IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-印刷装置 図1
  • 特許-印刷装置 図2
  • 特許-印刷装置 図3
  • 特許-印刷装置 図4
  • 特許-印刷装置 図5
  • 特許-印刷装置 図6
  • 特許-印刷装置 図7
  • 特許-印刷装置 図8
  • 特許-印刷装置 図9
  • 特許-印刷装置 図10
  • 特許-印刷装置 図11
  • 特許-印刷装置 図12
  • 特許-印刷装置 図13
  • 特許-印刷装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20241210BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20241210BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
   G06F 1/3228 20190101ALI20241210BHJP
   G06F 1/3296 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J2/32 Z
B41J3/36 Z
B41J2/01 401
B41J2/01 451
G06F1/3228
G06F1/3296
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021032344
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133585
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森 拓人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 加津郎
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039211(JP,A)
【文献】特開2018-171737(JP,A)
【文献】特開2015-176442(JP,A)
【文献】特開2016-168758(JP,A)
【文献】特開2020-104453(JP,A)
【文献】特開2019-047592(JP,A)
【文献】特開2013-166294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0229459(US,A1)
【文献】中国実用新案第212289240(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01 - 2/215
B41J 2/32
B41J 3/36
G06F 1/3296
G06F 1/3228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して印刷を行う複数の印刷素子を有する印刷部と、
前記印刷部に電力を供給する電源回路と、
前記印刷部及び前記電源回路を制御する制御回路と、
外部機器を接続可能であり、データ送受信端子、電力入出力端子、及び状態識別端子を
有するUSB Type-Cインターフェースと、を備え、
前記データ送受信端子は、前記外部機器からデータ信号を受信可能であり、且つ、前記
外部機器へデータ信号を送信可能であり、
前記電力入出力端子は、前記外部機器から電力の供給を受けることが可能であり、且つ
、前記電源回路から供給される電力を前記外部機器へ供給することが可能であり、
前記状態識別端子は、前記データ送受信端子が、データ信号を受信可能な状態であるか
、又は、データ信号を送信可能な状態であるかを識別可能であり、且つ、前記電力入出力
端子が、前記外部機器から電力の供給を受けることが可能な状態であるか、又は、前記外
部機器へ電力を供給可能な状態であるかを識別可能であり、
前記電力入出力端子を経由して電力の供給を受けることが可能な前記外部機器が接続さ
れていることが前記状態識別端子によって検知され、且つ、前記印刷部が印刷する場合に
おいて、前記複数の印刷素子の駆動率が低い場合に、前記複数の印刷素子の駆動率が高い
場合と比較して、前記外部機器へ供給される電力量が多く、
前記制御回路は、前記複数の印刷素子における駆動率の増加に応じて、前記外部機器へ
供給される電力量を段階的に減少させる、
印刷装置。
【請求項2】
媒体に対して印刷を行う複数の印刷素子を有する印刷部と、
前記印刷部に電力を供給する電源回路と、
前記印刷部及び前記電源回路を制御する制御回路と、
外部機器を接続可能であり、データ送受信端子、電力入出力端子、及び状態識別端子を
有するUSB Type-Cインターフェースと、を備え、
前記データ送受信端子は、前記外部機器からデータ信号を受信可能であり、且つ、前記
外部機器へデータ信号を送信可能であり、
前記電力入出力端子は、前記外部機器から電力の供給を受けることが可能であり、且つ
、前記電源回路から供給される電力を前記外部機器へ供給することが可能であり、
前記状態識別端子は、前記データ送受信端子が、データ信号を受信可能な状態であるか
、又は、データ信号を送信可能な状態であるかを識別可能であり、且つ、前記電力入出力
端子が、前記外部機器から電力の供給を受けることが可能な状態であるか、又は、前記外
部機器へ電力を供給可能な状態であるかを識別可能であり、
前記電力入出力端子を経由して電力の供給を受けることが可能な前記外部機器が接続さ
れていることが前記状態識別端子によって検知され、且つ、前記印刷部が印刷する場合に
おいて、前記複数の印刷素子の駆動率が低い場合に、前記複数の印刷素子の駆動率が高い
場合と比較して、前記外部機器へ供給される電力量が多く、
前記印刷部は、高速印刷及び低速印刷を実行可能であり、
前記制御回路は、前記外部機器へ供給される電力量を、前記高速印刷時に、前記低速印
刷時よりも減少させる、
印刷装置。
【請求項3】
媒体に対して印刷を行う複数の印刷素子を有する印刷部と、
前記印刷部に電力を供給する電源回路と、
前記印刷部及び前記電源回路を制御する制御回路と、
外部機器を接続可能であり、データ送受信端子、電力入出力端子、及び状態識別端子を
有するUSB Type-Cインターフェースと、を備え、
前記データ送受信端子は、前記外部機器からデータ信号を受信可能であり、且つ、前記
外部機器へデータ信号を送信可能であり、
前記電力入出力端子は、前記外部機器から電力の供給を受けることが可能であり、且つ
、前記電源回路から供給される電力を前記外部機器へ供給することが可能であり、
前記状態識別端子は、前記データ送受信端子が、データ信号を受信可能な状態であるか
、又は、データ信号を送信可能な状態であるかを識別可能であり、且つ、前記電力入出力
端子が、前記外部機器から電力の供給を受けることが可能な状態であるか、又は、前記外
部機器へ電力を供給可能な状態であるかを識別可能であり、
前記電力入出力端子を経由して電力の供給を受けることが可能な前記外部機器が接続さ
