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特許7600739調速機ロープの交換補助装置、及び調速機ロープの交換方法
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  • 特許-調速機ロープの交換補助装置、及び調速機ロープの交換方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】調速機ロープの交換補助装置、及び調速機ロープの交換方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20241210BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B66B7/00 K
B66B7/06 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021024274
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126286
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃司
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-049451(JP,A)
【文献】特開2017-001778(JP,A)
【文献】特開2018-012573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0124807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路の機械室に設けられた調速機と、前記昇降路のピット内において上下方向に移動自在に設けられた張り車との間に無端状に張られた調速機ロープを交換するための交換補助装置であって、
前記昇降路において、かごのかご上からの操作が可能な位置に固定された支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記張り車を前記調速機ロープのテンションが解放される高さまで引き上げた状態で保持するための引き上げ装置と、
を備え
前記引き上げ装置は、
一端側が前記張り車に固定され、他端側にフックが取り付けられた引き上げ用ロープと、
前記支持部材に支持され、前記フックを引っ掛けるためのフック受けと、を含み、
前記フック受けは、前記フックを引っ掛けるための引掛け部を備え、
前記引き上げ用ロープは、前記フックを前記引掛け部に引っ掛けた状態で前記張り車が引き上げられる長さに調整されており、
前記フック受けから下方に垂れ下がるように取り付けられた弾性部材と、
前記弾性部材の他端側に設けられ、前記引き上げ装置が使用されていない間、前記フックを引っ掛けるための常設用フックと、
を更に含んで構成される調速機ロープの交換補助装置。
【請求項2】
前記引掛け部は、上下方向に並んだ複数の孔を含んで構成される
請求項に記載の調速機ロープの交換補助装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記昇降路の固定部材に対して着脱自在に構成されている
請求項1又は請求項2に記載の調速機ロープの交換補助装置。
【請求項4】
エレベータの昇降路の機械室に設けられた調速機と、前記昇降路のピット内において上下方向に移動自在に設けられた張り車との間に無端状に張られた調速機ロープを交換するための交換補助装置を用いて前記調速機ロープを旧ロープから新ロープへと交換するための交換方法であって、
前記交換補助装置は、
前記昇降路において、かごのかご上からの操作が可能な位置に固定された支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記張り車を前記調速機ロープのテンションが解放される高さまで引き上げた状態で保持するための引き上げ装置と、
を備え、
前記交換方法は、
前記引き上げ装置を前記かご上から操作可能な位置に前記かごを移動させる工程と、
前記かご上から前記引き上げ装置を操作して前記張り車を前記調速機ロープのテンションが解放される高さまで引き上げて保持する工程と、
前記旧ロープの端部と前記新ロープの端部とを繋いで前記かご上から前記新ロープを送り出すことによって、前記旧ロープを前記新ロープに取り替える工程と、
前記かご上から前記引き上げ装置を操作して前記張り車を下すことにより前記新ロープにテンションを付与する工程と、
