(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20230101AFI20241210BHJP
B01D 17/05 20060101ALI20241210BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C02F1/52 F
B01D17/05 501A
B01D21/01 102
C02F1/52 A
(21)【出願番号】P 2021022012
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 絢霞
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真隆
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-159880(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111792702(CN,A)
【文献】特開2019-018192(JP,A)
【文献】特開2017-039088(JP,A)
【文献】特開2020-006332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00- 1/78
B01D 21/00-21/34
B01D 17/04-17/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物と、油分と、界面活性剤と、含む排水を処理する方法であって、
前記排水に、塩と無機凝集剤とを添加する凝集処理工程、及び
前記凝集処理により排水中に形成されたフロックを除去するフロック除去工程、を備える排水処理方法
であって、
前記油分の濃度は、10mg/L以上1000mg/L以下であり、
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は塩化カリウムであり、
前記無機凝集剤は、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、又はポリ硫酸第二鉄であり、
前記凝集処理工程において、高分子凝集剤を0.01mg/L以下添加するか、又は、全く添加しない、排水処理方法。
【請求項2】
前記有機物の濃度(CODMn)は、10mg/L以上1000mg/L以下である、請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記フロック除去工程でフロックが除去された処理水に対し高次処理を行う高次処理工程、を更に備える、請求項1
又は2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記排水は、有機物濃度測定器を備えた排水貯留槽に貯留され、該排水貯留槽から前記凝集処理工程が行われる凝集処理槽に排水を移送する排水移送工程、を含み、
前記凝集処理工程において、前記有機物濃度測定器から得られた有機物濃度情報に基づき、前記無機凝集剤の添加量を調整する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の、排水処理方法。
【請求項5】
有機物と、油分と、界面活性剤と、含む排水を貯留する排水貯留槽と、
該排水に、塩と無機凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理槽と、
凝集処理で形成された排水のフロックを除去する固液分離槽と、
を備える、排水処理装置
であって、
前記油分の濃度は、10mg/L以上1000mg/L以下であり、
前記塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は塩化カリウムであり、
前記無機凝集剤は、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、又はポリ硫酸第二鉄であり、
前記凝集処理において、高分子凝集剤を0.01mg/L以下添加するか、又は、全く添加しない、排水処理装置。
【請求項6】
前記有機物の濃度(CODMn)は、10mg/L以上1000mg/L以下である、請求項
5に記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記固液分離槽で得られた処理水に対し高次処理を行う高次処理槽、を更に備える、請求項
5又は6に記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記排水貯留槽は有機物濃度測定器を備え、