れていることが前記状態識別端子によって検知され、且つ、前記印刷部が印刷する場合に
おいて、前記複数の印刷素子の駆動率が低い場合に、前記複数の印刷素子の駆動率が高い
場合と比較して、前記外部機器へ供給される電力量が多く、
前記外部機器へ供給される電力量が異なる複数の給電モードを有し、
前記制御回路は、前記印刷部において印刷命令を実行する前に、前記給電モードを切り
替えて、前記外部機器へ供給される電力量を減少させる、
印刷装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記複数の印刷素子における駆動率が100%である場合に、前記外
部機器への電力の供給を実行しない
請求項1~3の何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記印刷部が印刷していない場合に、前記外部機器へ供給される電力
量を最大にする、
請求項1~の何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷部は、高速印刷及び低速印刷を実行可能であり、
前記制御回路は、前記外部機器へ供給される電力量を、前記高速印刷時に、前記低速印
刷時よりも減少させる、
請求項1~の何れか一項(ただし、請求項2と、請求項2を引用する部分を除く)に記
載の印刷装置。
【請求項7】
前記外部機器へ供給される電力量が異なる複数の給電モードを有し、
前記制御回路は、前記印刷部において印刷命令を実行する前に、前記給電モードを切り
替えて、前記外部機器へ供給される電力量を減少させる、
請求項1~の何れか一項(ただし、請求項3と、請求項3を引用する部分を除く)に記
載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記印刷部による印刷終了後に、前記外部機器へ供給される電力量が
最大である前記給電モードに切り替える、
請求項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
USB(Universal Serial Bus)インターフェースを介して接続された外部機器に対して電力を供給する印刷装置がある(例えば特許文献1参照)。この印刷装置は、画像形成部へ給電しない第1給電モード時に外部機器の接続を検出した後に、第1給電モードから第2給電モードに移行して、外部機器への給電を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-47592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、第2給電モードの移行に応じて、画像形成部への給電を開始している。しかしながら、従来技術では、外部機器に電力を供給しながら、印刷装置において印刷を実行すると、印刷装置で使用可能な電力が不足し、所望の印刷動作が実行できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る印刷装置は、媒体に対して印刷を行う複数の印刷素子を有する印刷部と、印刷部に電力を供給する電源回路と、印刷部及び電源回路を制御する制御回路と、外部機器を接続可能であり、データ送受信端子、電力入出力端子、及び状態識別端子を有するUSB Type-Cインターフェースと、を備える。データ送受信端子は、外部機器からデータ信号を受信可能であり、且つ、外部機器へデータ信号を送信可能である。電力入出力端子は、外部機器から電力の供給を受けることが可能であり、且つ、電源回路から供給される電力を外部機器へ供給することが可能である。状態識別端子は、データ送受信端子が、データ信号を受信可能な状態であるか、又は、データ信号を送信可能な状態であるかを識別可能であり、且つ、電力入出力端子が、外部機器から電力の供給を受けることが可能な状態であるか、又は、外部機器へ電力を供給可能な状態であるかを識別可能である。電力入出力端子を経由して電力の供給を受けることが可能な外部機器が接続されていることが状態識別端子によって検知され、且つ、印刷部が印刷する場合において、複数の印刷素子の駆動率が低い場合に、複数の印刷素子の駆動率が高い場合と比較して、外部機器へ供給される電力量が多い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るPOSシステムを示す概略図である。
図2】POSシステムを示すブロック図である。
図3】プリンターのメインコントローラーを示すブロック図である。
図4】USB通信部を示すブロック図である。
図5】USB-Type-Cインターフェースの端子の配置を示す概略図である。
図6】DFPとUFPとの電気的な接続を示す回路図である。
図7】発熱素子の駆動率[%]と、外部機器へ供給される最大電力量[W]との関係を示す表である。
図8】媒体搬送速度レベルと、外部機器に供給される最大電力量[W]との関係を示す表である。
図9】印刷解像度ランクと、外部機器に供給される最大電力量[W]との関係を示す表である。
図10】媒体搬送速度、印刷解像度、及び、外部機器に供給される最大電力量[W]の関係を示す表である。
図11】プリンターにおける処理の手順を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態に係るプリンターシステムを示す概略図である。
図13】プリンターの印刷部を示す斜視図である。
図14】プリンターシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
図1は、第1実施形態に係るPOSシステム1を示す概略図である。図2は、POSシステム1を示すブロック図である。図1及び図2に示されるPOSシステム1は、例えば、店舗で使用されるものであり、顧客が購入した商品又はサービスに応じて会計を行う機能、及び会計に応じてレシートを発行する機能を有する。
【0009】
POSシステム1は、プリンター10、スマートデバイス3、カスタマーディスプレイ4、及びハンディースキャナー5を備える。
【0010】
スマートデバイス3は、外部機器の一例である。スマートデバイス3は、ユーザーが持ち運び可能な端末である。スマートデバイス3は、例えばタブレット型端末、又はスマートフォンである。スマートデバイス3は、所定の通信規格に従ってデータの通信を行う図示しない通信部を備える。スマートデバイス3は、通信部を介してプリンター10と通信する。スマートデバイス3は、後述するように、USBインターフェースを介して、プリンター10と接続可能である。スマートデバイス3は、無線通信を用いて、プリンター10と通信できる。
【0011】
スマートデバイス3は、バッテリーを備え、バッテリーに充電された電力により動作できる。スマートデバイス3は、後述するようにプリンター10から供給される電力によりバッテリーに充電できる。スマートデバイス3は、印刷データ作成用のアプリケーションを搭載する。スマートデバイス3は、POS用のアプリケーションを搭載する。
