(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20241210BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61F13/494 111
A61F13/49 315Z
(21)【出願番号】P 2021033325
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 和泉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】黒原 健志
(72)【発明者】
【氏名】木村 笙子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雄貴
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-340380(JP,A)
【文献】特開2019-037351(JP,A)
【文献】特表2011-523887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股下に配置される吸収体と、
前記吸収体の肌面側を覆う透水性を備えたセンターシートと、
前記吸収体の非肌面側を覆う非透水性のバックシートと、
前記吸収体の長手方向と平行に複数の
第1の弾性体を接合し、前記複数の
第1の弾性体の付勢により襞状に付勢されるシートと、
を備え、
前記襞状に付勢されるシートは前記吸収体の非肌面側で接着され、前記吸収体の側面を肌面側に向かって立ち上が
り、
前記センターシートと前記バックシートは、前記吸収体の幅方向端部で接合されて接合端部が幅方向外側に向いており、
前記センターシートと前記バックシートは、前記接合端部で前記襞状に付勢されるシートと接合しておらず、
前記複数の第1の弾性体は、前記襞状に付勢されるシートの前記吸収体の側面に相当する部分に配置されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記襞状に付勢されるシートの他端は自由端である、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記襞状に付勢されるシートの他端に
第2の弾性体を接合し、着用者の肌面に密着させる、
請求項1
または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記センターシートと前記バックシートは前記吸収体
の側面に沿って屈曲されずに
前記吸収体の幅方向外側に延在して接合される、
請求項
1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排出された尿や体液を迅速に吸収体に誘導して吸収させる、使い捨ておむつ等の吸収性物品が知られている。しかし、吸収体は液体を吸収するように設計されており、排出されたものが軟便や水様便である場合、吸収体ではその固形分を吸収することはできない。
【0003】
このため、軟便や水様便がおむつの肌面側に長く留まることになり、吸収性物品の付け心地に影響を与える。また、軟便や水様便がおむつ表面に長時間存在すると、装着者の動きにより立体ギャザーなどの付勢体を超えておむつの外に漏れ出してしまう危険がある。
【0004】
そこで、センターシートに襞を設け、排出物を襞で堰き止めている間に軟便や水様便に含まれる水分を吸収体に導き、付勢体の外に漏れ出すのを防止する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排出物に含まれる水分を吸収体が吸収しやすくし、排出物が付勢体の外に漏れ出すのを防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、付勢体を内包するシートをおむつの非肌面側から起立させ、当該シートと吸収体との間に排出物を収納しつつ、吸収体の側面から水分を吸収し、漏出を防ぐ。
【0008】
具体的には、本発明は、着用者の股下に配置される吸収体と、前記吸収体の肌面側を覆う透水性を備えたセンターシートと、前記吸収体の非肌面側を覆う非透水性のバックシートと、前記吸収体の長手方向と平行に複数の弾性体を接合し、前記複数の弾性体による付勢により襞状に付勢されるシートと、を備え、前記襞状に付勢されるシートは前記吸収体の非肌面側に接着され、前記吸収体の側面を肌面側に向かって立ち上がる、吸収性物品である。
【0009】
前記襞状に付勢されるシートの他端は自由端とすることができる。
【0010】
前記襞状に付勢されるシートの他端に弾性体を接合し、着用者の肌面に密着させることができる。
【0011】
前記センターシートと前記バックシートは、吸収体の幅方向端部で接合されて接合端部が幅方向外側に向いており、接合端部で前記襞状に付勢されるシートと接合していない構成とすることもできる。
【0012】
前記センターシートと前記バックシートは前記吸収体側面に沿って屈曲されずに吸収体の幅方向外側に延在して接合される構成とすることもできる。
【0013】