前記凝集処理槽は、前記有機物濃度測定器から得られた有機物濃度情報に基づき、前記無機凝集剤及び/又は塩の添加量を調整する添加量制御機構、を有する、請求項
5~7のいずれか1項に記載の、排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機物と油分と界面活性剤とを含む排水に対する排水処理方法及び排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール製造工場では、貼合機由来の糊洗浄水及び製函機由来のインキ洗浄水が排水として発生する。この排水には、糊などの有機物が含まれるとともに、油分や界面活性剤が含まれ、排水に含まれる油分と界面活性剤とが乳化してエマルションを形成する場合がある。
【0003】
含油廃水において、エマルションが形成された油分を除去する方法として、被処理水に塩を添加する前処理工程と、凝集剤を添加する凝集処理工程と、を備えた含油廃水の処理方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、エマルションを形成した含油廃水から油分を回収する方法として、被処理水に塩を添加する前処理工程と、前処理工程で油水分離した被処理水から油分を分離する分離工程と、を備えた含油廃水の処理方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-39088号公報
【文献】特開2017-94260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、廃水に界面活性剤が含有されてはおらず、また、凝集剤の添加において、無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用することから、汚泥量が増加してその後の処理に負荷がかかること、そして処理水の粘度が上昇すること、といった問題点がある。
また、特許文献2においては、廃水中の油分を回収することから凝集剤を使用せず、そのため、有機物と、油分と、界面活性剤と、を含む排水処理の観点からは不十分と言わざるをえない。
本発明は、有機物と、油分と、界面活性剤と、を含む排水を処理する、新たな方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討し、有機物と、油分と、界面活性剤と、を含む排水に、塩と無機凝集剤とを同一工程で添加することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は以下のものを含む。
[1]有機物と、油分と、界面活性剤と、含む排水を処理する方法であって、
前記排水に、塩と無機凝集剤とを添加する凝集処理工程、及び
前記凝集処理により排水中に形成されたフロックを除去するフロック除去工程、を備える排水処理方法。
[2]前記有機物の濃度(CODMn)は、10mg/L以上1000mg/L以下である、[1]に記載の排水処理方法。
[3]前記油分の濃度は、10mg/L以上1000mg/L以下である、[1]又は[2]に記載の排水処理方法。
[4]前記凝集処理工程において、高分子凝集剤を実質的に使用しない、[1]~[3]のいずれかに記載の排水処理方法。
[5]前記フロック除去工程でフロックが除去された処理水に対し高次処理を行う高次処理工程、を更に備える、[1]~[4]のいずれかに記載の排水処理方法。
[6]前記排水は、有機物濃度測定器を備えた排水貯留槽に貯留され、該排水貯留槽から前記凝集処理工程が行われる凝集処理槽に排水を移送する移送工程、を含み、
前記凝集処理工程において、前記有機物濃度測定器から得られた有機物濃度情報に基づき、前記無機凝集剤の添加量を調整する、[1]~[5]のいずれかに記載の、排水処理方法。
[7]有機物と、油分と、界面活性剤と、含む排水を貯留する排水貯留槽と、
該排水に、塩と無機凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理槽と、
凝集処理で形成された排水のフロックを除去する固液分離槽と、
を備える、排水処理装置。
[8]前記有機物の濃度(CODMn)は、10mg/L以上1000mg/L以下である、[7]に記載の排水処理装置。
[9]前記油分の濃度は、10mg/L以上1000mg/L以下である、[7]又は[8]に記載の排水処理装置。
[10]前記凝集処理槽において、高分子凝集剤を実質的に使用しない、[7]~[9]のいずれかに記載の排水処理装置。
[11]前記固液分離槽で得られた処理水に対し高次処理を行う高次処理槽、を更に備える、[7]~[10]のいずれかに記載の排水処理装置。
[12]前記排水貯留槽は、有機物濃度測定器を備え、