【0012】
スマートデバイス3は、ユーザーの指示等をトリガーとし、プリンター10に対して、制御に関するコマンド、及び印刷に関するコマンドを送信する。プリンター10は、これらコマンドを受信すると、後述する受信バッファーに記憶する。制御に係るコマンドは、例えば、書式の設定を指示する設定コマンドや、プリンター10の状態を示す情報の要求を指示するステータス要求コマンドを含む。印刷に係るコマンドは、例えば、印字を指示する印字コマンド、改行を指示する改行コマンド、行送りを指示する行送りコマンド、媒体の切断を指示するカッターコマンド等を含む。印刷に係るコマンドは、後述するサーマルヘッド21、搬送モーター23、及び、カッター駆動モーター24の何れかに対する駆動の指示に相当するコマンドを含む。
【0013】
スマートデバイス3は、ユーザーの指示等をトリガーとし、プリンター10が印刷する文字や画像等の印刷データを生成する。スマートデバイス3は、生成した印刷データを含む印字コマンドを、所定の通信規格に従ってプリンター10に送信する。プリンター10は、印字コマンドを実行し、印刷データに基づいて媒体に文字、画像等を印字する。
【0014】
カスタマーディスプレイ4は、外部機器の一例である。カスタマーディスプレイ4は、例えば店舗のカウンターテーブルに置いて使用できる。店舗で商品を購入した客は、カスタマーディスプレイ4に表示される金額を視認して、支払金額を認識できる。
【0015】
カスタマーディスプレイ4は、プリンター10と電気的に接続されている。カスタマーディスプレイ4は、プリンター10から電力の供給を受けて動作する。カスタマーディスプレイ4は、プリンター10から出力された情報に基づいて、金額の表示を行う。
【0016】
ハンディースキャナー5は、外部機器の一例である。ハンディースキャナー5は、プリンター10と電気的に接続されている。ハンディースキャナー5は、プリンター10から電力の供給を受けて動作する。プリンター10は、ハンディースキャナー5によってスキャンされた画像に関する情報を入力する。例えば、ユーザーである店員は、ハンディースキャナー5を用いて、商品に付されているバーコードをスキャンする。スキャンされた画像に関する情報は、プリンター10を介して、スマートデバイス3に出力される。スマートデバイス3は、商品に関する情報、及び金額に関する情報を取得できる。
【0017】
プリンター10は、例えばサーマルプリンターである。プリンター10は、表示部11、電源回路12、印刷部20、及びメインコントローラー30を備える。
【0018】
表示部11は、例えば液晶表示装置である。図2に示されるように、表示部11は、メインコントローラー30と電気的に接続され、メインコントローラー30によって制御される。表示部11は、例えば、プリンター10の状態に関する情報を表示する。表示部11は、例えば、通信状態に関する情報、感熱ロール紙の補充を促す情報等を表示してもよい。
【0019】
電源回路12は、表示部11、印刷部20及びメインコントローラー30に電力を供給できる。電源回路12は、例えば商用交流電源に接続されて、商用交流電源から供給される電力を適切な電力に変換して各部に供給できる。電源回路12は、例えばDC-DCコンバーター、抵抗素子、スイッチング素子、トランジスタ等を備える。電源回路12は、後述するように、プリンター10と電気的に接続された外部機器に電力を供給できる。外部機器としては、例えば、スマートデバイス3、カスタマーディスプレイ4、及びハンディースキャナー5等がある。
【0020】
印刷部20は、サーマルヘッド21、印刷ヘッド駆動部22、搬送モーター23、及びカッター駆動モーター24を備える。印刷部20は、図示しない搬送ローラー、及びカッターを有する。カッターは、固定刃及び可動刃を含む。サーマルヘッド21、印刷ヘッド駆動部22及び搬送モーター23は、電源回路12に電気的に接続され、電源回路12から電力の供給を受けて動作する。印刷部20は、メインコントローラー30によって制御される。印刷部20は、スマートデバイス3から出力される印刷データに基づく印刷を実行する。
【0021】
サーマルヘッド21は、多数の発熱素子25を有する。多数の発熱素子25は、媒体PAである感熱ロール紙26の搬送方向と直交する方向に配列されている。発熱素子25が通電されて、感熱ロール紙26の印刷面に熱を加える。これにより、サーマルヘッド21は、感熱ロール紙に、文字や画像等を印刷できる。
【0022】
印刷ヘッド駆動部22は、メインコントローラー30によって制御され、サーマルヘッド21の発熱素子25に対する通電を制御する。搬送モーター23は、メインコントローラー30によって制御され、搬送ローラーを回転させて、感熱ロール紙26を搬送する。カッター駆動モーター24は、メインコントローラー30によって制御され、可動刃を固定刃に向けてスライドするように駆動させ、感熱ロール紙を切断する。
【0023】
図3は、プリンター10のメインコントローラー30を示すブロック図である。図3に示されるように、メインコントローラー30は、CPU31、RAM32、ROM33、不揮発性メモリ34、無線通信部35、USB通信部50、及びBUS-IF36を備える。メインコントローラー30は、デバイスIF38、及び画像処理部39を備える。CPU31は、制御回路の一例である。制御回路の一例としてCPUを例示しているが、制御回路は、CPUに替えて、又は、CPUに加え、FPGA等のハードウェアを含んで構成されるものでもよい。FPGAは、Field Programmble Gate Arrayの略称である。
【0024】
CPU31は、プリンター10の主制御を司る。CPU31は、システムバス41を介して、RAM32、ROM33、不揮発性メモリ34、無線通信部35、USB通信部50、及びBUS-IF36と電気的に接続される。
【0025】
RAM32は、CPU31の作業領域を提供するための随時読み書き可能なメモリである。RAM32は、画像データを一時記憶するための画像メモリとしても使用できる。ROM33は、ブートROMであり、システムのブートプログラムが格納される。不揮発性メモリ34は、プリンター10の電源遮断後にも保持が必要なシステムソフトウェアや設定値データ等が格納される。
【0026】
無線通信部35は、無線通信を用いて、外部機器と接続できる。無線通信部35は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の規格に従って、外部機器と通信できる。BUS-IF36は、システムバス41と画像バス42とを電気的に接続するインターフェースである。BUS-IF36は、データ構造を変換するバスブリッジとして動作できる。
【0027】
画像バス42には、BUS-IF36の他に、デバイスIF38、及び画像処理部39が電気的に接続される。デバイスIF38は、メインコントローラー30と、印刷部20及び表示部11とを接続するインターフェースである。デバイスIF38は、データの同期系、非同期系の変換を行うことができる。画像処理部39は、印刷部20に出力される印刷に係るデータに対して、所定の処理を行うことができる。
