IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特許7600786情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法
<>
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図1
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図2
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図3
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図4
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図5
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図6
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図7
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図8
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図9
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図10
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図11
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図12
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図13
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図14
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図15
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図16
  • 特許-情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/08 20060101AFI20241210BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20241210BHJP
   B41M 3/10 20060101ALI20241210BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20241210BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20241210BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G06K19/08
B41M3/14
B41M3/10
G06K19/06 037
G06K7/10 372
G06K7/14 017
G06K7/14 043
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021039220
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139020
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小林 馨
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/054380(WO,A1)
【文献】特開2021-000751(JP,A)
【文献】特開2015-060270(JP,A)
【文献】特開2008-083843(JP,A)
【文献】特開平10-111904(JP,A)
【文献】特開2005-190231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/08
B41M 3/14
B41M 3/10
G06K 19/06
G06K 7/10
G06K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インキ層と、第2インキ層とを備えた情報記録体であって、
前記第1インキ層と、前記第2インキ層とは、
基材の一表面上に設けられ、
それぞれ観察角度によって反射光量の異なるように構成され、
前記第1インキ層は、ベタ画像を含む第1画像であり、
前記第2インキ層は、透明素材で形成された、可変情報を有するコードを含む第2画像であり、
前記第2画像のうち前記コードの読取領域を認識するための識別領域が、前記ベタ画像に重ねて形成される、情報記録体。
【請求項2】
請求項1に記載の情報記録体において、
前記第1画像は、さらにパターン画像を含み、
前記パターン画像に重ねて前記第2画像の少なくとも一部が形成される、情報記録体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の情報記録体において、
前記第2画像は、パターン画像を含む、情報記録体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記コードは、二次元コードであり、
前記コードの識別領域は、前記コードの外周枠である、情報記録体。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記コードは、二次元コードであり、
前記コードの識別領域は、前記コードの存在を示すマークである、情報記録体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記第1画像は、前記第2画像とは異なるコードの画像を含む、情報記録体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の情報記録体において、
前記第1インキ層は、光輝性材料で形成される、情報記録体。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の情報記録体を備えるラベル。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の情報記録体を読み取る読取装置であって、
読取部と、
前記読取部の近傍に設けられ、光を照射する発光部と、
前記発光部により光が照射されている状態で、前記読取部が、前記情報記録体の前記第2画像を含む画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取った前記画像から前記識別領域を検出し、検出した前記識別領域に基づいてコード領域を取得するコード領域取得手段と、
前記コード領域取得手段が取得した前記コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定するコード特定手段と、
を備える読取装置。
【請求項10】
