(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】後処理装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/18 20060101AFI20241210BHJP
B26F 1/14 20060101ALI20241210BHJP
B65H 35/00 20060101ALI20241210BHJP
B65H 29/70 20060101ALI20241210BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B26D7/18 F
B26F1/14 C
B65H35/00
B65H29/70
B65H5/00 B
(21)【出願番号】P 2021021546
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸平
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 知明
(72)【発明者】
【氏名】川上 和久
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-101326(JP,A)
【文献】特開2007-131437(JP,A)
【文献】特開2002-200592(JP,A)
【文献】特開2014-219542(JP,A)
【文献】特開2019-123184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B26F 1/00-3/16
B65H 35/00
B65H 29/54-29/70
B65H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の第1面と対向する経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の第2面と対向する経路を形成する第2経路形成部材とを有し、記録部によって記録された前記媒体が搬送される搬送経路と、
前記搬送経路に設けられ、前記媒体に対して穿孔を行う穿孔部材と、を備え、
前記搬送経路は、
前記穿孔部材の搬送方向下流に設けられた第1搬送経路と、
前記第1搬送経路の搬送方向下流に接続する第2搬送経路と、を有し、
前記第2搬送経路は、湾曲形状を有することにより前記媒体を湾曲姿勢に保持可能に形成されており、
前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材は、前記湾曲形状の外側を形成し、前記第1搬送経路を構成する前記第1経路形成部材よりも前記第1面から離れる位置に配置され、
前記穿孔により前記媒体から生じた穿孔屑が落下するように前記搬送経路を下方に開放し、
前記媒体は、前記湾曲姿勢である際に、搬送方向上流の端部が前記第1搬送経路から前記第2搬送経路へ移動する、ことを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
後処理装置であって、
媒体の第1面と対向する経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の第2面と対向する経路を形成する第2経路形成部材とを有し、記録部によって記録された前記媒体が搬送される搬送経路と、
前記搬送経路に設けられ、前記媒体に対して穿孔を行う穿孔部材と、を備え、
前記搬送経路は、
前記穿孔部材の搬送方向下流に設けられた第1搬送経路と、
前記第1搬送経路の搬送方向下流に接続する第2搬送経路と、を有し、
前記第2搬送経路は、湾曲形状を有することにより前記媒体を湾曲姿勢に保持可能に形成されており、
前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材は、前記湾曲形状の外側を形成し、前記第1搬送経路を構成する前記第1経路形成部材よりも前記第1面から離れる位置に配置され、
前記媒体は、前記湾曲姿勢である際に、搬送方向上流の端部が前記第1搬送経路から前記第2搬送経路へ移動し、
前記後処理装置は、さらに、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材の移動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を、第1位置と、前記第1位置よりも前記第1面から離れる第2位置とに移動させることが可能であり、
前記記録部による前記媒体に対する記録情報または前記後処理装置が置かれた環境の環境情報に基づいて、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を、前記第1位置または前記第2位置へ移動させる、ことを特徴とす
る後処理装置。
【請求項3】
前記記録部が液体を吐出することにより記録を行う機構であり、前記記録情報に基づいて、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材の移動を制御する場合、
前記制御部は、前記記録情報である、前記媒体の前記穿孔部材による穿孔予定位置に対応する記録濃度と、記録濃度に関する濃度しきい値とを比較し、前記穿孔予定位置に対応する記録濃度が前記濃度しきい値以上である場合に、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を前記第2位置に移動させる、ことを特徴とする請求項2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記環境情報である湿度又は温度に応じて前記濃度しきい値を変更する、ことを特徴とする請求項3に記載の後処理装置。
【請求項5】
前記環境情報に基づいて、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材の移動を制御する場合、
前記制御部は、前記環境情報である湿度と、湿度に関する第1湿度しきい値とを比較し、前記環境情報の湿度が前記第1湿度しきい値以上である場合に、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を前記第2位置に移動させる、ことを特徴とする請求項2に記載の後処理装置。
【請求項6】
前記環境情報に基づいて、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材の移動を制御する場合、
