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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光学ユニット及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241210BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20241210BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B17/08
H04N5/64 511A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021029756
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131033
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】武田 高司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 将行
(72)【発明者】
【氏名】矢野 邦彦
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106019528(CN,A)
【文献】特表2019-507391(JP,A)
【文献】国際公開第2020/157747(WO,A1)
【文献】特開2020-034722(JP,A)
【文献】特表2017-514168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02B 17/08
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を射出する表示素子と、
前記表示素子から射出された前記画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、
前記第1ミラーで反射された前記画像光を前記第1ミラーに折り返して射出瞳を形成す
る第2ミラーと、
前記表示素子から射出された前記画像光を、前記第1ミラーに向けて投射する投射レン
ズと、
を備え、
前記第1ミラーは、前記表示素子から第1入射角度で前記画像光が入射され、
前記第1ミラーは、前記第2ミラーから前記第1入射角度よりも小さい第2入射角度で
前記画像光が入射され、
前記第1ミラーは、前記第1入射角度と前記第2入射角度との差異に応じて前記画像光
について異なる分離特性を示す角度依存性分離膜を有し、
全画角についての前記画像光に関して、前記第1入射角度の最小角度は、44.8°で
あり、前記第2入射角度の最大角度は、37.3°であり、
前記投射レンズは、前記第2ミラーで発生する収差を補正し、
前記表示素子は、前記第2ミラーで発生する収差に応じて歪曲した表示面を有している
、光学ユニット。
【請求項2】
前記角度依存性分離膜は、前記分離特性として、前記第2入射角度の最大角度から前記
第1入射角度の最小角度までの間において異なる反射透過特性を示す、請求項1に記載の
光学ユニット。
【請求項3】
前記第1ミラーは、平面ミラーであり、
前記第2ミラーは、凹面ミラーであり、
前記表示素子の中心画素の主光線は、前記表示素子から前記第1入射角度で前記第1ミ
ラーに射出され、前記第1ミラーから反射された前記主光線が前記第2ミラーに入射する
入射位置において、前記第2ミラーの接平面における法線に対して角度を有して入射する
、請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記角度依存性分離膜は、所定の角度範囲より大きな入射角度で入射する成分の反射率
を50%よりも大きくし、前記所定の角度範囲より小さな入射角度で入射する成分の透過
率を50%よりも大きくする特性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ユ
ニット。
【請求項5】
前記表示素子は、前記第1ミラーまたは前記第2ミラーの少なくともいずれかで生じる
収差に応じて表示面の表示領域を制御する制御回路を有している、請求項1~4のいずれ
か一項に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記表示素子は、複数の偏光方向を含み、かつ、偏光方向の光量差を50%以下とする
光を、前記画像光として射出する、請求項1~5いずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記表示素子から同一画角の光線として射出される前記画像光の成分において、前記第
1入射角度と前記第2入射角度との差は、5度以上ある、請求項1~6のいずれか一項に
記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記角度依存性分離膜は、前記第1入射角度で入射する赤色波長帯域、緑色波長帯域及
び青色波長帯域の成分に対して所定値以上の反射率を有する、請求項1~7のいずれか一
項に記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記第2ミラーは、部分透過性を有し、前記第1ミラーで反射された前記画像光の一部
を折り返すとともに、外界光の一部を透過させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の
光学ユニット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学ユニットを備える画像表示装置。
【請求項11】
画像光を射出する表示素子と、
前記表示素子から射出された前記画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、
前記第1ミラーで反射された前記画像光を前記第1ミラーに折り返して射出瞳を形成す
る第2ミラーと、
前記表示素子から射出された前記画像光を、前記第1ミラーに向けて投射する投射レン
ズと、備え、
前記表示素子から射出される前記画像光の光軸と前記第1ミラーの法線とで成す角度を
第1入射角度とし、
前記第1ミラーで反射された前記画像光の光軸と前記第2ミラーの法線とで成す角度を
第2入射角度とし、
前記第2入射角度は、前記第1入射角度よりも小さく、
前記第1ミラーにおいて、前記第1入射角度の成分に対する反射率が、前記第2入射角