請求項9に記載の読取装置であって、
前記コード特定手段は、前記コード領域をセルに分割し、各セルの輝度値を用いて二値化処理をして前記コードを特定する、読取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の読取装置であって、
前記二値化処理は、各セルの輝度値に基づいて分類ごとの平均値を取得し、取得した平均値を前記分類に属する各セルの輝度値にする、読取装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の読取装置であって、
前記二値化処理は、一のセルにおける輝度値と前記一のセルの近傍に位置する各セルにおける輝度値との平均値を用いて、前記一のセルを二値化する、読取装置。
【請求項13】
請求項9から請求項12までのいずれかに記載の読取装置であって、
前記コード特定手段は、検出した前記識別領域が予め記憶した形状を有する場合に、前記形状に対応した二値化処理をする、読取装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13までのいずれかに記載の読取装置であって、
前記コード特定手段により特定した前記コードから前記可変情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記可変情報に基づく情報を、表示部に出力する情報出力手段と、
を備える、読取装置。
【請求項15】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の情報記録体の真贋を判定するコンピュータで実行するプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記情報記録体の前記第2画像を含む画像を読み取る読取手段と、
読み取った前記画像から前記識別領域を検出し、検出した前記識別領域に基づいてコード領域を取得するコード領域取得手段と、
取得した前記コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定するコード特定手段と、
特定した前記コードから前記可変情報を取得する情報取得手段と、
前記可変情報を取得できた場合に、前記情報記録体が真であると判定する真贋判定手段と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の情報記録体の真贋判定方法であって、
コンピュータが、
前記情報記録体の前記第2画像を含む画像を読み取るステップと、
読み取った前記画像から前記識別領域を検出し、検出した前記識別領域に基づいてコード領域を取得するステップと、
取得した前記コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定するステップと、
特定した前記コードから前記可変情報を取得するステップと、
前記可変情報を取得できた場合に、前記情報記録体が真であると判定するステップと、
を含む真贋判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録体、ラベル、読取装置、プログラム及び真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像等に特定の情報を埋め込む電子透かしの技術がある。この技術を印刷物に用いれば、人間が視覚で認識できないレベルで情報を埋め込むことができ、印刷物における美術的な効果を損なうことがない。また、印刷物に埋め込まれた情報は、読取装置で読み取ることができる。
【0003】
この埋め込まれた情報を、例えば、真贋判定に用いる場合には、複製物からは、埋め込まれた情報を推定されにくいものが望ましい。そのため、埋め込み情報を推定されにくいように工夫した情報記録体に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-93895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の情報記憶体において、読取装置で読み取る情報を透明インキで構成した場合に、下の層と透明インキとの積層状態によっては、読取装置での読み取りに際してノイズが生じ、読み取りが困難になってしまうという問題があった。
また、透明インキで構成した情報の読み取りを改善するために、例えば、透明インキを厚く積層したり、下の層をベタ印字等にして密度を上げたりする方法が考えられる。しかし、これらの方法を採用すると、目視での透明インキの視認性が上がってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、透明素材で印字された情報について目視による視認がしにくく、かつ、読取装置による読み取り精度を向上させる工夫をした情報記録体等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0008】
第1の発明は、第1インキ層(31)と、第2インキ層(32)とを備えた情報記録体(30)であって、前記第1インキ層と、前記第2インキ層とは、基材(10)の一表面上に設けられ、それぞれ観察角度によって反射光量の異なるように構成され、前記第1インキ層は、ベタ画像(B1)を含む第1画像であり、前記第2インキ層は、透明素材で形成された、可変情報を有するコードを含む第2画像であり、前記第2画像のうち前記コードの読取領域を認識するための識別領域が、前記ベタ画像の上に形成される、情報記録体である。
第2の発明は、第1の発明の情報記録体(30)において、前記第1画像は、さらにパターン画像(C1)を含み、前記パターン画像に重ねて前記第2画像の少なくとも一部が形成される、情報記録体である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の情報記録体(30)において、前記第2画像は、パターン画像(C2)を含む、情報記録体である。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかの情報記録体(30)において、前記コードは、二次元コードであり、前記コードの識別領域は、前記コードの外周枠である、情報記録体である。
第5の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかの情報記録体(30-2)において、前記コードは、二次元コードであり、前記コードの識別領域は、前記コードの存在を示すマークである、情報記録体である。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明までのいずれかの情報記録体において、前記第1画像は、前記第2画像とは異なるコードの画像を含む、情報記録体である。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明までのいずれかの情報記録体(30)において、前記第1インキ層(31)は、光輝性材料で形成される、情報記録体である。
第8の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれかの情報記録体(30)を備えるラベル(1)である。
