(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20241210BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2021019003
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 亮介
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-199945(JP,A)
【文献】特開2009-273258(JP,A)
【文献】特開2013-192294(JP,A)
【文献】特開2015-119547(JP,A)
【文献】特開2014-197971(JP,A)
【文献】特開2012-023856(JP,A)
【文献】特開2005-045986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線が配置されるスロットが複数形成されたステータと、
前記ステータ側に向かって広がるV字型に配置された一対の永久磁石がロータコアに複数対埋め込まれたロータと、を備えた回転電機であって、
前記ロータコアは、
一対の前記永久磁石の外周側の端部に隣接してそれぞれ形成された第1のフラックスバリアと、
一対の前記永久磁石の内周側の端部に隣接して形成された第2のフラックスバリアと、
前記第1のフラックスバリアの外周側において前記ロータコアの外周面に沿って周方向に延びるアウターブリッジ部と、
前記第2のフラックスバリア内を径方向に延び、前記ロータコアの外周側と内周側とを連結するセンターブリッジ部と、
前記第1のフラックスバリア内を通過し、前記アウターブリッジ部と前記ロータコアの内周部とを連結する橋掛け部と、を有
し、
前記橋掛け部は、前記アウターブリッジ部の周方向の中央部と、前記第1のフラックスバリアにおける前記永久磁石の外周側の端部に周方向に対向する位置で径方向に延びる壁面の径方向の中央部と、を連結していることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記アウターブリッジ部は、
周方向の中央部よりも周方向で一対の前記永久磁石に近い側に位置する第1のアウターブリッジ部と、
周方向の中央部よりも周方向で一対の前記永久磁石から遠い側に位置する第2のアウターブリッジ部と、から構成されており、
前記第2のアウターブリッジ部の厚さは、前記第1のアウターブリッジ部の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機にあっては、一対の磁石をV字形に配置するための一対の磁石穴が形成されたロータコアは、一対の磁石穴の外周側部分にアウターブリッジ部を有し、一対の磁石穴の間の部分に、径方向に延びる帯状のセンターブリッジ部を有しており、これらのブリッジ部にはロータの回転による遠心力が大きく作用する(特許文献1参照)。特許文献1に記載の従来の回転電機は、センターブリッジ部に、幅の狭いネック部が設けられている。特許文献1に記載の回転電機は、ネック部を設けたことによる切り欠き強化という現象により、切り欠きの底部分での塑性が拘束され(塑性拘束)、センターブリッジ部の強度が高くなり高回転数化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の回転電機にあっては、より高回転に対応させようとした場合、アウターブリッジ部およびセンターブリッジ部の厚みを大きくしてロータのサイズを大きくする必要が生じてしまう問題と、アウターブリッジ部およびセンターブリッジ部を通る漏れ磁束が増加して磁束密度が低下してしまう問題とがあった。
【0005】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、ブリッジ部の厚みを大きくすることなく遠心力によるブリッジ部の変形を抑制でき、漏れ磁束の増加による磁束密度の低下を抑制できる回転電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、電機子巻線が配置されるスロットが複数形成されたステータと、前記ステータ側に向かって広がるV字型に配置された一対の永久磁石がロータコアに複数対埋め込まれたロータと、を備えた回転電機であって、前記ロータコアは、一対の前記永久磁石の外周側の端部に隣接してそれぞれ形成された第1のフラックスバリアと、一対の前記永久磁石の内周側の端部に隣接して形成された第2のフラックスバリアと、前記第1のフラックスバリアの外周側において前記ロータコアの外周面に沿って周方向に延びるアウターブリッジ部と、前記第2のフラックスバリア内を径方向に延び、前記ロータコアの外周側と内周側とを連結するセンターブリッジ部と、前記第1のフラックスバリア内を通過し、前記アウターブリッジ部と前記ロータコアの内周部とを連結する橋掛け部と、を有し、前記橋掛け部は、前記アウターブリッジ部の周方向の中央部と、前記第1のフラックスバリアにおける前記永久磁石の外周側の