負または正の整数)になる。すなわち、子マッハツェンダ変調器42aは消光点に調整される。子マッハツェンダ変調器42bも消光点に調整される。消光点に調整された状態が、子マッハツェンダ変調器の動作点である。
【0051】
親マッハツェンダ変調器44aのアーム導波路55aを伝搬する変調光と、アーム導波路55bを伝搬する変調光との位相差が、0.5π(rad)、または0.5πに等価な値になる。0.5πに等価な値は、0.5π±2π×n、1.5π±2π×nである(nは負または正の整数)。アーム導波路55aを伝搬する変調光と、アーム導波路55bを伝搬する変調光とが、直交する。
【0052】
アーム導波路52aおよび52bのように対になる2つのアーム導波路間の位相差φは、次式のように、初期位相差φ0と、位相変化量Δφとの和として表される。
【数1】
【0053】
初期位相差φ0は、光変調器40aのアーム導波路間の光路長の差などによって決まる。アーム導波路内での光の波長λは、例えば484nm(真空中では1550nm)である。子マッハツェンダ変調器のアーム導波路54a、54b、54cおよび54dそれぞれの長さは、例えば6mmであり、波長λの1万倍以上である。製造誤差などでアーム導波路の光路長にばらつきが生じる。2つのアーム導波路間の光路長の差ΔPと、2つのアーム導波路間の光の初期位相差φ0との関係は、整数mを用いて次の式で表される。
【数2】
【0054】
アーム導波路52aおよび52bのように対になる2つのアーム導波路間の光路長の差ΔPが、設計された寸法の1万分の1以上になることがある。この場合、光路長の差ΔPが、光の波長λ以上になる。初期位相差φ0は、0(rad)以上、2π(rad)以下の範囲に分布する。
【0055】
光送信装置100の動作中にも、初期位相差φ0は変化することがある。光変調器40aに加わる応力および温度変化などにより、アーム導波路の光路長が変化するためである。動作中の初期位相差φ0の変化量は、例えば-2πから2πまでの範囲である。
【0056】
位相変化量Δφは、アーム導波路を伝搬する光の位相の変化量である。位相変化量Δφは、ABC回路24から位相調整電極に電圧を印加し、アーム導波路の光路長が変化することで調整される。初期位相差φ0に応じて、位相制御部12は、ABC回路24から位相調整電極に印加される電圧を変化させる(自動バイアス制御)。自動バイアス制御における位相変化量は、初期位相差および動作中の位相変化を考慮して定められる。
【0057】
位相調整電極に印加する電圧を掃引した際に、位相変化量が取りうる範囲を位相調整範囲とする。子マッハツェンダ変調器42aおよび42bの動作点を消光点に調整するために、子マッハツェンダ変調器42aおよび42bそれぞれの位相調整範囲は、例えば-3πから3πまでの6πの範囲であることが好ましい。親マッハツェンダ変調器44aにおける2つの変調光の位相を直交させるため、親マッハツェンダ変調器44aの位相調整範囲は、例えば-2.5πから2.5πまでの5πの範囲であることが好ましい。
【0058】
(電圧)
ABC回路24が、子マッハツェンダ変調器42aに印加する電圧について説明する。アーム導波路54a上の位相調整電極68aに印加される電圧Vpは、中心電圧Vcc(第1電圧)および差動電圧Vdc(第2電圧)を用いて、次のように表される。
【数3】
アーム導波路54b上の位相調整電極68bに印加される電圧Vnは、次式で表される。
【数4】
【0059】
電圧Vpと電圧Vnとの差は2Vdcである。位相制御部12は、中心電圧Vccを一定値に固定し、差動電圧Vdcを変化させることで、電圧VpおよびVnを変化させ、子マッハツェンダ変調器42aの動作点を調整する。子マッハツェンダ変調器42bの位相調整電極68dに電圧Vpが印加され、位相調整電極68eに電圧Vnが印加される。
【0060】
ABC回路24が、親マッハツェンダ変調器44aに印加する電圧について説明する。アーム導波路55a上の位相調整電極70aに印加される電圧VIは、中心電圧Vcp(第1電圧)および差動電圧Vdp(第2電圧)を用いて、次のように表される。
【数5】
アーム導波路55b上の位相調整電極70bに印加される電圧VQは、次式で表される。
【数6】
【0061】
電圧VIと電圧VQとの差は2Vdpである。位相制御部12は、中心電圧Vcpを一定値に固定し、差動電圧Vdpを変化させることで、電圧VIおよびVQを変化させ、親マッハツェンダ変調器44aの動作点を調整する。
【0062】
子マッハツェンダ変調器の電圧VpおよびVnを例に、電圧の大きさについて説明する。電圧VpおよびVnの最小値をVmin、最大値をVmaxとする。差動電圧Vdcの調整範囲が広いほど、位相調整範囲も広くなる。差動電圧Vdcの調整範囲を広げるため、中心電圧Vccおよび差動電圧Vdcを例えば以下のように定める。
Vcc=(Vmin+Vmax)/2
Vdcの調整範囲:-(Vmax-Vmin)/2から(Vmax-Vmin)/2までのVmax-Vminの範囲
最小値Vminおよび最大値Vmaxは、例えば消費電力、および光変調器40の耐圧などに応じて定められる。Vmin=0V、Vmax=20Vの場合、Vcc=10Vになる。差動電圧Vdcの範囲は-10Vから10Vである(-Vcc≦Vdc≦Vcc)。子マッハツェンダ変調器42b、および親マッハツェンダ変調器44aに印加される電圧についても、上記と同様にすることができる。
【0063】
図3は、子マッハツェンダ変調器42aにおける差動電圧と位相変化量Δφとの関係を例示する図である。横軸は差動電圧Vdcを表し、縦軸は位相変化量Δφを表す。破線は、アーム導波路54aにおける位相変化量を表す。点線は、アーム導波路54bにおける位相変化量を表す。実線は、子マッハツェンダ変調器42aの位相変化量を表す。子マッハツェンダ変調器42aの位相変化量は、アーム導波路間の位相差(アーム導波路54aにおける位相変化量-アーム導波路54bおける位相変化量)である。中心電圧Vcc=10V、差動電圧Vdcの範囲は-10Vから10Vである。
【0064】
図3に示すように、差動電圧Vdcを正の側に高くするほど、アーム導波路54aにおける位相変化量は正の側に大きくなる。アーム導波路54bにおける位相変化量は、0に近づく。実線で示す位相変化量(位相差)は、正の側に増加する。差動電圧Vdcを負の側に高くするほど、アーム導波路54bにおける位相変化量は正の側に大きくなる。アーム導波路54aにおける位相変化量は、0に近づく。位相差は、負の側に増加する。差動電圧Vdcが-10Vから10Vの範囲をとることで、位相差はおよそ‐9πから9πまでの範囲になる。
【0065】
図3の場合、子マッハツェンダ変調器42aの位相変化量Δφの範囲(位相調整範囲)は、およそ‐9πから9πまでの範囲であり、子マッハツェンダ変調器に要求される位相調整範囲-3πから3πまでの6πを越える。消費電力を低下させ、かつ位相調整範囲を所定の大きさとするため、中心電圧Vcを10Vより低い値、例えば7Vとする。差動電圧Vdcは、-7Vから7Vの範囲などとする。
【0066】
マッハツェンダ変調器ごとに、電圧に対する位相の変化の割合(位相調整効率)に、ばらつきが生じることがある。位相調整効率の違いは、クラッド層82および86、コンタクト層88などへの、ドーパントの熱拡散量のばらつきに起因すると考えられる。ドーパントの熱拡散量に違いが生じることで、電圧を印加した際にコア層84に発生する電界の強度にも違いが生じる。電界強度に違いがあると、屈折率にも違いが生じ、位相変化量も異なる大きさとなる。ドーパントの熱拡散量のばらつきによって、バンドギャップエネルギーもばらつくため、位相変化量も変化する。
【0067】