前記制御部は、前記環境情報である湿度および温度と、湿度に関する第2湿度しきい値および温度に関する温度しきい値とを比較し、前記環境情報の湿度が前記第2湿度しきい値未満であり、かつ、前記環境情報の温度が前記温度しきい値未満である場合に、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を前記第2位置に移動させる、ことを特徴とする請求項2に記載の後処理装置。
【請求項7】
前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材が前記第2位置に配置されている状態において、前記第2搬送経路を搬送される前記媒体の前記第1面に接触可能なブラシを有する、ことを特徴とする請求項2~請求項6のいずれか
一項に記載の後処理装置。
【請求項8】
前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材が前記第2位置に配置されている場合は、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材が前記第1位置に配置されている場合よりも、前記媒体の搬送速度を速くする、ことを特徴とする請求項2~請求項7のいずれか
一項に記載の後処理装置。
【請求項9】
前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材が前記第2位置に配置されている場合、
前記媒体が前記穿孔部材により穿孔される前の前記媒体の搬送速度よりも、前記媒体が前記穿孔部材により穿孔された後の前記媒体の搬送速度を速くする、ことを特徴とする請求項2~請求項8のいずれか
一項に記載の後処理装置。
【請求項10】
前記穿孔部材は、前記媒体の搬送方向上流の端部に穿孔する、ことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか
一項に記載の後処理装置。
【請求項11】
前記穿孔部材は、前記媒体の前記第2面から前記第1面への向きに穿孔する、ことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか
一項に記載の後処理装置。
【請求項12】
前
記穿孔屑を回収可能な回収部を備え、
前記回収部は、前記第2搬送経路の下方において前記穿孔屑を回収する、ことを特徴とする
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項13】
前
記穿孔屑を回収可能な回収部を備え、
前記回収部は、前記穿孔部材の下方に設けられた第1回収部と、前記第2搬送経路の下方に設けられた第2回収部とに分かれており、
前記第2回収部の容量は、前記第1回収部の容量よりも少ない、ことを特徴とする
請求項1に記載の後処理装置。
【請求項14】
前記第2搬送経路は、水平面に対して上方に向かって湾曲している、ことを特徴とする請求項1~請求項13のいずれか
一項に記載の後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体へ穿孔する後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体に対してパンチ針を進退させることにより、シートにパンチ孔を開ける、つまり穿孔する。このとき、媒体のパンチ孔に相当する部分である穿孔屑は、媒体から離れて回収されるのが理想である。しかし、一部の穿孔屑は、媒体との繋がりが完全には断ち切られずに媒体に残ったり、静電気等の要因で媒体に張り付いたりすることがある。穿孔屑が媒体と共に搬送経路の下流へ搬送されると、それら穿孔屑がやがて装置内の各機構に入り込んで、各所に不具合を生じさせる可能性がある。
【0003】
ここで、パンチピンをパンチダイに対して進退動させることにより用紙毎にパンチ孔を穿設する穿孔処理装置において、パンチダイ下面の開孔部近傍にパンチカスをパンチピンから掻き取るためのブラシ状部材を設けた構成が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ブラシを用いて穿孔屑を除去する構成においては、ブラシが摩耗した場合はユーザーがブラシを交換する必要があり、ユーザーにとって面倒である。従って、媒体から穿孔屑を積極的に除去するための構成に関して、ユーザーの利便性向上の観点から更なる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後処理装置は、媒体の第1面と対向する経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の第2面と対向する経路を形成する第2経路形成部材とを有し、記録部によって記録された前記媒体が搬送される搬送経路と、前記搬送経路に設けられ、前記媒体に対して穿孔を行う穿孔部材と、を備え、前記搬送経路は、前記穿孔部材の搬送方向下流に設けられた第1搬送経路と、前記第1搬送経路の搬送方向下流に接続する第2搬送経路と、を有し、前記第2搬送経路は、湾曲形状を有することにより前記媒体を湾曲姿勢に保持可能に形成されており、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材は、前記湾曲形状の外側を形成し、前記第1搬送経路を構成する前記第1経路形成部材よりも前記第1面から離れる位置に配置され、前記穿孔により前記媒体から生じた穿孔屑が落下するように前記搬送経路を下方に開放し、前記媒体は、前記湾曲姿勢である際に、搬送方向上流の端部が前記第1搬送経路から前記第2搬送経路へ移動する。
