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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両運行管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241210BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20241210BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241210BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20241210BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
G05D1/43
G08G1/123 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021026631
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128220
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】半澤 弘明
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-116215(JP,A)
【文献】特開2003-208222(JP,A)
【文献】特開2020-149370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
G08G 1/123
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、事業所内の通路を走行し、運転者による作業のために作業位置において停止させられる複数の車両の運行管理を行う車両運行管理装置であって、
複数の車両の各々に対して、その各々が停止すべき1以上の作業位置での作業を割り当てるとともに、その作業位置を巡るような走行ルートを決定することで、運行プランを決定し、
複数の車両の各々の位置を随時把握するとともに、複数の車両の各々がいずれかの作業位置において作業を行う場合のその作業の時間に関する情報である作業時間関連情報を、その作業が行われる際にその作業を行う運転者から受け付け、
複数の車両の運行プランと、受け付けた作業時間関連情報とに基づき、1の車両のある作業位置における作業が他の車両の運行を阻害すると判断した場合に、当該他の車両への作業の割り当てを変更することなく、当該他の車両の走行ルートと当該他の車両に割り当てられた作業の順序との少なくとも一方を変更することで、当該他の車両の運行プランを変更するように構成された車両運行管理装置。
【請求項2】
前記作業時間関連情報が、運転者が見積もった推定作業時間を含む請求項1に記載の車両運行管理装置。
【請求項3】
前記作業時間関連情報が、作業時間を認定するためのファクタであり、
そのファクタが、作業量と作業の難易度との少なくとも一方を含む作業ファクタと、作業を行う運転者の熟練度と体調との少なくとも一方を含む作業者ファクタと、当該作業が何番目に行われる作業であるかを示す工程ファクタとの少なくとも1つを含む請求項1に記載の車両運行管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業所内を走行する複数の車両の運行管理を行う車両運行管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、事業所である生産工場等においては、複数の車両が、搬送経路に沿って、物品を搬送する。このような物流搬送では、例えば、下記特許文献に記載されているように、複数の車両に、適切に作業を割り当てて搬送経路を決定することで、物流の効率を向上させることができる。