(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】券面印字装置、券面印字方法、および券面印字プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20241210BHJP
G07B 1/00 20060101ALI20241210BHJP
G07B 5/00 20060101ALI20241210BHJP
G07B 1/06 20060101ALI20241210BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/32 E
G07B1/00 B
G07B1/00 A
G07B5/00 Z
G07B1/06 101C
B41J29/38 601
(21)【出願番号】P 2021035044
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼子 工治
(72)【発明者】
【氏名】小鶴 俊幸
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-161736(JP,A)
【文献】特開2003-346195(JP,A)
【文献】特開2007-237429(JP,A)
【文献】特開2009-282837(JP,A)
【文献】特開2009-116546(JP,A)
【文献】特開平11-283127(JP,A)
【文献】特開2007-021928(JP,A)
【文献】特開2018-147379(JP,A)
【文献】特開2002-366979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
G07B 1/00
G07B 5/00
G07B 1/06
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
券面に描かれている模様で分類したカードの種類毎に、券面の画像を記憶する記憶部と、
前記カードの券面に対する印字、および前記カードの券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去部と、
前記印字消去部が券面に対して印字、および印字の消去を選択的に行う前記カードの券面の画像を取得する券面画像取得部と、
前記券面画像取得部が取得した前記カードの券面の画像
と、
カードの種類毎に前記記憶部に記憶されている券面の画像と
を照合し、
前記券面画像取得部が券面の画像を取得した前記カードの種類を判定する種類判定部と、
前記印字消去部により前記カードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定部と、
前記消去判定部
が券面の印字が消去されたと判定した前記カー
ドに対して、前記印字消去部が
券面に印字するのを許可する印字許可部と、を備え、
前記消去判定部は、前記券面画像取得部が取得した、
前記印字消去部によって券面の印字が消去された前記カードの券面の画像と、
前記記憶部が記憶する、前記種類判定部によって判定された種類のカードの券面の画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出する、券面印字装置。
【請求項2】
カードの券面に対する印字、および前記カードの券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去部と、
前記カードの券面の画像を取得する券面画像取得部と、
前記印字消去部により前記カードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定部と、
前記消去判定部が前記カードの券面の印字が消去されたと判定した前記カードの券面に対して、前記印字消去部が印字するのを許可する印字許可部と、を備え、
前記券面画像取得部は、前記カードの券面の可視光画像の取得、および前記カードの券面の赤外画像の取得を選択的に行い、
前記消去判定部は、前記券面画像取得部が取得した、印字が消去された前記カードの券面の可視光画像と赤外画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出する、券面印字装置。
【請求項3】
前記種類判定部は、前記印字消去部によって印字が行われない、前記カードの券面の印字不使用領域における券面の画像を、前記記憶部に記憶されている券面の画像と照合し、そのカードの種類を判定する、請求項1に記載の券面印字装置。
【請求項4】
前記消去判定部は、前記券面画像取得部が取得した印字が消去された前記カードの券面の可視光画像のエッジ画像と赤外画像のエッジ画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出する、請求項2に記載の券面印字装置。
【請求項5】
前記印字消去部により前記カードの券面に対する印字が行われると、印字不良が生じていないかどうかを判定する印字不良判定部を、備え、
前記印字消去部は、前記印字不良判定部によって、印字不良が生じていると判定されると、前記カードの券面に対して再印字を行う、請求項1~4のいずれかに記載の券面印字装置。
【請求項6】
前記印字消去部は、前記カードの券面に対する再印字を、前記カードの券面に対する印字の消去を行った後に実行する、請求項5に記載の券面印字装置。
【請求項7】
カードの券面に対する印字、および前記カードの券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去ステップと、
前記印字消去ステップで券面に対して印字、および印字の消去を選択的に行う前記カードの券面の画像を取得する券面画像取得ステップと、
前記券面画像取得ステップで
取得した前記カードの券面の画像
と、記憶部がカードの種類毎に記憶しているカードの券面の画像と
を照合し、前記カードの種類を判定する種類判定ステップと、
前記印字消去ステップで前記カードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定ステップと、
前記消去判定ステップ
で券面の印字が消去されたと判定した前記カードの券面に対する印字を許可する印字許可ステップと、をコンピュータが実行し、
前記消去判定ステップは、前記券面画像取得ステップで取得した、
前記印字消去ステップで券面の印字が消去された前記カードの券面の画像と、
前記記憶部が記憶する、前記種類判定ステップで判定された種類のカードの券面の画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出するステップである、券面印字方法。
【請求項8】
カードの券面に対する印字、および前記カードの券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去ステップと、
前記カードの券面の画像を取得する券面画像取得ステップと、
前記印字消去ステップで前記カードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定ステップと、
前記消去判定ステップで前記カードの券面の印字が消去されたと判定した前記カードの券面に対する印字を許可する印字許可ステップと、をコンピュータが実行し、
前記券面画像取得ステップは、前記カードの券面の可視光画像の取得、および前記カードの券面の赤外画像の取得を選択的に行うステップであり、