第9の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれかの情報記録体(30)を読み取る読取装置(5)であって、読取部(5C)と、前記読取部の近傍に設けられ、光を照射する発光部(5L)と、前記発光部により光が照射されている状態で、前記読取部が、前記情報記録体の前記第2画像を含む画像を読み取る読取手段(52)と、前記読取手段により読み取った前記画像から前記識別領域を検出し、検出した前記識別領域に基づいてコード領域を取得するコード領域取得手段(53)と、前記コード領域取得手段が取得した前記コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定するコード特定手段(54)と、を備える読取装置である。
第10の発明は、第9の発明の読取装置(5)であって、前記コード特定手段(54)は、前記コード領域をセルに分割し、各セルの輝度値を用いて二値化処理をして前記コードを特定する、読取装置である。
第11の発明は、第10の発明の読取装置(5)であって、前記二値化処理は、各セルの輝度値に基づいて分類ごとの平均値を取得し、取得した平均値を前記分類に属する各セルの輝度値にする、読取装置である。
第12の発明は、第10の発明又は第11の発明の読取装置(5)であって、前記二値化処理は、一のセルにおける輝度値と前記一のセルの近傍に位置する各セルにおける輝度値との平均値を用いて、前記一のセルを二値化する、読取装置である。
第13の発明は、第9の発明から第12の発明までのいずれかの読取装置(5)であって、前記コード特定手段(54)は、検出した前記識別領域が予め記憶した形状を有する場合に、前記形状に対応した二値化処理をする、読取装置である。
第14の発明は、第9の発明から第13の発明までのいずれかの読取装置(5)であって、前記コード特定手段(54)により特定した前記コードから前記可変情報を取得する情報取得手段(55)と、前記情報取得手段が取得した前記可変情報に基づく情報を、表示部(67)に出力する情報出力手段(56)と、を備える、読取装置である。
第15の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれかの情報記録体(30,30-2)の真贋を判定するコンピュータ(5)で実行するプログラム(61a)であって、前記コンピュータを、前記情報記録体の前記第2画像を含む画像を読み取る読取手段と、読み取った前記画像から前記識別領域を検出し、検出した前記識別領域に基づいてコード領域を取得するコード領域取得手段と、取得した前記コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定するコード特定手段と、特定した前記コードから前記可変情報を取得する情報取得手段と、前記可変情報を取得できた場合に、前記情報記録体が真であると判定する真贋判定手段と、して機能させるためのプログラムである。
第16の発明は、第1の発明から第7の発明までのいずれかの情報記録体(30,30-2)の真贋判定方法であって、コンピュータ(5)が、前記情報記録体の前記第2画像を含む画像を読み取るステップと、読み取った前記画像から前記識別領域を検出し、検出した前記識別領域に基づいてコード領域を取得するステップと、取得した前記コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定するステップと、特定した前記コードから前記可変情報を取得するステップと、前記可変情報を取得できた場合に、前記情報記録体が真であると判定するステップと、を含む真贋判定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明素材で印字された情報について目視による視認がしにくく、かつ、読取装置による読み取り精度を向上させる工夫をした情報記録体等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る印刷物を説明するための図である。
図2】本実施形態に係る情報記録体の画像の例を示す図である。
図3】本実施形態に係る情報記録体のパターン画像の例を示す図である。
図4】本実施形態に係る情報記録体のパターン画像の他の例を示す図である。
図5】本実施形態に係る情報記録体の構造に基づく観察態様を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る印刷物のコピー時の照明光源とカメラとの位置関係を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る情報記録体を読み取る読取装置のアウトカメラ及びモバイルライトの位置関係を示す図である。
図8】本実施形態に係る読取装置による情報記録体の読取パターンの例を示す図である。
図9】本実施形態に係る読取装置による情報記録体の読取パターンの具体例を示す図である。
図10】本実施形態に係る読取装置の機能ブロック図である。
図11】本実施形態に係る読取装置での読取処理を示すフローチャートである。
図12】本実施形態に係る読取装置でのコード特定処理を示すフローチャートである。
図13】本実施形態に係る読取装置でのコード特定処理を説明するための図である。
図14】本実施形態に係る読取装置での二値化処理を説明するための図である。
図15】本実施形態に係る読取装置での二値化処理を説明するための図である。
図16】変形形態に係る情報記録体の画像の例を示す図である。
図17】変形形態に係る読取装置での二値化処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、これは、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る印刷物1を説明するための図である。
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
また、本発明において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。
【0012】
<印刷物1>
図1(A)に示す印刷物1は、例えば、物品に貼り付けられるラベルである。印刷物1を物品に貼り付けることで、印刷物1は、商品管理や流通、販売等での真贋判定に用いることができる。
図1(A)は、鉛直方向Zの上側から下方を見た印刷物1の平面図を示す。印刷物1は、ベース10(基材)と、情報記録体30とを備える。
【0013】
<ベース10の構造>
図1(B)は、図1(A)におけるX-X方向断面の部分模式図である。図1(B)は、Y方向手前から見た印刷物1の断面図を示す。図1(B)に示すように、ベース10は、情報記録体30を有する側からZ方向下側に向かって、基材層11と、粘着層12と、剥離性支持体層13とが、この順で積層されている。
基材層11は、例えば、樹脂フィルム、樹脂シート、紙等を用いることができる。基材層11の素材は、例えば、インクジェット用紙、上質紙、クラフト紙、複写用紙、グラシン紙、レーヨン紙、コート紙、合成紙、樹脂フィルムによりラミネートされた紙、NIP上質紙、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、延伸ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等を用いることができる。基材層11は、情報記録体30を担持できる平面を有していればよい。