【0028】
図4は、USB通信部50を示すブロック図である。図4に示されるように、USB通信部50は、USB-Type-Cインターフェース60、USBデータ通信部51、ホストIF52、USB制御部53を備える。
【0029】
USBデータ通信部51は、データ送受信制御及び通信プロトコル制御を行う。USBデータ通信部51は、USB接続されたスマートデバイス3等の外部機器からのデータ受信に関する制御を行うことができる。USBデータ通信部51は、印刷に係るコマンド等のデータをシステムバス41に送信するためのデータ送信制御を行うことができる。
【0030】
ホストIF52は、CPU31との通信インターフェースである。ホストIF52は、例えば同期式シリアル通信等でCPU31とUSB制御部53との間で行われる相互通信を媒介する。同期式シリアル通信は、例えばI2C(Inter-Integrated Curcuit)通信でもよい。
【0031】
USB制御部53は、ホストIF52を経由して受信した制御指示に基づいて、USB通信部50における処理を実行できる。USB制御部53は、MCU(Micro Control Unit)54、RAM55、及びROM56を備えていてもよい。
【0032】
RAM55は、プリンター10が給電可能な電力量を示す電力プロファイルの設定情報を保持できる。MCU54は、この電力プロファイルの設定情報に基づいて電源回路12から供給される電力を、図示しないレギュレーターを用いて昇圧処理または降圧処理を実行できる。これにより、プリンター10は、後述するVBUS端子61を経由して所望の電力量を外部機器に供給できる。
【0033】
USB制御部53は、プリンター10がスリープ中に外部機器から送信された印刷に係るコマンドを検出することができる。USB制御部53はCPU31に対して、コマンドの検出を通知して、プリンター10の状態を変更できる。
【0034】
プリンター10は、複数のUSB-Type-Cインターフェース60を備えていてもよい。USB-Type-Cインターフェース60には、USB-Type-Cケーブル90が接続される。外部機器であるスマートデバイス3は、USB-Type-Cケーブル90を介して、USB-Type-Cインターフェース60に接続される。
【0035】
USB-Type-Cインターフェース60は、VBUS端子61、D+/D-端子62、及びCC(Configuration Channel)端子63を備える。VBUS端子61は、電力入出力端子の一例である。VBUS端子61は、外部機器から電力の供給を受けることが可能である。VBUS端子61は、外部機器へデータ信号を送信可能である。D+/D-端子62は、データ送受信端子の一例である。D+/D-端子62は、外部機器からデータ信号を受信可能である。データ送受信端子は、外部機器へデータ信号を送信可能である。
【0036】
CC端子63は、状態識別端子の一例である。CC端子63は、D+/D-端子62が、外部機器からデータ信号を受信可能な状態であるか、又は、外部機器へデータ信号を送信可能な状態であるかを識別可能である。CC端子63は、VBUS端子61が、外部機器から電力の供給を受けることが可能な状態であるが、又は、外部機器へ電力を供給可能な状態であるかを識別できる。
【0037】
図5は、USB-Type-Cインターフェース60の端子の配置を示す概略図である。図5に示されるUSB-Type-Cインターフェース60は、第1列の端子A1~A12及び第2列の端子B1~B12を備える。これらの端子A1~A12及び端子B1~B12は、USB Type-C規格に準拠する。
【0038】
端子A2,A3,A10,A11及び端子B2,B3,B10,B11は、D+/D-端子62に含まれ、高速データ通信を支援する端子である。高速データ通信は、例えばUSB3.1による高速データ通信でもよい。端子A6,A7及び端子B6,B7は、D+/D-端子62に含まれ、低速データ通信を支援する端子である。低速データ通信は、例えばUSB2.0による低速データ通信でもよい。
【0039】
端子A4,A9及び端子B4,B9は、VBUS端子61であり、電力供給端子である。端子A1,A12及び端子B1,B12は、GND端子であり、接地電圧を伝達する端子である。端子A8及び端子B8は、SBU(sideband use)端子である。端子A8及び端子B8は、ALTモード支援のために利用される端子であり、Thunder bolt(登録商標)、DisplayPort、HDMI(登録商標)などを搭載したケーブルと接続される。
【0040】
端子A5及び端子B5は、CC端子63である。USB Type-C規格に準拠したUSB-Type-Cインターフェース60を備える機器同士は、双方向通信を行うことができる。USB-Type-Cインターフェース60は、DFP(Downstream Faceing Port)、又はUFP(Upstream Facing Port)に切り替えられる。
【0041】
USB-Type-Cインターフェース60は、第1状態又は第2状態に切り替わり動作可能である。第1状態であるUSB-Type-Cインターフェース60は、UFPとして動作できる。第2状態であるUSB-Type-Cインターフェース60はDFPとして動作できる。USB-Type-Cインターフェース60が第1状態である場合、シンク(Sink)として動作できる。USB-Type-Cインターフェース60が第2状態である場合、ソース(Source)として動作できる。
【0042】
USB-Type-Cインターフェース60が第1状態である場合、プリンター10は、スマートデバイス3からの求めに応じて印刷部20に印刷動作を実施させることができる。USB-Type-Cインターフェース60を介して接続されているスマートデバイス3から出力された印刷に係るコマンドは、CPU31に伝達される。CPU31は、印刷部20に指令信号を出力して、印刷動作を実施できる。
【0043】
図6は、DFP70として動作するUSB-Type-Cインターフェースと、UFP80として動作するUSB-Type-Cインターフェースとの電気的な接続について示す回路図である。図6では、CC端子の接続についてのみ示されている。プリンター10のUSB-Type-Cインターフェース60がDFP70として動作する場合、接続相手の外部機器のUSB-Type-CインターフェースはUFP80として動作する。プリンター10のUSB-Type-Cインターフェース60がUFP80として動作する場合、接続相手の外部機器のUSB-Type-Cインターフェースは、DFP70として動作する。DFP70として動作するUSB-Type-Cインターフェースについて、DFP70と称する。UFP80として動作するUSB-Type-Cインターフェースと称する。
【0044】