を備える調速機ロープの交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの調速機ロープの交換補助装置、及び調速機ロープの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、昇降路内を昇降するかごの速度を常時監視し、かごが過速状態となった際にかごを非常停止させる調速機が備えられている。この調速機は、一般に、かごに連動する調速機ロープの移動速度を、調速機ロープが巻き掛けられた綱車の回転速度によって検出し、この綱車の回転速度が規定の上限値に達した際に、かごを非常停止させるように構成されている。
【0003】
調速機をこのように動作させるためには、調速機ロープの移動を確実に綱車に伝達させる必要がある。調速機ロープの張り車装置は、かかる目的のために備えられたものであり、調速機ロープに規定のテンションを付与することにより、調速機ロープと綱車との間に必要な摩擦力を発生させ、綱車を調速機ロープの移動に連動させる機能を有している。
【0004】
特許文献1には、調速機ロープの張り車装置の技術が開示されている。この技術の張り車装置は、アームの端部に固定された取付板に摺動子を固定して、この摺動子をガイドレールに対して上下方向にスライド可能に構成している。このような構成によれば、張り車、張り車おもり、アーム、取付板の位置関係を保持したまま、調速機ロープの伸縮に起因する張り車等の上下動に対応させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-40323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
調速機ロープは、エレベータの安全運行のために定期的に交換される。ここで、調速機ロープには、張り車装置によってテンションが付与されている。このため、調速機ロープの交換作業では、かごの上の作業員とは別に、ピットにおいて張り車装置を引き上げてテンションを解放するための補助要員の配置が必要となる。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ピットで作業する補助要員を必要とせずにエレベータの調速機ロープを交換することを可能にするための調速機ロープの交換補助装置、及び調速機ロープの交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の調速機ロープの交換補助装置は、エレベータの昇降路の機械室に設けられた調速機と、昇降路のピット内において上下方向に移動自在に設けられた張り車との間に無端状に張られた調速機ロープを交換するための交換補助装置であって、昇降路において、かごのかご上からの操作が可能な位置に固定された支持部材と、支持部材に支持され、張り車を調速機ロープのテンションが解放される高さまで引き上げた状態で保持するための引き上げ装置と、を備え、引き上げ装置は、一端側が張り車に固定され、他端側にフックが取り付けられた引き上げ用ロープと、支持部材に支持され、フックを引っ掛けるためのフック受けと、を含み、フック受けは、フックを引っ掛けるための引掛け部を備え、引き上げ用ロープは、フックを引掛け部に引っ掛けた状態で張り車が引き上げられる長さに調整されており、フック受けから下方に垂れ下がるように取り付けられた弾性部材と、弾性部材の他端側に設けられ、引き上げ装置が使用されていない間、フックを引っ掛けるための常設用フックと、を更に含んで構成されるものである。
【0009】
また、本開示の調速機ロープの交換方法は、当該交換補助装置を用いて調速機ロープを旧ロープから新ロープへと交換するための交換方法であって、引き上げ装置をかご上から操作可能な位置にかごを移動させる工程と、かご上から引き上げ装置を操作して張り車を調速機ロープのテンションが解放される高さまで引き上げて保持する工程と、旧ロープの端部と新ロープの端部とを繋いでかご上から新ロープを送り出すことによって、旧ロープを新ロープに取り替える工程と、かご上から引き上げ装置を操作して張り車を下すことにより新ロープにテンションを付与する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の調速機ロープの交換補助装置及び当該交換装置を用いた調速機ロープの交換方法によれば、かご上の作業員が引き上げ装置を操作することによって、張り車を調速機ロープのテンションが解放される高さまで引き上げて保持することができる。これにより、ピットで作業する補助要員を必要とせずにエレベータの調速機ロープを交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態におけるエレベータ装置の例を示す図である。
図2】実施の形態の交換補助装置を用いた調速機ロープの交換手順を説明するための図である。
図3】実施の形態の交換補助装置を用いた調速機ロープの交換手順を示すフローチャートである。
図4】実施の形態の引き上げ装置の変形例を示す図である。
図5】実施の形態の変形例の引き上げ装置において、作業員がフックをフック受けの孔に引っ掛けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態1.