【0014】
粘着層12は、印刷物1の使用時に物品に貼り付けるための粘着剤により構成されている。粘着層12としては、粘着作用をする通常の粘着剤を粘着剤層の形成に広く使用できる。溶剤型粘着剤としては、NR、SBR、IR、CR等のゴム系が主流であるが、エマルジョン型のアクリル系粘着剤も使用できる。その他、シリコン系、ポリビニルエーテル系等があるが、いずれでも使用でき、ホットメルト系の粘着剤であってもよい。
【0015】
剥離性支持体層13は、未使用状態、すなわち、物品に貼り付けられる前の印刷物1において、粘着層12を保護し、不用意に粘着層12が他の物品等に張り付かないように設けられている、いわゆる剥離紙、剥離シート等と呼ばれる部材である。図1(B)では、剥離性支持体層13は、1層として示したが、剥離性支持体層13は、例えば、基材層と剥離層との積層体として構成してもよい。剥離性支持体層13は、印刷物1を物品に貼り付ける際に剥がされて除去される。剥離性支持体層13としては、例えば、基材層11と同質の材料を使用でき、粘着層を形成する面に剥離層形成用のインキを塗布して、剥離性を付与することができる。
【0016】
<情報記録体30の構造>
ベース10の表面側、つまり、Z方向の上側には、情報記録体30を有する。情報記録体30は、潜像印刷によって、例えば、コード等の真贋判定に用いる情報が印刷されたものである。情報記録体30に印刷された画像は、ベース10の観察方向を変えることで変わるものである。
【0017】
図1(B)に示すように、情報記録体30は、ベース10上に、光輝層31(第1インキ層)と、透明層32(第2インキ層)とを含む合成画像を備える。合成画像は、光輝層31と、透明層32とを重ねた合成層による画像である。
光輝層31は、光輝性材料を含むインキによって、ベタ画像とパターン画像とを含む第1画像が印刷された層である。
透明層32は、透明なインキ(透明素材)によって、光輝層31のパターン画像とは異なるパターン画像での二次元コード(コード)の画像を含む第2画像が印刷された層である。
この例では、光輝層31と、透明層32とは、正方形状であり、透明層32は、光輝層31の全体に形成されている。
【0018】
ここで、情報記録体30の製造方法を、簡単に説明する。
まず、ベース10を用意し、ベース10の上に光輝層31として、光輝性材料を含む光沢インキ等で、第1画像をグラビア印刷する。第1画像を描く光輝性材料を含むインキは、例えば、以下に例示するように、様々な種類のインキが想定される。
例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉、錫粉、又はリン化鉄等を成分とする銀色インキであってよい。また、銀色インキに、顔料や染料を含む有色色素の有彩色のインキを混合したインキであってよい。
【0019】
さらに、光輝層31は、青味金色又は赤味金色を示す光輝性材料のみのインキであってもよい。また、青味金色又は赤味金色を示す光輝性材料のインキに、上述した有色色素の有彩色のインキを混合したものであってもよい。
さらにまた、光を反射させることで色彩が変化する機能性顔料を含んだインキである、パールインキ、液晶インキ、OVI(Optical Variable Ink)、CSI(Color Shifting Ink)等であってもよい。なお、パールインキは、通常の顔料と比較して真珠光沢を有し、その安全性、光沢性、高級感を有するパール顔料を含んでなるインキである。液晶インキは、温度で色が変わる特性を持つ液晶を含んでなるインキである。
今回の例では、光輝層31には、光輝性材料を含む銀色インキを用いている。
【0020】
次に、この光輝層31の第1画像上に、透明層32として、透明なインキ等で第2画像を重ねてグラビア印刷する。第2画像を描くインキは、例えば、マットOPニス、透明ニス、インキワニス、透明インキ又はメジウムインキ等の無彩色のインキである。なお、これらのインキは、紫外線硬化型インキ、酸化重合型インキ、浸透型インキ、過熱乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ等のいずれの印刷インキであってもよい。
なお、上述した光輝層31及び透明層32に用いる材料は、一例であり、それぞれ観察角度によって反射光量の異なるものであれば、他の材料であってもよい。
【0021】
ここで、塗布するインキの厚さは、いずれも、例えば、1マイクロメートル程度である。なお、インキの厚さは、これに限定するものではない。また、例えば、材料によって、インキの厚さを変えてもよい。
上述の印刷工程は、グラビア印刷に限らず、ウェットオフセット印刷、ドライオフセット印刷、凸版印刷、水無平版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷及び凹版印刷等であってもよい。
【0022】
次に、情報記録体30の印刷工程で印刷される画像について説明する。
図2は、本実施形態に係る情報記録体30の画像の例を示す図である。
図3及び図4は、本実施形態に係る情報記録体30のパターン画像の例を示す図である。
【0023】
図2(A)は、光輝層31の第1画像上に透明層32の第2画像を重ねる態様を示す。第1画像は、ベタ画像である画像B1と、パターン画像である画像C1とを含む。画像B1は、外周枠を形成し、画像C1は、マイクロ文字を形成している。また、第2画像は、パターン画像である画像C2を含む。画像C2は、QRコード(登録商標)に代表される二次元コードを含む画像を形成している。
図2(B)に示すように、画像B1の上には、第2画像の一部である二次元コードの外周枠である画像C2による識別領域が、重なって形成されている。
【0024】
次に、図2(A)に示す画像C1及び画像C2の印刷について、下地を隠蔽しうる面積を%で表した印刷条件を面積率とし、特に網点で下地を隠しうる場合を網点面積率として説明する。
図3(A)は、光輝層31の画像C1の一部と、さらにその一部である領域E1を拡大したものを示す。画像C1は、領域E1に示すように、前景部C1aと、背景部C1bとを2値で表したパターン画像である。
前景部C1aは、例えば、網点面積率100%の印刷がされており、背景部C1bは、例えば、網点面積率75%の印刷がされている。但し、この割合は、一例であって、これに限定されない。例えば、前景部C1aの網点面積率が100%未満であってもよく、また、背景部C1bの網点面積率が75%以外であってもよい。その場合には、前景部C1aと、背景部C1bとの網点面積率の差が15%以上50%以下になるようにするのが望ましい。また、前景部C1aと、背景部C1bとの疎密が逆であってもよい。
なお、ベタ画像である画像B1は、画像B1の全体に網点面積率100%の印刷がされたものである。
【0025】
図3(B)は、透明層32の画像C2の一部と、さらにその一部である領域E2を拡大したものを示す。画像C2は、領域E2に示すように、前景部C2aと、背景部C2bとを2値で表したパターン画像である。