前記センターシートは、前記吸収体の非肌面側まで延在し、前記バックシートと前記襞状に付勢されるシートと接合される構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつを展開し、伸張した状態を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつをA-A線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0016】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0017】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、パンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、例えば、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0018】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように装着されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開
口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0019】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される体液は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0020】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸張した状態を模式的に示した図である。
図3は、展開及び伸張した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。
【0021】
おむつ1は、着用者に着用された状態において外表面を形成するカバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6とを有する。カバーシート4Fは、主におむつ1の前身頃領域1Fの外表面を形成する。また、パッドカバーシート6は、主におむつ1の股下領域1Bの外表面を形成する。また、カバーシート4Rは、主におむつ1の後身頃領域1Rの外表面を形成する。カバーシート4F,4Rとパッドカバーシート6は、おむつ1の外表面の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。また、液不透過性のシートには、液不透過性と透湿性とが発揮されるように、0.1~数μm程度の微細な孔が多数形成されていてもよい。
【0022】
また、おむつ1は、カバーシート4Fの着用者側の面に積層されるインナーカバーシート5Fと、カバーシート4Fの着用者側の面に積層されるインナーカバーシート5Rとを有する。インナーカバーシート5Fは、カバーシート4Fのうち後述する折り返し線4F6よりも股下領域1B側の部分に一致する形状を有するシート状の部材である。インナーカバーシート5Rもインナーカバーシート5Fと同様、インナーカバーシート5Rのうち後述するインナーカバーシート5F6よりも股下領域1B側の部分に一致する形状を有するシート状の部材である。
【0023】
また、おむつ1は、パッドカバーシート6の着用者側の面において順に積層されるバックシート7、吸収体8、センターシート9を有する。パッドカバーシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。また、バックシート7、吸収体8、センターシート9は、何れもパッドカバーシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がパッドカバーシート6の長手方向と一致する状態でパッドカバーシート6に対して順に積層されている。バックシート7は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、センターシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、肌触りの良いシート状の部材である。このセンターシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るセンターシート9を通って吸収体8に浸入し、そこ
で吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、センターシート9は親水性を有していてもよい。
【0024】
吸収体8は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性の高吸収性重合体等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体8は、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収体8は、略平板形状を持つ。吸収体8は、1枚のマットからなる単層構造であってもよいし、複数枚のマットを重ね合わせた積層構造であってもよい。また、吸収体8は、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収体8の形状としては、例えば、矩形状、中央部付近が括れた砂時計型、その他各種の形状が挙げられる。なお、吸収体8は、ティッシュペーパーなどの透水性のある薄い紙で構成されたコアラップシートで包まれていてもよい。コアラップシートで包むことにより、粒状の吸収性樹脂が他のシートに漏出するのを防ぐことができる。
【0025】