DFP70とUFP80とは、USB-Type-Cケーブル90を介して接続される。DFP70は、CC端子として、CC1端子71及びCC2端子72を有する。CC1端子71には、抵抗素子73が接続され、CC2端子72には、抵抗素子74が接続されている。抵抗素子73,74は、プルアップ抵抗Rpである。
【0045】
UFP80は、CC端子として、CC1端子81及びCC2端子82を有する。CC1端子81には、抵抗素子83が接続され、CC2端子82には、抵抗素子84が接続されている。抵抗素子83,84は、プルダウン抵抗Rdである。プリンター10がDFP70である場合、CC1端子71及びCC2端子72は、CC端子63に含まれる。プリンター10がUFP80である場合、CC1端子81及びCC2端子82は、CC端子63に含まれる。
【0046】
USB-Type-Cケーブル90は、CC端子と接続されるCCライン91を含む。USB-Type-Cケーブル90は、DFP70のCC端子と接続される抵抗素子92と、UFP80のCC端子と接続される抵抗素子93とを有する。抵抗素子92,93は、抵抗Raである。
【0047】
DFP70とUFP80とが接続されていない状態では、DFP70のCC1端子71及びCC2端子72は、抵抗素子73及び抵抗素子74によって、例えば第2電位E2であるとみなされている。第2電位E2は、例えば5Vである。
【0048】
DFP70とUFP80とが接続されていない状態では、UFP80のCC1端子81及びCC2端子82は、抵抗素子83及び抵抗素子84によって、例えば第1電位E1となっている。第1電位E1は、例えば0Vである。
【0049】
USB-Type-Cケーブル90を介して、DFP70とUFP80とが接続されると、DFP70のCC1端子71は、CCライン91を介してUFP80のCC2端子82と接続される。DFP70のCC1端子71は、抵抗素子73と抵抗素子84との抵抗分圧により一定の電圧に設定される。例えば、CC1端子71は、第3電位E3に保持される。
【0050】
USB-Type-Cケーブル90を介して、DFP70とUFP80とが接続されると、DFP70のCC2端子72は、USB-Type-Cケーブル90の抵抗素子92に接続される。CC2端子72は、抵抗素子74と抵抗素子92との抵抗分圧により一定の電圧に設定される。このときの電圧は、例えばUSB-Type-Cの仕様によって規定され、対応する電流値に従って定義され得る。
【0051】
USB-Type-Cケーブル90を介して、DFP70とUFP80とが接続されると、UFP80のCC1端子81は、USB-Type-Cケーブル90の抵抗素子93に接続される。
【0052】
DFP70は、プルアップ抵抗Rpとプルダウン抵抗Rdとが接続されているCCライン91を通じて伝達される信号をCC信号として取り扱うことができる。DFP70は、プルアップ抵抗Rpと抵抗Raとが接続されているラインをVCONNとして扱うことができる。このとき、USB-Type-Cケーブル90に供給される電圧は、例えばUSB-Type-Cの仕様によって規定され得る。
【0053】
DFP70は、抵抗素子84の存在によって、UFP80がUSB-Type-Cケーブル90を介して接続されたことを検出できる。DFP70は、VBUS端子61をONに変更して、5Vを供給する。UFP80は、抵抗素子73の存在、及びVBUS端子を経由して、電力の供給を受けていることを検出して、DFP70との接続を確立する。
【0054】
CC端子63は、USB-Type-Cインターフェース60に外部機器が接続されていない場合、第1電位E1と第2電位E2とに定期的に交互に切り替えられる。USB-Type-Cインターフェース60に接続された外部機器を検出した場合、CC端子63は、第3電位E3に保持される。第3電位E3は、第1電位E1及び第2電位E2とは異なる電位である。第3電位E3は、第1電位E1と第2電位E2と間の中間電位でもよい。
【0055】
第1電位E1は、USB-Type-Cインターフェース60が第1状態で接続されることを示す信号である。第2電位E2は、USB-Type-Cインターフェース60が第2状態で接続されることを示す信号である。
【0056】
CC端子63が第1電位E1である場合に、USB-Type-Cインターフェース60に、DFP70が接続されると、USB-Type-Cインターフェース60は外部機器を認識して第1状態で接続される。この場合、USB-Type-Cインターフェース60は、UFP80として動作できる。
【0057】
CC端子63が第1電位E1である場合に、USB-Type-Cインターフェース60に、UFP80が接続されると、CC端子63は外部機器を認識しない。
【0058】
CC端子63が第2電位E2である場合に、USB-Type-Cインターフェース60に、UFP80が接続されると、USB-Type-Cインターフェース60は外部機器を認識して第2状態で接続される。この場合、プリンター10は、DFP70として動作できる。
【0059】
CC端子63が第2電位E2である場合に、USB-Type-Cインターフェース60に、DFP70が接続されると、CC端子63は外部機器を認識しない。
【0060】
USB-Type-Cインターフェース60が、シンクである場合、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器からVBUS端子61を経由して電力の供給を受けることができる。この場合、外部機器のUSB-Type-Cインターフェースは、ソースとして動作する。
【0061】
USB-Type-Cインターフェース60が、ソースである場合、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器に対してVBUS端子61を経由して電力を供給することができる。この場合、外部機器のUSB-Type-Cインターフェース60は、シンクとして動作する。
【0062】
一般的に、プリンター10は、印刷動作を実施している状態より、印刷動作を実施していない待機状態の時間の方が長い。そのため、CC端子63が第2電位E2に保持される時間が、第1電位E1に保持される時間よりも長い方が好ましい。
【0063】
USB-Type-Cインターフェース60が、シンクである場合、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器からD+/D-端子62を経由してデータ信号を受信することができる。この場合、外部機器のUSB-Type-Cインターフェース60はソースとして動作する。
【0064】
USB-Type-Cインターフェース60が、ソースである場合、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器からD+/D-端子62を経由してデータ信号を送信することができる。この場合、外部機器のUSB-Type-Cインターフェース60は、シンクとして動作する。
【0065】