前景部C2aは、例えば、網点面積率100%の印刷がされており、背景部C2bは、例えば、網点面積率25%の印刷がされている。但し、この割合も一例であって、これに限定されない。例えば、前景部C2aの網点面積率は、100%未満であってもよく、また、背景部C2bの網点面積率は、前景部C2aとの間で所定の差があれば、網点面積率25%以上であっても以下であってもよい。また、前景部C2aと、背景部C2bとの疎密が逆であってもよい。
そして、前景部C2aと背景部C2bとの疎密差は、前景部C1aと背景部C1bとの疎密差よりも大きい。
【0026】
ここで、情報記録体30の光輝層31及び透明層32のパターン画像は、前景部及び背景部からなるパターン画像が印刷されているものに限定されない。
図4(A)及び図4(B)は、光輝層31の画像Cxと、透明層32の画像Cyとが、前景部のみからなるパターン画像である場合を示す。この場合、画像Cx及び画像Cyの印刷領域Cxa及びCyaを網点面積率100%で印刷し、印刷領域Cxa及びCyaと、印刷しない非印刷領域Cxb及びCybとによって、2値でパターン画像を表したものになる。
【0027】
上述の情報記録体30は、観察する視点の角度(観察角度)によって、認識可能な画像が変化する。
図5は、本実施形態に係る情報記録体30の構造に基づく観察態様を説明するための図である。
【0028】
図5(A)は、拡散反射領域及び正反射(鏡面反射)領域での照明光源Lと、視点E(Ea~Ec)と、情報記録体30との3つの位置関係を図示したものである。
図5(A)に示すような照明光源Lと情報記録体30との位置に対して、位置P1に視点E(Ea)があるとき、位置P1では、拡散反射領域で観察したことになる。これは、照明光源Lが情報記録体30の面に対して斜め方向から照射されている場合であり、このときの位置P1は、情報記録体30の法線方向(Z方向)であって、情報記録体30に対向する位置である。また、照明光源Lと情報記録体30とが同じ条件で、位置P2に視点E(Eb)があるとき、位置P2では、正反射領域で観察したことになる。この場合、位置P2は、情報記録体30の法線と照明光源Lとの間の角度を角度θLとすると、情報記録体30の法線に対して照明光源Lと対称の位置であって、角度θLと同じ角度である角度θRの方向から情報記録体30を視認する位置である。
【0029】
ここで、照明光源Lは、可視光を出力するものである。
なお、図5(B)に示すような照明光源Lと情報記録体30との位置に対して、位置P3に視点E(Ec)があるとき、情報記録体30の法線を対称の軸として、照明光源Lと位置P3とが線対称の位置にある。そのため、この場合も、位置P3では、正反射領域で観察したことになる。
以下において、図3に示す画像C1及び画像C2を例に説明する。
【0030】
情報記録体30が光輝層31のみからなる場合には、拡散反射領域においては、図3(A)の画像C1の前景部C1aと背景部C1bとの疎密差により反射光量に大きく差が生じるため、前景部C1aと背景部C1bとが区別できる。他方、正反射領域においては、前景部C1aと背景部C1bとが共に反射光量が大きくなるため、その差を感知できず、前景部C1aと背景部C1bとは、区別できなくなる。
【0031】
次に、情報記録体30が透明層32のみからなる場合には、拡散反射領域においては、図3(B)の前景部C2aと背景部C2bとは、透明なため区別できない。他方、正反射領域においては、前景部C2aと背景部C2bとの疎密差で反射光量が変わるため、前景部C2aと背景部C2bとが区別できる。
そして、情報記録体30が光輝層31上に透明層32が形成されたものである場合には、拡散反射領域においては、前景部C1aと背景部C1bとが区別でき、前景部C2aと背景部C2bとが区別できないため、全体としては、前景部C1aと背景部C1bとが観察される。また、正反射領域においては、前景部C1aと背景部C1bとは区別できないが、前景部C2aと背景部C2bとが区別でき、全体として前景部C2aと背景部C2bとが観察される。
【0032】
このように、光輝層31と、透明層32とは、観察角度によって反射光量が異なる材料(インキ等)を用いることで、光輝層31の画像と、透明層32の画像とは、観察角度によって見えたり見えなかったり、と様々な見せ方をさせることができる。
この原理を利用して、読取装置5で情報記録体30を撮影し、透明層32のみや光輝層31のみの画像を取得することで、情報記録体30を真贋判定に用いる。
【0033】
<印刷物1の複製>
次に、情報記録体30を真贋判定に用いることを示すため、印刷物1が複製された場合について説明する。
図6は、本実施形態に係る印刷物1のコピー時の照明光源LとカメラCとの位置関係を説明するための図である。
印刷物1の情報記録体30は、図6に示す照明光源Lから光が照射された状態で、カメラCによってその画像が取得される。
【0034】
図6は、照明光源Lが情報記録体30に対してやや斜め方向から照射し、カメラCが情報記録体30に対して垂直方向から撮影して画像を取得する場合である。コピー機等の複製機に代表されるように、照明光源LとカメラCと印刷物1とが図6のような位置関係にある場合、例えば、特開2009-21812の段落[0009]に示すように、カメラCは、印刷物1の面で乱反射した光を読み取る。そのため、カメラCには、照明光源Lと情報記録体30との位置関係によって、情報記録体30の光輝層31と透明層32との両方の画像が捉えられる。
このようにして、カメラCが得た画像をもとに、複製機では、印刷物1のコピー品が作製される。
【0035】
そして、コピー品は、印刷物1の情報記録体30(図1(A)参照)に対応する位置に、情報記録体30が印刷された印刷体を有するものになる。印刷体には、情報記録体30の光輝層31が有するパターン画像と、透明層32が有するパターン画像との合成画像を有する。また、印刷体は、例えば、一般的なカーボンを含む黒色インキ、又は、カラーコピーの場合には有色インキからなる層を有する。よって、印刷体をいずれの領域(拡散反射領域、正反射領域等)からの観察角度で観察した場合であっても、印刷体は、合成画像のみが見えるものになる。よって、印刷体は、透明層32が有するパターン画像のみを観察できないものになり、真贋判定を行った場合には、偽であると判定できる。
【0036】
次に、読取装置5での情報記録体30の読み取りについて説明する。
図7は、本実施形態に係る情報記録体30を読み取る読取装置5のアウトカメラ5C及びモバイルライト5Lの位置関係を示す図である。
図8は、本実施形態に係る読取装置5による情報記録体30の読取パターンの例を示す図である。
図9は、本実施形態に係る読取装置5による情報記録体30の読取パターンの具体例を示す図である。
【0037】
図7に示す読取装置5は、例えば、スマートフォンに代表される携帯端末である。本実施形態で説明する例は、印刷物1が貼りつけられた物品の製造時から流通等でのチェックに、各場所(倉庫、運搬中、店舗等)で読取装置5を用いて情報記録体30を読み取る。そのため、読取装置5は、専用の装置ではなく、ユーザが所持する携帯端末である。読取装置5は、後述する処理プログラム61aをインストールすることで、真贋判定に使用できる。
読取装置5の筐体背面には、アウトカメラ5C(読取部)と、モバイルライト5L(発光部)とが近接した位置に設けられている。そして、アウトカメラ5C及びモバイルライト5Lを有する側とは反対側である筐体前面には、後述するタッチパネルディスプレイ67を有する。