また、後処理装置は、媒体の第1面と対向する経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の第2面と対向する経路を形成する第2経路形成部材とを有し、記録部によって記録された前記媒体が搬送される搬送経路と、前記搬送経路に設けられ、前記媒体に対して穿孔を行う穿孔部材と、を備え、前記搬送経路は、前記穿孔部材の搬送方向下流に設けられた第1搬送経路と、前記第1搬送経路の搬送方向下流に接続する第2搬送経路と、を有し、前記第2搬送経路は、湾曲形状を有することにより前記媒体を湾曲姿勢に保持可能に形成されており、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材は、前記湾曲形状の外側を形成し、前記第1搬送経路を構成する前記第1経路形成部材よりも前記第1面から離れる位置に配置され、前記媒体は、前記湾曲姿勢である際に、搬送方向上流の端部が前記第1搬送経路から前記第2搬送経路へ移動し、前記後処理装置は、さらに、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材の移動を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を、第1位置と、前記第1位置よりも前記第1面から離れる第2位置とに移動させることが可能であり、前記記録部による前記媒体に対する記録情報または前記後処理装置が置かれた環境の環境情報に基づいて、前記第2搬送経路を構成する前記第1経路形成部材を、前記第1位置または前記第2位置へ移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の後処理装置を簡易的に示す図。
【
図3】第2実施形態の後処理装置を簡易的に示す図。
【
図4】湾曲外側部材の移動制御処理を示すフローチャート。
【
図5】環境濃度テーブルを決定するための環境テーブルの例を示す図。
【
図7】第3実施形態の後処理装置を簡易的に示す図。
【
図8】第4実施形態の後処理装置を簡易的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0009】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態にかかる後処理装置10の構成を、媒体Sの搬送方向D1に直交する、側方からの視点により簡易的に示している。また、
図1では、後処理装置10について、媒体Sへの穿孔を行う直前の状態である状態SAと、穿孔を行った後の媒体Sの搬送がある程度進んだ状態である状態SBとを示している。後処理装置10を、穿孔装置、穴開け装置等と称してもよい。
【0010】
後処理装置10は、搬送経路20と、穿孔部材30と、搬送ローラー対40,41を含んでいる。搬送経路20は、媒体Sが搬送される経路であり、搬送方向D1は、搬送経路20に沿う方向である。搬送方向D1の上流、下流を、単に、上流、下流と言う。媒体Sは、シート状の媒体である。媒体Sは、代表的には用紙であるが、穿孔の対象となり得る媒体であればよく、紙以外の素材の媒体であってもよい。
【0011】
穿孔部材30は、搬送経路20の途中に設けられており、上流から搬送された媒体Sに対して穿孔を行う。穿孔部材30は、パンチ針31と、パンチ針31を収容するパンチ針孔32が形成されたパンチ台33と、を有する。パンチ針31とパンチ台33とが、搬送経路20を挟んで上下に対向している。上方のパンチ針31が下方のパンチ針孔32に対して進退移動することにより、状態SAに示すようにパンチ針31とパンチ針孔32との間に位置する媒体Sに対して、パンチ孔が形成される。
【0012】
媒体Sの両面のうち、一方の面を第1面SF1と呼び、他方の面を第2面SF2と呼ぶ。
図1によれば、第1面SF1は、パンチ台33の方を向く面であり、第2面SF2は、パンチ針31の方を向く面である。従って、穿孔部材30は、媒体Sの第2面SF2から第1面SF1への向きに穿孔する。媒体Sの下流の端を前端と呼び、媒体Sの上流の端を後端と呼ぶ。
図1では、媒体Sの後端SEを示している。
【0013】
パンチ台33の下方には、回収部50が設けられている。回収部50は、籠やトレイ等の部材である。パンチ針31による穿孔で媒体Sから生じた穿孔屑は、パンチ針孔32を通じて下方へ落下し、回収部50により回収される。
【0014】
搬送経路20のうち、穿孔部材30の下流に設けられた経路を「第1搬送経路21」と呼ぶ。第1搬送経路21は、概ね、穿孔部材30から、穿孔部材30の下流に設けられた第1搬送ローラー対40までの範囲の経路である。また、搬送経路20のうち、第1搬送経路21の下流に接続する経路を「第2搬送経路22」と呼ぶ。第2搬送経路22は、概ね、第1搬送ローラー対40から下流の経路である。第1搬送ローラー対40は、第1搬送経路21と第2搬送経路22とのどちらに属すると解してもよい。第2搬送経路22の途中には、第2搬送ローラー対41が設けられている。ここでは、第1搬送経路21及び第2搬送経路22については、第1搬送ローラー対40を基準に記載しているが、第1搬送経路21及び第2搬送経路22を第1搬送ローラー対40に基づいて定めなくても良い。
【0015】
第1搬送ローラー対40は、搬送経路20を挟んで対向するローラー40aおよびローラー40bの対である。ローラー40a,40bの一方は、不図示のモーターの動力を受けて回転する駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。第1搬送ローラー対40は、ローラー40a,40bにより媒体Sを挟持した状態で回転することにより媒体Sを搬送経路20に沿って搬送する。同様に、第2搬送ローラー対41は、搬送経路20を挟んで対向するローラー41aおよびローラー41bの対である。ローラー41a,41bの一方は、不図示のモーターの動力を受けて回転する駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。第2搬送ローラー対41は、ローラー41a,41bにより媒体Sを挟持した状態で回転することにより媒体Sを搬送経路20に沿って搬送する。
【0016】
第1搬送ローラー対40や第2搬送ローラー対41をまとめて、媒体Sを搬送する搬送部と呼ぶ。搬送部は、第1搬送ローラー対40よりも上流の位置や、第2搬送ローラー対41よりも下流の位置にも、媒体Sを搬送するためのローラー等の搬送手段をさらに有するとしてもよい。
【0017】
搬送経路20を形成する部材のうち、媒体Sの第1面SF1と対向する経路を形成する部材を「第1経路形成部材23」と呼び、媒体Sの第2面SF2と対向する経路を形成する部材を「第2経路形成部材24」と呼ぶ。従って、第1搬送経路21は、第1経路形成部材23および第2経路形成部材24により構成されており、同様に、第2搬送経路22も、第1経路形成部材23および第2経路形成部材24により構成されている。
【0018】
第2搬送経路22は、湾曲形状を有する。
図1によれば、搬送経路20は、第1搬送ローラー対40から上流では水平又はほぼ水平であり、第2搬送経路22における概ね第1搬送ローラー対40から第2搬送ローラー対41までの範囲が、上方に向かって湾曲している。