具体的には、下記特許文献に記載されている技術では、出発位置から最終位置までの搬送時間が最小となるように搬送経路を決定し、かつ、車両の走行時における搬送経路の実際の走行時間を考慮して、搬送経路を更新するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-246864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されている技術では、搬送経路におけるある区間の他車両による占有を考慮して、搬送経路を更新しているが、占有する時間は、占有している区間においてなされる作業の内容等によってまちまちであり、その作業の時間を考慮することが、事業所内を走行する複数の車両の実用的な運行管理において有意義である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両運行管理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両運行管理装置は、
それぞれが、事業所内の通路を走行し、運転者による作業のために作業位置において停止させられる複数の車両の運行管理を行う車両運行管理装置であって、
複数の車両の各々に対して、その各々が停止すべき1以上の作業位置での作業を割り当てるとともに、その作業位置を巡るような走行ルートを決定することで、運行プランを決定し、
複数の車両の各々の位置を随時把握するとともに、複数の車両の各々がいずれかの作業位置において作業を行う場合のその作業の時間に関する情報である作業時間関連情報を、その作業が行われる際にその作業を行う運転者から受け付け、
複数の車両の運行プランと、受け付けた作業時間関連情報とに基づき、1の車両のある作業位置における作業が他の車両の運行を阻害すると判断した場合に、当該他の車両への作業の割り当てを変更することなく、当該他の車両の走行ルートと当該他の車両に割り当てられた作業の順序との少なくとも一方を変更することで、当該他の車両の運行プランを変更するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の車両運行管理装置によれば、例えば、作業者によって入力された作業時間関連情報に基づいて、他の車両の運行プランが変更されることで、効率のよい運行管理が実行されることになる。したがって、本発明の車両運行管理装置は、実用性の高いものとなる。
【発明の態様】
【0007】
本発明の車両運行管理装置の管理対象となる車両が運行される「事業所」は、工場,倉庫等である。事業所は、工場,倉庫等が1棟であることに限定されず、複数棟存在するものであってもよい。事業所内において車両が走行する「通路」は、車両がすれ違ったり、車両が他の車両を追い抜けるような幅広のものであっても、それらすれ違いや追い抜きができないような幅狭のものであってもよく、それら幅広のものと幅狭のものとが混在していてもよい。他の車両の運行の阻害を防止若しくは軽減することが目的であることに鑑みれば、幅狭の通路が含まれる事業所において、本発明の車両運行管理装置が適用される利点が大きい。また、通路は、一方通行であっても双方通行であってもよいが、上記目的に鑑みれば、一方通行の通路が含まれる事業所において、本発明の車両運行管理装置が適用される利点が大きい。
【0008】
管理対象となる「車両」は、物品を搬送する搬送車や、事業所内の各所の点検のために巡回するような車両等、種々の車両が含まれる。車両が作業位置において停止させられた状態で行われる「作業」は、例えば、車両が搬送車である場合には、製品,商品,加工品,素材等の物品の積み下ろしが該当し、また、例えば、車両が点検車である場合には、点検が該当する。車両は、自動運転車両であってもよく、運転者によって運転される車両であってもよい。運転者によって運転される車両の場合、その運転者が作業者となって、上記作業を行ってもよい。車両が自動運転車両であるか否かに拘わらず、予め作業位置にいる作業者が上記作業を行ってもよい。また、車両自体が行ってもよい。
【0009】
本発明の車両運行管理装置は、CPU,ROM,RAM等によって構成されるコンピュータを主体とする装置であってもよい。各車両と情報を交信しながら各車両の運行管理を行うために、車両運行管理装置は、通信機を備えることが望ましい。
【0010】