前記消去判定ステップは、前記券面画像取得ステップで取得した印字が消去された前記カードの券面の可視光画像と赤外画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出するステップである、券面印字方法
。
【請求項9】
カードの券面に対する印字、および前記カードの券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去ステップと、
前記印字消去ステップで券面に対して印字、および印字の消去を選択的に行う前記カードの券面の画像を取得する券面画像取得ステップと、
前記券面画像取得ステップで
取得した前記カードの券面の画像
と、記憶部がカードの種類毎に記憶しているカードの券面の画像と
を照合し、前記カードの種類を判定する種類判定ステップと、
前記印字消去ステップで前記カードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定ステップと、
前記消去判定ステップ
で券面の印字が消去されたと判定した前記カードの券面に対する印字を許可する印字許可ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記消去判定ステップは、前記券面画像取得ステップで取得した、
前記印字消去ステップで券面の印字が消去された前記カードの券面の画像と、
前記記憶部が記憶する、前記種類判定ステップで判定された種類のカードの券面の画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出するステップである、券面印字プログラム。
【請求項10】
カードの券面に対する印字、および前記カードの券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去ステップと、
前記カードの券面の画像を取得する券面画像取得ステップと、
前記印字消去ステップで前記カードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定ステップと、
前記消去判定ステップで前記カードの券面の印字が消去されたと判定した前記カードの券面に対する印字を許可する印字許可ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記券面画像取得ステップは、前記カードの券面の可視光画像の取得、および前記カードの券面の赤外画像の取得を選択的に行うステップであり、
前記消去判定ステップは、前記券面画像取得ステップで取得した印字が消去された前記カードの券面の可視光画像と赤外画像とを照合し、前記カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出するステップである、券面印字プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カードの券面に対して文字等を印字する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、公共交通機関である鉄道で利用されている乗車券媒体の1つに非接触ICカードがある。非接触ICカードは、周知のように、無線通信機能を有し、乗車券情報をメモリに記録させている。この非接触ICカードは、SF(Stored Fare)券として利用されているだけでなく、定期券としても利用されている。非接触ICカードは、SF券、または定期券の一方の乗車券として利用される場合もあれば、SF券、および定期券の両方の乗車券として利用される場合もある。
【0003】
定期券の発行、更新が行える駅務機器(例えば、定期券発行機や、券売機)は、非接触ICカードを定期券として発行したり更新したりする時、定期券の有効期間、有効区間等を非接触ICカードの券面に印字する。非接触ICカードの券面には、定期券の有効期間、有効区間等の印字が繰り返し行えるように、例えばロイコ染料が塗布されている。
【0004】
特許文献1には、定期券の更新時に、非接触ICカードの券面に対して、更新前の定期券の有効期間、有効区間等の消去が正しく行われたことを確認した後に、更新する定期券の有効期間、有効区間等の印字を行うこと構成の装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非接触ICカードの券面の模様(デザイン)は、発行会社(電鉄会社)、記念カード、コラボレーションカード等で異なっている。すなわち、非接触ICカードは、券面の模様の種類が単一でない。
【0007】
特許文献1等に記載された従来の装置は、非接触ICカードの券面に対して印字の消去が正しく行われたかどうかの確認に、この非接触ICカードの券面の模様を考慮していなかった。このため、従来の装置は、印字が消去されていない箇所を、券面の模様であると誤判定することがあった。すなわち、従来の装置は、更新前の定期券にかかる印字の一部が消去されずに残っている券面に対して、更新する定期券にかかる印字を行い、印字品質の低下を生じさせることがあった。
【0008】
この発明の目的は、カードの券面に対する文字、図形等の印字品質の低下を抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の券面印字装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0010】
記憶部が、カードの種類毎に、券面の画像を記憶する。ここで言うカードの種類とは、そのカードの用途による分類ではなく、券面の画像による分類である。印字消去部は、カードの券面に対する印字、およびカードの券面に対する印字の消去を選択的に行う。例えば、カードの表面(印字面)には、ロイコ染料が塗布されている。ロイコ染料は、公知のように、熱を加えることにより、文字、図形等の印字や、印字されている文字、図形等を消去できる。
【0011】
券面画像取得部は、カードの券面の画像を取得する。種類判定部が、券面画像取得部が取得したカードの券面の画像を、記憶部に記憶されている券面の画像と照合し、カードの種類を判定する。消去判定部は、印字消去部によりカードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する。この消去判定部は、券面画像取得部が取得した印字消去部により印字が消去されたカードの券面の画像と、種類判定部によって判定された種類のカードの券面の画像とを照合し、カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出する。
【0012】
印字許可部は、消去判定部がカードの券面の印字が消去されたと判定したカードの券面に対して、印字消去部が印字するのを許可する。
【0013】
この構成では、カードの券面の模様に影響されることなく、カードの券面に印字されていた文字、図形等が消去されたかどうかを判定できる。したがって、カードの券面に対する文字、図形等の印字品質の低下を抑えることができる。
【0014】
また、種類判定部は、例えば、印字消去部によって印字が行われない、カードの券面の印字不使用領域における券面の画像を、記憶部に記憶されている券面の画像と照合し、そのカードの種類を判定する構成にすることによって、券面に印字されている文字、図形等に影響されることなく、カードの種類、すなわちカードの券面の画像を判定できる。
【0015】
また、券面印字装置は、以下に示すような構成であってもよい。
【0016】
この券面印字装置は、印字消去部が、カードの券面に対する印字、およびカードの券面に対する印字の消去を選択的に行う。券面画像取得部が、カードの券面の画像を取得する。この券面画像取得部は、カードの券面の可視光画像の取得、およびカードの券面の赤外画像の取得を選択的に行える。
