(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】包装袋及び包装食品
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2021028788
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 久貴
(72)【発明者】
【氏名】長田 慎一
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128160(JP,A)
【文献】米国特許第09126734(US,B2)
【文献】特開2018-090311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する収容空間が包装袋内側に形成されるように積層フィルムのヒートシールにより製袋された電子レンジ加熱用包装袋であって、
前記内容物のレンジ加熱により発生した蒸気を前記収容空間から排出するための蒸気口が、前記ヒートシールにより形成されるシール部の一部に形成されるように、ラミネート強度調整用の蒸気口形成樹脂層を前記積層フィルムに有し、
前記蒸気口形成樹脂層が、前記シール部の内縁よりも内側から外縁まで前記シール部を横断し、かつ、以下の条件式(1)~(3)を満足するように形成さ
れ、
b<a … (1)
20≦a≦60 … (2)
10≦b≦
20 … (3)
ただし、
a:シール部の内縁における蒸気口形成樹脂層の巾(mm)、
b:シール部の外縁における蒸気口形成樹脂層の巾(mm)、
であ
り、
前記蒸気口形成樹脂層が、前記シール部の内縁側に第1矩形領域を有し、前記シール部の外縁側に第2矩形領域を有し、前記第1矩形領域と前記第2矩形領域との間に台形領域を有するように、一体的に形成されており、
前記第1,第2矩形領域が前記シール部の外縁に対して垂直な辺を有するように位置し、前記台形領域が互いに平行な辺で前記第1,第2矩形領域とそれぞれ隣接するように位置することを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記蒸気口形成樹脂層が、以下の条件式(4)を満足するように形成されていることを特徴とする請求項
1記載の包装袋;
c1≦10 … (4)
ただし、
c1:第1矩形領域においてシール部の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
である。
【請求項3】
前記蒸気口形成樹脂層が、以下の条件式(5)を満足するように形成されていることを特徴とする請求項
1又は
2記載の包装袋;
c2≦10 … (5)
ただし、
c2:第2矩形領域においてシール部の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
である。
【請求項4】
前記積層フィルムが基材層と接着層とシーラント層とを含む積層構造を有し、前記蒸気口形成樹脂層が、前記基材層と前記シーラント層との間のラミネート強度を、室温環境下では高くし、高温環境下では低くすることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
スタンディングタイプの電子レンジ加熱用包装袋であって、
前記積層フィルムとして、前面シートと、前記収容空間を介して前記前面シートと対向する背面シートと、前記前面シートと前記背面シートとの間で2つ折りのガセット部を構成する底面シートと、を有し、
前記ヒートシールにより形成されるシール部として、前記前面シートと前記背面シートとで形成されるサイドシール部と、前記前面シート及び背面シートのそれぞれと前記底面シートとで形成されるガセットシール部と、を有することを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
包装袋巾方向の長さが130~160mmであり、前記サイドシール部のシール巾が10mm以上であり、前記ガセットシール部の巾方向中央でのシール巾が10mm以下であり、前記蒸気口形成樹脂層が前記ガセットシール部の巾方向中央に位置することを特徴とする請求項
5記載の包装袋。
【請求項7】
前記前面シートが上側に位置し、かつ、前記背面シートが下側に位置する横置き状態において、前記蒸気口形成樹脂層が前記前面シートに位置することを特徴とする請求項
5又は
6記載の包装袋。
【請求項8】
前記ガセットシール部が、前記ヒートシールの際に見当合わせが必要な形状を有することを特徴とする請求項
5~
7のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項9】
前記サイドシール部と前記ガセットシール部との重なり領域において、前記前面シートと前記背面シートとがヒートシールされるように、前記底面シートに穴を有することを特徴とする請求項
5~
8のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項10】
電子レンジ加熱用包装食品であって、請求項1~