1.実施の形態のエレベータ装置の構成
図1は、実施の形態におけるエレベータ装置の例を示す図である。エレベータ装置100は、例えば複数の階床を有する建物に適用される。建物において、エレベータ装置100の昇降路3が設けられる。昇降路3は、複数の階床にわたる鉛直方向に長い空間である。複数の階床のそれぞれには乗場10が設けられる。この例において、昇降路3の上方に機械室3aが設けられる。昇降路3の底部において、ピット3bが設けられる。
【0014】
エレベータ装置100は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、複数のパネル部材を互いに接続して内部空間を形成している。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3におけるかご1の背面側を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。
【0015】
主ロープ4は、巻上機5の駆動綱車6に巻き掛けられる。駆動綱車6が回転すると、駆動綱車6が回転した方向に応じた方向に主ロープ4が移動する。主ロープ4が移動する方向に応じてかご1は上昇或いは下降する。かご1の移動は、ガイドレール7によって案内される。
【0016】
ガイドレール7は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール7は、昇降路3のピット3bから昇降路3の頂部に亘って配置される。かご1は、2本のガイドレール7の間に配置される。
【0017】
かご1は、非常止め8を備える。非常止め8は、かご1の走行を強制的に停止する装置である。非常止め8は、例えばガイドレール7を挟み込むことなどによってかご1の走行を停止させる。
【0018】
つり合いおもり2は、かご1の背面側の昇降路3において、かご1が移動する方向とは反対の方向に移動する。つり合いおもり2の移動は、ガイドレール9によって案内される。
【0019】
ガイドレール9は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール9は、昇降路3のピット3bから昇降路3の頂部に亘って配置される。つり合いおもり2は、2本のガイドレール9の間に配置される。
【0020】
このようにして、かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3内で互いに相反する方向に昇降するつるべ状に吊持されている。すなわち、主ロープ4は、昇降路3内においてかご1とつり合いおもり2とを1:1ローピング方式で吊り下げている。
【0021】
エレベータ装置100は、調速機12を備えている。調速機12は、調速機シーブ14と、調速機ロープ16と、張り車18と、取付け部20と、連結腕22と、把持装置24と、を備える。調速機シーブ14は、例えば機械室3aなどに配置される。調速機ロープ16は、調速機シーブ14および張り車18に無端状に巻き掛けられるロープである。張り車18は、例えばピット3bに配置される。張り車18は、例えば張り車18に取り付けられた錘26の重量などによって調速機ロープ16にテンションを与えるシーブである。張り車18は、アーム28を介してガイドレール9に上下方向に移動自在に取り付けられる。即ち、張り車18は、アーム28によって上下方向のみ移動することができるように構成されている。
【0022】
なお、張り車18の構成に限定はない。すなわち、張り車18は、上下方向に移動することによって調速機ロープ16へのテンションの付与及び解放を行う構成であれば、種々の公知の構造を採用することができる。また、張り車18がアーム28を介して取り付けられるガイドレールは、つり合いおもり2を案内するためのガイドレール9に限らず、かご1を案内するためのガイドレール7であってもよい。
【0023】
取付け部20は、調速機ロープ16をかご1に取り付ける部分である。取付け部20は、例えば調速機ロープ16の両端部を保持することで調速機ロープ16を環状にしてもよい。連結腕22は、調速機ロープ16およびかご1の非常止め8を連結する機器である。調速機ロープ16は、取付け部20によってかご1の走行に連動して移動する。このとき、調速機シーブ14は、調速機ロープ16の移動に連動して回転する。把持装置24は、調速機シーブ14の回転速度が基準の速度を超えるときに調速機ロープ16を把持する装置である。把持装置24が調速機ロープ16を把持すると、調速機ロープ16の移動が停止する。このとき、連結腕22を通じて非常止め8が作動することによって、かご1の走行が停止する。
【0024】