前記凝集処理槽において、前記有機物濃度測定器から得られた有機物濃度情報に基づき、前記無機凝集剤及び/又は塩の添加量を調整する添加量制御機構、を有する[7]~[11]のいずれかに記載の、排水処理装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、有機物と、油分と、界面活性剤と、を含む排水を、効果的に処理する排水処理方法、及び排水処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一形態に係る排水処理方法の工程を示すフロー図である。
【
図2】本発明の一形態に係る排水処理装置を示す模式図である。
【
図3】本発明の一形態に係る排水処理方法の工程を示すフロー図である
【
図4】本発明の一形態に係る排水処理装置を示す模式図である。
【
図5】本発明の一形態に係る排水処理装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一形態は、有機物と、油分と、界面活性剤と、含む排水を処理する方法であって、前記排水に、塩と無機凝集剤とを添加する凝集処理工程、及び前記凝集処理により排水中に形成されたフロックを除去するフロック除去工程、を備える排水処理方法である。
また、本発明の別の形態は、有機物と、油分と、界面活性剤と、含む排水を貯留する排水貯留槽と、該排水に、塩と無機凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理槽と、凝集処理で形成された排水のフロックを分離・除去する固液分離槽と、を備える、排水処理装置である。以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本明細書において、前記有機物とは、泥、動植物の代謝物、化学薬品含む高分子など、「油脂系以外」の有機物質である。従って、水の汚濁成分となる有機成分は、「油分」と「有機物(油分以外の有機物質)」から構成される。
なお、前記油分と前記有機物は、それぞれに分析方法が異なり、それぞれの分析方法で測定することができる。分析方法は、例えば、前記有機物をCODMnまたはCODCr
で測定でき、油分をノルマルヘキサン抽出物質(動植物油または鉱物油)で測定できる。
【0011】
図1は、本発明の一形態に係る排水処理方法の工程を示すフロー図である。
本形態の排水処理方法は、排水貯留工程、排水移送工程、凝集処理工程、フロック除去工程、及び高次処理工程を含み得る。これらの工程のうち、凝集処理工程、及びフロック除去工程以外の工程は、適宜省略してもよく、他の工程に代替してもよい。またこのフロー図にない工程を適宜追加してもよい。
【0012】
図2は、上記排水処理方法を実施する排水処理装置10を示す模式図である。排水処理装置10は、排水貯留槽11と、凝集処理槽12と、固液分離槽13と、を備える。図中の各槽を結ぶ矢印は、送水ラインなどによる排水(被処理水、処理水)又はフロック(汚泥)の流れを示している。また、矢印上の弁14の開閉により、排水(被処理水、処理水)又は汚泥が、次の槽に移送され得る。
排水貯留槽11中の排水は、一例では段ボール工場のクリーニング排水であり、貼合機由来の糊洗浄水及び製函機由来のインキ洗浄水などであり得る。このような排水は、有機物と、油分と、界面活性剤とが含まれるが、これ以外のものが含まれていてもよい。また、含まれる油分と界面活性剤とがエマルションを形成していてもよく、形成していなくてもよい。なお、排水中の有機物、油分、界面活性剤の種類は特に限定されず、排水中に混入し得るものであればよい。
【0013】
排水中における有機物の濃度(CODMn)は特段限定されないが、10mg/L以上1000mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以上500mg/L以下であることが、より好ましい。
排水中における油分の濃度は特段限定されないが、10mg/L以上1000mg/L以下であることが好ましく、30mg/L以上500mg/L以下であることが、より好ましい。なお、油分濃度は、ノルマルヘキサン抽出物質として測定される。
排水中における界面活性剤の濃度は特段限定されないが、10mg/L以上3000mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以上2000mg/L以下であることが、より好ましい。
【0014】
凝集処理槽12は、排水貯留槽11から移送された排水に塩と無機凝集剤とを添加することで、排水に含まれる微細粒子を凝集させてフロック化させる槽である。凝集処理槽12は通常、凝集効率を向上させるために排水を撹拌する撹拌機を備えるが、備えていなくてもよい。