図1から明らかなように、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23は、湾曲形状の外側を形成し、第2搬送経路22を構成する第2経路形成部材24は、湾曲形状の内側を形成している。
【0019】
以下では、説明の便宜上、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23を「湾曲外側部材23a」と呼ぶ。状態SAから解るように、湾曲外側部材23aは、第1搬送経路21を構成する第1経路形成部材23よりも媒体Sの第1面SF1から離れる位置に配置されている。言い換えると、湾曲外側部材23aは、搬送経路20がカーブする位置で、搬送経路20を下方に開放している。このように湾曲形状を有する第2搬送経路22は、媒体Sを湾曲姿勢に保持可能である。つまり、媒体Sの第1搬送ローラー対40と第2搬送ローラー対41との間を通過中の部位は湾曲する。
【0020】
パンチ針31の進退移動や、搬送部の駆動は、プロセッサーやメモリーを有する制御部11によって制御される。
図1によれば、穿孔部材30よりも上流には、媒体Sへの記録を行う記録部60が設けられている。記録部60は、例えば、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッド61により、媒体Sへ記録を行う。従って、搬送経路20は、記録部60によって記録された媒体Sを、穿孔部材30や、穿孔部材30の更に下流に向けて搬送するための経路と言える。
【0021】
図1の例では、記録部60と、記録部60の下流の後処理装置10とが搬送経路20によって繋がっている。従って、後処理装置10は、記録部60を有するプリンターや複合機といった装置の一部分と解することができる。
ただし、後処理装置10は、記録部60と物理的に接続していなくてもよい。つまり、ユーザーは、記録部60による記録を終えた媒体Sを、後処理装置10へ運んで後処理装置10の搬送経路20の上流位置にセットすることにより、記録部60から独立した後処理装置10を用いて媒体Sへの穿孔を行うことができる。
なお、後処理装置10が記録部60を有する装置の一部分である構成においては、制御部11は、記録部60による媒体Sへの記録を制御する制御部を兼ねていてもよい。
【0022】
図2は、制御部11がメモリーに記憶されたプログラムに従って実行する穿孔処理をフローチャートにより示している。
ステップS100では、制御部11は、搬送部を制御して、穿孔時媒体位置への媒体Sの搬送を実行する。穿孔時媒体位置とは、穿孔部材30による穿孔がなされるときに媒体Sが停止しているべき位置である。後処理装置10は、搬送経路20において媒体Sの前端や後端SEを検出可能な不図示のセンサーを有する。センサーは、光学式センサーや機械式センサー等、様々である。制御部11にとって、搬送経路20におけるセンサーの位置は既知の情報である。例えば、センサーは、穿孔部材30よりも上流の所定位置に在る。また、穿孔時媒体位置も予め決められている。例えば、状態SAに示す媒体Sは、穿孔時媒体位置に在る。従って、制御部11は、搬送部による媒体Sの搬送を開始した後、例えば、センサーにより媒体Sの後端SEが検出されたとき、センサーから、穿孔時媒体位置に媒体Sが在るときの後端SEの位置までの距離に相当する搬送量の搬送を更に実行させる。この結果、穿孔時媒体位置への媒体Sの搬送が完了する。
【0023】
ステップS100の搬送後、媒体Sが停止した状況で、ステップS110において制御部11は、媒体Sへの穿孔を行う。つまり、パンチ針31を媒体Sに向けて下方へ移動させることにより、媒体Sへパンチ孔を形成する。制御部11は、媒体Sへパンチ孔を形成した後は、パンチ針31を媒体Sから離間させるために上方へ移動させる。状態SAによれば、媒体Sの後端SEが、パンチ針31のやや上流に位置している。従って、状態SAの媒体Sに対してパンチ針31で穿孔することにより、媒体Sにおける後端SEを含む端部にパンチ孔が形成される。
【0024】
なお、後端SEを含む端部とは、媒体Sにおける後端SE近傍の領域を指す。後端SE近傍の領域とは、様々に定義できるが、例えば、媒体Sを搬送方向D1において複数の領域に分割したときの最も上流の領域が、後端SE近傍の領域である。
【0025】
ステップS110の後、ステップS120では、制御部11は、再び搬送部を制御して、穿孔後の媒体Sを下流へ排出するために搬送する。以上で、1枚の媒体Sに対する穿孔処理が終わる。なお、ステップS120の搬送の過程で、媒体Sは第1搬送ローラー対40および第2搬送ローラー対41のそれぞれに挟持された湾曲姿勢の状態から、やがて後端SEが第1搬送ローラー対40を通過し、後端SEが第1搬送経路21から第2搬送経路22へ移動する。後端SEが第1搬送ローラー対40から離れたとき、湾曲している媒体S自身の張りの強さにより、後端SEは、状態SBに示すように湾曲外側部材23aに向かって弾かれるように移動する。そして、後端SEやその近傍の第1面SF1が湾曲外側部材23aに衝突する。
【0026】
このような、第1搬送ローラー対40から離れた後端SEの、湾曲外側部材23aに向かう勢いの付いた移動や湾曲外側部材23aへの衝突により、媒体Sに付いたままの穿孔屑が媒体Sから離れて、下方へ落下する。回収部50は、穿孔部材30の下方だけでなく、第2搬送経路22の下方においても穿孔屑を回収可能な大きさに形成されている。従って、第2搬送経路22における、湾曲外側部材23aによって下方に開放されている位置から落下した穿孔屑が回収部50により回収される。なお、状態SBにおける媒体Sには、当然にパンチ孔が形成されているが、パンチ孔の図示は省略している。
【0027】
このように第1実施形態によれば、後処理装置10は、媒体Sの第1面SF1と対向する経路を形成する第1経路形成部材23と、媒体Sの第2面SF2と対向する経路を形成する第2経路形成部材24とを有し、記録部60によって記録された媒体Sが搬送される搬送経路20と、搬送経路20に設けられ、媒体Sに対して穿孔を行う穿孔部材30と、を備える。そして、搬送経路20は、穿孔部材30の搬送方向下流に設けられた第1搬送経路21と、第1搬送経路21の搬送方向下流に接続する第2搬送経路22と、を有し、第2搬送経路22は、湾曲形状を有することにより媒体Sを湾曲姿勢に保持可能に形成されており、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23は、湾曲形状の外側を形成し、第1搬送経路21を構成する第1経路形成部材23よりも第1面SF1から離れる位置に配置され、媒体Sは、湾曲姿勢である際に、搬送方向上流の端部が第1搬送経路21から第2搬送経路22へ移動する。