位相調整効率のばらつきは、1つの光変調器40a内の子マッハツェンダ変調器42aと子マッハツェンダ変調器42bとの間で生じることがある。また、複数の光変調器40a間で、位相調整効率のばらつきが生じることもある。
【0068】
2つの光変調器40a-1および40a-2を例とする。光変調器40a-1および40a-2は、それぞれ
図2Aの構成を有する。まず、子マッハツェンダ変調器間の位相調整効率について説明する。
図4Aおよび
図4Bは、電圧と位相変化量との関係を例示する図である。横軸は、子マッハツェンダ変調器の位相調整電極に印加される電圧(VpおよびVn)である。縦軸は、アーム導波路における位相変化量である。
【0069】
図4Aは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aのアーム導波路における
電圧と位相変化量
との関係を示す。実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54a)の位相変化量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54b)の位相変化量を表す。
図4Bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bのアーム導波路における
電圧と位相変化量
との関係を示す。実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54c)の位相変化量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54d)の位相変化量を表す。位相調整効率の違いに起因して、
図4Aおよび
図4Bそれぞれにおいて、p側のアーム導波路の位相変化量は、n側のアーム導波路の位相変化量とわずかに異なる。子マッハツェンダ変調器間での位相変化量の違いは、アーム導波路間の位相変化量の違いよりも大きい。
【0070】
図4Aおよび
図4Bにおいて同一の電圧をかけた場合を比較すると、
図4Aの位相変化量Δφは小さく、
図4Bの位相変化量Δφは大きい。例えば電圧が10Vの場合、
図4Aの2つのアーム導波路54aおよび54bの位相変化量Δφは約1.5πである。
図4Bの2つのアーム導波路54cおよび54dの位相変化量Δφは約2.5πである。
図4Bに示す子マッハツェンダ変調器42bの位相調整効率は、
図4Aに示す子マッハツェンダ変調器42aの位相調整効率より高い。このように、同一の光変調器40a-1内において、ドーパントの熱拡散量にばらつきが生じることで、位相調整効率がばらつく。
【0071】
図5Aおよび
図5Bは、差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。横軸は差動電圧Vdcを表す。縦軸は位相変化量Δφを表す。中心電圧Vccは7Vである。
【0072】
図5Aは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aにおける位相変化量を示す。破線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54a)の位相変化量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54b)の位相変化量を表す。実線は、子マッハツェンダ変調器42aにおける位相変化量(アーム導波路間の位相差)である。子マッハツェンダ変調器42aは差動駆動されるため、Vdc=0を基準に、位相変化量は対称である。差動電圧Vdcを-7Vから7Vまで掃引する場合、位相変化量は-3π以上、3π以下である。
【0073】
図5Bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bにおける位相変化量を示す。破線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54c)の位相変化量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54d)の位相変化量を表す。実線は、子マッハツェンダ変調器42bにおける位相変化量を表す。子マッハツェンダ変調器42bの位相調整効率は、子マッハツェンダ変調器42aよりも高い。したがって、
図5Bにおける位相変化量は、
図5Aに比べて大きく、-4π以上、4π以下である。
【0074】
位相調整効率の小さな子マッハツェンダ変調器42aにおいても、位相変化量の範囲(位相調整範囲)を、-3π以上、3π以下など所定の大きさとするためには、
図5Aのように中心電圧Vcc=7V、差動電圧Vdcを-7Vから7Vまでの範囲とすればよい。しかし、
図5Bに示すように、位相調整効率の大きな子マッハツェンダ変調器42bの位相調整範囲は、-4πから4πの8πになり、所定の範囲6πを超える。光の吸収損失が増加する。
【0075】
位相調整効率と、アーム導波路における光の吸収損失との間には、正の相関がある。アーム導波路の屈折率の変化と光吸収量との間には、クラマース・クローニッヒの関係が成立するためである。位相調整効率が小さいほど、吸収損失は小さくなる。位相調整効率が大きいほど、吸収損失は大きくなる。
【0076】
図6Aおよび
図6Bは、電圧と光の吸収損失の変化量との関係を例示する図である。横軸は、子マッハツェンダ変調器の位相調整電極に印加される電圧(VpおよびVn)である。縦軸は、光の吸収損失の変化量である。
【0077】
図6Aは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aのアーム導波路における吸収損失の変化量を示す。実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54a)の吸収損失の変化量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54b)の吸収損失の変化量を表す。
【0078】
図6Bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bのアーム導波路における吸収損失の変化量を示す。実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54c)の吸収損失の変化量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54d)の吸収損失の変化量を表す。
【0079】
図6Aおよび
図6Bにおいて同一の電圧をかけた場合を比較すると、
図6Aの吸収損失の変化量は小さく、
図6Bの吸収損失の変化量は大きい。例えば電圧が15Vの場合、
図6Aの吸収損失の変化量は1dB未満である。
図6Bの吸収損失の変化量は3dBを上回る。吸収損失は、電圧に対して非線形に増加し、電圧が高いほど大きく増加する。
【0080】
位相調整効率の大きな子マッハツェンダ変調器42b、および位相調整効率の小さな子マッハツェンダ変調器42aの両方において、位相調整範囲を例えば-3πから3πまでの6πなど、所定の大きさとする。そのためには、子マッハツェンダ変調器42aおよび42bの両方に対し、中心電圧Vccを7Vとし、差動電圧Vdcを-7Vから7Vの範囲とすればよい。しかし、
図5Bに示すように、子マッハツェンダ変調器42bの位相調整範囲は、所定の範囲6πを超える。
図6Bに示す子マッハツェンダ変調器42bの吸収損失の変化量は、子マッハツェンダ変調器42aよりも大きくなる。すなわち、位相調整効率の小さな子マッハツェンダ変調器42aに応じて電圧を定めると、位相調整効率の大きな子マッハツェンダ変調器42bにおいては、位相調整範囲が過大になり、かつ吸収損失が増加してしまう。光の挿入損失が増大し、後述のように消光比が低下する。