バックシート7、吸収体8、センターシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート7、吸収体8、センターシート9が積層されているパッドカバーシート6で着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート7、吸収体8、センターシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された体液は、原則的にセンターシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0026】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、センターシート9の長辺の付近で長辺と平行に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って配置されている。よって、サイドシート10L,10Rは、前身頃領域1Fの左側の縁となるカバーシート4Fの縁4F7と、後身頃領域1Rの左側の縁となるカバーシート4Rの縁4R7とが互いに接合され、且つ、前身頃領域1Fの右側の縁となるカバーシート4Fの縁4F8と、後身頃領域1Rの右側の縁となるカバーシート4Rの縁4R8とが互いに接合されることにより、
図1に示したような完成状態のおむつ1になると、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿って吸収体8の両脇から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、カバーシート4Fにおける縁4F7及びカバーシート4Rにおける縁4R7、カバーシート4Fにおける縁4F8及びカバーシート4Rにおける縁4R8の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0027】
また、おむつ1は、パッドカバーシート6、バックシート7、吸収体8、センターシート9、サイドシート10L,10Rを挟んでカバーシート4Fの着用者側の面に積層される通気路形成シート11Fと、カバーシート4Rの着用者側の面に積層される通気路形成シート11Rとを有する。通気路形成シート11Fは、センターシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4Fに重ねられる。また、通気路形成シート11Rは、センターシート9の長手方向における他端側においてカバーシート4Rに重ねられる。なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、通気路形成シート11Fは、パッドカバーシート6の長手方向
における一端側の一部分が、カバーシート4Fの一部分に触れる状態で重ねられる。
【0028】
通気路形成シート11Fには、前身頃領域1Fの上側の縁に沿う左右方向に延在する領域に通気用の微細な通気孔11F1が多数配列されている。通気路形成シート11Rにも通気路形成シート11Fと同様、通気孔11R1が多数配列されている。ここで、通気孔とは、シートの一方の面の側の空間と他方の面の側の空間とを連通させる開口部を意味し、その形状は特に限定されない。よって、通気孔11F1,11R1としては、例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等の形状の開口部を適用することができる。通気路形成シート11F,11Rへの通気孔11F1,11R1の形成は、該通気路形成シート11F,11Rが通気性を有しない素材であることを意味するものでは無く、該通気路形成シート11F,11Rは通気性を有する素材と通気性を有しない素材の何れであってもよい。通気路形成シート11F,11Rは、通気性や液透過性を有する素材であることが好ましいが、例えば、非通気性の素材であってもよい。通気孔11F1,11R1の大きさや個数は特に限定されないが、例えば、開口面積が0.5~10mm2の孔であれば5~200個程度形成されることが好ましい。
【0029】
上記のように、おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート7及びセンターシート9の他、カバーシート4F,4R、通気路形成シート11F,11R、パッドカバーシート6、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0030】
ここで、
図3に示すように、カバーシート4Fは、折り返し線4F6において一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4Fに対して糸ゴム(糸状のゴム)4F2,4F3が配置され、カバーシート4Rに対して糸ゴム(糸状のゴム)4R2,4R3が配置されることで形成される。カバーシート4Fに配置される糸ゴム4F2,4F3は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁41F(
図3を参照)を形成することになる折り返し線4F6沿いに、折り返し線4F6側から糸ゴム4F2、糸ゴム4F3の順に設けられている。また、カバーシート4Rに配置される糸ゴム4R2,4R3も、糸ゴム4F2,4F3と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁41R(
図3を参照)を形成することになる折り返し線4R6沿いに、折り返し線4R6側から糸ゴム4R2、糸ゴム4R3の順に設けられている。このため、糸ゴム4F2,4F3は、伸縮方向となる胴回り方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4Fに設けられることになる。また、糸ゴム4R2,4R3は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4Rに設けられることになる。よって、縁4F7と縁4R7が互いに接合され、縁4F8と縁4R8が互いに接合されると、糸ゴム4F2,4F3と糸ゴム4R2,4R3は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F2,4F3と糸ゴム4R2,4R3は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0031】