「運行プラン」には、各車両についての、行うべき1以上の作業およびそれら1以上の作業を行う1以上の作業位置、1以上の作業の行う順序(1以上の作業位置の停止順序)、その順序に従って1以上の作業位置を巡る走行ルート等が含まれる。本発明の車両運行管理装置は、各車両に対して、所定の時点、若しくは、運行を開始可能な時点で、運行プランを決定すればよい。具体的には、例えば、1の車両に関連して行うべき1以上の作業とその内容とを含む作業指示(例えば、作業リスト等が含まれる)に基づいて、その車両が最も短い走行ルートを辿るように、1以上の作業の順序、すなわち、1以上の作業位置の停止順序を決定し、走行ルートを決定すればよい。複数の車両の各々が、運転者によって運転される車両である場合、各車両に対して、決定された運行プランが送信され、その送信された運行プランは、各車両が備える端末に表示されるようにすればよい。
【0011】
「複数の車両の各々の時点々々での位置の把握」は、例えば、それら複数の車両がGPS機能を備える場合には、各車両が、そのGPS機能によって把握した自身の位置の情報を、当該車両運行管理装置に随時送信し、車両運行管理装置が、その送信されてくる位置の情報に基づいて行えばよい。なお、その情報に基づいて、各車両の走行速度(停止している場合には0となる),走行方向等をも把握してもよい。また、例えば、事業所が屋内の倉庫のような場合には、各車両が、事業所内に設けられた標識を自身が備えるカメラに撮像し、その撮像のデータを画像処理することによって把握した自身の位置の情報を、当該車両運行管理装置に随時送信し、車両運行管理装置が、その送信されてくる位置の情報に基づいて行ってもよい。さらにまた、事業所内に複数のアンテナ若しくはカメラを随所に設置し、各車両が発信する信号をそれら複数のアンテナを介して受信することにより、若しくは、複数のカメラによって得られた各車両の画像情報に基づいて、各車両の位置を把握するようにしてもよい。
【0012】
本発明の車両運行管理装置が受け付ける「作業時間関連情報」は、現在行っている若しくはこれから行う作業の作業位置においてどの程度の時間車両が停止するかを認定するための情報である。作業時間そのものであってもよく、作業時間を決定するためのファクタであってもよい。作業時間を決定するためのファクタには、例えば、その作業の作業量,難易度等の作業ファクタ、その作業を行う作業者の熟練度,体調等の作業者ファクタ、その作業が一連の作業において何番目に行われるかを示す作業序列等の工程ファクタ等が含まれる。作業時間関連情報の受付けは、例えば、作業者(運転者が作業者を兼ねる場合には運転者)が、車両に備えられた端末や、各作業位置に設置された端末に入力し、その端末が、その入力された情報を車両運行管理装置に送信することによって行えばよい。
【0013】
「運行プランの変更」は、作業の順序の変更,作業の順序を変更しない走行ルートの変更(迂回)等が含まれる。運行を阻害される時間の長さによって、種々の変更態様を採用することが可能である。なお、1の車両が作業位置で停止して行われている作業が間もなく終了し、他の車両が運行を阻害される時間が相当に短い場合には、当該他の車両がその作業位置の手前で待機するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の車両運行管理装置による運行管理の対象となる車両が走行する事業所を模式的に示す図である。
図2】実施例の車両運行管理装置による運行管理の対象となる車両を模式的に示す図である。
図3】実施例の車両運行管理装置の機能を示すブロック図である。
図4】実施例の車両運行管理装置において記憶されている商品収納データ,運行プランデータ、および、運行プランの決定において依拠される作業指示をリスト形式で示す図である。
図5】決定された運行プランに基づく車両の走行ルートを示す図である。
図6】運行が阻害される場合に変更された運行プランに基づく車両の走行ルートを示す図である。
図7】変更された運行プランの運行プランデータをリスト形式で示す図である。
図8】運行が阻害される場合に作業順序の変更を伴って変更された運行プランに基づく車両の走行ルートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例である車両運行管理装置を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例
【0016】
[A]運行管理の対象となる車両が走行する事業所
実施例の車両運行管理装置(以下、「管理装置」と略す場合がある)による運行管理の対象となる車両が走行する事業所は、図1に模式的に示すように、いわゆる物流倉庫であり、その倉庫内には、棚10が複数列に並んでいる。以下の説明では、図の右上端に示すように、図の上側を北側、下側を南側、左側を西側、右側を東側と呼ぶことにする。