【0081】
図4Aから
図6Bまでにおいて、1つの光変調器40a-1における2つの子マッハツェンダ変調器42aと子マッハツェンダ変調器42bとについて説明した。複数の光変調器間においても、位相調整効率が異なる。
【0082】
光変調器40a-2は、光変調器40a-1とは別の変調器である。光変調器40a-2の子マッハツェンダ変調器42aは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aと同程度の位相調整効率および吸収損失を有するものとする(
図4A、
図5Aおよび
図6A参照)。光変調器40a-2の子マッハツェンダ変調器42bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bと同程度の位相調整効率および吸収損失を有するものとする(
図4B、
図5Bおよび
図6B参照)。光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aは、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aに比べ、高い位相調整効率、および大きな吸収損失を有する。
【0083】
図7Aおよび
図7Bは、差動電圧と位相変化量との関係を例示する図である。横軸は差動電圧Vdpを表す。縦軸は位相変化量Δφを表す。中心電圧Vcpは7.4Vである。
【0084】
図7Aは、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aにおける位相変化量を示す。破線は、Ich側のアーム導波路(アーム導波路55a)の位相変化量を表す。点線は、Qch側のアーム導波路(アーム導波路55b)の位相変化量を表す。実線は、親マッハツェンダ変調器44aにおける位相変化量(アーム導波路55aの位相変化量-アーム導波路55bの位相変化量)を表す。差動電圧Vdcが-7Vから7.4Vの範囲をとることで、位相変化量は-2.5π以上、2.5π以下の範囲になる。
【0085】
図7Bは、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44
aにおける位相変化量を示す。光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aの位相調整効率は、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aよりも高い。差動電圧Vdcが-5.5Vから5.1Vの範囲をとることで、位相変化量は-2.5π以上、2.5π以下の範囲になる。
図7Bにおける位相変化量は、
図7Aに比べて大きくなる。例えばVdp=4Vの場合、
図7Aにおける位相変化量は、およそπである。
図7Bにおける位相変化量は、およそ2πである。
【0086】
前述のように、位相調整効率と、アーム導波路における光の吸収損失との間には、正の相関がある。光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aに比べ、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aは、高い位相調整効率を有し、かつ大きな吸収損失を有する。位相調整効率の小さな光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aに応じて電圧を定めると、位相調整効率の大きな光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aにおいては、位相調整範囲が所定の範囲(5π)より大きくなり、かつ吸収損失が増加してしまう。
【0087】
同一の光変調器40a-1内において、子マッハツェンダ変調器の間で位相調整効率に違いがある。光変調器40a-1と光変調器40a-2との間でも位相調整効率に違いがある。位相変化量を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制するためには、マッハツェンダ変調器ごとに、位相調整電極に印加する電圧を最適化することが重要である。
【0088】
(製造方法)
図8は、光変調器40aの製造方法を例示するフローチャートであり、電圧を最適化する工程を含む。
図8に示すように、マッハツェンダ変調器を形成する(ステップS1からS3)。有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)などにより、ウェハ(半導体基板80)の上面に、クラッド層82をエピタキシャル成長する。クラッド層82をエッチングすることで、アーム導波路に対応する突出部を形成する。当該突出部にコア層84、クラッド層86、およびコンタクト層88を順にエピタキシャル成長する(ステップS1)。原料ガスにドーパントを添加することで、n型のクラッド層82、p型のクラッド層86およびコンタクト層88が形成される。ドーパントの熱拡散量にばらつきがあると、
図4Aおよび
図4B、
図7Aおよび
図7Bに示したように位相調整効率もばらつく。
【0089】
ドライエッチングなどで、
図2Bに示したようなメサ状のアーム導波路を形成する(ステップS2)。絶縁膜81および樹脂層85を形成する。ドライエッチングなどで絶縁膜81および樹脂層85に開口部を形成する。真空蒸着などにより電極(変調電極、位相調整電極およびグランド電極)を形成する(ステップS3)。半導体基板80に、子マッハツェンダ変調器42aおよび42b、ならびに親マッハツェンダ変調器44aが形成される。ウェハをダイシングし、複数の光変調器40aを形成する。
【0090】
複数の光変調器40aのそれぞれを基板41に配置し、ABC回路24およびドライバIC26と電気的に接続する。光変調器40aごとに試験を行う。具体的には、子マッハツェンダ変調器42aの試験を行い、位相調整電極68aおよび68bに印加する電圧を最適化する(ステップS4)。子マッハツェンダ変調器42bの試験を行い、位相調整電極68dおよび68eに印加する電圧を最適化する(ステップS5)。親マッハツェンダ変調器44aの試験を行い、位相調整電極70aおよび70bに印加する電圧を最適化する(ステップS6)。以上の工程で光変調器40aが形成される。
【0091】
(試験)
図9は、試験を例示するフローチャートである。
図8のステップS4、S5およびS6のそれぞれは、
図9に示す試験を行う工程である。
【0092】
まず、複数の光変調器40aのうち光変調器40a-1の試験について説明する。光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aの試験、子マッハツェンダ変調器42bの試験、および親マッハツェンダ変調器44aの試験を順に行う。
【0093】
子マッハツェンダ変調器42aの試験(
図8のステップS4)を行う際、制御部10の位相制御部12は、子マッハツェンダ変調器42bの位相調整電極68bに電圧を印加し、子マッハツェンダ変調器42bを消光点に調整する。制御部10のレーザ制御部14は、波長可変レーザ素子22を駆動し、波長可変レーザ素子22から、光変調器40a-1に光を入射する。不図示の受光素子などが、子マッハツェンダ変調器42aの出射光を受光する。制御部10は、入射光の強度と出射光の強度をと比較することで、アーム導波路における光の透過率を測定する。
【0094】