9のいずれか1項に記載の包装袋と、前記内容物として前記収容空間内に収容された状態で密封包装された食品と、を備えたことを特徴とする包装食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装袋及び包装食品に関するものであり、例えば、ヒートシールされた積層フィルムからなる電子レンジ加熱用包装袋と、その包装袋に食品を密封包装してなる電子レンジ加熱用包装食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品や冷凍食品等を内容物とする電子レンジ加熱用の包装食品が広く利用されている。この包装食品をレンジ加熱すると、加熱に伴って内容物に含まれる水分が蒸発し、発生した蒸気によって包装袋内の圧力が高まっていく。包装袋内の圧力が高まると、包装袋が破れて内容物が飛散し、電子レンジ内を汚してしまうおそれがある。そこで、レンジ加熱に伴って発生する蒸気を包装袋外へ逃がすために、蒸気抜き機構を備えた包装袋が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-115053号公報
【文献】特開2004-115056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気抜き機構を用いると、包装袋の内圧が上がりすぎる前に蒸通する(つまり包装袋内外が通じて蒸気が排出される)が、この蒸通時に破裂音が生じることがある。特許文献1,2に記載されている包装袋では、破裂音を防止するため、内圧上昇による応力がヒートシール部の特定位置に集中して容易に蒸通するように、蒸気口を形成するヒートシール部の形状に工夫が施されている。しかし、蒸気が短時間に大量に排出されると、内容物が減量してその品質が変化したり、加熱中の包装食品が大きく振動して蒸気口から液漏れが生じたりするおそれがある。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、破裂音の抑制とレンジ加熱に伴って発生する蒸気の排出とを適正に行うことの可能な包装袋及び包装食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明の包装袋は、内容物を収容する収容空間が包装袋内側に形成されるように積層フィルムのヒートシールにより製袋された電子レンジ加熱用包装袋であって、
前記内容物のレンジ加熱により発生した蒸気を前記収容空間から排出するための蒸気口が、前記ヒートシールにより形成されるシール部の一部に形成されるように、ラミネート強度調整用の蒸気口形成樹脂層を前記積層フィルムに有し、
前記蒸気口形成樹脂層が、前記シール部の内縁よりも内側から外縁まで前記シール部を横断し、かつ、以下の条件式(1)~(3)を満足するように形成されていることを特徴とする。
b<a …(1)
20≦a≦60 …(2)
10≦b≦40 …(3)
ただし、
a:シール部の内縁における蒸気口形成樹脂層の巾(mm)、
b:シール部の外縁における蒸気口形成樹脂層の巾(mm)、
である。
【0007】
第2の発明の包装袋は、上記第1の発明において、前記蒸気口形成樹脂層が、前記シール部の内縁側に第1矩形領域を有し、前記シール部の外縁側に第2矩形領域を有し、前記第1矩形領域と前記第2矩形領域との間に台形領域を有するように、一体的に形成されており、
前記第1,第2矩形領域が前記シール部の外縁に対して垂直な辺を有するように位置し、前記台形領域が互いに平行な辺で前記第1,第2矩形領域とそれぞれ隣接するように位置することを特徴とする。
【0008】
第3の発明の包装袋は、上記第2の発明において、前記蒸気口形成樹脂層が、以下の条件式(4)を満足するように形成されていることを特徴とする。
c1≦10 …(4)
ただし、
c1:第1矩形領域においてシール部の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
である。
【0009】
第4の発明の包装袋は、上記第2又は第3の発明において、前記蒸気口形成樹脂層が、以下の条件式(5)を満足するように形成されていることを特徴とする。
c2≦10 …(5)
ただし、
c2:第2矩形領域においてシール部の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
である。
【0010】
第5の発明の包装袋は、上記第1~第4のいずれか1つの発明において、前記積層フィルムが基材層と接着層とシーラント層とを含む積層構造を有し、前記蒸気口形成樹脂層が、前記基材層と前記シーラント層との間のラミネート強度を、室温環境下では高くし、高温環境下では低くすることを特徴とする。
【0011】
第6の発明の包装袋は、上記第1~第5のいずれか1つの発明において、スタンディングタイプの電子レンジ加熱用包装袋であって、
前記積層フィルムとして、前面シートと、前記収容空間を介して前記前面シートと対向する背面シートと、前記前面シートと前記背面シートとの間で2つ折りのガセット部を構成する底面シートと、を有し、
前記ヒートシールにより形成されるシール部として、前記前面シートと前記背面シートとで形成されるサイドシール部と、前記前面シート及び背面シートのそれぞれと前記底面シートとで形成されるガセットシール部と、を有することを特徴とする。
【0012】
第7の発明の包装袋は、上記第6の発明において、包装袋巾方向の長さが130~160mmであり、前記サイドシール部のシール巾が10mm以上であり、前記ガセットシール部の巾方向中央でのシール巾が10mm以下であり、前記蒸気口形成樹脂層が前記ガセットシール部の巾方向中央に位置することを特徴とする。
【0013】