【0017】
具体的に言えば、倉庫内には、最も北側に東西に延びる通路α(図では、通路の両端にαの符号が示されている。他の通路も同様とする。),南北の中央に東西に延びる通路β,最も南側に東西に延びる2つの通路である通路γおよび通路δが設けられており、また、通路αと通路βとを繋いで南北に延びる複数の通路である通路a~通路l,通路βと通路γを繋いで南北に延びる4つの通路である通路m~通路p,通路βと通路δを繋いで南北に延びる4つの通路である通路q~通路tが設けられている。
【0018】
棚10は、通路a~通路tの各々の両側に複数個並んでいる。詳しく言えば、通路a~通路lの各々の両側には、南北に13個並んでおり、通路m~通路tの各々の両側には、南北に14個並んでいる。見方を変えて言えば、通路a~通路tの互いに隣り合うものに挟まれた棚10は互いに背中合わせに配設されている。以下、棚10の列(以下、「棚列」という場合がある)を、通路a~通路tに関連付けて、通路の西側にあるものを10(a~t)W、通路の東側にあるものを10(a~t)Eと呼ぶこととし、各列の棚10については、図の左端の棚10に示すように、北側から順に、棚列10(a~l)W,10(a~l)Eに属するものは1~13と、棚列10(m~t)W,10(m~t)Eに属するものは1~14と、それぞれ番号付けることとする。したがって、例えば、図の☆で示す棚10は、棚番号で表せば、棚10eW4である。また、各棚10は、図の右下端に示すように、4段とされており、4つの収納スペースを有している。各段、すなわち、各収納スペースは、上から順にA~Dの番号付けがされている。したがって、図の☆で示す棚10eW4の上から2番目の段の収納スペースは、10eW4Bと表すこととする。各収納スペースには、1若しくは複数種類の商品が複数個ずつ収納される。
【0019】
倉庫内においては、複数の車両12が走行する。車両12は、後に詳しく説明するが、商品を荷台に積載して、運転者によって運転される商品搬送車両(以下、「搬送車両12」という場合がある)である。図では、9台の搬送車両12が示されており、それら搬送車両12は、C1~C9の番号付けがされている。したがって、以下特定の搬送車両12を示す場合には、搬送車両12C1~12C9という場合がある。なお、後に詳しく説明するが、運転者は、搬送車両12と棚10との間において、商品の積み下ろし作業(以下、「移載作業」という場合がある)を行う作業者を兼ねている。図では、各搬送車両12の運転者(作業者)を●で表しており、搬送車両12が走行している状態では、運転者が搬送車両12に乗り込んでいる。
【0020】
通路α~δは、搬送車両12がすれ違うことができる比較的幅広の通路であるのに対して、通路a~tは、搬送車両12がすれ違うことができない比較的幅狭の通路である。そのことに関連して、通路a~tは、図に矢印で示す方向の一方通行の通路とされている。
【0021】
倉庫内の東西方向の中央の南側のヤードは、入出荷ヤード14であり、倉庫に出入りするトラック16と搬送車両12との間で、商品を移動させる作業、すなわち、入出荷作業を行う。図では、搬送車両12C7,搬送車両12C8の運転者が、入出荷作業に従事していることが示されている。また、入出荷ヤード14には、搬送車両12の待機場18が設けられている。なお、図1に示すように、実施例の管理装置20は、後に詳しく説明するが、コンピュータを主体とする装置であり、倉庫外の管理棟に設置されている。
【0022】
[B]車両の構成
実施例の車両運行管理装置は、上記搬送車両12を運行管理の対象としており、その搬送車両12は、図2に模式的に示すようなものである。図2を参照しつつ、説明すれば、搬送車両12は、左右1対の後輪30と、車幅方向の中央に位置する前輪32とを有する3輪車両であり、1対の後輪30が駆動輪と、前輪32が転舵輪と、それぞれされている。後輪30は、電動モータを駆動源として有するとともにブレーキ装置をも含んで構成される制駆動ユニット34によって制駆動される。操縦桿36は、2輪車のハンドルのような構造をなしており、運転者DRが操縦桿36を左右に回動させることによって、前輪32が転舵される。図では省略しているが、操縦桿36の左右の端部には、それぞれ、運転者DRの手によって操作されるアクセルレバー,ブレーキレバーが配設されている。
【0023】