USB-Type-Cインターフェース60におけるパワーデリバリーは、USB Power Delivery(USB PD)で定義された規格である。USB-Type-Cインターフェース60では、パワーデリバリーを始める前に、プリンター10と外部機器との間で、供給又は受給する電圧、方向、機能に関する情報を伝達する。パワーデリバリーでは、接続される機器同士のコントラクトに基づいて、電力の供給又は受給を実行できる。電力を供給するポートがソースであり、電力を受けるポートがシンクである。ソースとして機能する機器は、プロバイターであり、シンクとして機能する機器は、コンシューマーである。USB-Type-Cインターフェース60は、状況に応じて供給する電力量を変更可能であり、電力の供給又は受給を変更できる。
【0066】
次に、USB-Type-Cインターフェース60におけるパワーデリバリーの処理の一例について説明する。ソースは、USB-Type-Cインターフェース60に接続されているUSB-Type-Cケーブル90のIDをチェックし、3Aを超える電流を流すことができるか否かを確認する。
【0067】
ソースは、シンクに対応可能なパワープロファイルを通知する。シンクは、ソースから通知された対応可能なパワープロファイルから目的のプロファイルを番号で要求する。ソースは要求されたパワープロファイルに対応可能であることを通知する。ソースは、その後VBUS端子61をONにして、シンクへの電力供給を開始する。
【0068】
次に、複数の発熱素子25の駆動率と、外部機器に供給される電力量との関係について説明する。メインコントローラー30のROM33には、発熱素子25の駆動率と、外部機器へ供給される電力量との関係を示すデータが格納されている。CPU31は、ROM33に記憶されているデータを参照して、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器へ供給される電力量を変更できる。複数の発熱素子25の駆動率とは、全て発熱素子25のうち、印刷動作に使用される発熱素子25の割合である。
【0069】
図7は、複数の発熱素子25の駆動率[%]と、外部機器へ供給される最大電力量[W]との関係を示す表である。図7の表では、左から順に、発熱素子25の駆動率[%]、外部機器へ供給可能な最大電力量[W]、電圧[V]、電流[A]が示されている。発熱素子25の駆動率が0~19%である場合には、供給可能な最大電力量は100Wである。この場合、電圧20V、電流5Aの電力が外部機器へ供給可能である。
【0070】
発熱素子25の駆動率が20~29%である場合には、供給可能な最大電力量は60Wである。この場合、電圧20V、電流3Aの電力が外部機器へ供給可能である。発熱素子25の駆動率が30~49%である場合には、供給可能な最大電力量は36Wである。この場合、電圧12V、電流3Aの電力が外部機器へ供給可能である。発熱素子25の駆動率が50~69%である場合には、供給可能な最大電力量は18Wである。この場合、電圧12V、電流1.5Aの電力が外部機器へ供給可能である。
【0071】
発熱素子25の駆動率が70~89%である場合には、供給可能な最大電力量は10Wである。この場合、電圧5V、電流2Aの電力が外部機器へ供給可能である。発熱素子25の駆動率が90~100%である場合には、外部機器へ電力を供給しない。これにより、プリンター10は、印刷を行う際に、発熱素子25の駆動率に応じて、外部機器に供給される電力を変更できる。プリンター10は、発熱素子25の駆動率に応じて、外部機器に給電可能な最大電力が異なる複数の給電モードを実行できる。プリンター10は、発熱素子25の駆動率に応じて、外部機器に供給可能な最大電力を段階的に増加又は減少させることができる。
【0072】
次に、媒体搬送速度と、外部機器に供給される電力量との関係について説明する。メインコントローラー30のROM33には、媒体搬送速度レベルと、外部機器へ供給される電力量との関係を示すデータが格納されている。媒体搬送速度は、印刷部20の搬送モーターの回転速度でもよく、媒体PAの搬送速度でもよい。
【0073】
図8は、媒体搬送速度レベルと、外部機器に供給される最大電力量[W]との関係を示す表である。図8の表では、左から順に、媒体搬送速度レベル、外部機器へ供給可能な最大電力量[W]、電圧[V]、電流[A]が示されている。媒体搬送速度レベルがレベル0の場合には、供給可能な最大電力量は100Wである。この場合、電圧20V、電流5Aの電力が外部機器へ供給可能である。レベル0とは、例えば、媒体搬送が行われていない場合を含む。レベル1~レベル5の順に、媒体搬送速度が増加する。レベル1は最も遅い低速印刷である。レベル5は最も速い高速印刷である。
【0074】
媒体搬送速度レベルがレベル1の場合には、供給可能な最大電力量は60Wである。この場合、電圧20V、電流3Aの電力が外部機器へ供給可能である。媒体搬送速度レベルがレベル2の場合には、供給可能な最大電力量は36Wである。この場合、電圧12V、電流3Aの電力が外部機器へ供給可能である。媒体搬送速度レベルがレベル3の場合には、供給可能な最大電力量は18Wである。この場合、電圧12V、電流1.5Aの電力が外部機器へ供給可能である。
【0075】
媒体搬送速度レベルがレベル4の場合には、供給可能な最大電力量は10Wである。この場合、電圧5V、電流2Aの電力が外部機器へ供給可能である。媒体搬送速度レベルがレベル5の場合には、外部機器へ電力を供給しない。これにより、プリンター10は、印刷を行う際に、媒体搬送速度の増加に応じて、外部機器に供給される電力量を減少させることができる。プリンター10は、媒体搬送速度に応じて、外部機器に給電可能な最大電力が異なる複数の給電モードを実行できる。プリンター10は、媒体搬送速度に応じて、外部機器に供給可能な最大電力を段階的に増加又は減少させることができる。
【0076】
次に、印刷解像度と、外部機器に供給される最大電力量[W]との関係について説明する。メインコントローラー30のROM33には、印刷解像度と、外部機器へ供給される電力量との関係を示すデータが格納されている。
【0077】
図9は、印刷解像度ランクと、外部機器に供給される最大電力量[W]との関係を示す表である。図9の表では、左から順に、印刷解像度ランク、外部機器へ供給可能な最大電力量[W]、電圧[V]、電流[A]が示されている。印刷解像度ランクは、ランク0~ランク5を含む。ランク0は印刷しない場合である。ランク1~ランク5の順に、印刷解像度が高い。ランク1の印刷解像度は、300×300[dpi]である。ランク2の印刷解像度は、600×300[dpi]又は300×600[dpi]である。ランク3の印刷解像度は、600×600[dpi]である。ランク4の印刷解像度は、1200×600[dpi]又は600×1200[dpi]である。ランク5の印刷解像度は、1200×1200[dpi]である。
【0078】