第8の発明の包装袋は、上記第6又は第7の発明において、前記前面シートが上側に位置し、かつ、前記背面シートが下側に位置する横置き状態において、前記蒸気口形成樹脂層が前記前面シートに位置することを特徴とする。
【0014】
第9の発明の包装袋は、上記第6~第8のいずれか1つの発明において、前記ガセットシール部が、前記ヒートシールの際に見当合わせが必要な形状を有することを特徴とする。
【0015】
第10の発明の包装袋は、上記第6~第9のいずれか1つの発明において、前記サイドシール部と前記ガセットシール部との重なり領域において、前記前面シートと前記背面シートとがヒートシールされるように、前記底面シートに穴を有することを特徴とする。
【0016】
第11の発明の包装食品は、電子レンジ加熱用包装食品であって、上記第1~第10のいずれか1つの発明に係る包装袋と、前記内容物として前記収容空間内に収容された状態で密封包装された食品と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蒸気口形成樹脂層が所定の条件を満足するように形成されているため、破裂音の抑制とレンジ加熱に伴って発生する蒸気の排出とを適正に行うことが可能である。例えば、包装袋の内圧が高くなり過ぎる前に蒸気が蒸気口からスムーズに排出されるため、破裂音を抑えることができる。また、蒸気が時間をかけて少しずつ排出されるため、必要以上に蒸気が抜けて減量により内容物の品質が変化してしまったり、加熱中の包装食品が大きく振動して蒸気口から液漏れが生じたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電子レンジ加熱用の包装袋及び包装食品の一実施の形態を示す外観図。
【
図2】
図1(A)のL1-L1’線断面及びそのうちのD部を示す断面図。
【
図3】蒸気口形成樹脂層の形状の特徴を説明するための平面図。
【
図4】R付き凸型の蒸気口形成樹脂層を有する包装袋を示す平面図。
【
図5】
図1(B)の包装食品のレンジ加熱中の状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る包装袋,包装食品等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態や具体例等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0020】
図1に、実施の形態に係る包装袋101と包装食品201の概略構造を模式的に示し、
図2に、包装袋101の断面構造を模式的に示す。
図1において、(A)はスタンディングタイプの包装袋101を折り畳んだ状態で示す平面図であり、(B)は包装袋101内に食品Fが密封されてなる包装食品201を示す正面図である。
図2において、(A)は
図1(A)のL1-L1’線断面図であり、(B)は
図2(A)におけるD部を示す断面図である。
【0021】
包装袋101は、前面シート1Aと背面シート1Bと底面シート1Cとの3枚で構成されており、いずれも積層フィルムからなっている。そして、食品Fを内容物として収容する収容空間7が包装袋内側に形成されるように、積層フィルムのヒートシール(熱接着)によりスタンディングパウチとして製袋されている。したがって、一般的なスタンディングパウチ製袋機を用いた製造が可能であり、そのヒートシールは、実製品を製造する連続製袋機での製袋時に、製品としての性状及び機能を損なわない範囲のシール温度条件で行われる。
【0022】
前面シート1Aと背面シート1Bは、収容空間7を介して対向するように配置されており、重ね合わされた状態で左右の周縁がヒートシールされている。前面シート1Aと背面シート1Bの下端には、そのシート間において2つ折りのガセット部を構成する底面シート1Cが、それぞれ周縁でヒートシールされている。ただし、前面シート1Aと背面シート1Bの上端は、未シール状態となっている。つまり、包装袋101では、前面シート1Aと背面シート1Bとのヒートシールにより形成されたサイドシール部8と、前面シート1A及び背面シート1Bのそれぞれと底面シート1Cとのヒートシールにより形成されたガセットシール部9と、で収容空間7が形成されており、その収容空間7の上方に開口部10hが形成されている。
【0023】
また、サイドシール部8の下部(ガセットシール部9の上側)には、左右の周縁に開封時の起点となる直線形状の切り込み8aが形成されている。この切り込み8aの形状は直線形状に限らず、V字形状,U字形状等でもよい。また、切り込み8aの位置は、切り込み8aからの破断方向が積層フィルムの直線状の易引き裂き方向と一致するように設定されている。つまり、
図1(A)中のMD方向(Machine Direction:フィルムの流れ方向)とTD方向(Transverse Direction:フィルムの幅方向)に関し、シート1A,1BのMD方向が切り込み8aからの破断方向と一致するように設定されている。
【0024】
包装袋101を構成している積層フィルム(前面シート1Aと背面シート1Bと底面シート1C)は、
図2(B)に示すように、外層としての基材層2と、内層としてのシーラント層6と、その間に設けられている印刷インキ層3,接着層5等からなっている。つまり、積層フィルムは、包装袋外側から包装袋内側にかけて、基材層2と印刷インキ層3と接着層5とシーラント層6とを含む積層構造を有している。さらに前面シート1Aでは、印刷インキ層3の内側に、ガセットシール部9(