車体38は、荷台部40,運転台部42,立設部44とに区分けすることができる。荷台部40には、組み立て式のラック状のパレット46が設置され、商品CPは、このパレット46に載置される。運転台部42には、運転者DRが立って乗車する。立設部44は、操縦桿36を保持するとともに、後方側において、当該搬送車両12の制御装置であるコントローラ48を支持している。
【0024】
コントローラ48は、コンピュータ,制駆動ユニット34のドライバ(駆動回路),管理装置20との通信のための通信ユニット,入出力デバイスである操作パネル50等を含んで構成されている。コントローラ48に関連して、通信ユニットによる管理装置20との交信のために、搬送車両12には、アンテナ52が設けられている。また、搬送車両12には、立設部44の前方側に、前方を撮像するカメラ54が配設されている。
【0025】
コントローラ48は、カメラ54によって取得された撮像データを基に、自車両(自身が搭載されている搬送車両)12が倉庫内においてどの通路のどの位置に位置しているかを認識する機能を有している。簡単に説明すれば、図1では省略しているが、倉庫内の各棚列の両端に、その棚列が面する通路a~tの標識が設けられており、コントローラ48は、その標識の画像データから、既に公知の手法に従って、自身が位置する通路a~t,α~δ、その通路a~t,α~δにおける自車両12の位置(例えば、どの棚10の前に位置しているか)、および、自車両12の向きを取得する。さらに、コントローラ48は、制駆動ユニット34からの後輪30の回転速度に関する信号に基づいて、自車両12の走行速度(「車速」という場合がある。停止している場合の0をも含む概念である)を取得する。コントローラ48は、それら自車両12が位置する通路a~t,α~δ,自車両12の位置,車速,向き等の情報(以下「自車両走行情報」という場合がある)を、通信ユニットを介して、管理装置20に送信する。また、コントローラ48は、ナビゲーション機能を有しており、操作パネル50のディスプレイに、自車両12が走行すべきルートと自車両走行情報とが表示される。
【0026】
自車両12を停止させて運転者DRによって棚10との間で移載作業が行われる際に、その運転者DRは、その移載作業に必要な時間に関連した情報(以下、「作業時間関連情報」という場合がある)を、操作パネル50に入力する。コントローラ48は、その入力された作業時間関連情報を、管理装置20に送信する。
【0027】
また、運転者DRは、無線式のバーコードリーダ56を携帯しており、移載作業において移載される商品CPに付されたバーコードをそのバーコードリーダ56によって読み取る。コントローラ48は、そのバーコードリーダ56の読み取りによって得られた情報(以下、「移載商品情報」という場合がある)を、管理装置20に送信するように構成されている。
【0028】
なお、上記コントローラ48の機能に鑑みれば、実施例の管理装置12と、各搬送車両12のコントローラ48とによって、1つの車両運行管理システムが構築されていると考えることもできる。
【0029】
[C]車両運行管理装置の機能構成
実施例の管理装置20は、図3に示すような機能構成を有している。この図を参照しつつ説明すれば、管理装置20は、CPU,ROM,RAM,HDD等を含んで構成されるコンピュータ60と、通信機62とを含んで構成されている。コンピュータ60は、バス64を有しており、通信機62は、インターフェース66を介してそのバス64に繋げられている。また、搬送車両12による商品CPの集荷作業や収納作業についての指示を受け入れるために、コンピュータを主体とする作業指示装置68も、インターフェイス70を介してバス64に繋げられている。
【0030】
コンピュータ60は、バス64に繋げられた商品収納データベース72を有している。商品収納データベース72には、図4(a)に示すようなデータ、具体的に言えば、どの棚10のどの収納スペースに、どの商品CP(商品コード)が、いくつ収納されているか(収納数量)に関する商品収納データが記憶されている。
【0031】