制御部10は、ABC回路24から子マッハツェンダ変調器42aの位相調整電極68aに印加する電圧を掃引しながら、子マッハツェンダ変調器42aのアーム導波路54aにおける光の透過率(第1透過率)を測定する。制御部10は、ABC回路24から位相調整電極68bに印加する電圧を掃引しながら、子マッハツェンダ変調器42aのアーム導波路54bにおける光の透過率(第1透過率)を測定する(
図9のステップS10)。制御部10の算出部15は、アーム導波路54aにおける光の透過率(第2透過率)、およびアーム導波路54bにおける光の透過率(第2透過率)を算出する(ステップS12)。
【0095】
算出部15は、ステップS12で計算された透過率が、ステップS10で測定された透過率に近づくように、透過率の最適化を行う(ステップS14)。透過率の最適化に基づき、算出部15は、位相調整電極に印加される電圧と、アーム導波路における位相変化量との関係を取得する(ステップS16)。記憶制御部18は、電圧と位相変化量との関係に基づき、位相調整範囲が所定の大きさとなるような電圧を取得し、例えば記憶装置34に当該電圧を記憶させる(ステップS18)。
【0096】
試験について、具体的に説明する。算出部15は、透過率Tを、吸収損失の変化量ΔL1、初期位相差φ0、および位相変化量Δφの関数として計算する。算出部15は、次式のように、1つのアーム導波路における位相変化量Δφを、位相調整電極への印加電圧Vの関数として算出する。
【数7】
【0097】
係数の初期値の例を以下に示す。
k1=3×10-1(π/V)、k2=3×10-2(π/V2)、k3=3×10-3(π/V3)、k4=1×10-4(π/V4)、k5=1×10-6(π/V5)、k6=1×10-8(π/V6)
【0098】
図10Aは、算出された位相変化量を例示する図である。横軸は、子マッハツェンダ変調器42aの位相調整電極68aおよび68bに印加される電圧を表す。縦軸は、位相変化量Δφを表す。実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54a)の位相変化量、およびn側のアーム導波路(アーム導波路54b)の位相変化量を表す。算出部15は、アーム導波路54aおよび54bに対して同じ関数(数7)および同じ係数(初期値)を用いて計算を行うため、アーム導波路間で位相変化量Δφも等しくなる。
【0099】
算出部15は、次式のように、アーム導波路における光の吸収損失の変化量ΔL1を、位相調整電極への印加電圧Vの関数として算出する。
【数8】
【0100】
係数a1およびa2の初期値を以下に示す。
a1=1×10-3(dB)、a2=2(V)
【0101】
図10Bは、算出された吸収損失の変化量を例示する図である。横軸は、子マッハツェンダ変調器42aの位相調整電極68aおよび68bに印加される電圧を表す。縦軸は、吸収損失の変化量ΔL1を表す。アーム導波路54aおよび54bに対して同じ関数(数8)および同じ係数を用いて計算を行うため、吸収損失の変化量ΔL1も実線で示すように同じになる。
【0102】
算出部15は、透過率Tを算出する(ステップS12)。次式のように、各アーム導波路における透過率Tは、吸収損失の変化量ΔL1、初期位相差φ0、および位相変化量Δφの関数として表される。
【数9】
【0103】
位相変化量Δφは、数7で表される。吸収損失の変化量ΔL1は、数8で表される。数9の余弦関数(cos)内の符号は、p側のアーム導波路に対してはプラスであり、n側のアーム導波路に対してはマイナスである。初期位相差φ0は、次式で表される。数10中のacosは逆余弦関数である。
【数10】
【0104】
T0は、印加電圧が0Vのときの透過率であり、ステップS10で測定される。位相調整電極68aへの印加電圧を掃引したときに、透過率に最初に現れる極点が極小点の場合、初期位相差φ0の符号はプラスとし、極大点の場合はマイナスとする。子マッハツェンダ変調器42aの例では、φ0=0.28πとする。
【0105】
図11Aは、算出された透過率を例示する図である。
図11Bは、測定された透過率と最適化後の透過率とを例示する図である。
図11Aおよび
図11Bの横軸は、子マッハツェンダ変調器42aの位相調整電極に印加される電圧を表す。縦軸は、光の透過率を表す。
【0106】
図11Aの実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54a)の透過率を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54b)の透過率を表す。
図11Aに示す透過率は、算出部15が、
図9のステップS12において、数9および初期値を用いて算出したものである。
図11Bの実線は、アーム導波路54aの最適化後の透過率を表す。点線は、アーム導波路54bの最適化後の透過率を表す。円は、アーム導波路54aの透過率の測定結果を表す。三角は、アーム導波路54bの透過率の測定結果を表す。
【0107】
図9のステップS14における最適化とは、ステップS12で算出される透過率を、ステップS10で測定される透過率に近づけ、両者の誤差を小さくすることである。
図11Bに実線で示す透過率は、
図11Aに実線で示す透過率から変化し、
図11B中の円で示す測定された透過率に近づく。
図11Bに破線で示す透過率は、
図11Aに破線で示す透過率から変化し、
図11B中の三角で示す測定された透過率に近づく。
【0108】
透過率を最適化することで、透過率の式(数9)に含まれる初期位相差φ0、位相変化量Δφおよび吸収損失の変化量ΔL1も最適化される。位相変化量Δφおよび吸収損失の変化量ΔL1が、電圧との関係をより正確に示す関数となる(
図9のステップS16)。
【0109】
より詳細には、位相変化量Δφの式(数7)中の係数k1からk6、および変化量ΔL1の式(数8)中の係数a1およびa2が、初期値変化する。最適化後の係数を以下に示す。
アーム導波路54aに対する係数
k1=1.32×10-1(π/V)、k2=1.90×10-2(π/V2)、k3=3.33×10-3(π/V3)、k4=1.43×10-4(π/V4)、k5=9.50×10-7(π/V5)、k6=9.50×10-8(π/V6)、a1=1×10-3(dB)、a2=2.5(V)
アーム導波路54bに対する係数
k1=1.40×10-1(π/V)、k2=2.00×10-2(π/V2)、k3=3.50×10-3(π/V3)、k4=1.50×10-4(π/V4)、k5=1.00×10-6(π/V5)、k6=1.00×10-7(π/V6)、a1=1.2×10-3(dB)、a2=2.4(V)
透過率の最適化後の初期位相差φ0は、0.25πである。
【0110】
図12Aは、最適化後の位相変化量を例示する図である。横軸、縦軸、実線および破線は、それぞれ
図4Aの対応するものと同様である。
図12Aに示すように、透過率の最適化により得られた係数を数7に代入して計算することで、
図4Aに近い位相変化量が得られる。
図12Bは、最適化後の吸収損失の変化量を例示する図である。横軸、縦軸、実線および破線は、それぞれ
図6Aの対応するものと同様である。
図12Bに示すように、透過率の最適化により得られた係数を数8に代入して計算することで、
図6Aに近い吸収損失の変化量が得られる。
【0111】
図13は、中心電圧と位相調整範囲との関係を例示する図である。横軸は、中心電圧Vccを表し、この例では0Vから10Vまで掃引される。中心電圧Vccの各値に対し、差動電圧Vdcは-Vccから