度の成分に対する反射率よりも高く、
全画角についての前記画像光に関して、前記第1入射角度の最小角度は、44.8°で
あり、前記第2入射角度の最大角度は、37.3°であり、
前記投射レンズは、前記第2ミラーで発生する収差を補正し、
前記表示素子は、前記第2ミラーで発生する収差に応じて歪曲した表示面を有している
、光学ユニット。
【請求項12】
前記第1ミラーは、前記第1入射角度が45度とは異なる角度となるように前記表示素
子に対して傾斜する、請求項11に記載の光学ユニット。
【請求項13】
前記第2ミラーは、前記第2入射角度が45度とは異なる角度となるように前記第1ミ
ラーに対して傾斜する、請求項12に記載の光学ユニット。
【請求項14】
画像光を射出する表示素子と、
前記表示素子から射出された前記画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、
前記第1ミラーで反射された前記画像光を前記第1ミラーに折り返して射出瞳を形成す
る第2ミラーと、
前記表示素子から射出された前記画像光を、前記第1ミラーに向けて投射する投射レン
ズと、
を備え、
前記第1ミラーは、前記表示素子から第1入射角度で前記画像光が入射され、
前記第1ミラーは、前記第2ミラーから前記第1入射角度よりも小さい第2入射角度で
前記画像光が入射され、
前記第1入射角度の最小角度は、前記第2入射角度の最大角度よりも大きく、
前記第1ミラーにおいて、前記第1入射角度での前記画像光の入射に対する反射率が5
0%以上であり、前記第2入射角度での入射に対する前記画像光の反射率が50%未満で
あり、
全画角についての前記画像光に関して、前記第1入射角度の最小角度は、44.8°で
あり、前記第2入射角度の最大角度は、37.3°であり、
前記投射レンズは、前記第2ミラーで発生する収差を補正し、
前記表示素子は、前記第2ミラーで発生する収差に応じて歪曲した表示面を有している
、光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子等によって形成された虚像の観察を可能にする光学ユニット及び光学ユニットを備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
虚像の観察を可能にする光学ユニットあるいはこれを組み込んだ画像表示装置(虚像表示装置)に相当するものとして、表示素子としてのLCDからの光(画像)をハーフミラーで反射して反射機能を有するレンズに入射させ、レンズによって反射された画像光をハーフミラーで透過させて観察者に視認させるヘッドマウントディスプレイ装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-108933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置では、光量の損失に関して、例えばハーフミラーの通過だけについてであっても、LCDから射出された光の反射と、レンズで反射された光の透過との2回の通過があり、これについて、光の利用効率を高めるべく、例えば、ハーフミラーの反射率を50%(透過率も50%)としたとしても、2回の通過で、1/4以下まで光量が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における光学ユニットは、画像光を射出する表示素子と、表示素子から
射出された画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、第1ミラーで反射された
画像光を第1ミラーに折り返して射出瞳を形成する第2ミラーと、表示素子から射出され
た画像光を、第1ミラーに向けて投射する投射レンズと、備え、第1ミラーは、表示素子
から第1入射角度で画像光が入射され、第1ミラーは、第2ミラーから第1入射角度より
も小さい第2入射角度で画像光が入射され、第1ミラーは、第1入射角度と第2入射角度
との差異に応じて画像光について異なる分離特性を示す角度依存性分離膜を有し、全画角
についての前記画像光に関して、前記第1入射角度の最小角度は、44.8°であり、前
記第2入射角度の最大角度は、37.3°であり、投射レンズは、第2ミラーで発生する
収差を補正し、表示素子は、第2ミラーで発生する収差に応じて歪曲した表示面を有して
いる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る画像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
図2】画像表示装置の内部の光学系を説明する概念的な側断面図である。
図3】第1ミラーに対する第1入射角度と第2入射角度との関係を示す図である。
図4】角度依存性分離膜の分離特性について一例を示すグラフである。
図5】画角に応じた画像光の入射角度について説明するための概念図である。
図6】表示像の歪曲補正を説明する図である。
図7】第1ミラーに対する光波長帯域と反射率との関係について一例を示すグラフである。
図8】画像表示装置の概略構造について説明するための概念的な側断面図である。
図9】画像表示装置の概略構造について説明するための概念的な側断面図である。
図10】第2実施形態に係る画像表示装置の内部の光学系を説明する概念的な側断面図である。
図11】角度依存性分離膜の分離特性について一例を示すグラフである。
図12】表示像の歪曲補正を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明に係る光学ユニット及びこれを組み込んだ画像表示装置の構造、動作等について説明する。
【0008】
図1は、画像表示装置200の装着状態を説明する図である。画像表示装置200は、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する。)であり、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。すなわち、画像表示装置200は、虚像表示装置であるとも言える。図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、画像表示装置(又はHMD)200を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0009】