印刷解像度ランクがランク0の場合には、供給可能な最大電力量は100Wである。この場合、電圧20V、電流5Aの電力が外部機器へ供給可能である。印刷解像度ランクがランク1の場合には、供給可能な最大電力量は60Wである。この場合、電圧20V、電流3Aの電力が外部機器へ供給可能である。印刷解像度ランクがランク2の場合には、供給可能な最大電力量は36Wである。この場合、電圧12V、電流3Aの電力が外部機器へ供給可能である。
【0079】
印刷解像度ランクがランク3の場合には、供給可能な最大電力量は18Wである。この場合、電圧12V、電流1.5Aの電力が外部機器へ供給可能である。印刷解像度ランクがランク4の場合には、供給可能な最大電力量は10Wである。この場合、電圧5V、電流2Aの電力が外部機器へ供給可能である。印刷解像度ランクがランク5の場合には、外部機器へ電力を供給しない。これにより、プリンター10は、印刷を行う際に、印刷解像度の増加に応じて、外部機器に供給される電力量を減少させることができる。プリンター10は、印刷解像度に応じて、外部機器に給電可能な最大電力が異なる複数の給電モードを実行できる。プリンター10は、印刷解像度に応じて、外部機器に供給可能な最大電力を段階的に増加又は減少させることができる。
【0080】
次に、媒体搬送速度、印刷解像度、及び、外部機器に供給される最大電力量[W]の関係について説明する。メインコントローラー30のROM33には、媒体搬送速度、印刷解像度、外部機器へ供給される電力量の関係を示すデータが格納されている。
【0081】
図10は、媒体搬送速度、印刷解像度、及び、外部機器に供給される最大電力量[W]の関係を示す表である。図10の表では、左から順に、媒体搬送速度レベル、印刷解像度ランク、外部機器へ供給可能な最大電力量[W]、電圧[V]、電流[A]が示されている。媒体搬送速度レベルがレベル0の場合は、印刷しない場合であり、供給可能な最大電力量は100Wである。この場合、電圧20V、電流5Aの電力が外部機器へ供給可能である。
【0082】
図10に示されるように、媒体搬送速度レベル1~5において、印刷解像度ランク1~5について、それぞれ最大電力量が設定されてもよい。例えば、媒体搬送速度レベルがレベル1であり、印刷解像度ランクがランク1の場合には、供給可能な最大電力量は60Wである。媒体搬送速度レベルがレベル1であり、印刷解像度ランクがランク2の場合には、供給可能な最大電力量は36Wである。媒体搬送速度レベルがレベル1であり、印刷解像度ランクがランク3の場合には、供給可能な最大電力量は18Wである。媒体搬送速度レベルがレベル1であり、印刷解像度ランクがランク4の場合には、供給可能な最大電力量は10Wである。媒体搬送速度レベルがレベル1であり、印刷解像度ランクがランク5の場合には、外部機器へ電力を供給しない。これにより、プリンター10は、印刷を行う際に、媒体搬送速度レベル及び印刷解像度ランクに応じて、外部機器に供給される電力量を変更できる。プリンター10は、媒体搬送速度及び印刷解像度に応じて、外部機器に給電可能な最大電力が異なる複数の給電モードを実行できる。プリンター10は、媒体搬送速度及び印刷解像度に応じて、外部機器に供給可能な最大電力を段階的に増加又は減少させることができる。
【0083】
次に図11を参照して、プリンター10における処理の一例について説明する。図11は、プリンター10における処理の手順を示すフローチャートである。まず、ステップS11では、CPU31は、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器を検出したか否かを判定する。CPU31は、CC端子63で受信した識別情報に基づいて、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器を検出できる。
【0084】
CPU31は、外部機器を検出した場合には、ステップS12に進む。外部機器を検出しない場合には、CPU31は、ここでの処理を終了する。ステップS12では、CPU31は、印刷データを受信しているか否かを判定する。CPU31は、USB-Type-Cインターフェース60に接続されている外部機器から印刷データを受信しているか否かを判定する。印刷データを受信している場合には、CPU31は、ステップS13に進む。印刷データを受信していない場合には、CPU31は、ステップS14に進む。
【0085】
ステップS14では、プリンター10は、外部機器に対して最大の電力を供給する。CPU31は、電源回路12を制御して、外部機器に対して最大の電力を供給することができる。電源回路12から供給される電力は、VBUS端子61を経由して、外部機器に供給される。例えば、プリンター10から外部機器に対して供給される最大の電力量は100Wである。
【0086】
ステップS13では、CPU31は、印刷データを解析して、印字率100%の印刷を実行するか否かを判定する。印字率100%の印刷を実行する場合には、CPU31は、ステップs15に進む。印字率100%の印刷を実行しない場合には、ステップS16に進む。
【0087】
ステップS15では、CPU31は、外部機器へ電力を供給しないことを決定する。プリンター10は、印字率が100%である場合に、外部機器へ電力を供給しない。ステップS15の後、CPU31は、ステップS17に進む。
【0088】
ステップS16では、プリンター10は、発熱素子25の駆動率に応じた電力を外部機器へ供給する。CPU31は、発熱素子25の駆動率と外部機器へ供給される最大の電力量との関係を示すデータに基づいて、外部機器に供給する電力量を決定する。CPU31は、電源回路12を制御して、外部機器に電力を供給する。CPU31は、印刷データを解析して、発熱素子25の駆動率を認識できる。CPU31は、発熱素子25の駆動率が高い場合には、発熱素子の駆動率が低い場合と比較して、外部機器に供給する最大の電力量を低く設定する。ステップS16の後、CPU31は、ステップS17に進む。
【0089】
ステップS17では、CPU31は、印刷データに基づく印刷を印刷部20に実行させる。続く、ステップS18では、CPU31は、印刷が終了しているか否かを判定する。印刷が終了している場合には、CPU31は、ステップS19に進む。印刷が終了していない場合には、ステップS13に戻り、印刷が終了するまで、ステップS13、ステップS15~S18の処理を繰り返す。
【0090】
印刷終了後、CPU31は、ステップS19に進む。ステップS19では、ステップS14と同様に、プリンター10は、外部機器へ最大の電力量を供給する。
【0091】
このようなプリンター10では、VBUS端子61を経由して電力の供給を受けることが可能な外部機器が接続されていることがCC端子63によって検知され、且つ、印刷部20が印刷する場合において、複数の発熱素子25の駆動率が低い場合に、複数の発熱素子25の駆動率が高い場合と比較して、外部機器へ供給される電力量が多い。これにより、プリンター10では、発熱素子25の駆動率に応じて、外部機器へ供給される電力量を変更できる。発熱素子の駆動率が高い場合には、外部機器へ供給される電力量を減少させて、プリンター10で消費可能な電力量を確保できる。