また、コンピュータ60は、バス64に繋げられた運行プランデータベース74を有している。運行プランデータベース74には、図4(b)に示すようなデータ、具体的に言えば、各搬送車両12の一連の作業における1以上の作業位置(収納スペース)と、それら作業位置への停止順序(作業No.)と、各作業位置において搬送車両12に載置される商品CPの必要数量と、1の作業位置から次の1の作業位置まで移動するための1の走行ルート(経由通路a~t)と含む運行プランデータが記憶されている。ちなみに、図4(b)では、車両No.C1の搬送車両12についての運行プランが示されており、経由通路a~tは、次の作業位置が含まれる通路a~tに他の通路a~tを通過しなければ行けない場合にのみ当該他の通路a~tが表示されている。また、運行プランデータには、ある作業が終了した場合には、その作業に対する作業済チェックが付され、ある作業について作業中である場合には、その作業が作業中である旨(図では、〇で示されている)が付される。
【0032】
また、コンピュータ60は、プログラムの実行によってそれぞれの処理を実行する機能部として、バス64に繋げられた運行プラン決定・変更部76,車両走行把握部78,作業時間認定部80,運行阻害判断部82,商品収納データ更新部84を有している。
【0033】
運行プラン決定・変更部76は、作業指示装置68の作業指示および商品収納データベース72に記憶されている商品収納データに基づいて、各搬送車両12の運行プランを作成し、その運行プランを運行プランデータベース74に記憶する。また、運行プラン決定・変更部76は、ある搬送車両12の作業によって他の搬送車両12の運行が阻害されると運行阻害判断部82によって判断された場合に、当該他の搬送車両12の運行プランを変更し、その変更した運行プランを運行プランデータベース74に記憶する。
【0034】
車両走行把握部78は、通信機62を介して随時取得する各搬送車両12の自車両走行情報に基づいて、全ての搬送車両12の時点々々での走行状態を把握する。作業時間認定部80は、ある搬送車両12の運転者DRが移載作業を行う場合にその搬送車両12から送信されてくる作業時間関連情報に基づいて、その移載作業の作業時間を認定する。運行阻害判断部82は、ある搬送車両12がある作業位置において作業のために停止している場合に、他の搬送車両12の運行が阻害されるか否かを判断する。
【0035】
詳しい説明は省略するが、商品収納データ更新部84は、搬送車両12から送信されてくる移載商品情報に基づいて、商品収納データベース72に記憶されている商品収納データの内容を更新する。なお、移載商品情報が、予定されている商品の情報とは異なる場合には、商品収納データ更新部84は、その移載商品情報を送信した搬送車両12に対して、移載しようとしている商品CPが、予定された商品CPではない旨の警告を発令する。
【0036】
なお、コンピュータ60は、入力デバイスとしてのキーボード86と、出力デバイスとしてのディスプレイ88とを備えており、キーボード86の操作により、ディスプレイ88に、各搬送車両12の走行状態を表示する画面,各搬送車両12の運行プランを示す画面,商品収納データを示す画面等を切り換えて表示する。
【0037】
[D]車両運行管理に関する種々の処理
以下に、搬送車両12の運行管理に関する様々の処理について、各搬送車両12が、倉庫内のいくつかの棚10から、いくつかの商品CPを集荷する場合を例にとって説明する。
【0038】
i)運行プランの決定
1の搬送車両12が、入出荷ヤード14において次の集荷を実行可能であるときに、その搬送車両12の運転者DRは、操作パネル50から、次の集荷の準備ができた旨の情報(準備完了情報)を入力する。その準備完了情報は、管理装置20に送信され、その情報を受けた管理装置20は、作業指示装置68から指示された集荷についての一連の作業をその搬送車両12に割り当てるべく、運行プラン決定・変更部76において、その搬送車両12についての運行プランを決定する。
【0039】
具体的に説明すれば、作業指示装置68は、図4(c)に示すような指示、つまり、どの商品CP(商品コード)がいくつ必要か(必要数量)を、リスト形式で表した指示を出力する。作業指示は、例えば、1つのトラック16に積み込まれる商品CPをまとめて集荷するための一連の作業についての指示である。
【0040】
運行プラン決定・変更部76は、その作業指示と、商品収納データベース72に記憶されている商品収納データとに基づいて、図4(b)に示すような運行プランを決定する。決定手法についての詳しい説明は省略するが、一連の作業において、搬送車両12の移動距離ができるだけ短くなるように、作業位置(収納スペース)と、それら作業位置への停止順序(作業No.)と、1の作業位置から次の1の作業位置まで移動するための1の走行ルート(経由通路a~t)を決定する。