画像表示装置200は、装着者USの眼前を覆うように配置される本体200aと、本体200aを支持するテンプル状の一対の支持装置200bとを備える。本体200aは、機能的に見た場合、右眼用の第1表示装置100Aと、左眼用の第2表示装置100Bとを含む。第1表示装置100Aは、第1表示駆動部102aと、メガネレンズ状で眼前を覆うコンバイナー103aとで構成される。第2表示装置100Bも同様に、上部に配置される第2表示駆動部102bと、メガネレンズ状で眼前を覆うコンバイナー103bとで構成される。
【0010】
図2を参照して、画像表示装置200の各部のうち、特に、光学的機能を有する部分である光学ユニットOUについて説明する。画像表示装置200を構成する左右対称な第1表示装置100A及び第2表示装置100B(図1参照)のうち、図2の例では、第1表示装置100Aを代表として示している。ここでは、図2として示す側方断面図を参照して、第1表示装置100Aにおける光学的構造としての光学ユニットOUについて説明する。なお、左眼用の第2表示装置100B(図1参照)については、第1表示装置100Aと同様であるため、詳しい説明等は、省略する。
【0011】
図2に示すように、光学ユニットOUは、右眼用の第1表示装置100Aの光学的機能を有する部分として、表示素子10と結像光学系30とを備える。結像光学系30は、導光光学装置とも呼ぶ。結像光学系30は、投射光学系である投射レンズ20と、第1ミラー21と、第2ミラー22とを備える。例えば、表示素子10と投射レンズ20と第1ミラー21とは、図1の第1表示駆動部102aに対応し、第2ミラー22は、図1の第1コンバイナー103aに対応する。
【0012】
表示素子10は、例えば自発光型の表示デバイスであり、画像光MLを生じさせるべく、発光部を含む。表示素子10は、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)ディスプレイで構成される。ここでは、一例として、表示素子10は、有機ELディスプレイで構成されることにより、無偏光の光を画像光MLとして表示面10dから射出するものとする、すなわち2次元の表示面10dにカラーの静止画又は動画を形成する。ただし、表示素子10は、有機ELディスプレイによる上記態様に限らず、マイクロLEDディスプレイ、又は無機EL、有機LED、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等を用いた表示デバイスに置き換えることができる。さらに、表示素子10は、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源(発光部)によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。表示素子10として、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。なお、表示素子10には、例えば画像光MLの射出に関して各種制御を行う制御回路CIが設けられている。
【0013】
結像光学系30のうち、投射レンズ20は、表示素子10から射出された画像光MLを通過させ、第1ミラー21に入射させる投射光学系である。なお、投射レンズ20は、単数または複数のレンズで構成されるが、図示の一例では、1つのレンズによって簡略化して示している。なお、投射レンズ20は、後述する第2ミラー22において発生する収差を補正する収差補正光学系として、あるいは収差補正光学系を含むものとして、設計することが考えられる。
【0014】
結像光学系30のうち、第1ミラー21は、部分透過性(半透過性)を有する平面ミラー(ハーフミラー)すなわち平板板状の光学部材であり、投射レンズ20の光射出側に配置されている。第1ミラー21は、一様な厚さを有し透過性を有する平行平板21aの一方面に光の入射角度に応じて異なる分離特性を示す角度依存性分離膜21bを形成して、投射レンズ20から射出されて入射する画像光MLの一部を反射しつつ透過させる平面透過反射面として機能する。角度依存性分離膜21bは、吸収がほぼ無く、かつ、偏光依存性も無い膜構成とすべく、例えばNb-Al-SiOの組み合わせで構成されている誘電体多層膜とすることが考えらえる。
【0015】
結像光学系30のうち、第2ミラー22は、部分透過性(半透過性)を有する凹面ミラー(ハーフミラー)すなわち湾曲した板状の光学部材であり、眼EYの位置として想定される射出瞳の位置を示す瞳位置PPに対して第1ミラー21よりも+Z側において、第1ミラー21に対向するように配置され、第1ミラー21で反射された画像光MLの一部を瞳位置PPに向けて折り返す。凹面ミラーである第2ミラー22で折り返された画像光MLは、平行化されて第1ミラー21に向かい、さらに、第1ミラー21を経て(一部が透過して)、瞳位置PPに到達する。なお、瞳位置PPは、表示面10d上の各点からの画像光MLが所定の発散状態又は平行状態で表示面10d上の各点の位置に対応する角度方向から重畳するように入射する位置となっている。
【0016】
ここで、第2ミラー22は、偏心光学系(非対称な光学系)となっており、例えば表示素子10の中心画素の主光線MLcは、第1ミラー21で反射されて第2ミラー22に向かう際に、第2ミラー22に対して垂直入射せず、所定の入射角度を有して第2ミラー22の反射面に入射する。したがって、第2ミラー22で折り曲げられた(反射した)主光線MLcが第1ミラー21に再び入射する際には、最初の入射時と比べて入射角度が異なっている。なお、これらについて詳しくは、図3等を参照して、後述する。
【0017】
また、第2ミラー22は、上記態様の場合、偏心に伴う収差(歪曲収差)が発生する。これについては、既述のように、例えば、投射レンズ20において、当該収差を補正する収差補正光学系を含む構成としておくこと等が考えられる。
【0018】
以上のように、本実施形態では、画像光MLについて、第1ミラー21への1回目の入射により反射される際の入射角度(第1入射角度)と、第2ミラー22を経て第1ミラー21に再び向かう2回目の入射により透過される際の入射角度(第2入射角度)とを異なるものとする。一方、第1ミラー21における反射透過については、光分離の分離特性が入射角度に依存して異なる特性を有する角度依存性分離膜21bが担う構成となっている。これにより、光学ユニットOU延いては画像表示装置200は、画像光MLの高効率な利用を可能としている。
【0019】