【0017】
消去判定部は、印字消去部によりカードの券面の印字が消去されたかどうかを判定する。消去判定部は、券面画像取得部が印字消去部により印字が消去されたカードの券面の可視光画像と赤外画像とを照合し、カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出する。ロイコ染料は、印字の有無にかかわらず赤外光を透過するので、券面画像取得部で取得した赤外画像は、券面の模様を撮像した画像である。
【0018】
印字許可部は、消去判定部がカードの券面の印字が消去されたと判定したカードの券面に対して、印字消去部が印字するのを許可する。
【0019】
この構成でも、カードの券面の模様に影響されることなく、カードの券面に印字されていた文字、図形等が消去されたかどうかを判定できる。したがって、カードの券面に対する文字、図形等の印字品質の低下を抑えることができる。
【0020】
また、消去判定部は、例えば券面画像取得部が印字消去部により印字が消去されたカードの券面の可視光画像のエッジ画像と赤外画像のエッジ画像とを照合し、カードの券面において印字が消去されていない箇所を検出する構成にしてもよい。可視光画像のエッジ画像には、印字が消去されていない文字、図形等のエッジが現れるが、赤外画像のエッジ画像には、印字が消去されていない文字、図形等のエッジが現れない。
【0021】
また、例えば、印字消去部によりカードの券面に対する印字が行われると、印字不良が生じていないかどうかを判定する印字不良判定部を、備えもよい。この場合、印字消去部は、印字不良判定部によって、印字不良が生じていると判定されると、カードの券面に対して再印字を行えばよい。また、印字消去部は、カードの券面に対する再印字を、カードの券面に対する印字の消去を行った後に実行するのがよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、カードの券面に対する文字、図形等の印字品質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(A)は、定期券の有効期間、有効区間等が印字されていない非接触ICカードの券面を示す図であり、
図1(B)は、定期券の有効期間、有効区間等が印字された非接触ICカードの券面を示す図である。
【
図2】券面印字装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3(A)、(B)は、ICカードの搬送路を示す概略図である。
【
図4】券面印字装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(A)、(B)は、ICカードの種類の判定に用いる画像領域の例を示す図である。
【
図6】変形例1の券面印字装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図3(A)、(B)は、変形例1のICカードの搬送路を示す概略図である。
【
図8】
図8(A)は、券面に定期券の有効期間、有効区間が印字されたICカードの可視光画像であり、
図8(B)は、この可視光画像のエッジ画像であり、
図8(C)は、このICカードの赤外画像のエッジ画像である。
【
図9】変形例1の券面印字装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0025】
<1.適用例>
図1(A)は、定期券の有効期間、有効区間等が印字されていない非接触ICカードの券面を示す図であり、
図1(B)は、定期券の有効期間、有効区間等が印字された非接触ICカードの券面を示す図である。
【0026】
非接触ICカード100(以下、単にICカード100と言う。)の券面には、
図1に示すように、模様(デザイン)が描かれている。また、ICカード100は、ロイコ染料を券面に塗布し、文字、図形等の印字、消去を繰り返し行える。ICカード100は、所謂リライトカードである。ICカード100の券面には、
図1(B)に示すように、定期券の有効期間101、有効区間102等が印字される。
【0027】
なお、
図1に示すICカード100の券面の模様は、一例である。ICカード100の券面の模様は、発行会社(電鉄会社)、記念カード、コラボレーションカード等で異なる。
【0028】
この例の券面印字装置は、定期券の発行、更新が行える駅務機器(例えば、定期券発行機や、券売機)に適用される。券面印字装置は、適用された駅務機器(上位装置)からの指示にしたがって、定期券の有効期間101、有効区間102等をICカード100の券面に印字する。
【0029】
この例の、券面印字装置は、ICカード100に対して、券面の印字(更新前の定期券の有効期間101、有効区間102等にかかる印字)を消去した後、今回発行する定期券の有効期間101、有効区間102等を印字する。この例の券面印字装置は、ICカード100の種類を判定することにより、このICカード100の券面の模様を取得する。また、券面印字装置は、券面の印字を消去したICカード100の券面の画像を取得する。券面印字装置は、これらの画像を照合し、印字が消去されていない箇所を検出することによって、ICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われたかどうかを判断する。したがって、券面印字装置は、ICカード100の券面の模様に影響されることなく、ICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われたかどうかを判断できる。券面印字装置は、ICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われていないと判断すると、再度印字の消去を行う。
【0030】
また、券面印字装置は、ICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われていると判断すると、今回発行する定期券にかかる有効期間101、有効区間102等をICカード100の券面に印字する。
【0031】
したがって、この例の券面印字装置は、非接触ICカードの券面の模様に影響されることなく、印字が消去されていない箇所を、券面の模様であると誤判定するのを防止できる。すなわち、この例の券面印字装置は、更新前の定期券にかかる印字の一部が消去されずに残っているICカード100の券面に対して、更新する定期券にかかる印字を行うのを抑制でき、印字品質の低下を抑えることができる。
【0032】
<2.構成例>
図2は、この例の券面印字装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図3(A)、(B)は、ICカードの搬送路を示す概略図である。
図3(A)は、ICカードの搬送路の搬送面に対して平行な方向から視た平面図であり、
図3(B)は、ICカードの搬送路の搬送面に対して直交する方向から視た平面図である。
【0033】
この例の券面印字装置1は、定期券の発行、更新が行える駅務機器(例えば、定期券発行機や、券売機)に適用される。券面印字装置1は、例えば、駅務機器に組み込まれる。この例の券面印字装置1は、制御ユニット11と、券面画像記憶部12と、印字消去部13と、券面画像取得部14と、搬送部15と入出力部16、とを備えている。
【0034】