図1)を跨ぐようにラミネート強度調整用の蒸気口形成樹脂層4が形成されており、内容物(食品F)のレンジ加熱により発生した蒸気を収容空間7から排出(蒸通)するための蒸気口11がガセットシール部9の一部に形成されるように構成されている。つまり、蒸気口形成樹脂層4は蒸気口11の形成予定領域に相当する。
【0025】
基材層2には、印刷作業,冷蔵冷凍保存,レンジ加熱等による負荷に耐える強度が要求されるため、機械的・物理的・化学的に優れた性質を有する合成樹脂製フィルムを用いることが好ましい。このような観点から、基材層2の具体例としては、二軸延伸ナイロン(ONY)フィルム等のポリアミド系フィルム(必要に応じて酸素バリア性を有するもの等),透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。
【0026】
シーラント層(熱接着性樹脂層)6は、2枚の積層フィルムを貼り合わせて収容空間7を形成し、食品Fを密封するために設けられている。その貼り合わせは、シーラント層6同士を接触させて加熱することにより行われる。したがって、製袋したときに包装袋101の最も内側にシーラント層6が位置することになる(
図2(B))。シーラント層6としては、包装袋101に要求される物性に応じたものを適宜選択して用いることができる。ただし、蒸気口形成樹脂層4が位置する領域においては、後述する蒸通のための破断が生じるようなものを用いる必要がある。
【0027】
上記のような観点から、シーラント層6の具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム,低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム等のポリエチレンフィルムが挙げられる。例えば、LLDPEフィルムの厚さは30~60μmが好ましく、これより厚いと蒸通のための破断が生じにくくなる。また、シーラント層6の物性として、MD方向の破断強度は0.5~2.5N/15mmが好ましく、引張伸度は600%以下が好ましい。
【0028】
印刷インキ層3は、色インキで形成され、その具体例としては、絵柄層,白色インキ層等が挙げられる。接着層5は、例えば、ドライラミネート法で一般的に用いられているドライラミネート用接着剤で形成される。接着剤の具体例としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤,ポリアクリル酸エステル系接着剤,シアノアクリレート系接着剤,エチレン共重合体系接着剤,セルロース系接着剤,ポリエステル系接着剤,ポリアミド系接着剤,アミノ樹脂系接着剤,エポキシ系接着剤,ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0029】
蒸気口形成樹脂層4は、室温(30℃程度)又はそれ以下の環境温度では所定の強度(つまり、蒸気口形成樹脂層4自身の所定のラミネート強度)を有するが、高温の環境温度ではその強度が低下する性質を有する熱軟化樹脂層である。上記所定の強度を有する環境温度とは、通常、内容物を包装する包装工程の環境温度、内容物を包装した包装袋を冷蔵・冷凍する工程の環境温度、冷蔵・冷凍した状態で輸送・保管する流通段階での環境温度等であり、そのような環境温度では、蒸気口形成樹脂層4において所定の強度が保持されることになる。また、上記所定の強度が低下する高温の環境温度とは、内容物を密封包装した包装袋101を電子レンジで加熱調理したときに生じる温度であり、こうした高温の環境温度では蒸気口形成樹脂層4の強度が低下することになる。したがって、蒸気口形成樹脂層4が形成されることにより、その形成領域における基材層2とシーラント層6との間のラミネート強度は、室温環境下では高くなり、高温環境下では低くなる。
【0030】
上記のような性質を有する蒸気口形成樹脂層4の材料として、60~90℃の融点を有する熱軟化樹脂(剥離ニス等)を用いることが好ましい。その具体例としては、硝化綿-ポリアミド系樹脂,ポリアミド-硝化綿-ポリエチレンワックス系樹脂,エチレン-酢酸ビニル系共重合体樹脂等が挙げられる。融点が60~90℃の熱軟化樹脂を用いることにより、電子レンジで加熱調理した際に、後述する蒸通のための層間剥離を蒸気口形成樹脂層4で生じさせ易くすることができる。このため、蒸気口形成樹脂層4に用いる材料の塗工量は極めて少量で済む。易剥離性テープ等の別部材を必要としないため、簡単かつ製造容易な構成となり、低コスト化も可能となる。
【0031】
蒸気口形成樹脂層4は、前述したようにガセットシール部9を跨ぐように形成されている。つまり、蒸気口形成樹脂層4は、前面シート1Aの印刷インキ層3と接着層5との間のガセットシール部9の一部において、ガセットシール部9の内縁よりも内側からガセットシール部9の外縁までガセットシール部9を横断するように形成されている。同様の形成領域において、蒸気口形成樹脂層4を背面シート1B又は底面シート1Cに設けてもよい。ただし、ガセットシール部9における蒸気口11を1箇所にするため、蒸気口形成樹脂層4が形成されるのは、前面シート1Aと背面シート1Bと底面シート1Cのうちのいずれか1つのみである。なお、蒸気口形成樹脂層4の配置はガセットシール部9に限らず、必要に応じてサイドシール部8やトップシール部10に設定してもよい。
【0032】