なお、第2ミラー22は、部分透過性を有することで、外界からの外界光OLを一部透過させ、その一方で、上記のように、第1ミラー21で反射された画像光MLの一部を折り返すことで、コンバイナー103aとして機能する。すなわち、画像表示装置200では、画像光MLと外界光OLとを重畳的に視認させるシースルー型の光学系が構成される。
【0020】
以下、図3等を参照して、画像光MLの光路に沿って、各部の機能や動作についてより詳しく説明する。まず、図3に示すように、表示パネルとしての表示素子10の表示面10dの各部から射出された画像光MLは、投射レンズ20により、第1ミラー21に向けて投射される。すなわち、投射レンズ20を経た画像光MLは、第1ミラー21に入射する。ここで、投射レンズ20から射出された画像光MLの第1ミラー21に対する入射角度を、第1入射角度αとする。図示の例では、画像光MLを代表して、表示素子10の中心画素の主光線MLcについて、第1入射角度αとして示しているが、画像光MLを構成する他の成分についても、第1入射角度αは、同様である。
【0021】
第1入射角度αで第1ミラー21に入射した画像光MLのうち、一部の成分が反射されて、第2ミラー22に向かう。ここで、画像光MLは、第1ミラー21の角度依存性分離膜21bでの反射に際して、角度依存性分離膜21bに、第1入射角度αに対応した光分離特性をもたせておくことで、高効率に(例えば50%超で)画像光MLを反射させる態様とすることが可能になる。なお、これは、主光線MLcについての第1入射角度αに限らず、他の画像光MLの成分についても同様である。
【0022】
第2ミラー22は、既述のように、偏心光学系であり、第1入射角度αとは異なる入射角度で画像光MLが第1ミラー21に向かうようになっている。より具体的に一例を説明すると、一部拡大して示すように、例えば、画像光MLのうち主光線MLcについては、平面形状である第1ミラー22での反射により、第1ミラー22から第1入射角度αと同一の角度で射出され、第2ミラー22への入射位置Pにおいて、第2ミラー22の接平面TPに対して垂直ではなく角度γ(>0)を有して入射する。なお、上記について、主光線MLcの進路を辿ってまとめると、主光線MLcは、表示素子10から第1入射角度αで第1ミラー21に射出され、第1ミラー21から反射された主光線MLcは、第2ミラー22に入射する入射位置Pにおいて、第2ミラー22の接平面TPにおける法線に対して角度γを有して入射する。この結果、主光線MLcは、第2ミラー22で折り返された後においては、第1ミラー21に対して、第1入射角度αとは異なる第2入射角度βで入射する。第2入射角度βは、第1入射角度αよりも小さくなっており、角度依存性分離膜21bに、第2入射角度β(<α)に対応した光分離特性をもたせておくことで、高効率に(例えば50%超で)画像光MLを透過させる態様とすることが可能になる。なお、画像光MLについて、第2ミラー22は、主光線MLcに限らずこれ以外の成分についても、第1入射角度αよりも小さい第2入射角度βで第1ミラー21に入射させる。これにより、主光線MLcについての第2入射角度βに限らず、他の画像光MLの成分についても同様に利用効率を高めることができる。
【0023】
図4は、ある特定の可視光波長帯域の光についての角度依存性分離膜21bの分離特性について一例を示すグラフである。図示において、横軸は、入射角度を示し(単位:°)、縦軸は、光の入射角度に対する反射率又は透過率を示している(単位:%)。実線で示す曲線Q1は、角度依存性分離膜21bにおける反射特性を示している。すなわち、曲線Q1において、縦軸は、光の反射率を示している。一方、破線で示す曲線Q2は、角度依存性分離膜21bにおける透過特性を示している。すなわち、曲線Q2において、縦軸は、光の透過率を示している。図示のように、グラフに示す一例では、曲線Q1,Q2に示すように、入射角度40°付近を含む所定の角度範囲R1を境界として、角度範囲R1よりも角度の値が大きくなっている範囲である角度範囲R2では、反射率が高く(例えば90%超)、透過率が低い。一方、角度範囲R1よりも角度の値が小さくなっている範囲である角度範囲R3では、透過率が高く(例えば90%超)、反射率が低い。このような特性を有することにより、角度依存性分離膜21bは、例えば比較的大きな角度となる第1入射角度αで入射する成分については、高い反射率となる特性を有し、比較的小さな角度となる第2入射角度βで入射する成分については、高い透過率となる特性を有するようにできる。
【0024】
以下、図5を参照して、表示素子10からの画像光MLにおける全画角(FOV)についての第1入射角度α及び第2入射角度βに対する角度依存性分離膜21bによる分離について、一例を考察する。ここでは、表示素子10における矩形状の表示面10dがアスペクト比16:9で、対角方向についての全画角(FOV)が50°程度(例えば52°)となっており、これに相当する画像(虚像)が視認される場合を想定する。なお、角度依存性分離膜21bについては、図4を参照して説明した分離特性を有するものとし、また、画像光MLも角度依存性分離膜21bが上記特性を発揮するような光で構成されるものとする。
【0025】
以上の場合において、図5のうち、第1領域AR1に示すように、矩形状である表示面10d(表示素子10)の中心画素から射出される画像光MLの成分を成分光ML1とし、矩形状である表示面10dの四隅から射出される画像光MLの成分を成分光ML2~ML5とする。なお、図示では、成分光ML1~ML5が発光点として示されている。
【0026】
さらに、各成分光ML1~ML5について、主光線の成分と主光線以外の周辺側の成分について区別する。具体的には、図5のうち、第2領域AR2に例示するように、成分光ML1のうち主光線MLcに相当する成分を成分光F1_0とし、+Y側の端(上端)に相当する成分を成分光F1_+とし、-Y側の端(下端)に相当する成分を成分光F1_-とする。成分光ML2~5についても、同様に、成分光F2_0~F5_-までを定め、これらについて、第1入射角度α及び第2入射角度βの測定結果をまとめたものが、表1として示したものである。
【表1】
【0027】