本形態では、同一工程、即ち凝集処理工程において、排水に塩と無機凝集剤とを添加する。無機凝集剤に加えて塩を添加することで、油分と界面活性剤によって排水中に形成されるエマルションの分離を促進でき、無機凝集剤による凝集効果が向上する。また、塩と無機凝集剤とを同一工程で添加することで、エマルションの分離と有機物の凝集とが同時に進行し、排水処理の効率が向上する。
凝集処理工程において排水に塩と無機凝集剤とを添加する際、同一工程において添加できれば、同時に添加してもよく、塩を先に添加してもよい。エマルションの分離と有機物の凝集とを同時に進行させて排水処理の効率を向上させる観点から、同時に添加することが好ましい。
【0015】
添加する塩の種類は特段限定されず、排水中でイオンとして存在することが可能な塩であればよく、排水に溶解して電離しやすい塩が好ましい。具体的には塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、などが挙げられる。
排水への塩の添加量は特段限定されないが、50000mg/L以下であることが好ましく、30000mg/L以下であることがより好ましく、20000mg/L以下であることがもっとも好ましい。なお、塩の添加量の下限は限定されないが、0mg/Lより
多いことが好ましく、500mg/L以上であることがより好ましい。
【0016】
添加する無機添加剤の種類は特段限定されず、公知の無機凝集剤を用いることができ、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。
排水への無機凝集剤の添加量は、前記無機凝集剤の固形量換算で、排水に対して、好ましくは5質量ppm~1000質量ppmであり、より好ましくは10質量ppm~500質量ppmであり、更に好ましくは、20質量ppm~200質量ppmである。
【0017】
凝集処理工程では、凝集処理槽12にpH調整剤を添加してpHを調整してもよい。pH調整剤としては既知の酸またはアルカリを用いることができる。凝集処理槽12中の排水のpHは、無機凝集剤の種類により適宜設定され、アルミ系凝集剤の場合は、好ましくは5.0~8.0程度、より好ましくは6.0~7.5程度、さらに好ましくは6.5~7.0程度に制御すればよい。鉄系凝集剤の場合、該pHは、好ましくは4.0以上、より好ましくは6.5~7.0程度に制御すればよい。
【0018】
凝集処理工程では、凝集処理槽12に、塩、無機凝集剤、及びpH調整剤以外の、その他の物質を実質的に添加しないことが好ましく、特に高分子凝集剤を実質的に添加しないことが好ましい。高分子凝集剤を実質的に添加しないことで、凝集した凝集物の粘度上昇が抑えられることから、槽や移送配管へ凝集物が付着することを抑制できる。また排水の粘度上昇を抑えることができることから、排水と汚泥との分離不良を抑制できる。更に、汚泥の含水率が低減されることから汚泥量(嵩)が抑制され、汚泥処理コストが低減される。
【0019】
なお、本明細書において「実質的に添加しない」とは、上記説明した高分子凝集剤を添加しないことによる効果が得られる範囲においては、少量添加することを許容するものであり、高分子凝集剤を添加する場合には0.01mg/L以下であることが好ましく、0.001mg/L以下であることがより好ましく、全く添加しないことが更に好ましい。
高分子凝集剤としては特に制限されず、例えば、ポリアクリルアミド系、2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などが挙げられる。高分子凝集剤には、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤などがあげられる。
【0020】
固液分離槽13では、凝集処理槽12から移送されたフロックを含む排水に対して固液分離を行い、処理水18とフロックの凝集体である汚泥17とに分離して、汚泥17を除去する。このフロック除去工程は特に限定されず、公知の除去方法を採用すればよい。一例では、加圧により汚泥17を排水中で浮上させて、処理水18と汚泥17とに分離させることができる。また別の例では、排水を沈降分離により所定時間静置させ、上澄み液(処理水)と沈殿物(汚泥)とに分離させることができる。
【0021】
分離した汚泥17は、既知の汚泥処理方法により処理される。本形態では、高分子凝集剤を実質的に添加しておらず、分離した汚泥の含水率が低減されることから汚泥量(嵩)が抑制され、汚泥処理コストを低減できる、というメリットを有する。
また処理水18は、後述する好ましい形態で説明するような、高次処理工程を経てもよい。
【0022】