前記構成によれば、従来のようにブラシに頼らずとも、後端SEが第1搬送経路21から第2搬送経路22へ移動するときの媒体Sの動きと湾曲外側部材23aとによる作用で、媒体Sに付いている穿孔屑を積極的に媒体Sから除去することができる。よって、摩耗したブラシの交換等のユーザーの負担を減らすことができる。
【0028】
また、第1実施形態によれば、穿孔部材30は、媒体Sの搬送方向上流の端部に穿孔する。
前記構成によれば、媒体Sの後端SE近傍に穿孔屑が付き易いが、後端SEが第1搬送経路21から第2搬送経路22へ移動するときの媒体Sの動きで後端SE近傍が湾曲外側部材23aと衝突するため、媒体Sに付いた穿孔屑を的確に除去することができる。
【0029】
また、第1実施形態によれば、穿孔部材30は、媒体Sの第2面SF2から第1面SF1への向きに穿孔する。
前記構成によれば、媒体Sの第1面SF1に穿孔屑が付き易いが、後端SEが第1搬送経路21から第2搬送経路22へ移動するときの媒体Sの動きで第1面SF1が湾曲外側部材23aと衝突するため、媒体Sに付いた穿孔屑を的確に除去することができる。
【0030】
また、第1実施形態によれば、後処理装置10は、穿孔により媒体Sから生じる穿孔屑を回収可能な回収部50を備える。回収部50は、穿孔部材30の下方において穿孔屑を回収するとともに、第2搬送経路22の下方において穿孔屑を回収する。
前記構成によれば、穿孔部材30において発生する穿孔屑と、穿孔部材30よりも下流の第2搬送経路22において媒体Sから除去される穿孔屑とを、同じ回収部50で回収することができる。
【0031】
また、第1実施形態によれば、第2搬送経路22は、水平面に対して上方に向かって湾曲している。
前記構成によれば、第2搬送経路22の上に向かって湾曲する形状を利用することで媒体Sから的確に穿孔屑を除去することができる。
【0032】
2.第2実施形態:
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態を含む以下の説明では、第1実施形態と共通する説明は省略する。
【0033】
図3は、第2実施形態にかかる後処理装置10の構成を、
図1と同様の視点により簡易的に示している。第2実施形態では、制御部11は、不図示のモーター等の所定の動力を利用して、湾曲外側部材23aの移動を制御することが可能である。制御部11は、湾曲外側部材23aを、第1位置P1と、第1位置P1よりも媒体Sの第1面SF1から離れる第2位置P2とに移動させることが可能である。第2位置P2は、第1実施形態における湾曲外側部材23aの位置と同じと解してもよい。第1実施形態では、湾曲外側部材23aは第2位置P2に固定されていると言える。
【0034】
湾曲外側部材23aが第1位置P1に在る場合、第2搬送経路22は経路外に対してほぼ閉じられている。このように第2搬送経路22を経路外に対して閉じることにより、第2搬送経路22において穿孔屑を媒体Sから除去する効果は低下するが、媒体Sと湾曲外側部材23aとの衝突音が漏れることを防ぎ、静寂性を高めることができる。そこで、第2実施形態では、制御部11は、記録部60による媒体Sに対する記録情報または後処理装置10が置かれた環境の環境情報に基づいて、湾曲外側部材23aを、第1位置P1または第2位置P2へ移動させる。記録情報または環境情報に基づくとは、記録情報または環境情報の少なくとも一方に基づくという意味である。概念としては、制御部11は、媒体Sに穿孔屑が付き易い状況では湾曲外側部材23aを第2位置P2へ移動させ、媒体Sに穿孔屑が付き難い状況では湾曲外側部材23aを第1位置P1へ移動させる。
【0035】
図4は、制御部11がメモリーに記憶されたプログラムに従って実行する湾曲外側部材23aの移動制御処理をフローチャートにより示している。制御部11は、1枚の媒体Sを対象として
図2の穿孔処理を実行する際に、
図4の移動制御処理を実行する。制御部11は、遅くとも媒体Sを対象とした
図2のフローチャートにおけるステップS110を終えるまでに、当該媒体Sに関する
図4の移動制御処理を終えていればよい。
【0036】
ステップS200では、制御部11は、環境情報を取得する。環境情報は、後処理装置10が置かれた環境の湿度や温度である。
図3によれば、制御部11は、温度計12および湿度計13と接続している。従って、制御部11は、温度計12から温度を取得し、湿度計13から湿度を取得すればよい。また、制御部11は、温度計12や湿度計13を有していなくても、ユーザーからの後処理装置10への入力操作により、湿度や温度を取得することができる。
【0037】
ステップS210では、制御部11は、対象の媒体Sについての記録情報を取得する。記録情報とは、記録部60が対象の媒体Sへ実行する、あるいは実行した記録の内容を示す情報であり、ページ単位の記録データである。記録部60が液体吐出ヘッド61を用いて記録する場合、記録情報は、ページ内の各画素について液体のドットの吐出、不吐出を規定したデータである。このような記録情報から、媒体Sにおける記録濃度が判る。制御部11が記録部60の制御部を兼ねている場合は、制御部11は、対象の媒体Sについての記録情報を既に取得していると言える。制御部11が記録部60の制御部を兼ねていない場合は、制御部11は、記録部60との通信や、ユーザーからの入力操作により、対象の媒体Sについての記録情報を取得する。
なお、ステップS200とステップS210との実行順は、
図4の記載とは逆であってもよいし、同時であってもよい。
【0038】
ステップS220では、制御部11は、ステップS200,S210で取得した環境情報および記録情報に基づいて、環境濃度テーブルを参照する。
図5は、温度及び湿度に応じて参照すべき環境濃度テーブルを決定するための環境テーブル80の例を示している。環境濃度テーブルや環境テーブル80は、制御部11がアクセス可能なメモリーに予め記憶されている。
【0039】