なお、表1において、max及びminは、上記成分光F1_0からF5_-までにおける第1入射角度α及び第2入射角度βの最大値及び最小値を示しており、これは、全画角(FOV)についての第1入射角度α及び第2入射角度βの最大値及び最小値に相当する。この一例では、第1入射角度αの最小角度は、成分光F3_+の44.8°であり、第2入射角度βの最大角度である成分光F5_-の37.3°よりも大きい。見方を変えると、上記態様の場合、37.3°~44.8°の角度範囲で第1ミラー21に入射する成分は存在しない。したがって、図4に例示した角度依存性分離膜21bの分離特性における角度範囲R1では、37.3°~44.8°よりも狭い範囲となるように膜設計がなされている。つまり、角度依存性分離膜21bは、分離特性として、第2入射角度βの最大角度(37.3°)から第1入射角度αの最小角度(44.8°)までの間において異なる反射透過特性を示すものとなっている。これにより、第1入射角度αで入射する画像光MLを効率的に反射し、かつ、第2入射角度βで入射する画像光MLを効率的に透過させることが可能になっている。より具体的には、図4の一例では、角度依存性分離膜21bにおいて、入射角度44°から70°までの反射率は、90%以上となっており、また、入射角度0°から38°までの透過率は、90%以上となっている。この場合、画像光MLが、第1ミラー21で反射し、再度、透過しても、第1ミラー21のみにおける2回合計の損失は20%以下(1-0.9×0.9=0.19)になる。従来において、例えば反射透過率50%として損失が75%(1-0.5×0.5=0.75)であったとすると、これに対して、損失を約1/3に抑えられたことになる。
【0028】
ここで、上記一例の場合、第1入射角度αの最小角度である44.8°と、第2入射角度βの最大角度である37.3°との間には、角度差が5°以上あることで、高効率な分離特性を有する角度依存性分離膜21bを、比較的簡易な構成(例えば上述した一例のような構成の数十層からなる誘電体多層膜)とすることができる。なお、膜の設計的観点からは、少なくとも、表示素子10から同一画角の光線として射出される画像光MLの成分においては、第1入射角度αと第2入射角度βとの差は、5度以上あることが望ましい。上記一例では、全画角の第1入射角度αの最小角度と第2入射角度βの最大角度との間において角度差が5°以上あるため、当然にこの条件を満たすものとなっている。
【0029】
また、以上の場合、第1入射角度αの最小角度は、第2入射角度βの最大角度よりも大きく、第1ミラー21において、第1入射角度αでの画像光MLの入射に対する反射率が50%以上であり、第2入射角度βでの入射に対する画像光MLの反射率が50%未満となっていることで、少なくとも、反射率を50%(透過率も50%)として、第1ミラー21における2回の通過で、1/4以下まで光量の低下が生じる場合よりは、高効率な光利用が可能となっている。
【0030】
また、上記一例では、第2ミラー22が偏心し、結像光学系30が軸外し光学系であることから、光学系自体で台形歪のようなディストーション(歪曲収差)が発生する。これに対して、上述のように、結像光学系30のうち、投射レンズ20を、当該収差を補正する収差補正光学系を含む構成とすることが考えられる。また、発生するディストーション(歪曲収差)を取りきることが容易でない場合には、図6に示すように、表示素子10の表示面10dに形成する表示像を、実線で示す格子パターンのように、予め歪を持たせた修正画像DA1としておき、結像光学系30によって形成される歪を相殺する逆の歪を有するものとすることで、結像光学系30を経て瞳位置PPで観察される虚像を、破線で示す元の表示像DA0に対応する格子パターンとすることができ、最終的に視認される虚像としての画像の輪郭を矩形とすることができる。なお、表示面10dに形成する表示像については、表示面10dをはじめから矩形状とせずに歪みに応じた形状を有するものとするほか、矩形状の表示面10dについて、表示に使用する領域(表示領域)の制御を、表示素子10の制御回路CIにおいて行う態様とすること等が考えられる、以上のように、表示素子10は、後段の光学系である結像光学系30で生じる収差に応じて歪曲した表示面を有しているものとする、あるいは、制御回路ICによって後段の光学系である結像光学系30収差に応じて、予め表示面10dの表示領域を制御する構成とする、といったことが考えられる。
【0031】
以下、図7として一例を示すグラフを参照して、第1ミラー21に対する画像光MLの光波長帯域と反射率との関係について説明する。なお、図7のグラフにおいて、横軸は、波長(単位:nm)、縦軸は、光の反射率を示す。
【0032】
上記一例のように、表示素子10として有機ELディスプレイを採用する場合において、例えば、赤色波長帯域、緑色波長帯域及び青色波長帯域を含んだ光によりカラー画像を形成するとなると、図7において往復矢印AAr,AAg,AAbに示すように、赤色波長帯域、緑色波長帯域及び青色波長帯域は、ある程度の波長帯域幅を有したブロードな光で画像光MLが構成されることになる。偏光特性については、無偏光の光となり、具体的には、例えば、表示素子10は、第1ミラー21の光入射面に対して、複数の偏光方向を含み、かつ、偏光方向の光量差を50%以下とする光を、画像光MLとして射出する、といった態様となることが想定される。
【0033】
以上に対して、例えば、角度依存性分離膜21bを、例えば既述のように、Nb-Al-SiOの組み合わせで構成されている誘電体多層膜とした場合、上記無偏光の状態すなわちP偏光やS偏光が適度に混ざった状態の光に対して、図7の曲線W1,W2に示すような特性を有するものにできる。具体的に説明すると、まず、実線で示す曲線W1は、表1に例示した第1入射角度αの角度範囲についての平均角度で入射する成分についての波長ごとの反射特性を示している。この場合、往復矢印AAr,AAg,AAbで示す各色の波長帯域について所定値以上の反射率を有し、特に、各色において最も効率の高い波長では、約50%に近い反射特性が得られている。
【0034】
次に、破線で示す曲線W2は、表1に例示した第2入射角度βの角度範囲についての平均角度で入射する成分についての波長ごとの反射特性(透過特性)を示している。この場合、角度依存性分離膜21bは、光の吸収がほぼ無い構成となっており、十分に反射特性を抑え、高い透過特性が得られている。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る光学ユニットOU及びこれを備える画像表示装置200は、画像光MLを射出する表示素子10と、表示素子10から射出された画像光MLの一部を反射する部分透過性の第1ミラー21と、第1ミラー21で反射された画像光MLを第1ミラー21に折り返して射出瞳PPを形成する第2ミラー22とを備え、第1ミラー21は、表示素子10から第1入射角度αで画像光MLが入射され、第1ミラー21は、第2ミラー22から第1入射角度αよりも小さい第2入射角度βで画像光MLが入射され、第1ミラー21は、第1入射角度αと第2入射角度βとの差異に応じて画像光MLについて異なる分離特性を示す角度依存性分離膜21bを有する。この場合、光学ユニットOUでは、第1ミラー21における画像光MLの2回の通過に際して、入射角度を異ならせるとともに、第1ミラー21に入射角度の差異に応じて異なる分離特性を示す角度依存性分離膜21bを設けて反射や透過の特性を調整することで、画像光MLの利用効率を向上させることができる。