電子レンジで加熱調理を行うと、内容物(食品F)から発生する蒸気(水蒸気等)によって内圧が上昇し、包装袋101が強く膨れた状態になる。前述した高温環境による蒸気口形成樹脂層4の強度低下により、隣接するシーラント層6が自身の強度によって内圧を維持しなければならなくなるため、内圧の大きな負荷を受ける結果として、伸びて破断する。これは、蒸気口形成樹脂層4が設けられている領域と設けられていない領域との境界及びその近傍で亀裂が生じ易くなるためである。多くの場合、蒸気口形成樹脂層4が設けられている領域において、シーラント層6同士が接着している領域と接着していない領域との境界(つまり、ガセットシール部9の内縁)で(蒸気口形成樹脂層4に隣接する側の)シーラント層6に亀裂が生じて破断が生じる。その破断した箇所から内圧によって層間剥離が進行する。つまり、蒸気口形成樹脂層4からなる層間での剥離が、ガセットシール部9の内縁又はそれよりも内側からガセットシール部9の外縁へと進むことになる。そして、層間剥離がガセットシール部9の外縁に達したとき、収容空間7内の蒸気が蒸気口11から外部に放出されて、包装袋101の内圧が低下する。
【0033】
図3を用いて、蒸気口形成樹脂層4の形状の特徴を説明する。
図3(A)に示すように、蒸気口形成樹脂層4が矩形形状を有する場合、ガセットシール部9の内縁における蒸気口形成樹脂層4の巾aと、ガセットシール部9の外縁における蒸気口形成樹脂層4の巾bと、は同じ大きさである(a=b)。また、蒸気口形成樹脂層4は、ガセットシール部9の内縁よりも内側から外縁までガセットシール部9を横断するように形成されているので、蒸気口形成樹脂層4においてガセットシール部9の外縁に対して垂直な辺の長さc0は、ガセットシール部9の巾方向中央でのシール巾y2よりも大きくなっている。
【0034】
図3(A)に示す蒸気口形成樹脂層4では、巾a,bが小さいと、前述の亀裂がシーラント層6に生じにくくなるため、蒸通が困難になる(蒸通不良)。逆に、巾a,bが大きいと、シーラント層6に亀裂が生じ易くなるため、蒸通はスムーズになるが、収容空間7内の蒸気が一気に排出されてしまうため、大きな破裂音が生じることになる。また、巾bが大きいと蒸気口11も大きくなるため、必要以上に蒸気が抜けて減量(高濃度化,乾燥等)により内容物の品質(味等)が変化したり、蒸気口11から液漏れが生じたりする可能性がある。なお、蒸通不良の場合でも、包装袋101の内圧が極端に高くなって破袋すると、上記と同様に大きな破裂音が生じることになる。
【0035】
包装袋101の内圧は蒸気の発生源である内容物(水分量等)に左右されるため、蒸気口形成樹脂層4の巾a,bをそれぞれ異なる大きさに設定すれば、蒸通のし易さと破裂音の大小の両方をコントロールすることができる。例えば
図3(B)に示すように、蒸気口形成樹脂層4の形状を台形にするとともに、蒸気口形成樹脂層4がa>bの条件を満足する設定にすれば、適正な蒸通と破裂音の抑制とを両立させることが可能である。つまり、巾aを大きくすることにより、シーラント層6の亀裂を生じ易くして、蒸通をスムーズにすることができる。また、巾bを小さくすることにより、蒸気口形成樹脂層4からなる層間での剥離の進行を抑えると、蒸気が一気に排出されないため破裂音は抑制される。しかも、蒸気口形成樹脂層4からなる層間での剥離を徐々に進行させることができるため、内圧の極端な上昇が抑えられる。
【0036】
図3(B)に示すように、蒸気口形成樹脂層4が台形形状を有し、かつ、ガセットシール部9がヒートシールの際に見当合わせの必要な形状(お椀形状,舟形形状等)を有する場合、製袋時のガセットシール加工や外周カット加工等の際に振れ(例えば、シール巾y2の方向の加工ズレ)が生じると、巾a,bが変化してしまう。それを防止するため、
図3(C)に示す蒸気口形成樹脂層4では、ガセットシール部9の内縁側に位置する第1矩形領域41と、ガセットシール部9の外縁側に位置する第2矩形領域42と、が隣接するように一体的に形成されており、第1,第2矩形領域41,42は、ガセットシール部9の外縁に対して垂直な辺(サイズc1,c2)を有するように位置している。シール巾y2の方向の加工ズレが生じても、第1矩形領域41は加工ズレ量よりも大きい長さc1の辺を有しているため巾aに変化はなく、第2矩形領域42は加工ズレ量よりも大きい長さc2の辺を有しているため巾bに変化はない(巾a,bの安定化)。つまり、該当箇所における製袋時の加工ズレに対応することが可能となる。
【0037】
図3(C)に示すように、蒸気口形成樹脂層4が第1矩形領域41と第2矩形領域42との組み合わせからなる場合、2つの矩形領域41,42の境界で層間剥離の進行度合いが大きく変化し、そのとき内圧が極端に上昇する可能性がある。それを防止するため、
図3(D)に示す蒸気口形成樹脂層4は、ガセットシール部9の内縁側に第1矩形領域41を有し、ガセットシール部9の外縁側に第2矩形領域42を有し、第1矩形領域41と第2矩形領域42との間に台形領域43を有するように、一体的に形成されている。そして、第1,第2矩形領域41,42がガセットシール部9の外縁に対して垂直な辺(サイズc1,c2)を有するように位置し、台形領域43が互いに平行な辺(サイズa,b)で第1,第2矩形領域41,42とそれぞれ隣接するように位置する構成になっている。したがって、台形領域43における層間剥離を徐々に進行させることができるため、第1,第2矩形領域41,42間での内圧の極端な上昇が抑えられる。
【0038】