【0038】
図8(A)は、情報記録体30の層構成を示す。図1(B)において、情報記録体30の層構成を例示したが、図2の情報記録体30は、画像C1と画像C2とを拡大すると、実際には図8(A)に示すような状態の層構成になる。
【0039】
読取装置5を操作するユーザは、情報記録体30の光輝層31の画像を得る場合に、モバイルライト5Lを点灯させることなく、アウトカメラ5Cを用いて情報記録体30を撮影する。このとき、アウトカメラ5Cは、図5(A)の照明光源Lと、情報記録体30との位置関係において、視点Eaに位置したものになる。この場合の照明光源Lは、周囲の外光である。その結果、図8(B)に示すように、読取装置5は、光輝層31の画像C1のみのパターン41の画像を取得できる。
【0040】
また、読取装置5を操作するユーザは、情報記録体30の透明層32の画像を得る場合に、モバイルライト5Lを点灯させた状態で、アウトカメラ5Cを用いて情報記録体30を撮影する。このとき、アウトカメラ5Cは、図5(B)の照明光源Lと、情報記録体30との位置関係において、視点Ecに位置したものになる。上記で説明したように、理論上は、図8(C)に示すような、透明層32の画像C2のみのパターン42の画像が取得できる。しかし、実際には、読取装置5は、図8(D)に示すように、透明層32の画像C2のみのパターン42の他、黒ノイズ44と、白ノイズ45とを含む画像を取得する。ここで、黒ノイズ44は、本来であればパターンとして取得されない部分が、光輝層31の影響を受けて黒く映りこむものである。また、白ノイズ45は、本来であればパターンとして取得される部分が、光輝層31の影響を受けて、下地に光輝層31があるものよりも白く映りこむものである。
【0041】
読取装置5のモバイルライト5Lを点灯させた状態で、アウトカメラ5Cを用いて情報記録体30を撮影して得られた画像について、より具体的な例を示して説明する。
図9(A)は、光輝層31による密度が高いパターン画像の上に、透明層32によるファインダパターン(マーク)を示す画像を重ねた場合の画像48を示す。
他方、図9(B)は、光輝層31による密度が低いパターン画像の上に、透明層32によるファインダパターンの画像を重ねた場合の画像49を示す。
【0042】
画像49は、画像48と比較して、白ノイズ45及び黒ノイズ44が発生しやすい。そのため、透明層32の画像の読み取りのみを考慮すれば、光輝層31による密度が高いパターン画像の上に透明層32の画像を形成するのが好ましい。しかし、光輝層31による密度が高いパターン画像の上に透明層32の画像を形成すると、今度は、透明層32による画像の目視による視認性が向上してしまい、一見して透明層32の画像を認識できる可能性が高まる。
そこで、本実施形態では、読取装置5により、黒ノイズ44と、白ノイズ45とについて処理することで、図8(C)に示す透明層32の画像C2のみのパターン42に変換する。
【0043】
<読取装置5>
次に、印刷物1の情報記録体30からコードを読み取る読取装置5について説明する。
図10は、本実施形態に係る読取装置5の機能ブロック図である。
読取装置5は、制御部50と、記憶部60と、アウトカメラ5Cと、モバイルライト5Lと、タッチパネルディスプレイ67(表示部)と、通信インタフェース部69とを備える。
【0044】
制御部50は、読取装置5の全体を制御するCPU(中央処理装置)である。制御部50は、記憶部60に記憶されているOS(オペレーティングシステム)やアプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、各種機能を実行する。
制御部50は、光制御部51と、画像受付部52(読取手段)と、コード領域取得部53(コード領域取得手段)と、コード特定部54(コード特定手段)と、情報取得部55(情報取得手段、真贋判定手段)と、情報出力部56(情報出力手段)とを備える。
【0045】
光制御部51は、処理プログラム61aが起動されたことに応じて、モバイルライト5Lから光を照射させて、光の出力を継続させた状態にする。なお、光制御部51は、次に説明する画像受付部52により情報記録体30の画像データを受け付けた場合に、モバイルライト5Lから照射させていた光の出力を停止させてもよい。
画像受付部52は、アウトカメラ5Cを情報記録体30に対向させて、アウトカメラ5Cが情報記録体30を読み取ることで、アウトカメラ5Cを介して情報記録体30の画像データを受け付ける。
【0046】
コード領域取得部53は、画像データから識別領域を検出し、検出した識別領域に基づいてコード領域(読取領域)を取得する。ここで、識別領域は、二次元コードの外周枠(図2参照)の他、ファインダパターン(後述する)等であってもよく、コード領域を検出するのに用いることができるものである。
コード特定部54は、コード領域に対して画像処理を行って前記コードを特定する。ここで、コード特定部54は、コード領域をセルに分割し、各セルの輝度値を用いて二値化処理をすることでコードを特定する。また、二値化処理は、一のセルにおける輝度値と一のセルの近傍に位置する各セルにおける輝度値との平均値を用いて、一のセルの輝度値を変更する処理である。そして、二値化は、変更後の各セルの輝度値に対して閾値を用いて黒又は白にする。
【0047】
情報取得部55は、コード特定部54が特定したコードに対して所定の変換を行い、可変情報を取得する。
情報出力部56は、情報取得部55が取得した可変情報に基づく情報を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。
【0048】
記憶部60は、制御部50が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶領域である。
なお、コンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいい、読取装置5は、制御部50、記憶部60等を備えた情報処理装置であり、コンピュータの概念に含まれる。
【0049】
記憶部60は、プログラム記憶部61を記憶する。
プログラム記憶部61は、各種のプログラムを記憶する記憶領域である。プログラム記憶部61は、処理プログラム61a(プログラム)を記憶している。処理プログラム61aは、制御部50の各機能を実行するためのプログラムである。
【0050】
タッチパネルディスプレイ67は、液晶パネル等で構成される表示部としての機能と、ユーザの指等によるタッチ入力を検出する入力部としての機能とを有する。
通信インタフェース部69は、外部のサーバ等との間で通信を行うためのインタフェースである。
【0051】
<読取装置5の処理>
次に、読取装置5の処理について説明する。
図11は、本実施形態に係る読取装置5での読取処理を示すフローチャートである。
図12は、本実施形態に係る読取装置5でのコード特定処理を示すフローチャートである。
図13は、本実施形態に係る読取装置5でのコード特定処理を説明するための図である。
図14及び図15は、本実施形態に係る読取装置5での二値化処理を説明するための図である。
【0052】
まず、ユーザが読取装置5を操作して、処理プログラム61aを起動させることで、読取装置5の制御部50は、図11に示す読取処理を開始する。