【0041】
決定される運行プランは、例えば、図5に示すようなものとなる。図では、各作業位置に対応する棚10に、停止順序(作業順)が1~10(図では、○で囲んだ数字で表されている)で付されており、それらの作業位置を巡るようにして、走行ルートが示されている。各作業位置や走行ルートに関する情報は、当該搬送車両12のコントローラ48に送信され、各作業位置および走行ルートは、ナビゲーション画面として、コントローラ48の操作パネル50のディスプレイに表示される。
【0042】
ii)作業関連情報に関する処理
先に説明したように、ある作業位置において1つの搬送車両12が停止させられた状態で作業が行われている場合、その作業が、他の搬送車両12の運行を阻害する可能性がある。詳しく言えば、その作業は、その作業位置にある棚10から1以上の商品CPを取り出し、その取り出した商品CPを、その商品CPに付されているバーコードで読み取りつつ搬送車両12に積み込む作業であり、商品CPの種類,必要数量,収納スペースが何段目にあるか,運転者(作業者)の熟練度,体調等によって、その作業に費やす時間である作業時間は変化する。そこで、実施例の管理装置20では、作業時間に関連した情報である作業時間関連情報を運転者から受け取り、その受け取った作業時間関連情報に基づいて、作業時間を認定し、その認定した作業時間に基づいて、上記他の搬送車両12の運行が阻害される場合には、当該他の車両の運行プランを変更するようにしている。
【0043】
具体的に説明すれば、ある搬送車両12をある作業位置に停止させて作業を行う際、まず、その搬送車両12の運転者は、その作業位置においてこれから作業を行う旨を、コントローラ48の操作パネル50に入力する。その入力によって、操作パネル50には、その作業の推定作業時間、若しくは、その作業に関連したいくつかのファクタのいずれかを、選択的に入力するための画面が表示され、運転者は、自身が見積もった推定作業時間、若しくは、いくつかのファクタを選択的に入力する。コントローラ48は、入力された推定作業時間、若しくは、ファクタを、作業時間関連情報として、管理装置20に送信する。
【0044】
管理装置20は、作業時間認定部80において、受け取った作業時間関連情報に基づいて、その作業についての作業時間tTOTALを認定する。受け取った作業時間関連情報が、推定作業時間tESTである場合には、その推定作業時間tESTに、余裕時間tMARを加えることによって、作業時間tTOTALが認定される。
【0045】
上記ファクタは、大きくは、作業ファクタ,作業者ファクタ,工程ファクタに分けることができる。作業ファクタは、作業量すなわち搬送車両12に載置される商品CPの必要数量nと、その作業の難易度との2つが設定されている。作業者ファクタは、作業者の熟練度と体調との2つが設定されている。工程ファクタは、その作業が一連の作業の何番目にあるか(作業No.)、つまり、その作業の序列が設定されている。ちなみに、作業の序列は、一連の作業のうちの後に行う作業程、搬送車両12の荷台部40に積まれた商品が多くなるため、それら商品CPの積み代え等の荷台部40の整理のための時間が多くかかることに鑑みたファクタである。
【0046】
受け取った作業時間関連情報がファクタである場合には、作業時間認定部80は、作業時間tTOTALを、1の商品に対する標準単位作業時間tUNIとして、以下の式によって算出する。
TOTAL=D×S×H×O×tUNI×n+tMAR
Dは難易度係数であり、例えば、難易度が高い場合に1.1と、中程度である場合に1.0と、低い場合に、0.9とされる。Sは、熟練度係数であり、例えば、作業者の熟練度が高い場合に0.9と、中程度である場合に1.0と、低い場合に1.1とされる。Hは、体調係数であり、例えば、体調が良好である場合に、1.0と、不良である場合に、1.15とされる。Oは、序列係数であり、例えば、最初の作業が1とされ、序列つまり作業No.が1つ上がるごとに、0.02ずつ大きくされる。
【0047】