図4に、R付き凸型の蒸気口形成樹脂層4を有する包装袋101を示す。
図4に示す蒸気口形成樹脂層4は、
図3(C)に示す蒸気口形成樹脂層4と同様、第1矩形領域41と第2矩形領域42との組み合わせからなる凸型の形状を有している。ただし、2つの矩形領域41,42の境界が曲線をなすようにR付きとしており、これにより、2つの矩形領域41,42の境界で層間剥離の進行度合いが大きく変化することを防止している。したがって、第1,第2矩形領域41,42間での内圧の極端な上昇を抑えることができる。
【0039】
図3(B)~(D)及び
図4に示す蒸気口形成樹脂層4は、前述したように以下の条件式(A1)を満足することにより、適正な蒸通と破裂音の抑制との両立を可能としている。そしてこの効果は、以下の条件式(A2)及び(A3)を満足することにより、更に増大させることができる。
b<a …(A1)
20≦a≦60 …(A2)
10≦b≦40 …(A3)
ただし、
a:ガセットシール部9の内縁における蒸気口形成樹脂層4の巾(mm)、
b:ガセットシール部9の外縁における蒸気口形成樹脂層4の巾(mm)、
である。
【0040】
条件式(A2)の下限を下回ると蒸通不良が生じ易くなり、条件式(A2)の上限を上回ると破裂音の増大が生じ易くなる。また、条件式(A3)の下限を下回ると蒸通不良が生じ易くなり、条件式(A3)の上限を上回ると内容物の品質変化が生じ易くなる。
【0041】
第1,第2矩形領域41,42は、ガセットシール部9の外縁に対して垂直な辺を有しているが、それらのサイズc1,c2に関しては、以下の条件式(A4),(A5)を満足することが望ましい。つまり、
図3(C),(D)及び
図4に示す蒸気口形成樹脂層4は、以下の条件式(A4),(A5)のうちの少なくとも1つを満足することが望ましく、それにより、該当箇所における製袋時の加工ズレに対して効果的に対応することが可能となる。
c1≦10 …(A4)
c2≦10 …(A5)
ただし、
c1:第1矩形領域41においてガセットシール部9の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
c2:第2矩形領域42においてガセットシール部9の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
である。
【0042】
サイドシール部8とガセットシール部9との重なり領域12において(
図1)、前面シート1Aと背面シート1Bとがヒートシールされるように、底面シート1Cにはパンチ穴9aが設けられている。このため、レンジ加熱により包装袋101が膨れたとき、サイドシール部8とガセットシール部9との交点に内圧が集中することを避けることができる。したがって、内圧の集中位置を蒸気口形成樹脂層4の位置に設定することが可能である。
【0043】
この包装袋101では、
図1(A)に示すように、包装袋巾方向の長さXが130~160mmであり、サイドシール部8のシール巾dが10mm以上であり、ガセットシール部9の巾方向中央でのシール巾y2が10mm以下であり、蒸気口形成樹脂層4が前述した所定の塗工形状を有し、かつ、ガセットシール部9の巾方向中央に位置する構成を想定している。このように蒸気口形成樹脂層4をガセットシール部9の巾方向中央に配置すると、蒸気口形成樹脂層4の位置に内圧が集中するため、収容空間7内の蒸気を蒸気口11からスムーズに排出することが可能となる。また、ガセットシール部9の巾方向中央でのシール巾y2は、10mm以下が好ましいが、蒸通に要する時間と輸送時・保管時等におけるシール強度とのバランスから、4~10mmが更に好ましく、第1,第2矩形領域41,42のサイズc1,c2との関係から、2~7mmが更に好ましい。
【0044】
蒸気口形成樹脂層4の形成は、グラビア印刷法により行うのが好ましく、印刷インキ層3と同時にインラインで蒸気口形成樹脂層4を形成するのが好ましい。蒸気口形成樹脂層4は、胴材である前面シート1A又は背面シート1Bに形成されるため、印刷工程において印刷インキ層3との同時形成が可能であり、また、前面シート1A及び背面シート1Bに対する底面シート1Cの位置合わせも容易である。
【0045】
印刷インキ層3で構成される表示(文字,絵柄等)は、ガセットシール部9が上側に位置する向きで印刷されることが好ましい。その向きで表示を印刷すれば、底面シート1Cからなるガセット部を下にして包装袋101をスタンド状態にしたとき、表示が逆さまになる。このため、包装食品202をスタンド状態で電子レンジにセットしたとき、その配置の間違いに気づいて、正しい横置き状態(前面シート1Aが上側に位置し、かつ、背面シート1Bが下側に位置する状態)に包装食品201の配置を修正することができる。
【0046】
蒸気口形成樹脂層4の膜厚としては、1μm以上5μm以下が好ましい。膜厚が1μmを下回ると、レンジ加熱の際に蒸気口形成樹脂層4からなる層間で剥離が起こりにくくなり、膜厚が5μmを上回ると、外観や製造工程に影響が生じるおそれがある。通常、製袋前の積層フィルム1はロール状態で供給され、包装機にて袋状に製袋される。ロール状態の積層フィルム1では蒸気口形成樹脂層4の形成部分が盛り上がり、結果として、その部分が伸びるために製袋不良が発生して歩留まり低下を招いたり、製袋後の仕上がり外観が見栄えの悪いものとなったりするおそれがある。
【0047】