端部に周方向に対向する位置で径方向に延びる壁面の径方向の中央部と、を連結していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブリッジ部の厚みを大きくすることなく遠心力によるブリッジ部の変形を抑制でき、漏れ磁束の増加による磁束密度の低下を抑制できる回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る回転電機を回転軸に直交する平面で切断した断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る回転電機のロータの一部の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る回転電機のロータの第1のフラックスバリアの近傍の拡大図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る回転電機における遠心力による応力分布を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る回転電機における磁束分布を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る回転電機における遠心力による応力分布を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例に係る回転電機における磁束分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る回転電機は、電機子巻線が配置されるスロットが複数形成されたステータと、ステータ側に向かって広がるV字型に配置された一対の永久磁石がロータコアに複数対埋め込まれたロータと、を備えた回転電機であって、ロータコアは、一対の永久磁石の外周側の端部に隣接してそれぞれ形成された第1のフラックスバリアと、一対の永久磁石の内周側の端部に隣接して形成された第2のフラックスバリアと、第1のフラックスバリアの外周側においてロータコアの外周面に沿って周方向に延びるアウターブリッジ部と、第2のフラックスバリア内を径方向に延び、ロータコアの外周側と内周側とを連結するセンターブリッジ部と、第1のフラックスバリア内を通過し、アウターブリッジ部とロータコアの内周部とを連結する橋掛け部と、を有することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る回転電機は、ブリッジ部の厚みを大きくすることなく遠心力によるブリッジ部の変形を抑制でき、漏れ磁束の増加による磁束密度の低下を抑制できる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明に係る回転電機の一実施例について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1において、本実施例に係る回転電機1は、永久磁石をロータ内部に埋め込んだ埋込磁石同期回転電機(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor:以下、IPMSMという)である。回転電機1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車に搭載するのに好適な性能を有している。
【0012】
回転電機1は、環状に形成されたステータ10と、ステータ10内に回転自在に収容されたロータ20とを備えている。ロータ20は、軸心Oを中心に回転する回転軸2に固定されており、回転軸2と一体回転するようになっている。
【0013】
ステータ10は、図示しないモータケースに固定されている。ステータ10は、高透磁率の磁性材料からなる環状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、回転軸2の軸線に沿った軸方向に電磁鋼板を積層したものからなる。
【0014】
ステータコア11には、径方向の内方側に突出したステータティース12が周方向に沿って複数設けられている。周方向に隣り合うステータティース12の間には、溝状の空間であるスロット13が複数形成されている。
【0015】
径方向とは、上述の軸方向と直交する方向を示す。径方向の内方側とは、径方向において回転軸2に近い側を示し、径方向の外方側とは、径方向において回転軸2から遠い側を示す。周方向とは、回転軸2を中心とする円周方向を示す。
【0016】
ステータコア11の各スロット13には、ステータコア11の周方向に沿ってW相、V相、U相の三相の電機子巻線14がそれぞれ配置されている。W相、V相、U相の各電機子巻線14は、それぞれのステータティース12に分布巻されている。
【0017】
ステータ10は、電機子巻線14に三相交流が供給されることで、周方向に回転する回転磁界を発生させる。ステータ10で発生した磁束は、ロータ20に鎖交するようになっている。これにより、ステータ10は、ロータ20を回転させることができる。
【0018】