Vccまでの範囲とする。縦軸は、位相変化量の範囲(位相調整範囲)を表す。算出部15は、最適化後の係数k1からk6を数7に適用し、電圧ごとに、アーム導波路54aの位相変化量およびアーム導波路54bの位相変化量を算出する。算出部15は、アーム導波路54aの位相変化量とアーム導波路54bの位相変化量との差を算出し、子マッハツェンダ変調器42aにおける位相調整範囲を取得する。子マッハツェンダ変調器42aにおいては、位相調整範囲が6π(-3πから3πまで)であればよい。位相調整範囲が6πになるような、中心電圧Vccの最小値を求める。
図13に示すように、位相調整範囲を6πとするためには、中心電圧Vccが7Vであればよい。
図1Bに示す記憶装置34は、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧Vcを7Vと記憶する。
【0112】
次に、子マッハツェンダ変調器42bの試験を行う(
図8のステップS5)。制御部10の位相制御部12は、子マッハツェンダ変調器42aの位相調整電極に電圧を印加し、子マッハツェンダ変調器42aを消光点に調整する。制御部10は、ABC回路24から子マッハツェンダ変調器42bの位相調整電極に印加する電圧を掃引しながら、子マッハツェンダ変調器42bのアーム導波路54cおよび54dにおける光の透過率を測定する(
図9のステップS10)。制御部10の算出部15は、アーム導波路54cにおける光の透過率、およびアーム導波路54dにおける光の透過率を算出する(ステップS12)。
【0113】
算出部15は、ステップS12で計算された透過率が、ステップS10で測定された透過率に近づくように、最適化を行う(ステップS14)。算出部15は、位相調整電極に印加される電圧と、位相変化量との関係を取得する(ステップS16)。記憶制御部18は、電圧と位相変化量との関係に基づき、位相変化量の範囲が所定の大きさとなる電圧を取得し、記憶装置34に記憶させる(ステップS18)。
【0114】
図14は、測定された透過率と最適化後の透過率とを例示する図である。横軸は、子マッハツェンダ変調器42bの位相調整電極68dおよび68eに印加される電圧を表す。縦軸は、光の透過率を表す。実線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54c)の最適化後の透過率を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54d)の最適化後の透過率を表す。円は、アーム導波路54cの透過率の測定結果を表す。三角は、アーム導波路54dの透過率の測定結果を表す。透過率の最適化により、位相変化量および吸収損失の変化量が得られる。
【0115】
図15Aは、最適化後の位相変化量を例示する図である。横軸、縦軸、実線および点線は、それぞれ
図4Bの対応するものと同様である。
図15Aに示すように、最適化によって
図4Bに近い位相変化量が得られる。
図15Bは、最適化後の吸収損失の変化量を例示する図である。横軸、縦軸、実線および点線は、それぞれ
図6Bの対応するものと同様である。
図15Bに示すように、最適化によって、
図6Bに近い吸収損失の変化量が得られる。
【0116】
図16は、中心電圧と位相調整範囲との関係を例示する図である。横軸は、中心電圧Vccである。縦軸は、位相変化量の範囲(位相調整範囲)を表す。算出部15は、最適化後の係数k1からk6を数7に適用し、電圧ごとの位相調整範囲を算出する。
図16に示すように、子マッハツェンダ変調器42bにおいて、位相調整範囲を6πとするためには、中心電圧Vccが5.7Vであればよい。記憶装置34は、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧
Vccを5.7Vと記憶する。
【0117】
次に、親マッハツェンダ変調器44aの試験を行う(
図8のステップS6)。制御部10の位相制御部12は、子マッハツェンダ変調器42aおよび42bを最大透過点に設定する。制御部10は、ABC回路24から親マッハツェンダ変調器44aの位相調整電極70aに印加する電圧を掃引しながら、親マッハツェンダ変調器44aのアーム導波路55aにおける光の透過率(第1透過率)を測定する。制御部10は、位相調整電極70bに印加する電圧を掃引しながら、アーム導波路55bにおける光の透過率(第1透過率)を測定する(
図9のステップS10)。制御部10の算出部15は、アーム導波路55aにおける光の透過率(第2透過率)、およびアーム導波路55bにおける光の透過率(第2透過率)を算出する(ステップS12)。
【0118】
算出部15は、ステップS12で計算された透過率が、ステップS10で測定された透過率に近づくように、最適化を行う(ステップS14)。算出部15は、位相調整電極70aに印加される電圧と、アーム導波路55aにおける位相変化量との関係を取得する(ステップS16)。記憶制御部18は、電圧と位相変化量との関係に基づき、位相変化量の範囲が所定の大きさとなる電圧を取得し、記憶装置34に記憶させる(ステップS18)。
【0119】
親マッハツェンダ変調器44aにおける位相調整範囲は例えば5π(-2.5πから2.5π)であればよい。記憶装置34は、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aの位相調整範囲が5πになる中心電圧Vcpとして、7Vを記憶するものとする。
【0120】
次に、光変調器40a-1とは別の光変調器40a-2に対して試験を行う。各マッハツェンダ変調器における試験の工程は、光変調器40a-1の対応する試験の工程と同じである。光変調器40a-2の子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧として、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aと同じ7Vが得られたものとする。光変調器40a-2の子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧として、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bと同じ5.7Vが得られたものとする。
【0121】
光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aについても試験を行う。
図17は、測定された透過率と最適化後の透過率とを例示する図である。横軸は、親マッハツェンダ変調器44aの位相調整電極70aおよび70bに印加される電圧を表す。縦軸は、光の透過率を表す。実線は、Ich側のアーム導波路(アーム導波路55a)の最適化後の透過率を表す。点線は、Qch側のアーム導波路(アーム導波路55b)の最適化後の透過率を表す。円は、アーム導波路55aの透過率の測定結果を表す。三角は、アーム導波路55bの透過率の測定結果を表す。透過率の最適化により、数7内の係数および数8内の係数が変化する。
【0122】
図18Aは、最適化後の位相変化量を例示する図である。横軸は、位相調整電極70aおよび70bに印加される電圧を表す。縦軸は、位相変化量を表す。実線は、アーム導波路55aにおける位相変化量を表す。破線は、アーム導波路55bにおける位相変化量を表す。
図18Bは、最適化後の吸収損失の変化量を例示する図である。横軸は、位相調整電極70aおよび70bに印加される電圧を表す。縦軸は、吸収損失の変化量を表す。実線は、アーム導波路55aにおける変化量を表す。破線は、アーム導波路55bにおける変化量を表す。
【0123】
図19は、中心電圧と位相調整範囲との関係を例示する図である。横軸は、中心電圧Vcpである。縦軸は、位相変化量の範囲(位相調整範囲)を表す。算出部15は、電圧ごとの親マッハツェンダ変調器44aにおける位相調整範囲を取得する。