ここで、調速機ロープ16は、例えば損傷した場合または使用期間が耐用年数を超えた場合などに、新規のロープに交換される。以下の説明では、交換前の調速機ロープ16を「旧ロープ」と呼び、交換される新規の調速機ロープ16を「新ロープ」と呼ぶ。調速機ロープ16の交換作業では、かご1の上の作業員が取付け部20の取り外し及び旧ロープから新ロープへの交換作業を行う。ただし、これらの作業は、張り車18によって調速機ロープ16に付与されているテンションを解放した後に行う必要がある。このため、必要に応じて張り車18の引き上げ、保持等の作業を行う別の作業員がピット3bに必要とされ、作業効率の観点での課題がある。
【0025】
本実施の形態のエレベータ装置100は、上記の課題を解決するための装置として、調速機ロープ16の交換補助装置30を備えている。交換補助装置30は、かご1の上の作業員が張り車18の引き上げ及び保持等の作業を行うことを補助するための装置である。交換補助装置30は、主要な構成として、支持部材32と、支持部材32に支持される引き上げ装置34と、を備える。
【0026】
支持部材32は、昇降路3内の固定部材としてのガイドレール9に引き上げ装置34を固定するためのブラケットとして機能する。支持部材32は、一端がガイドレール9に固定され、他端が張り車18の直上に位置するように水平方向に延びている。なお、支持部材32は、引き上げ装置34を張り車18の直上に固定できる構造であればその形状及び材質に限定はない。また、支持部材32が固定されるガイドレールは、かご1を案内するためのガイドレール7であってもよい。また、支持部材32は、交換作業時のみに設置可能なようにガイドレール9に対して着脱自在に構成されていてもよいし、また、常設のブラケットとしてガイドレール9に固定されていてもよい。
【0027】
引き上げ装置34は、引き上げ用ロープ36の先端に固定された対象物を引き上げる楊重機能と、引き上げ用ロープ36を任意の位置で保持する保持機能とを備えた引き上げ装置である。このような引き上げ装置34としては、例えば、引き上げ用ロープ36を巻き上げる機能を有するホイスト、チェーンブロック、等の巻き上げ装置が例示される。なお、引き上げ装置34の動力形式に限定はなく、手動式、電動式及び油圧式の何れが採用されていてもよい。
【0028】
引き上げ装置34の引き上げ用ロープ36の先端側は、張り車18のアーム28に取り付けられている。引き上げ装置34によって引き上げ用ロープ36を巻き取ることにより、張り車18及び錘26がアーム28とともに上方向に引き上げられる。これにより、調速機ロープ16のテンションが解放される。
【0029】
なお、支持部材32及び引き上げ装置34が配置される上下方向の位置に限定はない。ただし、調速機ロープ16の交換作業を行う際のかご1の停止位置は、乗場10からかご上へのアクセスが可能となる位置に設定される。このため、支持部材32の上下方向の位置は、かご上の作業員が引き上げ装置34を操作可能となる位置に固定されることが好ましい。また、かご1の停止位置は、極力低層階の乗場10からかご上へとアクセス可能な位置であることが好ましい。かご1の停止位置が低いほど、引き上げ装置34の引き上げ用ロープ36を短くすることができるからである。
【0030】
2.交換補助装置30を利用した調速機ロープの交換方法
次に、交換補助装置30を用いて調速機ロープ16を旧ロープから新ロープへと交換する作業の手順について説明する。なお、ここでは、交換補助装置30が常設されている場合の作業手順について説明する。
【0031】
図2は、本実施の形態の交換補助装置を用いた調速機ロープの交換手順を説明するための図である。また、図3は、本実施の形態の交換補助装置を用いた調速機ロープの交換手順を示すフローチャートである。作業員は、図3に示すフローチャートの手順に沿って調速機ロープ16の交換を行う。先ず、ステップS100に示す準備工程では、作業員は、二階の乗場10からかご1のかご上1aにアクセス可能な位置にかご1を停止させる。ここでのかご1の停止位置は、引き上げ装置34をかご上1aから操作可能な位置に対応している。これにより、作業員は二階の乗場10からかご上1aにアクセスして引き上げ装置34を操作することができる。
【0032】
次のステップS102に示す引き上げ工程では、作業員は、かご上1aから引き上げ装置34を操作して、張り車18を引き上げる。ここでの引き上げ高さは、調速機ロープ16のテンションが解放される高さとして予め規定された規定高さhとされる。そして、作業員は、張り車18を引き上げた状態で引き上げ装置34の保持機能を作動させて、張り車18を保持する。
【0033】
次の取り替え工程は、ステップS104からステップS108の手順を含む。ステップS104では、作業員は、かご1に取り付けられている取付け部20を取り外して、取付け部20から旧ロープの端部を取り外す。次のステップS106では、作業員は、旧ロープの端部に新ロープの端部を仮繋ぎする。そして、作業員は、新ロープを送り出すことにより、新ロープを調速機12の調速機シーブ14及び張り車18のシーブに巻き回す。
【0034】