【0036】
以下、図8及び図9を参照して、従来技術(比較例)の画像表示装置と本実施形態の画像表示装置200との概略構造の差異について、概要を説明する。ここでは、表示素子10からの画像光MLの光路を代表するものとして、表示素子10の中心画素の主光線MLcの光路を示している。
【0037】
例えば図8のうち、第1領域BR1に示す比較例の画像表示装置200Xでは、光学ユニットOUXにおいて、表示素子10からの主光線MLcが、‐Y方向に射出され、第1ミラー21に対して第1入射角度α=45°となって入射し、その一部としての反射成分が、+Z方向に射出される。すなわち、第1ミラー21は、+Y方向から+Z方向に45°傾けた方向を法線方向とする平面反射面を有している。+Z方向に射出された主光線MLcは、第2ミラー22に垂直入射してその一部としての反射成分が、‐Z方向に射出される。すなわち、第2ミラー22は、主光線MLcの入射位置における接平面TPがXY面に平行な面となっている。この場合、第2入射角度βも、45°となる。すなわち、β=α=45°となり、第1入射角度αと第2入射角度βとの間に差異が無いため、本実施形態における角度依存性分離膜21bのように、角度依存性を利用した分離を行うことができない。そこで、例えば第1領域BR1に示す画像表示装置200Xの状態から、第1ミラー21や第2ミラー22(接平面TP)を傾けて、第1入射角度αと第2入射角度βとの間に差異を生じさせることが考えられる。
【0038】
例えば第2領域BR2に示す画像表示装置200のように、第1領域BR1に示した比較例の状態から第1ミラー21を傾けて、第1入射角度αが45°以外(例えばα>45°)の値となるようにして、これに伴って第2入射角度βを第1入射角度αよりも小さくし、第1ミラー21において角度依存性を利用した分離が可能となるようにすることが考えられる。言い換えると、表示素子10の状態はそのままで、第1ミラー21を表示素子10に対して45°以外で傾けた配置とすることで、第1入射角度αと第2入射角度βとの間に差異を設けた態様とすることができる。以上のように、第1ミラー21について、第1入射角度αが45度とは異なる角度となるように表示素子10に対して傾斜する構成が考えられる。
【0039】
また、第3領域BR3に示す画像表示装置200のように、第1領域BR1に示した比較例の状態から第2ミラー22(接平面TP)を傾けて、第2入射角度βが45°以外(β<45°)の値となるようにして、第2入射角度βを第1入射角度αよりも小さくし、第1ミラー21において角度依存性を利用した分離が可能となるようにすることが考えられる。言い換えると、表示素子10及び第1ミラー21の状態はそのままで、第2ミラー22(接平面TP)を第1ミラー21に対して45°以外で傾けた配置とすることで、第1入射角度αと第2入射角度βとの間に差異を設けた態様とすることができる。以上のように、第2ミラー22について、第2入射角度βが45度とは異なる角度となるように第1ミラー21に対して傾斜する構成が考えられる。
【0040】
さらに、第4領域BR4に示す画像表示装置200のように、上記第2領域BR2及び第3領域BR3を参照して説明した事項の双方を組み合わせてもよい。すなわち、第1ミラー21と第2ミラー22(接平面TP)との双方を傾けてもよい。また、第4領域BR4に示す一例では、光学系全体をさらに傾けて、表示素子10の中心画素からの成分光である主光線MLcが、斜め下方から眼EYに向かうようにしている。すなわち、眼EYから第2ミラー22に向けて、僅かに伏すように傾いた状態となっている。なお、図1等において示した例においても、同様に、僅かに伏すように傾いた状態となるように構成してもよい。
【0041】
また、以上において、光学ユニットOUに関して、表示素子10からの主光線MLcに沿った光軸を、第1光軸AX1とし、第2ミラー22からの主光線MLcに沿った光軸を、第2光軸AX2とする。この上で、さらに、第1光軸AX1の方向からの画像光MLの入射が第1入射角度αを代表するものとし、第2光軸AX2の方向からの画像光MLの入射が第2入射角度βを代表するものとする。このように捉えた場合、上記各態様は、第1ミラー21を表示素子10に対して傾斜させて、第1入射角度αを45°以外の角度とするように配置することにより、または、第2ミラー22を第1ミラー21に対して傾斜させて、第2入射角度βを45°以外の角度とするように配置することにより、第1入射角度αを、第2入射角度βよりも大きくなるようにしている、ということになる。この上で、上記態様では、第1ミラー21において、例えば角度依存性分離膜21b(図3等参照)を設けることで、第1ミラー21は、第1入射角度αの成分に対する反射率が、第2入射角度βの成分に対する反射率よりも高いものとしている。
【0042】
〔第2実施形態〕
以下、図10等を参照して、第2実施形態に係る光学ユニット及び画像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る光学ユニットOU及び画像表示装置200は、ディストーション(歪曲収差)の発生を抑制した構成となっている点を除いて、第1実施形態の構成と同様であるので、全体構成について他の図と同符号としているものについては、詳細な図示や説明を省略し、必要に応じて、適宜他の図面を参照して説明した事項を援用するものとする。
【0043】
図10は、本実施形態に係る画像表示装置200の内部の光学系を説明する概念的な側断面図であり、図2に対応する図である。また、図11は、角度依存性分離膜21bの分離特性について一例を示すグラフであり、図4に対応する図である。さらに、下記表2は、表1に対応するものであり、各成分光は、図5を参照して説明した場合と同様である。また、図12は、表示像の歪曲補正を説明する図であり、図6に対応する図である。
【表2】
【0044】