図19に示すように、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aにおいては、位相調整範囲を5πとするために、中心電圧Vcpが5.7Vであればよい。記憶装置34は、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧Vcを5.7Vと記憶する。
【0124】
表1は、記憶装置34が記憶するデータテーブルの例である。
【表1】
【0125】
表1に示す、IchのVccは、子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧である。QchのVccは、子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧である。Vcpは、親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧である。光変調器40a-1および40a-2におけるIchのVccは7.0Vであり、QchのVccは5.7Vである。光変調器40a-1におけるVcpは、7.4Vである。光変調器40a-2におけるVcpは、5.7Vである。
【0126】
記憶装置34は、光変調器40a-1および40a-2それぞれにおける、子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧Vcc、子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧Vcc、および親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧Vcpを記憶する。子マッハツェンダ変調器の差動電圧Vcdは-Vcc以上、Vcc以下とする。親マッハツェンダ変調器の差動電圧Vdpは-Vcp以上、Vcp以下とする。
図9の試験によって電圧が最適化される。光変調器40a-1および40a-2を使用する際には、当該電圧を印加することで、位相調整範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
【0127】
(子マッハツェンダ変調器の吸収損失量、消光比)
図20Aから
図22Bを参照し、子マッハツェンダ変調器の吸収損失量および消光比について説明する。
図20Aから
図21Bは、
図9に示した試験を行い、表1のように電圧を最適化した例であり、第1実施形態に対応する。
図22Aおよび
図22Bは、電圧を最適化しておらず、複数の子マッハツェンダ変調器に同一の電圧を印加する例である。
【0128】
図20A、
図21Aおよび
図22Aは、吸収損失の変化量を例示する図である。横軸は、差動電圧Vdcを示す。縦軸は、光の吸収損失量を示す。破線は、p側のアーム導波路(アーム導波路54aまたは54c)における吸収損失量を表す。点線は、n側のアーム導波路(アーム導波路54bまたは54d)における吸収損失量を表す。実線は、アーム導波路間の吸収損失量の差ΔL2(p側アーム導波路の吸収損失量-n側アーム導波路の吸収損失量)を表す。
【0129】
図20B、
図21Bおよび
図22Bは、消光比を例示する図である。横軸は、差動電圧Vdcを示す。縦軸は、消光比を示す。消光比(ER:Extinction Ratio)は、次式で算出される。
【数11】
【0130】
吸収損失量の差ΔL2が小さいほど、消光比ERは大きくなる。差ΔL2が大きいほど、消光比ERは小さくなる。差ΔL2が大きな値になるほど、2つのアーム導波路の光を逆位相で合波しても、光が打ち消しきれない。この結果、消光比ERが小さくなる。
【0131】
図20Aは、中心電圧Vcc=7Vの場合の、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aにおける吸収損失量を表す。差動電圧Vdcは、-6.8V以上、7V以下の範囲内の値をとる。差動電圧Vdcが負の側に大きくなるほど、アーム導波路54bにおける吸収損失量は増加し、アーム導波路54aにおける吸収損失量は0に近づく。吸収損失量の差ΔL2は、負の側に大きくなる。差動電圧Vdcが正の側に大きくなるほど、アーム導波路54aにおける吸収損失量は増加し、アーム導波路54bにおける吸収損失量は0に近づく。吸収損失量の差ΔL2は、正の側に大きくなる。吸収損失量の差ΔL2の絶対値の最大値は、0.38dBである。
【0132】
図20Bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42aにおける消光比を表す。
図20Bにおける消光比ERは、
図20Aの差ΔL2から算出される。差動電圧Vdcが正の側および負の側に大きくなるほど、消光比ERは低下する。消光比ERの最小値は、33.3dBである。
【0133】
図21Aは、中心電圧Vcc=5.7Vの場合の、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bにおける吸収損失量を表す。差動電圧Vdcは、-5.8V以上、5.5V以下の範囲内の値をとる。吸収損失量の差ΔL2の絶対値の最大値は、0.50dBである。
【0134】
図21Bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bにおける消光比を表す。
図21Bにおける消光比ERは、
図21Aの差ΔL2から算出される。消光比ERの最小値は、30.8dBである。
【0135】
図22Aは、中心電圧Vcc=7Vの場合の、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bにおける吸収損失量を表す。吸収損失量の差ΔL2の絶対値の最大値は、0.88dBである。
【0136】
図22Bは、光変調器40a-1の子マッハツェンダ変調器42bにおける消光比を表す。
図22Bにおける消光比ERは、
図22Aの差ΔL2から算出される。消光比ERの最小値は、26.0dBである。
【0137】
図22Aおよび
図22Bに示すように、子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧を、子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧と等しくすると、吸収損失量が増加し、消光比が低下してしまう。
【0138】
図21Aおよび
図21Bに示したように、第1実施形態によれば、子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧を最適化することで、光の吸収損失量を低下することができ、消光比の低下を抑制することができる。子マッハツェンダ変調器42aおよび42bの両方において、30dB以上の消光比を得ることができる。
【0139】
(親マッハツェンダ変調器の吸収損失量、消光比)
図23Aから
図25Bを参照し、親マッハツェンダ変調器の吸収損失量および消光比について説明する。
図23Aから
図24Bは、
図9に示した試験を行い、表1のように電圧を最適化した例である。
図25Aおよび
図25Bは、電圧を最適化しておらず、複数の親マッハツェンダ変調器に同一の電圧を印加する例である。
【0140】
図23A、
図24Aおよび
図25Aは、吸収損失量を例示する図である。横軸は、差動電圧Vdpを示す。縦軸は、光の吸収損失量を示す。破線は、Ich側のアーム導波路(アーム導波路55a)の吸収損失量を表す。点線は、Qch側のアーム導波路(アーム導波路55b)の吸収損失量を表す。実線は、アーム導波路間の吸収損失量の差ΔL2(Ich側アーム導波路の吸収損失量-Qch側アーム導波路の吸収損失量)を表す。