環境テーブル80は、横軸を温度、縦軸を湿度としており、制御部11は、ステップS200で取得した温度と湿度との組み合わせに応じて、後処理装置10が置かれた環境が環境A~Iのいずれであるかを環境テーブル80から決定する。環境テーブル80は、温度範囲を複数の温度しきい値t1,t2,t3,t4で区切っている。また、環境テーブル80は、湿度範囲を複数の湿度しきい値r1,r2,r3,r4で区切っている。制御部11は、例えば、温度が温度しきい値t1以上t2未満であり、湿度が湿度しきい値r1以上r2未満であれば、環境=環境Gと決定する。また、制御部11は、例えば、温度が温度しきい値t2以上t3未満であり、湿度が湿度しきい値r2以上r3未満であれば、環境=環境Eと決定する。
【0040】
図6は、環境毎の環境濃度テーブルの例を示している。環境濃度テーブルTA,TB,TC,TD,TE,TF,TG,TH,TIはいずれも、記録濃度と、湾曲経路の開口のON、OFFとの対応関係を規定している。湾曲経路の“開口ON”は、湾曲外側部材23aを開くこと、つまり第2位置P2を選択することを意味し、湾曲経路の“開口OFF”は、湾曲外側部材23aを閉じること、つまり第1位置P1を選択することを意味する。
【0041】
環境濃度テーブルの符号Tに続く符号A~Iは、環境テーブル80から決定した環境A~Iに対応している。制御部11は、温度及び湿度に応じて環境テーブル80から、例えば環境=環境Aと決定した場合は、環境濃度テーブルTAを参照する。また、制御部11は、温度及び湿度に応じて環境テーブル80から、例えば環境=環境Eと決定した場合は、環境濃度テーブルTEを参照する。
【0042】
制御部11は、ステップS210で取得した記録情報から、媒体Sにおける記録濃度を算出する。制御部11は、例えば、記録情報が示すページ内の全画素数のうちのドット吐出が規定されている画素数の比率を、記録濃度とする。言い換えると、ページ内に打ち込み可能なインクのドット数のうちの、媒体Sに吐出するインクのドット数の比率を記録濃度とする。ただし制御部11は、媒体Sの範囲全体を対象とした記録濃度ではなく、媒体Sの穿孔部材30による穿孔予定位置に対応する記録濃度を算出してもよい。上述したように、穿孔部材30は媒体Sの後端SE近傍の領域へ穿孔する。よって、後端SE近傍の領域が、穿孔予定位置である。また、このような後端SE近傍の領域の媒体S内における位置やサイズは予め定義することができる。従って、制御部11は、記録情報が示すページ内の全画素のうち後端SE近傍の領域に対応する各画素にのみ注目し、それら各画素の中でドット吐出が規定されている画素数の比率を、穿孔予定位置に対応する記録濃度として算出すればよい。
【0043】
制御部11は、このように算出した記録濃度と、参照する環境濃度テーブルとに基づいて、“開口ON”または“開口OFF”のいずれかを選択する。
ステップS230では、制御部11は、上述のように環境情報および記録情報に基づいて環境濃度テーブルを参照した結果、“開口ON”を選択した場合は、“Yes”の判定からステップS240へ進む。一方、“開口OFF”を選択した場合は、ステップS230の“No”の判定からステップS250へ進む。制御部11は、例えば、環境情報に応じて環境濃度テーブルTAを参照し、記録情報から算出した記録濃度が65%であれば、環境濃度テーブルTAに従って“開口ON”を選択する。
【0044】
環境濃度テーブルTA,TB,TC,TD,TE,TF,TG,TH,TIについて説明する。記録濃度が高い媒体S、つまり、多くの液体が付着した媒体Sは、媒体が膨潤して穿孔不良により穿孔屑が残り易い。従って、環境濃度テーブルは、基本的には、高い記録濃度に“開口ON”を対応付け、低い記録濃度に“開口OFF”を対応付けている。また、環境濃度テーブルにおいて、“開口OFF”から“開口ON”へ切り替わる記録濃度は、ステップS230の “No” と “Yes”を切り分ける値、つまり記録濃度に関する濃度しきい値と言える。例えば、環境濃度テーブルTAであれば、記録濃度60%が濃度しきい値である。また、環境濃度テーブルTBであれば、記録濃度40%が濃度しきい値である。また、環境濃度テーブルTDであれば、記録濃度80%が濃度しきい値である。
【0045】
このように、濃度しきい値は、環境濃度テーブル毎、つまり湿度または温度に応じて変わる。湿度が高い場合も媒体Sに穿孔屑が残り易い。従って、温度条件が同じ環境濃度テーブル、例えば、環境濃度テーブルTA,TD,TGを比較すると、湿度が高い環境濃度テーブルほど、濃度しきい値が低く設定されており、“開口ON”が選択され易い。また、温度が高い場合も媒体Sに穿孔屑が残り易い。従って、湿度条件が同じ環境濃度テーブル、例えば、環境濃度テーブルTA,TB,TCを比較すると、温度が高い環境濃度テーブルほど、濃度しきい値が低く設定されており、“開口ON”が選択され易い。
【0046】
また、記録濃度が低く且つ湿度が低いという条件において、静電気の影響により媒体Sに穿孔屑が付着し易いという現象が見られる。そのため、例えば、環境濃度テーブルTG,TH,TIといった、低湿度に対応する環境濃度テーブルでは、上述した濃度しきい値よりも低い所定の記録濃度を下回る記録濃度についても“開口ON”を対応付けている。
【0047】
ステップS240では、制御部11は、湾曲外側部材23aを第2位置P2へ移動させて、
図4のフローチャートを終える。なお、ステップS230で“Yes”と判定した時点で既に湾曲外側部材23aが第2位置P2に在る場合は、実質的にステップS240が完了しているため、制御部11は、湾曲外側部材23aの位置を変えることなく、
図4のフローチャートを終える。
【0048】
一方、ステップS250では、制御部11は、湾曲外側部材23aを第1位置P1へ移動させて、
図4のフローチャートを終える。ステップS230で“No”と判定した時点で既に湾曲外側部材23aが第1位置P1に在る場合は、実質的にステップS250が完了しているため、制御部11は、湾曲外側部材23aの位置を変えることなく、
図4のフローチャートを終える。
【0049】
制御部11は、以下の各方法のように湾曲外側部材23aの移動を制御してもよい。
例えば、制御部11は、媒体Sの穿孔予定位置に対応する記録濃度と、記録濃度に関する所定の濃度しきい値とを比較する。この所定の濃度しきい値は、温度や湿度に関係なく固定の値であって良い。そして、制御部11は、記録濃度が濃度しきい値以上である場合に、湾曲外側部材23aを第2位置P2に移動させ、記録濃度が濃度しきい値未満である場合に、湾曲外側部材23aを第1位置P1に移動させる。
【0050】