蒸気口形成樹脂層4を設けた領域のラミネート強度(基材層2とシーラント層6との間のラミネート強度)は、前記室温以下の環境温度で0.3~2N/15mm巾が好ましく、高い環境温度(90℃以上の環境温度)で0.3N/15mm巾以下が好ましい。また、蒸気口形成樹脂層4を設けない領域のラミネート強度は、前記室温以下の環境温度で1.5N/15mm巾以上が好ましく、高い環境温度(90℃以上の環境温度)で0.5N/15mm巾以上が好ましい。
【0048】
シーラント層6としてLLDPEフィルム(30μm厚さ)を用いた場合、蒸気口形成樹脂層4を設けた領域のヒートシール強度は、前記室温以下の環境温度で7N/15mm巾以上が好ましく、高い環境温度(90℃以上の環境温度)で4N/15mm巾以下が好ましい。また、蒸気口形成樹脂層4を設けない領域のヒートシール強度は、前記室温以下の環境温度で7.0N/15mm巾以上が好ましく、高い環境温度(90℃以上の環境温度)で3N/15mm巾以上が好ましい。高い環境温度下(90℃以上の環境温度下)において、蒸気口形成樹脂層4を設けない領域のヒートシール強度が蒸気口形成樹脂層4を設けた領域のヒートシール強度に比べて1N/15mm巾以上大きくなるように設計することが好ましい。
【0049】
包装食品201を製造する場合、サイドシール部8及びガセットシール部9が形成された包装袋101の収容空間7内に、開口部10hから食品F(想定内容物:冷凍・チルド商品,から揚げ等)を充填する。そして、
図1(B)に示すように、前面シート1Aと背面シート1Bに対するヒートシールによりトップシール部10を形成し、必要に応じてレトルト加熱等の処理を行うと、食品Fが収容空間7内に収容された状態で密封包装された電子レンジ加熱用の包装食品201が得られる。なお、包装袋101の用途はレトルト用に限らない。具体的な殺菌処理,流通形態等に応じて、レトルト用よりも低温(100℃以下)のボイル殺菌用,内容物の高温化だけで包装袋内面を殺菌するホットパック用,熱処理無しで流通させる冷凍用等が用途に含まれる。
【0050】
図5に、レンジ加熱中の包装食品201の要部断面構造を示す。食品Fを喫食する場合、前面シート1Aが上側に位置し、かつ、背面シート1Bが下側に位置する横置き状態で、包装食品201を電子レンジにセットして加熱する。包装袋101には、前面シート1Aに位置する蒸気口形成樹脂層4で内圧開封式の蒸気抜き機構が構成されており、電子レンジ加熱時に収容空間7内の蒸気V(
図5)を包装袋外側に逃がすことができるようになっているため、レンジ加熱前の包装食品201は密封包装された状態にある。
【0051】
レンジ加熱により食品Fから蒸気Vが発生すると、包装袋101の内圧が上昇する。シーラント層6が蒸気口形成樹脂層4との協働作用(ラミネート強度の低下)により伸びて破断し、その破断した箇所が起点となって層間剥離が進む。層間剥離がガセットシール部9の外縁に達すると、収容空間7内の高温・高圧の蒸気Vが蒸気口11から包装袋101の外部へと排気されて(
図5中の矢印mv)、収容空間7内が減圧される。電子レンジでの加熱が終了すると、包装袋101の上部を切り込み8a(
図1)から破断することにより包装食品201の開封を行い、収容空間7内の食品Fを食器に移すことになる。
【0052】
前述したように蒸気口形成樹脂層4は条件式(A1)~(A3)等を満足するように形成されているため、破裂音の抑制とレンジ加熱に伴って発生する蒸気Vの排出とを適正に行うことが可能である。例えば、包装袋101の内圧が高くなり過ぎる前に蒸気Vが蒸気口11からスムーズに排出されるため、破裂音を抑えることができる。また、蒸気Vが時間をかけて少しずつ排出されるため、必要以上に蒸気Vが抜けて減量により食品Fの品質が変化してしまったり、加熱中の包装食品201が大きく振動して蒸気口11から液漏れが生じたりすることを防止することができる。
【0053】
前述した条件式(A1)~(A3)を満足する蒸気口形成樹脂層4は、スタンディングタイプの包装袋101に限らず、他のタイプ(ウイングタイプ,ピロータイプ等)の包装袋にも適用可能である。例えば、ウイングパウチのウイングシール部やピローパウチのセンターシール部に蒸気口11が形成されるように、蒸気口形成樹脂層4を設ければ、ガセットシール部9に蒸気口形成樹脂層4を設けた場合と同様の効果を得ることができる。また、前述したように蒸気口形成樹脂層4の配置もガセットシール部9に限らないので、配置を適宜変更しても同様の効果を得ることが可能である。
【0054】
したがって、この実施の形態に係る包装袋101は、ヒートシールにより形成されるシール部の一部に蒸気口が形成されるように、ラミネート強度調整用の蒸気口形成樹脂層を積層フィルムに有し、その蒸気口形成樹脂層が、シール部の内縁よりも内側から外縁までシール部を横断し、かつ、以下の条件式(1)~(3)を満足するように形成された構成に一般化することができる。
b<a …(1)
20≦a≦60 …(2)
10≦b≦40 …(3)
ただし、
a:シール部の内縁における蒸気口形成樹脂層の巾(mm)、
b:シール部の外縁における蒸気口形成樹脂層の巾(mm)、
である。
【0055】
巾aに関しては、以下の条件式(2a)を満足することが望ましい。
30≦a≦40 …(2a)
この条件式(2a)は、前記条件式(2)が規定している条件範囲のなかでも、前記観点等に基づいた好ましい条件範囲を規定している。したがって、好ましくは条件式(2a)を満たすことにより、前記効果をより一層大きくすることができる。