図23B、
図24Bおよび
図25Bは、消光比を例示する図である。横軸は、差動電圧Vdpを示す。縦軸は、消光比を示す。
【0141】
図23Aは、中心電圧Vcp=7.4Vの場合の、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aにおける吸収損失量を表す。差動電圧Vdpは、-7V以上、7.4V以下の範囲内の値をとる。吸収損失量の差ΔL2の絶対値の最大値は、0.53dBである。
【0142】
図23Bは、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aにおける消光比を表す。
図23Bにおける消光比ERは、
図23Aの差ΔL2から算出される。消光比ERの最小値は、30.3dBである。
【0143】
図24Aは、中心電圧Vcp=5.7Vの場合の、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aにおける吸収損失量を表す。吸収損失量の差ΔL2の絶対値の最大値は、0.44dBである。
【0144】
図24Bは、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aにおける消光比を表す。
図24Bにおける消光比ERは、
図24Aの差ΔL2から算出される。消光比ERの最小値は、31.9dBである。
【0145】
図25Aは、中心電圧Vcp=7.4Vの場合の、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aにおける吸収損失量を表す。差動電圧Vdpは、-5.5V以上、5.1V以下の範囲内の値をとる。吸収損失量の差ΔL2の絶対値の最大値は、0.89dBである。
【0146】
図25Bは、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aにおける消光比を表す。
図25Bにおける消光比ERは、
図25Aの差ΔL2から算出される。消光比ERの最小値は、25.8dBである。
【0147】
図25Aおよび
図25Bに示すように、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧を、光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧と等しくすると、吸収損失量が増加し、消光比が低下してしまう。
【0148】
図24Aおよび
図24Bに示したように、第1実施形態によれば、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧を最適化することで、光の吸収損失量を低下することができ、消光比の低下を抑制することができる。光変調器40a-1および40a-2の両方の親マッハツェンダ変調器44aにおいて、30dB以上の消光比を得ることができる。
【0149】
第1実施形態によれば、制御部10は、位相調整電極に印加される電圧と位相変化量との関係を取得し、位相調整範囲が所定の大きさとなる電圧を取得する。マッハツェンダ変調器ごとに最適化された電圧で、マッハツェンダ変調器における光の位相を調整する。位相調整範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
【0150】
光変調器40a-1内の子マッハツェンダ変調器42aおよび42bのように、1つの光変調器内の複数のマッハツェンダ変調器ごとに、電圧を最適化する。各マッハツェンダ変調器において、位相調整範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。例えば、子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧Vccを7Vとし、子マッハツェンダ変調器42b中心電圧Vccを5.7Vとする。
図13および
図16に示すように、子マッハツェンダ変調器42aおよび42bの両方において、位相調整範囲を6πとすることができる。
図20Aから
図21Bに示すように、吸収損失の増加を抑制することで、消光比を30dB以上とすることができる。
【0151】
光変調器40a-1と光変調器40a-2のように、複数の光変調器において電圧を最適化する。光変調器40a-1の親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧Vcpを7Vとし、光変調器40a-2の親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧Vcpを5.7Vとする。2つの親マッハツェンダ変調器44aにおいて、位相調整範囲を5πとすることができる。
図23Aから
図24Bに示すように、吸収損失の増加を抑制することで、消光比を30dB以上とすることができる。
【0152】
子マッハツェンダ変調器における位相調整範囲は、例えば-3πから3πまでの6πの範囲としたが、6π以上でもよいし、6π以下でもよい。親マッハツェンダ変調器における位相調整範囲は、例えば-2.5πから2.5πまでの5πとしたが、5π以上でもよいし、5π以下でもよい。位相調整範囲は、例えば初期位相差φ0などに応じて、好適な大きさとすればよい。子マッハツェンダ変調器の位相調整範囲は、例えば5πでもよいし、7πでもよい。親マッハツェンダ変調器の位相調整範囲は、例えば4πでもよいし、6πでもよい。
【0153】
子マッハツェンダ変調器42aは、対になる2つのアーム導波路52aおよび52bを有する。位相調整電極68aは、アーム導波路52aに設けられている。位相調整電極68bは、アーム導波路52bに設けられている。制御部10は、位相調整電極68aに印加される電圧と、アーム導波路52aにおける位相の変化量との関係、および位相調整電極68bに印加される電圧と、アーム導波路52bにおける位相の変化量との関係を取得する(
図12A)。制御部10は、電圧と位相変化量との関係に基づき、
図13に示すように、子マッハツェンダ変調器42aにおける位相調整範囲が6πとなる電圧を取得することができる。制御部10は、子マッハツェンダ変調器42b、親マッハツェンダ変調器44aにおいても、位相調整電極に印加される電圧とアーム導波路における位相変化量との関係を取得し、当該関係に基づき位相調整範囲が所望の大きさとなる電圧を取得する。
【0154】
マッハツェンダ変調器は差動駆動される。子マッハツェンダ変調器に印加される電圧VpはVcc+Vdcであり、電圧VnはVcc-Vdcである。親マッハツェンダ変調器に印加される電圧VIはVcp+Vdpであり、電圧VQはVcp-Vdpである。
図9のステップS18において、制御部10は、中心電圧VccおよびVcpを取得する。
図13、
図16、および
図19に示すように、最適な中心電圧を取得することで、位相調整範囲が所定の大きさとなる。表1に示すように、記憶装置34は、マッハツェンダ変調器ごとに最適な中心電圧VccおよびVcpを記憶する。マッハツェンダ変調器を駆動する際、制御部10は、記憶装置34に記憶された中心電圧を取得し、中心電圧と差動電圧との和、および差を算出することで、電圧Vp、Vn、VIおよびVQを取得する。ABC回路24は、電圧を位相調整電極に印加する。各マッハツェンダ変調器において、所定の位相調整範囲が得られ、かつ吸収損失の増加を抑制することができる。第1実施形態では、差動駆動における中心電圧を最適化する。差動駆動以外の方法でマッハツェンダ変調器を駆動してもよい。駆動方法に関わらず、最適な電圧でマッハツェンダ変調器の位相調整範囲を制御し、かつ吸収損失の増加を抑制することができる。