また例えば、制御部11は、環境情報である湿度と、湿度に関する所定の第1湿度しきい値とを比較する。第1湿度しきい値は、温度や記録濃度に関係なく固定の値であって良い。そして、制御部11は、湿度が第1湿度しきい値以上である場合に、湾曲外側部材23aを第2位置P2に移動させ、湿度が第1湿度しきい値未満である場合に、湾曲外側部材23aを第1位置P1に移動させる。
【0051】
また例えば、制御部11は、環境情報である湿度と湿度に関する所定の第2湿度しきい値とを比較し、かつ、環境情報である温度と温度に関する所定の温度しきい値とを比較する。なお、第1湿度しきい値>第2湿度しきい値、とする。第2湿度しきい値と所定の温度しきい値との組み合わせは、記録濃度に関係なく固定の値であって良い。そして、制御部11は、湿度が第2湿度しきい値未満であり、かつ、温度が温度しきい値未満である場合に、湾曲外側部材23aを第2位置P2に移動させる。一方、このような低湿かつ低温という条件が成立しない場合は、湾曲外側部材23aを第1位置P1に移動させる。
なお、制御部11は、これら各方法のいずれかによって湾曲外側部材23aを第2位置P2に移動させると判断できた場合に、湾曲外側部材23aを第2位置P2に移動させればよい。
【0052】
このように第2実施形態によれば、後処理装置10は、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23の移動を制御する制御部11を備える。制御部11は、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23を、第1位置P1と、第1位置P1よりも第1面SF1から離れる第2位置P2とに移動させることが可能であり、記録部60による媒体Sに対する記録情報または後処理装置10が置かれた環境の環境情報に基づいて、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23を、第1位置P1または第2位置P2へ移動させる。
前記構成によれば、記録情報や環境情報に基づいて、媒体Sに穿孔屑が付き易い状況か否かを判断して、湾曲外側部材23aを第2位置P2へ移動させたり第1位置P1へ移動させたりすることができる。また、湾曲外側部材23aを第1位置P1へ移動させることにより、静寂性を高めることができる。
【0053】
また、第2実施形態によれば、記録部60が液体を吐出することにより記録を行う機構であり、記録情報に基づいて、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23の移動を制御する場合、制御部11は、記録情報である、媒体Sの穿孔部材30による穿孔予定位置に対応する記録濃度と、記録濃度に関する濃度しきい値とを比較し、穿孔予定位置に対応する記録濃度が濃度しきい値以上である場合に、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23を第2位置P2に移動させる。
前記構成によれば、穿孔予定位置の記録濃度の高さに起因して、媒体Sに穿孔屑が付き易い状況であれば、湾曲外側部材23aを第2位置P2へ移動させて、積極的に媒体Sから穿孔屑を除去することができる。
【0054】
また、第2実施形態によれば、制御部11は、環境情報である湿度又は温度に応じて濃度しきい値を変更する。
前記構成によれば、記録濃度と比較する濃度しきい値を温度や湿度に応じて変更することにより、媒体Sに穿孔屑が付き易い状況であるか否かをより正確に判断して、湾曲外側部材23aの位置を選択することができる。
【0055】
また、第2実施形態によれば、環境情報に基づいて第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23の移動を制御する場合、制御部11は、環境情報である湿度と、湿度に関する第1湿度しきい値とを比較し、環境情報の湿度が第1湿度しきい値以上である場合に、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23を第2位置P2に移動させる。
前記構成によれば、高湿であるため媒体Sに穿孔屑が付き易い状況であれば、湾曲外側部材23aを第2位置P2へ移動させて、積極的に媒体Sから穿孔屑を除去することができる。
【0056】
また、第2実施形態によれば、環境情報に基づいて第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23の移動を制御する場合、制御部11は、環境情報である湿度および温度と、湿度に関する第2湿度しきい値および温度に関する温度しきい値とを比較し、環境情報の湿度が第2湿度しきい値未満であり、かつ、環境情報の温度が温度しきい値未満である場合に、第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23を第2位置P2に移動させる、としてもよい。
前記構成によれば、低湿低温であるため媒体Sに穿孔屑が付き易い状況であれば、湾曲外側部材23aを第2位置P2へ移動させて、積極的に媒体Sから穿孔屑を除去することができる。
【0057】
これまでに説明した第2実施形態は、媒体Sへ穿孔処理を行うに際して、その都度の記録情報や環境情報に基づいて自動的に湾曲外側部材23aの位置を選択して変更するものである。このような第2実施形態を、湾曲外側部材位置の「自動選択モード」と呼ぶ。一方で、記録情報や環境情報に関係なく湾曲外側部材23aの位置を第1位置P1に固定する「開口OFFモード」や、記録情報や環境情報に関係なく湾曲外側部材23aの位置を第2位置P2に固定する「開口ONモード」があってもよい。
【0058】
そして、ユーザーが任意に「自動選択モード」、「開口OFFモード」、「開口ONモード」のいずれかを選べるようにしてもよい。具体的には、媒体Sの種類が、穿孔屑が付き難い所定の第1種類である場合、ユーザーは、開口OFFモードの選択を制御部11に指示する。また、媒体Sの種類が、穿孔屑が付き易い所定の第2種類である場合、ユーザーは、自動選択モードの選択を制御部11に指示する。また、媒体Sの種類が、第2種類よりも更に穿孔屑が付き易い所定の第3種類に該当する場合、ユーザーは、開口ONモードの選択を制御部11に指示する。制御部11は、ユーザーからの指示に従いモードを選択し、選択したモードで後処理装置10を動作させる。
【0059】