図2において、ロータ20は、環状のロータコア21と、複数の永久磁石対23と、磁極部24とを含んで構成されている。
【0019】
ロータコア21は、回転軸2の軸線に沿った軸方向に、高透磁率の磁性材料である電磁鋼板を積層したものからなる。ロータコア21には、ロータ20の周方向に沿って複数のスリット対22が形成されている。ロータコア21の内周面21Bは回転軸2に固定されている。
【0020】
スリット対22は、一対のスリット22A、22Bからなる。一対のスリット22A、22Bは、径方向の内方側から径方向の外方側、すなわちステータ側に向かって広がるV字型になるよう設けられている。
【0021】
一対のスリット22A、22Bには、永久磁石23A、23Bが嵌め込まれている。一対の永久磁石23A、23Bは、径方向の内方側から径方向の外方側、すなわちステータ側に向かって広がるV字型に配置され、永久磁石対23を構成する。
【0022】
永久磁石23Aと永久磁石23Bとは、同一の極性面が互いに対向するように配置されている。これにより、永久磁石23Aと永久磁石23Bとの間には、対向する極性面と同一の極性を有する磁極部24が形成される。このように、磁極部24は、V字型に配置された永久磁石23A、23Bの極性によってN磁極又はS磁極として形成される。
【0023】
一対の永久磁石23A、23Bは、周方向に隣り合う永久磁石対23同士で極性面の向きが逆向きとなるよう配置されている。これにより、磁極部24は、周方向に隣り合う磁極部24同士で極性が逆、すなわち逆極性となる。したがって、ロータ20においては、周方向にN磁極の磁極部24(
図1中、「N」と記載)とS磁極の磁極部24(
図1中、「S」と記載)とが交互に形成される。
【0024】
このように、ロータ20は、一対の永久磁石23A、23BをV字型に配置した永久磁石対23が複数設けられた逆突極構造を有している。
【0025】
回転電機1は、このような逆突極構造をロータ20が有しているため、一対の永久磁石23A、23Bの間を通る軸方向(以下、d軸方向という)のインダクタンスが、周方向に隣り合う永久磁石対23の間を通り、d軸と電気的・磁気的に直交する軸方向(以下、q軸方向という)のインダクタンスよりも小さい特性を有する。したがって、逆突極構造では、永久磁石対23が発生するマグネットトルクに加えて、d軸方向のインダクタンスとq軸方向のインダクタンスとの差に応じたリラクタンストルクを発生することができる。これにより、回転電機1におけるトルク密度を向上させることができる。
【0026】
また、ロータコア21には、一対の永久磁石23A、23Bに隣接するようにして、第1のフラックスバリア25Aおよび第2のフラックスバリア25Bが形成されている。第1のフラックスバリア25Aおよび第2のフラックスバリア25Bは、磁束の回り込みを制限するための空隙である。
【0027】
第1のフラックスバリア25Aは、一対の永久磁石23A、23Bの外周側の端部に隣接してそれぞれ形成されている。第2のフラックスバリア25Bは、一対の永久磁石23A、23Bの間であって、これらの永久磁石23A、23Bの内周側の端部に隣接して形成されている。
【0028】
なお、ロータコア21に永久磁石23A、23Bを嵌め込む前の状態では、永久磁石23A、23Bのそれぞれに対応するスリット22A、22Bおよび第1のフラックスバリア25Aおよび第2のフラックスバリア25Bは、これらが連続する一体化した空間を形成している。
【0029】
ロータコア21は、第1のフラックスバリア25Aとロータコア21の外周面21Aとの間に、アウターブリッジ部32を有している。また、ロータコア21は、第2のフラックスバリア25B内を通る帯状のセンターブリッジ部31を有している。
【0030】
アウターブリッジ部32は、第1のフラックスバリア25Aの外周側において、ロータコア21の外周面21Aに沿って周方向に延びている。センターブリッジ部31は、第2のフラックスバリア25B内を径方向に延びており、ロータコア21の外周側と内周側とを連結している。ここで、ロータコア21の外周側とは、ロータコア21における第2のフラックスバリア25Bよりも径方向の外方の部位をいう。また、ロータコア21の内周側とは、ロータコア21における第2のフラックスバリア25Bよりも径方向の内方の部位をいう。したがって、センターブリッジ部31は、第2のフラックスバリア25Bを径方向に挟んで、ロータコア21の外周側と内周側とを連結している。
【0031】
ここで、ロータ20の回転時は、永久磁石23A、23Bに作用する遠心力、およびロータコア21における永久磁石23A、23Bよりも外周側の部位に作用する遠心力は、センターブリッジ部31およびアウターブリッジ部32に集中する。そのため、回転電機1の最高回転数は、ロータコア21のセンターブリッジ部31およびアウターブリッジ部32の強度に依存する。
【0032】