【0056】
巾bに関しては、以下の条件式(3a)を満足することが望ましい。
15≦b≦20 …(3a)
この条件式(3a)は、前記条件式(3)が規定している条件範囲のなかでも、前記観点等に基づいた好ましい条件範囲を規定している。したがって、好ましくは条件式(3a)を満たすことにより、前記効果をより一層大きくすることができる。
【0057】
前記条件式(A4),(A5)に関しても、以下の条件式(4),(5)に一般化することができる。つまり、
図3(C),(D)及び
図4に示すように蒸気口形成樹脂層4が第1,第2矩形領域41,42を有する場合、第1矩形領域に関しては以下の条件式(4)を満足することが望ましく、第2矩形領域に関しては以下の条件式(5)を満足することが望ましい。少なくとも一方を満たすことにより、その該当箇所における製袋時の加工ズレに対応することが可能である。
c1≦10 …(4)
c2≦10 …(5)
ただし、
c1:第1矩形領域においてシール部の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
c2:第2矩形領域においてシール部の外縁に対して垂直な辺の長さ(mm)、
である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施した包装袋等を更に具体的に説明する。
【0059】
用いる積層フィルム(前面シート1A,背面シート1B,底面シート1C)の概略積層構造としては、
タイプ1:基材層2/印刷インキ層3,蒸気口形成樹脂層4/接着層5/シーラント層6として、ON25/絵柄層,軟化樹脂層/DL/LLDPE30~60が挙げられ、
タイプ2:基材層2/接着層5/中間層/印刷インキ層3,蒸気口形成樹脂層4/接着層5/シーラント層6として、VMPET/DL/ON/絵柄層,軟化樹脂層/DL/LLDPE30~60が挙げられる。
【0060】
ただし、
ON25:二軸延伸ナイロンフィルム,厚さ25μm、
LLDPE30~60:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム,厚さ30~60μm、
VMPET:透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、
DL:一般的なドライラミネート用接着剤、
である。
【0061】
蒸気口形成樹脂層4は、所定の塗工形状(サンプルNo.1-5:矩形と台形の組み合わせ(
図3(D)),サンプルNo.6:台形(
図3(B)),サンプルNo.7-8:矩形(
図3(A)))を有し、表1に示すサイズ(mm)で厚さ:1~5μmとなるように、硝化綿-ポリアミド系樹脂を用いてグラビア印刷法によりガセットシール部9の巾方向中央に形成した。その際、前面シート1Aのガセットシール部9の一部(パウチ巾方向の中央位置)に、ガセットシール部9の内縁よりも内側からガセットシール部9の外縁までガセットシール部9を横断するように蒸気口形成樹脂層4を配置した。
【0062】
上記タイプ1のシート1A,1B,1Cを用いたスタンディングパウチとしての製袋により、包装袋101を作製した。パウチ寸法は(
図1(A))、X=140mm(横巾),Y=180mm(高さ),y1=30mm(ガセット巾)であり、d=10mm(サイドシール部8のシール巾),y2=10mm(ガセットシール部9の巾方向中央でのシール巾)である。
【0063】
次に、レンジ加熱テストを行った。ガセットシール部9とサイドシール部8を形成した後(
図1(A))、開口部10hから包装袋101に食品Fを所定量充填し、開口部10hをヒートシールすることにより(トップシール部10を形成)密封状態とした(
図1(B))。背面シート1Bが下側に位置するように包装食品201を横置き状態で電子レンジにセットし(
図5)、レンジ加熱を行って、蒸気口11からの正常な蒸通の有無等を確認した。
【0064】
表1に、破裂音抑制効果と減量抑制効果に関するテスト結果を示す。ただし、破裂音抑制効果に関しては、◎:破裂音無し、○:破裂音ほとんど無し、△:小さな破裂音有り、×:大きな破裂音有りとし、減量抑制効果に関しては、◎:減量無し、○:減量ほとんど無し、△:少量の減量有り、×:大量の減量有りとした。
【0065】
サンプルNo.5では、巾aが条件式(2)の上限を上回っており、大きな破裂音が発生した。サンプルNo.6では、巾bが条件式(3)の下限を下回っており、蒸気口11が狭くなって閉塞による蒸通不良となった。結果として、大きな破裂音が発生した。また、蒸通時に蒸気口11が大きく拡大して、蒸気抜けによる大量の減量が発生した。サンプルNo.7では、層間剥離が進まず蒸通不良が発生した。結果として、大きな破裂音と大量の減量が発生した。サンプルNo.8では、スムーズに蒸通したが、大きな破裂音と大量の減量が発生した。
【0066】
【符号の説明】
【0067】
1A 前面シート(積層フィルム)
1B 背面シート(積層フィルム)
1C 底面シート(積層フィルム,ガセット部)
2 基材層
3 印刷インキ層
4 蒸気口形成樹脂層
5 接着層
6 シーラント層
7 収容空間
8 サイドシール部
8a 切り込み
9 ガセットシール部
9a パンチ穴
10 トップシール部
10h 開口部
11 蒸気口
12 重なり領域
41 第1矩形領域
42 第2矩形領域
43 台形領域
101 包装袋
201 包装食品
F 食品(内容物)
V 蒸気