制御ユニット11は、券面印字装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、種類判定部11a、消去判定部11b、印字許可部11c、および印字不良判定部11dを有している。制御ユニット11が有する、種類判定部11a、消去判定部11b、印字許可部11c、および印字不良判定部11dについては後述する。
【0035】
券面画像記憶部12は、ICカード100の券面に描かれている模様の種類毎に、ICカード100の券面の画像を記憶している。券面画像記憶部12が、この発明で言う記憶部に相当する。券面画像記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体で構成してもよいし、他の種類の記憶媒体で構成してもよい。
【0036】
印字消去部13は、サーマルヘッド13aを有している。印字消去部13は、サーマルヘッド13aを制御し、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面に印字されている文字、図形の消去、および文字、図形等の印字を選択的に行う。ICカード100は、ロイコ染料が券面に塗布されたリライトカードである。印字消去部13は、サーマルヘッド13aでICカード100の券面に熱を加えることで、印字の消去、および印字を行う。
【0037】
券面画像取得部14は、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面の可視光画像を取得する。券面画像取得部14は、光源14a、およびイメージセンサ14bを有している。光源14aは、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面に可視光を照射する。イメージセンサ14bは、光源14aから照射され、ICカード100の券面で反射された反射光を検知する。
【0038】
なお、券面画像取得部14は、ICカード100の券面の可視光画像を取得することができればよく、イメージセンサ14bは、ラインセンサであってもよいし、エリアセンサであってもよい。また、券面画像取得部14は、CIS(Contact Image Sensor)で構成してもよい。
【0039】
搬送部15は、ICカード100を搬送路に沿って正方向、および逆方向に搬送する。ここで言う正方向は、駅務機器(不図示)の正面に設けられたカード挿入口からサーマルヘッド13a側へ向かう方向であり、逆方向は、サーマルヘッド13a側からカード挿入口側へ向かう方向である。
【0040】
入出力部16は、上位装置である駅務機器との間におけるデータの入出力を行う。ICカード100の券面に印字する有効期間、有効区間等が駅務機器から入出力部16に入力される。また、入出力部16は、ICカード100の券面に印字する有効期間、有効区間等の印字完了を駅務機器に出力する。
【0041】
次に、制御ユニット11が有する、種類判定部11a、消去判定部11b、印字許可部11c、および印字不良判定部11dについて説明する。
【0042】
種類判定部11aは、券面画像取得部14が取得したICカード100の券面の画像を、券面画像記憶部12がICカード100の種類毎に記憶している券面画像と照合し、券面画像取得部14が取得したICカード100の種類を判定する。種類判定部11aは、券面画像取得部14が取得したICカード100の種類を判定することによって、このICカード100の券面の模様を取得する。
【0043】
消去判定部11bは、印字消去部13が印字の消去を行ったICカード100の券面における印字が消去されていない箇所を検出し、その検出結果に基づいて、ICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われたかどうかを判定する。消去判定部11bは、2つの画像の差分画像を生成することによって、ICカード100の券面における印字が消去されていない箇所を検出する。2つの画像の一方は、印字消去部13が印字の消去を行ったICカード100の券面の画像であり、この画像は、券面画像取得部14によって取得される。2つの画像の他方は、券面画像記憶部12に記憶している、印字消去部13が印字の消去を行った種類のICカード100の券面の画像である。
【0044】
印字許可部11cは、印字消去部13に対して、ICカード100の券面に対する印字を許可する。印字許可部11cは、消去判定部11bがICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われていないと判定したとき、印字消去部13に対して、ICカード100の券面に対する印字を許可しない。
【0045】
印字不良判定部11dは、印字消去部13が印字を行ったICカード100の券面における印字されている箇所を検出し、その検出結果に基づいて、ICカード100の券面に対する印字が適正に行われたかどうかを判定する。印字不良判定部11dは、2つの画像の差分画像を生成することによって、ICカード100の券面の印字を検出する。2つの画像の一方は、印字消去部13が印字を行ったICカード100の券面の画像であり、この画像は、券面画像取得部14によって取得される。2つの画像の他方は、券面画像記憶部12に記憶している、印字消去部13が印字を行った種類のICカード100の券面の画像である。
【0046】
券面印字装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる券面印字プログラムを実行したときに、種類判定部11a、消去判定部11b、印字許可部11c、および印字不良判定部11dとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる券面印字プログラムを展開する領域や、この券面印字プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる券面印字方法を実行するコンピュータである。
【0047】
<3.動作例>
図4は、この例の券面印字装置の動作を示すフローチャートである。券面印字装置1は、ICカード100がカード挿入口(不図示)に挿入されると、このICカード100の搬送を開始する(s1、s2)。s2では、ICカード100を
図3に示す正方向に搬送する。
【0048】
券面印字装置1は、正方向に搬送されているICカード100の先端がサーマルヘッド13aに到達すると、印字消去部13により、このICカード100の券面に対する印字の消去処理を開始する(s3)。このICカード100の券面に対する印字の消去処理では、ICカード100の券面が消去温度t1に達する熱をサーマルヘッド13aによって加える。印字消去部13は、正方向に搬送されているICカード100の後端がサーマルヘッド13aよりもイメージセンサ14b側に達すると(すなわち、ICカード100がサーマルヘッド13aを通り過ぎると、)、このICカード100の券面に対する印字の消去処理を終了する。
【0049】
また、券面印字装置1は、正方向に搬送されているICカード100の券面の可視光画像を取得する(s4)。券面印字装置1は、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ14bに達すると、券面画像取得部14がICカード100の券面に対して光源14aによる可視光の照射、イメージセンサ14bによる反射光の検知を開始する。券面画像取得部14は、正方向に搬送されているICカード100の後端がイメージセンサ14bを通り過ぎると、このICカード100の券面の可視光画像の取得を終了する。券面画像取得部14は、光源14aによる可視光の照射を終了するとともに、イメージセンサ14bによる反射光の検知を終了する。