センターブリッジ部31およびアウターブリッジ部32の強度を大きくするために、センターブリッジ部31およびアウターブリッジ部32の厚みを大きくした場合、センターブリッジ部31およびアウターブリッジ部32を通過する漏れ磁束が大きくなり、磁束密度が低下してしまう。そのため、これらのブリッジ部の厚みを大きくすることなくブリッジ部の変形を抑制することが望ましい。
【0033】
図2、
図3において、ロータコア21は橋掛け部33を有している。第1のフラックスバリア25A内を通過し、橋掛け部33は、アウターブリッジ部32とロータコア21の内周部とを連結している。詳しくは、橋掛け部33は、アウターブリッジ部32と、ロータコア21の壁面34とを連結している。壁面34は、第1のフラックスバリア25Aにおける永久磁石23A、23Bの外周側の端部に周方向に対向する位置で径方向に延びている。橋掛け部33は、ロータ20の径方向に対して傾斜する姿勢で直線状に延びている。
【0034】
アウターブリッジ部32は、橋掛け部33との連結位置よりも周方向の一方側に位置する第1のアウターブリッジ部32Aと、橋掛け部33との連結位置よりも周方向の他方側に位置する第2のアウターブリッジ部32Bと、から構成されている。そして、第2のアウターブリッジ部32Bの厚さは、第1のアウターブリッジ部32Aの厚さよりも小さくなっている。ここで、第1のアウターブリッジ部32Aおよび第2のアウターブリッジ部32Bの厚さとは、これらの径方向の寸法をいう。言い換えれば、第2のアウターブリッジ部32Bは、第1のアウターブリッジ部32Aよりも薄く形成されている。
【0035】
第1のアウターブリッジ部32Aおよび第2のアウターブリッジ部32Bの周方向の寸法は、ともにL1に設定されている。ロータコア21の壁面34における橋掛け部33との連結部の径方向の外側と内側との寸法は、ともにL2に設定されている。したがって、橋掛け部33は、アウターブリッジ部32の周方向の中央部と、壁面34の径方向の中央部と、を連結している。
【0036】
以上のように、本実施例に係る回転電機1において、ロータコア21は、
図2、
図3に示すように、一対の永久磁石23A、23Bの外周側の端部に隣接してそれぞれ形成された第1のフラックスバリア25Aと、一対の永久磁石23A、23Bの内周側の端部に隣接して形成された第2のフラックスバリア25Bと、第1のフラックスバリア25Aの外周側においてロータコア21の外周面21Aに沿って周方向に延びるアウターブリッジ部32と、第2のフラックスバリア25B内を径方向に延び、ロータコア21の外周側と内周側とを連結するセンターブリッジ部31と、を有している。
【0037】
このように構成された回転電機1において、
図4に示すように、ロータ20の回転時の遠心力Fcは、一対の永久磁石23A、23Bと、ロータコア21における永久磁石23A、23Bよりも外周側の部位である外周部位29と、に作用する。この遠心力Fcは、アウターブリッジ部32およびセンターブリッジ部31とに集中し、アウターブリッジ部32およびセンターブリッジ部31に対して引っ張り方向の応力として作用する。この遠心力Fcに対して、センターブリッジ部31は径方向内側への抗力F1を発揮し、アウターブリッジ部32は周方向外側への抗力F2、F3を発揮している。
【0038】
そして、本実施例に係る回転電機1は、アウターブリッジ部32とロータコア21の内周部とを連結するように第1のフラックスバリア25A内を通過する橋掛け部33を有している。
【0039】
これにより、アウターブリッジ部32に作用する応力の一部を橋掛け部33に受け持たせることができ、橋掛け部33は抗力F4、F5を発揮することができる。このため、ロータコア21に作用する遠心力をセンターブリッジ部31、アウターブリッジ部32および橋掛け部33に分散させることができる。したがって、アウターブリッジ部32およびセンターブリッジ部31の厚さを大きくすることなく遠心力によるブリッジ部の変形を抑制できる。
【0040】
また、アウターブリッジ部32の厚さを大きくしていないので、アウターブリッジ部32を通る漏れ磁束が増加することを防止でき、漏れ磁束の増加による磁束密度の低下を抑制できる。
【0041】
この結果、ブリッジ部の厚さを大きくすることなく遠心力によるブリッジ部の変形を抑制でき、漏れ磁束の増加による磁束密度の低下を抑制できる。
【0042】
一方、
図6に示す比較例の回転電機1Aでは、ロータ20Aが橋掛け部33を有していないので、遠心力Fcによる応力の全てを、センターブリッジ部31による抗力F1と、アウターブリッジ部32による抗力F2、F3とによって受け持っており、応力を分散させることができない。このため、アウターブリッジ部32が変形するおそれがあり、変形を抑制するためにアウターブリッジ部32の厚さを大きくした場合はアウターブリッジ部32を通る漏れ磁束が増加してトルクが低下するおそれがある。
【0043】
また、本実施例に係る回転電機1において、橋掛け部33は、
図3に示すように、アウターブリッジ部32と、第1のフラックスバリア25Aにおける永久磁石23A、23Bの外周側の端部に周方向に対向する位置で径方向に延びる壁面34と、を連結している。
【0044】
このため、