第1実施形態においては、図4において角度範囲R2として示す反射領域と、角度範囲R3として示す透過領域の分離角度が大きくなるように、すなわち角度範囲R1が大きくできるように構成すべく、第2ミラー22における傾きを大きくしていた。これに伴い、光学系において発生するディストーション(歪曲収差)が大きくなっていた。これに対して、本実施形態では、光学系(結像光学系30)におけるディストーション(歪曲収差)の発生を低減した構成とした。つまり、図10に示す各光学系のうち、凹面ミラーである第2ミラー22や投射光学系である投射レンズ20において、収差補正の負荷が低減された構成となっている。したがって、例えば図12に示す修正画像DA1と元の表示像DA0との差異も、図6に例示した場合より小さくなっている。ただし、一方で、反射領域と透過領域の分離角度が小さくなっている。すなわち、図11及び表2から分かるように、角度範囲R1として許容される範囲が狭くなっており、かつ、反射率についても制限が大きくなる場合がある。具体的には、図4及び表1に示す場合においては、分離角度差は、7.5°(=44.8°-37.3°)あったが、図11及び表2に示す一例の場合では、2.5°(≒44.8°-42.4°)程度に減少している。なお、透過領域と反射領域とで角度が重なる部分が無いのは、第1実施形態の場合と同様である。
【0045】
また、図11に示す反射/透過特性について、曲線Q3に示す反射領域(角度範囲R2)の反射率は、80%程度であり、曲線Q4に示す透過領域(角度範囲R3)の透過率は、70%程度である。この場合、第1ミラー21で反射し、再度透過しても、損失は45%以下になり、従来と比較して、約2倍の効率向上となっている。
【0046】
本実施形態に係る光学ユニットOU及び画像表示装置200においても、第1ミラー21における画像光MLの2回の通過に際して、入射角度を異ならせるとともに、第1ミラー21に入射角度の差異に応じて異なる分離特性を示す角度依存性分離膜21bを設けて反射や透過の特性を調整することで、画像光MLの利用効率を向上させることができる。特に、本実施形態では、収差発生を抑えつつ、画像光MLの利用効率を図る構成にできる。
【0047】
〔変形例その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
第1表示装置100Aに組み込む結像光学系30は、図示のものに限らず、様々な構成とすることができる。具体的には、上記結像光学系30は、Y方向又は縦方向に非対称性を持たせた軸外し光学系であるとしたが、X方向又は横方向に非対称性を持たせた軸外し光学系とすることもできる。結像光学系30を構成する光学要素についても、各図に示すものは単なる例示であり、レンズの枚数を増減させる、ミラーを追記する、導光部材を追加するといった変更が可能である。さらに、リレー光学系とすること等も可能である。
【0049】
コンバイナー103a,103bの外界側には、コンバイナー103a,103bの透過光を制限することで調光を行う調光デバイスを取り付けることができる。調光デバイスは、例えば電動で透過率を調整する。調光デバイスとして、ミラー液晶、電子シェード等を用いることができる。調光デバイスは、外光照度に応じて透過率を調整するものであってもよい。
【0050】
コンバイナー103a,103bすなわち第2ミラー22は、遮光性を有するミラーに置き換えることもできる。この場合、外界像の直接観察を前提としない非シースルー形の光学系となる。
【0051】
以上では、画像表示装置200が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記画像表示装置200は、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0052】
以上では、縦方向又はY方向について導光しているが、横方向又はX方向に導光する構成も可能である。
【0053】
なお、上記では、両眼用の画像表示装置200としているが、画像表示装置200については、右眼用又は左眼用の部分のうち一方を省略することができ、この場合、片眼型のヘッドマウントディスプレイとなる。
【0054】
また、上記各実施形態に例示した態様において、画像光MLの全体で、透過領域と反射領域とで入射角度が重なる部分が無いものとしているが、一部重なる部分が生じる態様となることも考えられる。例えば、主光線MLc(あるいは成分光ML1)やこれに近い範囲においては、第1入射角度αと第2入射角度βとを分離するのに十分な角度差を設ける一方、周辺側(例えば成分光ML2等)については、入射角度が重なる態様となる場合も想定される。
【0055】
また、色むら等が発生する場合には、これを抑えるべく、予め制御回路CIにて輝度調整を併せて行う態様とすることも考えられる。
【0056】
また、上記各実施形態では、第1ミラー21を、平面ミラー(ハーフミラー)すなわち平板板状の光学部材としたが、自由曲面状の光学部材としてもよい。この場合、当該自由曲面は、平面に近い緩やかな自由曲面とすることが考えられる。
【0057】
具体的な態様における第1の光学ユニットは、画像光を射出する表示素子と、表示素子から射出された画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、第1ミラーで反射された画像光を第1ミラーに折り返して射出瞳を形成する第2ミラーとを備え、第1ミラーは、表示素子から第1入射角度で画像光が入射され、第1ミラーは、第2ミラーから第1入射角度よりも小さい第2入射角度で画像光が入射され、第1ミラーは、第1入射角度と第2入射角度との差異に応じて画像光について異なる分離特性を示す角度依存性分離膜を有する。
【0058】
上記光学ユニットでは、第1ミラーにおける画像光の2回の通過に際して、入射角度を異ならせるとともに、第1ミラーに入射角度の差異に応じて異なる分離特性を示す角度依存性分離膜を設けて反射や透過の特性を調整することで、画像光の利用効率を向上させることができる。
【0059】
具体的な側面において、全画角についての画像光に関して、第1入射角度の最小角度は、第2入射角度の最大角度よりも大きい。この場合、全画角において、反射と透過とでの分離が可能になる。
【0060】
具体的な側面において、角度依存性分離膜は、分離特性として、第2入射角度の最大角度から第1入射角度の最小角度までの間において異なる反射透過特性を示す。この場合、第1入射角度で入射する成分の反射と、第2入射角度で入射する成分の透過とを全体に亘って高効率に行うことができる。
【0061】