【0050】
なお、s4にかかる処理は、s3にかかる処理が終了した後に開始されるわけではなく、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ14bに達した時点で開始される。
【0051】
搬送部15は、ICカード100の券面の可視光画像の取得を終了すると、ICカード100の正方向への搬送を一時停止する。
【0052】
種類判定部11aが、今回券面に対して印字の消去を行ったICカード100の種類を判定する(s5)。種類判定部11aは、s4で取得したICカード100の券面の可視光画像を、券面画像記憶部12に種類毎に記憶しているICカード100の券面画像と照合することによって、今回印字の消去を行ったICカード100の種類を判定する。このs5では、s4で取得したICカード100の券面の画像全体を用いてもよいが、s3で消去されなかった印字が残っていると判定精度を低下させる要因になる。そこで、この例では、定期券の有効期間、有効区間等の印字に使用されない領域で画像の照合を行う。例えば、
図5(A)に示す、ICカード100の券面の左上の領域105aや、
図5(B)に示す、ICカード100の券面の外周辺の領域105bで画像の照合を行う。
【0053】
なお、
図5(A)、(B)に示す領域は、あくまでも一例であり、図示した領域に限るというものではない。
【0054】
また、券面印字装置1は、このように、s4で取得したICカード100の券面の画像全体ではなく、一部の領域105a、105bの照合で種類を判定するので、このICカード100の種類の判定にかかる処理時間を抑えられる。
【0055】
券面印字装置1は、s5でICカード100の種類が判定されると、印字の消去が適正に行われているかどうかを判定する(s6)。s6では、s4で取得したICカード100の券面の画像全体を、s5で判定した種類のICカード100の券面画像と照合し、s3で印字が消去されていない箇所を検出する。具体的には、消去判定部11bが、4で取得したICカード100の券面の画像と、s5で判定した種類のICカード100の券面画像との差分画像を生成することによって、両画像で相違している画素(印字が消去されていない画素)を検出する。消去判定部11bは、例えば、検出した画素数が、予め定めた閾値画素数を超えていれば、印字の消去が適正でないと判定する。言い換えれば、消去判定部11bは、例えば、検出した画素数が、予め定めた閾値画素数を超えていなければ、印字の消去が適正であると判定する。
【0056】
券面印字装置1は、s6で印字の消去が適正でないと判定すると、ICカード100の券面に対して、再度印字の消去、および可視光画像の取得を行い(s11、s12)、s6に戻る。s11、s12にかかる処理は、s3、s4と同様の処理である。
【0057】
なお、券面印字装置1は、このs11、s12にかかる処理を開始する前に、搬送部15がICカード100を逆方向に搬送し、このICカード100をサーマルヘッド13aよりもカード挿入口側に移動している。このICカード100の逆方向への搬送は、s6における判定結果を待つことなく、s4で可視光画像の取得を完了し、ICカード100の正方向への搬送を一時停止した後、すぐに開始しておくのがよい。
【0058】
券面印字装置1は、s6で印字の消去が適正であると判定すると、印字許可部11cが印字消去部13に対して、ICカード100の券面に対する、今回発行する定期券の有効期間、有効区間の印字を許可する。印字消去部13は、印字許可部11cからの印字許可を受けて、今回発行する定期券の有効期間、有効区間をICカード100の券面に印字する印字処理を行う(s7)。s7で印字する定期券の有効期間、有効区間は、上位装置から入出力部16に入力される。
【0059】
なお、券面印字装置1は、このs7にかかる処理を開始する前に、搬送部15がICカード100を逆方向に搬送し、このICカード100をサーマルヘッド13aよりもカード挿入口側に移動している。このICカード100の逆方向への搬送は、上記した通り、s6における判定結果を待つことなく、s4で可視光画像の取得を完了し、ICカード100の正方向への搬送を一時停止した後、すぐに開始しておくのがよい。
【0060】
このICカード100の券面に対する印字処理では、ICカード100の券面が印字温度t2(消去温度t1<印字温度t2)に達する熱をサーマルヘッド13aによって加える。印字消去部13は、正方向に搬送されているICカード100の後端がサーマルヘッド13aよりもイメージセンサ14b側に達すると(すなわち、ICカード100がサーマルヘッド13aを通り過ぎると、)、このICカード100の券面に対する印字処理を終了する。
【0061】
また、券面印字装置1は、正方向に搬送されているICカード100の券面の可視光画像を取得する(s8)。s8にかかる処理は、s4にかかる処理と同様である。券面画像取得部14は、正方向に搬送されているICカード100の後端がイメージセンサ14bを通り過ぎると、このICカード100の券面の可視光画像の取得を終了する。搬送部15は、ICカード100の券面の可視光画像の取得を終了すると、ICカード100の正方向への搬送を一時停止する。
【0062】
なお、s8にかかる処理は、s7にかかる処理が終了した後に開始されるわけではなく、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ14bに達した時点で開始される。
【0063】
券面印字装置1は、ICカード100の券面に対する印字が適正であるかどうかを判定する(s9)。印字不良判定部11dは、s8で取得したICカード100の券面の可視光画像と、s5で判定した種類のICカード100の券面画像と照合し、s7での印字が適正に行われているかどうかを判定する。具体的には、印字不良判定部11dは、s8で取得したICカード100の券面の画像と、s5で判定した種類のICカード100の券面画像との差分画像を生成することによって、s7でICカード100の券面に印字された文字等の画像を取得する。印字不良判定部11dは、取得したICカード100の券面に印字された文字等の画像(生成した差分画像)を基に、ICカード100の券面に対する印字が適正であるかどうかを判定する。
【0064】
券面印字装置1は、s9でICカード100の券面に対する印字が適正でないと判定すると、s7に戻って、ICカード100の券面に対する有効期間、有効区間の印字を再度行う。
【0065】
なお、券面印字装置1は、このs9にかかる処理を行っている間に、搬送部15がICカード100を逆方向に搬送し、このICカード100をサーマルヘッド13aよりもカード挿入口側に移動しておいてもよい。
【0066】
券面印字装置1は、s9でICカード100の券面に対する印字が適正であると判定すると、このICカード100をカード挿入口に放出し(s10)、s1に戻る。
【0067】
このように、この例の券面印字装置1は、ICカード100の券面の模様に影響されることなく、この券面に印字されていた有効期間、有効区間等が適正に消去されたかどうかを確認することができる。したがって、この例の券面印字装置1は、ICカード100の券面に対する有効期間、有効区間等の印字品質の低下を抑えることができる。
【0068】
なお、上記の例では、s9でICカード100の券面に対する印字が適正でないと判定すると、s7に戻るとしたが、s11に進むようにしてもよい。すなわち、s9でICカード100の券面に対する印字が適正でないと判定すると、再度ICカード100の券面に対して、印字消去処理を行うようにしてもよい。