なお、上記ファクタの全てが、必ずしも、作業者(運転者)によって操作パネル50を介して入力されなくてもよい。具体的には、例えば、作業の難易度については、商品CPの重量を商品収納データとして記憶し、その重量や、商品収納データとして記憶されている収納スペース(段A~D)の高さに基づいて、難易度係数Dを決定してもよい。また、作業者の熟練度については、作業者データベース(図示を省略)に記憶されている作業者情報に基づいて、熟練度係数Sを決定してもよい。さらに、序列に関しては、運行プランデータの中の作業No.に基づいて、序列係数Oを決定すればよい。
【0048】
iii)運行阻害の有無の判断
いずれかの搬送車両12が、いずれかの作業位置に停止して作業を開始し、作業時間認定部80によって、上記のように、その作業の作業時間tTOTALが認定された場合、運行阻害判断部82は、その作業が他の搬送車両12の運行を阻害するか否を判断する。詳しく説明すれば、各搬送車両12の時点々々の位置,走行の向き,車速は、上述したように、車両走行把握部78によって把握されており、運行プランデータベース72には、各搬送車両12の運行プランが格納されている。それら各搬送車両12の位置,向き,車速,運行プランに基づき、運行阻害判断部82は、上記作業を行っている作業位置、すなわち、作業のために搬送車両12が停止している通路a~tを、上記認定された作業時間tTOTALが経過するまでに、他のいずれかの搬送車両12が走行する予定であるか否かを判定する。他のいずれかの搬送車両12が、その作業位置を通過する場合、その搬送車両12の運行が阻害されると判断される。
【0049】
iv)運行プランの変更
実施例の管理装置12では、1の搬送車両12の作業が他の搬送車両12の運行を阻害すると判断された場合、当該他の搬送車両12の運行プランが変更される。ちなみに、阻害される時間が相当に短い場合、言い換えれば、運行プランを変更すれば却って当該搬送車両12による集荷が遅延する場合には、当該他の搬送車両12は、阻害する作業が行われている作業位置の手前で、相当に短い時間ではあるが、待機することになる。
【0050】
運行の阻害される時間が、ある程度長い場合について考える。例えば、車両No.C1の搬送車両12が、先に説明した図5に示す走行ルートで集荷を行う際、例えば、図6に示すように、ある搬送車両12が通路iにおいて☆で示す棚10iW4の前で停止させられて作業が行われている場合には、車両No.C1の搬送車両12は、上述した作業時間tTOTALの間、通路iの通過が禁止されることになる。その場合、運行プラン決定・変更部76は、図6において破線で示すように走行ルートを変更して、車両No.C1の搬送車両12の運行プランを変更する。その変更によって、図4(b)に示す運行プランデータは、図7(a)に示すように変更される。具体的には、作業No.5の作業位置に向かう経由通路が、通路iから通路gに変更される。
【0051】
また、例えば、図8に示すように、ある搬送車両12が通路hにおいて☆で示す棚10hW4の前で停止させられて作業が行われている場合には、先に説明したような走行ルートの変更によってだけでは、車両No.C1の搬送車両12による集荷の遅延を充分には回避できない可能性がある。その場合、作業No.5の作業を最後に行うべく作業の順序を変更しつつ、図8において破線で示すように走行ルートを変更して、車両No.C1の搬送車両12の運行プランを変更する。その変更によって、図4(b)に示す運行プランデータは、図7(b)に示すように変更される。
【0052】
運行プランが変更された場合、変更された運行プランデータは、搬送車両12のコントローラ48に送信され、そのコントローラ48は、操作パネル50に、変更された運行プランに基づく走行ルートを、ナビゲーション画面として表示させる。
【0053】
実施例の管理装置20によれば、1の搬送車両12の作業が他の搬送車両12の運行を阻害する場合であっても、その作業について受け付けた作業時間関連情報に基づいて、当該他の搬送車両12の運行プランが変更されることで、搬送車両12の効率のよい運行管理が実行されることになる。
【符号の説明】
【0054】
10:棚 12:搬送車両 20:車両運行管理装置 48:コントローラ 50:操作パネル 60:コンピュータ 62:通信機 72:商品収納データベース 74:運行プランデータベース 76:運行プラン決定・変更部 78:車両走行把握部 80:作業時間認定部 82:運行阻害判断部 84:商品収納データ更新部
図1
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図8