具体的な側面において、第1ミラーは、平面ミラーであり、第2ミラーは、凹面ミラーであり、表示素子の中心画素の主光線は、表示素子から第1入射角度で第1ミラーに射出され、第1ミラーから反射された主光線が第2ミラーに入射する入射位置において、第2ミラーの接平面における法線に対して角度を有して入射する。この場合、平面ミラーである第1ミラーに第1入射角度で入射して、射出された主光線が、第2ミラーを経て再度第1ミラーに向かう際に、第1入射角度とは異なる角度(第2入射角度)で第1ミラーに向かうようにできる。
【0062】
具体的な側面において、角度依存性分離膜は、所定の角度範囲より大きな入射角度で入射する成分の反射率を50%よりも大きくし、所定の角度範囲より小さな入射角度で入射する成分の透過率を50%よりも大きくする特性を有する。この場合、第1ミラーにおける画像光の2回の通過に際しての光量低下を抑制できる。
【0063】
具体的な側面において、表示素子から射出された画像光を、第1ミラーに向けて投射する投射光学系を備える。この場合、投射光学系により、所望の状態で、画像光を第1ミラーに向けて投射できる。
【0064】
具体的な側面において、投射光学系は、第2ミラーにおける収差を補正する収差補正光学系を含む。この場合、第2ミラーに起因して発生する収差を、投射光学系において低減できる。
【0065】
具体的な側面において、表示素子は、第1ミラーまたは第2ミラーの少なくともいずれかで生じる収差に応じて歪曲した表示面を有している。この場合、第1ミラーや第2ミラー等に起因して発生する収差を加味して、表示素子側において予め補正できる。
【0066】
具体的な側面において、表示素子は、第1ミラーまたは第2ミラーの少なくともいずれかで生じる収差に応じて表示面の表示領域を制御する制御回路を有している。この場合、第1ミラーや第2ミラー等に起因して発生する収差を加味して、表示素子の制御回路において予め補正できる。
【0067】
具体的な側面において、表示素子は、複数の偏光方向を含み、かつ、偏光方向の光量差を50%以下とする光を、画像光として射出する。
【0068】
具体的な側面において、表示素子から同一画角の光線として射出される画像光の成分において、第1入射角度と第2入射角度との差は、5度以上ある。この場合、角度依存性の分離を行いやすくなる。
【0069】
具体的な側面において、角度依存性分離膜は、第1入射角度で入射する赤色波長帯域、緑色波長帯域及び青色波長帯域の成分に対して所定値以上の反射率を有する。この場合、カラー画像の形成に対応可能となる。
【0070】
具体的な側面において、第2ミラーは、部分透過性を有し、第1ミラーで反射された画像光の一部を折り返すとともに、外界光の一部を透過させる。この場合、シースルーの光学系を構成できる。
【0071】
具体的な態様における画像表示装置は、上記いずれかの光学ユニットを備える。この場合、当該光学ユニットを備えることで、画像表示装置において、画像光の利用効率を向上させることができる。
【0072】
具体的な態様における第2の光学ユニットは、画像光を射出する表示素子と、表示素子から射出された画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、第1ミラーで反射された画像光を第1ミラーに折り返して射出瞳を形成する第2ミラーとを備え、表示素子から射出される画像光の光軸と第1ミラーの法線とで成す角度を第1入射角度とし、第1ミラーで反射された画像光の光軸と第2ミラーの法線とで成す角度を第2入射角度とし、第2入射角度は、第1角度よりも小さく、第1ミラーにおいて、第1入射角度の成分に対する反射率が、第2入射角度の成分に対する反射率よりも高い。
【0073】
上記光学ユニットでは、第1ミラーにおける画像光の2回の通過に際して、光学系の配置によって、第1入射角度を、第2入射角度よりも大きくし、第1ミラーにおいて、第1入射角度の成分に対する反射率が、第2入射角度の成分に対する反射率よりも高いことで、画像光の利用効率を向上させることができる。
【0074】
具体的な側面において、第1ミラーは、第1入射角度が45度とは異なる角度となるように表示素子に対して傾斜する。これにより、第1入射角度を、第2入射角度よりも大きくできる。
【0075】
具体的な側面において、第2ミラーは、第2入射角度が45度とは異なる角度となるように第1ミラーに対して傾斜する。これにより、第1入射角度を、第2入射角度よりも大きくできる。
【0076】
具体的な態様における第3の光学ユニットは、画像光を射出する表示素子と、第1入射角度で入射した画像光の一部を反射する部分透過性の第1ミラーと、第1ミラーで反射された画像光を折り返して、第2入射角度で第1ミラーに入射させる第2ミラーとを備え、第1入射角度の最小角度は、第2入射角度の最大角度よりも大きく、第1ミラーにおいて、第1入射角度での画像光の入射に対する反射率が50%以上であり、第2入射角度での入射に対する画像光の反射率が50%未満である。
【0077】
上記光学ユニットでは、第1ミラーにおける画像光の2回の通過に際して、第1入射角度の最小角度が、第2入射角度の最大角度よりも大きく、第1ミラーにおいて、第1入射角度での画像光の入射に対する反射率が50%以上であり、第2入射角度での入射に対する画像光の反射率が50%未満であることで、画像光の利用効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0078】
10…表示素子、10d…表示面、20…投射レンズ、21…第1ミラー、22…第2ミラー、21a…平行平板、21b…角度依存性分離膜、30…結像光学系、50…反射透過率、100A…第1表示装置、100B…第2表示装置、102a…第1表示駆動部、102b…第2表示駆動部、103a,103b…コンバイナー、200…画像表示装置、200X…画像表示装置、200a…本体、200b…支持装置、AAr,AAg,AAb…往復矢印、AR1,AR2…第1領域、第領域、AX1…第1光軸、AX2…第2光軸、BR1~BR4…第1領域~第4領域、CI…制御回路、DA0…表示像、DA1…修正画像、EY…眼、IC…制御回路、ML…画像光、ML1~ML5…成分光、MLc…主光線、OL…外界光、OU…光学ユニット、OUX…光学ユニット、P…入射位置、PP…瞳位置(射出瞳)、Q1~Q4…曲線、R1~R3…角度範囲、TP…接平面、US…装着者、W1,W2…曲線、α…第1入射角度、β…第2入射角度、γ…角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12