【0092】
プリンター10のCPU31は、複数の印刷素子における駆動率の増加に応じて、外部機器へ供給される電力量を段階的に減少させることができる。CPU31は、ROM33に記憶されているデータを参照して、段階的に電力量を減少させる。これにより、外部機器へ供給する電力量を減少させて、プリンター10で消費可能な電力量を確保できる。
【0093】
CPU31は、印刷部20における印刷命令を実行する前に、給電モードを切り替えて、外部機器へ供給される電力量を減少させる。プリンター10は、ステップS16で駆動率に応じて給電モードを切り替えた後に、外部機器へ電力を供給する。その後のステップS17で印刷部20は、印刷を開始できる。
【0094】
CPU31は、印刷部20による印刷終了後に、外部機器へ供給される電力量が最大である給電モードに切り替える。プリンター10は、印刷終了後のステップS19において、電力量が最大である給電モードに切り替えて、外部機器に電力を供給できる。これにより、印刷部20おける電力の消費が少ない状態において、外部機器に供給する電力を最大にすることができる。そのため、印刷部20における電力消費を妨げることなく、外部機器に対して最大の電力を供給できる。
【0095】
次に図12図14を参照して第2実施形態に係るプリンター10Bについて説明する。図12は、第2実施形態に係るプリンター10Bを備えるプリンターシステム1Bを示す概略図である。図13は、プリンター10Bの印刷部20Bを示す斜視図である。図14は、プリンターシステムを示すブロック図である。第2実施形態に係るプリンター10Bが第1実施形態のプリンター10と違う点は、発熱素子25を有する印刷部20に代えて、圧電素子を有する印刷部20Bを備える点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0096】
図12及び図13に示されるプリンター10Bは、例えば家庭用のプリンターとして使用できる。プリンター10Bの用途は、家庭用に限定されず、業務用などその他の用途でもよい。プリンターシステム1Bは、プリンター10Bと、プリンター10Bに接続された外部機器とを含む。プリンター10Bは、外部機器と接続されるUSB-Type-Cインターフェース60を備える。外部機器としては、スマートデバイス3、スマートフォン6、ゲーム端末7、音声出力装置8、パソコン9、及び充電器14などがある。外部機器は、これらに限定されず、その他の電子機器等でもよい。
【0097】
プリンター10Bは、シリアル型のインクジェット方式のプリンターである。プリンター10Bの印刷部20Bは、液体噴射ヘッド121を搭載するキャリッジ122、キャリッジ搬送機構123、及び媒体搬送機構124を備える。
【0098】
液体噴射ヘッド121は、インクを噴射するノズル、及びノズルに連通する圧力室を備える。図14に示されるように、液体噴射ヘッド121は、圧力室内のインクに圧力を発生させる複数の圧電素子125、及び圧電素子125を駆動するための駆動回路126を含む。圧電素子は、印刷素子の一例である。圧電素子125及び駆動回路126には、電源回路12から電力が供給される。また、キャリッジ122は、液体噴射ヘッド121から噴射されるインクを貯留するインクカートリッジを搭載する。
【0099】
キャリッジ搬送機構123は、キャリッジ122を搬送するための搬送ベルト127、及び搬送ベルト127の駆動するキャリッジ搬送モーター128を含む。キャリッジ搬送モーター128には、電源回路12から電力が供給される。媒体搬送機構124は、媒体PAを搬送する搬送ローラー129、及び搬送ローラー129を駆動する媒体搬送モーター130を含む。媒体搬送モーター130には、電源回路12から電力が供給される。
【0100】
このような第2実施形態のプリンター10Bにおいても、第1実施形態のプリンター10と同様の作用効果を奏する。プリンター10Bは、印刷部20Bによる印刷を実施する際に、複数の圧電素子125の駆動率に応じて、外部機器に供給可能な最大電力を変更できる。プリンター10Bは、VBUS端子61を経由して電力の供給を受けることが可能な外部機器が接続されていることがCC端子63によって検知できる。プリンター10Bは、外部機器が接続されている状態で、印刷部20Bが印刷する場合において、複数の圧電素子125の駆動率が低い場合に、複数の圧電素子125の駆動率が高い場合と比較して、外部機器へ供給される電力量を多くできる。
【0101】
プリンター10Bは、外部機器が接続されている状態で、印刷部20Bが印刷する場合において、複数の圧電素子125の駆動率が高い場合に、複数の圧電素子125の駆動率が低い場合と比較して、外部機器へ供給される電力量を少なくできる。これにより、外部機器に電力を供給しながら、印刷部20Bによる印刷を実行できる。プリンター10Bによれば、印刷部20Bにおける電力不足を回避できる。
【0102】
なお、前述した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【0103】
上記の実施形態において、CPU31で実行される処理の一部は、例えば、USB制御部53などその他の制御部で実行してもよい。同様に、USB制御部53で実行される処理の一部は、CPU31で実行してもよい。
【0104】
上記の実施形態において、プリンター10は、発熱素子である印刷素子を備える構成としているが、プリンター10は、発熱素子を備えるものに限定されず、その他の印刷素子を備えるプリンターでもよい。印刷装置は、印刷素子として、圧電素子を備え、インクを媒体に噴射するインクジェットプリンターでもよい。印刷装置は、ドットパクトプリンター、又はレーザープリンターなどのその他のプリンターでもよい。
【0105】
上記の実施形態では、プリンター10を備えるPOSシステム1について説明しているが、プリンター10の用途は、POSシステム1に限定されない。本開示の印刷装置は、家庭用の印刷装置でもよく、業務用の印刷装置でもよく、その他の用途で使用される印刷装置でもよい。
【0106】
また、印刷装置に接続される外部機器は、スマートデバイス3、カスタマーディスプレイ4、ハンディースキャナー5、及び充電器14に限定されず、その他の外部機器でもよい。外部機器は、例えば、音声出力装置、画像表示装置、ゲーム端末、スマートウォッチ等のその他の外部機器でもよい。
【符号の説明】
【0107】
3…スマートデバイス(外部機器)、4…カスタマーディスプレイ(外部機器)、5…ハンディースキャナー(外部機器)、10,10B…プリンター(印刷装置)、12…電源回路、20,20B…印刷部、25…発熱素子(印刷素子)、31…CPU(制御回路)、60…USB-Type-Cインターフェース、61…VBUS端子(電力入出力端子)、62…D+/D-端子(データ送受信端子)、63…CC端子(状態識別端子)、125…圧電素子(印刷素子)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14