また、制御部11は、穿孔処理のために搬送経路20にセットされた媒体Sの種類を所定のセンサーやユーザーからの入力により取得し、取得した媒体Sの種類が、第1、第2、第3種類のいずれに該当するかに応じて、「開口OFFモード」、「自動選択モード」「開口ONモード」のいずれかを選択してもよい。
【0060】
3.第3実施形態:
図7は、第3実施形態にかかる後処理装置10の構成を、
図1,3と同様の視点により簡易的に示している。
図7は、
図1と比べると、回収部50の替わりに第1回収部51および第2回収部52を有する点で異なる。つまり、第3実施形態によれば、後処理装置10は、穿孔により媒体Sから生じる穿孔屑を回収可能な回収部を備え、回収部は、穿孔部材30の下方に設けられた第1回収部51と、第2搬送経路22の下方に設けられた第2回収部52とに分かれている。そして、第2回収部52の容量は、第1回収部51の容量よりも少ない。
【0061】
回収部を、穿孔部材30の下方の第1回収部51と、第2搬送経路22の下方の第2回収部52とに分けることで、各回収部を、それぞれの位置において必要な容量にすることができ、回収部が装置内で占める空間を節約することができる。また、穿孔部材30の下方に比べれば、第2搬送経路22の下方に落下する穿孔屑の量は少ないため、第2回収部52は第1回収部51よりも小型化することができる。このように回収部50の替わりに第1回収部51および第2回収部52を用いる構成は、当然、第2実施形態や後述の各実施形態にも適用可能である。
【0062】
4.第4実施形態:
図8は、第4実施形態にかかる後処理装置10の構成を、
図1,3,7と同様の視点により簡易的に示している。
図8は、
図3と比べると、第2搬送経路22を搬送される媒体Sの第1面SF1に接触可能なブラシ70を有する点で異なる。
図8によれば、ブラシ70は、湾曲外側部材23aが第2位置P2に在る状態で、ブラシ70の毛先が湾曲外側部材23aの外から第2搬送経路22内へ進入する位置に配置されている。湾曲外側部材23aには、ブラシ70の毛先を通過させることが可能な窓或いはスリットが、符号25で示す範囲に形成されている。また、
図8によれば、湾曲外側部材23aが第1位置P1に在る場合は、ブラシ70は第2搬送経路22内に届かない。
【0063】
従って、第4実施形態によれば、湾曲外側部材23aが第1位置P1にある場合、第2搬送経路22を搬送される媒体Sにブラシ70は触れない。すなわち、湾曲外側部材23aが第1位置P1にある場合は、ブラシ70は使用されないため、ブラシ70の摩耗を抑えることができる。
一方、湾曲外側部材23aが第2位置P2にある場合は、第2搬送経路22を搬送される媒体Sにブラシ70が触れる。つまり、媒体Sの後端SEが第1搬送経路21から第2搬送経路22へ移動したとき、後端SEが湾曲外側部材23aに向かって移動し、媒体Sの第1面SF1がブラシ70に接触する。従って、これまでに説明した、湾曲外側部材23aが第2位置P2に在る場合の第2搬送経路22における穿孔屑の除去効果に、ブラシ70による穿孔屑の除去効果が加わる。
【0064】
5.その他の実施形態:
第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23(湾曲外側部材23a)が第2位置P2に配置されている場合は、湾曲外側部材23aが第1位置P1に配置されている場合よりも、媒体Sの搬送速度を速くする、としてもよい。
【0065】
具体的には、制御部11は、
図2の穿孔処理において、ステップS110を終えてステップS120の搬送を行う際に、湾曲外側部材23aが第1位置P1と第2位置P2とのどちらに在るかに応じて、搬送速度を変える。制御部11は、湾曲外側部材23aが第1位置P1に在る場合は、ステップS120において、所定の第1速度で搬送部に媒体Sを搬送させ、湾曲外側部材23aが第2位置P2に在る場合は、ステップS120において、第1速度よりも速い所定の第2速度で搬送部に媒体Sを搬送させる。このように、湾曲外側部材23aが第2位置P2に在る場合は、搬送速度を高速化することにより、後端SEが第2搬送経路22へ移動した媒体Sが湾曲外側部材23aに衝突することによる穿孔屑の除去効果を、より高めることができる。
【0066】
第2搬送経路22を構成する第1経路形成部材23(湾曲外側部材23a)が第2位置P2に配置されている場合、媒体Sが穿孔部材30により穿孔される前の媒体Sの搬送速度よりも、媒体Sが穿孔部材30により穿孔された後の媒体Sの搬送速度を速くする、としてもよい。
【0067】
図2によれば、媒体Sが穿孔される前の媒体Sの搬送速度は、ステップS100の搬送の速度であり、媒体Sが穿孔された後の媒体Sの搬送速度は、ステップS120の搬送の速度である。制御部11は、ステップS100では、所定の第3速度で搬送部に媒体Sを搬送させる。そして、ステップS110を終えた制御部11は、湾曲外側部材23aが第1位置P1に在れば、ステップS120において、ステップS100と同じ第3速度で搬送部に媒体Sを搬送させる。一方、湾曲外側部材23aが第2位置P2に在れば、ステップS120において、第3速度よりも速い所定の第4速度で搬送部に媒体Sを搬送させる。なお、第1速度=第3速度、かつ、第2速度=第4速度と解してもよい。このように、湾曲外側部材23aが第2位置P2に在る場合は、媒体Sが穿孔された後の媒体Sの搬送速度を高速化することにより、後端SEが第2搬送経路22へ移動した媒体Sが湾曲外側部材23aに衝突することによる穿孔屑の除去効果を、より高めることができる。
【0068】
記録部60が採用する記録方式は、液体吐出ヘッド61を用いたインクジェット方式に限らず、電子写真方式やサーマル方式等、他の方式であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…後処理装置、11…制御部、12…温度計、13…湿度計、20…搬送経路、21…第1搬送経路、22…第2搬送経路、23…第1経路形成部材、23a…湾曲外側部材、24…第2経路形成部材、30…穿孔部材、31…パンチ針、32…パンチ針孔、33…パンチ台、40…第1搬送ローラー対、41…第2搬送ローラー対、50…回収部、51…第1回収部、52…第2回収部、60…記録部、61…液体吐出ヘッド、70…ブラシ、80…環境テーブル、D1…搬送方向、P1…第1位置、P2…第2位置、S…媒体、SE…後端、SF1…第1面、SF2…第2面、TA,TB,TC,TD,TE,TF,TG,TH,TI…環境濃度テーブル