更に、カバーシート4Fには糸ゴム4F4,4F5が配置され、カバーシート4Rには糸ゴム4R4,4R5が配置されている。糸ゴム4F4,4F5は、カバーシート4Fのうち糸ゴム4F3よりも股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F4,4F5は、カバーシート4Fの左端から右端まで途切れることなく配置される糸ゴム4F2,F3とは異なり、吸収体8に対応する部位となる幅方向中央部が所定の横幅分だけカットされている。カバーシート4Fは、吸収体8に対応する部位となる幅方向中央部がカットされた糸ゴム4F4,4F5を有することにより、吸水による吸収体8の膨張を阻害することなく、着用者の下腹部に適度な密着感を付与する。カバーシート4Rについてもカバーシート4Fと同様であり、吸収体8に対応する部位となる幅方向中央部が所定の横幅分だけカットされた糸ゴム4R4,4R5がカバーシート4Rに配置され
ることで、着用者の下腹部に適度な密着感を付与する。
【0032】
図4は、実施形態に係るおむつを
図3におけるA-A線で切断した断面図である。吸収体8の肌面側にはセンターシート9が配置され、非肌面側にはバックシート7が配置され、吸収体8はセンターシート9とバックシート7とに包まれている。センターシート9は、透水性を有する肌触りの良いシートであり、親水性を有していてもよい。バックシート7は透水性を有しておらず、センターシート9を介して吸水体8に吸収された体液が非肌面側から漏れ出るのを防止する。センターシート9と、バックシート7は、吸収体8の側面では吸収体8に沿って折り畳まれているが、更に幅方向に屈曲して吸収体8の幅方向に突出する形で接着されている。
【0033】
サイドシート10R,10Lは非透水性であり、吸収体8と、吸収体8の非肌面側のみで接着されている。サイドシートの肌面側端部には糸ゴム10R1,10L1が付され、これら糸ゴム10R1,10L1立体ギャザー3BR,3BLを形成している。立体ギャザー3BR,3BLはおむつ着用時に立ち上がって着用者の肌面に密着し、排出物が立体ギャザー3BR,3BLを超えておむつ1の外に漏出するのを防ぐ。
【0034】
サイドシート10R,10Lの吸収体8側面に相当する部分の長手方向には、糸ゴム10R2,10L2が接着されている。糸ゴム10R2,10L2の付勢により、サイドシート10R,10Lの吸収体8側面に相当する部分は、襞状になっている。また、センターシート9とバックシート7との接着部分は幅方向に突出している。このため、サイドシート10R,10Lと、センターシート9、バックシート7で包まれた吸収体8の側面との間には、前記襞と突出により、一定の空間が確保されている。
【0035】
サイドシート10R,10Lの吸収体8の側面部に対応する部分は、センターシート9とバックシート7との接合部により幅方向に押されている。このため、サイドシート10R,10Lに付された立体ギャザーは立ち上がりやすくなる。この構成により、立体ギャザー3BR,3BLは着用者の肌面に立ち上がりやすくなる。よって、着用者におむつ1を装着する際、装着者が立体ギャザーの立ち上がり方に気に留めなくても、立体ギャザーで排出物を規制できる形でおむつを正しく装着させることができる。
【0036】
また、このような形態のおむつ1に軟便や水様便が排出されると、排出物のうちセンターシート9を透過して吸収体8に吸収されなかった排出物は、センターシート9上を移動し、立体ギャザー3BRでおむつの外に漏れ出すのを規制されつつ、センターシート9とバックシート7に包まれた吸収体8側面と、内側側面シート12L,12Rとの間にできた空間に落ち込む。前述のように、吸収体8側面のサイドシート10R,10Lは、糸ゴム10R2,10L2の付勢により襞になっているため、広い表面積で排出物を支えることができる。当該空間の非肌面側は非透水性のシートに包まれているため、排出物がおむつ1の外に漏出することはない。
【0037】
当該空間に落ち込んだ排出物は、おむつの長手方向に向かって広がる。すなわち当該空間は排出物の流路としても機能する。このようにして、当該空間で長手方向に広がって保持されている間に、排出物に含まれる水分は吸収体8の幅方向端部の広いエリアから緩やかに吸収されて乾燥するので、排出物がおむつの外に漏れ出したり、着用者に長時間不快感を与えたりするのを防ぐことができる。また、内側側面シート12L、12Rの自由端と、立体ギャザー3BR、3BLとで排出物の腿方向への排出を多重に規制するため、排出物がおむつ1の外に漏出するのを防ぐことができる。
【0038】
また、サイドシート10R,10Lは、レグギャザー3CR,3CLを備えていてもよい。レグギャザー3CR,3CLにより、立体ギャザー3BR,3BLで規制できない場
合でも、排出物がおむつ1の外部に漏出するのを防ぐことができる。なお、本実施形態に係るおむつ1は、前述の通り排出物を収容する空間を備えているため、レグギャザー3CR,3CLを設けないこととしてもよい。
【0039】
図5は、別形態の構造の断面図である。
図5は、おむつを
図3におけるA-A線で切断した異なる形態の断面図である。本形態では、サイドシート10R,10Lの構成は