図11のステップS(以下、「ステップS」を単に「S」という。)11において、読取装置5の制御部50は、アウトカメラ5Cを起動させる。
S12において、制御部50(光制御部51)は、モバイルライト5Lから光を照射させる。
【0053】
この読取処理では、情報記録体30の真贋判定をしたいため、ユーザは、情報記録体30の真贋判定に用いる透明層32の第2画像のみを視認可能な正反射領域を特定して、画像を読み取るための操作を行う。正反射領域を特定するには、例えば、ユーザは、読取装置5を、情報記録体30の法線方向であって、情報記録体30に対向するように配置すればよい。このようにすれば、読取装置5のモバイルライト5Lとアウトカメラ5Cとの位置関係が、図5(B)の照明光源Lと、位置P3との関係と同様になるので、アウトカメラ5Cは、情報記録体30の透明層32が有する第2画像を読み取ることができる。
【0054】
S13において、制御部50は、撮影操作を受け付けたか否かを判断する。制御部50は、タッチパネルディスプレイ67に、例えば、シャッターボタン(図示せず)を表示させる。そして、ユーザによるシャッターボタンの選択を受け付けると、制御部50は、撮影操作を受け付けたと判断する。撮影操作を受け付けた場合(S13:YES)には、制御部50は、処理をS14に移す。他方、撮影操作を受け付けていない場合(S13:NO)には、制御部50は、撮影操作を受け付けるまで本処理にとどまる。
S14において、制御部50(画像受付部52)は、アウトカメラ5Cを介して撮影した画像データを受け付ける。
S13及びS14の処理では、撮影操作による撮影について説明したが、制御部50が自動で撮影してもよい。
S15において、制御部50は、画像データからコードを特定するコード特定処理を行う。
【0055】
ここで、コード特定処理について、図12に基づき説明する。
図12のS21において、制御部50(コード領域取得部53)は、画像データに含まれる識別領域を検出する。
図13(A)は、撮影した画像70に、各セルを分割するためのラインを記載したものを示す。また、図13(B)は、識別領域71aを検出した画像71を示す。
【0056】
図12のS22において、制御部50(コード領域取得部53)は、検出した識別領域に基づき、コード領域を取得する。
図13(C)は、図13(B)の画像71から検出した識別領域71aに基づいてコード領域のみにした画像72を示す。制御部50は、識別領域71aと、識別領域71aの内側の幅とを削除することで、コード領域のみの画像72を取得できる。
【0057】
図12のS23において、制御部50(コード特定部54)は、コード領域をセルに分割する。
図13(D)は、図13(C)の画像72に対してセルに分割した画像73を示す。
図12のS24において、制御部50(コード特定部54)は、各セルの輝度値を用いて、セルごとに二値化処理を行う。
図13(E)は、図13(D)の画像73に対して各セルの輝度値を用いて平均化した画像74を示し、図13(F)は、各セルを黒又は白にした二値化処理後の画像75を示す。
【0058】
ここで、二値化処理について図14及び図15に基づき説明する。
図14において、制御部50は、図13(D)に示した画像73に対して、各セルを分類する。次に、制御部50は、分類ごとの平均値を取得し、取得した平均値を分類に属する各セルの輝度値にする。例えば、セル81aとその周辺セルとを含む小画像81では、各セルのノイズ(黒ノイズ及び白ノイズ)を吸収した小画像91を取得できる。制御部50は、この処理を、画像73(図13(D))に含む各セルを処理対象として行うことで、図13(E)の画像74を得ることができる。
【0059】
コード領域の画像は、モバイルライト5Lの位置によって、明るい領域と暗い領域とがグラデーションのように推移する。また、モバイルライト5Lは、低光源であり、光を照射しつづけると光源の明るさが徐々に減衰するため、明るい領域と暗い領域との差が少しずつ生じる。そのため、二値化をする際に全体で同じ閾値にすると、ノイズ部分を正しく判定できないという問題がある。そこで、二値化処理として、セル単位で周辺輝度値の平均から閾値を設定して判定を行う処理を、各セルで行う。
図15に、処理の例を示す。画像74は、明るい領域Raに含まれる小画像91と、暗い領域Rbに含まれる小画像92とを含む。ここで、図15では、小画像91及び小画像92において、各セルの輝度値を示している。
【0060】
ここで、二値に変換する処理を、小画像91を例に説明する。小画像91に含まれる全てのセルの平均輝度値は、144になる。また、対象セルであるセル91aの輝度値は、125である。セル91aの輝度値(125)は、平均輝度値(144)よりも低いので、制御部50は、セル91aは黒セルであると判定する。
次に、小画像92では、小画像92に含まれる全てのセルの平均輝度値は、78になる。また、対象セルであるセル92aの輝度値は、90である。セル92aの輝度値(90)は、平均輝度値(78)よりも高いので、制御部50は、セル92aは白セルであると判定する。
なお、上記の例は、セル91a及びセル92aが画像74の周囲に位置するものではないので、周辺セルは8個であり、平均輝度値は、自信のセルと8個の周辺セルとを合わせた9個のセルの平均値である。セルが画像74の周囲にある場合には、周辺セルは5個や3個になる場合がある。
【0061】
このように、セル単位で周辺輝度値の平均から閾値を設定して判定を行う処理を、各セルで行えば、画像74に明るい領域Raと暗い領域Rbとを有していても、周囲のセルの平均輝度値を用いて二値化を行うことができ、正しく判定することができる。
【0062】
制御部50がコード特定処理を行った後、図11のS16において、制御部50(情報取得部55)は、S15の処理により特定したコードに対して所定の変換処理を行い、可変情報を取得する。ここで、S15の処理により正しくコードが特定できた場合には、所定の変換処理によって可変情報を得ることができる。他方、S15の処理により正しくコードが特定できず、又は、複製等の不正な印刷物の画像を読み取って処理をした場合には、所定の変換処理によって可変情報を得ることができない。
【0063】
S17において、制御部50(情報取得部55)は、可変情報が取得できたか否かを判断する。可変情報が取得できた場合(S17:YES)には、制御部50は、処理をS18に移す。他方、可変情報が取得できなかった場合(S17:NO)には、制御部50は、処理をS19に移す。
【0064】
S18において、制御部50(情報出力部56)は、可変情報に基づく情報を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。ここで、可変情報に基づく情報としては、例えば、情報記録体30に一意のシリアル番号であってもよいし、「正規品です」といったメッセージであってもよい。その後、制御部50は、本処理を終了する。
他方、S19において、制御部50は、読取エラーの旨を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。なお、出力するものとしては、読取エラーの旨ではなく、偽物である旨を出力してもよい。その後、制御部50は、本処理を終了する。