【0069】
また、搬送部15は、上記した印字消去部13によるICカード100の券面に対する印字、消去、および券面画像取得部14によるICカード100の券面の可視光画像の取得に応じて、ICカード100を正方向に搬送したり、逆方向に搬送したりする。
【0070】
また、サーマルヘッド13aと、光源14aおよびイメージセンサ14bとの並び順は、
図3に示した並びでなく、反対の並びであってもよい。ただし、並び順を反対にした場合、ICカード100を逆方向に搬送しながら、印字、または消去を行い、券面の画像を取得すればよい。
【0071】
また、処理時間を短縮するため、光源14aおよびイメージセンサ14bを、サーマルヘッド13aを挟んだ両側に配置してもよい。
【0072】
<4.変形例>
・変形例1
図6は、この変形例1の券面印字装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図7(A)、(B)は、ICカードの搬送路を示す概略図である。
図7(A)は、ICカードの搬送路の搬送面に対して平行な方向から視た平面図であり、
図7(B)は、ICカードの搬送路の搬送面に対して直交する方向から視た平面図である。
【0073】
この変形例1の券面印字装置2も、定期券の発行、更新が行える駅務機器に適用され、この駅務機器に組み込まれている。券面印字装置2は、制御ユニット21と、印字消去部22と、券面画像取得部23と、搬送部24と入出力部25、とを備えている。
【0074】
制御ユニット21は、券面印字装置2本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット21は、消去判定部21a、印字許可部21b、および印字不良判定部21cを有している。制御ユニット21が有する、消去判定部21a、印字許可部21b、および印字不良判定部21cについては後述する。
【0075】
印字消去部22は、サーマルヘッド22aを有している。印字消去部22は、上記した例の印字消去部13と同様の構成である。また、この例でも、ICカード100は、ロイコ染料を券面に塗布したリライトカードである。
【0076】
券面画像取得部23は、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面の画像を取得する。券面画像取得部23は、光源23a、およびイメージセンサ23bと、光源23c、およびイメージセンサ23dを有している。光源23aは、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面に可視光を照射する。イメージセンサ23bは、光源23aから照射され、ICカード100の券面で反射された反射光を検知することにより、ICカード100の券面の可視光画像を取得する。また、光源23cは、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面に赤外光(近赤外光)を照射する。イメージセンサ23dは、光源23cから照射され、ICカード100の券面で反射された反射光を検知することにより、ICカード100の券面の赤外画像を取得する。すなわち、券面画像取得部23は、搬送路に沿って搬送されているICカード100の券面の可視光画像、および赤外画像を取得できる。
【0077】
搬送部24は、ICカード100を搬送路に沿って正方向、および逆方向に搬送する。ここで言う正方向は、駅務機器(不図示)の正面に設けられたカード挿入口からサーマルヘッド22a側へ向かう方向であり、逆方向は、サーマルヘッド22a側からカード挿入口側へ向かう方向である。搬送部24は、上記した例の搬送部15と同様の構成である。
【0078】
入出力部25は、上位装置である駅務機器との間におけるデータの入出力を行う。
【0079】
入出力部25は、上位装置である駅務機器との間におけるデータの入出力を行う。ICカード100の券面に印字する有効期間、有効区間等が駅務機器から入出力部25に入力される。また、入出力部25は、ICカード100の券面に印字する有効期間、有効区間等の印字完了を駅務機器に出力する。この入出力部25は、上記した例の入出力部16と同様の構成である。
【0080】
次に、制御ユニット21が有する、消去判定部21a、印字許可部21b、および印字不良判定部21cについて説明する。
【0081】
消去判定部21aは、印字消去部22が印字の消去を行ったICカード100の券面における印字が消去されていない箇所を検出し、その検出結果に基づいて、ICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われたかどうかを判定する。消去判定部21aは、2つの画像の差分画像を生成することによって、ICカード100の券面における印字が消去されていない箇所を検出する。2つの画像の一方は、印字消去部22が印字の消去を行ったICカード100の券面の可視光画像のエッジ画像であり、この可視光画像は、券面画像取得部23によって取得される。2つの画像の他方は、印字消去部22が印字の消去を行ったICカード100の券面の赤外画像のエッジ画像であり、この赤外画像も、券面画像取得部23によって取得される。
【0082】
なお、エッジ画像は、公知のように、プレヴィットフィルタ(Prewitt Filter)、ソーベルフィルタ(Sobel Filter)、ラプラシアンフィルタ(Laplacian Filter)等の微分フィルタを用いた画像処理で生成できる。
【0083】
図8(A)は、券面に定期券の有効期間、有効区間が印字されたICカードの可視光画像であり、
図8(B)は、この可視光画像のエッジ画像であり、
図8(C)は、このICカードの赤外画像のエッジ画像である。
図8(B)、(C)に示すように可視光画像のエッジ画像には、ICカード100の券面に印字されている定期券の有効期間、有効区間を示す文字のエッジが現れるが、赤外画像のエッジ画像には、ICカード100の券面に印字されている定期券の有効期間、有効区間を示す文字のエッジが現れない。両画像の相違は、可視光は、ロイコ染料の発色箇所で反射するが、赤外光は、ロイコ染料の発色箇所でも透過することによって生じている。
【0084】
印字許可部21bは、印字消去部22に対して、ICカード100の券面に対する印字の許可を指示する。印字許可部21bは、消去判定部21aがICカード100の券面に対する印字の消去が適正に行われていないと判定したとき、印字消去部22に対して、ICカード100の券面に対する印字を許可しない。
【0085】
印字不良判定部21cは、印字消去部22が印字を行ったICカード100の券面における印字されている箇所を検出し、その検出結果に基づいて、ICカード100の券面に対する印字が適正に行われたかどうかを判定する。印字不良判定部11dは、2つの画像の差分画像を生成することによって、ICカード100の券面の印字を検出する。2つの画像の一方は、印字消去部22が印字を行ったICカード100の券面の可視光画像のエッジ画像であり、2つの画像の他方は、印字消去部22が印字を行ったICカード100の券面の赤外画像のエッジ画像である。印字不良判定部21cは、差分画像に現れたエッジであって、印字消去部22が印字した文字等のエッジ以外のエッジを検出することにより、ICカード100の券面に対する印字が適正に行われたかどうかを判定する。
【0086】