【0155】
子マッハツェンダ変調器の差動電圧Vdcは、-Vcc以上Vcc以下とした。親マッハツェンダ変調器の差動電圧Vdpは、-Vcp以上Vcp以下とした。差動電圧は、上記のものから変更してもよい。
【0156】
図9のステップS12において、位相変化量の関数として、透過率を算出する(数9)。透過率のフィッティングを行い、算出された透過率を、測定された透過率に近づける。透過率の最適化により、位相変化量も最適化される。数7に示す位相変化量は、電圧の関数である。透過率のフィッティングによって、数7中の係数が変化し、電圧と位相変化量との関係がより精度の高いものとなる。制御部10は、位相変化量に基づき、位相調整範囲が所定の大きさとなる電圧を取得する。位相調整範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。透過率、位相変化量、および吸収損失の変化量は、上記の式以外の式から算出してもよい。
【0157】
図2Bに示すように、アーム導波路54aおよび54bは、クラッド層82、コア層84、クラッド層86およびコンタクト層88を有する。他のアーム導波路も同じ構成を有する。クラッド層82は、n型の半導体層である。クラッド層86およびコンタクト層88は、p型の半導体層である。n型およびp型の導電型を得るために、ドーパントを添加する。ドーパントの熱拡散量がばらつくことで、マッハツェンダ変調器の位相調整効率にもばらつきが発生する。第1実施形態によれば、マッハツェンダ変調器ごとに、位相調整範囲が所定の大きさとなる電圧を取得する。位相調整範囲を所定の大きさとし、かつ吸収損失の増加を抑制することができる。
【0158】
図8および
図9の工程では、
図1Aの光送信装置100を、光変調器40の試験装置として利用する。1つの光変調器40(例えば光変調器40a-1)を光送信装置100に組み込み、試験を行う。光変調器40a-1を光変調器40a-2に交換し、試験を行う。記憶装置34は、表1のように光変調器40a-1および40a-2の両方についての電圧を記憶する。光送信装置100を通信に使用する際などには、光送信装置100に含まれる1つの光変調器40aの試験を行ってもよい。記憶装置34は、当該1つの光変調器40aについての電圧だけを記憶してもよい。
【0159】
<第2実施形態>
第2実施形態は、光変調器40としてDP(Dual Polarization)-IQ変調器を用いる例である。光送信装置100の構成は第1実施形態と同じである。
【0160】
図26は、光変調器40bを例示する平面図である。光変調器40bは、DP-IQ変調器であり、2つの光変調器43aおよび43bを有する。
【0161】
基板41の上面に、半導体基板80、4つの終端素子78a、78b、78cおよび78dが搭載されている。終端素子78a、78b、78cおよび78dは、例えば終端抵抗およびキャパシタなどを含む。終端素子78aおよび78bは、半導体基板80の端面80cに対向する。終端素子78cおよび78dは、半導体基板80の端面80dに対向する。入力導波路51、光変調器43aおよび43bは、半導体基板80に形成されている。
【0162】
入力導波路51の第1の端部は、半導体基板80の端面80aに位置する。入力導波路51の第2の端部は、カプラ59に接続されている。カプラ59よりも後段に、2つの光変調器43aおよび43bが並列に配置される。
【0163】
光変調器43aは、IQ変調器であり、
図2Aの光変調器40aと同様に、2つの子マッハツェンダ変調器42aおよび42b、ならびに親マッハツェンダ変調器44aを有する。光変調器43bは、IQ変調器であり、2つの子マッハツェンダ変調器42cおよび42d、ならびに親マッハツェンダ変調器44bを有する。子マッハツェンダ変調器42cおよび42dの構成は、子マッハツェンダ変調器42aおよび42bと同じである。親マッハツェンダ変調器44bの構成は、親マッハツェンダ変調器44aと同じである。
【0164】
光変調器43aはXチャネル(X偏波)の変調光を生成する。光変調器43bはYチャネル(Y偏波)の変調光を生成する。X偏波の偏波面は、Y偏波の偏波面と直交する。不図示の偏波回転素子および合波素子などを用いて、偏波面が直交するように、2つの変調光を合波する。
【0165】
光変調器40bの製造方法は、
図8と同様の工程である。制御部10は、光変調器40b内のマッハツェンダ変調器それぞれに
図9の試験を行う。光変調器43aの子マッハツェンダ変調器42aおよび42b、ならびに親マッハツェンダ変調器44aの試験を行う際、光変調器43bの子マッハツェンダ変調器42cおよび42dは、消光点に調整する。光変調器43bの子マッハツェンダ変調器42cおよび42d、ならびに親マッハツェンダ変調器44bの試験を行う際、光変調器43aの子マッハツェンダ変調器42aおよび42bは、消光点に調整する。
【0166】
表2は、記憶装置34が記憶するデータテーブルの例である。記憶装置34は、複数の光変調器40b(表2では光変調器40b-1および40b-2)それぞれの電圧を記憶する。
【表2】
【0167】
XIのVccは、光変調器40bのXch側の光変調器43aの子マッハツェンダ変調器42aの中心電圧である。XQのVccは、光変調器43aの子マッハツェンダ変調器42bの中心電圧である。YIのVccは、Qch側の光変調器43bの子マッハツェンダ変調器42cの中心電圧である。YQのVccは、光変調器43bの子マッハツェンダ変調器42dの中心電圧である。XchのVcpは、親マッハツェンダ変調器44aの中心電圧である。YchのVcpは、親マッハツェンダ変調器44bの中心電圧である。光変調器40b-1における各電圧は、例えば5.8V、6.2V、6.0V、6.1V、5.9V、および6.0Vである。光変調器40b-2の電圧の具体的な値は省略する。
【0168】
第2実施形態によれば、マッハツェンダ変調器ごとに最適化された電圧で、マッハツェンダ変調器を駆動することで、位相調整範囲を所定の大きさとし、かつ光の吸収損失の増加を抑制することができる。
【0169】
光変調器40の例は、第1実施形態ではIQ変調器、第2実施形態ではDP-IQ変調器とした。これら以外の光変調器に、本開示を適用してもよい。
【0170】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0171】
10 制御部
12 位相制御部
14 レーザ制御部
15 算出部
16 変調制御部
18 記憶制御部
22 波長可変レーザ素子
24 ABC回路
26 ドライバIC
30 CPU
32 RAM
34 記憶装置
36 インターフェース
40、40a、40a-1、40a-2、40b、40b-1、40b-2、43a,43b 光変調器
41 基板
42a、42b、42c、42d 子マッハツェンダ変調器
44a、44b 親マッハツェンダ変調器
52a、52b、54a、54b、55a、55b アーム導波路
50、51 入力導波路
56 出力導波路
58、59、60a、60b、62a、62b、64 カプラ
66a、66b、66d、66e、 変調電極
66c、66f、68c、68f、70c グランド電極
68a、68b、68d、68e、70a、70b 位相調整電極
72a、72b、72c、72d、72e、72f、74a、74b、74c、74d、74e、74f,75a、75b、75c、75d、75e、75f、76a、76b、76c 配線
78a、78b、78c、78d 終端素子
80 半導体基板
80a、80b、80c、80d 端面
81 絶縁膜
82、86 クラッド層
84 コア層
85 樹脂層
88 コンタクト層
100 光送信装置