【0065】
このように、本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)情報記録体30は、光輝層31にベタ画像である画像B1を含み、透明層32の二次元コードの外周枠を画像B1に重ねて配置するので、コード領域の読取を確実に行うことができる。
(2)光輝層31に有する画像を、マイクロ文字にし、マイクロ文字上に二次元コードを形成するので、目視によって二次元コードを認識しにくいものにできる。
また、透明層32に有する二次元コードを、パターン画像によって形成することで、目視による二次元コードの認識を、よりしにくいものにできる。
【0066】
(3)情報記録体30は、第2画像を二次元コードと、コードの外周枠にすることで、外周枠を認識することによって、二次元コードのコード領域を把握できる。その結果、コード領域の読取を確実に行うことができる。
【0067】
(4)情報記録体30は、光輝層31を光輝性材料で形成するので、観察角度によっては、透明層32をより見えやすくすることができる。
(5)情報記録体30を備える印刷物1は、様々な物品に貼り付けることができるので、情報記録体30を、コード読み取りによるブランドプロテクション用途で使用できる。
【0068】
(6)読取装置5は、光を出力して透明層32のみが見える観察角度で情報記録体30を読み取り、読み取った画像から識別領域を検出し、検出した識別領域に基づいてコード領域を取得し、取得したコード領域に対して画像処理を行ってコードを特定する。よって、識別領域により確実にコード領域を取得できる。また、画像処理によって、コードを特定できる。
【0069】
(7)読取装置5は、コード領域をセルに分割し、各セルの輝度値を用いて二値化処理をしてコードを特定するので、セルの単位で二値化処理を行うことで、コードを特定しやすくできる。
そして、二値化処理は、一のセルにおける輝度値を、同じ分類の各セルにおける輝度値との平均値を用いて変更するので、処理対象のセルと同分類のセルの輝度値を平準化できる。
さらに、二値化処理は、対象セルを、周囲のセルの輝度値の平均値を用いて二値化するので、照射の光がグラデーションのようになっている場合であっても、適切に二値化ができる。
【0070】
(8)読取装置5は、特定したコードから可変情報を取得し、取得した可変情報に基づく情報を、タッチパネルディスプレイ67に出力する。よって、タッチパネルディスプレイ67には、例えば、真贋判定結果を出力できる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0072】
(変形形態)
(1)本実施形態では、識別領域として外周枠を例に説明したが、これに限定されない。例えば、コードの存在を示すマークであってもよく、二次元コードの場合には、マークは、ファインダパターンであってもよい。
図16は、変形形態に係る情報記録体の画像の例を示す図である。
図17は、変形形態に係る読取装置での二値化処理を説明するための図である。
図16(A)には、光輝層31-2の画像C1及び画像B1と、透明層32-2の画像C2とを重ねて、図16(B)の情報記録体30-2を形成した者を示す。ここで、透明層32のファインダパターンが、画像B1の上に形成される。
この情報記録体30-2では、読取装置5が情報記録体30-2の透明層32-2を読み取る場合に、ファインダパターンを確実に読み取ることができるので、コード領域の特定を容易に行うことができる。
【0073】
また、図17に示すように、読取装置5による二値化処理において、ファインダパターンを、予め記憶部60に記憶しておけば、画像174を、画像174-2のように、ファインダパターン部分を決め打ちで二値化処理ができる。そのようにすれば、コード特定処理をより簡単にすることができる。
【0074】
(2)本実施形態では、パターン画像を印刷するものを例に説明したが、これに限定されない。転写や、レーザ描画等の印刷以外の手法で、パターン画像を形成するものであってもよい。
(3)本実施形態では、情報記録体を有する印刷物を、ラベルを例に説明したが、これに限定されない。情報記録体を有する媒体であれば、例えば、娯楽施設等に入場するために用いるチケットや、ゲームで使用するカード類等であってもよい。また、情報記録体を、電子透かしに用いてもよい。さらに、情報記録体を有する媒体に限定されるものではなく、情報記録体を有する冊子体であってもよい。
(4)本実施形態では、光輝層31及び透明層32を正方形状であるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、光輝層31は、長方形状や、円形状、楕円形上等、他の形状であってもよい。また、及び透明層32は、コードの形状に応じて、例えば、バーコードであれば長方形状等であってもよい。
【0075】
(5)本実施形態では、光輝層31の上に、直接透明層32を形成したものを例に説明したが、これに限定されない。例えば、光輝層31と、透明層32との間に透明フィルムのような基材を有するものであってもよい。また、例えば、本実施形態で説明した光輝層31の上に透明層32を形成したものに対して、さらに、透明層32の上に、透明フィルムのような基材を有するものであってもよい。このように透明フィルムのような基材を有することによって、透明フィルムの下の層である光輝層31の部分が削られにくくなる。
【0076】
(6)本実施形態では、光輝層31の画像を、図3に例示するようなパターン画像で図2に示すようなマイクロ文字を形成したものを例に説明したが、これに限定されない。例えば、図3に例示するようなパターン画像のみであってもよい。そのようにすれば、光輝層31の画像は、パターン画像により人が一見しただけでは無意味なものにできる。
(7)本実施形態では、読取装置による処理として、透明層32の画像C2を読み取って、コードを特定することで、例えば、真贋を判定するものであったが、これに限定されない。例えば、光輝層31にもコードを含み、光輝層31のコードも読み取れた場合に、真贋判定によって真であると判定してもよい。また、光輝層31のコードと、透明層32のコードとの組み合わせが、読取装置の記憶部に記憶された図示しない真贋判定テーブルに記憶されているか否かによって、真贋判定を行ってもよい。
【0077】
(8)本実施形態では、透明層がパターン画像によりコードを形成するものを例に説明したが、これに限定されない。透明層は、ベタ画像によりコードを形成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 印刷物
5 読取装置
5C アウトカメラ
5L モバイルライト
10 ベース
11 基材層
12 粘着層
13 剥離性支持体層
30,30-2 情報記録体
31,31-2 光輝層
32,32-2 透明層
41,42 パターン
44 黒ノイズ
45 白ノイズ
50 制御部
51 光制御部
52 画像受付部
53 コード領域取得部
54 コード特定部
55 情報取得部
56 情報出力部
60 記憶部
61a 処理プログラム
67 タッチパネルディスプレイ
B1,C1,C2 画像
C カメラ
L 照明光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17