図4に示すように、遠心力Fcによる応力の一部を、橋掛け部33による抗力F4、F5として受け持たせることができ、この抗力F4、F5をさらに壁面34に受け持たせることができる。
【0045】
したがって、アウターブリッジ部32を外周側に変形させようとする応力を、橋掛け部33が連結された壁面34に受け持たせることができる。また、橋掛け部33が連結された壁面34が径方向に延びているので、壁面34を変形させることなく応力を壁面34に受け持たせることができ、橋掛け部33に大きな応力を受け持たせることができる。
【0046】
一方、
図6に示す比較例の回転電機1Aでは、ロータ20Aが橋掛け部33を有していないので、遠心力Fcによる応力の全てを、センターブリッジ部31による抗力F1と、アウターブリッジ部32による抗力F2、F3とによって受け持っており、応力を分散させることができない。このため、センターブリッジ部31またはアウターブリッジ部32の少なくとも一方が変形するおそれがある。
【0047】
また、本実施例に係る回転電機1において、アウターブリッジ部32は、橋掛け部33との連結位置よりも周方向の一方側に位置する第1のアウターブリッジ部32Aと、橋掛け部33との連結位置よりも周方向の他方側に位置する第2のアウターブリッジ部32Bと、から構成されている。そして、第2のアウターブリッジ部32Bの厚さは、第1のアウターブリッジ部32Aの厚さよりも小さくなっている。
【0048】
つまり、第1のアウターブリッジ部32Aおよび第2のアウターブリッジ部32Bに作用する応力の一部を橋掛け部33に受け持たせることができるので、アウターブリッジ部32の一部である第2のアウターブリッジ部32Bの厚さを小さくすることができる。第2のアウターブリッジ部32Bの厚さを小さくしたことにより、第2のアウターブリッジ部32Bを通過する漏れ磁束量を低減できるので、ロータコア21の磁束密度を増加させることができ、トルクを増加させることができる。
【0049】
詳しくは、
図5の本実施例において、第1のアウターブリッジ部32Aを通った漏れ磁束は、第2のアウターブリッジ部32Bと橋掛け部33とに分岐しており、第2のアウターブリッジ部32Bを通る漏れ磁束と橋掛け部33を通る漏れ磁束の合計は5本であった。つまり、アウターブリッジ部32の全体を通る漏れ磁束は5本であった。一方、
図7の比較例の回転電機1Aにおいて、ロータ20Aのアウターブリッジ部32を通る漏れ磁束は6本であった。このように、本実施例では、アウターブリッジ部32を通る漏れ磁束を比較例よりも低減できる。漏れ磁束を低減できることにより、
図5に示す本実施例の回転電機1におけるステータ10とロータ20とのエアギャップAの磁束密度は、
図7に示す比較例の回転電機1Aにおけるステータ10とロータ20AとのエアギャップBの磁束密度よりも大きくなっている。
【0050】
ここで、磁束は最短経路を通って対となる磁極に戻ろうとする性質があるため、橋掛け部33をアウターブリッジ部32の周方向の中央部よりも永久磁石23A、23Bに近い側に連結した場合、橋掛け部33を通る漏れ磁束が増加してしまい、トルクが低下してしまうおそれがある。
【0051】
一方、第1のアウターブリッジ部32Aに作用する応力は、橋掛け部33と第2のアウターブリッジ部32Bとに分散されるので、橋掛け部33をアウターブリッジ部32の周方向の中央部から永久磁石23A、23Bから遠い側に配置した場合、第1のアウターブリッジ部32Aに作用する応力が大きくなり、第1のアウターブリッジ部32Aが大きく変形するおそれがある。
【0052】
そこで、本実施例に係る回転電機1において、橋掛け部33は、アウターブリッジ部32の周方向の中央部と、壁面34の径方向の中央部と、を連結している。
【0053】
このように、橋掛け部33をアウターブリッジ部32の周方向の中央部に連結することにより、漏れ磁束量の低減と応力の分散を両立することができる。また、橋掛け部33を壁面34の径方向の中央部に連結することにより、橋掛け部33をロータコア21の径方向に対して傾斜して配置できるので、アウターブリッジ部32に周方向(引っ張り方向)に作用する応力と径方向に作用する応力との両方に対して、橋掛け部33による抗力を作用させることができる。
【0054】
なお、回転電機1は、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動源としてだけでなく、例えば風力発電や工作機械などの駆動源としても好適に用いることができる。
【0055】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0056】
1 回転電機
10 ステータ
13 スロット
14 電機子巻線
20 ロータ
21 ロータコア
23A、23B 永久磁石
25A 第1のフラックスバリア
25B 第2のフラックスバリア
29 外周部位
31 センターブリッジ部
32 アウターブリッジ部
32A 第1のアウターブリッジ部
32B 第2のアウターブリッジ部
33 橋掛け部
34 壁面