次のステップS108では、作業員は、新ロープの両端部を取付け部20に取り付けることにより、新ロープを無端状に繋ぎ合わせる。そして、作業員は、取付け部20をかご1に取り付ける。
【0035】
次のステップS110に示す吊り下ろし工程では、作業員は、かご上1aから引き上げ装置34を操作して、張り車18を下す。そして、作業員は、引き上げ装置34の保持機能を解除する。これにより、張り車18は、調速機ロープ16にテンションを付与するとともに調速機ロープ16の伸縮に応じて上下方向に移動自在な状態に置かれる。
【0036】
以上のような交換補助装置30を用いた調速機ロープ16の交換手順によれば、ピット3bに作業員を配置することなく調速機ロープ16を旧ロープから新ロープに交換することができる。また、張り車18とピット3bとのクリアランスを調整する作業においても、引き上げ装置34によって張り車18を引き上げることができるので、調整作業の効率が高まる。さらに、ピット3bに作業員を配置する必要がないので、作業安全性の向上にも寄与する。
【0037】
なお、上述した調速機ロープ16の交換手順では、交換補助装置30が常設されている場合の作業手順について説明したが、交換補助装置30は常設されていなくてもよい。交換補助装置30が常設されていない場合、ステップS100の工程の後に、作業員がかご上1aから交換補助装置30を設置する工程を行えばよい。
【0038】
3.交換補助装置30の変形例
本実施の形態の交換補助装置30は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0039】
3-1.引き上げ装置34
引き上げ装置34は、ホイスト又はチェーンブロックのように引き上げ用ロープ36を巻き上げる機能を有していなくてもよい。図4は、本実施の形態の引き上げ装置の変形例を示す図である。図4に示す変形例の引き上げ装置34は、一端側が張り車18のアーム28に固定された引き上げ用ロープ36と、引き上げ用ロープ36の他端側に設けられたフック38と、フック38を引っ掛けるためのフック受け40とを含んで構成されている。
【0040】
フック受け40は上下方向に延びる部材であり支持部材32の先端側に固定されている。フック受け40の下端側には、弾性部材としてのスプリング42を介して常設用フック受け44が設けられている。常設用フック受け44は、交換補助装置30を使用していない間、フック38を引っ掛けて常設しておくためのものである。スプリング42は、フック受け40から下方に垂れ下がるように取り付けられている。スプリング42は、張り車18の上下方向の移動に伴うフック38の上下方向の移動を吸収するとともに引き上げ用ロープ36のたるみによるフック38の落下を防ぐためのものである。
【0041】
フック受け40には、上下方向に複数の孔46が設けられている。複数の孔46は、フック38を引っ掛けることにより張り車18を引き上げた状態で保持するための引掛け部の一例である。なお、複数の孔46は、それぞれ端部に開放された切り欠き穴として構成されていてもよい。このような構成によれば、フック38の引っ掛け易さが向上する。また、引掛け部は孔に限らずフック38を引っ掛けるための突起として構成されていてもよい。
【0042】
引き上げ用ロープ36は、フック38をフック受け40の孔46に引っ掛けることによって張り車18が引き上げられるようにその長さが調整されている。なお、引き上げ用ロープ36は経年変化等の要因で伸縮する。複数の孔46は、引き上げ用ロープ36の伸縮に応じて引き上げ量を調整可能にするためのものである。
【0043】
作業員は、引き上げ工程において、フック38を上方向に向かって引き上げることによって張り車18を引き上げる。そして、作業員は、フック38をフック受け40の孔46に引っ掛けることにより張り車18を保持する。図5は、本実施の形態の変形例の引き上げ装置において、作業員がフック38をフック受け40の孔46に引っ掛けた状態を示す図である。このような構成によれば、巻き上げる機能を有していなくても楊重機能とロック機能を備えた引き上げ装置34を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 かご、 1a かご上、 3 昇降路、 3a 機械室、 3b ピット、 4 主ロープ、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 7 ガイドレール、 9 ガイドレール、 10 乗場、 12 調速機、 14 調速機シーブ、 16 調速機ロープ、 18 張り車、 20 取付け部、 22 連結腕、 24 把持装置、 26 錘、 28 アーム、 30 交換補助装置、 32 支持部材、 34 引き上げ装置、 36 引き上げ用ロープ、 38 フック、 40 フック受け、 42 スプリング、 44 常設用フック受け、 46 孔、 100 エレベータ装置
図1
図2
図3
図4
図5