券面印字装置2の制御ユニット21は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる券面印字プログラムを実行したときに、消去判定部21a、印字許可部21b、および印字不良判定部21cとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる券面印字プログラムを展開する領域や、この券面印字プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット21は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる券面印字方法を実行するコンピュータである。
【0087】
この変形例1の券面印字装置2の動作について説明する。
図9は、この変形例1の券面印字装置の動作を示すフローチャートである。券面印字装置2は、ICカード100がカード挿入口に挿入されると、このICカード100の搬送を開始する(s21、s22)。s22では、ICカード100を
図7に示す正方向に搬送する。
【0088】
券面印字装置2は、正方向に搬送されているICカード100の先端がサーマルヘッド22aに到達すると、印字消去部22により、このICカード100の券面に対する印字の消去処理を開始する(s23)。このICカード100の券面に対する印字の消去処理では、ICカード100の券面が消去温度t1に達する熱をサーマルヘッド22aによって加える。印字消去部22は、正方向に搬送されているICカード100の後端がサーマルヘッド22aよりもイメージセンサ23b側に達すると(すなわち、ICカード100がサーマルヘッド22aを通り過ぎると、)、このICカード100の券面に対する印字の消去処理を終了する。
【0089】
また、券面印字装置2は、正方向に搬送されているICカード100の券面の可視光画像を取得する(s24)。券面印字装置1は、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ23bに達すると、券面画像取得部23がICカード100の券面に対して光源23aによる可視光の照射、イメージセンサ23bによる反射光の検知を開始する。券面画像取得部23は、正方向に搬送されているICカード100の後端がイメージセンサ23bを通り過ぎると、このICカード100の券面の可視光画像の取得を終了する。券面画像取得部14は、光源23aによる可視光の照射を終了するとともに、イメージセンサ23bによる反射光の検知を終了する。
【0090】
さらに、券面印字装置2は、正方向に搬送されているICカード100の券面の赤外画像を取得する(s25)。券面印字装置1は、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ23dに達すると、券面画像取得部23がICカード100の券面に対して光源23cによる赤外光の照射、イメージセンサ23dによる反射光の検知を開始する。券面画像取得部23は、正方向に搬送されているICカード100の後端がイメージセンサ23dを通り過ぎると、このICカード100の券面の赤外画像の取得を終了する。券面画像取得部23は、光源23cによる赤外光の照射を終了するとともに、イメージセンサ23dによる反射光の検知を終了する。
【0091】
なお、s24にかかる処理は、s23にかかる処理が終了した後に行われるわけではなく、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ23bに達した時点で開始される。また、s25にかかる処理は、s24にかかる処理が終了した後に行われるわけではなく、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ23dに達した時点で開始される。
【0092】
搬送部24は、ICカード100の券面の赤外画像の取得を終了すると、ICカード100の正方向への搬送を一時停止する。
【0093】
券面印字装置2は、印字の消去が適正に行われたかどうかを判定する(s26)。消去判定部21aは、s24で取得したICカード100の券面の可視光画像のエッジ画像を生成するとともに、s25で取得したICカード100の券面の赤外画像のエッジ画像を生成する。消去判定部21aは、ICカード100の券面の可視光画像のエッジ画像と、ICカード100の券面の赤外画像のエッジ画像との差分画像を生成し、s23で印字が消去されなかった箇所(画素)を検出する。消去判定部21aは、例えば、検出した画素数が、予め定めた閾値画素数を超えていれば、印字の消去が適正でないと判定する。言い換えれば、消去判定部21aは、例えば、検出した画素数が、予め定めた閾値画素数を超えていなければ、印字の消去が適正であると判定する。
【0094】
券面印字装置2は、s26で印字の消去が適正でないと判定すると、s23に戻り、上記した処理を繰り返す。券面印字装置2は、搬送部24が、ICカード100をサーマルヘッド22aよりもカード挿入口側に移動させた後、s23以降の処理を繰り返す。
【0095】
なお、券面印字装置2は、s26における判定結果を待つことなく、搬送部24がICカード100の逆方向への搬送を開始しておくのがよい。例えば、搬送部24は、s25で赤外画像の取得を完了し、ICカード100の正方向への搬送を一時停止した後、すぐにICカード100の逆方向への搬送を開始しておくのがよい。
【0096】
券面印字装置2は、s26で印字の消去が適正であると判定すると、印字許可部21bが印字消去部22に対して、ICカード100の券面に対する、今回発行する定期券の有効期間、有効区間の印字を許可する。印字消去部22は、印字許可部21bからの印字許可を受けて、今回発行する定期券の有効期間、有効区間をICカード100の券面に印字する印字処理を行う(s27)。s27で印字する定期券の有効期間、有効区間は、上位装置から入出力部25に入力されている。
【0097】
なお、券面印字装置2は、このs27にかかる処理を開始する前に、搬送部24がICカード100を逆方向に搬送し、このICカード100をサーマルヘッド22aよりもカード挿入口側に移動している。このICカード100の逆方向への搬送は、上記した通り、s26における判定結果を待つことなく、開始しておくのがよい。
【0098】
このICカード100の券面に対する印字処理では、ICカード100の券面が印字温度t2(消去温度t1<印字温度t2)に達する熱をサーマルヘッド22aによって加える。印字消去部22は、正方向に搬送されているICカード100の後端がサーマルヘッド22aよりもイメージセンサ23b側に達すると(すなわち、ICカード100がサーマルヘッド22aを通り過ぎると、)、このICカード100の券面に対する印字処理を終了する。
【0099】
また、券面印字装置2は、正方向に搬送されているICカード100の券面の可視光画像を取得する(s28)。s28にかかる処理は、s24にかかる処理と同様である。券面画像取得部14は、正方向に搬送されているICカード100の後端がイメージセンサ23bを通り過ぎると、このICカード100の券面の可視光画像の取得を終了する。
【0100】
さらに、券面印字装置2は、正方向に搬送されているICカード100の券面の赤外画像を取得する(s29)。s29にかかる処理は、s25にかかる処理と同様である。券面画像取得部14は、正方向に搬送されているICカード100の後端がイメージセンサ23dを通り過ぎると、このICカード100の券面の赤外画像の取得を終了する。
【0101】