図4に係る形態と同一であるが、センターシート9とバックシート7は、吸収体8の側面に沿って折り畳まれず、吸収体8の幅方向横側に延在して接合している。このため、センターシート9とバックシート7の突出によって、サイドシート10R,10Lは、幅方向により強く押し出される。この結果、サイドシート10R,10Lと吸収体8との間に、より広い空間が形成される。
【0040】
また、サイドシート10R,10Lが吸収体8の側面でより強く押し出される結果、立体ギャザー3BR,3BLは着用者の肌面に、
図5に係る形態よりも更に立ち上がりやすくなる。よって、着用者におむつ1を装着する際、装着者が立体ギャザーの立ち上がり方を気に留めなくても、立体ギャザーで排出物を規制できる形でおむつを正しく装着させることができる。
【0041】
図6は、別形態の構造の断面図である。
図6は、おむつを
図3におけるA-A線で切断した更に異なる形態の断面図である。本形態は、サイドシート10R,10Lの構成は
図5に係る形態と同一であるが、センターシート9とバックシート7とが、他の実施形態のように吸収体側面で接着されていない点で異なる。本形態では、センターシート9は、吸収体8の肌面側幅方向端部と非肌面側幅方向端部とを包み込んでいる。
【0042】
センターシート9とバックシート7は、吸収体8の非肌面側に一定程度回り込んだ位置で接着されている。また、同じ位置で、サイドシート10L,10Rも接着されている。この構成により、透水性を有するセンターシートが、サイドシート10L,10Rが接合される位置でユーザの非肌面側に回り込むことになる。この結果、センターシート9とサイドシート10R,10Lとの間にできる空間の吸収体8側は、全て透水性を有するシートで形成されることになる。
【0043】
当該空間に落ち込んだ排出物に含まれる水分は、当該空間で長手方向に広がって保持されている間に、吸収体8の該当領域全面を覆うセンターシート9を介して、これまでの実施形態よりも高速で吸収されて乾燥するので、着用者に不快感を与える時間を短縮することができる。
【0044】
なお、
図6に係る形態では、サイドシート10R,10Lを吸収体8から更に幅方向に押し出すことはできないため、立体ギャザー3BR,3BLが着用者の肌面から立ち上がりにくくなる。このため、センターシート9の吸収体8側面に緩みを持たせたり、センターシート9同士を内側から接着したりするなどして、襞や突起を設けることができる。当該襞や突起により、サイドシート10L,10Rとの間に空間が形成されやすくなり、また、立体ギャザー3BR,3BLが立ち上がりやすくなる。
【0045】
以上、本発明の特徴について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。
【0046】
図7は、別形態の構造の断面図である。
図6は、おむつを
図3におけるA-A線で切断した更に異なる形態の断面図である。バックシート7の非肌面側には内側側面シート12R,12Lが接着されている。内側側面シート12R,12Lは非透水性であり、糸ゴム12R2,12L2で、長手方向から圧縮するように付勢されている。糸ゴム12R2,
12L2は、内側側面シート12R,12Lにそれぞれ複数設けられている。糸ゴム12R2,12L2の付勢により、内側側面シート12R,12Lは、吸収体8の側面では襞になっており、内側側面シートの肌面側端部は自由端になっている。
【0047】
内側側面シート12R,12Lの短手方向更に外側には、サイドシート10L,10Rが接着されている。サイドシート10L,10Rは、上述の実施形態と同じように非透水性である。サイドシートの肌面側端部には糸ゴム10R1,10R2が付され、立体ギャザー3BR,3BLを形成している。なお、サイドシート10L,10Rは、吸収体8の非肌面側でバックシート7に接着されていてよいし、内側肌面シート12L,12Rの側面に接着されることとしてもよい。いずれにしても、内側側面シート12L,12R、サイドシート10L,10Rとの間は接着されており、体液が両シートの隙間からおむつ1の外に漏れ出すことはない。なお、サイドシート10L,10Rの幅方向端部には、更に付勢体を付してレグギャザーを構成してもよい。
【0048】
当該空間に落ち込んだ排出物は、おむつの長手方向に向かって広がる。すなわち当該空間は排出物の流路としても機能する。このようにして、当該空間で長手方向に広がって保持されている間に、排出物に含まれる水分は吸収体8の幅方向端部の広いエリアから緩やかに吸収されて乾燥するので、排出物がおむつの外に漏れ出したり、着用者に長時間不快感を与えたりするのを防ぐことができる。また、内側側面シート12L、12Rの自由端と、立体ギャザー3BR、3BLとで放出物の腿方向への放出を多重に規制するため、放出物がおむつ1の外に漏出するのを効果的に防ぐことができる。
【0049】
これらの形態の各構成要素は、相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2T・・胴開口部
2L・・左下肢開口部
2R・・右下肢開口部
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
3CR,3CL・・レグギャザー
4F,4R・・カバーシート
4F1,4R1・・開口
4F2,4F3,4F4,4F5,4R2,4R3,4R4,4R5,10L1,10R1・・糸ゴム
4F6,4R6,10L2,10R2・・折り返し線
4F7,4F8,4R7,4R8・・縁
5F,5R・・インナーカバーシート
6・・パッドカバーシート
7・・バックシート
8・・吸収体
9・・センターシート
10L,10R・・サイドシート
10R1,10R2,10L1,10L2・・糸ゴム
12L,12R・・内側側面シート
12R2,12L2・・糸ゴム