図3は、本発明の別の形態に係る排水処理方法の工程を示すフロー図である。本形態の排水処理方法は、排水貯留工程、排水移送工程、凝集処理工程、フロック除去工程、及び高次処理工程を含み得る。そして、排水貯留工程で貯留した排水中の有機物濃度及び/又は塩濃度を測定し、その情報に基づいて、無機凝集剤及び/又は塩の濃度制御手段により
、凝集処理工程において添加する無機凝集剤及び/又は塩の濃度を制御する。
【0023】
図4は、上記別の形態の排水処理方法を実施する排水処理装置20を示す模式図である。排水処理装置20は、
図2に示す排水処理装置10と同様、排水貯留槽21と、凝集処理槽22と、固液分離槽23と、を備え、塩25と無機凝集剤26とを凝集処理槽22中に添加する。
本形態では、排水貯留槽21に有機物濃度測定器29が備えられる。そして、有機物濃度測定器29で測定された有機物濃度の情報を、無機凝集剤濃度制御機構及び/又は塩濃度制御機構(図示せず)にフィードフォワードすることで、塩濃度制御機構が凝集処理槽へ添加する塩25の添加量を、無機凝集剤濃度制御機構が凝集処理槽へ添加する無機凝集剤26の添加量を調整し得る(図中破線矢印で示す)。すなわち、有機物濃度測定器29で得られた有機物濃度が高い場合には、添加する無機凝集剤及び/又は塩の量を多くする制御を行い、有機物濃度測定器29で得られた有機物濃度が低い場合には、添加する無機凝集剤及び/又は塩の量を少なくする制御を行う。
【0024】
無機凝集剤及び/又は塩の量の制御は、例えば公知の制御プログラムに、予め排水中の有機物濃度と添加する無機凝集剤及び/又は塩との関係式を入力し、該制御プログラムを備えた無機凝集剤濃度制御機構及び/又は塩濃度制御機構により実施してもよく、排水処理装置の管理者が排水中の有機物濃度の情報を把握し、その濃度に応じて無機凝集剤濃度及び/又は塩の量を制御してもよい。
このように、排水貯留槽21に備えられた有機物濃度測定器29で測定された排水中の有機物濃度の情報をフィードフォワードして、凝集処理槽22に添加する塩25及び/又は無機凝集剤26の添加量を制御することで、塩及び/又は無機凝集剤を必要以上に添加する無駄を減らし、排水処理を効率よく実施することができる。
【0025】
図5は、本発明の更に別の形態に係る排水処理装置を示す模式図であり、高次処理工程を行う高次処理槽39を含む排水処理装置30を示す模式図である。排水処理装置30では、固液分離槽33で汚泥37を分離した後の処理水を、高次処理槽39に移送する。高次処理槽39は、処理水を更に高いレベルで処理する処理槽である。高次処理槽39は活性炭39aを備え、活性炭39aが有する細孔の吸着作用により処理水中の有機物や不純物を取り除くことができる。
そのため、高次処理槽39で高次処理された高次処理水38は、高いレベルで処理された処理水となる。
【0026】
高次処理槽39では、処理水を高次処理できれば、活性炭以外の高次処理手段を用いてもよい。活性炭以外の高次処理手段としては、砂ろ過などが挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る排水処理装置10、20、30はいずれも弁を有し、弁の開閉により排水(処理水)の移送を調整できる。そのため、弁の開閉を一定の期間毎に行うことで、バッチ式(間欠式)での排水処理が可能である。一方で、弁を基本的に開放する形態とすることで、連続式での排水処理を行うことも可能である。
【実施例】
【0028】
以下、具体的な実験データを示し、本発明の効果を説明する。
油分としてノルマルヘキサン鉱物油(ノルマルヘキサン抽出濃度110mg/L)と、界面活性剤として業務用洗濯洗剤(250mg/L)と、動植物類有機物を含む洗浄排水を準備した。
この洗浄排水に対し、表1に示す量の硫酸バンド(無機凝集剤)、及び塩化ナトリウム(塩)を同時に添加し、加圧浮上(圧力0.6Pa)処理をした。その後、洗浄排水中の油分含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
【0030】
表1に示すとおり、硫酸バンドと塩化ナトリウムのいずれか一方、又は両方添加しない(添加量が0)場合(比較例に相当)に比べ、塩と無機凝集剤と両方添加する場合(実施例に相当)のほうが、洗浄排水中の油分含有量が少ないことが分かる。
【符号の説明】
【0031】
10、20、30 排水処理装置
11、21、31 排水貯留槽
12、22、32 凝集処理槽
13、23、33 固液分離槽
14、24、34 弁
15、25、35 塩
16、26、36 無機凝集剤
17、27、37 汚泥
18、28 処理水
29 有機物濃度測定器
38 高次処理水
39 高次処理増
39a 活性炭