なお、s28にかかる処理は、s27にかかる処理が終了した後に行われるわけではなく、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ23bに達した時点で開始される。また、s29にかかる処理は、s28にかかる処理が終了した後に行われるわけではなく、正方向に搬送されているICカード100の先端がイメージセンサ23dに達した時点で開始される。
【0102】
券面印字装置2は、ICカード100の券面に対する印字が適正であるかどうかを判定する(s30)。印字不良判定部21cは、s28で取得したICカード100の券面の可視光画像のエッジ画像を生成するとともに、s29で取得したICカード100の券面の赤外画像のエッジ画像を生成する。印字不良判定部21cは、ICカード100の券面の可視光画像のエッジ画像と、ICカード100の券面の赤外画像のエッジ画像との差分画像を生成し、s27でICカード100の券面に印字された文字のエッジ画像を取得する。印字不良判定部21cは、取得したICカード100の券面に印字された文字等のエッジ画像(生成した差分画像)を基に、ICカード100の券面に対する印字が適正であるかどうかを判定する。
【0103】
券面印字装置2は、s30でICカード100の券面に対する印字が適正でないと判定すると、s27に戻って、ICカード100の券面に対する有効期間、有効区間の印字を再度行う。
【0104】
なお、券面印字装置2は、このs30にかかる処理を行っている間に、搬送部24がICカード100を逆方向に搬送し、このICカード100をサーマルヘッド22aよりもカード挿入口側に移動しておいてもよい。
【0105】
券面印字装置1は、s30でICカード100の券面に対する印字が適正であると判定すると、このICカード100をカード挿入口に放出し(s31)、s21に戻る。
【0106】
このように、この例の券面印字装置2は、ICカード100の券面の模様に影響されることなく、この券面に印字されていた有効期間、有効区間等が適正に消去されたかどうかを確認することができる。したがって、この例の券面印字装置2は、ICカード100の券面に対する有効期間、有効区間等の印字品質の低下を抑えることができる。
【0107】
なお、上記の例では、s30でICカード100の券面に対する印字が適正でないと判定すると、s27に戻るとしたが、s23に戻るようにしてもよい。すなわち、s30でICカード100の券面に対する印字が適正でないと判定すると、再度ICカード100の券面に対して、印字消去処理を行うようにしてもよい。
【0108】
また、搬送部24は、上記した印字消去部22によるICカード100の券面に対する印字、消去、および券面画像取得部23によるICカード100の券面の可視光画像、または赤外画像の取得に応じて、ICカード100を正方向に搬送したり、逆方向に搬送したりする。
【0109】
また、光源23aおよびイメージセンサ23bと、光源23cおよびイメージセンサ23dとの並び順は、
図7に示した並びでなく、反対の並びであってもよい。光源23aおよびイメージセンサ23bと、光源23cおよびイメージセンサ23dとを、サーマルヘッド22aよりもカード挿入口側に配置してもよい。また、カード挿入口側から、光源23cおよびイメージセンサ23d、サーマルヘッド22a、光源23aおよびイメージセンサ23bの並び順に配置してもよいし、光源23aおよびイメージセンサ23b、サーマルヘッド22a、光源23cおよびイメージセンサ23dの並び順に配置してもよい。
【0110】
また、券面画像取得部23は、ICカード100の券面の可視光画像、および赤外画像を取得できる構成であればどのような構成であってもよい。例えば、券面画像取得部23は、ICカード100の券面の可視光画像、および赤外画像を同時に取得できる構成であってもよい。
【0111】
また、券面画像取得部23は、上記の例と同様に、ICカード100の券面の可視光画像、および赤外画像がサーマルヘッド22aを挟んだ両側で取得できる構成にしてもよい(サーマルヘッド22aを挟んだ両側に、ICカード100の券面の可視光画像、および赤外画像を取得できる構成を配置してもよい。)。
【0112】
なお、券面印字装置1、2は、定期券として利用されるICカード100の券面に対して、文字等の印字、および印字の消去を行う駅務機器に限らず、ポイントカード等として利用されるICカード100の券面に対して、文字等の印字、および印字の消去を行う機器にも適用できる。すなわち、券面印字装置1、2が適用できる機器は、駅務機器に限らない。
【0113】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0114】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記1>
カード(100)の種類毎に、券面の画像を記憶する記憶部(12)と、
前記カード(100)の券面に対する印字、および前記カード(100)の券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去部(13)と、
前記カード(100)の券面の画像を取得する券面画像取得部(14)と、
前記券面画像取得部(14)が取得した前記カード(100)の券面の画像を、前記記憶部(12)に記憶されている券面の画像と照合し、前記カード(100)の種類を判定する種類判定部(11a)と、
前記印字消去部(13)により前記カード(100)の券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定部(11b)と、
前記消去判定部(11b)が前記カード(100)の券面の印字が消去されたと判定した前記カード(100)の券面に対して、前記印字消去部(13)が印字するのを許可する印字許可部(11c)と、を備え、
前記消去判定部(11b)は、前記券面画像取得部(14)が取得した前記印字消去部(13)により印字が消去された前記カード(100)の券面の画像と、前記種類判定部(11a)によって判定された種類のカード(100)の券面の画像とを照合し、前記カード(100)の券面において印字が消去されていない箇所を検出する、券面印字装置(1)。
【0115】
<付記2>
カード(100)の券面に対する印字、および前記カード(100)の券面に対する印字の消去を選択的に行う印字消去部(22)と、
前記カード(100)の券面の画像を取得する券面画像取得部(23)と、
前記印字消去部(22)により前記カード(100)の券面の印字が消去されたかどうかを判定する消去判定部(21a)と、
前記消去判定部(21a)が前記カード(100)の券面の印字が消去されたと判定した前記カード(100)の券面に対して、前記印字消去部(22)が印字するのを許可する印字許可部(21b)と、を備え、
前記券面画像取得部(23)は、前記カード(100)の券面の可視光画像の取得、および前記カード(100)の券面の赤外画像の取得を選択的に行い、
前記消去判定部(21a)は、前記券面画像取得部(23)が前記印字消去部(22)により印字が消去された前記カード(100)の券面の可視光画像と赤外画像とを照合し、前記カード(100)の券面において印字が消去されていない箇所を検出する、券面印字装置(2)。
【符号の説明】
【0116】
1、2…券面印字装置
11、21…制御ユニット
11a…種類判定部
11b、21a…消去判定部
11c、21b…印字許可部
11d、21c…印字不良判定部
12…券面画像記憶部
13、22…印字消去部
13a、22a…サーマルヘッド
14、23…券面画像取得部
14a、23a、23c…光源
14b、23b、23d…イメージセンサ
15、24…搬送部
16、25…入出力部
100…非接触ICカード(ICカード)